※この作品はR-18です。

(本編完結)ホロライブラバーズX infinity   作:とも667

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 樹は、諦めません。


Gott ist tot

 ……勝てる気がしない。余りに後ろ向きなその言葉は俺の精神をどんどん蝕んでいた。その要因は、目の前に立つ一人の男……の姿をした、無限の神。

 

「ッ……これは……」

 

「どうしようもない、か? その通り、最早この世界の生物がどうこうできる領域ではない。至極当然の話だな、私はインフィニティ……即ち神!! 神に勝てるゲームキャラなどいないッ!! 私こそ徳の象徴!! 崇め讃えよ、私こそ全能神だ!! ハハハハッ!!」

 

「クソッタレ野郎……!! っ……」

 

 もう腕が止まった、早い。また短くなっている。

 

「お前のエラーは私に効かない。つまり、それは我らを殺す忌々しい凶器から、お前を蝕む不治の病となったのだ。わかるかね?」

 

「っ、ふふ……何言ってんだ、俺は死なんぞ……お前を殺すまでは、絶対に!!」

 

「ほざけ、エラーが。負け犬はただ這いつくばって餌を乞えばいいのだ!!」

 

 奴はまた武器を変えた、今度はリンドウの斧だ。諦めるわけにはいかない、どんな状況であろうと……俺の憎しみは消えないのだから。

 

「這い蹲るのは貴様の方だァァッ!!」

 

「『インフィニティスマッシャー』」

 

「ッ……!!」

 

 奴の構えたもの以外にも、大量の斧が配置された。斧の刃が輝いて、俺を切り殺そうとしている。

 

「死ね」

 

「うぉ……っ、く!!」

 

「しぶといエラーだ、だがそうでなくては苦しめることができない。たっぷり苦しめ、エラーよ」

 

 即死の斧をどうにか躱す。振り下ろされた地面が砕け散るが、それもすぐに治っていく。奴はいつの間にか武器を変えて、こちらに向けてきていた。

 

「『インフィニティフォレスト』」

 

「なんて量だよ……!!」

 

「茨の森の中で苦しむがいい……」

 

 そう言って、奴は俺を鞭で取り囲んできた。どうにか避けようとしたものの……あっけなく捕まってしまった。

 

「ぎぃ、離せぇ……!!」

 

「……『ウィップブレード』」

 

「な……ッッ!!」

 

 茨の鞭が蛇腹剣に変わり、俺の体を引き裂いた。肉と血の花火が弾け飛び、内蔵が傷つけられる。口から血と胃液が溢れ出てきた……

 

「……終わりだな。最強のエラーも、神の前にはあっけなくひれ伏したわけだ」

 

「ぎ、ぎ……」

 

「まだ抵抗するか? しつこいやつだ」

 

 どうにか外そうとしても、外れることはない。鞭が何重にもされているのだ……その間に、腕が止まってしまった。もう動かせない……

 

「っ、っ……」

 

「悔しいか? 辛いか? それを噛み締めて死ぬがいい……ふんっ!!」

 

「がっ……」

 

 鞭が締め付けられて、一気に体が切り裂かれて……俺は無残にも、バラバラになった。

 

「無様なことだ、もう喋れんだろう?」

 

「……」

 

「だが……まだ、殺し足りんな」

 

 はぁ……? 俺がそう思った時には、もう俺の体は元に戻っていた。腕は動かないままで……

 

「なっ……」

 

「お前の体を戻した。永久に終わらぬ死のループをくれてやる……死にたければ言えよ、私は人格神だからな。その時点で殺してやるぞ!!」

 

「ふざけるなぁぁっ!!」

 

 地面を蹴り、脚先を突き刺しに行ったところで、奴はため息を吐いた。

 

「はぁ……お前に負けを認めさせようとしたのが間違いだったか。『インフィニティパニッシャー』」

 

「っ、なに……!?」

 

「貫け」

 

 ペラルゴが使っていた大きな剣が、大量に向かってくる。それは一瞬で俺の前に到達し……容易に骨ごと貫いた。腕や足が落ちてしまった……

 

「が、ぁぁ……」

 

「これだけで終わるとでも? 『インフィニティスティンガー』」

 

「……!!」

 

 声が出ない。体中に小さな剣が突き刺さって、俺は針山地獄を味わった。声帯をやられて、声も出せない。意識が遠くなっていく……

 

