※この作品はR-18です。

(本編完結)ホロライブラバーズX infinity   作:とも667

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 さぁ、始めましょう。


終わりの始まり

 拳を握りしめて、奴に二人で向かっていく……ここで死んだら、インフィニティの野郎を殺すことはできない。お前には何がなんでも死んでもらう!!

 

「『ぶっ殺す』ゥ? 主人公様はなァ!! そんなこと言わねぇんだよォォ!! やはりバグっているんダナ、有り得ないアリエナイ!! デバッグだ、デバッグしなければ!! ホープ……!!」

 

「『スパークルカット』!!」

 

「う、動けん……!? 主人公様、目を覚ましてください!!」

 

 だけど元樹はそれを一蹴して、言って見せた。

 

「俺は前から正気だぞ、これがお前らの会いたかった主人公の姿ってことだ!! 勝手に期待して失望されても困るな、ファンは好きだが厄介ファンはお断りだ!!」

 

「それもこれも貴様のせいだ! きっとそうだ、貴様のせいで人格がバグっているんだ!! 貴様さえいなければァ!! 人類の希望を踏みにじるとは……貴様それでも人間かァ!?」

 

「先に人間以下の存在だって言ってきたのは……テメェらの方だろうがよ!! 何が人類の希望だ、自分達が何も捨てたくないから、犠牲になりたくないから……何より我が身が可愛いから、そんな訳分からん事を叫んで、必要ない犠牲を出すんだ!! お前らみたいなのが『人間』だって言うなら……俺は人間じゃなくていい!!」

 

 そう叫んで、武器を殴り飛ばす。エラーを起こして、消えてなくなった。これでまた残機が減ったな!!

 

「これで75個だな……!!」

 

「おい、こいつ傷が無くなってないか?」

 

「こいつは殺すと残機を消費して戻ってくる! 残り75個だ……あいつの武器は滅茶苦茶強力だが、使うために残機を使う!! 規模がデカいのと、自分が生き返れることを利用して自爆してくるぞ!! 迂闊に近づくな!!」

 

 そういうと、元樹は一瞬だけ焦るような顔を見せたが、すぐに笑った。

 

「成程……だから苦戦してたわけだな? 教えてくれてサンキュー……あるもんは仕方ねぇ、それを踏まえてどうするかだ!! 困難を傷だらけになって乗り越えてこそ、男ってもんだろ!?」

 

「……ちょっとやそっとじゃ動じない強靭な精神力。努力家で、実力も凄い……そりゃ人気だよな」

 

「まだだ、まだ半分も切っていない!! あと75回生き返れる!!」

 

「『ソードビーム』!!」

 

 奴が死に、残り残機74個……出てくるところにメガトンキックを構えておく。出てきた瞬間地面を蹴って、奴に膝を叩き込んで腹をぶち抜いた。

 

「特殊番号……ごぉっは!?」

 

「やるなぁ、樹!!」

 

「元樹も、凄まじいスキルの量だ……ぐっ!?」

 

 しまった、時間か。途中で解除したから、少し遅延できたようだが……右腕が言う事を利かない。

 

「お、おい!? 腕を折られてるのか!? だったら無理して動かすな!!」

 

「違う……俺の能力、エラー……これを使うと、物を殴ると『バグらせて』消すことができる。相手が生物になると、全身のパーツを殴らないとダメなようだが……これで信者の一人を消したんだ。だが、1分ごとに体のどこかがバグって動かなくなっていく……制限時間は多分、5分くらいだ」

 

「……強いけど、多用できないってわけか。諸刃の剣だな……時間は、あと3分ちょっとあるな。十分だ!!」

 

 自信満々だ、やる気らしい……奴がまたバズーカを構えている。かなり感情が昂ってきているようだ、依存対象に裏切られたからな……麻薬が切れて発狂する中毒者と同じだ。

 

「認めんッ! こんなことは有り得ん、バグっているンだ!! 貴様のせいでなァ!! 許サンゾォォォォ!! 9個装填ッ!!」

 

「自爆か!? させるかよ!!」

 

「待て、近づくと……っ?」

 

 大丈夫だ、そう言う代わりに笑って突撃する元樹。奴は自爆を止めようとしてない……まずいぞ!

