※この作品はR-18です。

(本編完結)ホロライブラバーズX infinity   作:とも667

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 遅れてすみません、本編をどうぞ。


知恵のち愛

 ……あの後。俺は修行をしつつ、結果を待っていた。次の相手が誰になるかはわからないからな……これまでの奴らは、全員イカれた能力持ちの狂人だった……次の奴だけ違うなんて有り得ない。つまり……戦闘は避けられない。だから修行しているのだ……復讐のために。

 

「……くそ。これでもまだ足りん……奴らに苦戦してるんだ、こんなんじゃインフィニティどころか大神官にも勝てんぞ!!」

 

 その怒りと焦りを、自分の体にぶつける。強くなるために……そうしていると……

 

「……来たか。スキルだな……『HP強化』? 攻撃技じゃないのか……?」

 

 こんなこともあるんだな。そう思いながら、修行を続ける。技を使って、技に慣れる努力をしてみたりもした……すると。

 

「……『マッハパンチEX』か。強化されたらしいな……慣れてくるとこうなるのか」

 

 新しい発見をしつつ、しばらく修行を続けていると……土曜日に電話が来た。

 

「……電話か。もしもし?」

 

『もしもし、幹部の鷹嶺ルイです。業務が完了しましたので、連絡させていただきました……これで私達のできることは終わり、頑張ってね』

 

「ありがとうございます!! そうか、ようやくか……!!」

 

 奴らの首に手が伸びる。そのことがわかって小さくガッツポーズをした……その後、いつもの待ち合わせ場所で待っていると……元樹が急いで来た。電話が来たらしい。

 

「樹! 電話……」

 

「知ってる。どうやら頼んで正解だったようだな……」

 

「あぁ……! 行こうぜ、樹! スマホでわかるんだろ?」

 

 専用アプリと同期して、わかるようになっているのだ。4つの光が点滅している……1,2,3,4と番号が振られているのでわかりやすい。まずはどれから行くか……

 

「……全員気づいてないな。大神官からお告げを受けたら、外しちまうだろうから……さっさとしないと」

 

「それはわかってる……どれから行く?」

 

「……動いてない発信機があるな。多分、説教をしてる最中だと思う……出待ちするぞ。説教の時間考えれば……新幹線で間に合う」

 

 急がないと逃げられる、早くしなければ。

 

「そうと決まれば、話は早いよな!!」

 

「行くぞ、元樹! これで四人目だ!!」

 

「よし、行くぞぉ!!」

 

 殺られる前に殺る。もう二度とあんなことはさせない……セイントインフィニティは皆殺しだ。お前らの大嫌いな、エラーに塗れて死ぬがいいさ!! そう思って、歩を進める。到着した時には、もう二時間経っていた。

 

「まだいそうか!?」

 

「少し聞いてみるか……」

 

「……どうだ?」

 

 耳を当ててみると……いるな。中からは歓声が聞こえてくる……そろそろ終わりそうだ。どうやら、宗教勧誘のためのセミナーか何かをやっているようだな。

 

「まだいるな……裏口で出待ちするぞ。あっちのリムジンがそれのはずだ」

 

「よし……挟み撃ちだ!! 樹は右、俺は左な!!」

 

「わかった。先手必勝だ……!!」

 

 そう言い合って、二手に別れる。物陰に隠れて、足音を待った。

 

「……ふぅ。疲れたな……帰ってインフィニティ様にお祈りを捧げなければ。供物も祭壇に……」

 

「お前が供物になれぇぇぇッ!!」

 

「うりゃあぁぁぁっ!!」

 

 成功だ、あと数cm……!!

 

「はぁ……分かっていたぞ、エラー」

 

「なにっ!?」

 

「今のを躱した……まさか、もう『infinity blessing』を使ってるのか!?」

 

 奴は余裕綽々としている……こいつは『どれ』だ?

