(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
次の日。俺は今日も、行きたくないのに気がつけば学校にいた。これも、神野郎のせいだ。俺と元樹は、それとそのお仲間を殺すために動く……行く前に宝石とかを換金して、あれを買う。昼休み、殆ど誰もいない教室にて……
「……それにしても……」
「かわいそうに……」
「悲しそうな顔……」
……うるさい。俺はお前らの愛玩動物じゃねぇんだぞ。
「……なぁ、俺達になんかさせてくれよ」
「いいです、気持ちだけ……」
「そんなこと言わないで、親切にしてるんだからさ!!」
……手に力が入る。こいつらもインフィニティの野郎とやってることは変わらん。奴は俺達をゲームの道具にする、こいつらは俺達を自慰の道具にする……歯軋りが止まらん。
「そうだぞ、せっかく親切にしてやってんだから!!」
「受け取れよ、おい!!」
「おい、やめろよ!! 樹が嫌がってんだろ!?」
親をやられてから、こういう奴らが憎くて仕方がない。また、血が沸騰し始めた。憎しみが体を貫いていく……元樹の言葉を一蹴し、自慰中毒者達は続ける。
「元樹、せっかく俺達が親切にしてんだから、黙ってろ!! おい、なんとか言えよ……そうか、辛くて何も言えないのか!! なんて可哀想……!!」
「私も何かする!! できることがあったら何でも言ってよ!!」
「……そうか。じゃあ言わせてもらおう」
憎しみがあたかも吐瀉物のように、口から吹き出る。
「お、おい……樹? どうした……?」
「その口を今すぐ塞げ。俺を貴様らのオナニーの道具にするな。俺は貴様らの犬や猫じゃねぇんだぞ?」
「……ハァ?」
奴らが全員、一斉にキレた。せっかく親切にしてやったのに、ってか? 俺は求めてなかったのに? 親切の悪徳商法をしておいて、こっちが怒ったら逆ギレするのか……貴様らのオナニーが透けて見える。
「テメェ……せっかく人が親切にしてやったのに、その言い草はなんだ!?」
「俺はそれを望んでない。さっきから断ってるだろう」
「こんのぉ……恩知らずがァ!!」
セイントセブンの攻撃を見た後だと、やけに鈍く感じる。奴の拳を掌で受け止める……軽い。俺は奴らよりも強すぎる、鍛え方が違うんだ……殴ったら、こっちが悪者にされるのは確実だ。だから……
「舐めてんのか、クソ野郎!!」
「おい、やめろって言って……」
「元樹、やめてくれ」
お前まで悪にされることはない。そう思って元樹を止めた。
「でも、お前……」
「いいんだよ……」
「この野郎、人が親切にしてやってんのに!! クソ野郎め、恩知らずめ!!」
さっきは咄嗟に受け止めてしまったが……わざと無抵抗で喰らう。痛くないな……
「もっとボコれ! 正義の鉄槌だ!!」
「樹……やめろって……!?」
「やめてくれ……」
助けなくていいよ……学校での立場まで、失うことはない。できる限り、苦しいのは俺だけでありたいから。
「……何これ!? ちょっと、すぐにやめてください!!」
「白上、悪いのはこいつだよ! こいつが俺らの親切をオナニーだとか言って、バカにしたのが悪いんだ!!」
「……そういうことだから、俺に関わるな」
評判が悪くなろうが何だろうが、別に構わないさ。どうせ復讐を終えれば、この学校に行く意味もなくなる……インフィニティを殺したら、俺には何も残らんからな。
「喰らえ!!」
「っ!? 魔法!?」
「っ……ぐぅぅ……」
風魔法で飛ばされて、机に激突する。机が倒れて、俺にのしかかる……俺は大袈裟に、痛がるフリをしてやった。すると……
「ハッハッハッハ!! いい気味だ、俺達の親切バカにしたお前が悪いんだぞ!! あースッキリしたぁ!!」
「こんな奴に関わっていられないわね……」
「行こ行こ、こんな奴どうにでもなっちゃえ!」
……行ったな。これでいい……
「おい、樹! 大丈夫か!? お前、なんで……!!」
「……この俺が何もせずに、やられてやると思うか?」
「……それって、まさか!?」
昨日ランニング中に買っておいたんだ……こういうことになる予測がついたからな。小型ボイスレコーダーだ。スイッチを入れておいたから今のは全部筒抜け……魔法がちょっと効いたが、他は全然大したことない。
「まぁ、そういうことだ……綺麗に引っかかってくれたな」
