(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
……俺は左腕の動かないまま、授業に臨むことになった。あれから、メッセージウィンドウは出てきていない……復活させることは出来るのだろうが、したところで破壊されるとわかっているのだろう。そりゃあ、破壊させるためだけに復活はさせないよな。
「インフィニティの野郎もアホじゃないよな……グロリオはすぐキレたから、多分幹部でも下の方なんだろう」
休み時間にそんなことを言いつつ、腕を動かそうと試みる……あ、動いた。
「エラーが消えたようだな……」
こちらも、時間が経てば動くようになるらしいな……この力は多用できない、使ったら速攻で勝負を決めんとな……
「殺せなきゃ、あっちの都合で命が無くなるんだ。俺が殺さなきゃいけないんだ……」
覚悟を決めろ。殺さなきゃ……戦わなきゃ、罪のない人が殺される。何も捨てずに平和が手に入るかよ……!!
「そのためにはここから出たいんだが……出してくれないし」
今の俺じゃあ、とても叩き割れそうにない……俺もまだまだだな。
「このままじゃ、インフィニティに勝つなんて夢のまた夢だ……もっとトレーニングしねぇと」
「さっきから、また独り言言ってる……」
「変なやつ……」
怪しまれてる……仕方ないよな。心配するのは俺だけでいい。そう思いながら、時間は過ぎて昼休み……何故か、外でたくさんの人が騒いでいる。何かに集まっているようで、教室にも人がいない……
「……外が騒がしいな」
「バトロワで優勝した人だ!!」
「優勝……?」
そう思って外を見ると……美形の男の人がいた。デカい剣を背負っている……
「すごい人気だな……強そうだ」
「あいつはそんなに強いのかよ……」
「滅茶苦茶強かったぞ、そりゃもう上級生にも劣らないくらいに!」
……とんでもない強さだな。どんな人なんだろうか。そう思って、外に出てみると……
「ありがとう、ありがとう! 応援ありがとうね、みんな!!」
「思ったよりアイドル気質だな……」
「おっ? ファンが増えたか?」
二枚目半、っていうのかな? こういう人……そう思っていると、俺の方に近づいてきた。
「あ、変人!!」
「入学早々襲われて大怪我した奴だ……」
「虚空を殴って敵を消した奴だ」
そんな呼ばれ方されてるのか、俺。
「あぁ、君が噂の……知らないだろうから、自己紹介! 俺は星崎元樹(ほしざきもとき)!! 君は?」
「……元気な人だな。俺は馬場樹だ……よろしくお願いします」
「あぁ、よろしくな!!」
手を伸ばして握手を促してきたので、握手しておく。これが所謂『陽キャ』か? 強さの方はどうだろう。そう思って、右目を閉じてみる。
「……『スパークルカット』『せいなるつるぎ』『ソードビーム』『学習』『バルカンジャブ』『ライジンブレイク』『スピンキック』か……技が多いな」
「え? なんで俺の技知ってんの……?」
「あ、いや……有名だから、技だけは噂で知ってたんです」
誤魔化しつつ、考える……グロリオが言っていた『主人公』というこの世界の『立場』。あいつ曰く、俺が『しゃしゃり出ている』らしいが……ってことは、この人が本来はたった一人の『主人公』なわけか。だが……今、俺というイレギュラーが入っているわけだ。話が見えてきたぞ……だからって、消えてやるつもりはさらさらないけどな。
「俺ってそんな有名になってんのか……取材受けたもんな、そりゃそうだよな」
「嫌ですか?」
「いや、全然? 寧ろ目立つのは好きだぜ!!」
明るい……本来の主人公というのも納得いくな。この世界が恐らく、エロゲーだというのも加味すれば、この上なく適している性格だ。
「……ところで、最近変なことが起きたりしてないですか? 変なものが見えるとか、物が消えたり出てきたりするとか……それか、セイントインフィニティの奴らに絡まれたとか」
