発情期があるタイプのTS幼馴染の性欲を独占したい 作:しじままどせ
「やっぱり、なんか乳首がジンジンして気になるよ……。京介、絆創膏を持ってない?」
胸を押さえながら、栗毛の小柄な美少女がそう言った。前髪のすき間から見上げるような上目遣いで、潤んだ瞳でそう訴えてくる。
恥ずかしそうに頬を染めて、その大きな瞳にはうっすらと涙が浮かんでいて、庇護欲と嗜虐心を同時に刺激してくるような表情をしていた。
僕は思わず唾を飲み込む。めちゃくちゃかわいかったからだ。
「あ、あるけど」
「ほんと!? あ、あのう、貸してくれないかな? こ、今度返すから……」
「もしかして、胸に、貼るのか?」
「ゔ。まあ、そうだけど……」
理生はさらに頬を赤くして、消え入りそうな声で答えた。
そりゃあ、見た目が美少女であるとはいえ、精神的には男性である理生が乳首に絆創膏を貼るのはなかなか羞恥心を刺激するだろう。
しかし、それを断るという選択肢は、今の僕にはなかった。
「わかった。はい」
「ありがと」
僕はカバンから取り出した絆創膏を理生に手渡す。理生は大事そうにそれを受け取るとパーカーのポケットにしまった。
それから僕の手を取って、ぎゅっと掴んで、
「ごめん、ごめんなんだけど、来てほしい」
と言った。
温かい、柔らかな、女の子の手だ。どきりとする。
「え?」
「公園の男子トイレで貼ろうと思うんだけど、おれ、体がこんなだから、ひとりで男子トイレに入るのが怖いんだ。さっきも変な男からジロジロ見られて、すごくいやで、怖くて、それで、その、ごめん、お願いします」
「あ、ああ、うん」
言われてみれば理生は肉体的には女性だ。だからトイレは女子トイレに入るのが普通なのだろう。
しかし、今日女子になってしまったばかりの理生は、自分から女子トイレに足を踏み入れることに抵抗があるようだ。
だから男子トイレに入るしかない。けれど、理生みたいな美少女がひとりで公衆の男子トイレに入るのは『襲ってくれ』と看板を立てているようなものだろう。
それは確かに危険だ。というか、嫌だ。
かといって多目的トイレをこんな、乳首に絆創膏を貼るためなんて目的のために使うのは違うと思う。本当に多目的トイレが必要な人が困ってしまうかもしれないから。
そこで僕が男子トイレに一緒に入ってあげることで、理生の不安を取り除いてあげようというわけだ。
「オーケー、それくらいなら、任せてよ」
「迷惑かけて、ごめん」
「気にするなって」
そう言って、目の前の児童公園に入る。ここにはそこそこ綺麗な公衆トイレが備え付けられている。
理生は僕の腕に掴まりながら、不安そうにきょろきょろと辺りの様子を窺っている。
引っ込み思案な理生は男子トイレに入ることさえ不安なようだ。
「言い出しておいてなんだけど、おれ男子トイレに入って本当に大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよ。ほら、行くぞ」
僕は理生を連れて、男子トイレに入った。
幸いにも中には誰もいなかった。
そのまま理生を個室に押し込んで、僕はその前に佇む。誰も入ってこないように睨みをきかせて扉の前に立ち塞がるのだ。
個室に入った理生は、かさこそと衣ずれの音をさせ始めた。おそらくパーカーを脱いでいるのだろう。
「うぅ……」
と呻くような声が聞こえた。
一夜にして自分の膨らんだ胸を客観的に見て、やはりショックを受けているのだろうか。
僕と同じような理生も童貞だったはずだ。まあ、理生は姉が居るぶん僕よりも女慣れしているのかもしれないが、それでもショックは大きいだろう。
「…………」
僕は先ほど見てしまった理生の乳房を思い出した。
たしかにあれは女の子の胸で、プールの時なんかに見た理生の男時代の胸とは全然違っていた。
やんわりと膨れた柔らかそうな女の子の胸。さくら色の小さな乳輪。ツンと尖った乳首。
思い出すだけで興奮してしまう。
あの胸に触れて、揉んでみたら、いったいどのような触感がするのだろう。
やはり柔らかいのだろうか。それとも少女らしい蕾のような芯があるのだろうか。
そして、胸を揉まれた理生はどんな反応をするのだろうか。
感じて、甘い吐息を漏らしたりするのだろうか。あの鈴の鳴るような綺麗な声で喘ぐのだろうか。
(いやいや、何考えてんだよ僕は……)
僕は首を振って妄想を振り払った。
今はそんなことを考えている場合ではないし、そもそも考えることすらおかしいことなのだ。
だって相手は幼馴染の理生で、今は女性になっているとはいえ昨日までは男で。それに理生は大事な友達で、僕はその友人として理生を守っているだけなのだ。
「……んっ、……あー、うまくいかない」
困惑したような、悩んでいるような理生の声が聞こえる。
どうやら理生は絆創膏が上手く貼れないようで、何度も貼り直したり剥がしたりを繰り返しているようだ。
ピリッと剥がす音と「……んっ」と悩ましい理生の小さな悲鳴が交互に響く。
なんだか妙に艶めかしいな、と僕は思った。くそう、なんだかドキドキしてきたじゃないか。
それからしばらく、理生は格闘していたようだったが、やがて諦めたように「……京介ぇ」と弱々しい声で僕を呼んだ。
「どうした?」
「……ごめん、手伝ってくれる?」
「――は!?」
手伝うって、理生の胸に絆創膏を貼るのを?
それって、美少女の胸に触れて、その乳首に絆創膏を貼ることになるということじゃないか。
それって、かなり、やばいのでは。
「い、いや、だめだろ」
「だって、自分でやるの難しいんだもん」
「そ、そうだけど……」
ぎぎぎ、と重い音を立ててトイレの個室のドアが開いた。こちらの困惑をよそに。
そこには上半身裸の理生が胸を隠しながら、便器に腰掛けていた。前髪のすき間から上目遣いでこちらを見ている。
「――ッッ」
「ごめん、お願い。早くしないと誰か来ちゃうから……」
「――は、はい」
そうして僕は慌てて個室に入って、理生とふたりきりになってしまったのだった。