(本編完結)ホロライブラバーズX infinity 作:とも667
こんな愛の、どこに価値があるのでしょう。
R18要素ありますので、ご注意ください。
「違うってば、何度言ったらわかるの!? 樹とウチは両思いなんだよ!!」
「ミオは黙ってて、好きなのは絶対白上ですよ!!」
「往生際悪いよ? そろそろ認めなよ~」
……好感度100。そう書かれた『ゲージ』が、四人の心を操る。ふざけるな……こんなことが、あってたまるか……!! 取り合ってくれて嬉しい? 誰にしようか迷う? そんなわけねぇだろ……!! 俺の中にあるのは、悍ましい色をした感情のみだ。憎悪、憤怒、巻き込んだことへの悲しみ……それ以外がない。この四人は、前は仲良く話していたのに……仲が悪くなっている。これも奴のせいか?
「ねぇ樹? ころねのこと一番好きだよね? そうだよね? そうじゃなかったらころね何するかわからないよ?」
「ッ……くそったれ!!」
「お、おい樹!?」
早く、早くしなければ。彼女達の権利を取り戻さなければ……どんな手段を使ってでも。そう思って、エラーを起動した。俺の体なんてどうでもいい、とにかく破壊しないと。そう思って俺は道を塞ぐ『システムメッセージ』に、インファイトの構えを取った。
「待ってっ!!」
「行かないで、お願い!!」
「邪魔しな……ッ!!」
跳ね除けてでも進むつもりでいた。だから、押しのけようと手を伸ばしている……だが、気づいてしまった。エラーを起動した状態であることに……一度触れてしまえば、その部分は『二度と』動かなくなる。腕に触れれば腕は無くなったのと同じだし、体に触れれば日常生活に支障が出るだろう……『デバッガー』だから動けていた、だがこの人達は『普通』だ!! 攻撃できないことに気づいて、急停止する。エラーを解除し、押しのけようとしたが……
「ねぇ、ボクを置いてどこ行くの?」
「なんで? なんで逃げるの? ねぇ、ころねのこと嫌いなの? なんでなんでなんで?」
「し、まった……!!」
捕まった……解除するには、エラーを使うしかない。そうしたら、この人達は死ぬ……関係ない人を殺してどうする。他の方法を考えろ、何かないか? そう思っていると……チャイムが鳴った。そこで……俺の体は言うことを聞かなくなり教室に向かおうとし始めた。まさか、襲撃でもするつもりか? やらせてたまるものか……!!
「……一旦休戦かな」
「絶対ウチだよ!!」
「ころねだって言ってるじゃん!!」
このイカれた現状をぶち壊す……そう思って、殺意を強める。今も見ているであろうインフィニティを憎んで……そして、そこからは『EVENT』もなく進んで……昼休み。気づかれない内に、抜け出そうとすると……
「どこ行くの……?」
「行かないでよ……」
「なっ……いつの間に!?」
『EVENT』を踏んだか? そう思って、足元を確認する……ない。どうやら、純粋に能力が高いようだ……エラーを使えれば一瞬なのだが、何せ相手は罪のない人。しかも、好感度を100にされた被害者だ。殺せやしない……なら、どうやって逃げるか。
「愛の力だよ?」
「ねぇ、逃げないでよ~……」
「離してくれ! あなた達の相手をしている暇はない!!」
俺がそう言うと……目の中の光が、一斉に『消えた』。そんなことは人体構造上有り得ないのに、確かに『消えている』。これもゲームだからか? そう思っていると、俺は突如凄まじい圧力に襲われた。
「なんでそんなこと言うの……?」
「どうして……? こんなにも白上は、君のこと愛してるのに……」
「俺はあなた達に恋愛感情が全くない!!」
俺はキッパリ言い切る。ここまで粘着されると、癖で手が出そうになるが……どうにか止める。やめろ、この人達は被害者だ……自分の同族殺してどうする!?
「そんなの嘘だよ、嘘に決まってる……」
「……じゃあ仕方ないね」
「え……」
やけに素直だな……さっきまで抵抗していたのに。そう思っていると……殺気を感じ、反射的に避けると……壁に拳が突き刺さった。
「言ったよね? 何するかわかんないって」
「……!!」
「おい、やめろって!!」
元樹が立って……俺を庇おうとした、その時。
「……!? いつの間に……!!」
「え……?」
「まさか……『踏んだ』のか!? いや、踏ませるために……!!」
『EVENT』が……足元にあった。避けた先に用意してあったんだ……まるで、地雷のように。何が起こるかわからない、そう思っていると……戌神さんが向かってきた。好感度100……これも、彼女の本意じゃない。インフィニティの野郎が本当に憎い……罪のない人を巻き込みやがって!!
