(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
襲いかかってくるグロリオを迎え撃つために、戦闘態勢をとる。まずは……
「……!」
「技番号678番、ねこだましか……くだらんな。メッセージウィンドウがそんな所にあるのが、『エラー』である動かぬ証拠だ……それでは視界も遮られるだろうに……普通は、遮らない場所に自動で表示されるものだぞ」
「効かない……!?」
技番号……? そう思っている間もなく、メッセージウィンドウに視界が塞がれて……殴られた。なんて威力だ……機械のMAXパワーの2倍はある。肺の空気を吐き出して、地面に倒れ込んだ。奴のメッセージウィンドウは、目の前ではないらしいな……俺は見えないけど。奴は見えるらしい……『完全版』は見えるってことか?
「ぐっ、は……」
「システムアクセス……物質変更。547番」
「な、に……?」
地面に手を置いて、何かを握りしめて引き抜いた……拳につける武器だ。出した? どこから?
「デバッガーの特権だ……どんな物でも、無機物を同質量集めれば、好きな番号に変更できる。バグったモンスターや、人間の退治をしなければならんこともあるからな……神が我らに与えた力さ」
「その神の、名前は……!?」
「インフィニティシステム……世界の創造主にして、唯一神。我々はそれに選ばれた、あの女の人も『資格』を持っていた! 儀式をすれば、今すぐにでも、真実を見られるようになっていたのに……邪魔をしおって!!」
何が真実だ……!!
「それで俺は、無気力になったんだぞ……自分も友達も、家族も全部プログラムで、ゲームだなんて知ったら……人間は耐えられんぞ、そんなこともわからんのか!?」
「その時は仕方ないさ……そいつの心が弱かったということだ。自己責任だよ、耐えるだけの意思すらもない軟弱者に用は無い。彼女ならきっと耐えられるさ、私は信じている!」
「この、野郎……それで一体、何人の心が壊れた!?」
クソ野郎の部下なだけあって、いい性格してるな……! 一体、そうやって何人を絶望させてきたんだ……?
「いちいち覚えてなんかいるか、軟弱者のことなど。思い出すだけで反吐が出るのだ……生気を失った顔も、絶望した顔も……泣き叫ぶ顔も!! 全て憎しみに火をつける! せっかく!! せっかく現実を教えてやったというのにィ!! 恩知らず共めがァァァ!!」
「……人助けに、見返りを求めるんじゃねぇ……こっちが勝手にやって、報酬をもらうなんて……おこがましいと思わねぇのか!?」
「全く? ゲームの住人から、世界を俯瞰する立場に変えてやろうというのだから、寧ろ感謝して欲しいものだ。『覚悟』くらい、誰でもできるだろ? 落ちこぼれが落ちるべくして落ちたんだ、自然界では当然のことだろうに。社会だってそうだ、能力のない者は野垂れ死ぬ……『覚悟』する能力のないものが死ぬのは普通のことじゃないか? それの一体何が悪い?」
真実の押し売り。こいつがやってるのはそれだ。知らない方がいい真実を無理矢理押し付けて、覚悟を強制し……脱落した者に逆ギレする。最悪すぎるだろ……!! 能力の有る無しは関係ない、それどころか能力のある者が落ちるかもしれないんだ。だって……これまで必死にしてきた努力も、強くなるために頑張ってきていても、赤ちゃんが生まれて、この上なく幸せでも……!! それをゲームだと、プログラムの塊だと突きつけて、どん底に突き落とす。そしてどん底から戻って来れなかったものをゴミのように扱う。
「……!!」
「ゴミが吠えているな……同類のために吠えるのは当然か。いいか、よく聞けよ? お前は、この世界の『エラー』なんだ。本来いてはいけない立場に『入ってしまった』せいで、バグを取り除けない……だから、我々が排除しに来ているのだよ。お前が消えなければ、『主人公』が活躍できないのだ。お前はモブAでなければならないのに、それがメインの場面にしゃしゃり出てきているのだ!! お前の意志とは関係なくな。だから、お前には消えてもらう……このゲームを正常に戻すために! 他の方法はないのだ、自己犠牲をしてくれ……『主人公』らしくな!!」
「……」