 

「まだ使っておらん。それにしてもエラーよ、いきなり襲いかかるとは……礼儀作法がなっておらんな」

 

「いきなり人の家を燃やした上、人の親を必要なく痛めつけた挙句、殺した輩の仲間に言われたくはないな」

 

「……そちらにいらっしゃるのは、主人公様か。確か、バグっているのだったな……いい機会だ、ここでデバッグさせてもらうとしようか」

 

 こいつらは全員、元樹を主人公だと思ってるみたいだな。そして、俺のせいでバグっていることにしている。自分達の敵だと余程認めたくないらしい。

 

「俺は正常だっての!!」

 

「お前はセイントセブンのどれだ? 『信仰』か? 『愛』か? 『正義』か? 『知恵』か?」

 

「自己紹介がまだだったな……私はお前の言う通り、絶対神インフィニティ様に仕えるセイントセブン『知恵』のサルビアだ……」

 

 知恵か。本を手に持っているが……

 

「その本が武器になるのか?」

 

「いや? これは私の好きな本だ……お前達相手に手加減はできんな、不本意だが……力を使わせていただくとしようか」

 

「来るぞ……!!」

 

 迂闊に近づいたら、何をされるかわからん。構えておこう……

 

「神の力よ、我に祝福を与え給え!! 『Infinity Blessing』起動! 『wisdom Acquirer』!!」

 

「……どうなった? 残機が増えたのか? それとも無敵になったのか?」

 

「そのどちらでもない……私が持っているのは、知恵の力。文字通り全てを知ることができる……自分の望んだ情報を、全て一瞬にして引き出すことができるのだよ」

 

 ……それだけか? しょぼいな……そう思って、俺は膠着を破るため、先制攻撃を仕掛けた。地面を蹴って走り出し、マッハパンチだ。

 

「それがどうした!?」

 

「わかっておらんな……いいか? 『知恵』と『情報』は違う。『知恵』とは情報を踏まえて対策したり、自分なりの答えを出すことを言うのだ……」

 

「……なに!?」

 

 サルビアはまるでわかっていたかのように、最低限の動きで躱してみせた。

 

「お前達のこれまでの戦闘データを全て『取得』させてもらった……そこから、神の力をお借りして情報処理を行い……お前達の対策を行った。この間、一秒もかかっていない」

 

「……タイムラグなしで全てを対策してくるのか!!」

 

「そういうことだ……お前達の動きは読めているぞ? 新しいスキルへの対策も十分……勝利には力だけではダメだ。『知恵』を極めることも、また殺せる可能性を上げてくれる。そのエラーがどのような拷問をすれば、一番大きな悲鳴を上げるかもわかるしな」

 

 こいつも趣味の悪さは変わらんらしいな……

 

「……やはり対策は必須だな。あるのとないのとでは天地の差だ……お前らがどうすればダメージを受けてくれるのかまで、全てわかるぞ……」

 

「お前にはカルミアやアザレアのような武器はないのか?」

 

「無論ある……もう少しお預けにしたかったが、聞かれては仕方あるまい」

 

 俺達から大きく距離を取り、奴は地面に手を置いた。

 

「……モード、デバッグ。特殊番号04番、変化。『ウィズダムアロー』」

 

「あれは……弓か?」

 

「こいつ……弓なんて扱えるのか?」

 

 持ち方がまるでなってない、知らない俺でもわかる……アーチェリーの動画などは見たことがあるが、プロと比べてもあまりに酷い。

 

「……その通り、実は私はこの弓を使うのは初めてなのだよ。いつもは他の武器でやるからな。普段は全力を出すことなどない……だがな、私はこれの扱いについてはプロだ。もう既になっている……その意味がわかるか?」

 

「……そういうことかよ……!」

 

「二人ともわかったようだな……そうだ。今、『弓の扱い』についての情報を全て脳内で処理し、体に染み付かせたのだよ。つまり……私は、扱えない武器がない……どんな武器であろうと、プロ並の扱いができる!!」

 

 こいつにとっては、この世の全ての武器が『得意な武器』なんだ。練習する必要性なんてない、すぐに『染み付かせられる』から……水道から水を出すくらいの気分で、プロ並の腕前になることができる!! その上こっちは対策されきっていて、俺達がどんなことをしてくるのかもすぐわかる……それも『あっちだけ』!!

