(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
ここから話が動きます。
怒りを抱いたまま、外に出ると……現れた男が何かを言っていた。多分、こいつが犯人だな。
「家が欲しい、車が欲しい……全て欲望だ、それはいかんぞ……節制が足りんのだよ、お前達は」
「警察だ!! 犯人はどこですか!?」
「こいつです!!」
……あの制服は、間違いない。インフィニティの部下のものだ。それも、グロリオやカルミアと同じ制服。またセイントセブンか……!!
「動くな! 両手を上げろ!!」
「……お前達は何故そうする? 市民を守るためか? 人を笑顔にするためか? 違うな……根本的には給料のためだ。節制とは自分の欲を抑え、理性の力によって秩序を保つことだ……そして、全ての欲は秩序を乱す。つまり、無くならねばならんのだ。家とは、『住処が欲しい』という欲の象徴。だから、我が『節制』に基づいて消し去ったのだよ。わかるかね?」
「黙れ、犯罪者め!!」
今なら殺れる。殺せる……エラーを起動した。殺してやる……殺してやる!! 全力で走って、奴に殴りかかった。奴は明らかに不満そうな顔をしているが……ムカつく面しやがって!!
「……家と一緒に燃え尽きていなかったのか、醜い『生存欲』の塊のエラーめ。お前を燃やせて一石二鳥だと思っていたのだがな」
「死ねぇぇぇーッ!!」
「今度は『殺害欲』か……やはり欲まみれだな、セイントセブンは世界のために動いているが……お前達は世界に全く影響しない。行動理念は、全て『欲』だ……真実を知って絶望するのも、『欲』に基づいて行動をしてきたからだ……自業自得ではないか。これもそうだ、『欲』が産んだ『自業自得』なのだよ……『infinity blessing』起動」
避けられた? 関係ない、当たるまでやるだけだ。踏み込んで、奴の体に拳を振るい続ける。
「うぉらァァァ!!」
「この私、『節制』のアザレアの力を見よ! 『Abstinence Saint』!!」
「……銃がない!? 消えたのか!?」
関係ない、俺の武器は体だ。
「節制するのだ……全てをな。我らには武器も、物も必要ないのだ……私が能力を使えば、全ての所有物は我が節制の力によって消滅する」
「な……!?」
「どうした、俺は死んでいないぞ!?」
腕も足もある、当たれば勝てるぞ。こいつは弱い……!! 今は避けているが、いつかは当たるはず!! 右足を軸にして回転しながら放った、足裏のメガトンキックも避けられ……奴が笑みを浮かべる。
「……そう焦るな。すぐに力を見せてやる……!!」
「全員でかかれ、押さえつけるんだ!!」
「……特殊番号03、『グリードライフル』!!」
奴は地面に手を置いて、ライフル銃を引っ張り出した。それがどうした? そう思っていると……
「ライフル銃!? どこから出した!?」
「こいつらは『デバッガー』だ!! その辺の同質量の物を自分の武器に『変更』してくるぞ!!」
「なんだそれ!? チートじゃないか!!」
というか、チートそのものだ。バグをデバッグするためにチーターを使う……ゲームマスターとして、それでいいのかインフィニティ。殺人を容認するような野郎に何を言っても無駄かもしれないけどさ。
「違うな、チートとは『ズル』の意!! だが、我々はそれに当てはまらない!! 『デバッガー特権』と言って欲しいな!!」
「それで人殺しをして正義を語れるわけか!! 納得だ!!」
「減らず口を……! 今すぐその口を塞ぐ光景を見せてくれるわ!!」
銃を構えた、撃つ気か!! させないために、踏み込んで拳を打ち込む体勢に入ったが……
「やらせるか!!」
「遅いぞ……『装填』ッ!!」
「う、ぁ……」
奴が『装填』と言った瞬間、周りにいた人達が一斉に倒れた。
「お前、何をしやがった……!?」
「簡単な話さ、これは欲望を弾にする銃。欲が全て無くなり、欲から生まれる感情も無くなった。今の奴らは最早、物言わぬ死んでいないだけの肉塊だ。恨むなら、自分達の欲望の強さを恨むのだな」
「貴様……!!」
あの人達はもう動かない。家族がいるのに、もう何も言えないし、感じられない。廃人にされたんだ……こいつが俺を殺そうとしているせいで。なら、俺が死ねばいいのか? ……そんなわけない。俺はエラーだろうがなんだろうが、人として生きていたい。ここにいた人達も、殺されてきた人達も……父さんも母さんも、そうだったはずなのに……それをこいつらは!!