「いや? そんなことは起きてねぇけど……絡まれたって大丈夫さ、俺は強いぜ? 何たって優勝者だ!!」
「……ですよね。心配はいらないか……」
とはいえ……グロリオのように『infinity blessing』を持ってる相手に勝てるかどうかは些か疑問だ。奴ですら、『error』がないと殺せなかった。ただ強いだけじゃ『デバッガー』は絶対に殺せない。とはいえ、話すわけにはいかないし……
「そうだぞ、俺を信じろ! 君こそ困ったら俺を呼べ、助っ人になってやるぞ!!」
「……わかりました」
「……本当に、遠慮しなくていいぞ。少なくとも俺は、自分の仲間が大怪我したら心配だから」
心の底からお人好しらしい……でも、だからこそ呼べない。呼ぶわけにはいかない……あなたのような努力家が、真実を知って絶望するのだけは見たくない。それを見せないために俺は殺すんだ……たとえ、同じ人間であろうとも。
「ありがとうございます……優しいんですね、あなたって」
「そう見えるか……? 褒めて貰えると嬉しいな、どんな人にも褒められるのは嬉しいもんだ」
「……オマケに純粋、か。そりゃあモテるよな」
明らかにモテそうな性格だ……醜い真実より、幸福な嘘を見て人生を生きなきゃだよな……その世界に自分から行くのは、俺だけで十分だよ。そもそも、一般市民とかを守るために戦ってるのに、それを巻き込んだら本末転倒だ。
「褒めすぎだっての、照れるからやめろよ~!」
「……全然性格違うのに、すごく仲良さそう」
「羨ましい……」
この人は取っ付きやすい性格だ。安心できる力があって、明るくて、自信家で、面白くて……モテる要素のオンパレードなのは俺でもわかる。
「今度のバトルロワイヤル……参加してくれよ、戦ってみたい!!」
「構いませんよ。俺も力を高めたいですしね」
「よっしゃ決まりだ、俺と当たる時まで負けんなよ!?」
……次のバトルロワイヤルには参加しないとな。こんなに期待されているんだから……
「元樹! また戦おう余!!」
「あぁ、いいぜ! まだ昼休みだし……借りに行くか!!」
「今度こそ負けない余!!」
……今の人、鬼人か?
「百鬼あやめさん……一年なのに滅茶苦茶強くて上級生も手が出せない……とんでもない人だ」
「今度こそ、って言ってたということは……勝ったのか」
「あぁ、接戦だったけど……ギリギリ元樹さんの勝ちだったよ」
なるほどな……実力は十分、か。
「星崎元樹さん……記憶に入れておかないと」
「どっちが勝つと思う?」
「普通に考えて元樹だろ」
……そんな会話を聞きつつ、授業が始まり……放課後、家に帰っている時。
「……邂逅をさせたかっただけで、襲撃したかったわけではないのか」
とりあえず一安心だ。だが、油断はできない……幸い、明日と明後日は休みだ。修行を積んでおかないとな……閉じ込められても破れるようにしておかなければ。
「強くなきゃ誰も守れん……殺してやるぞ、全員まとめて!!」
憎悪を、火にくべる。そうすれば……どんな苦痛も気にしないようになれるんだ。一気に重りを増やし、60kgにした。成人男性1人分程度だ。その状態で、100km走る……これくらいしないと、奴らを殺せない。その後は重りを何個も付けた計65kgのダンベルを、両手に1つずつ持ち……フリーウェイト100回、それを5セットだ。シャドーを毎日して、バトルマシンでのスパーリングも忘れずに……そうしていると。
「……来たぞ、技だ……! 『かみくだく』か……拳や蹴りだけでなくなるのは大きいな」
これでやめるわけにはいかない。毎日眠らず……帰ってきたら昨日の残りを食って、学校へ行く。眠いとかはなかった、憎しみの方が強いから。そして、明後日に集会を控えて……体を休めておこうと、休んでいた時だった。学校でのこと……
「……あ、元樹さん」