あぁ、どうしよう。こいつがクソ野郎と同じくらい憎い。『デバッガー』だとか名乗って、『バグ』が発生した相手を『デバッグ』する。その相手は何も知らない、何も悪くないのに、突然人権を奪われて殺されるんだ。抵抗しても強すぎる力でねじ伏せられる。せっかく幸せになっていたのに……自分の悪意を制御して、小さくとも幸せを掴んでいたのに。
それが壊される、『デバッグ』の名のもとに。『正義』や『勇気』の名のもとに……ふざけるな。なんで、そんな目に遭わなきゃならないんだよ。生まれてきて、普通に暮らしてたら……突然『お前はバグったからデバッグする』そう言われて、命を奪われる。それは『デバッグ』する側からすれば……正にアリを一匹潰すようなものなのだろう。だが俺達にとっては、この世界が現実だ。
現実の人達を『勇気』の大義名分を掲げて、次々と命を刈り取り……存在に唾を吐く。何もしてないのに、『エラーが起きた』という意味不明な理由で。その人達の苦しみがわかる……俺も今、そうされそうになっているから。自分でも迷惑してる変な景色を見てたら、『お前は存在しちゃいけない』と言われて殺される。ふざけるな、何が正義だ。
「わかっただろ、『主人公』クン? 君は最後に活躍して死ぬんだ、世界を平和にするためにな。わかってくれるだろ? 最後に正義の味方として死ねるんだ、このままゴミ以下の存在として生き続けるより、よっぽどいいだろ? ほら、死んでくれよ……なぁ?」
「……今までの言葉、そっくりそのままお前に返してやるよ」
「……何だとォ?」
強く握りすぎて、手の平の皮が裂ける。『勇気』だかなんだか知らないが……!!
「貴様らは大義名分を掲げて殺戮を行う、テロ犯と同じだ! 何が勇気だよ、大量殺人のどこに勇気がある!? お前らこそ平和のために犠牲になれ!! 本当に覚悟がないのはテメェらだろうがよ!! 俺達と同じ立場に立たず、意味不明な能力で蹂躙し……!! 『エラー』に対して楽しく正義を振るう!! twitterの誹謗中傷と何一つ変わらん!! 匿名の……自分達が無敵の状態で、人を殺せる凶器を振るう!! 何が違うんだ!?」
「……言わせておけば、いい気になりやがって!! それも、生物以下のエラー如きが!!」
「生物以下はテメェらの方だ……他人のエラーを疑う前に、自分達の脳内のエラーを疑ってみたらどうなんだ! えぇっ!? 暴力以外何もできない正義の味方は、正義の味方じゃなくてただの殺戮マシンだ!!」
俺がそう言うと……奴は激しく歯軋りをし出した。怒り狂っているらしい……
「私を怒らせて、そんなに苦しんで死にたいのか……!?」
「やってみろよ……お前に勝てなきゃ、神様には勝てそうにないからな!!」
「上等だクソガキィィィィッ!! アイテム番号948番、数量3!!」
奴が怒り狂いながら地面に手を置くと、また何か出てきた……メッセージウィンドウが消えた目の前にあったのは、仕込み銃だ。ジャンプして避ける……
「私の力を見せてやるッ! 『Infinity Blessing』起動!!」
「……!」
「神のお力をお借りします……! スキル『Brave Striker』!!」
なんだ……? 何が起こる? そう思っていると、凄まじい勢いでHPが増えていっている。どこまでも増えて……意味不明な数値になった後、止まった。
「……!?」
「現在HP……1500無量大数だ。神から授かった無敵の力……! これがある限り、私は絶対に死ぬことはない!! 腕は取れないし、首も飛ばせない……HPが残っている限りはな!! 殺せるものなら殺してみるがいい、エラー如きが!!」
「……!!」
やってやるさ……! そう思って走り出し、マッハパンチをぶち込んだ……数値に変化がない? そんなはずない、そう思って他の技も次々叩き込む。
「残念だが現実だぞ……『Infinity Blessing』、神の祝福……我々の切り札で、滅多なことでは使わんのだが……これを見られたことをあの世で自慢するのだな……!! HPだけではない、他の数値も大幅に上がっているのだ……格が違うんだよ、格が」
「……!」
「痛くも痒くもないな~」
どれだけ叩き込んでも、全く応えない……無敵かよ……!!
「そらっ」
「っ、か……ぁ……?」
「拳が早すぎて、一発も見えなかったか? 今、十発叩き込んだぞ」
体が凹む。骨が砕け散って体を突き破る……血反吐を吐いた。もう喋れない……嘘だろ、こんなところで終わりなのか。こんな屑に殺されるのか?