「っ、速い……!!」
「樹が抵抗するからいけないんだよ?」
「……っ!!」
手が出せない、避けて防いで……防戦一方だ。何か方法は……そうだ。あの忌々しい『好感度』を破壊すれば……そう思ったが、できなかった。他の部位に触れてしまう危険性と……破壊による精神崩壊を危惧したからだ。『好感度』はそのまま精神に直結しているはず、もし廃人にでもなったら……俺はまた、目の前で罪無き命を零すことになる。
「やらせない!! 樹くんは白上のものだ!!」
「違う!! 誰がなんと言おうとウチのなの!!」
「ボクだって何回も言ってるじゃん!!」
三人まで来た、四対一か……最悪のカードだ。元樹も入ろうとしているようだが……如何せん、『好感度を100にされた』事実があるせいで、殴れないようだ。多分今はイベント中だから、何を言っても聞かないようにされているはず。インフィニティの野郎、そこまで考えて……!! 大体この『EVENT』、どうやったら終わるんだ?
「足切り落としてでも、絶対手に入れる!!」
「ダメだよ、そんなことしたらお散歩に行けなくなるじゃん」
「まぁ、骨は折れるかもしれないけどね!!」
くそ……強すぎる。炸裂する一発一発が重い、二人の刀の扱いも上手いし……居合、横一文字、二三段の技……様々な斬り方をしてくる。避けるのにも限界があるぞ……!! あっちも学習しているのか、命中率がどんどん上がっているし……
「これでどうだぁぁ!!」
「ッ、ぶね……!?」
「うりゃあ!!」
踏み込んだ足の音の後、重たい音と骨がバラバラになる音……そして激痛。風呂の湯をそのまま体の中にぶち撒けたような熱さに襲われて、血反吐を吐いた。
「……これでもまだ倒れないの? しぶといね」
「早く倒れてボクのものになってよ」
「違うよ、ころねのものだよ」
クソが……こんなことをさせて……!! 何とも、思わないのか!? そう思っていると、突如体のバランスが崩れた。今までどうにか立っていたのに、何の前触れもなく……十中八九、『EVENT』だろう。それを裏付ける出来事が、俺を襲ったのだから。
「樹……きゃっ!?」
「え……」
「なっ……!?」
奴は、やってはいけないことをした。体中の液体という液体が沸騰しそうだ。俺は、猫又さんに覆い被さる形になっている。前のめりに倒れたから……どうしてこの程度で一緒に倒れる? あんなに身体能力が高いのに……矛盾だらけだ。だが、問題はそこではない。
「……ッッッ!!」
「あは……ラッキースケベ、だね?」
「おかゆ? 何してるの? 早く手を離して? 樹も」
……俺は唇が『偶然』重なり、『偶然』胸を揉んでいる。今まで殴られたことより、斬られた傷より……何より痛い。『手を離せない』、その表示が……『ウィンドウ』が、俺達を嘲笑った。口すら動かせない、いつの間にか『EVENT』を踏んだらしい……
「ボクのファーストキスだよ? 両思いの証……」
「手を離してくださいよ!」
「やーだ! ボクも気持ちいいし、ね……? このまま……」
こんなこと言いたくないはずなのに。一体、誰だ。どいつがやった……? 『愛』? 『信仰』? 『正義』? 今すぐ殺しにいきたいのに世界が俺を殺そうとする。俺が動くことそのものを拒絶するんだ……
「お、おい……樹? 手を離して……」
「……」
「離せないし、喋れない……のか? 待ってろ、剥がしてやる!!」
俺の手を剥がそうとする元樹……外れた、吐き気がすごい……これが『EVENT』の内容か?
「むぅ、もうちょっとだったのに……」
「ねぇ? 樹はおかゆが好きなの?」
「……どうしてだ……?」
どうして誰一人不快感を覚えていない? 普通関わりたくないだろ。常識まで変えやがったのか? イカれ野郎……!! そう思っていると、壁の傷と吐いた血反吐が消えていた。何としても俺に死んで欲しいようだな……これは精神攻撃か? そう思いつつ学校をどうにか終えて……帰り道。信じられないものを見た……
「あ……?」
「お、おい? どうした?」
「……ここまでやるか……」
大量の『EVENT』が、所狭しと敷き詰められている。ここまでやるか、普通?