「さんとかやめろよ、堅苦しい! 元樹でいいよ、みんなそう呼ぶしな!!」
「……じゃあ、元樹?」
相変わらず明るい人だ……男女を問わず人気があるのも頷ける。
「よし! じゃあ、樹……お前、無茶してるな? すごい隈だぞ……」
「……何故それを?」
「その顔を見りゃあわかる。頑張るのもいいがちゃんと休めよ、死んだら元も子もないぞ」
……心配は嬉しいが、そんなこと言っていられないのだ。敵は人外以上の化け物より恐ろしい奴らだから……人間やめないと、まず勝てない。グロリオのような、小物ばかりの集団ではないはずだ。
「ありがとう」
「……思い詰めてる表情してるな。なんかあるのか?」
「何もない」
話せないから、いつも通り誤魔化す。
「……話したくないならいい。だけど……死なないでくれ」
「わかってますよ、死んだら俺も困るんだ」
「頑張りすぎるなよ、本当に……」
男女分け隔てなく優しい、この明るさを振りまく……善人ってこういう人だよな。……あれ? 顔をよく見ると……隈がある?
「……隈ありますけど、何かやってたんですか?」
「ギクッ……何もしてない! 俺は知らん!!」
「なんか怪しいような……」
……そういえば。深夜の3時だっていうのに、走ってる人の足音を毎日聞いてたぞ……まさか?
「ち、違う! 潔白だ潔白!!」
「……俺と同じことしてたんじゃ?」
「ぐっ……違うぞ、俺は何も……」
目が泳いでいるし、汗の量が尋常じゃない。明らかに嘘だ。
「なるほど……当たりですね」
「ぐぅぅぅ……! 何故バレたし……」
「嘘が下手すぎる。それじゃあ人のことを言えないぞ、元樹?」
元樹も人のことを言えないじゃないか。
「いや……俺がちょっと頑張るだけで、周りのみんなが頑張らなくてよくなるなら、それは素敵なことだろ?」
「俺も同じ気持ちだよ」
「……性格は全然違うのに、そこだけは同じなんだな」
主人公だからか、それとも……俺達2人とも、バカなのか。多分後者だな……そんな話しをしつつ、明後日に備えてメモした技を確認しておく。『かみくだく』『じごくづき』だ……『じごくづき』は相手の喉元に強烈な突きを見舞う技。威力も高いし、生物相手ならよく効きそうだ。
「……明日、決戦か」
また、目の前が暗転して教室になった。もう驚かん……強くはなったが、まだあれを破れそうにはない。大人しくここにいるしかないか……
「インフィニティの野郎が呼んだってことは、何か起こるのか……?」
「お前ら席につけ、授業始めるぞ」
「はい!」
……その時だった。ドアが勢いよく開かれ……銃を持った奴らが踏み込んできた。
「え……」
「エラーを発見、直ちに排除する!」
「え、やめ……」
銃の引き金が引かれる……守りきれない。俺はすぐにそう判断し……そいつらに殴りかかった。『エラー』は温存する、ボスがいるはずだ……!!
「ぐはっ!?」
「怯むな、殺せ!!」
「い、たい……た、すけ、て……」
撃たれた人が助けを求めてきた……助ければ、厄介な状況になるのは目に見えているが……バカだな。俺は反射的に助けてしまった。
「狙うなら俺だけ狙え、みんなに手を出すな!」
「目撃者は排除する。エラーの犠牲になってもらうのだ」
「お前らが犠牲になれ!!」
男の人を安全な場所に置き、そいつらに殴りかかる……銃を躱して、一撃で頭蓋骨を粉砕する。
「あ、が……」
「なっ……!?」
「死ね!!」
人を殺すなら、殺される覚悟もしておけ……!! そう思って、無心で殺し続ける。終わった時には血の海の中で、全身血塗れだった。果たして俺が出した血なのか、敵の血なのか、それとも……
「……ごめんなさい」
助けられなかった、この人達の血か。学校に来たことそのものが、奴の罠だったんだ……だから、頑なにここから出そうとしなかったんだ!! 復讐しに来ることすら、計算ずくだったのか?
