※この作品はR-18です。

(本編完結)ホロライブラバーズX infinity   作:とも667

6 / 15
 活躍しなかった彼女達が活躍します。


押しつけと準備と秘密結社

 次の日。俺は今日も、行きたくないのに気がつけば学校にいた。これも、神野郎のせいだ。俺と元樹は、それとそのお仲間を殺すために動く……行く前に宝石とかを換金して、あれを買う。昼休み、殆ど誰もいない教室にて……

 

「……それにしても……」

 

「かわいそうに……」

 

「悲しそうな顔……」

 

 ……うるさい。俺はお前らの愛玩動物じゃねぇんだぞ。

 

「……なぁ、俺達になんかさせてくれよ」

 

「いいです、気持ちだけ……」

 

「そんなこと言わないで、親切にしてるんだからさ!!」

 

 ……手に力が入る。こいつらもインフィニティの野郎とやってることは変わらん。奴は俺達をゲームの道具にする、こいつらは俺達を自慰の道具にする……歯軋りが止まらん。

 

「そうだぞ、せっかく親切にしてやってんだから!!」

 

「受け取れよ、おい!!」

 

「おい、やめろよ!! 樹が嫌がってんだろ!?」

 

 親をやられてから、こういう奴らが憎くて仕方がない。また、血が沸騰し始めた。憎しみが体を貫いていく……元樹の言葉を一蹴し、自慰中毒者達は続ける。

 

「元樹、せっかく俺達が親切にしてんだから、黙ってろ!! おい、なんとか言えよ……そうか、辛くて何も言えないのか!! なんて可哀想……!!」

 

「私も何かする!! できることがあったら何でも言ってよ!!」

 

「……そうか。じゃあ言わせてもらおう」

 

 憎しみがあたかも吐瀉物のように、口から吹き出る。

 

「お、おい……樹? どうした……?」

 

「その口を今すぐ塞げ。俺を貴様らのオナニーの道具にするな。俺は貴様らの犬や猫じゃねぇんだぞ?」

 

「……ハァ?」

 

 奴らが全員、一斉にキレた。せっかく親切にしてやったのに、ってか? 俺は求めてなかったのに? 親切の悪徳商法をしておいて、こっちが怒ったら逆ギレするのか……貴様らのオナニーが透けて見える。

 

「テメェ……せっかく人が親切にしてやったのに、その言い草はなんだ!?」

 

「俺はそれを望んでない。さっきから断ってるだろう」

 

「こんのぉ……恩知らずがァ!!」

 

 セイントセブンの攻撃を見た後だと、やけに鈍く感じる。奴の拳を掌で受け止める……軽い。俺は奴らよりも強すぎる、鍛え方が違うんだ……殴ったら、こっちが悪者にされるのは確実だ。だから……

 

「舐めてんのか、クソ野郎!!」

 

「おい、やめろって言って……」

 

「元樹、やめてくれ」

 

 お前まで悪にされることはない。そう思って元樹を止めた。

 

「でも、お前……」

 

「いいんだよ……」

 

「この野郎、人が親切にしてやってんのに!! クソ野郎め、恩知らずめ!!」

 

 さっきは咄嗟に受け止めてしまったが……わざと無抵抗で喰らう。痛くないな……

 

「もっとボコれ! 正義の鉄槌だ!!」

 

「樹……やめろって……!?」

 

「やめてくれ……」

 

 助けなくていいよ……学校での立場まで、失うことはない。できる限り、苦しいのは俺だけでありたいから。

 

「……何これ!? ちょっと、すぐにやめてください!!」

 

「白上、悪いのはこいつだよ! こいつが俺らの親切をオナニーだとか言って、バカにしたのが悪いんだ!!」

 

「……そういうことだから、俺に関わるな」

 

 評判が悪くなろうが何だろうが、別に構わないさ。どうせ復讐を終えれば、この学校に行く意味もなくなる……インフィニティを殺したら、俺には何も残らんからな。

 

「喰らえ!!」

 

「っ!? 魔法!?」

 

「っ……ぐぅぅ……」

 

 風魔法で飛ばされて、机に激突する。机が倒れて、俺にのしかかる……俺は大袈裟に、痛がるフリをしてやった。すると……

 