「……もしかして、『EVENT』とかいうのがあるのか?」
「辺り一面に敷き詰められてる、何が起こるかわからん……避けては進めんな」
「四人も幹部を倒したから、インフィニティの奴も意地になってるのかも……」
殴るのじゃダメだ……他の方法じゃダメか? そう思って、エラーを起動して……思い切り踏みつけた。すると……
「……またシステムメッセージかよ!!」
「あ、まずい……!!」
「くそったれ、始まりやがった……!!」
だが、これでわかった。踏みつければ恐らく破壊はできる。だが、システムメッセージで守られているので実質不可能……か。兎も角、セイントセブンを殺しに行かないと……そう思っていると、俺は暗転に見舞われた。気がつくと横に元樹はおらず、家の中にいた……
「分断されたか……ん? 何の音だ……? 変な音がするけど……」
「あ、おかえりなさい! あなた!!」
「……は?」
そこにいたのは、猫又さんだった。どこから入った?
「ボクのこと好きみたいだったから、鍵開けて入っちゃった! 今料理してるから、待っててね~!」
「……不法侵入だぞ」
「何言ってるのさ~、両思いじゃん!!」
違う、あなたは『好感度ゲージ』に操られているだけだ。目を覚ましてくれ……!!
「そういう問題じゃ……ッ!?」
「え、どうしたの?」
「ぐ、ぅあ……!」
しまった、操られた猫又さんに集中しすぎて、足元が見えてなかった……『EVENT』だ!! やられた……!! 体が言うことを聞かない……俺はエラーを発動しようとしたが……体中の筋肉が操られて、全く思い通りに動かない。おい、何を仕出かす気だ? やめろ!!
「……」
「そうそう、大人しく待っててね~」
「く、ぅ……」
くそ、指の一本も動かねぇ……!!
「はい、できたよ? 召し上がれ! ボクお料理下手なんだけど、君のためにいっぱい練習したんだ……偉いでしょ? 撫でて!」
「断……ぎっ!?」
「……どうしたの?」
そんなことをしてはいけない、セクハラだ。そう思っているのに、体中の筋肉が言うことを聞かない……俺も結局、インフィニティの野郎の掌の上かよ……!! そのまま手を伸ばして、撫でてしまった。その瞬間に体中を貫く、罪悪感と憎悪。一体どこまで、女性をコケにすれば気が済むんだ……!!
「あは、嬉しい……やっぱりボクが一番いいよね」
「……!!」
「もう、恥ずかしがらなくていいのに……」
飯を胃に注ぎ込む。飯さえ食えば『EVENT』は終わる……ここから抜け出して……そう思っていると、食べ終わった瞬間背中に衝撃と痛みが走った。何かを投げつけられたような……後ろを見てみると……俺の体に、今までなかったはずの『EVENT』が突き刺さっていた。それを投げたと思わしき腕は、あの時の腕だった……つまり。
「イン、フィニ、ティ……!!」
「もう、綺麗に食べちゃって……そんなに美味しかった?」
「あ、が……」
目の前にいるのに、手が届かない。何一つ、できることがない。これが、無力感か……虚しいな……
「お風呂できてるから、入ってくるといいよ?」
「……っ!! っ!!」
「あはは、何その動き~」
抵抗しようと体に力を込める。しかし、何も起こらなかった……現実的だな。そう思いながら、風呂に入らされた。体がまた勝手に動いて体を洗う……今度は何をする気だ?
「お邪魔しま~す」
「な……に……!?」
「あは、ビックリすることないじゃん……だってボク、君のこと好きだし」
風呂に入ってきた。裸だ……こんな、こんなこと許されていいはずがない。強姦と何も変わらんじゃないか!! 憎悪が、また強まる。
「洗ってあげるよ、洗いっこしよう?」
「ダメ、だ……うぐっ!?」
「もう、素直じゃないんだから……」
またもや体を貫いた『EVENT』。これが全てを俺から、人から奪い去っていく……全てこんなものがあるから!!