「……」
「言ったよな、楽には殺さんと……」
「……っ、がぁ!!」
守るものがなくなり、内蔵に直接ダメージが入る。血反吐が止まらないし、貧血のせいで意識も保てない。上から踏み躙られる……
「あぁ、楽しいな……やはりエラーを蹂躙する時程、楽しい時はない。どんなに抵抗をしていても最後には悲鳴を上げ、命乞いをし、泣き叫んで救いを乞う……それを拒否した時のあの顔が、本当に気持ちがいい……!! エラーになったことを後悔しながら死ぬんだ……存在そのものが罪のエラーにはお似合いの死に方だなぁ! ウヒヒヒヒヒヒッ!!」
もう、何を言っているかも聞き取れない。悔しい、凄まじく……なんで、負けなきゃならないんだ。こんな奴に殺されなきゃならないんだ……俺じゃない。罪のない人が、食べるのでもない動物が……クソ野郎とその部下に、蹂躙され続ける。人間以下として扱われ続ける……大義名分を掲げて。次々、弱い攻撃が叩き込まれる……激痛と共に。
「く、ぅ……」
「まだやる気なのか……? ここまでやっても、命乞いをせんとはな。つまらんエラーだ、生物以下が価値を得られる、唯一のチャンスだというのに……いや、お前は違うか。世界のために、自己犠牲するんだもんな? あぁ、感涙もののストーリーだな!! 世界のために主人公は自己犠牲をして、この世界は平和になり……新しい物語が始まるのでした! めでたしめでたし……泣けるじゃないか! 感謝しろ……お前は最高の主人公になるんだ!! 私のおかげでなァ!! ウヒィッヒッヒッヒッヒ!!」
「ぎぃ……!」
……死んでたまるか……そう思って、俺は左の拳を握りしめた……それと同時に、プログラムを見るために右目を閉じる時のように左目を強く閉じた。その時だった……
『部位:右目に割り当てられた動作が存在しません』
「……ぁ?」
『Programeye.exeが存在しません』
次々と耳障りな音を立てて、ウィンドウが出てくる。赤いしいたけのようなマークのウィンドウが、俺を囲い込んだ。奴の動作が止まっている……処理中だからか? 奴は普通なら右目で見るものだ、と言ってたし……『普通なら右目で実行するものが無理矢理左目に移されている』のか。だが、元々存在するはずの右目にも実行プログラムが残っていた。空っぽになって使い物にならないプログラムが!!
『エラーが発生しています』
『正常に処理できません』
『エラー要因Character削除……失敗しました』
ウィンドウが増え続ける、何も見えなくなる程に。
『削除失敗』
『削除失敗』
『Fatal error!』
俺の体が崩れている……いや、違う。バグっているんだ。ウィンドウが体を覆い尽くす……傷口すらも『error』になり、塞がっていく。HP残量なんて、多分ないはずなのに……体が動く。
「……なっ、立っただと!? そのHP表示は、一体なんだ……!? 文字化けしている……!?」
「……完全版のその目で見てみろよ」
「……これはなんだ!? ウィンドウが大量に体を覆って……体がエラーだらけだぞ!? ここまでのエラーの量なら、神の削除システムが働くはずなのに……!」
「ごちゃごちゃ言ってないで……構えろよ! 第2ラウンドだぜ!!」
そう言った途端、視界を塞ぐメッセージウィンドウ……邪魔だ!! そう思って殴ると、ウィンドウにノイズが走って見えなくなり……掴んで、後ろに投げた。
「目障りだ!!」
「な……メッセージウィンドウが壊れた!? 何故触れられる!? ……そうか! 貴様は存在そのものがエラーで、違うバグまで持っている……その状態にエラーを重ねがけしたことにより、エラーの量が限界を超えているんだ……だが! お前は立場が『主人公』だから、削除ができない!! 本来なら、エラーが重なるなど有り得ないが……貴様の立場というエラーに、『眼』やウィンドウのエラーで満杯だったのに……そこへ、さらにエラーが重なったせいで、前代未聞の状態になっているのか!!」
「ご説明どうも!!」
一撃、ようやく入ったな……HPは変わらない、だが……殴った腕にウィンドウが出た。
「う、動かん……腕が! 嘘だ、今ので骨が折れたとでも……!? いや、違う……まさか、バグっているのか!? お前は……バグそのもの……!! く、来るな!! 物質変更、982番!! 喰らえ!!」
「どりゃあ!!」
「殴られた爆弾がバグって消えた!? まずい、こいつに殴られると物も生物も等しくバグる!! くそ、こいつだって体を無理矢理バグらせているんだ……長くは持たないはず!!」
爆弾のプログラムをエラーで止めて、進む。絶対にこの場で仕留めてやる。地面を蹴りつけて、一気に接敵する。
「マッハパンチ!!」
「ぐぅ……し、しまった……! 今度は足が……!」
「メガトンキック!!」
その場で思い切り地面を蹴り、膝を左足に突き刺す。両足とも止まった……! これで、動けないな!!