「まだか? いいぞ、そうでなければ痛めつける意味がない!!」

 

「うっ、く……他のエラーにも、こんな風な……仕打ちをしてきたのか!?」

 

「あぁ、セイントセブンに苦しませて殺すように言いつけておいたんだ。暇だったからな。娯楽があれば新しいシナリオも浮かびやすいと思ったんだよ……結果は成功だった、おかげで私はシナリオを大量に提供できたんだ……喜ばしいことだろう? エラーであるにも関わらず人様の役に立てるのだから!!」

 

 そうか……みんなは、こういう痛みを味わってきたんだな……痛かっただろうに、辛かっただろうに……!! 拳を握る……絶対に殺す!!

 

「お前のせいで……罪のない人達はァ!!」

 

「『罪がない』だと? お前は何一つわかっていないな、何度言えばわかるんだ? エラーは存在そのものが罪だ。ここにいることも罪……我らはそれの審判をする言わば裁判官!! お前達に死刑以外は下されない、死は避けられん!! それすらわからんとは、やはりエラーだな!!」

 

「この、クソ野郎……!!」

 

 俺がそう呟いた時に、奴はもう武器を持っていた。

 

「『インフィニティアロー』」

 

「っ、くそ……!!」

 

「逃がすか。『インフィニティバレット』」

 

 一気に、囲まれた。まだ10秒も経っていないのに、足が『止まる』。そこに矢と銃弾が一斉に襲いかかった。エラーを解除し、回復を待つしか無くなったわけだ。

 

「が……しまっ……」

 

「100個装填。『インフィニティバースト』」

 

「……!!」

 

 俺は一瞬で光に包まれ……大きな音と熱と一緒に、俺は意識を飛ばした……と思ったら、無理矢理引き戻される。

 

「辛いだろう? 死にたいと言え。そうすれば楽にしてやる」

 

「断る……!!」

 

「だったら好きなだけ苦しむといい。永久に地獄を味わい続けろ!! 時間を加速してある、寿命で死ぬことは叶わんぞ!!」

 

 奴がそう言った瞬間、俺に剣が突き刺さり……間髪を入れずに弓に貫かれて……それらが消えた。脱力感と共に血が大量に吹き出る……どんどん寒くなっていく。あの『ラミィ』と呼ばれていた人の氷魔法よりも寒い。

 

「さっさと言え。死にたいとな。そう言えば全て終わる」

 

「いや、だ、ね……」

 

「チッ……!」

 

 何度も死なない程度の攻撃が叩き込まれる。それでも諦められない……そんな言葉は全く浮かばなかった。失血死して意識が無くなる寸前に、俺は引き戻される。

 

「ぬぅぅぅ……!! 私が諦めると思うか!?」

 

「その言葉、そっくりそのまま返すぜ……!」

 

「クズめ!! 死ね!!! 死ね!!! 死ねぇぇぇぇッ!!!」

 

 奴は強い腕力に任せて、俺の体をぶち抜き……俺がジギタリスにやったように殴ってきた。何発も殴られて、体から骨が突き出て、内蔵が潰れて……体中がぐしゃぐしゃになった。

 

「言えっ!! さっさと言えよ!! 殺してくれと言えェェェ!!」

 

「は、は……だ、れが、言う、か……」

 

「ふざけるなぁぁぁッ!!」

 

 笑ってやると、奴は怒りに任せて俺の頭を潰し……俺を蘇らせた。

 

「ここまでやっても、まだお前は……!!」

 

「化け物め、ってか? 聞き飽きたな、それもう何回も聞いたぞ?」

 

「黙れ!! エラーが!! 偉そうな口を叩くなァ!!」

 

 俺はその後も、何度も殺されては蘇生させられるのを続けた。俺は輪切りにされたり、脳天から圧殺されたり、痛めつけたあとに斧で力任せに叩き割られたり……とにかくバリエーション豊かな殺され方をした。だが、俺はそれでも一切『殺してくれ』『死にたい』といった言葉が浮かばなかった。何故なら……俺の生きている目的は、目の前の神野郎を地獄に落とすことだからだ。 それをしていないのに、死ねるわけがない。奴は俺の姿勢に怒りながら、即死攻撃を続けていた……そして。

 