「義憤を感じる資格は貴様にない!! 死ねェ!! 『グリードバレット』!!」
「だいぼうぎょ……っ!?」
「驚いたか? そう、これこそが我が力!!」
銃弾が一発じゃない。確かに音は一回だったのに、弾が100個以上ある。そして、それらが全て真っ直ぐ向かってくる。回避は無理だ。
「っっっ……!!」
「欲望とは常に増え続けるもの。撃った途端に増殖し、敵に回避の余地を与えずに撃ち殺す。それが我が力よ」
「チッ……!!」
こいつはカルミアと違って、攻撃に一切代償を必要としない……本人は無敵じゃないが、そもそも近づくことを許してくれない!! 如何せん攻撃の数が多いから、威力も実質同じようなものだ……イカレてんだろ!!
「力の差がわかったか、エラー? ならば大人しく、この世界のため自己犠牲をすることだな」
「……1つ、聞かせろ」
「なんだ? 冥土の土産に1つなら教えてやらんでもないぞ。教えられることなら、だがな」
銃をこっちに向けたまま、アザレアは笑う。これだけは確認したい。
「お前は……もし、俺がいないとわかっていたら父さんと母さんを殺さなかったか!?」
「いいや? 問答無用で殺しただろうな。まぁ、じっくり焼き殺すかどうかはわからんが……エラーを産んだ罪深き存在を、生かしておくわけがなかろう?」
「どうして焼き殺した……!? 何故お前のその銃で殺さなかった!? 弾がもったいないからか!?」
奴は首を横に振った。そして、言い放つ……
「弾など、信者から幾らでも手に入る。奴らが抵抗してきたからな……愚か者の悲鳴と断末魔を主に捧げようと思ったのだ。ちなみに、死ぬ前の言葉は二人揃って『息子に手を出すな』だったぞ……悲鳴を上げず、命乞いもしないエラーとその関係者に価値などないと何故分からんのだ? これまでの奴らもそうだったが、丁寧に理由を説明してやったら怒る始末だ……せっかく貴重な時間を割いてやったのだから、感謝して欲しいのだがな……エラーなど所詮、その程度ということだ。自分の価値を『節制』できないエラーに価値などないのだよ」
「……」
「おぉ、ついに自分の無価値さに気づいて何も言えなくなったか。それでいいんだ……潔く死ぬがいい。世界のため、自分の命を『節制』せよ……!! グリード……」
父さん、母さん。警察の皆さんに、ご近所の皆さん……助けられなくてごめんなさい。俺は、こいつを殺して仇を討つ。そして……インフィニティも、セイントセブンも……殺すから。見ててくれ……もう、躊躇する理由はない。誰かが殺られる前に……皆殺しだ!!
「悲鳴を上げるのはどっちかな……」
「なっ……愚か者め、諦めたのではなかったのか!?」
「お前を殺す。お前の仲間も殺す。大神官も、神も……皆殺しだ。まずはお前から……大好きな神様のところに送ってやるよ!!」
怒りと憎しみが煮えたぎる。悍ましい感情が血と一緒に体中を駆け巡る。目の前の敵を殺すために、相手をただの物言わぬ白い肉へと変えるためだけに。
「エラーがデバッガーに生意気な口を利くな。死ね」
「……!!」
「……こっちに向かってきた!? 死ぬ気か!?」
こっちに向かってくる大量の弾……避けることは不可能。だが……グロリオが投げた爆弾は無効にできた。なら……銃弾だっていけるはずだ!! そう思って、俺は肩を突き出して走り、銃弾にタックルを仕掛けた。体中エラーになってるんだ、体のどこかで攻撃すれば……生物より単純なプログラムでできてる『物』はすぐバグる!!