 

「あァ、こっちに来タ!! 今スグ、デバッグをしなケれバ!! 希望の光で、どうか自我を取り戻しテくださイ!!」

 

「俺はとっくの昔に……正気だっての!!」

 

「……!?」

 

 なんと元樹は、奴の左手を握りしめたまま、右腕でバズーカを引っ張り出した。なんて力業……奴にとっては、撃つ絶好のチャンスなのに奴は引き金を引かない。

 

「人気者と握手だぜ、ちゃんと感触覚えとけよ!!」

 

「な……何を!?」

 

「こうするんだよ!!」

 

 なんと、9個も装填されたホープシューターを元樹は上に向けて……撃った。その瞬間、飛び退いて戻ってくる元樹……強い光と共に、瓦礫が奴に降り注いでいく。

 

「ぐゥおぉォォ!?」

 

「ヘヘッ……!! 握手大作戦、大成功だぜ!!」

 

「……まさか」

 

 今の一瞬で作戦を考えついたのか? 奴が自分を盲信していることも含めて、全て理解した上でか? 元樹……バカに見えて、頭もいいのかよ。これで死と合わせて10個消費、残り65個だ。

 

「大好きなアイドルと握手したら、どんな奴でもそっちに集中するだろ? 簡単な話さ、殺すより消費させた方が早い! お前のこともあるし、急がなきゃいけないだろ?」

 

「あぁ……ありがとうな」

 

「それ程でもないぜ、はっはっは!!」

 

 奴が瓦礫の中から出てきた……というか、掴んだだけではダメージ入らないのか。なら……試してみる価値はあるな。

 

「ガぁ……!! 主人公様はこンなこトしナイッ!! 人の希望を折ッたリシなイィィッ!!」

 

「お前が俺の友達の希望を折るなら……俺はお前の希望を折るぜ!!」

 

「だそうだ……理想と現実はギャップがあるものさ、カルミア。希望は叶わないことの方が多いんだよ」

 

 カルミアは、どんどんおかしくなっている……そろそろ時間か。これは賭けだが……やってみる価値はあるな!! 元樹だって賭けをしたんだ、俺もやらなきゃ男が廃る!!

 

「黙レェェェェッ!! エラー如キガァ!! 人間様に!! それも、デバッガー様にィ!! 口答えスルなァァァァ!! 9個装填ッ!!」

 

「……滅茶苦茶な構え方だな。だから負けるんだ……お前も所詮、中毒者だったってことだよ」

 

「消えテ無クナレェェェ!!」

 

 バズーカを撃とうとしている奴の腕を、自分の腕で俺の体に固定した。『普通は』振りほどかれたら終わりだが……

 

「樹っ!!」

 

「俺を信じろ!!」

 

「っ……わかった!!」

 

 撃たれる前に、その状態で地面を蹴りつけて膝を突き刺した。奴はまた消えて、別の場所にリスポーンしたが……

 

「ギッ……無駄ダト言うノガ分カらンかァ!?」

 

「……成功だな。俺はお前から離れてない。死んで、俺の後ろにコンテニューするつもりだったんだろ?」

 

「な、何故……!?」

 

 簡単な話だ。俺の腕が動かなくなったんだよ……エラーでな。但し、俺の体に『腕が固定された状態』で。これで利き腕が使えない……その上、俺とは永遠に0距離のままだ!!

 

「な、何だかわかんねぇけど……すげぇぞ、樹!! そこだ、いけー!!」

 

「こ、コれハ……!? 嘘ダ、腕ガ『バグ』に……!! 死ねバ治ルハズなのニッ!?」

 

「簡単さ、バグり続けてんだよ……触れ続けてんだからな!! 元樹、こいつは利き腕が使えん上俺が邪魔で地面に手がつけられない!! 武器ももう出せん!! 俺が攻撃するから、お前はこいつの手を壁に触れさせるな!!」

 

 撃てなきゃ武器も宝の持ち腐れ……残り53個!!

 

「よっしゃあ!! 俺に任せろぉ!!」

 

「ヒ、引きガねサえ引けレば……!! 動かンッ、オノれェェェ!!」

 

「うぉらぁぁぁっ!!」

 

 腕が使えないので、奴の腹へと膝を叩き込み続ける。どんどん奴の残機が減っていく……!! 壁に手を置こうとしているようだが……その前に死んでいる。元樹も、触れないようにブロックしつつ攻撃してくれている……あと、36個!! バランスを崩す前に殺す、すると必ず『直立して』コンテニューしてくる。つまり、バランスを崩させなければいい!!

