(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
……勝てる気がしない。余りに後ろ向きなその言葉は俺の精神をどんどん蝕んでいた。その要因は、目の前に立つ一人の男……の姿をした、無限の神。
「ッ……これは……」
「どうしようもない、か? その通り、最早この世界の生物がどうこうできる領域ではない。至極当然の話だな、私はインフィニティ……即ち神!! 神に勝てるゲームキャラなどいないッ!! 私こそ徳の象徴!! 崇め讃えよ、私こそ全能神だ!! ハハハハッ!!」
「クソッタレ野郎……!! っ……」
もう腕が止まった、早い。また短くなっている。
「お前のエラーは私に効かない。つまり、それは我らを殺す忌々しい凶器から、お前を蝕む不治の病となったのだ。わかるかね?」
「っ、ふふ……何言ってんだ、俺は死なんぞ……お前を殺すまでは、絶対に!!」
「ほざけ、エラーが。負け犬はただ這いつくばって餌を乞えばいいのだ!!」
奴はまた武器を変えた、今度はリンドウの斧だ。諦めるわけにはいかない、どんな状況であろうと……俺の憎しみは消えないのだから。
「這い蹲るのは貴様の方だァァッ!!」
「『インフィニティスマッシャー』」
「ッ……!!」
奴の構えたもの以外にも、大量の斧が配置された。斧の刃が輝いて、俺を切り殺そうとしている。
「死ね」
「うぉ……っ、く!!」
「しぶといエラーだ、だがそうでなくては苦しめることができない。たっぷり苦しめ、エラーよ」
即死の斧をどうにか躱す。振り下ろされた地面が砕け散るが、それもすぐに治っていく。奴はいつの間にか武器を変えて、こちらに向けてきていた。
「『インフィニティフォレスト』」
「なんて量だよ……!!」
「茨の森の中で苦しむがいい……」
そう言って、奴は俺を鞭で取り囲んできた。どうにか避けようとしたものの……あっけなく捕まってしまった。
「ぎぃ、離せぇ……!!」
「……『ウィップブレード』」
「な……ッッ!!」
茨の鞭が蛇腹剣に変わり、俺の体を引き裂いた。肉と血の花火が弾け飛び、内蔵が傷つけられる。口から血と胃液が溢れ出てきた……
「……終わりだな。最強のエラーも、神の前にはあっけなくひれ伏したわけだ」
「ぎ、ぎ……」
「まだ抵抗するか? しつこいやつだ」
どうにか外そうとしても、外れることはない。鞭が何重にもされているのだ……その間に、腕が止まってしまった。もう動かせない……
「っ、っ……」
「悔しいか? 辛いか? それを噛み締めて死ぬがいい……ふんっ!!」
「がっ……」
鞭が締め付けられて、一気に体が切り裂かれて……俺は無残にも、バラバラになった。
「無様なことだ、もう喋れんだろう?」
「……」
「だが……まだ、殺し足りんな」
はぁ……? 俺がそう思った時には、もう俺の体は元に戻っていた。腕は動かないままで……
「なっ……」
「お前の体を戻した。永久に終わらぬ死のループをくれてやる……死にたければ言えよ、私は人格神だからな。その時点で殺してやるぞ!!」
「ふざけるなぁぁっ!!」
地面を蹴り、脚先を突き刺しに行ったところで、奴はため息を吐いた。
「はぁ……お前に負けを認めさせようとしたのが間違いだったか。『インフィニティパニッシャー』」
「っ、なに……!?」
「貫け」
ペラルゴが使っていた大きな剣が、大量に向かってくる。それは一瞬で俺の前に到達し……容易に骨ごと貫いた。腕や足が落ちてしまった……
「が、ぁぁ……」
「これだけで終わるとでも? 『インフィニティスティンガー』」
「……!!」
声が出ない。体中に小さな剣が突き刺さって、俺は針山地獄を味わった。声帯をやられて、声も出せない。意識が遠くなっていく……
「まだか? いいぞ、そうでなければ痛めつける意味がない!!」
「うっ、く……他のエラーにも、こんな風な……仕打ちをしてきたのか!?」
「あぁ、セイントセブンに苦しませて殺すように言いつけておいたんだ。暇だったからな。娯楽があれば新しいシナリオも浮かびやすいと思ったんだよ……結果は成功だった、おかげで私はシナリオを大量に提供できたんだ……喜ばしいことだろう? エラーであるにも関わらず人様の役に立てるのだから!!」
そうか……みんなは、こういう痛みを味わってきたんだな……痛かっただろうに、辛かっただろうに……!! 拳を握る……絶対に殺す!!