「ハッハッハッハ!! いい気味だ、俺達の親切バカにしたお前が悪いんだぞ!! あースッキリしたぁ!!」

 

「こんな奴に関わっていられないわね……」

 

「行こ行こ、こんな奴どうにでもなっちゃえ!」

 

 ……行ったな。これでいい……

 

「おい、樹! 大丈夫か!? お前、なんで……!!」

 

「……この俺が何もせずに、やられてやると思うか?」

 

「……それって、まさか!?」

 

 昨日ランニング中に買っておいたんだ……こういうことになる予測がついたからな。小型ボイスレコーダーだ。スイッチを入れておいたから今のは全部筒抜け……魔法がちょっと効いたが、他は全然大したことない。

 

「まぁ、そういうことだ……綺麗に引っかかってくれたな」

 

「心配したぞ……お前、一方的にやられてたし……痛くないか?」

 

「多少魔法が効いたが……他はノーダメージだ、鍛えててよかったな」

 

 とにかく、奴らはこれで何とかなる。さっさと警察に持っていこう。

 

「……じゃあ、警察行ってくるから」

 

「あぁ……全然キレなかったな、樹……」

 

「……そんな回りくどいことせず、ぶっ飛ばせば済む話だろ……それが人間のやり方なのか?」

 

 ……今の声は誰だろう。ここにいる人の声じゃなかった気がするが……まぁ、いいか。警察にそれを持っていくと、すぐに動いてくれた。被害届を書いて、後は流れだ。奴らは18歳以上だったので、実名報道がされたらしい……

 

「……クズめ!!」

 

「地獄に落ちろ!!」

 

「このクソ野郎!!」

 

 なんと言われようと構わん……これもインフィニティの仕組んだ『EVENT』だったのか? 何のつもりだよ……俺に精神的追い討ちでもかけようって魂胆か? 残念だったな、お前が見てない間から、こういうのは慣れてるんだよ。あの時は隠蔽が酷くて、反撃するしかなかったが……ここはいい学校だ、隠蔽がないしな……学園長の谷郷さんが人格者らしい。

 

「……あいつら、どうなるんだ?」

 

「訴訟の準備をする。今回のは暴行と名誉毀損だから……合わせて罰金が80万ずつで、弁護士料合わせて、計200万ってところか。学校からは退学処分らしいぞ」

 

「お前って用意周到だな、色々と……」

 

 いつインフィニティが何をしてくるかわからんからな。細心の注意を払っておかないと。

 

「インフィニティの野郎は俺の命が欲しいんだ。だからわざわざ、幹部のセイントセブンを差し向けて殺しに来てる……もしかしたら、俺を痛めつけたのも精神的に追い詰めるためだったのかも」

 

「インフィニティの奴、人の心まで操れるのかよ……どんな姿してるんだろう?」

 

「……さぁな。俺も名前だけしか聞いたことがない」

 

 ただのプログラムの塊……って言っても、信じちゃくれないよな。奴に姿ってもんがあるのかすらも怪しい……

 

「怪我は痛くないか?」

 

「あぁ、もう痛みは引いたよ」

 

「ならいいんだが……」

 

 本当に痛くも痒くもない、鍛えててよかったな。白上さんは心配してくれていたが……余計な心配をかけてしまったな。

 

「……あの、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です、ご心配なく」

 

「だったら、いいんですけど……無理しないでくださいね?」

 

 ……こういう、雑念なんてない純粋な優しさを向けてくれる人……元樹もそうだけど。こういう人達も、『お前はエラーだ』そう言われて惨殺される……こんな惨い話があるか?