「しまっ……!」
「こいつで、トドメだ……!!」
「ひっ、ま、待ってくれ……! 私は……!!」
事情など聞かない、聞いてやる義理はないし……
「お前はそう言って命乞いした奴を……一体何人殺したんだッ!!」
「ひぃ……! か、神よ! 助け……」
「イン……ファイトォォォ!!」
殴る蹴るの雨あられを浴びせると……体中に次々とウィンドウが浮かんでいく。
「あぎりゃぶべぼばぁぁぁぁ!!」
「最後に、もう一発……!! オラァァ!!」
「と、まる……わた、し、が……」
HPは減っていない、何一つ変わっていない。奴は無敵だったな……『通常のプログラム内』においては。通常のプログラムは、絶対にエラーに弱いのだ。グロリオの前に、ウィンドウが大きく表示された。
『glorio.exeは応答していません』
『行う動作を選んでください』
『プログラムの応答を待ちます』
次の選択肢。俺は迷わず、それを殴りつけて押した。
『プログラムを終了する』
「……Glorio.exe、強制終了」
『正常に終了されました』
そう表示されて……グロリオは、まるで元からその場にいなかったかのように消滅した。何の痕跡も残さずに……
「……終わった、か」
解除するにはどうするのだろうか……そう思って、右目を閉じてみると……すぐに元に戻った。傷口も元に戻ったが……
「……っ、がは」
「警察だ、動くな……っ!? くそ、逃げられたか……! カメラ映像などがないかを確認しろ! 絶対に逃がすなよ!! 君は救急車を!!」
「え……ちょっと!? だ、大丈夫ですか!? 酷い怪我……!!」
道連れかよ……あんな奴と。まぁ、犠牲者が減るなら……それも、悪くはないのかな……そう思いながら、俺は意識を失った。
「……ん」
ここは……俺、死んでなかったのか? あんなに血が出てたのに……もしかしてHPがエラーになってたから? 腕は……少し動くな。点滴か? そうか、回復薬を……
「どうやら……あの世に行くのはお前だけらしいぞ、グロリオ」
地獄と天国、お前はどっちに行くかな……神が忖度してるなら、天国に行くのか?
「……気にしなくていいか。気にしたって、俺は真実の知りようがないからな」
回復薬が2本点滴に接続されている……回復薬と、鎮痛剤だ……そりゃ、こんな怪我なら必要だよな?
「……馬場さん、入ります」
「はい、どうぞ」
「……お目覚めになられましたか。よかった」
それからのことを尋ねると……近くにカメラがあって、殺されかけたところをどうにか反撃して倒した……という状況だったので、俺は無罪になったらしい。最後に虚空を殴ったらグロリオが消えたのは、本当に意味がわからないとのことだ……ウィンドウ押したんですよ、あれ。
「そういえば、あの人は……? 変な被害にあったりしてませんか?」
「自分より他人なんですね……あの人には何もありませんでしたよ、次の日のバトルロワイヤルにも参加したようです」
「……俺、何日寝てました?」
そう尋ねたところ……
「一週間です」
「……バトルロワイヤル欠席かよ」
「そういうことになりますね」
まぁ、いいか……
「人の命が救えたんだ、それくらい安いよな」
「すぐ割り切った……」
「どれくらいで退院できます?」
さっさと退院して……奴の仲間を探さなければならない。襲撃はいつ起こるかわからんからな……学校はしばらく休みだ。
「……重症だったのですが、普通に比べて体が丈夫なようで……再生能力が高いため、あと3日もあれば動けるようにはなるでしょう」
「わかりました、ありがとうございます」
「じゃあ、安静にお願いしますね」
……お医者さんが居なくなったので、また右目を強く閉じて、左目を起動する……エラー表示は治ってるな。右目のプログラムを起動すれば、またエラーの塊になれるんだろう……
「あの状態になると、攻撃が当たったものを全て『エラー』にさせて、停止させることができる……そして、全身がエラーになると強制終了。つまり、死亡するわけだな。どんなに強い相手だろうと……グロリオの言葉を聞く限りだと、長くは持たないようだが……基本的に奴らと戦う時は、これを使うことになりそうだな……」