「どう? ボクの体、気持ちいい?」
「ぎ、ぎぎぃ……!!」
『抵抗する気になれない……』
動こうとすると、その『システムメッセージ』が現れた。どこがだ、俺は抵抗する気満々だぞ。なんでこの状況でそんなことが言えるんだよ、人が操られてんだぞ!?
「ん~、興奮しないかぁ……理性強いね~?」
「が、ァ……!!」
「じゃあ、ボクの体も洗ってよ?」
……忌々しい『EVENT』が、俺と猫又さんから選択権を奪い去る。歯軋りをするしかない……勝手に手が伸びていく。俺は……無力だ。今にも胃の中身をぶち撒けそうなのに、嘔吐することすら許されない。
「……ぎ、ぎ……」
「んっ、いいよ……全身しっかり、洗ってね?」
「……げ、ぇっ……」
口を開けて、嘔吐を試みる……吐けない。呻き声が出るだけで、声すら出せない……そんな権利ないとでも言いたいのか?
「んっ、はぁ……!」
「う、がぁぁ……」
「もう、おしまい……? 奥手だな~……」
色っぽい声を上げるそれは、操りの糸によるものだ。『ゲージ』のせいだ。だが、それは……精神そのものを人質に取っている可能性がある。何の罪もない人を、操られている人を殺して進むことはできない……まだ、この人は目の前で生きてる。もう目の前で、罪のない人を誰も失いたくないから。
「お風呂入ろうよ、一緒に……二人なら入れるよ?」
「く、ゥ……!!」
「ほら、早くこっちおいで……?」
踏ん張っているのに、体は前に進む。そのうち前のめりになり……風呂の中に頭から沈んだ。
「あっはは、ドジだなぁ……可愛い、そんなとこあるんだ……」
「ぶっ、は……」
「……そんな厳しい顔しないで、リラックスしてよ」
できてたまるか……インフィニティ、この世界は貴様がお人形遊びする場所じゃねぇんだぞ!! そう思って、何とか切り抜ける……『EVENT』が終わると、トイレに駆け込んですぐに吐いた。
「が、ぁぁ……くそぉ……くそったれぇ!!」
「寝る準備もできてるよ? 一緒に寝よっか」
「いや……ぐっ!!」
まただ。俺を嘲笑う『ゲームシステム』は、傲慢にも罪のない人達を俺を殺す道具にしようとしている。突き刺さった『EVENT』が、この世界の命を……道具として使い潰そうとしている。
「そうそう、それでいいの……あは、二人っきりだね?」
「……」
「ボクは樹がどうしても欲しい。だから……」
服を脱いでいる……抵抗ができない。まさか、やる気か。それだけはダメだ、こんなの強姦より酷い。こんな、こんなことって……
「……!!」
「ボクは、樹に全部をあげる……だから……樹の全部をボクにちょうだい?」
「っっ……!!」
どうして、こうなったんだ。どこで間違えたんだよ……!! エラーを起動したが……体が言う事を聞かないのは、変わりない。ベッドまで忌々しい『システムメッセージ』で保護されてる。だから、消えることはない。
「大丈夫……ボクは、君のこ、と……あ、れ?」
「……え?」
「な、なんで……おかしいなぁ、なんでこんなに悲しいのかな……? 嬉しいはず、なのに……ボクどうしちゃったんだろ……?」
泣いている……そりゃあ、嫌だよな。わかってたさ……憎悪と怒りが、強くなる。ガソリンが、どんどん注がれていく。
「う、ぐ……!!」
「ま、待っててね……大丈夫、ボクは……君の、こと、が……あ゙っ!?」
「っ、あ……?」
腕から投げつけられた、『EVENT』。それは俺の体に突き刺さっていた……猫又さんにも、それが突き刺さったのだ。俺のせいで……奴のせいで!!
「……ア、ハ……涙、止マッタヨ……シヨウカ……」
「……!!」
「ボクハ、キミノコトガ……ダイスキ、ダカラ」
涙を流すことすら許さない、醜い傲慢が生む悲劇。神を名乗る野郎の悪逆で、人の心が壊されてゆく……今、またそれが起きようとしているのだ。俺の憎悪と怒りが、俺を動かす原動力が……ついに、満タンを超えた。俺の体をまるで枷のように縛り付けていた『ウィンドウ』が、砕け散る。俺の体に刺さった『EVENT』も同様に。
「ぬぅぅ……あぁぁぁぁッ!!」
「……!?」
「うらぁぁぁ!!」
ようやく、破った。その調子で、忌々しい『EVENT』を猫又さんから引き抜いた……その場から消えて、俺の足元に来た『EVENT』を踏みつける……システムメッセージが、それを守るように現れた。だが、今の俺は……
「これ以上!! 罪のない人をッ!! 嘲笑うんじゃねぇッ!!」
バギギィッ!!