 

「……カルミアやアザレアよりも弱いような気がしてた俺を殴りたいな……こいつ、とんでもない能力持ちだぞ!!」

 

「そうみたいだな……」

 

「ようやくわかったか……わかったところで何も変わらんがな? さぁ、デバッグ開始だ……!!」

 

 奴が弓を構えた……地面から矢を出している、矢自体は何の変哲もないようだが……だからこそ厄介だ。カルミアのように何かを捧げるのでもない、アザレアのように条件付きでもない……! なんて能力だよ……!!

 

「だが、倒せない相手じゃない……だろ?」

 

「あぁ、やらなきゃならないんだ!!」

 

「そう上手くいくかな……喰らえ!!」

 

 サルビアが矢を放った、それは直線的に飛んできている……だが、それなら。

 

「『消えろ』ッ!!」

 

「……甘いな」

 

「えっ、矢が勝手に避けた……!?」

 

 タックルで突っ込もうとすると、矢の軌道が突然大きく変わって……俺の後ろに回り込んだ。

 

「ッ、だいぼうぎょ……っ!!」

 

「樹!! 大丈夫か!?」

 

「あぁ……大分痛いが、この程度なら……」

 

 何でこんなに痛いんだ? たかが矢一本で……

 

「私の武器、『ウィズダムアロー』はお前達を『知っている』。その情報に基づいてどこまでも追いかけ、攻撃を避けながら進み……必ず相手の急所に突き刺さる。痛いだろう?」

 

「……必中かつ、確定急所ってわけか……」

 

「言っておくが、私に当てようとしても無駄だぞ。私が敵として認識している者以外は、全て避けて進むからな……『勝てない相手ではない』か。これを知ってもまだそれが言えるかな!?」

 

 ……確かに、あっちの方が圧倒的に有利だ。『知恵』の力、必中かつ急所確定の弓にこちらの『対策』……あっちに、俺達の攻撃はほぼ通用しない。だが、それでも俺は笑う。元樹も同様に……

 

「ヘッ……星崎元樹を舐めるなよ!? 俺も根性だけなら樹にだって負けてねぇぜ!!」

 

「俺の怒りと憎しみがその程度で折れるとでも……? 知ってんだろ、俺はお前も他の奴らもインフィニティも大神官も殺す!! それまでは死なない……だから、何がなんでも死んでもらう!!」

 

「……生意気な口を利きおって。話すのが馬鹿らしいな、さっさと消して主人公様を元に戻すとしよう……」

 

 奴は弓を構えた……あれをどうにかしないと、近づくこともできんな。一回消しただけでは、また作られるし……矢だって無限だ。何かを盾にしようにも、エラーを纏った俺に触れたものは生物以外即座に消滅するし……

 

「消えるのはお前の方だぜ!!」

 

「主人公様とはいえ……我ら神聖なるデバッガーの邪魔をするなら、誓約に基づき死にはしませんが……腕の一本は覚悟していただきますよ」

 

「手加減してて勝てると思ってるのか……舐められたもんだな!!」

 

 元樹の拳も、足も、剣も……その全てが当たらない。事前にわかっているから、その通りにすればいいだけ。何も考えなくていい、染み付いた通りに動けばいいから……

 

「この野郎……!!」

 

「おっと……お前には手加減する必要がないから楽で助かる……喰らえ!!」

 

「っ、ぐぅ……」

 

 的確に狙ってくる……どうにかしないと、一方的にやられるだけだ。だが、奴は俺達に関して知らないことはない。新しい何かを覚えても、情報は『更新』されるだろう。まともに戦って勝てる相手ではない。

 

「弓だから、一発ずつしか放てないのが難点だが……まぁいい、私はどうせ無敵だ。この世界の生物がどう足掻こうとも、私に勝つことは有り得ない」

 

「くそったれぇ……!」

 

「本当に無敵なのか……!」

 

 本当に勝てない相手だっていうのか? ここで打ち止めなのか? そんなの嫌だ……考えろ、俺にはそれしかない。一発でも当たれば勝てる……こいつの弱点はなんだ? 探せ、絶対にあるはずだ!!