 

「……あの時、止めようとしてくれてありがとうございます」

 

「いえ、当然のことをしたまでですよ……!」

 

「……っ」

 

 こういった純粋な優しさを見ていると、父さんと母さんを思い出してしまう。もう会えない二人を……

 

「……あー、考えるのやめよう」

 

「えー、馬場が被害を受けた件についてだが、警察と弁護士の方で処理がされるそうだ。くれぐれも、誹謗中傷などしないように。もししたら、奴らと同じように退学だぞ」

 

「……」

 

 どうやらヘイトを買っているらしいな……大人気ないぞ、ってことか? まぁ、どうでもいい。俺の目的はただ一つ、奴らの居場所を可及速やかに知ることだ。その邪魔をするなら……誰であろうと、跳ね除けて進む。そう思って、学校を終えた後……換金できる場所に行って、買取をしてもらった。魔法道具に使われるので、宝石は重宝されるのだ……まとめ買取キャンペーンとかで、買取金額に追加されて……

 

「……二人合わせて、幾らだ?」

 

「俺も樹も3億と10万ずつ貰えた、合わせて6億と20万か……」

 

「これだけあれば、どんなにぼったくられても足りるな……少し電気屋に寄らせてくれ」

 

 どれだけぼったくられても、これだけあれば足りるな……おっと、忘れてはいけない。あれを買わないと……

 

「いいけど……何買うんだ?」

 

「依頼に必要なもの。10万あれば足りるさ……」

 

「必要なもの……?」

 

 一番高性能な『必要なもの』を4つ買って、鞄に入れた。これでよし……

 

「待たせたな、行こう」

 

「おう……いいか、金は半分ずつ出し合うぞ」

 

「わかった。それで……どこに頼むんだ?」

 

 そう聞くと、元樹はニヤッと笑い……

 

「……秘密結社だ!!」

 

「はぁ……?」

 

「秘密結社……思い出したんだよ、ここならいける! ってな」

 

 いけそうではあるが……そもそも元樹は、場所を知ってるのか?

 

「……秘密結社って、場所はわかるのか?」

 

「うん、わかるよ?」

 

「え、そんな簡単に言う?」

 

 何処にあるんだろうか。そう思って歩いていると……

 

「ここだ!!」

 

「……ビルじゃん」

 

「ほれ、書いてあるだろ? 名前!!」

 

 デカデカと『秘密結社』と書かれてる……どこが秘密だ。子供の秘密基地じゃないんだから。

 

「ここの名前は?」

 

「holox。チラシ配ってたんだよ、あなたの依頼請け負います……って書いてあるやつ」

 

「……それでいいのか、秘密結社」

 

 住所までチラシに書く秘密結社って……仕事の出来が心配になってきた……まぁ、必要なものは買ってある。使えるものは何でも使わせてもらおう……

 

「ビルの二階……ここか」

 

「そうみたいだな……お邪魔します!!」

 

「こんにちは、秘密結社の皆さんいますか?」

 

 そう言って入ると……あちこちから轟音が聞こえてきた。もしかして、片付けしてるのか……?

 

「え、お客さん!?」

 

「よりにもよって今来る!?」

 

「準備しろ、お前ら!!」

 

 ……大丈夫だろうか? 今んとこ真っ暗なんだが……

 

「これがholoxか……」

 

「なんか……秘密結社らしくはないな」

 

「そうだな……」

 

 そう言っていると、轟音が止んで……電気がついた。

 

「クックック……客人よ、秘密結社へようこそ! ぜーぜー……」

 

「……子供? 悪いけど大人を呼んで……」

 

「樹……チラシによると、この子が総帥らしいぞ」

 

 ……はぁ? この子供が?

 

「秘密結社っていう名前……秘密基地とかと同じようなもんだったのか。納得」

 

「バカにするな!! 吾輩はラプラス・ダークネス……悠久の時を生きた、お前ら人間の言うラプラスの魔だっ!!」

 

「……上に乗ってるカラス、なに?」

 

 なんで頭の上にカラスが乗ってるんだ? ペットかなにか?

 

「こいつはうざったいカラスだ、吾輩の拘束具が外れんように見張りを……」

 

「……外れかかってない?」

 

「あっやべ……とにかく、ラプラスの魔なんだ!!」

 

 何これ。本当に期待できんぞ。

 

「お前疑ってんな!? 来い、お前ら!!」

 

「……あと4人出て来た。これで全員?」

 

「そうっぽいぞ」

 

 そうっぽい、って……緊迫感が全然ないな。

 

「よし……お前ら、刮目せよ!!」

 

「やまだー!」

 

「やまだやまだー!!」

 

 山田? 誰の名前だ?