 

「ぐぉぉッ……!! コン畜生ッ!!」

 

「うぉららららッ!!」

 

「うらうらうらうらぁっ!!」

 

 希望を砕く、奴らにとっての巨悪の拳に殺される。屈辱だろう……それは俺もなんだがな。

 

「あと……5個だ!!」

 

「主人公様ァ!! 私はタダ、世界を……!!」

 

「何回言ったらわかるんだ!? 俺は崇高な目的より……目の前の友達が大事なんだよ!!」

 

 動いていた右足が動かなくなって、移動できなくなった……でも、まだ動く箇所がある。あと残機は2個だ。

 

「ギィィィ……嫌ダ、死にタクなイィィィ……!! お助ケ下サイ、ドウカお慈悲をォォ!! 主人公様、インフィニティ様ァァ!!」

 

「ここでお前を見逃したら、また人を殺す!! だけど、お前は死刑になったとしても死なないだろ!? だからッ!! この場で俺達が殺すッ!!」

 

「……『かみくだく』!!」

 

 奴の腕に、思い切り噛み付いて引き千切る。奴の腕が音を立てて引き千切れて、俺が大量の血を被った……あと、1個。

 

「ギィヤァァァァー!! 希望ハ、希望ハ負ケナイ!! 負ケテハナラナイィィィッ!」

 

「『スパークルカット』!!」

 

「ガァォッ……!?」

 

 赤い光がカルミアを拘束した、それと同時に、剣が紅く輝いて……光ごと、カルミアを切り裂いた。

 

「うらぁぁぁぁっ!!」

 

「ア、アァァァ……ワ、タシ、ガ……希望、ガ、消エ、ル……セメ、テ……ワタシノ、戦闘データヲ……」

 

「さ、せる、か……」

 

 切り裂かれた奴の体中に噛み付く。頭に、胴に、腕に、足に……

 

「ア、ギ……ギ……」

 

『karmia.exeは応答していません』

 

『操作を選択してください』

 

 ウィンドウのボタンを、頭突きで押した。

 

『正常に終了されました』

 

「ほ、本当に消えた……嘘じゃなかったんだな、間近で見ると不思議な光景だ……」

 

「ぐ、っう……」

 

 顔の筋肉が止まっていく、まずい。解除しなくては……そう思って、右目を閉じた。すると、傷が一気に戻ってくる。血反吐をぶちまけて……倒れ込む。これで二回目だな。

 

「ちょっ……嘘だろ!? 今まで元気そうだったのに……まさか代償ってやつ!? とりあえず救急車呼ばねぇと……!! 絶対死ぬなよ、樹!!」

 

 希望のカルミア、撃破……あと、5人か……先は長いな……そう思いながら、俺はまた気絶した。

 

 

 

「……ん……? あぁ、また病院か」

 

 俺のコンテニュー場所は病院らしい、そんなRPGの主人公みたいな……いや、これはRPGなのか? ゲームのジャンルもわからんな。

 

「……お邪魔しますよ~っと……あ、起きてた!! よう、樹!! また一週間寝てたぜ、お前……心配したぞ!?」

 

「元樹……心配かけて悪いな。あの後どうなった?」

 

「学校はボロボロになったからな、修繕してる最中だよ。希望のカルミアのことを皮切りに、セイント・インフィニティの実態調査が始まるって言われてる……あいつらは俺達を狙ってくるだろうけどな。特に樹は、『エラー』って呼ばれて憎まれてたし……」

 

 そうか……カルミアは復活しなかったらしい、残り残機は嘘ではなかったようだな。

 

「怪我人は?」

 

「生きてた人達は軽傷か無傷だよ。俺とお前のおかげだってさ! 褒められるとやっぱり嬉しいなぁ!!」

 

「そうか、死人は出なかったか……本当に嬉しいことだ……本当、に……」

 

 力がどっと抜ける。安心感と幸福感……他人が幸せなのが一番だよな。

 

「だ、大丈夫か!?」

 

「全然大丈夫……気が抜けただけさ。よかったよ……みんな助かって」

 

「お前も、大概お人好しだな……俺達、真反対に見えて根っこが同じなんだ。だから最初見た時から、仲良くなれそうって思えたんだな!!」

 