「心配したぞ……お前、一方的にやられてたし……痛くないか?」
「多少魔法が効いたが……他はノーダメージだ、鍛えててよかったな」
とにかく、奴らはこれで何とかなる。さっさと警察に持っていこう。
「……じゃあ、警察行ってくるから」
「あぁ……全然キレなかったな、樹……」
「……そんな回りくどいことせず、ぶっ飛ばせば済む話だろ……それが人間のやり方なのか?」
……今の声は誰だろう。ここにいる人の声じゃなかった気がするが……まぁ、いいか。警察にそれを持っていくと、すぐに動いてくれた。被害届を書いて、後は流れだ。奴らは18歳以上だったので、実名報道がされたらしい……
「……クズめ!!」
「地獄に落ちろ!!」
「このクソ野郎!!」
なんと言われようと構わん……これもインフィニティの仕組んだ『EVENT』だったのか? 何のつもりだよ……俺に精神的追い討ちでもかけようって魂胆か? 残念だったな、お前が見てない間から、こういうのは慣れてるんだよ。あの時は隠蔽が酷くて、反撃するしかなかったが……ここはいい学校だ、隠蔽がないしな……学園長の谷郷さんが人格者らしい。
「……あいつら、どうなるんだ?」
「訴訟の準備をする。今回のは暴行と名誉毀損だから……合わせて罰金が80万ずつで、弁護士料合わせて、計200万ってところか。学校からは退学処分らしいぞ」
「お前って用意周到だな、色々と……」
いつインフィニティが何をしてくるかわからんからな。細心の注意を払っておかないと。
「インフィニティの野郎は俺の命が欲しいんだ。だからわざわざ、幹部のセイントセブンを差し向けて殺しに来てる……もしかしたら、俺を痛めつけたのも精神的に追い詰めるためだったのかも」
「インフィニティの奴、人の心まで操れるのかよ……どんな姿してるんだろう?」
「……さぁな。俺も名前だけしか聞いたことがない」
ただのプログラムの塊……って言っても、信じちゃくれないよな。奴に姿ってもんがあるのかすらも怪しい……
「怪我は痛くないか?」
「あぁ、もう痛みは引いたよ」
「ならいいんだが……」
本当に痛くも痒くもない、鍛えててよかったな。白上さんは心配してくれていたが……余計な心配をかけてしまったな。
「……あの、大丈夫ですか?」
「大丈夫です、ご心配なく」
「だったら、いいんですけど……無理しないでくださいね?」
……こういう、雑念なんてない純粋な優しさを向けてくれる人……元樹もそうだけど。こういう人達も、『お前はエラーだ』そう言われて惨殺される……こんな惨い話があるか?
「……あの時、止めようとしてくれてありがとうございます」
「いえ、当然のことをしたまでですよ……!」
「……っ」
こういった純粋な優しさを見ていると、父さんと母さんを思い出してしまう。もう会えない二人を……
「……あー、考えるのやめよう」
「えー、馬場が被害を受けた件についてだが、警察と弁護士の方で処理がされるそうだ。くれぐれも、誹謗中傷などしないように。もししたら、奴らと同じように退学だぞ」
「……」
どうやらヘイトを買っているらしいな……大人気ないぞ、ってことか? まぁ、どうでもいい。俺の目的はただ一つ、奴らの居場所を可及速やかに知ることだ。その邪魔をするなら……誰であろうと、跳ね除けて進む。そう思って、学校を終えた後……換金できる場所に行って、買取をしてもらった。魔法道具に使われるので、宝石は重宝されるのだ……まとめ買取キャンペーンとかで、買取金額に追加されて……
「……二人合わせて、幾らだ?」
「俺も樹も3億と10万ずつ貰えた、合わせて6億と20万か……」
「これだけあれば、どんなにぼったくられても足りるな……少し電気屋に寄らせてくれ」
どれだけぼったくられても、これだけあれば足りるな……おっと、忘れてはいけない。あれを買わないと……
「いいけど……何買うんだ?」
「依頼に必要なもの。10万あれば足りるさ……」
「必要なもの……?」
一番高性能な『必要なもの』を4つ買って、鞄に入れた。これでよし……
「待たせたな、行こう」
「おう……いいか、金は半分ずつ出し合うぞ」
「わかった。それで……どこに頼むんだ?」
そう聞くと、元樹はニヤッと笑い……
「……秘密結社だ!!」
「はぁ……?」
「秘密結社……思い出したんだよ、ここならいける! ってな」
いけそうではあるが……そもそも元樹は、場所を知ってるのか?