 

「Yes my darkだっつってんだろ!?」

 

「もう飽きられてるよ、そのネタ」

 

「なぁっ!?」

 

 仲良いな、秘密結社。

 

「……えっと、メンバーは……子供が一人、鷹が一人、侍っぽいのが一人、ピンク色の犬っぽいのが一人、シャチが一人……何これ?」

 

「さぁ……?」

 

「だから子供じゃねぇって言ってんだろうが!!」

 

 怒られた。どっからどう見ても子供なのだが……違うらしい。

 

「仕方ないよラプ、ラプはまんま子供だしね」

 

「かんぶ!!」

 

「……初めまして。私は馬場樹……例の『節制』野郎を殺した張本人ですよ」

 

 本当に大丈夫か? あっさり見つかって消されないだろうか。

 

「あと、それについて来た星崎元樹です。チラシ見て来ました」

 

「これまたすごいお客さんが来たね……知ってるとは思うけど、私が鷹嶺ルイだよ。で、子供にしか見えないのがうちの総帥のラプラス」

 

「だから子供じゃねぇって何度も……」

 

 最早無視されてる。日常茶飯事らしい……

 

「ラプはほっといて……この三人が構成員だよ。用心棒と博士と掃除屋」

 

「……さっきまではふざけててわからなかったが、雰囲気からして強いな」

 

「どうだ、樹? いけそうか?」

 

 大丈夫だろう……戦ったらまず無理だが、つけるだけなら簡単なはずだ。

 

「大丈夫だと思う……探すだけならな」

 

「……沙花叉達、すっごい肩身狭い……」

 

「なんか臭うな……」

 

 この人からしてるのか、この臭いは?

 

「あぁ、一週間に一回しかお風呂に入らないからね。この子は沙花叉クロヱ、シャチの掃除屋でインターン……」

 

「ねぇぇぇぇぇ!! なんでみんな沙花叉のこと臭いって言うの!? いいじゃんお風呂入らなくても!!」

 

「いや、ダメだろ」

 

 元樹が冷静にツッこんでいる……ごもっとも。

 

「なんでぇぇぇぇ!!」

 

「……で、こっちの耳と尻尾が生えてるのが博衣こより。コヨーテの博士だよ」

 

「紹介された博衣こよりでーす! 薬とか発明品とか、色々作ってるよ!!」

 

 コヨーテって……どんな動物だっけ。

 

「なぁ、コヨーテってなんだ?」

 

「確か狼の仲間だった気が……」

 

「……ちょっとは反応してよ!? どんな薬があるんですか、とかさぁ!!」

 

 そんなこと言われても……

 

「あ、すみません……その薬、なんですか?」

 

「よろしい! この薬はねぇ……」

 

「……で、最後に……この子が風真いろは、用心棒の侍だよ。holoxだと強い方だね」

 

「風真いろはでござる、よろしくお願いしますでござる!!」

 

「……ござる? キャラ作ってるんですか?」

 

 キャラ作りか? なんでそんなことを……

 

「風真はこれがデフォルトでござるよ!?」

 

「……樹、安心しろ。ホロライブ学園には、俺の知ってるだけでも語尾に『ぺこ』とか『のら』とかつける人がいるぞ」

 

「なんだこの学園……ふざけてんのか、インフィニティは?」

 

 インフィニティは一体何の目的があって、こんなキャラクターを……?

 

「インフィニティって……何のことでござるか?」

 

「いや、こっちの話だ……それにしても、ござる……?」

 

「まぁ、語尾がある人自体珍しいし……中でも、『ござる』つけて喋るのはいろはくらいだしね」

 

 この人は冷静だ、今のところこの人が一番まともに感じる。

 

「なんでぇ……」

 

「そして私が、ここの幹部ってわけ……これでも真面目にやってるんだよ?」

 

「……とりあえず、依頼させてもらおうか」

 

 と、言いたいところなのだが。

 

「吾輩は子供じゃないってのー!!」

 

「さらに、この薬はこよのとっておきで……ねぇ聞いてる!?」

 

「沙花叉そこまで臭くねぇだろうがぁぁ!!」

 

 ……騒がしくなってる。

 

「申し訳ないです、騒がしくしちゃって」

 