「お前のせいで……罪のない人達はァ!!」
「『罪がない』だと? お前は何一つわかっていないな、何度言えばわかるんだ? エラーは存在そのものが罪だ。ここにいることも罪……我らはそれの審判をする言わば裁判官!! お前達に死刑以外は下されない、死は避けられん!! それすらわからんとは、やはりエラーだな!!」
「この、クソ野郎……!!」
俺がそう呟いた時に、奴はもう武器を持っていた。
「『インフィニティアロー』」
「っ、くそ……!!」
「逃がすか。『インフィニティバレット』」
一気に、囲まれた。まだ10秒も経っていないのに、足が『止まる』。そこに矢と銃弾が一斉に襲いかかった。エラーを解除し、回復を待つしか無くなったわけだ。
「が……しまっ……」
「100個装填。『インフィニティバースト』」
「……!!」
俺は一瞬で光に包まれ……大きな音と熱と一緒に、俺は意識を飛ばした……と思ったら、無理矢理引き戻される。
「辛いだろう? 死にたいと言え。そうすれば楽にしてやる」
「断る……!!」
「だったら好きなだけ苦しむといい。永久に地獄を味わい続けろ!! 時間を加速してある、寿命で死ぬことは叶わんぞ!!」
奴がそう言った瞬間、俺に剣が突き刺さり……間髪を入れずに弓に貫かれて……それらが消えた。脱力感と共に血が大量に吹き出る……どんどん寒くなっていく。あの『ラミィ』と呼ばれていた人の氷魔法よりも寒い。
「さっさと言え。死にたいとな。そう言えば全て終わる」
「いや、だ、ね……」
「チッ……!」
何度も死なない程度の攻撃が叩き込まれる。それでも諦められない……そんな言葉は全く浮かばなかった。失血死して意識が無くなる寸前に、俺は引き戻される。
「ぬぅぅぅ……!! 私が諦めると思うか!?」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ……!」
「クズめ!! 死ね!!! 死ね!!! 死ねぇぇぇぇッ!!!」
奴は強い腕力に任せて、俺の体をぶち抜き……俺がジギタリスにやったように殴ってきた。何発も殴られて、体から骨が突き出て、内蔵が潰れて……体中がぐしゃぐしゃになった。
「言えっ!! さっさと言えよ!! 殺してくれと言えェェェ!!」
「は、は……だ、れが、言う、か……」
「ふざけるなぁぁぁッ!!」
笑ってやると、奴は怒りに任せて俺の頭を潰し……俺を蘇らせた。
「ここまでやっても、まだお前は……!!」
「化け物め、ってか? 聞き飽きたな、それもう何回も聞いたぞ?」
「黙れ!! エラーが!! 偉そうな口を叩くなァ!!」
俺はその後も、何度も殺されては蘇生させられるのを続けた。俺は輪切りにされたり、脳天から圧殺されたり、痛めつけたあとに斧で力任せに叩き割られたり……とにかくバリエーション豊かな殺され方をした。だが、俺はそれでも一切『殺してくれ』『死にたい』といった言葉が浮かばなかった。何故なら……俺の生きている目的は、目の前の神野郎を地獄に落とすことだからだ。 それをしていないのに、死ねるわけがない。奴は俺の姿勢に怒りながら、即死攻撃を続けていた……そして。
「『インフィニティバレット』!! 『インフィニティバレット』!!! 『インフィニティバレット』ォォ!!!」
「っ、が……」
「くそ……これならどうだ!? 『インフィニティパニッシャー』ッ!!」
体中を大量の弾に撃ち抜かれ、血が吹き出て……さらに追い討ちで剣が刺さり、俺は体中ナイフ塗れになった。また蘇ったけど……疑問がある。
「……何故だ? もうわかっただろ、俺はそんなこと言わない。何故シナリオを解除しないんだ?」