「『インフィニティバレット』!! 『インフィニティバレット』!!! 『インフィニティバレット』ォォ!!!」

 

「っ、が……」

 

「くそ……これならどうだ!? 『インフィニティパニッシャー』ッ!!」

 

 体中を大量の弾に撃ち抜かれ、血が吹き出て……さらに追い討ちで剣が刺さり、俺は体中ナイフ塗れになった。また蘇ったけど……疑問がある。

 

「……何故だ? もうわかっただろ、俺はそんなこと言わない。何故シナリオを解除しないんだ?」

 

「それは……ん? 何だっけ……?」

 

「……忘れたのか?」

 

 俺も少し、考えてみる。何故なのか……奴がそうしようとする理由を。そして、気づいた。奴の発言……

 

『強い能力には、代償が必要だ』

 

「……わかったぞ。お前……全員につけた代償を忘れたな? 能力を与えるにあたって、デメリットとか代償を与えたんだ!! 世界のルールだから……!!」

 

「そ、そうだった……すっかり忘れていた!! 与えた代償は……記憶データから探らなければ……」

 

 ……そんな必要はない。当ててやる。

 

「『一度決めたシナリオは自分でも逆らうことができない』か?」

 

「ッ……!? そうだ、それだ……!! そうか、だから私は……」

 

「そういえば、リンドウも自分から解除するってことはなかったな……解除されたのはウィンドウをぶつけた時だけだ」

 

 俺が強制的に、不明な方法で干渉したから能力が中断された……だけど、あいつ自身はシナリオに逆らう術を持ってない!! 本来ならデメリットですらない、自分に都合の悪いシナリオを作らなきゃいいんだから……今回だって、これだけ殺せば普通はそうなるから都合が悪いシナリオではない。でも……一つだけ計算外だったことがある。俺の怒りと憎悪だ……!!

 

「く、くそぉ……迂闊だった!! そんなこと気にする必要がないから、データの奥底に沈めてしまっていたが……こんなところで仇になるとは……!!」

 

「……他の奴らは何を代償にしたんだ?」

 

「そうだった、何を……あぁ、思い出した! それぞれ違うものを捧げさせたんだ。私はモブ以外の命を生み出すことはできないから……だが、私が立場をデバッガーにしてしまえば、『重要キャラ』になってしまう、それはこの世界のルール違反だった。だから、元々いるモブを重要キャラに変えることで代用したんだ。名前は適当に花からつけたんだが……」

 

 そうか、だから本名がなかったのか……納得。

 

「で? 代償は?」

 

「ペラルゴは、私への盲信だな……他のことを信頼できないようにした。奴は私以外全てのものを信じられなくなっている……だから、他の奴とは常に仲が悪かった」

 

「……他への信頼を奪ったわけか」

 

 神以外を信頼できない……十分代償足り得るな。

 

「リンドウのは代償に入らないだろ? 他にもなにか捧げさせたのか?」

 

「そうだ……『自分と私以外の考えを全て悪だと断じる』ようになった。つまり……『他人への尊重』を奪ったんだ」

 

「そんなのが正義の味方なわけねぇだろ……で、他は?」

 

 奴はどんどん思い出しているようだ、そんな代償があったとはな。

 

「ジギタリスは『他者への愛』を全て奪った。元々ないモブだったのでな」

 

「よくそれで愛を名乗れたな……友愛だとか言ってたが本当に免罪符にしてただけだったわけか。そして、自分ではそれが本当に『愛』だと信じている……イカれてんな」

 

「サルビアは……そうだ、『知恵』を奪ったんだ。奴は一切の努力をせず……能力のみに頼り、知能も倫理観も消えてなくなったんだ」

 

 成程。本当に知恵がないのに、賢人ぶっていたわけか。能力に頼りっきりだったのは、そういう理由で……

 

「次は……アザレアか」

 

「……アザレアからは『理性』を奪った。奴は全く我慢をしなくなり、好き放題食べ、飲み、金を使う男になったんだ」

 

「節制節制って言ってたのに、自分が真反対って……ダブスタもいいところだな」

 

 次はカルミアだが……

 

「カルミアからは……そうだ、『生きる気力』を枯渇させたんだ。それで奴は未来への希望も何もかも無くなり、私という希望に縋ることで『生きて』いたんだったな」

 