あの『Infinity Blessing』って能力には名前がついていた。グロリオは『Breve Striker』だったか……十中八九、他の奴もこれを持ってるだろう。純粋な強化なら、『止める』ことで何とかできるが……全員同じ能力なわけないよな。
「素直に攻撃を食らってくれるとは思えんし、新技も覚えていかないとな」
あいつは油断してた、『エラー』を侮って、下に見ていた。追い詰められることはないし、万が一そうなっても『infinity blessing』があるから……奴らは普通にやったら無敵だ、だが俺の攻撃だけは例外……
「要するに、俺がやるしかないってことだな」
クソ野郎を殺す前に、殺さなきゃいけない奴らができた……デバッグだかなんだか知らんが。
「罪のない人の命を奪うなら死んでもらう!!」
そう言って、俺は殺意を新たに……戦う相手を増やした。
「……樹!!」
「母さん、父さんも……よう」
「よう、じゃない! 殺されかけたって本当か!?」
まぁ、そうだな。
「うん。でも、反撃した」
「相手の人が消えた、って聞いたけど……どこにやったの?」
「どこにやったと言われてもな……消したとしか言えんのだが」
真実を教えるのは、奴らと同じやり方だ。そんなことしちゃいけない……
「消した……?」
「まぁ……能力が覚醒したんだよ、俺のハイパーパワー!!」
「樹にそんな力が……」
……覚醒したなんて、そんないいものじゃないけどな。俺のバグが限界突破して、プログラムの想定外の状態になって……それを敵にぶつけて強制終了したんだ。だけど安心させるために、おどけて見せる。
「これからも頑張っちゃうから、期待しててね!」
「トレーニングしてたのは、これを知ってたからなの?」
「違うよ。修行はバトルロワイヤルのためだった……けど、殺し合いに役立った。それだけ」
心配はかけたくない。戦えるのは俺だけなんだから……みんなが巻き込まれる筋合いはない。
勝てないのに挑むなんて自殺そのものだ……俺がやる。みんなは俺を無視して、幸せでいてくれればいい……
「……嘘じゃなさそうだな。奴らは何なんだ?」
「厄介な宗教団体。意味不明な能力を持ってて殺されかけたけど……今回戦ったのは幹部の一人だったみたい。『勇気』のグロリオって名乗ってたよ。他にもあのレベルで強いのが6人いる。ボスは『大神官』って名前で、予言書を持ってるんだってさ。『インフィニティ』って名前の神を信仰してるらしい」
「大神官……テレビにも声だけで出てるな、顔を晒すことは絶対にないらしいが」
大神官ってのが、一番クソ野郎についてはよく知ってるはず……見つけ出して締め上げてやるよ!!
「あいつらは樹を狙ってるの?」
「そうらしい。俺は奴らにとって……あー……」
「奴らにとって?」
どう言うべきか……真実を伝えずに……よし。
「宗教的にまずいらしい。教えだとか言っててな……それで殺されたらたまったもんじゃない」
「許せないな……あっち側は必死になって隠蔽をしているらしいが……」
「させねぇよ、俺自身が襲われてるんだ。ツケは払ってもらう」
そう言って、拳を握る。
「やめてくれ、危ないことはさせたくないんだ……」
「大人しく襲われるのを待っていられるかよ。やる気なら相手になるだけだ」
「昔からそうだよねぇ……学校でイジメに遭った時も、鍛えて殴りに行ってたっけ。血だらけになって帰ってきた時は本当に怖かったよ」
そんなこともあったっけな。俺みたいな人間って傷つけられると、怒りとか憎しみが溢れて止まらなくなるんだ。光モン持ち出されて、金盗られて……黙ってられるかよ。それは隠蔽されていたので、情状酌量などで無罪放免になったけど……高校では誰も俺に近づかなくなった。それがなくなっただけで十分だったが。
「仕方ねぇだろ、誰も助けてくれなかったんだからよ。止めても無駄だ、殴り飛ばしてでも行くぜ」
「……だそうだよ。止められる、父さん?」
「無理に決まってるだろ? 俺が殺されちまうよ……怪我すんなよ」
どうやら、諦めてくれたらしい。これで心置き無く、奴らを殺しに行けるというものだ。
「サンキュー……怪我はできる限りしないようにするよ」