「……成功だ」
「なっ、銃弾が消えた……!?」
「こうする他無かったんでね……」
もう一度奴が俺に銃を向ける……こいつの弱点は、銃そのものだ。
「……」
「っ!? グリードライフルが……!!」
「お前の弱点は銃そのものだ……弾を他人に依存すれば、確かに自分はダメージを受けない。だが、弾を装填した後の『入れ物』である人間は空っぽだ……二度は装填できない。だから、銃が一度無くなれば……再装填しなきゃならない!!」
こいつの弱点はそこなんだ、自分に近づける奴なんてこの世にいないから、そこを無視した戦い方をしている。俺が常識破りの『エラー』だから出来た芸当だな……奴は本当に焦っている、お得意の武器禁止も使えないもんな。
「くっ……特殊番号……ぐふっ!?」
「やらせるかよ」
「ぐっ、ぎ……」
その場で踏み込み、思いっきり腹を殴った。奴は腹を抑えている、攻撃されたのなんて初めてって顔だ。傷つく覚悟がないなら戦場に出てくるんじゃねぇ……俺の好きな言葉の1つだ。それから、腕を封じるために殴りつける。
「……」
「う、腕が動かなく……がっ!?」
「足もだ」
四肢を封じた。これだけでこいつは何も出来ない。さっさと殺さないと、そうでないと……なのに、俺は怒りと憎しみが傷から溢れる血と共に次々湧いてくる。頭がどうにかなりそうだ……俺は気づかないうちに、奴の頭を掴んでいた。
「あ……ぎぃぃ!?」
「……!!」
「や、やめ……」
奴を地面に叩きつけた後、俺は奴に馬乗りになって、殴り続けた。顔面を叩き潰すために……それで何人の人を嘲笑い、殺し、見下し……廃人にしてきたのだろう。考えれば考える程、怒りが湧いてくる。俺の流した血と、奴の流す血が混ざり合って……どちらの血なのか、もうわからない。
「い、ダ、イ……ヤメ、て……」
「……」
「ぐげぇぁぁぁ!!」
怒りに任せて、暴力を振るい続ける。母さんの優しい瞳も、父さんの心強い背中も、もう二度見られない。その原因に、ただ怒りをぶつけ続ける。いつしか、音は打撃音から潰すような音に変わり……奴は、体中から血を流していた。俺は腕が動かなくなっている……2分くらいやり続けていたようだ。体中ぐしゃぐしゃだ……どう殴ったか、覚えていない。
「シ、ニ、タク、ナイ……ヤダァ……ヒィィ……」
「……ウァァァァァッ!!」
「ぁ……」
俺は、奴の喉笛を噛み千切った。俺は、血塗れだ。殺したんだ、エラーで消したのではなくしっかり殺した。一つの命を奪った。口の中の血の味は自分の血か、奴の血の味か。でも、ひとつ言えるのは……
「……クソ不味い」
そうボヤいて、噛み千切ったものを血と共に吐き出した。奴の死体と、全てを奪われた廃人達。地獄絵図だ……焼け焦げた父さんと母さんは何も言ってくれない。血塗れの俺を心配してはくれない。もう二度と、会えない……プログラムだとしても、貰ってきた愛は本当だった。でも奪われた、もう二度と貰えないしお金では買えない。その事実と自分の無力さが、のしかかる。俺はただ、壊すことしかできない。何一つ守れてない……これまでこいつらのせいで死んだ人達を、零してしまったんだ。それを知って、俺は……
「う、ぐっ……っ、っ……!!」
涙が溢れ出す。止められない、死体と廃人の山と血の海の中に、俺の涙が落ちる。落ちた涙は血に掻き消されて、消えていく。
「ゔぅわあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ!!」
俺は泣いた。誰一人として生きていない、虚しい戦場の跡地にて。ひとしきり泣いて、家が燃え尽きてしまった後……
「……なんだよ、これ……樹、どうしたんだよ!?」
「……これは『節制』のアザレアの死体だ。俺が殺したんだ、喉笛を噛み千切ってな。焼け焦げてるのは俺の父さんと母さん……こいつに拷問された後焼き殺された」