「犠牲になった者の分まで、とか何とか言ってたのに、自分は希望が全くなくて……目の前の希望に縋り付き続けてたわけか。『希望』の欠片もねぇな。グロリオはどうなんだ?」

 

「グロリオからは『闘志』を奪った……傷つく勇気も、燃え盛る闘志も一切無くなり……努力せず、私を信仰して能力とデバッガーとしての力に頼りきりになった」

 

 誰かに立ち向かうこともせず、絶対に勝てる相手としか戦わなくなったわけか。どこが勇気だ、ただの臆病者じゃねぇか。だが、能力があればこいつにとっては全てが『勝てる相手』。どんな奴にでも立ち向かえるから『勇気』か……滅茶苦茶な理論だ。能力に頼らずとも、相手が明らかに強くても、傷つくことを恐れずに立ち向かうことを選ぶのが勇気のはず。全く当てはまってねぇな……元樹や学校の皆さんはバッチリだ。本当に死んでないといいんだけど……

 

「……つまり、全員ダブスタだらけのクソ野郎になったわけだ。肩書きも主張も何もかも、矛盾しかしてねぇ。話を聞く限りだと、矛盾してねぇのはペラルゴだけだ。まぁ……矛盾してなくても、あいつは狂ってたけどな」

 

「ま、まさか無限の神ともあろうものが……墓穴を掘るとは……いや、まだだ!! 私が無敵であることに変わりはない……!! 今は5641億8712回目……何兆回でも殺してやる、いずれ絶対に殺せるはずだ……!!」

 

「無駄だって言ってんのがわかんねぇのか?」

 

 膠着には持ち込めたが……それだけだ。殺され続けることに変わりはない……どうする? 殺されながらでも考えろ。コイツは本当に無敵だ、その上でどうするか……

 

「くそったれぇぇ……!!」

 

「エラー……っぐ!!」

 

「……そうか。お前、変異しすぎて腕一本につき一秒程度しか使えなくなってるぞ」

 

 まさか……そこまでとは。急いでエラーを解除する。まずい……これでは、本当に手段が0だ……そう思っている時、とんでもないことが起きた。

 

「ぐぅぅ……!?」

 

「……頭を抑えた? まさか耐えられなくなったか!? いいぞ、そのまま死ね!!」

 

「くぅっ……」

 

 違う。これは……解除はしたが、エラーが消しきれていない。あの時と同じだ……エラーが発生して、例の眼が左にできたんだ。その時と同じように……耳障りな音が聞こえる。そして、一際痛みが強くなり……そこで、見えたのは。

 

「……なんだ? プログラムが見える……でも、今まで見えなかったものが見えるぞ?」

 

「なに……そ、その目はなんだ!? 目の中に、エラーマークが……!!」

 

「……まさか、『眼』がさらにバグったってのか?」

 

 元々バグっていた、異常な眼がもう一度バグったわけか……あれはいつも見慣れた、何度も押したボタンだ。エラーマークに似ている……そう、それは……

 

「閉じるボタンだ……」

 

「お、押すな!!」

 

「っぐ……」

 

 触れようとしたが、押せない。やはりエラーを起動しないとダメか……だが、起動する方法がない……

 

「お、押せないか……良かった……もし押せたら、私は終わりだ……驚かせおって」

 

「……くそぉっ、くそっ……!!」

 

「辛いか? なら言え、殺してくれとな!! さぁ、言うんだ!!」

 

 言わない、だが……どうしようもないってのか? そう思って……エラーで、地面を叩いた時。

 

「……!? や、やめろ!! このセーブデータそのものが……バグる!!」

 

「は……?」

 

「しまった……早く対策をしなければ……!!」

 

 どうやら、今のは世界に影響を与えているようだ。どんどんエラーの影響範囲が大きくなっている……エラーの変異が止まらない。これは最早、変異という枠に収まらない……間違いない、『進化』している。目の前にいる、自分の命を脅かし続ける者を何とかするために……俺の体が、エラーが……倒す方法を探しているんだ。何億回と殺されたから、違う形に……!