「セイントセブン! どこだっ!! お前の部下は死んだぞ!!」
「樹! 何してたんだよ……すごい音がしたぞ!?」
「元樹、お前はみんなを連れて逃げろ! 『お前達なら』逃げられるはずだ!!」
インフィニティが出したくないのは、飽くまで俺だけ。なら……他の人は問題ないはずだ!!
「で、でも……血塗れだぞ!?」
「俺にはまだやらなきゃならないことがある!! 早く行け、その人達がいると満足に戦えない! そこの人だって大怪我してる、助けてあげてくれ!! 頼む!!」
「……わかった!」
ありがとう、元樹……その人を持って、元樹は走っていった……ボスはどこだ!?
「出て来やがれぇぇっ! お前らの大事な仲間のグロリオを殺したのは!! 俺だぞぉぉッ!!」
「そんなに言わなくても聞こえているよ、やかましいな」
「……出やがったな、人でなし共!!」
こいつも『デバッガー』だろう……ここで強制終了する!!
「人でなし? 誰のことだ? ……自分のことか?」
「お前らのことに決まってるだろうが。やってくれたな……俺以外の犠牲者が大量に出たが、あれも『コラテラル・ダメージ』なんだろ?」
「エラーの分際で偉そうな奴だな……グロリオが怒ったのも納得だ、あいつは気が短いからな。自己紹介をしておこう、私はセイントセブン、『希望』のカルミア。お前が教会に来るからと狙っていた幹部の一人だよ」
そうか、お前が……
「『希望』か……ピッタリだな。希望は、何かを犠牲にしないと手に入らない……犠牲にするのが大好きなお前らが好んで使いそうな言葉だ」
「……嫌味な奴だな。ならば、全ての人類は絶望して生きろとでも?」
「そうじゃないさ……俺だって希望は好きだからな。希望があれば前に進める……裏を返せば、人間は何かを犠牲にしない限り、前には進めないんだよ」
何の犠牲もない平和は有り得ない。何の犠牲もない希望は有り得ない。何の犠牲もないものなんて、この世界に存在し得ないんだ。
「……何が言いたい?」
「わからないなら教えてやる……お前はここで、俺の復讐のために犠牲になるってことだッ!!」
「……『エラー』か。食らったらまずいな」
体をエラーで包んで、マッハパンチ……避けられた。この時点でグロリオより上か……
「グロリオはお前らの中でも相当弱かったようだな、奴は今のに当たっていたぞ!!」
「実力的には我らは平等だぞ。だが、奴は怒りやすくて冷静さを失いやすい。それが敗因だ。私とグロリオが全力で戦えば、私が勝つだろうがな」
「お前はそうではないらしいな……!」
それでも俺のやることは変わらん、クソ野郎に辿り着くために……殺す。
「……フム。手加減していて勝てる相手ではないな……『神の祝福』を使わせてもらおう」
「来るか……!」
「神の力、お借りします……『infinity blessing』発動。『Hope warrior』」
どう来る? 殴ってくるか……よく見ろ、相手の動きを……当たっちゃいけない!!
「……希望とは、全ての生物が望むもの。だが、お前の言う通り希望とは犠牲が伴うものだ……」
「何が言いたい……? その能力はなんだ? ただの強化じゃないんだろ?」
「……だからこそ、希望を背負ったものは『犠牲になった者』の分まで頑張らなければならないのだよ」
喋っているところ悪いが、死んでもらおう。一気に接敵して、踏み込む。拳と足に力を込めた。鳩尾を思い切り殴った後、地面を蹴りつけて、奴の腹へと追い討ちの足裏を叩き込む……!!