大きな音を立てて、忌々しいシステムメッセージが砕けた。その勢いのまま、『EVENT』を踏みつけて……叩き割った。ついに……やったぞ!!
「あ、ぁ……う……」
「……」
エラーを一旦解除して、彼女に急いで服を着せた。そして布団をかけておく……猫又さんが涙を流す。
「……」
「任せてくれ。俺が殺す」
そこに飛んできた、二人分の『EVENT』を……またエラーを起動して、殴りつけた。
「これ以上……やらせるか!!」
深夜に走る……行先は無論、奴のいる場所だ。システムメッセージが、壁として出てきたが……
「邪魔すんじゃねぇぇッ!! うぉらぁぁぁ!!」
どんどん叩き割って進む……邪魔だ、退け!! 外道が!! 走った先は、森の中……あった、あそこだな? 基地のようなものがある……
「な、なんだ!?」
「侵入者だ!!」
「バカな、あの壁を破れるわけ……ぐっ!?」
薙ぎ倒して進む、殺したいのはセイントセブンだけだ……あった、一番デカい扉!!
「出てこいゴミクズ!! 今すぐぶっ殺してやるよ!!」
「……うるさいわね。せっかく人が寝てたのに、無粋な奴だわ」
「……女か!?」
エラーを一旦解除する……時間は節約しないとな。
「そうだったら悪い? 私はセイントセブン、『愛』のジギタリス。今何時だと思ってるの? もう朝の一時よ? 明日も学校あるんだし、早く寝なさい? ……樹」
「ッ……それ、は……!!」
「困惑してるようね……これが私の力。愚かな『エラー』を精神的にも肉体的にも殺すために送り込まれたのよ……これは、私の力の一片。よく創作物で言うでしょ、『愛の力』だって。私の力の名は『Love story』。愛のストーリーを作り出す力よ」
どこが愛のストーリーだ。ただの洗脳だろうが!! 奴は母さんの姿からまた変化し、流れる蒼い髪、こちらを突き刺す視線を送る紺色の瞳……顔やスタイルも、モデルのようにいい姿になった。
「それは……誰から奪った!?」
「さぁ? 覚えてないわ……これは本人の皮じゃない。私はその人が『愛していた』対象になることができる。寸分の狂いもなく、ね」
「この野郎……よくも猫又さんを、白上さんを、戌神さんを、大神さんを……操りやがったな!?」
奴は、怒る俺を嗤っている。
「アッハハハ、ウケる……こいつ、エラーの癖に人気遣ってるよ!! ……キモッ」
「貴様は俺をどうしたかったんだ……!?」
「あー、それはね……これから見せるから、自分で判断しな。私の能力はね、『愛』に関することを司るの……だから、一番身近な『愛の対象』だった彼女達を使わせてもらった。化ける能力もあるけど……あと一つ、特別に見せたげるよ。本当は、これで心を壊すつもりだったんだけど……お前が種無しなせいで、失敗したの」
意味がわからない、一体何をする気だ? この女は……そう思っていると。
「……『愛操作』好感度……―100。来て、愛しの私の奴隷達」
「何をした……!?」
「まぁ、見てなさいよ……ゆっくりと、ね」
一体何が起こったのか……そう思っていると、そこに四人の人影が出てきた……否、もう一人いる。これは……
「……皆さん?」
「対象、ホロライブゲーマーズ。猫又おかゆ、戌神ころね、白上フブキ、大神ミオの四人……いや、あと一人いるわね」
「は……?」
そう言って、奴が指を鳴らすと……白上さんが術を使って、黒い白上さんを出した。
「白上フブキの別人格、黒上フブキ……これで、五人ね」
「……好感度、―100? さっきまでは100だったのに……まさか!?」
「気づいたようね。そう……私は、愛を『司る』能力を持っている。好感度を上げることができるし……下げることだって、自由自在なのよ!! 発動条件はカンタン、一回相手に触れればいいだけ。それも相手の『愛してる人』の姿になれば極めて簡単だし……アハッ、簡単すぎて欠伸が出そうよ」
こいつは……まだ、人を操るのか。
「……一つ聞かせろ、人の皮被ったゴミ野郎」
「口が悪いわねぇ、そんなんだから嫌われるのよ?」