「いつもこんな感じだよ? こよりが薬について話し出すと、止まらなくなるから……興味無いなら、あれが一番だよ」

 

「なんか……思ってたより明るいな」

 

 そう思いつつも、俺は依頼の内容を話し始めることにした。

 

「ねぇ、風真は!? 風真だけ影が薄すぎるでござるよ!!」

 

「でも、いろはは……この中だと一番まともだし、特筆すべき点がないんだよね」

 

「まともなのはいいことですよ」

 

 ……風真いろはさんは不満らしい。何故だ。

 

「なんでぇ……」

 

「……それで、頼みたい仕事のことなんですけど」

 

「立ち話もなんだし、こっちに来て座ってよ」

 

 そう言われて、大広間に案内された。お茶が置かれる……

 

「どうぞでござる」

 

「ありがとうございます」

 

「それ、いろはが作ったんだよ? いろはは料理が得意なんだよね」

 

 なるほど、そんな特技が……

 

「……ん、美味い」

 

「これはいける……このクッキー美味しいです!!」

 

「そ、そんなに褒めないでくださいでござる……」

 

 照れてるのか? どうやら照れやすいらしい……前言撤回だ、影は薄くない。

 

「……それで、仕事内容ですが……」

 

「あ、真面目な話か……切り替え早いな、樹は。いいことだけど」

 

「お褒めの言葉どうも……一般社団法人『セイントインフィニティ』。ご存知ですよね?」

 

 頼む内容は決まっている。

 

「もちろん、あれを知らない人は世間に居ないと思うよ? 変なこと言ってるおかしな宗教団体で、裏では悪い噂が絶えない……これまでに1000人以上の殺人をしたって、専らの噂だよ」

 

「事実ですよ、俺はそれで家族を皆殺しにされましたからね」

 

「……で、どうするの? お掃除すればいいの?」

 

 あ、沙花叉クロヱさん戻ってきた。

 

「あ、クロヱ。よく聞いときなよ、みんなにも関係ある話だからね……この話は規模がデカいよ」

 

「はーい!」

 

「吾輩も聞いておこう。普通の話じゃなさそうだからな」

 

 子供っぽかったのに、急に威厳が……切り替えがすごい。

 

「こんな見た目でも、ラプはやる時やるからね」

 

「……吾輩を舐めるなよ?」

 

「では、続きを……奴らの中でも、『infinity blessing』という、おかしな力を持った奴ら……自称『セイントセブン』がいます。俺が殺したのは『勇気』のグロリオ、『希望』のカルミア、『節制』のアザレアの三人です」

 

 彼女達は、真面目に聞いている……秘密結社はこうでなくてはな。

 

「もう三人やったのか……ってことは、単純に考えるとあと四人だよな」

 

「……依頼はあと四人に関連することか」

 

「そうです……あと四人は私の予測だとそれぞれ『知恵』『愛』『正義』『信仰』の四人。私はこの者達に復讐がしたい。なので、こいつらを探し出して……これを貼ってきてください」

 

 あの時買ったものを、皆さんの目の前に出した。これが必要なんだ。

 

「これ……発信機?」

 

「スマホと同期して、場所を常に知らせるタイプです。外れてしまっても、しばらくは効力が持ちますから……皆さんに依頼したいのは、これをセイントセブンの体に貼ってくることです」

 

「お掃除しなくていいの? 沙花叉なら簡単だよ?」

 

 それだけは、ダメだ。

 

「ダメです。絶対に交戦はしないでください……勝つことはまずできませんよ」

 

「……馬場さん。客人にこんなこと言うのも、何だけどさ……私達、強いよ? 生半可な奴に負ける程弱くはない……」

 

「樹は、それも承知の上で言ってます。聞いてやってください」

 

 元樹がフォローをしてくれている……こっちに向かって、笑いかけてくれた。俺も軽く笑い返す。

 

「……奴らは普通に強いだけじゃ、勝つことは絶対にできない。強いの域を通り越して、ズルいまである」

 

「……具体的には?」

 