「……秘密結社って、場所はわかるのか?」
「うん、わかるよ?」
「え、そんな簡単に言う?」
何処にあるんだろうか。そう思って歩いていると……
「ここだ!!」
「……ビルじゃん」
「ほれ、書いてあるだろ? 名前!!」
デカデカと『秘密結社』と書かれてる……どこが秘密だ。子供の秘密基地じゃないんだから。
「ここの名前は?」
「holox。チラシ配ってたんだよ、あなたの依頼請け負います……って書いてあるやつ」
「……それでいいのか、秘密結社」
住所までチラシに書く秘密結社って……仕事の出来が心配になってきた……まぁ、必要なものは買ってある。使えるものは何でも使わせてもらおう……
「ビルの二階……ここか」
「そうみたいだな……お邪魔します!!」
「こんにちは、秘密結社の皆さんいますか?」
そう言って入ると……あちこちから轟音が聞こえてきた。もしかして、片付けしてるのか……?
「え、お客さん!?」
「よりにもよって今来る!?」
「準備しろ、お前ら!!」
……大丈夫だろうか? 今んとこ真っ暗なんだが……
「これがholoxか……」
「なんか……秘密結社らしくはないな」
「そうだな……」
そう言っていると、轟音が止んで……電気がついた。
「クックック……客人よ、秘密結社へようこそ! ぜーぜー……」
「……子供? 悪いけど大人を呼んで……」
「樹……チラシによると、この子が総帥らしいぞ」
……はぁ? この子供が?
「秘密結社っていう名前……秘密基地とかと同じようなもんだったのか。納得」
「バカにするな!! 吾輩はラプラス・ダークネス……悠久の時を生きた、お前ら人間の言うラプラスの魔だっ!!」
「……上に乗ってるカラス、なに?」
なんで頭の上にカラスが乗ってるんだ? ペットかなにか?
「こいつはうざったいカラスだ、吾輩の拘束具が外れんように見張りを……」
「……外れかかってない?」
「あっやべ……とにかく、ラプラスの魔なんだ!!」
何これ。本当に期待できんぞ。
「お前疑ってんな!? 来い、お前ら!!」
「……あと4人出て来た。これで全員?」
「そうっぽいぞ」
そうっぽい、って……緊迫感が全然ないな。
「よし……お前ら、刮目せよ!!」
「やまだー!」
「やまだやまだー!!」
山田? 誰の名前だ?
「Yes my darkだっつってんだろ!?」
「もう飽きられてるよ、そのネタ」
「なぁっ!?」
仲良いな、秘密結社。
「……えっと、メンバーは……子供が一人、鷹が一人、侍っぽいのが一人、ピンク色の犬っぽいのが一人、シャチが一人……何これ?」
「さぁ……?」
「だから子供じゃねぇって言ってんだろうが!!」
怒られた。どっからどう見ても子供なのだが……違うらしい。
「仕方ないよラプ、ラプはまんま子供だしね」
「かんぶ!!」
「……初めまして。私は馬場樹……例の『節制』野郎を殺した張本人ですよ」
本当に大丈夫か? あっさり見つかって消されないだろうか。
「あと、それについて来た星崎元樹です。チラシ見て来ました」
「これまたすごいお客さんが来たね……知ってるとは思うけど、私が鷹嶺ルイだよ。で、子供にしか見えないのがうちの総帥のラプラス」
「だから子供じゃねぇって何度も……」
最早無視されてる。日常茶飯事らしい……
「ラプはほっといて……この三人が構成員だよ。用心棒と博士と掃除屋」
「……さっきまではふざけててわからなかったが、雰囲気からして強いな」
「どうだ、樹? いけそうか?」
大丈夫だろう……戦ったらまず無理だが、つけるだけなら簡単なはずだ。
「大丈夫だと思う……探すだけならな」
「……沙花叉達、すっごい肩身狭い……」
「なんか臭うな……」
この人からしてるのか、この臭いは?