 ……てっきり、戦うことになるって思ってたんだがな。そうでもなかった……だが、油断ならん。インフィニティは何をしてくるか分かったもんじゃないからな……特に『EVENT』が厄介だ、時間が止まったり消し飛んだり、おかしなことが起こったり……それに干渉する方法は今のところ、見つからない。今度見つけたら、一応『エラー』で殴ってみるか。

 

「お前と仲良くなれて嬉しいよ」

 

「俺もだぜ、樹! セイントセブンは俺達がどうにかする!! 仲間は多ければ多い程いいんだ!!」

 

「あんまりわらわらいても、逆に困るけどな」

 

 この男の笑顔が眩しい。とても、プログラムだとは思えない程に……やっぱり、この世界の人達は必死に生きてるんだ。それを『ただのプログラム』と断じ、痛めつけた後に殺して、唾を吐く。そんなものが正義であってたまるか。

 

「言えてるな、ハハハッ!!」

 

「……テレビつけるか」

 

「あ、カード買ってきといたぜ。俺の奢りだ」

 

 有難いな、病院のテレビはカードがないと見られないのだ。カードを入れて、テレビをつけてみる……

 

『……三日前の11時頃、ホロライブ学園が襲撃を受けました。襲撃した男はセイントセブンの『希望のカルミア』などと名乗り、被害者の『エラー』と呼ばれていた馬場 樹さん(19)が重傷を負いましたが、命に別状はないということです。その後、男は被害者と星崎 元樹さんによって鎮圧されて、死亡しました。ですが、男の死体は何故か、一瞬にして消えてしまったため、警察が行方を調べています』

 

「……俺が消したんだぞ、あれ?」

 

「消さない方がよかったかもな……」

 

 まぁ、いいか……探すだけ探せば諦めるだろう。

 

『また、男は一般社団法人『セイント・インフィニティ』との関連があることがわかっています。セイント・インフィニティは黙秘を貫いていますが、警察は強制捜査に乗り出す方針です。それでは、次のニュースです』

 

「……消されかねんぞ、警察」

 

「まずいな……守った方がいいか?」

 

 『infinity blessing』はどれも強力だ、使えば大抵の奴は勝てないし……不死身の奴だっているだろう。グロリオはほぼ無敵だったし、カルミアは殆ど不死身だ。他も恐らく、とんでもない能力のはずだ。

 

「幹部が来たら何もかも終わりだ、対処できるのは俺達だけ……でも、来たら大きな被害が出る。どうにかして、今どこにいるのかを調べられないか?」

 

「う~ん……俺は思いつかねぇ、お前なんかない?」

 

「……カルミアが死んだ以上、演説は中止または代役を立てることになるだろう。だけど、俺は代役の方向で行くと思うんだ」

 

 元樹は真面目に聞いてくれている、真面目な話の時はちゃんと真面目なんだな。

 

「……根拠はあるのか?」

 

「あぁ。今、セイント・インフィニティは滅亡の危機に瀕してる。だからこの辺で、どでかいことをやっておかないと……信者、つまりテロの道具が全部消えかねん。だから、演説……いや、それより規模がデカいことをやるかもしれん」

 

「有り得るな……というかそもそもさ、勇気とか希望とか言ってるけど……なんで、そんな名前にしてるんだ?」

 

 ……思い当たる節があるぞ。

 

「……キリスト教で有名な、『七つの大罪』ってあるだろ? あれと対になる『七元徳』ってのがあるんだよ。それに確か『勇気』と『希望』が存在してた」

 

「ってことは……あとの五人は、残った5つに当てはまるってわけか」

 

「あとは『愛』『節制』『正義』『知恵』あと『信仰』だな……俺の予想が正しいなら、この中のどれかが来るはずだ」

 

 ヤバそうなのは……『正義』と『信仰』だな。『正義』も『信仰』も、世界でたくさんの死を産んでいる。まず、とんでもない能力であることは確かだろう。

 

「『希望』のカルミアが残機システムで、『勇気』のグロリオが無敵か……じゃあ、奴らは?」

 

「戦ってみないと分からないが……とりあえず、今いる場所を突き止めないとだな」

 

「でも、全く情報がないんだぜ? 襲ってきた奴らは全員死んでるしさ」

 

 ……申し訳ない。

 

「一人くらい、虫の息で生かしとくべきだったか……手加減出来んのが俺の悪い癖だ」

 

「仕方ねぇよ、手加減してたら殺されるしな。お前は悪くない……コソコソしないで出てこい、クソ野郎めっ!! この俺と樹が相手だ!!」

 

「……元樹はもうやる気満々か」

 

 とはいえ、情報収集の方法が無いんじゃ話にならんぞ。何かないかな?