 

「……そうだ! よし……!!」

 

「何かを思いついたようだが……無駄なことだ。私は全てわかっている……『ライジンブレイク』だろ? 全パターンが私の頭の中にある、当たらんよ」

 

「あれじゃあ自滅するだけだ……!!」

 

 俺がそう思っていると、あいつは……そのまま目の前に行った。

 

「ライジン……」

 

「パターン3……なら、こうか」

 

「なんちゃって!」

 

 そう言って、元樹はライジンブレイクをやめて地面を蹴りつけた……そのまま後ろに回り、もう一度地面を蹴って膝を奴の腹にぶち込む。

 

「なっ……なんだ!?」

 

「うぉらぁ!!」

 

「ぐぅあっ!!」

 

 攻撃が当たった……?

 

「よし、大成功……!」

 

「どういうことだ……?」

 

「ぐ、ぎぃぃ……!」

 

 あいつは蹲って、動かなくなっている……余程効いたらしい。

 

「あいつは確かに、俺達のことは全部知ってる。でも、心が読めるわけじゃない……全知ってわけじゃないんだ。つまり……俺達がやったことない動きをすれば、奴はテンパって避けられなくなる!! あいつは『知恵』の力があるけど、臨機応変な対応力はないんだよ!!」

 

「……なるほどな。やっぱり流石だぜ……」

 

「へへっ、まぁな!」

 

 確かにサルビアには『知恵』があった。でも知恵や技術を得るのには本来、努力や時間が必須だ。サルビアはそこを神の力で無理矢理短縮してる。だから、こいつ『自身』は判断能力も攻撃に慣れるのも普通以下! だから、知らない動きをされるとテンパるし、絶対に当たってしまう!!

 

「いぎぃぃ……ぐっぞぉぉ……も、もう当たらんぞ……」

 

「こいつ自身の耐久はそこまでじゃないな……骨折れてるぞ!!」

 

「なら……当てれば勝てるってことだな!!」

 

 さっきから左腕が動かない、もう一分経ったか。だが、奴も明らかに動きが鈍くなってる……痛みへの耐性は0のようだ。

 

「あ゙ぎぎ……!! ウィズダム、アロー……!!」

 

「撃つのが遅いな……」

 

「パ、パターン4……!」

 

 懐に潜り込んで踏み込み、インファイトだと思わせる。奴はその通りに動いているが……俺はここで、足をかける!!

 

「いいぞ、樹!!」

 

「ぎぃぃ……ぐぞぉぉ……!!」

 

「メガトンキック!!」

 

 そこに、思いっきり地面を蹴って足先を叩き込む……これで、片足を封じた。

 

「───ッッ!!」

 

「よし……効いてるな」

 

「これであいつはまともに動けない……いけるぞ!!」

 

 奴はどうにか弓を構えているが、脂汗が浮いている。歯を食いしばって、目を血走らせて……効いてるのが丸わかりだ。

 

「こんな、こんなことでぇぇ……!! セイントセブンは、デバッガーは……負けてはならんッ!!」

 

「グロリオもカルミアもアザレアも負けてるぞ、俺達にな」

 

「まぐれだ、絶対にそうだッ!! 私の力で知れぬことはない、私の『知恵』は無限なんだ!!」

 

 どうやら、自分の知らないことがあると相当ムカつくらしい……自分が全てを知ってるからな。その常識が壊されたら、自分はただの弱い人間だから……

 

「あと少しだ、トドメを刺すぞ!!」

 

「おう!!」

 

「ふざけるなぁぁぁ! 私の知恵に! 絶対神に!! 知らぬことなど!! あってはならないィィィッ!! おぉ、神よ!! もっと、もっと知恵を……!!」

 

 俺達のことを調べているのか、奴は一瞬黙り込んだが……すぐに奴は頭を抱えて、悲鳴を上げた。

 

「……ぎぃぃぃっ!?」

 