「それは……ん? 何だっけ……?」
「……忘れたのか?」
俺も少し、考えてみる。何故なのか……奴がそうしようとする理由を。そして、気づいた。奴の発言……
『強い能力には、代償が必要だ』
「……わかったぞ。お前……全員につけた代償を忘れたな? 能力を与えるにあたって、デメリットとか代償を与えたんだ!! 世界のルールだから……!!」
「そ、そうだった……すっかり忘れていた!! 与えた代償は……記憶データから探らなければ……」
……そんな必要はない。当ててやる。
「『一度決めたシナリオは自分でも逆らうことができない』か?」
「ッ……!? そうだ、それだ……!! そうか、だから私は……」
「そういえば、リンドウも自分から解除するってことはなかったな……解除されたのはウィンドウをぶつけた時だけだ」
俺が強制的に、不明な方法で干渉したから能力が中断された……だけど、あいつ自身はシナリオに逆らう術を持ってない!! 本来ならデメリットですらない、自分に都合の悪いシナリオを作らなきゃいいんだから……今回だって、これだけ殺せば普通はそうなるから都合が悪いシナリオではない。でも……一つだけ計算外だったことがある。俺の怒りと憎悪だ……!!
「く、くそぉ……迂闊だった!! そんなこと気にする必要がないから、データの奥底に沈めてしまっていたが……こんなところで仇になるとは……!!」
「……他の奴らは何を代償にしたんだ?」
「そうだった、何を……あぁ、思い出した! それぞれ違うものを捧げさせたんだ。私はモブ以外の命を生み出すことはできないから……だが、私が立場をデバッガーにしてしまえば、『重要キャラ』になってしまう、それはこの世界のルール違反だった。だから、元々いるモブを重要キャラに変えることで代用したんだ。名前は適当に花からつけたんだが……」
そうか、だから本名がなかったのか……納得。
「で? 代償は?」
「ペラルゴは、私への盲信だな……他のことを信頼できないようにした。奴は私以外全てのものを信じられなくなっている……だから、他の奴とは常に仲が悪かった」
「……他への信頼を奪ったわけか」
神以外を信頼できない……十分代償足り得るな。
「リンドウのは代償に入らないだろ? 他にもなにか捧げさせたのか?」
「そうだ……『自分と私以外の考えを全て悪だと断じる』ようになった。つまり……『他人への尊重』を奪ったんだ」
「そんなのが正義の味方なわけねぇだろ……で、他は?」
奴はどんどん思い出しているようだ、そんな代償があったとはな。
「ジギタリスは『他者への愛』を全て奪った。元々ないモブだったのでな」
「よくそれで愛を名乗れたな……友愛だとか言ってたが本当に免罪符にしてただけだったわけか。そして、自分ではそれが本当に『愛』だと信じている……イカれてんな」
「サルビアは……そうだ、『知恵』を奪ったんだ。奴は一切の努力をせず……能力のみに頼り、知能も倫理観も消えてなくなったんだ」
成程。本当に知恵がないのに、賢人ぶっていたわけか。能力に頼りっきりだったのは、そういう理由で……
「次は……アザレアか」
「……アザレアからは『理性』を奪った。奴は全く我慢をしなくなり、好き放題食べ、飲み、金を使う男になったんだ」
「節制節制って言ってたのに、自分が真反対って……ダブスタもいいところだな」
次はカルミアだが……
「カルミアからは……そうだ、『生きる気力』を枯渇させたんだ。それで奴は未来への希望も何もかも無くなり、私という希望に縋ることで『生きて』いたんだったな」
「犠牲になった者の分まで、とか何とか言ってたのに、自分は希望が全くなくて……目の前の希望に縋り付き続けてたわけか。『希望』の欠片もねぇな。グロリオはどうなんだ?」