「……樹の家が燃えてる……そんな……」
この人達も、もう助からないだろう。完全に廃人だ……
「こいつの能力で、この人達は廃人にされた。もう何も感じられないし、考えられない……俺の責任だ、助けられなかったからな。こいつは俺が撲殺した……怒りと憎しみに任せて殴り殺したんだ」
「……お前、身寄りはあるのか?」
「ない。血が繋がってて連絡が取れるのは、父さんと母さんだけだ。俺は正真正銘天涯孤独なわけだな……さてと」
俺は痛みを抑えて立ち上がる。復讐のために。
「おい、どこ行くんだよ……!?」
「セイントセブンの奴らを探す。見つけたら、問答無用で殺す」
「復讐か……? それは否定しないが、その怪我じゃ……!!」
怪我してる間に奴らは来る。エラーがないとセイントセブンは倒せない……奴らは純粋に強いだけじゃ、勝てないんだ。
「もう無くすものはない。あとは殺すだけだ」
「待てよ!!」
「……」
もう、耳に入らない。俺は街を出て、殺しに行く。どこに居るかはわからないが、とにかくこの街を出よう。探すしかないんだ……そう思って歩を進めた時だった。
『ここからはまだ通れません』
「……は?」
「お、おい? どうした? ……何を蹴ってるんだよ!?」
ここまで来て邪魔をするのか。また怒りが湧いてきた……叩き壊してやる。そう思って、エラーを起動した。地面を怒りのままに蹴りつけて、ウィンドウに足裏をぶち込む……怒りに任せて、拳を叩き込む。だが、壊れてはくれない……やっている間に、足が止まって動かなくなった。早くここから、出ないといけないのに。俺が倒れている間に、何人もの人が奴らの傲慢に潰される……そんなの、嫌なのに……体が言うことをきかない。俺は……無力だ。
「……っ」
「また体が動かないのか!? 無茶すんな、運んでやるから!!」
「……くそ」
俺は敵を倒した。これで街は救われた……裏を返せば、『街以外救えなかった』。駆けつけた人達も、父さんも母さんも救えなかった……俺の助けたいものには、何一つ手が届いていない。虚しい勝利……これは、正にそれだ。そのまま、病院に運ばれて……弾丸を摘出した後、寝かされている。
「……奴もあの、『セイントセブン』っていう変な奴らの一員だったのか」
「今回の奴は全ての武器を封じて、俺と元樹のような人間じゃない人の欲望と、感情を吸い上げて弾丸に変える能力があった。弾丸は撃った瞬間に増殖して、絶対に回避を許さない……戦わなくてよかったな、もし撃たれてたらこの世に居なかったかもしれんぞ」
「変な能力ばっかりだな……奴らはそんな能力、どこから得てるんだ?」
そんなの、決まってる。インフィニティの野郎だ。
「奴らが信仰してる『神』……インフィニティの野郎が与えてるんだ。誰にも負けないチートをな……この世界の罪のない人を、『デバッグ』の名のもとに虐殺する為に」
「何だよそれ……意味わかんねぇよ、俺達はその邪魔をしてるってか? 俺のことも主人公がどうとか、樹はエラーだとか……全然話が見えてこないぞ!!」
「安心しろ。俺だって意味がわからないんだ……だから、理解しようともしてないよ。殺られる前に殺るだけだ……もう、三人殺したしな。綺麗事を挟む余地はない」
ふと、ニュースを見てみると……事件のことが言われていた。
『一般社団法人『セイント・インフィニティ』所属の人間……『アザレア』容疑者は、放火した後、故意に馬場 裕太さん(45)と馬場 由紀さん(39)を焼き殺したということが、司法解剖の結果判明しました。駆けつけた警察官や人々は脳死状態であり、戻る見込みはないとのことです。増援の警察官が朝8時頃に到着したところ現場を発見。その時点で、辺り一帯は血の海であり、容疑者は既に死亡。周囲の人々も脳死状態であったとのことです』