「マッハパンチ……メガトンキック!!」
「ぐ……っ」
「……終了する前に死んだか。幹部の名乗ってた割には、やけにあっけなかったな」
死体が消えた……待て、何故ウィンドウが出ない? 確かにエラー状態のはずなのに……
「……やった、とでも思ったか? お前も大概間抜けだな……」
「なっ……今確かに死んだはずだぞ!」
「言っただろう、犠牲になった者の分まで生きなければならないと。ここで死んだ者達は何人だと思う? 私も数えておらんな……これまでもたくさん犠牲が出てきた……」
……まさか。
「お前、不死身か……!?」
「私達に関係のある『EVENT』で、誰かが死ぬ度に私の『残機』は増え続ける……これこそが『希望』。どんなに弱い奴でも、死ねば……犠牲になれば、絶対に役に立てる。これ程の僥倖はなかろうて。残り残機は今の死で1つ減って……残り、99個だ」
「……人の命を、アイテムか何かのように扱いやがって……!!」
こいつを、あと99回も殺さなきゃならない。あいつは死ぬ度に疲労も傷もリセット、だけどこっちは疲労も傷もそのまま……
「分が悪いなんてレベルじゃないぞ……!!」
「それだけではないぞ……? 特殊番号02番、変化!! 『ホープシューター』!」
「なっ……バズーカ!?」
グロリオと同じように地面から引っ張り出された、真っ白で金の装飾のついた神聖な雰囲気を漂わせるバズーカ……あれがあいつの武器か。
「命はまだ99個ある……何個か使っても大丈夫だろう。希望には犠牲が不可欠、即ち希望を産むのは命……命とは、希望を生み出す燃料なのだ。命を燃料と弾にして放つ……最強最大の兵器!!」
「なんて武器だよ……!! マッハパンチ……正拳突き!!」
「ぐっ……残り98個だ!」
こいつの体はそこまで頑丈ではないようだが、『死亡』した瞬間に他人の命を装填して、生き返ってくる……! それをあと98回もかよ!!
「……っ、しまった!!」
「たっぷり喰らえ、犠牲になった命から生まれる希望をな!! 1個装填……発射!!」
「だいぼうぎょ……ぐぅぅぅ!?」
とてつもない光の束……目が潰れそうなほどに眩しくて、熱い。それが俺に命中して、爆発した。凄まじい威力だ……命を直接使うだけある。
「……やはり1個程度では足りんか。ならば数を増やすまで……!! お前のHP如き削り切るくらいわけない!! この場で希望の光に飲まれて消えるがいい!!」
「当たれないってことかよ……!!」
「果たしてそう上手くいくかな!? 3個装填!! 喰らえ!!」
すぐに階段を駆け上り、2階に移動すると……案の定、撃たれた教室が消し飛んでしまった。学校自体がバランスを崩す……目の前に出てきたあいつの顔面に、マッハパンチを叩き込む……頭蓋を割っても、次の瞬間にはピンピンしている……本当に『残機』を削り切らないと死なないようだ……さっきもそうだったが、奴は武器を持った状態で復活する。つまり、持っていたり、身につけたりしていたものはそのままで復活するわけか……殺すことで戦況リセットは無理ってことだ。
「くっ……」
「残り……93だ」
「くそったれ!!」
撃たれた体が軋む、防御したはずなのにな……いくらなんでも威力が高すぎるぞ。防御しても耐え切れるかどうか……いや。耐えるとか避けるじゃ、いつまでも終わらん。奴だってバカじゃない、攻撃を避けられ続けたら俺の行動パターンを読んでくるはずだ。いつか当たって終わるなら……『当てられない』ようにするしかない!!