「あぁ、一週間に一回しかお風呂に入らないからね。この子は沙花叉クロヱ、シャチの掃除屋でインターン……」
「ねぇぇぇぇぇ!! なんでみんな沙花叉のこと臭いって言うの!? いいじゃんお風呂入らなくても!!」
「いや、ダメだろ」
元樹が冷静にツッこんでいる……ごもっとも。
「なんでぇぇぇぇ!!」
「……で、こっちの耳と尻尾が生えてるのが博衣こより。コヨーテの博士だよ」
「紹介された博衣こよりでーす! 薬とか発明品とか、色々作ってるよ!!」
コヨーテって……どんな動物だっけ。
「なぁ、コヨーテってなんだ?」
「確か狼の仲間だった気が……」
「……ちょっとは反応してよ!? どんな薬があるんですか、とかさぁ!!」
そんなこと言われても……
「あ、すみません……その薬、なんですか?」
「よろしい! この薬はねぇ……」
「……で、最後に……この子が風真いろは、用心棒の侍だよ。holoxだと強い方だね」
「風真いろはでござる、よろしくお願いしますでござる!!」
「……ござる? キャラ作ってるんですか?」
キャラ作りか? なんでそんなことを……
「風真はこれがデフォルトでござるよ!?」
「……樹、安心しろ。ホロライブ学園には、俺の知ってるだけでも語尾に『ぺこ』とか『のら』とかつける人がいるぞ」
「なんだこの学園……ふざけてんのか、インフィニティは?」
インフィニティは一体何の目的があって、こんなキャラクターを……?
「インフィニティって……何のことでござるか?」
「いや、こっちの話だ……それにしても、ござる……?」
「まぁ、語尾がある人自体珍しいし……中でも、『ござる』つけて喋るのはいろはくらいだしね」
この人は冷静だ、今のところこの人が一番まともに感じる。
「なんでぇ……」
「そして私が、ここの幹部ってわけ……これでも真面目にやってるんだよ?」
「……とりあえず、依頼させてもらおうか」
と、言いたいところなのだが。
「吾輩は子供じゃないってのー!!」
「さらに、この薬はこよのとっておきで……ねぇ聞いてる!?」
「沙花叉そこまで臭くねぇだろうがぁぁ!!」
……騒がしくなってる。
「申し訳ないです、騒がしくしちゃって」
「いつもこんな感じだよ? こよりが薬について話し出すと、止まらなくなるから……興味無いなら、あれが一番だよ」
「なんか……思ってたより明るいな」
そう思いつつも、俺は依頼の内容を話し始めることにした。
「ねぇ、風真は!? 風真だけ影が薄すぎるでござるよ!!」
「でも、いろはは……この中だと一番まともだし、特筆すべき点がないんだよね」
「まともなのはいいことですよ」
……風真いろはさんは不満らしい。何故だ。
「なんでぇ……」
「……それで、頼みたい仕事のことなんですけど」
「立ち話もなんだし、こっちに来て座ってよ」
そう言われて、大広間に案内された。お茶が置かれる……
「どうぞでござる」
「ありがとうございます」
「それ、いろはが作ったんだよ? いろはは料理が得意なんだよね」
なるほど、そんな特技が……
「……ん、美味い」
「これはいける……このクッキー美味しいです!!」
「そ、そんなに褒めないでくださいでござる……」
照れてるのか? どうやら照れやすいらしい……前言撤回だ、影は薄くない。
「……それで、仕事内容ですが……」
「あ、真面目な話か……切り替え早いな、樹は。いいことだけど」
「お褒めの言葉どうも……一般社団法人『セイントインフィニティ』。ご存知ですよね?」
頼む内容は決まっている。
「もちろん、あれを知らない人は世間に居ないと思うよ? 変なこと言ってるおかしな宗教団体で、裏では悪い噂が絶えない……これまでに1000人以上の殺人をしたって、専らの噂だよ」
「事実ですよ、俺はそれで家族を皆殺しにされましたからね」
「……で、どうするの? お掃除すればいいの?」
あ、沙花叉クロヱさん戻ってきた。
「あ、クロヱ。よく聞いときなよ、みんなにも関係ある話だからね……この話は規模がデカいよ」
「はーい!」
「吾輩も聞いておこう。普通の話じゃなさそうだからな」
子供っぽかったのに、急に威厳が……切り替えがすごい。
「こんな見た目でも、ラプはやる時やるからね」
「……吾輩を舐めるなよ?」
「では、続きを……奴らの中でも、『infinity blessing』という、おかしな力を持った奴ら……自称『セイントセブン』がいます。俺が殺したのは『勇気』のグロリオ、『希望』のカルミア、『節制』のアザレアの三人です」
彼女達は、真面目に聞いている……秘密結社はこうでなくてはな。
「もう三人やったのか……ってことは、単純に考えるとあと四人だよな」
「……依頼はあと四人に関連することか」
「そうです……あと四人は私の予測だとそれぞれ『知恵』『愛』『正義』『信仰』の四人。私はこの者達に復讐がしたい。なので、こいつらを探し出して……これを貼ってきてください」
あの時買ったものを、皆さんの目の前に出した。これが必要なんだ。