「……俺が樹のところに来たのが、6時くらいだったから……警察は2時間後に来たのか」
『警察からの情報によりますと、容疑者を司法解剖したところ、体が如何なる手段でも動かなくなっていましたが、筋肉などに異常は見られなかったそうです。死因は喉笛を噛み千切られたことによる失血死。また、その前に激しく殴打されていたことがわかっています。容疑者と戦闘したのは、馬場 裕太さんと馬場 由紀さんの息子に当たる馬場 樹さん(18)であることが、判明しています』
そうだぞ、俺がやったんだ。
「樹の能力ってどんな能力なのか、目の前で見ても、イマイチよく分かんねぇんだよな……動かなくしたり消したり……」
「無理に理解しようとする必要はないぞ。使ってる俺もどういう仕組みなのかはわかってないからな」
『ジェノサイドを行った容疑者は、ライフル銃を原理不明の力で地面から取り出し、馬場 樹さんを撃っていたことが、被害者のビデオカメラの映像からわかっています……それでは次のニュースです、一般社団法人『セイント・インフィニティ』への調査を裁判所が禁止しました』
……は?
「ちょ……なんでだよ!? 人が死んでるんだぞ!?」
『裁判所によれば、『一般社団法人セイント・インフィニティ』は清廉潔白であり、調査には値しない。これは個人の暴走であり、組織への責任を問えるものではないとのことです』
「……インフィニティ……!!」
常識改変くらいお手の物かよ……!! やっぱりこの世界は、あいつの掌の上……ふざけるな!! 父さんと母さんは、罪のない皆さんは……なんで死ななきゃならなかったんだよ!! テレビを消して、拳を握る……皮膚が破けて、血が出てきた。俺が血を流しても、彼らの血が無くなるわけではない……この痛みは、誰のためにもなりはしないのだ。
「これもその『神の力』だっていうのか……? ふざけんなよ!!」
「……奴らの居場所は、結局わからずじまいってわけだな。インフィニティは自分達の居場所を隠したいらしい……」
「なんでそんなに冷静で居られんだよッ!?」
元樹が、俺の胸倉を掴んできた……こんな顔、するんだな。まるで水をかけられたかのように、怒りが消えてしまった……一周回って怒れない、ってやつか……
「……もう、怒る気にもなれない。俺は……誰も助けられなかったからな。目の前にいた人も、大切な家族も……そう思うと、怒る気になれないんだ」
「っ……悪い。そうだよな……全部、失くしたんだもんな……俺こそごめん。すぐ来れなくて……」
「いいんだ、俺が一人でケリをつけたかったしな……」
元樹は渋い顔をしてる。本当に気にしてないから、そんな顔しないでくれ。
「……復讐、するのか?」
「そうだって言ったら、どうする? 俺を止めるか?」
「いや……止めないよ。奴らはお前の大切な物を全部奪った……復讐されたって、文句は言えないさ。その上奴らの悪行は、カミサマの忖度で隠されるんだから……樹がやる以外ないだろ」
だよな……奴らもインフィニティも許しはしない。全員まとめて、この世から消し去ってやる。
「俺は……ついて行っちゃダメか?」
「ついて来たいのか?」
「あぁ……奴らのやってることはどうしても気に入らない。叩き潰したいんだよ……やらせてくれないか?」
……殺される可能性はある。それに、大切な物を全て無くすことになる。
「……事の重大さはわかってるか? お前は一歩間違えば殺人犯になることをやろうとしてる……学校も行けなくなるかもしれない。四肢だって千切れるかもしれない……何なら、死ぬかもしれない。お前を守りながらは戦えないぞ……」