 

「……学園に誰か、そういうのに詳しい人いないかな?」

 

「う~ん……特に思いつかねぇんだよなぁ。とりあえず、奴らのことは探ってみるけど……俺達は普通の人間だからなぁ」

 

「『エラー』も、日常では役に立たんし……寧ろ、邪魔なくらいだ」

 

 奴らは俺を殺すために動いてくる。この街に居ようが、この街を出ようが襲われれば被害は出てしまうだろう。ハッキリ言って奴らの力は常軌を逸している……やはり、『デバッガー』は負けないように作られているらしい。『エラー』が無いと勝てない相手ばかりだ……せめて、学校に行かないようにはしたいのだが。

 

「あー、もう……奴らは何でこんなことするんだよ!? 樹がなんか悪いことしたのか!?」

 

「俺の存在が気に入らんらしいぞ、世界がバグるだとか……主人公は二人も要らんだとか、変なことを言って襲われてるんだ」

 

「何だよそれ……」

 

 俺だって訳が分からん。主人公だとか言われて、いきなり殺されかけて……と思ったら、変な力で敵を殺して。降り掛かる火の粉を……敵を殺していく。そうしないと、みんなが死ぬから……俺は少年兵にでもなったのか?

 

「とりあえず、明日には退院できる……明日からまた考えよう」

 

「俺も一緒に戦うからな。悩みがあったら言えよ、力になってやるからさ!!」

 

「……ありがとう」

 

 多分、無理だろう。奴は愛しの『主人公様』に裏切られて発狂してたが、これをインフィニティの野郎が見てないはずない。見てたなら、『大神官』とやらが幹部連中に伝えてるはずだ。あの手段はもう通じんと思った方が良さそうだな……そう思いながら、時は過ぎて次の日。病院を出た瞬間、『EVENT』を踏んでしまい……気がつくと学校にいた。弁当もちゃんと入っている……少し息切れしてるな、走ってきたのか?

 

「自分の行動を自分で考察するって、変なの」

 

 独り言を呟きつつ、一応外を見てみる……やはり『システムメッセージ』が塞いでるな。破れそうにはない……まだ、そこまで強くなれてないからな。

 

「俺をそこまでして出したくない理由はなんだ……?」

 

 そう思いながら、破れそうにもない壁に背を向けて教室に向かう。修繕しきれてない箇所が痛々しい……俺以外の生徒が居ないぞ? 先生もいないし。

 

「……この教室は今日で終わりだ。今日から隣の教室と統合する……机はもう移動してあるから、隣に頼むぞ」

 

「あ、はい……」

 

「まさか全滅とはな……辛うじて生き残った子も後遺症で自主退学。酷い話だ……」

 

 ……俺があれを破れれば、どうにかなるんだが。如何せん、あまりにも力が足りなさすぎるのだ。殴ってもすぐに再生する上に、エラーを食らっても簡単には止まらない処理速度……正に無敵だな。俺はエラー以外に特殊能力がない、つまりやれることは殴る蹴るのみ……

 

「クソッタレが……!!」

 

 そう思いながら、隣の教室に行く。すると、元樹が俺の隣だった。

 

「よっ……災難だったな、まさか1クラス無くなるとは」

 

「仕方ねぇよ、俺以外全滅なんだから……」

 

「まぁ、だよな……今日はあいつら来ないといいんだがな」

 

 どうだろう……来るか、来ないかは……怪しいところではある。

 

「もしも来たら、やるしかないさ」

 

「……苦しくないか? そうやって、真面目な顔し続けてたら……」

 

「苦しかろうがなんだろうが、やるしかないんだよ。他人に苦しんでほしくないからな……仕方ないのさ。リスクは誰かが背負うものだよ」

 

 白上さんが前に座っている……それにしても、邪魔だ。前の人の『ゲージ』が邪魔でブラックボードが見えない。『メッセージウィンドウ』があった時よりかは相当マシだが……それでも、見えにくい。

 