「『勇気』のグロリオは、身体の異常な強化。どれだけ殴っても死にませんでした……『希望』のカルミアは、『残機』が100個あってそれを削り切らないと死なない上、誰かを殺すと命を補給可能……専用武器は、残機を消費して撃つ『ホープシューター』。装填数が多い程威力が上がります……奴には残機があるので、近づけば高威力の自爆をして来るし、距離を取れば一方的に消し炭にされる」

 

 皆さんの顔が、明らかに険しい。顔はよく見えないが……

 

「……最後、『節制』だよな? どんな能力だったんだ?」

 

「奴の能力は、全ての武器や所有物を自分除き消滅させる能力です。つまり……武器をメインにして戦う場合は、この時点で死にますね。専用武器の『グリードライフル』は、周囲の人間の欲や感情を吸い取って弾にする……吸われた人はニュース通り、廃人になります。それを免れても、撃った瞬間に増殖して回避不可能となる弾丸が体を貫く……周りの人間を武器とするので、アザレア自身には代償なし。武器は消される、肉弾戦を挑もうにも近づけない。それがアザレアです」

 

「相変わらず、普通なら突破不可能だな……」

 

 鷹嶺さんが笑っている……汗を流してる。理解してくれたらしいな……

 

「……そして、これと同じくらいの強さの奴が、あと四人もいる。ボスの『大神官』を含めれば五人……」

 

「……警告の意味はわかった。そんなの勝てるわけない……でも、一つ聞いていいかい?」

 

「なんです?」

 

 ……鷹嶺さんが、一気に気迫を強めた。周りの皆さんもだ。

 

「……そんな奴らに勝てる君は、一体何者だい? 今の話が本当なら、人間が……いや、最強の鬼人だって勝てる相手じゃない。君は本当に生物か?」

 

「……答えろ。嘘をついたらこの眼でわかる」

 

「答え次第では、ってことか……」

 

 ラプラスさんが嘘を言っているようには思えない。嘘をついたら、その時点で終わりだ。

 

「……このコップ、無くなってもいいですか?」

 

「構わないでござるよ」

 

「じゃあ、見せるので……これで理解してください」

 

 エラーを起動した。エラーを表すウィンドウが体に浮く……そして、コップを平手で叩くと……案の定、消えてなくなった。

 

「なっ……」

 

「これで殺しました。この攻撃を喰らった生物は、喰らった部分が二度と動かなくなります。体中に喰らうと、消滅します。なお、物は一発当たっただけで消えます……これで殺してきたんですよ。俺は『エラー』で、この世の異常……だそうです。奴らによるとね……」

 

「……避けられない攻撃も、その力で『消して』突破したわけか……恐ろしい力だ」

 

 どうやら、理解してもらえたらしい……まさかこの世界がプログラムだ、なんて言うわけにはいかないしな……

 

「噂になってる殺人も、奴らが『デバッグ』の名のもとに行ったことです。この世界の『エラー』を取り除くために、できるだけ苦しめてから殺しているようですよ……私の親は、エラーである私を産んだということで、わざとゆっくり焼かれたそうです」

 

「……理由はわかった。戦闘は避けた方が良さそうだ……下手に戦ったら、生きていられないかもしれない」

 

「探し出そうにも、手がかりがないので……見つけて頂きたいです」

 

 俺がそう言うと……皆さんは顔を顰めている、やはり危険だからか。

 

「……普通の暗殺とかは請け負ってるけど、こればかりは……危険度が高すぎる。見つかったら、まず生きては帰れない」

 

「貼ってくるだけ、とは言ってもね……」

 

「風真も上手くできるかどうか……」

 

 そこに関しては考えた上だ。

 

「……あなた達にしか頼めないんです」

 

「リスクが大きすぎる……いくら強くても、見つかったら終わりなんだろ?」

 

「だけど、チラシまで配ってしまった以上は……受けるしかない。でも、その分高くつくよ。命賭けだからね……本当に死ぬかもしれないんだ」

 

 幾らでも払おう。そのために稼いできたんだ。

 

「幾らだって払いますよ」

 

「じゃあ……1億だ。1億出せばやってやる」

 

「……それだけでいいんですか?」

 

 命を懸けさせる割には安いような……

 

「……おい、待て。予算は幾らだ?」

 

「6億」

 

「……ろ、ろろろろろ……」

 

 6億ぅ!?