「わかってるよ。承知の上だ……俺はこの街で、救われるのをじっと待ってるなんて嫌だ。せっかく力があるのに、それをみんなの為に使えないなんて……もどかしいじゃないか。だからさ、頼む。俺にもその復讐……手伝わせてくれよ」
「……覚悟はわかった。じゃあ……まず情報集めからだ。裏社会でもなんでもいい、誰かいないか?」
……また、二人で考え込む。すると、あいつが何かを思いついたように顔を上げた。
「あ……いた!! 裏社会と繋がりがある人達……!! でも、依頼料が要るんだよな……」
「……まずは、金を稼ぐことかららしいな」
「……そろそろ、ダンジョンが出る時期だ。潜るしかないだろ……!!」
ダンジョン……危険だが、危険であればある程宝の内容が良くなるらしい。ダンジョンの宝を取ってくる仕事もあり、とんでもない額の前金を貰う代わりに、それ以上の利益が出るかもしれない……なんて仕事もあるらしい。報酬目当てで潜って痛い目を見たり、死亡したりする人達が多いらしいが……そこら辺は自己責任、自分の命を賭け金にしてギャンブルするわけだ。
「……明明後日には治りそうだ。行くか?」
「もちろん……放課後、徹夜で依頼金を稼ぐぞ!!」
「わかった。じゃあ……やるか」
たった二人の復讐計画、開始だ。首を洗って待っていろ、セイントセブン……!!
次の日。学校に行くと……周囲の目が哀れみの色に染まっていた。わかってたことではあるが……
「……親があんな殺され方して……悲しそう」
「酷すぎるよね……俺が何とかしてあげないと」
「……うるさいな」
俺は哀れまれても嬉しくない。俺はお前達の自慰の道具じゃねえっての……まぁ、何を言っても無駄か。
「……この状況、嫌か? 嫌なんだったら……」
「気にするな。奴らに文句を言ったら、反転してお前を攻撃し出すぞ」
「だけどさ……」
被害者はみんなこうされる。仕方ないことだ……していない人達は、ほんのひと握り。人間なんてそんなものだ……そこにつけ込むのも、カルト宗教のやり方だ。セイントインフィニティとかな。因みに、そのひと握りは好感度が上に浮いている人達だったが……どう違うのだろうか? そんなことを思いながら、学校を終えた後準備をして待ち合わせ場所に走る。元樹は結構前から待っていたようだ……
「悪い、待ったか?」
「待ってないよ、今来たところだ!!」
「……やるか」
街外れの森。ここに発生しやすいらしいが……行ってみるか。
「手分けして探すぞ。目的はわかってるよな?」
「あぁ、今日一日で金を集めるんだろ? いくら位いるんだ?」
「わかんねぇよ、何せ初めて頼むからな……やるぞ!!」
森の中に二人で突撃する……使えるものは全部使ってやるぞ。そう思って、ずっと使っていなかった『眼』を起動する。周りがまたプログラムに変わった……プログラムが周りと違う場所がないか?
「……あった!!」
岩に隠れているが……この程度、エラーを使わずとも……!!
「……インファイト!!」
岩に打撃の雨あられを浴びせる……岩が砕けた、ビンゴだ。『眼』で見てみると、中にはモンスターがうじゃうじゃいた。まるでアリの巣を潰されたアリのように、大量にいる……これは難易度が高そうだ。つまり報酬もデカい……!!
「いきなり当たりらしいな……!!」
そう思って、中に突撃する。エラーを起動して、先制攻撃だ。
「gyau!?」
「うぉらっ、うらぁっ!! うりゃあぁ!!」
「gaa!?」
セイントセブンの攻撃を見切ってきた後だとやけに遅い。モンスターだから、簡単に当たってくれる。だが、湧いてくるモンスターが止まらない。一匹いたら百匹はいる……ゴキブリかよ。
「……とりあえず全部だな。さて……何かあるかな?」
左腕が止まったが……それくらいはいい。エラーを切って、『眼』を使う……見えた!! あそこに隠し部屋があるぞ……!!