「ん……あいつ、どうした? 樹、お前頭に攻撃したか?」

 

「いや、違う。奴は自滅した……あいつが自分で言った通り、能力のおかげで情報取得に一秒もかからない。知らないことがあるのを認めたくないから、俺達について調べすぎて……脳が容量オーバーになってるんだ。あいつの脳は今、多すぎる情報を処理するので精一杯……殺すなら、今しかない!!」

 

 俺がそう言って、走りながら拳を構える……

 

「わかりやすくて助かるぜ……!!」

 

「終わりだ、サルビア!!」

 

「私に知らないことなどない、私は絶対神インフィニティ様に全知を与えられし、世界最高の賢者だ……こんなことは有り得ないッ!!」

 

 処理しきれていないのを認めたくないらしいな。だが……

 

「お前の負けだッ!! お前が本当に賢者なら……少しは自分で勉強しろ!!」

 

「違う!! 私は負けていない!!」

 

「インファイトォ!!」

 

 奴は弓を撃てないまま、俺のインファイトを喰らって……エラー塗れになった。

 

「こ、んな……い、やだ……しに、たく、な……」

 

『Salvia.exeは応答していません』

 

「Salvia.exe、強制終了……!」

 

 そう言って、ウィンドウを蹴りつけた。奴の姿が消える……

 

『正常に終了されました』

 

「……っぐ、はぁ……何とか勝てた……」

 

「歩けるか? 歩けないなら……」

 

 肩を貸してくれるのだろう。お人好しだな……だが、今回は歩ける。

 

「大丈夫だよ、ありがとう……今回は比較的傷が少なく済んだな……」

 

「あぁ、それが一番いい……とりあえず、これであと三人だな」

 

「あと三人……少ないはずなのに、何故かすごく遠いな」

 

 奴らはどう考えても強すぎる。『infinity blessing』が何より厄介だ……普通にやり合ったら、まず負けるだろう。俺達だから何とかなっているが……他の人が狙われたら、目も当てられない。事実、俺の父さんと母さんは……

 

「大丈夫だよ、俺がいる! 向かうところが同じ仲間がいるんだ、そう遠くはないぜ!」

 

「……ありがとう。とりあえず一人はどうにかしたんだ、これで街はしばらく安全なはず……」

 

「警戒は緩められないけどな……」

 

 そうだ、インフィニティの野郎はいつだって俺達を見てる。自分の部下が死んでもなんとも思わないような奴なんだから、ロクな性格じゃないのは確かだが……

 

「とりあえず、帰ろうぜ。とにかく一人倒したんだ、七人もいた時よりかは大分減っただろ? だから大丈夫、絶対何とかなる!! 最後に信じられるのは自分だ、自分を信じて進め!!」

 

「……わかった。いつも自信満々だよな、元樹は」

 

「あぁ、自信が無いと何にもできないからな。俺は常に自分を勇気づけて、絶対負けないって思いながらやってるよ……だから、今んとこ常勝無敗だ!」

 

 やっぱり、底無しに明るいな……主人公の立場って聞いても、動揺しなかったし……多分、そういう奴なんだろう。そう思いながら、アパートに帰った。写真を見ると、昔の記憶が今でも鮮明に思い出される。

 

「……今日もまた殺したよ、父さん、母さん」

 

 でも、まだ本当の仇には遠い。大神官とインフィニティ……こいつらを殺さない限り、俺にもこの世界にも未来はない。

 

「あー、眠れないな……」

 

 もう一回走ってこようかな。そう思ったが、戦闘の後で足が痛い。急所をぶち抜かれたので体もガタガタだし……回復薬で明日には治るようだが……今日は休んだ方が良さそうだ。

 

「何も出来ないとなると、虚しいな……」

 

 そう呟いて、気を紛らわすために考えを巡らせる。頭の上の『好感度』ってのはなんだ? ある人とない人の違いは? ずっと気になっていたことを、少し考えてみる……

 

「そういえば……俺の考えが正しいなら、これはエロゲーだよな」

 

 ということは……『攻略対象かそうでないか』かな? これだろ、ゲームとして考えた時に一番筋が通る。

 