「3個装填……!!」
「うらぁ!!」
「マッハパンチ? 無駄だ……」
ライフがあるからって、受けるつもりでいるな……? 甘い。俺の狙いはそっちじゃねぇよ!! そう思って俺は、奴ではなく『武器』を殴った。エラーが発生して、バズーカが機能を失う……
「ヘッ……使った残機が水の泡だな?」
「考えたな……流石はグロリオを殺した奴、簡単に死んではくれんか」
「お前らを皆殺しにするまでは死なん!!」
地面を蹴り、奴の腹に足裏でメガトンキックを叩き込む……奴の内蔵をぶち破った、脆い体の人間なんだから、普通死ぬんだが……
「どうした、一つずつしか減っておらんぞ?」
「89個……!!」
「説明の手間が省けていいな……特殊番号02番、変化」
またか……出させるかよ。そう思って、踏み込んで奴を殴りつけに行った……すると、奴はニタリと笑った。まさか地面の中にあるまま撃つつもりか!?
「ッ!?」
「気づくのが遅かったな……5個装填!! 喰らえ、『ホープバースト』ォ!!」
まずい、距離を取らなくては。そう思って、その場で地面を思い切り蹴り、バックステップをする……だが、それでも爆風の範囲から抜けられないことをすぐに悟った。
「だいぼうぎょ……!!」
その瞬間、辺りが強烈な光に包まれた。爆風だけでも、凄まじい。暴力的な光が全てを飲み込み、消し去っていく。まるで、ごみ箱のデータの削除ボタンを押したかのように。奴もそれは同様だが……俺もそれに耐えきれず、ガラスに突っ込む。地面に体が叩きつけられた……
「ふぅ……残り83だな」
「ぐ、ぅ……くそ」
「咄嗟に防御したか……残念な知らせだ、お前はあと一発喰らえば死ぬ。HPゲージが足りん……お前は『恐ろしき執念』も『死の淵』も持っていない、終わりだ……また5つ使ってあの戦法をしても、残り77個。全く大丈夫だ……グロリオは能力を知って焦りすぎた。私はそれがなかったわけだ、消えるがいい……エラーよ。お前のことは覚えておいてやる、お前も私の残機となるのだからな……」
ふざけんじゃねぇ、貴様の残機になんざなってやるかよ。だが、さっきのように地面の中にある状態で撃たれたら、エラーを起こさせることもできない。かといって腕を殴れば、『HP』が0になって『死亡』してしまう。そうなったら、復活されて終わりだ。無敵かよ、本当に。デバッガーだから、絶対負けないように作られてるのか……? 勝てるように作っとけよ……
「キリのいい数字でライフを止めたいな……よし。サービスしてやる……6個装填!!」
「……クソがぁぁぁッ!!」
「っ……これではキリがよくないな、まぁいい。また誰かで装填すればいいしな……消え去れ!! ホープ……!!」
地面に向かって引き金が引かれる。終わり、なのか……インフィニティに、復讐できないまま……その時だった。
「おい、俺の友達に何してんだ!?」
「っ……貴方様は、まさか!!」
「え……元樹?」
戻ってきたのか……逃げろと言ったのに。というか、言葉遣いが急に丁寧になったぞ?
「みんなは避難させたよ!! 俺は助っ人として戻ってきた!! お前が主犯か……学校がボロボロじゃねぇか、何故こんなことをする!?」
「やはりそうか……星崎元樹様、どうかご協力をお願い致します……!!」
「は……? どういうことだよ?」
カルミアは奴に跪いて、祈るようなポーズをしている……主人公は奴らにとって、そんなに偉いのか?