「グロリオからは『闘志』を奪った……傷つく勇気も、燃え盛る闘志も一切無くなり……努力せず、私を信仰して能力とデバッガーとしての力に頼りきりになった」
誰かに立ち向かうこともせず、絶対に勝てる相手としか戦わなくなったわけか。どこが勇気だ、ただの臆病者じゃねぇか。だが、能力があればこいつにとっては全てが『勝てる相手』。どんな奴にでも立ち向かえるから『勇気』か……滅茶苦茶な理論だ。能力に頼らずとも、相手が明らかに強くても、傷つくことを恐れずに立ち向かうことを選ぶのが勇気のはず。全く当てはまってねぇな……元樹や学校の皆さんはバッチリだ。本当に死んでないといいんだけど……
「……つまり、全員ダブスタだらけのクソ野郎になったわけだ。肩書きも主張も何もかも、矛盾しかしてねぇ。話を聞く限りだと、矛盾してねぇのはペラルゴだけだ。まぁ……矛盾してなくても、あいつは狂ってたけどな」
「ま、まさか無限の神ともあろうものが……墓穴を掘るとは……いや、まだだ!! 私が無敵であることに変わりはない……!! 今は5641億8712回目……何兆回でも殺してやる、いずれ絶対に殺せるはずだ……!!」
「無駄だって言ってんのがわかんねぇのか?」
膠着には持ち込めたが……それだけだ。殺され続けることに変わりはない……どうする? 殺されながらでも考えろ。コイツは本当に無敵だ、その上でどうするか……
「くそったれぇぇ……!!」
「エラー……っぐ!!」
「……そうか。お前、変異しすぎて腕一本につき一秒程度しか使えなくなってるぞ」
まさか……そこまでとは。急いでエラーを解除する。まずい……これでは、本当に手段が0だ……そう思っている時、とんでもないことが起きた。
「ぐぅぅ……!?」
「……頭を抑えた? まさか耐えられなくなったか!? いいぞ、そのまま死ね!!」
「くぅっ……」
違う。これは……解除はしたが、エラーが消しきれていない。あの時と同じだ……エラーが発生して、例の眼が左にできたんだ。その時と同じように……耳障りな音が聞こえる。そして、一際痛みが強くなり……そこで、見えたのは。
「……なんだ? プログラムが見える……でも、今まで見えなかったものが見えるぞ?」
「なに……そ、その目はなんだ!? 目の中に、エラーマークが……!!」
「……まさか、『眼』がさらにバグったってのか?」
元々バグっていた、異常な眼がもう一度バグったわけか……あれはいつも見慣れた、何度も押したボタンだ。エラーマークに似ている……そう、それは……
「閉じるボタンだ……」
「お、押すな!!」
「っぐ……」
触れようとしたが、押せない。やはりエラーを起動しないとダメか……だが、起動する方法がない……
「お、押せないか……良かった……もし押せたら、私は終わりだ……驚かせおって」
「……くそぉっ、くそっ……!!」
「辛いか? なら言え、殺してくれとな!! さぁ、言うんだ!!」
言わない、だが……どうしようもないってのか? そう思って……エラーで、地面を叩いた時。
「……!? や、やめろ!! このセーブデータそのものが……バグる!!」
「は……?」
「しまった……早く対策をしなければ……!!」
どうやら、今のは世界に影響を与えているようだ。どんどんエラーの影響範囲が大きくなっている……エラーの変異が止まらない。これは最早、変異という枠に収まらない……間違いない、『進化』している。目の前にいる、自分の命を脅かし続ける者を何とかするために……俺の体が、エラーが……倒す方法を探しているんだ。何億回と殺されたから、違う形に……!