「本当に昔から……元気そうだし、お母さん達はいなくてもいいね」
「あぁ、色々サンキューな。あと、警察の人に言っといてくれ……俺が教えた情報」
そう言って、俺は母さんと父さんを帰した。さて……3日間は暇だな。よし……
「イメージトレーニング、してみるか」
これも立派なトレーニングだ……戦いを思い出して、無駄だった動作などの反省を行っていく。それをしばらく行っていると……
「失礼します……」
「……あなたは確か、あの時……」
「はい、助けていただいた者です」
思い出したぞ、この人を助けるために割り込んで、それで奴が殺しにかかってきたんだ。返り討ちにしたけど……『好感度』、そう書かれた棒の色が皆と違うのはどういうことなのだろう? まぁ、いいか……クソ野郎のイタズラか何かだとしたら、まんまとかかるのは悔しいもの。
「俺なら心配要りませんよ、すぐ退院できるようなので」
「そうじゃなくて、一言お礼くらい……あの、本当にありがとうございました!!」
「そんなに頭を下げなくたって……奴はどっちにしたって気に入らない奴でした。あなたが居ようが居まいが、私は奴を何かしらの理由で殴ることになってましたよ」
そもそも、あっちから襲ってきたんだけどな。
「あと、名前も……ホロライブ学園の1年、白上フブキです! よろしくお願いします!!」
「同級生か……道理で帰り道に出会ったわけだ」
「あと、これお見舞いです! よかったら……」
律儀な人だな……果物がいっぱいだ。
「ありがとうございます。またいただきますね」
「じゃあ……また、学校で会いましょうね!」
「えぇ、では」
……白上フブキ、よし覚えた。今度学校に行くのは先になるだろうから……一人でも覚えておきたい。
「さぁてと、再開するかな……!」
イメージトレーニングの合間にみかんを齧ったりしつつ、3日間はあっという間に過ぎた……
「……問題なしですね。退院して大丈夫ですよ」
「ありがとうございました」
「いえいえ……」
……よし。まずは情報を探ろう……奴らの居場所を探すんだ。
「……ここが集会所……説教とかをする場所か」
一般社団法人、セイント・インフィニティ。集会所……そう書かれている。次の説教はと……一週間後か。なら、それまでは家の中に篭ろう。自分を狙われて、学校の皆を巻き込むなんて論外だ。
「入学早々大幅に欠席……留年だな、こりゃ」
そう思いながら、家に足を進めて……次の日。事情を説明して休みを取った、こればっかりは仕方ないもんな……学校にも電話をしよう、電話を手に取ったその時……
「……は?」
談笑が聞こえる。黒板に勉強机……ここは学校だ。しかし何故? 俺は確かに家にいたのに……
「……『EVENT』ってやつか、やってくれるな!! くそったれが……」
「また独り言言ってるよ……」
「ゲームのやり過ぎじゃないの?」
違う……この世界そのものをゲームにされてるんだ。俺達は生きてるのに……それを恰も、人形のように扱いやがって!! 怒りのままに立ち上がり、教室を出て……学校を飛び出そうとすると意味不明な力で、押し戻された。右目を閉じてみると……案の定、ウィンドウだ。
「チッ、なんだ……!?」
『EVENT中』
「だから封鎖しとく、ってか……? 上等だぜ、クソ野郎……!!」
左目を閉じて、エラーで体を包む。その状態で、ウィンドウをぶん殴った……
『Error』
「よし……!!」
『修正完了』
……そう簡単には出られないってわけか。面白い……!!
「とことんやってやるよ!!」
技を何発も叩き込む、再生が追いつかないように……! とんでもなく頑丈だ、さてはクソ野郎が見てるな!?
「もう一発……ッ!?」
動かない。左腕がエラーに包まれきって動かせなくなった。今、経過時間は一分……一分ごとに、四肢のどれかが動かなくなるのか!? これじゃあ戦えん……くそ!!
「……出られない、か」
「おい、馬場。授業始めるぞ、教室に戻れ」
「……はい」
今に見ていろ、インフィニティシステム……!! 絶対にお前に辿り着いてやる!! 今すぐは無理だが……お前の部下をぶっ飛ばしてな!!
ようやくホロメンがちょっとだけ出てきました、登場遅くてすみません。