「上限値は幾つなのか……まぁ、それは考えても仕方ないよな」

 

 それよりも……やっぱり、ゲーム扱いしてるんだな。生きてる人の命も、何もかも思うがまま。倫理も法則もねじ曲げて、自分の思い通りにできる……全てが奴の掌の上。俺は、その掌を叩き壊そうとしている……そりゃ、危険因子だよな。俺から見たら、奴らは邪悪にしか思えんのだが。

 

「ゲームとして見るなら、奴らは正義の味方なんだろうな。じゃあ俺は、わるーい悪の総統か? 正義と悪の二元論程、宛にならんものはないんだがな」

 

 ボヤきながら、奴らの居場所をスマホで確認した……そこで、俺は……衝撃的なものを見た。

 

「……居る!?」

 

 この街に、いる。『愛』か、『正義』か、『信仰』か……どれかは定かではないが、兎に角その中の一人がこの街にいる。もう来やがったか!

 

「寝てる場合じゃねぇな……元樹には生活があるし、あいつは『主人公』……滅茶苦茶な行動したら、何が起こるかわからん。とりあえずは俺が行こう……!」

 

 そう呟いて、そいつがいる場所まで全力で走る。絶対に逃がさないために、もう二度と被害者を出さないために……

 

「……着いたけど……人の家?」

 

 ここは……表札に『白上』と、そう書いてある……まさか、殺された? だけど、それにしてはやり合った形跡がない……獣人の勘があるのにそれを掻い潜って寝首を掻くのは至難の業だ。

 

「考えられる可能性は二つ……気づかれないうちに殺したか、証拠を隠滅したか……まだいるな」

 

 そう思って、呼び鈴を鳴らした。すると案の定、奴は外に飛び出した。

 

「待ちやがれ、セイントセブン!!」

 

「……」

 

「逃げんじゃねぇよ!!」

 

 マッハパンチだ、逃がしはしない……そう思って殴ろうとした、その時。

 

「……樹」

 

「……は?」

 

「ふふ……」

 

 俺は固まって、動けなくなった。だって、あれは……そんなの有り得ない。確かに俺は見たんだ、炭になるまで焼き尽くされてしまった父さんと母さんの死体を。なのに、あの顔は……

 

「母、さん……」

 

「……」

 

「ま、待って……!!」

 

 素早い身のこなしで、どこかに消えていく。どうして? それが頭を埋めつくして……俺はただ、呆然としていた。

 

「……どうしましたか? こんな時間に……」

 

「う、うぁ……」

 

「樹、くん……?」

 

 この声は白上さんだ。よかった、生きていたんだな……あれ、白上さんは俺のこと『樹くん』だなんて呼んでいたか? それを気にする暇は、この時の俺にはなかった。茫然自失のまま、家に帰る。もしかしたら、帰ってきてるかもしれない。そう思って、また走る……

 

「……いない」

 

 どこに行ったのだろう。色んなことを考えていると、目を瞑っても眠れずに……朝になってしまった。

 

「……あー、眠たいな……」

 

「よっ、樹! どうした、眠たいのか?」

 

「あぁ、少しな……」

 

 そう言っていると……案の定読み取られた。

 

「……なんか悩んでるのか? 言ってくれたら、相談乗るぞ?」

 

「お前にしか話せないよ……実はな?」

 

「おう、何でも話せよ!」

 

 俺は全てを話した、この街にセイントセブンがいること。母さんに出会ったこと、セイントセブンと母さんの反応が同一であったこと……

 

「……じゃあ、お前の母さんは……セイントセブンだったのか?」

 

「それはない、あの人は宗教勧誘をキッパリ断るからな」

 

「でも……変だなぁ、反応はどこに?」

 

 ……大分遠くに行ってる。今から追うのは難しいだろう……というか、自分から登校すると強制的に行かされないんだな。新しい発見だ。

 

「……大分遠い。森の中の洞窟にいると思う」

 

「そうか……追うのは難しそうだな」

 

「母さん、どうして……?」

 