「ッ……俺は……あいつを殺したい……!! 誰でもいい、俺に『時間』をくれ……5分、いや……1分でいいんだ!!」
「くそぉ……余計なことをしおってぇ……!!」
「……エラー起動!!」
一か八かだ。何もしなくちゃ始まらない、やってみる他ないだろ。そう思って、強く力を込めて壁を殴った。すると……
「ん……? 止まらない……?」
「そ、それは……まさか!? じょ、状態確認……やはり、エラーが他のプログラムにまで……!!」
「この腕は……誰の腕だ?」
誰かが力をくれている。どこかの誰かが……
「私を憎んでいた者達……殺したエラーや、あいつらが犠牲にした生物達の残骸データに、お前と意思を同じとする『ホロメン』が……遠く離れているのに、干渉している!? 私を倒したい、その感情が……離れていても、死んでいても……お前に影響を……!!」
「……そういえば。ジギタリスの奴は、俺への感情や記憶まで操ってたな。それで……一応、俺と『ホロメン』の皆さんの間に繋がりはできた……そして今、世界がおかしな状況になってることで……俺は今、みんなの恨みとか全部を受けてるんだ。今度は俺へじゃなくて、お前へのだけどな……!! 死んだ人達だってそうだ、誰かに殺して欲しかった……世界に染み付いてたその怨念達が、今になって俺に流れ込んでる……!! エラーの影響でな……!! お前のそれが『インフィニティモード』なら……俺は『エラーモード』だ!!!」
「こ、こんなことは……有り得ん!! 都合が良すぎる、エラーとは都合の悪いものだろう!? お前にも悪影響がなければおかしいはずだ!!」
何を言ってるんだ。そう思って、俺は構えをとる……こいつを憎む、みんなと一緒に。
「PCを蝕むエラーがあったとしよう……それはPC使う人からしたら、都合悪いだろうよ。でも……侵食してるエラーにとっては都合がいい!!! どちらも都合がいいも、都合が悪いも……戦いじゃ有り得ねぇんだよ!!!」
「っ……消えろぉぉ!!」
「……閉じるボタン……!!」
それを叩くように押す。すると、案の定消えた。殴るより簡単だ……!!
「エラー耐性すら通用せん……閉じるボタンで終了されては、曲がりなりにも『正常な終了』として処理されてしまう……!!」
「そういうことだ……!! 俺……いや!! 『俺達』の恨み!!! 受けてみろぉぉッ!!!」
「こっちに来るんじゃない!!」
そう叫んで、奴はバリアを張った。恐らく、ファイアウォールだろう。だが……
「ずぁぁりゃあ!!」
「なっ……侵食スピードが早すぎる!! また変異して……いや、違う!! 100人じゃきかない人数が……一斉に殴っている……!?」
「俺は今……みんなの憎しみと怒りを背負ってる!! これは誰かの拳だし、みんなの拳だ!!!」
エラーモード、世界を壊す力。理不尽を叩き割り、『バグらせて』消すための力。俺は……負けない!!!
「き……消えろッ!! 『インフィニティバレット』!!! 『インフィニティアロー』!!! 『インフィニティパニッシャー』!!! 100個装填、『インフィニティバースト』!!!」
「だぁぁらぁぁ!!」
パニッシャーを地面を蹴り、足先を突き刺すことで消して……次々飛んでくる矢と銃弾は、追ってきたところを一気に突っ込んで消した。そして、インフィニティバーストは……地面を一気に削り取り、地面に埋まって避けた。
「な、何メートル沈んだんだ……!?」
「うぉりゃあぁ!!」
「っ……!! 一瞬で出てきおった……!! 跳躍力まで全員分か!!!」
そうらしい……! 頭の中で声が聞こえてくる。
『殺してやる……!!!』
『貴様のせいでぇ!!!』
『こいつを殺してくれ!!!』
わかってる。みんな、もうひと踏ん張りだ……!
「こいつを殺す!! だから……一緒に殴ってくれ!!!」
「来るな!! 来るんじゃないッ……!!」
「でぇやぁぁ!!」
攻撃を消して、避けて……どんどん進む。ようやく辿り着いた……!!
「来るなと言うのがわからんのか!? インフィニティ……」
「遅い!!」
「ッ、インフィニティウェポンが……!!」
消した……これで、もう一回出す必要があるな!!