 というか、特定の人にしかない『好感度』と書かれたゲージはなんだ? あれの意味が未だにわからない……『白上フブキ』さんもこの教室のようだな。ゲージには、『35』と書かれている……高いのか、低いのか。相談すらできん……でも、やっぱり一番気に食わないのは、この世界の人をゲームとして扱ってることだ。

 

「……この世界の命はゲームなんかじゃねぇぞ、クズ共め……それを犠牲だとかなんとか言って、尤もらしい理由で殺しやがって……悪魔共めが」

 

「やっぱり、怒ってるのか……? いや、そりゃ怒るよな……」

 

「うわ、すごい顔してる……」

 

 体内の液体という液体が全て沸騰しそうだ。悪魔が人を騙す時には天使の格好をする、とは言うが……本当だったらしいな。やってることは悪逆そのものなのに、『七元徳』の名前を振りかざしている。

 

 名前と行動でもう矛盾してんだよ、徳どころか罪そのものじゃねぇか。なんだ? 『父よ、彼らをお赦しください。彼らは何をしているのか自分でわからないのです』ってか? その神すらもクズ共の味方だ。奴らが全面的に叩かれないのも神の力……『ゲームを弄る力』だろう。神が忖度してんじゃねぇよ。

 

「……えー、今日から隣の教室は生徒数が揃うまで廃止。馬場樹がこのクラスに入った、みんな確認しておけ」

 

「はいはい」

 

「あ、元樹くんと仲良い子だ」

 

 元樹は本当に人気だな……もしかして、これもインフィニティの作戦なのか? 全てを疑ってしまう、自分でも自分が疑心暗鬼に思えてきた。次の奴が何処にいるのか、それすらわからないんだ……くそ、『見つけたら殴る』以外できないのが本当に悔しい。

 

 そう思いながら、時は過ぎて昼休み。相変わらず全員、元樹に集まっている……どうやら俺は元樹のオマケ的な感じらしい。俺は元樹のような対応ができないから、その方がありがたい。

 

「元樹くん! 戻って一緒に戦ってあげたんだよね?」

 

「まぁな、男が一人で戦ってるのに、みんなと一緒に逃げられねぇよ! 俺だって男だ!!」

 

「誰にでも優しいし、その上強い! 私達の理想だよね!」

 

 ……と、思っていたら。元樹が俺を指さした。

 

「そして、その一人で戦ってた奴ってのがこの男! 馬場樹ってわけだ!!」

 

「俺に矛先を向けるな、俺はアイドルじゃないぞ」

 

「疲れた! パス!!」

 

 ……押しつけられた。どうしろって言うんだ。

 

「う~ん、やっぱ元樹と比べるとパッとしないなぁ~」

 

「顔も普通だし」

 

「でも強いらしいよ?」

 

 ……まさか、見せろとか言わんだろうな?

 

「へぇ~、そんなに強いのかぁ」

 

「そうは見えんけどなぁ?」

 

「……獣人の二人組?」

 

 紫色の猫の獣人と、茶色い犬の獣人。誰だ? バトルロワイヤルに参加してたらわかったのか? 参加できなかったのはグロリオのせい……つまりインフィニティのせいだ。なんの嫌がらせだ、インフィニティ?

 

「あ、上位に食い込んでた二人組だ!!」

 

「おかころコンビ!!」

 

「猫又おかゆと、戌神ころね……この二人が組んだら、正に向かうところ敵無し!! 正に最強のコンビ!!」

 

 ……そんなにレベルの高い人達に品定めされているのか。

 

「……こう見えて強さには自信があるんですよ」

 

「って言ってるけど、そうなの? 元樹?」

 

「あぁ、見た感じ動きは速いぞ? 力も多分あると思う……敵が敵だったから、測れなかったけどな」

 

 顔を近づけて、見てくる二人組。警戒中だ、多分これも『EVENT』だろう……迂闊だったな、いつの間に設置されたんだ……?