 

「ッ……俺は……あいつを殺したい……!! 誰でもいい、俺に『時間』をくれ……5分、いや……1分でいいんだ!!」

 

「くそぉ……余計なことをしおってぇ……!!」

 

「……エラー起動!!」

 

 一か八かだ。何もしなくちゃ始まらない、やってみる他ないだろ。そう思って、強く力を込めて壁を殴った。すると……

 

「ん……? 止まらない……?」

 

「そ、それは……まさか!? じょ、状態確認……やはり、エラーが他のプログラムにまで……!!」

 

「この腕は……誰の腕だ?」

 

 誰かが力をくれている。どこかの誰かが……

 

「私を憎んでいた者達……殺したエラーや、あいつらが犠牲にした生物達の残骸データに、お前と意思を同じとする『ホロメン』が……遠く離れているのに、干渉している!? 私を倒したい、その感情が……離れていても、死んでいても……お前に影響を……!!」

 

「……そういえば。ジギタリスの奴は、俺への感情や記憶まで操ってたな。それで……一応、俺と『ホロメン』の皆さんの間に繋がりはできた……そして今、世界がおかしな状況になってることで……俺は今、みんなの恨みとか全部を受けてるんだ。今度は俺へじゃなくて、お前へのだけどな……!! 死んだ人達だってそうだ、誰かに殺して欲しかった……世界に染み付いてたその怨念達が、今になって俺に流れ込んでる……!! エラーの影響でな……!! お前のそれが『インフィニティモード』なら……俺は『エラーモード』だ!!!」

 

「こ、こんなことは……有り得ん!! 都合が良すぎる、エラーとは都合の悪いものだろう!? お前にも悪影響がなければおかしいはずだ!!」

 

 何を言ってるんだ。そう思って、俺は構えをとる……こいつを憎む、みんなと一緒に。

 

「PCを蝕むエラーがあったとしよう……それはPC使う人からしたら、都合悪いだろうよ。でも……侵食してるエラーにとっては都合がいい!!! どちらも都合がいいも、都合が悪いも……戦いじゃ有り得ねぇんだよ!!!」

 

「っ……消えろぉぉ!!」

 

「……閉じるボタン……!!」

 

 それを叩くように押す。すると、案の定消えた。殴るより簡単だ……!!

 

「エラー耐性すら通用せん……閉じるボタンで終了されては、曲がりなりにも『正常な終了』として処理されてしまう……!!」

 

「そういうことだ……!! 俺……いや!! 『俺達』の恨み!!! 受けてみろぉぉッ!!!」

 

「こっちに来るんじゃない!!」

 

 そう叫んで、奴はバリアを張った。恐らく、ファイアウォールだろう。だが……

 

「ずぁぁりゃあ!!」

 

「なっ……侵食スピードが早すぎる!! また変異して……いや、違う!! 100人じゃきかない人数が……一斉に殴っている……!?」

 

「俺は今……みんなの憎しみと怒りを背負ってる!! これは誰かの拳だし、みんなの拳だ!!!」

 

 エラーモード、世界を壊す力。理不尽を叩き割り、『バグらせて』消すための力。俺は……負けない!!!

 

「き……消えろッ!! 『インフィニティバレット』!!! 『インフィニティアロー』!!! 『インフィニティパニッシャー』!!! 100個装填、『インフィニティバースト』!!!」

 

「だぁぁらぁぁ!!」

 

 パニッシャーを地面を蹴り、足先を突き刺すことで消して……次々飛んでくる矢と銃弾は、追ってきたところを一気に突っ込んで消した。そして、インフィニティバーストは……地面を一気に削り取り、地面に埋まって避けた。

 

「な、何メートル沈んだんだ……!?」

 

「うぉりゃあぁ!!」

 

「っ……!! 一瞬で出てきおった……!! 跳躍力まで全員分か!!!」

 

 そうらしい……! 頭の中で声が聞こえてくる。

 

『殺してやる……!!!』

 

『貴様のせいでぇ!!!』

 

『こいつを殺してくれ!!!』

 

 わかってる。みんな、もうひと踏ん張りだ……!

 

「こいつを殺す!! だから……一緒に殴ってくれ!!!」

 

「来るな!! 来るんじゃないッ……!!」

 

「でぇやぁぁ!!」

 

 攻撃を消して、避けて……どんどん進む。ようやく辿り着いた……!!

 

「来るなと言うのがわからんのか!? インフィニティ……」

 

「遅い!!」

 

「ッ、インフィニティウェポンが……!!」

 

 消した……これで、もう一回出す必要があるな!!