「特殊番号01……ぐはぁ!?」
「まずは腕一本……!!」
「く、ぅぅ……!!」
こちらも、腕が一本動かなくなった。
「まだまだ!!」
「『ウィンドウシールド』!!」
「そんなもの……今更出したところで!!」
何重にもなったそれを、地面を蹴って放ったみんなの足裏で蹴り飛ばす。ひしゃげて、表示がバグって遠くに飛んでいく……
「クソ……動け、動け!! 何故動かん!? 神の腕が、私は無限の神だぞ……!!」
「黙れ!!!」
「ぐぅっは!?」
踏み込んで、腹を思いっきり殴る……そして、言い放つ。
「今のは……父さんの分だ」
「な、に……!!」
「そしてこいつは母さんの分ッ!!!」
もう一発、今度は鳩尾に。
「ぎぃっ……!!」
「こいつは……お前とセイントセブンに殺された誰かの分だ!!!」
「ぎぎぃ……!!」
まだだ……まだ、全く返し終わってない!!!
「これも……これもだ!! これも、これもっ!! これもだぁッ!!!」
「ぐふっ、がは……!! か、体がどんどん動かなくなる……侵食されているのか……!!」
「まだ倒れるな……お前に殺された人達の数は!! こんなもんじゃねぇぞぉ!!!」
恨みを込めて、復讐を願う誰かの代わりに。勇気ある学園の人達のために。そして……俺の相棒のためにも、全員分の恨みを返さなきゃならない!!
「くぅぅ……こんなこと、あって、いいはずが、ない……私は……神だ、絶対神のインフィニティ、なんだ……!! 敗北など……有り得ん……私こそが、世界最強なんだ!! たった一人に……それも、エラーに撲殺されるなど……あってはならんッ!!!」
「一人? 違うと何度言えばわかる!? 俺は今……みんなと一緒に蹴って、殴ってるんだ!! お前が買ってきた、恨みと殺意……それのおかげで、俺は今戦えてる!! お前の死因も、恨みや殺意を買いすぎたせい……結局全員死因は、元を辿れば自分が原因。つまり、お前達は全員自滅したんだ!!! 地獄の底で復唱しろ!!!」
「いい加減にしろ!! 貴様のような……貴様らのような!! 下等生物共に……神は負けん!! 私こそが……可能性そのもの、無限そのものなんだ!!!」
叫ぶ奴に、また拳を叩き込む。足が動かなくなった、限界は近そうだな……終わりにしよう。
「終わりにしてやるぞ、ゴミクズ……!! ここでお前の計画も、シナリオも、デバッグも、勇気も希望も正義も愛も……何もかも否定して、地獄に落としてやるッ!!!」
「こんなことは認めんぞ……負けなど有り得ん、私の勝ちは揺るがない!! 特殊番号01、インフィニティウェポン……モード、シューター!! 100個……いや、設定変更!! 1000個装填ッ!!!」
「みんな……これで最後だ!! 全部終わりにする!! だから……拳を貸してくれ!! 奴を殴るんだ!! 俺と一緒に、殺そう……!! あのクソ野郎の計画を終わりにしよう!!!」
そう言うと……みんなの声が、また聞こえてきた。
『頼む、終わらせてくれ!!!』
『君だけが頼りなんだ!!!』
『あいつをぶっ殺せ!!!』
まだ、声が聞こえてくる。
『頼んだよ、誰か知らないけどね~』
『ウチ達の仇……討って!!!』
『ころねとおがゆの仇だよ!! しばきあげパンチングだでな!!!』
『お願いします、幽霊さん!! あいつを殺して!!!』
『ここまでやったんだ、今更やれねぇなんて言うなよ?』
わかってるさ……任せろ。次々に声が聞こえてくる、『私の仇を討って』『ぶん殴れ』『頼んだぞ』……そして、もう二度と聞けないはずのあの声も。
『頼んだぜ、樹!! あいつをぶっ倒してくれ!!!』
『大丈夫、できるよ……自分を信じて、ここまでだって出来たでしょ? 母さん達の仇……討ってね!!』
「……!!」
嬉し涙を堪える……ありがとう。声を聞かせてくれて。どんな時でも背中を押してくれたよね……俺をここまで育ててくれたし、俺の心を支えてくれて……ありがとう。クソガキだった俺の面倒見てくれて、ありがとう。今、ちょっとだけ恩返しするよ……だから、一緒に殴ろう。俺達を、全ての人を見下して蹂躙することを何とも思わない……この神を!!