 

 ……今、ビルが跳ねた気がするんだが。

 

「今ビルが跳ねなかった?」

 

「気のせいだろ?」

 

「ろく、ろくおく、ろく……」

 

 ラプラスさんが混乱している。

 

「え、流石に……いや、ないでしょ?」

 

「嘘じゃありませんよ、はい」

 

「じゃあ俺も!」

 

 3億ずつ出した。現ナマだ。

 

「……う~ん……」

 

「沙花叉ぁ!?」

 

「こんな大金初めて見るでござる……」

 

 これだけあれば足りるだろう。

 

「大金が必要だろうと思いまして」

 

「……ルイルイ、そのお金の山どうしたの?」

 

「この人達の……6億円持ってきてたらしいよ」

 

 全員めちゃくちゃ驚いている……6億はやり過ぎだったか?

 

「……要ります?」

 

「……欲しいとは思ってたけど、いざ目の前に晒されると……受け取るのが億劫だな。じゃあ少し上げて、2億くらいで……」

 

「じゃあ、1億ずつだな!」

 

 1億ずつ金を出した。これでいいはずだ。

 

「……これで当分は、お金が足りなくなることはなさそうだね……投資すれば増やせるし」

 

「安く済んで良かったな!」

 

「あぁ、裏社会だから6億くらい普通だろうと思ってたが……そこまでなかったか」

 

 思ってたのとだいぶ違うが……とりあえず、お願いはできたな。

 

「じゃあ、お願いします」

 

「わかりました……受けたからには、真面目にやらせてもらうよ」

 

「良かったな、樹!!」

 

 これで奴らの居場所がわかる。覚悟しやがれインフィニティ……!!

 

「ちょっと嫌だったけど、あんな大量の現ナマ見せられたら流石に……やる気出ちゃうよねぇ」

 

「やるしかないでござるな……」

 

「久しぶりの大仕事! こよも頑張っちゃうよ!!」

 

 どうやら、受けたからにはやってくれるようだ。

 

「……それでは、私達はこれで」

 

「失礼しました!」

 

「掴めたら連絡を入れるよ。期待しててね」

 

 ……よし。これで奴らの喉笛に一歩近づいた。奴らがこの世から消滅する日は近い……!!

 

「時間かかるけど……どうする?」

 

「今無策で街を出たら、俺達は後ろからやられかねん。何たって、今もインフィニティの野郎が見ていやがるからな……俺達だけに注目してて欲しいんだが……この街にいたら、強制的に登校させられるんだけどな」

 

「だよな……インフィニティは本当に何がしたいんだ?」

 

 俺にもわからない……その日は別れて、日々は特に何事もなく過ぎていった。セイントセブンは、どこで何をしているのだろうか。そう心配しつつ、今日も学校の椅子に座っていると……

 

「……すごいよ、ミオ! 私も占って!!」

 

「いいよ、並んで?」

 

「……行列が出来てるな」

 

 あれは……タロットカード? 面白いな……ゲームなら、俺がどうなるかもわかるかもしれない。『眼』で見てみると……あった、『EVENT』だ……破壊の必要性はなさそうだな。やってみよう……そこに立つと、目の前が暗転して俺の番になっていた。

 

「ん……」

 

「次の人、どうぞ!」

 

「どうも。お願いします」

 

 俺のことを知っているって顔だ、ニュースに出てたもんな。

 

「あ、フブキが言ってた人だ……助けてもらったって」

 

「まぁ、そうですね……占ってもらえますか?」

 

「いいよ、じゃあカードを混ぜて……」

 

 引かれたカードは……なんだ、あれ?

 

「……逆位置の戦車、何かをしようとしても障害があってできないかもしれないね」

 

 当たってる、インフィニティの野郎のことだ。

 

「そうですか、ありがとうございます……すみません、お待たせしました」

 

 そう言って、席を譲った。障害があるなら、インフィニティが俺の邪魔をするなら……殺す。それだけだ。

 

「覚悟しろよ……!!」

 

 俺は殺意と決意を新たにして、憎しみで心を満たした。




 親切とは、相手のことを思ってするもの。自分のためしか考えずに相手に迷惑をかけた『親切』は、ただの『迷惑』です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。