 そう思って、学校に歩を進める……戻ろうにもシステムメッセージが道を塞いでいる。

 

「今日辺り、来るかもしれないのか」

 

「そうだな……警戒しとこう」

 

「わかった、誰が来てもいいようにしとかねぇとな」

 

 そう言って、自分の席に座ろうとした……その時。警戒態勢を取り、『眼』で見ていたから分かった……『EVENT』だ。これは好機……試しに壊してみるか。そう思って、エラーを起動する。

 

「……っ!!」

 

 俺が『EVENT』をぶん殴ると……なんと、その場から表示が消えてなくなった。

 

「なに……!? どこに消えた!?」

 

 そう思っていた時には、もう遅い。それは……俺の足元にあったのだから。

 

「っ……しまった!!」

 

 暗転、そしていつの間にか椅子に座っている。やられたな……『EVENT』は破壊そのものができないらしい。

 

「くそ……何が起こる?」

 

 セイントセブンが襲ってくるかもしれない。そう思って、構えをとっておく……だが。

 

「樹くん、何やってるの……?」

 

「……白上さん?」

 

「え……なんでそんなに他人行儀なの? もしかして私のこと、嫌いになっちゃった?」

 

 ……何を言っているのか、サッパリわからない。殆ど話したこともないはずだろ?

 

「はぁ……? 元樹、どういうことかわかるか?」

 

「え……いや、全然……」

 

「私のこと、嫌いなの……?」

 

 本当に意味がわからない、唐突にも程がある。そう思っていると……俺は、また自分の目を疑うことになった。

 

「……なんだよ、これ」

 

「なんで……私は……樹くんのこと……」

 

「お、おい待てよフブキ……唐突すぎるぞ?」

 

 『好感度』。そう書かれたゲージが、満タンになって……100と書かれている。一気に65も上がった……何故だ?

 

「元樹くんは黙っててください!!」

 

「お、おう……?」

 

「……元樹。『好感度』とか書かれたゲージが、いきなり満タンになって、100って書かれてる。多分、これの影響だ……前は35だったのに」

 

 まるで洗脳みたいだ、いきなりこんなになるなんて……セイントセブンの野郎か? 今すぐに殺してやる。

 

「……セイントセブン、か?」

 

「多分……今すぐ殺しに行く。やれるかどうかはわからんが……システムメッセージを破壊する」

 

「どこ行くの、樹……?」

 

 白上さんじゃない。誰だ? そう思って、見てみると……今度は大神ミオさんだ、あの時占いをしてた人。この人も……好感度が100にされている。

 

「大神さん……あなたまで……」

 

「なんで、そんなに他人行儀なの……?」

 

「ミオ、樹くんは白上達のこと……急に嫌いに……」

 

 逆だ。あなた達が好きに『させられた』んだ。ド外道めが、こんなことをして何になる? 相手の目的が掴めない……!!

 

「そんな……嘘だよね!? ねぇ、何か言ってよ!! お願い!!」

 

「……あなた達は私と知り合ったばかりのはず。一回助けたくらいで惚れるわけない……おかしいですよ」

 

「ウチは本気で樹のこと好きだよ!! 好きになるのに理由なんていらない!!」

 

 ……イカれてやがる。人格のない人形になったのか……? 今度の野郎は相当クズだな、女性に敬意の欠片もないことだけは確かだ。

 

「ちょっと~、抜け駆けは良くないよ~?」

 

「そうだよ? 大体樹はころねが好きなんだよ? わがった?」

 

「……!!」

 

 この二人も、やられたか。好感度の部分が……やってくれる!!

 

「ねぇ、樹~? ボクでよくな~い?」

 

「樹はころねのこと好きだよね? そうに決まってるよね? ねぇねぇねぇねぇ」

 

「っ……!!」

 

 くそったれ、この人達は関係ないだろうが。何のためにこんなことをする? 絶対に許さない、生かしておけない。俺は拳を強く握り、殺意をこの街にいるセイントセブンへと向けた。その命を刈り取るために……




 怒るバイくん、一体どうなるのでしょう。
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