 

「特殊番号01……ぐはぁ!?」

 

「まずは腕一本……!!」

 

「く、ぅぅ……!!」

 

 こちらも、腕が一本動かなくなった。

 

「まだまだ!!」

 

「『ウィンドウシールド』!!」

 

「そんなもの……今更出したところで!!」

 

 何重にもなったそれを、地面を蹴って放ったみんなの足裏で蹴り飛ばす。ひしゃげて、表示がバグって遠くに飛んでいく……

 

「クソ……動け、動け!! 何故動かん!? 神の腕が、私は無限の神だぞ……!!」

 

「黙れ!!!」

 

「ぐぅっは!?」

 

 踏み込んで、腹を思いっきり殴る……そして、言い放つ。

 

「今のは……父さんの分だ」

 

「な、に……!!」

 

「そしてこいつは母さんの分ッ!!!」

 

 もう一発、今度は鳩尾に。

 

「ぎぃっ……!!」

 

「こいつは……お前とセイントセブンに殺された誰かの分だ!!!」

 

「ぎぎぃ……!!」

 

 まだだ……まだ、全く返し終わってない!!!

 

「これも……これもだ!! これも、これもっ!! これもだぁッ!!!」

 

「ぐふっ、がは……!! か、体がどんどん動かなくなる……侵食されているのか……!!」

 

「まだ倒れるな……お前に殺された人達の数は!! こんなもんじゃねぇぞぉ!!!」

 

 恨みを込めて、復讐を願う誰かの代わりに。勇気ある学園の人達のために。そして……俺の相棒のためにも、全員分の恨みを返さなきゃならない!!

 

「くぅぅ……こんなこと、あって、いいはずが、ない……私は……神だ、絶対神のインフィニティ、なんだ……!! 敗北など……有り得ん……私こそが、世界最強なんだ!! たった一人に……それも、エラーに撲殺されるなど……あってはならんッ!!!」

 

「一人? 違うと何度言えばわかる!? 俺は今……みんなと一緒に蹴って、殴ってるんだ!! お前が買ってきた、恨みと殺意……それのおかげで、俺は今戦えてる!! お前の死因も、恨みや殺意を買いすぎたせい……結局全員死因は、元を辿れば自分が原因。つまり、お前達は全員自滅したんだ!!! 地獄の底で復唱しろ!!!」

 

「いい加減にしろ!! 貴様のような……貴様らのような!! 下等生物共に……神は負けん!! 私こそが……可能性そのもの、無限そのものなんだ!!!」

 

 叫ぶ奴に、また拳を叩き込む。足が動かなくなった、限界は近そうだな……終わりにしよう。

 

「終わりにしてやるぞ、ゴミクズ……!! ここでお前の計画も、シナリオも、デバッグも、勇気も希望も正義も愛も……何もかも否定して、地獄に落としてやるッ!!!」

 

「こんなことは認めんぞ……負けなど有り得ん、私の勝ちは揺るがない!! 特殊番号01、インフィニティウェポン……モード、シューター!! 100個……いや、設定変更!! 1000個装填ッ!!!」

 

「みんな……これで最後だ!! 全部終わりにする!! だから……拳を貸してくれ!! 奴を殴るんだ!! 俺と一緒に、殺そう……!! あのクソ野郎の計画を終わりにしよう!!!」

 

 そう言うと……みんなの声が、また聞こえてきた。

 

『頼む、終わらせてくれ!!!』

 

『君だけが頼りなんだ!!!』

 

『あいつをぶっ殺せ!!!』

 

 まだ、声が聞こえてくる。

 

『頼んだよ、誰か知らないけどね~』

 

『ウチ達の仇……討って!!!』

 

『ころねとおがゆの仇だよ!! しばきあげパンチングだでな!!!』

 

『お願いします、幽霊さん!! あいつを殺して!!!』

 

『ここまでやったんだ、今更やれねぇなんて言うなよ?』

 

 わかってるさ……任せろ。次々に声が聞こえてくる、『私の仇を討って』『ぶん殴れ』『頼んだぞ』……そして、もう二度と聞けないはずのあの声も。

 

『頼んだぜ、樹!! あいつをぶっ倒してくれ!!!』

 

『大丈夫、できるよ……自分を信じて、ここまでだって出来たでしょ? 母さん達の仇……討ってね!!』

 

「……!!」

 

 嬉し涙を堪える……ありがとう。声を聞かせてくれて。どんな時でも背中を押してくれたよね……俺をここまで育ててくれたし、俺の心を支えてくれて……ありがとう。クソガキだった俺の面倒見てくれて、ありがとう。今、ちょっとだけ恩返しするよ……だから、一緒に殴ろう。俺達を、全ての人を見下して蹂躙することを何とも思わない……この神を!!