「これ……発信機?」
「スマホと同期して、場所を常に知らせるタイプです。外れてしまっても、しばらくは効力が持ちますから……皆さんに依頼したいのは、これをセイントセブンの体に貼ってくることです」
「お掃除しなくていいの? 沙花叉なら簡単だよ?」
それだけは、ダメだ。
「ダメです。絶対に交戦はしないでください……勝つことはまずできませんよ」
「……馬場さん。客人にこんなこと言うのも、何だけどさ……私達、強いよ? 生半可な奴に負ける程弱くはない……」
「樹は、それも承知の上で言ってます。聞いてやってください」
元樹がフォローをしてくれている……こっちに向かって、笑いかけてくれた。俺も軽く笑い返す。
「……奴らは普通に強いだけじゃ、勝つことは絶対にできない。強いの域を通り越して、ズルいまである」
「……具体的には?」
「『勇気』のグロリオは、身体の異常な強化。どれだけ殴っても死にませんでした……『希望』のカルミアは、『残機』が100個あってそれを削り切らないと死なない上、誰かを殺すと命を補給可能……専用武器は、残機を消費して撃つ『ホープシューター』。装填数が多い程威力が上がります……奴には残機があるので、近づけば高威力の自爆をして来るし、距離を取れば一方的に消し炭にされる」
皆さんの顔が、明らかに険しい。顔はよく見えないが……
「……最後、『節制』だよな? どんな能力だったんだ?」
「奴の能力は、全ての武器や所有物を自分除き消滅させる能力です。つまり……武器をメインにして戦う場合は、この時点で死にますね。専用武器の『グリードライフル』は、周囲の人間の欲や感情を吸い取って弾にする……吸われた人はニュース通り、廃人になります。それを免れても、撃った瞬間に増殖して回避不可能となる弾丸が体を貫く……周りの人間を武器とするので、アザレア自身には代償なし。武器は消される、肉弾戦を挑もうにも近づけない。それがアザレアです」
「相変わらず、普通なら突破不可能だな……」
鷹嶺さんが笑っている……汗を流してる。理解してくれたらしいな……
「……そして、これと同じくらいの強さの奴が、あと四人もいる。ボスの『大神官』を含めれば五人……」
「……警告の意味はわかった。そんなの勝てるわけない……でも、一つ聞いていいかい?」
「なんです?」
……鷹嶺さんが、一気に気迫を強めた。周りの皆さんもだ。
「……そんな奴らに勝てる君は、一体何者だい? 今の話が本当なら、人間が……いや、最強の鬼人だって勝てる相手じゃない。君は本当に生物か?」
「……答えろ。嘘をついたらこの眼でわかる」
「答え次第では、ってことか……」
ラプラスさんが嘘を言っているようには思えない。嘘をついたら、その時点で終わりだ。
「……このコップ、無くなってもいいですか?」
「構わないでござるよ」
「じゃあ、見せるので……これで理解してください」
エラーを起動した。エラーを表すウィンドウが体に浮く……そして、コップを平手で叩くと……案の定、消えてなくなった。
「なっ……」
「これで殺しました。この攻撃を喰らった生物は、喰らった部分が二度と動かなくなります。体中に喰らうと、消滅します。なお、物は一発当たっただけで消えます……これで殺してきたんですよ。俺は『エラー』で、この世の異常……だそうです。奴らによるとね……」
「……避けられない攻撃も、その力で『消して』突破したわけか……恐ろしい力だ」
どうやら、理解してもらえたらしい……まさかこの世界がプログラムだ、なんて言うわけにはいかないしな……
「噂になってる殺人も、奴らが『デバッグ』の名のもとに行ったことです。この世界の『エラー』を取り除くために、できるだけ苦しめてから殺しているようですよ……私の親は、エラーである私を産んだということで、わざとゆっくり焼かれたそうです」
「……理由はわかった。戦闘は避けた方が良さそうだ……下手に戦ったら、生きていられないかもしれない」
「探し出そうにも、手がかりがないので……見つけて頂きたいです」
俺がそう言うと……皆さんは顔を顰めている、やはり危険だからか。
「……普通の暗殺とかは請け負ってるけど、こればかりは……危険度が高すぎる。見つかったら、まず生きては帰れない」
「貼ってくるだけ、とは言ってもね……」
「風真も上手くできるかどうか……」
そこに関しては考えた上だ。
「……あなた達にしか頼めないんです」
「リスクが大きすぎる……いくら強くても、見つかったら終わりなんだろ?」
「だけど、チラシまで配ってしまった以上は……受けるしかない。でも、その分高くつくよ。命賭けだからね……本当に死ぬかもしれないんだ」
幾らでも払おう。そのために稼いできたんだ。
「幾らだって払いますよ」
「じゃあ……1億だ。1億出せばやってやる」
「……それだけでいいんですか?」
命を懸けさせる割には安いような……
「……おい、待て。予算は幾らだ?」
「6億」
「……ろ、ろろろろろ……」
6億ぅ!?