「貴方様は、主神インフィニティ様に選ばれた世界の王者……貴方様は寵愛を受け、正義の心を持ち、多大な活躍と栄光を得ることが約束されているのです!! 無論女も、貴方様が望むならいくらでも……!! ですが、奴はそうではない!!」
「……樹がどうかしたのか?」
「奴は愚かにも、貴方様だけが座ることを許された『主人公』の椅子に座っているのですよ、栄光と名誉の椅子に、奴が座ることなど絶対に許されないのに!! この世界はそもそもプログラム、貴方様はプログラム内の特例!! ですが奴は、特例になってはいけないのになっている、即ちエラー!! それを排除するため、私はここで奴を『デバッグ』しようとしている最中なのです!! さぁ、主人公様!! 私と共に、愚か者を椅子から引きずり下ろそうではありませんか!!」
……元樹が俯いている。俺を殺す気なのか? 二人がかりかよ、オーバーキルだぞ……
「……友達を殺せってのか?」
「友達……? 主人公様、騙されてはなりません!! 奴はエラー、この世界にあってはならないものです!! 友情など紛い物、奴はあなたを利用しようとしているだけです!! 私の言葉に嘘はありません、エラーを起こしたプログラムを破壊するだけです!! 何も抵抗することはありません、さぁ主人公様! 『偽主人公』に正義の鉄槌を……」
「うるせぇぇぇぇぇ!!」
全力の拳が奴に突き刺さり、残機が一つ減る。奴は明らかに困惑している様子だ……エラーを解除して、話を聞く。
「な、何故……私は真実を言ったのみなのに!!」
「俺達の友情は嘘じゃねぇ! こいつはいい奴だ!! エラーだかなんだか知らねぇけど、いい奴なんだから……もう友達に決まってんだろ!? それを嘘だとか、殺せだとか、正義の鉄槌だとか……うるせぇよ、バーカ!! お前らに決められた『正義の心』なんか要らねぇ!! 俺は自分で考えて生きる!! 神だかなんだか知らないけど、俺は崇高な使命よりも目の前の友達の命を取るぜ!!」
「元樹、お前……」
せっかく、危険な奴を敵に回さなくて済むところだったのに。お前は……
「気にすんな、樹! ありがとな、持ちこたえてくれて!! 俺も一緒に戦うぜ、こいつは気に入らねぇ!! ぶん殴って……キツいお灸を据えてやる!!」
「そうか……」
「いいか、よく知らねぇけど変な敵!! みんなこの世界の主人公だ!! 自分の物語は、自分で作るものだからな!! 樹は偽物でもエラーでもない、樹だって主人公さ!! 主人公が1人じゃなきゃいけないルールはないぜ!! お前らが勝手に決めたなら……そのルール、この場で破り捨ててやるぜ!! 栄光も名誉も女の子も、自分で掴み取るものだ!! 特別扱いなんて俺は要らん!!」
ハッキリと、毅然とした態度で言い切った。それを聞いたカルミアは……こいつ、笑ってる。
「ふ、フフフ……ハハハ、ハハハハハハァ!!」
「ついにトチ狂ったか、カルミア? 大事な主人公様に裏切られてよ……」
「違う、まさかこんなことになっているとはな……主人公様すらもエラーに毒されていたとは!? でも大丈夫……すぐに洗脳から解き放って差し上げますよ!! この希望の光で、貴方様を『デバッグ』する!! こんなのおかしい、有り得ない!! 主人公様は正義の味方、どんな時もゲームの通りに動く!! そうでない主人公様は有り得ない、今すぐ直さなくては!! ハハハハハハ!!」
認めたくなくて現実逃避してるのか……現実は辛いもんな。俺もお前らのせいで現実を教えられて、今消されかけてんだけど。
「何言ってんだ、こいつ……樹はこいつの言ってることわかるか?」
「わかる。だけど……今は頭がイカレてる。予定が狂ったらしい……このままじゃ俺達二人とも、おしまいだな」
「そうだな……なら、やることは一つ!!」
奴に向かって構え直す。エラーを再起動する……狂気の滲む奴の顔面を見収めながら。
「デバッグだ、今すぐデバッグしてあげますよ!! 主人公様ァァァ!!」
「ぶん殴って!!」
「ぶっ殺すッ!!」
息ぴったりで、奴に殴りかかる……第2ラウンド開始だ。
というわけで、ダブル主人公です。これからホモくんとバイくんをよろしくお願いします。