『行こうぜ、相棒!! そんなに気張るなよ、ほら……昔、一緒に言っただろ? このままじゃ俺達はおしまい、ならやることは一つだ……!! そうだろ!?』
「あぁ……そうだな!!」
ぶん殴って!!!
ぶっ殺すッ!!!
「ほざけぇぇぇ!! ゲームキャラがぁぁ!! 神に対して偉そうな口を利きおってェ!! 絶対に許さん!! 消えろ、今すぐ消えて無くなれ!! ゴミ共がぁぁぁ!!!」
「消えるのは……お前だ!!」
「死ね、エラーとそのお仲間!! 地球ごと消えてなくなるがいいッ!! 『インフィニティデリート』ォォォ!!!!」
「……イィィン……!!!」
構えを取って、叫ぶ。昔から使ってきた、あの技を……みんなで。
ファイトォォォ!!!!
「ハハハハ!! 真正面から突っ込む!? 馬鹿なことを!! そのまま消えてなくなるがいい、ワァハハハハ……は……!?」
「おぉぉぉぉぉ……!!!」
「ば、馬鹿な!? 確実に星を抉りとるくらいの力はあるというのに……それすら破られるのか!? そんな、馬鹿な……!!」
何もおかしな話じゃない、何故なら……
「お前の自業自得だッ!!! お前が罪のない人を、エラーを殺して……関係ない人まで殺したから、今何百人……いや、何千人もの人々が俺と一緒に殴ってる!!! 後悔しろ、インフィニティ……敗因は、お前が罪のない人を殺そうと思ったからだッ!!!!」
「ッ……1000個装填!!」
「らぁぁぁっ!!!」
激しい光の濁流を奴に向かって返した。奴は完全に予想外だったようで、焦っている。
「なっ、何故こっちに来る!? け、消さなければ……!! 攻撃中止……!! ふぅ、危なかっ……」
「……うぉぉらぁぁぁ!!!!」
「しまッ……!!」
顔面に、一発。重いのをぶち込む……他の人達の拳も一緒に叩き込まれる。顔がどんどんひしゃげていく……そして、同時に……
「ぐぅぅがぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「……お前の敗因は、もう一つあったな。お前は……いやお前達は、全員戦いを舐めていた。遊びだと思っていた、それでも勝てるからな。だけど……今回は、その姿勢が敗因だ」
「あ、り、えん……わ、たし、は……か、み……だ……」
俺の体から、エラーが消えた。その理由は、たった一つ。奴の体や声に、激しいノイズが走り始める。
「さっきの何千発で、お前に俺のエラーを全部流し込んだ。俺でも、みんながいなきゃ制御できないんだ……さて、どうなるかな?」
「が、ぎぎ……馬鹿、な……残、機が、機、能、しな、い……侵食が、止ま、らん……認、めん、か、みは、死、な、な」
『Infinity system.exeは応答していません』
『行う操作を選んでください』
押すのは迷わず、それだ。いつも通りに押して……背を向けた。そして、言い放つのだ。
「Infinity system.exe」
奴の体が、崩れてゆく。
「強制終了」
奴と大神官は……この世界から、完全に消滅した。
「っ、ぐ……」
奴の復活のおかげで、体力は瀕死ラインではない……でも、動けないな。もうエラーはない……奴に全部叩き込んだから。奴は復活しようとしても、できないだろう。奴の中でも変異を続けるだろうから。
「父さん、母さん、元樹、みんな……やったよ……!!」
俺は拳を掲げて、そう言った。もう聞こえないけど、みんなの喜ぶ声が聞こえた気がした。
セイントインフィニティ、壊滅。インフィニティシステム、完全に破損。