「……正拳突き!!」
壁が壊れた……あったぞ、宝箱だ。
「ん? この宝箱……鍵がかかってるのか」
こんなこともあるんだな……鍵を持ってこないといけないのか? それか、鍵を開けるアイテムかなんかがあるのかな……この世界がゲームだということを考えると、後者の可能性が高そうだ。鍵は大分錆びてるし……ゲーム的に考えると宝箱を壊したら、中身も壊れる感じか。だが……
「バグらせるのは想定外だろ!」
エラーを起動して、踏みつける……バグったな。宝箱が消えた……中にあったものは……
「……宝石か。宝石は魔法の強化に使えるから、高騰が続いてるんだったな……デカいし、高額で売れるだろう」
武器とかが見つかっても、エラーを使った状態じゃ持てないし……金になるものが一番ありがたい。その上、倒せば倒すほど強くなってる気がする。このまま続けるぞ……!!
「……また湧いてきたか。かかってこいよ!!」
俺は敵の群れに突っ込んで……それを何回くらい繰り返しただろうか。結構やられたが……豊作だ。
「……元樹。大丈夫……ではないな」
「へへっ、まぁな……でも! 沢山取れたぜ!!」
「俺もこれだけ取れた。換金すれば依頼料にはなるだろう」
裏社会の組織なんだ、金が滅茶苦茶かかるはず。命を懸けてもらうとなれば、さらにかかる金は吊り上がるだろう……
「よし、明日の放課後に売りに行った後そこに行く! またここで待ち合わせだ!!」
「わかった。じゃあ、また明日」
「……そういえば、お前どこに住んでるんだ?」
火災保険と生命保険が降りたから、しばらくは大丈夫だ。2LDKの賃貸を借りている……
「賃貸。住む場所はあるから、安心してくれ」
「それならいいんだがな……もし家がないなら、家で泊まれとか言うつもりだったんだけど」
「そこまで迷惑はかけんよ……でも、ありがとうな」
元樹は本当にお人好しだな……
「そうなるかなって思って、布団とかも買ってきといたんだけど」
「準備万端だな……」
「まぁ、そうでないなら全然いいんだよ! また明日な!!」
元樹がそう言って、俺達は別れた。さてと……家に帰るかな。住んでるのはマンションの一室だ。生活必需品は買い揃えてある、家電も最低限はあるし……これで十分だ。そう呟きながら、風呂に入った後服を洗濯機に叩き込む。あとは料理だ……昨日の残りでいいか。昨日のハンバーグだ……
「……ごちそうさま」
母さんのハンバーグは美味かった、そのレシピ通りなのに……美味しくできない。
「助けられなくてごめんなさい……」
仏壇に一言謝っておく。参加はできないので火葬で済ませてしまった……もう二度と会えない。自分のせいだ……でも、殺したのは奴らだ。だから……殺し返す。明日、奴らの居場所がわかるから……終わらせに行く。
「……明日は学校の都合で早めに終わる。元樹の言ってた組織が何かはわからないが……何でもいい、奴らを見つけてさえくれれば……あ、学校に行く前に買っていかないとな……忘れないようにメモしとこう」
メモをしっかり取った後、俺は床についた……BGMが、怒りの炎にガソリンを注ぐ。寝られないな……
「……もういい。トレーニングしよう」
どうせ一日では見つからないんだ。怪我なんて気にならない……殺されたみんなは、父さんや母さんは、もっと痛かったはずだから。そう思いながら、俺は今日も怒りを自分の体にぶつけた。体から流れ出る血と汗を、死んだ皆さんへの手向けにしよう……すぐに奴らの命も、供えるから。待っててくれ……!!
「絶対に殺す……!!」
そう呟きながら、俺は足音と風の音で殺意の湧くBGMを掻き消した。
次回、また彼女達の力を借ります。