……今、ビルが跳ねた気がするんだが。
「今ビルが跳ねなかった?」
「気のせいだろ?」
「ろく、ろくおく、ろく……」
ラプラスさんが混乱している。
「え、流石に……いや、ないでしょ?」
「嘘じゃありませんよ、はい」
「じゃあ俺も!」
3億ずつ出した。現ナマだ。
「……う~ん……」
「沙花叉ぁ!?」
「こんな大金初めて見るでござる……」
これだけあれば足りるだろう。
「大金が必要だろうと思いまして」
「……ルイルイ、そのお金の山どうしたの?」
「この人達の……6億円持ってきてたらしいよ」
全員めちゃくちゃ驚いている……6億はやり過ぎだったか?
「……要ります?」
「……欲しいとは思ってたけど、いざ目の前に晒されると……受け取るのが億劫だな。じゃあ少し上げて、2億くらいで……」
「じゃあ、1億ずつだな!」
1億ずつ金を出した。これでいいはずだ。
「……これで当分は、お金が足りなくなることはなさそうだね……投資すれば増やせるし」
「安く済んで良かったな!」
「あぁ、裏社会だから6億くらい普通だろうと思ってたが……そこまでなかったか」
思ってたのとだいぶ違うが……とりあえず、お願いはできたな。
「じゃあ、お願いします」
「わかりました……受けたからには、真面目にやらせてもらうよ」
「良かったな、樹!!」
これで奴らの居場所がわかる。覚悟しやがれインフィニティ……!!
「ちょっと嫌だったけど、あんな大量の現ナマ見せられたら流石に……やる気出ちゃうよねぇ」
「やるしかないでござるな……」
「久しぶりの大仕事! こよも頑張っちゃうよ!!」
どうやら、受けたからにはやってくれるようだ。
「……それでは、私達はこれで」
「失礼しました!」
「掴めたら連絡を入れるよ。期待しててね」
……よし。これで奴らの喉笛に一歩近づいた。奴らがこの世から消滅する日は近い……!!
「時間かかるけど……どうする?」
「今無策で街を出たら、俺達は後ろからやられかねん。何たって、今もインフィニティの野郎が見ていやがるからな……俺達だけに注目してて欲しいんだが……この街にいたら、強制的に登校させられるんだけどな」
「だよな……インフィニティは本当に何がしたいんだ?」
俺にもわからない……その日は別れて、日々は特に何事もなく過ぎていった。セイントセブンは、どこで何をしているのだろうか。そう心配しつつ、今日も学校の椅子に座っていると……
「……すごいよ、ミオ! 私も占って!!」
「いいよ、並んで?」
「……行列が出来てるな」
あれは……タロットカード? 面白いな……ゲームなら、俺がどうなるかもわかるかもしれない。『眼』で見てみると……あった、『EVENT』だ……破壊の必要性はなさそうだな。やってみよう……そこに立つと、目の前が暗転して俺の番になっていた。
「ん……」
「次の人、どうぞ!」
「どうも。お願いします」
俺のことを知っているって顔だ、ニュースに出てたもんな。
「あ、フブキが言ってた人だ……助けてもらったって」
「まぁ、そうですね……占ってもらえますか?」
「いいよ、じゃあカードを混ぜて……」
引かれたカードは……なんだ、あれ?
「……逆位置の戦車、何かをしようとしても障害があってできないかもしれないね」
当たってる、インフィニティの野郎のことだ。
「そうですか、ありがとうございます……すみません、お待たせしました」
そう言って、席を譲った。障害があるなら、インフィニティが俺の邪魔をするなら……殺す。それだけだ。
「覚悟しろよ……!!」
俺は殺意と決意を新たにして、憎しみで心を満たした。
親切とは、相手のことを思ってするもの。自分のためしか考えずに相手に迷惑をかけた『親切』は、ただの『迷惑』です。