 

『行こうぜ、相棒!! そんなに気張るなよ、ほら……昔、一緒に言っただろ? このままじゃ俺達はおしまい、ならやることは一つだ……!! そうだろ!?』

 

「あぁ……そうだな!!」

 

 ぶん殴って!!!

 

 ぶっ殺すッ!!!

 

「ほざけぇぇぇ!! ゲームキャラがぁぁ!! 神に対して偉そうな口を利きおってェ!! 絶対に許さん!! 消えろ、今すぐ消えて無くなれ!! ゴミ共がぁぁぁ!!!」

 

「消えるのは……お前だ!!」

 

「死ね、エラーとそのお仲間!! 地球ごと消えてなくなるがいいッ!! 『インフィニティデリート』ォォォ!!!!」

 

「……イィィン……!!!」

 

 構えを取って、叫ぶ。昔から使ってきた、あの技を……みんなで。

 

 ファイトォォォ!!!!

 

「ハハハハ!! 真正面から突っ込む!? 馬鹿なことを!! そのまま消えてなくなるがいい、ワァハハハハ……は……!?」

 

「おぉぉぉぉぉ……!!!」

 

「ば、馬鹿な!? 確実に星を抉りとるくらいの力はあるというのに……それすら破られるのか!? そんな、馬鹿な……!!」

 

 何もおかしな話じゃない、何故なら……

 

「お前の自業自得だッ!!! お前が罪のない人を、エラーを殺して……関係ない人まで殺したから、今何百人……いや、何千人もの人々が俺と一緒に殴ってる!!! 後悔しろ、インフィニティ……敗因は、お前が罪のない人を殺そうと思ったからだッ!!!!」

 

「ッ……1000個装填!!」

 

「らぁぁぁっ!!!」

 

 激しい光の濁流を奴に向かって返した。奴は完全に予想外だったようで、焦っている。

 

「なっ、何故こっちに来る!? け、消さなければ……!! 攻撃中止……!! ふぅ、危なかっ……」

 

「……うぉぉらぁぁぁ!!!!」

 

「しまッ……!!」

 

 顔面に、一発。重いのをぶち込む……他の人達の拳も一緒に叩き込まれる。顔がどんどんひしゃげていく……そして、同時に……

 

「ぐぅぅがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「……お前の敗因は、もう一つあったな。お前は……いやお前達は、全員戦いを舐めていた。遊びだと思っていた、それでも勝てるからな。だけど……今回は、その姿勢が敗因だ」

 

「あ、り、えん……わ、たし、は……か、み……だ……」

 

 俺の体から、エラーが消えた。その理由は、たった一つ。奴の体や声に、激しいノイズが走り始める。

 

「さっきの何千発で、お前に俺のエラーを全部流し込んだ。俺でも、みんながいなきゃ制御できないんだ……さて、どうなるかな?」

 

「が、ぎぎ……馬鹿、な……残、機が、機、能、しな、い……侵食が、止ま、らん……認、めん、か、みは、死、な、な」

 

『Infinity system.exeは応答していません』

 

『行う操作を選んでください』

 

 押すのは迷わず、それだ。いつも通りに押して……背を向けた。そして、言い放つのだ。

 

「Infinity system.exe」

 

 奴の体が、崩れてゆく。

 

「強制終了」

 

 奴と大神官は……この世界から、完全に消滅した。

 

「っ、ぐ……」

 

 奴の復活のおかげで、体力は瀕死ラインではない……でも、動けないな。もうエラーはない……奴に全部叩き込んだから。奴は復活しようとしても、できないだろう。奴の中でも変異を続けるだろうから。

 

「父さん、母さん、元樹、みんな……やったよ……!!」

 

 俺は拳を掲げて、そう言った。もう聞こえないけど、みんなの喜ぶ声が聞こえた気がした。




 セイントインフィニティ、壊滅。インフィニティシステム、完全に破損。

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