 

「筋肉はついてるみたいだけど……」

 

「戦ってみないとわからんなぁ」

 

「……多分、今はあなた達の方が強いと思いますけど」

 

 俺が勝ってるのは、『エラー』によるものが大きい。トレーニングはしているが……エラーが使えないと、俺の実力はガクッと落ちるだろう。この二人を強制終了するわけにはいかないし、『エラー』なしでも勝てるようにならんとな……

 

「おいおい、随分弱気だな……?」

 

「……『エラー』が使えないからだよ。一回動かなくすると、いつまで動かなくなるかがわからない。封じた後、すぐに『消す』からな……全身麻痺させるわけにはいかないだろ?」

 

「そうか……お前の能力も不便だなぁ」

 

 ただ殺すだけなら、力としては十分だ……でもバトルとなったら話は別。たとえ、仮想世界で行う『バトルロワイヤル』だとしても、『プログラム内での戦闘』である以上は、もし消えたら戻って来れないだろう。そうなったら、俺は罪のない人を一人殺すことになる。

 

「簡単に勝っちゃったらつまんないからさ~、強くなっといてよ? ボク達も強くなるけどね~」

 

「簡単に負けたら承知せんよ? わがった?」

 

「……わかりました、善処します」

 

 優勝したってことは……元樹はこの人達に勝ったのか?

 

「元樹、お前はこの二人とは戦ったか?」

 

「あぁ、戦ったよ? 二対一はキツかったな~、勝ったけど……」

 

「……戦法は専ら二対一での連携か。片方を先に潰した方が良さそうだな」

 

 今度のバトルロワイヤルには参加するつもりだ。一位を取れば、嫌でも奴の目に入る……奴がリアクションを取るかもしれない、その可能性があるなら、賭けないわけにはいかないんだ。俺の目的は飽くまで復讐……この光景を作りやがった張本人を叩き潰す。

 

「ねぇ、そもそも『エラー』ってなに?」

 

「……相手の動きを止める能力ですよ。やり続けると、敵が存在ごと消えます」

 

「うわ、恐ろしっ……」

 

 自分でもそう思う。

 

「ここで使うと多分、机も椅子も消えますよ」

 

「まさかの見境なし!?」

 

「発動した状態だと、触れたものが全部バグるのでね」

 

 みんなザワザワしてる、思ってたのと違うってか? 悪かったな。

 

「……それより元樹だろ、元樹が来てくれなかったら死んでたぞ、俺」

 

「おい!? 俺はもう……」

 

「返す。パス」

 

 元樹が悔しそうな顔をしている……お返しだ。そういえば『猫又おかゆ』さんと『戌神ころね』さんは『好感度』のゲージがある。違いはなんだ? 元樹にはないし……異性なら必ずあるってわけでもないようだしな。そう思っている間に時は過ぎて、放課後。辺りを警戒して、『EVENT』がないかどうかを確認しておく……今んところ、ないみたいだけど。

 

「……そんなことより奴らだ、奴らはどこだ?」

 

 セイントセブン。奴らを来させちゃいけない。それなのに、俺は……何もできることがないんだ。家のベッドに寝転がる……

 

「くそったれが……! 情報0でどうしろって言うんだよ!!」

 

 そう言っても、変わりはしない。この気持ちを吹き飛ばすために、また昨日よりキツいトレーニングをする。重りの量を60kgまで増やした。違う足音も聞こえてきたな……十中八九元樹だろう。50kmを走り切った後、筋トレとシャドーだ。これでまた、強くなれる。奴らに勝つために……ただの人間の俺が、どうにかするために。

 

「やらなきゃ、ならないんだ……!!」

 

 ……まだ足りないな。もうひとっ走りしてくるか。そう思って、もう10km追加で走りに行った。それだけだったのに……

 

「……なんでだ?」

 

「うわぁ、火事だ!?」

 

「燃えてるぞ!?」

 

 家が焼けている。殆ど全焼だ……中には父さんと母さんがいるのに。どうして、誰がこんなことを……消防車が来てる、それなのに火が消えない。

 

「父さん!! 母さん!!」

 

「ちょ、ちょっと君!! 待ち……」

 

「待っていられるか!!」

 

 そのまま突撃する……父さんと、母さんがいた。父さんが母さんを守るように抱いている……二人は一緒に焼けていた。完全に、ただの炭だ。まるで『故意に焼かれた』ように、燃えきっている。

 

「……誰が、こんなことを」

 

 俺は、いきなり全てを失った。銀行の預金も財産も何もかも。

 

「いかんなぁ……消火なんてしようとしてはァ」

 

「誰だ、お前は!?」

 

「……なんだ?」

 

 犯人か。俺の家族を、一番大切な宝物を、奪いやがった……許さない。そう思って、外に出た。炭になった死体に、背を向けて。




 全てを失うのは、いつだって突然。
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