「もし、好感度ゲージを破壊したら……その人は精神崩壊するのか?」
そう聞くと……奴は笑い出した。
「アッハッハッハ、こいつ本物のバカだわぁ!! 何言ってんのよ、アンタだけのものしか好感度ゲージがないとでも? 他の人の分もあるんだから、破壊してもそんなことにはならないわよ!! ただし……っえ?」
「……一人」
「う、ぁ……」
猫又さんの好感度ゲージを、破壊した。精神崩壊しないなら、それで十分だ。
「アンタ……バカなことやったわねぇ。破壊したら最後、その人にアンタは二度と認識されない。二度と見えないし、聞こえないし、わからない。記憶も勿論無くなる……アンタは二度と、この子に会えないのよ」
「知ったことか!!」
「……大神官様の言う通り、イカれてるわね。主人公様も可哀想に、こんな奴に毒されるだなんて……」
次に向かう……次は、白上さんだ。
「好感度―100。それが何を意味してるか、わかる? アンタのこと、この世で一番嫌いなのよ。そして、私のことは世界で一番愛してる……意味わかる?」
「……貴様、まさか!!」
「お願い、そいつを殺して!!」
その瞬間。一斉に、襲いかかられた。それには強い殺意が籠っている……
「あの人のために死ね、ゴミ野郎」
「……このアマァァァッ!!」
「その汚らしい口、私達のご主人様に向けないでよ」
切り裂かれても、痛くない。彼女達はもっと痛かっただろうから……!! 突き刺さる短剣を無視して踏み込み、拳を突き出す。
「うぉらっ!!」
「あ、ぅ……」
「ころね!? よくも……!!」
あと、三人。奴の私欲の象徴を叩き壊す!!
「……システムメッセージが破壊されてる。そうか、エラーが濃くなって……早いわね。流石は『イレギュラー』……それもこれも、グロリオがしくじったせいね」
「オラ、死ねっての!!」
「っ……おぉぉぉっ!!」
刀で体を切られたが……痛みを無視してまた、破壊した。黒上フブキさんを戦闘不能にすると、白上さんの中に戻った。
「黒ちゃん……!! こんなことして楽しいの!? 最低!!」
「何とでも言えばいい!!」
「うわっ、開き直りきっしょ」
また、殴る。忌々しいゲージが、音を立てて砕け散った。できる限り、ダメージを抑えないと……そう思っていると、後ろから短剣で突かれた。大神さんだ……
「死ね……!!」
「ぎぃぃあっ!!」
「うっ、あ……」
裏拳をぶつけると、ゲージが消えた。これで全員だ……
「……これで、お前だけになったな……」
「呼んだのがあの四人だけなんて、いつ言ったかしら」
「……あ?」
嫌な音が、後ろからした。大量の殺意が、後ろにある……咄嗟に、その場から飛び退く。その瞬間、さっきまでいた場所が凍てついた。時間節約のため、エラーを解除しつつ聞く。
「どういう、ことだ……?」
「現在、ホロライブJPを構成しているタレントは今倒した者達を含めずに34人。つまりアンタはあと34人分、これを続けることになったの。さぁ、無様に足掻いてみせなさい……」
「……上等だ……」
構えを取る。撃破しなくていい、ゲージを破壊すれば済む話なんだ……この忌々しいゲームを壊す。
「このゲームに……ホロライブラバーズXに、アンタは必要ない。だから、美少女で囲んで堕落させた後に、男の大好きな美少女様に殺させる予定だったんだけど……アンタが愚かだったから失敗したのよ。まぁいいわ、アンタはどっちにしたってここで終わり。1対34……勝てるわけがない! 男の大好きな美少女に殺されるといいわ!! アハハハハ!!」
「……貴様と、インフィニティを殺すまでは死なん。絶対にな……!!」
「はぁ……バカだわ、本当にバカ……相手してるとストレス溜まる。こんなクソ野郎……さっさと殺しちゃってよ。『ホロメンのみんな』」
大量の足音が、聞こえてきた。全員が自分の武器を構えて、殺意を隠そうともしない。全員共通して、『好感度ゲージ』に―100と書かれている。
「私は隠れてるから……お願い、こいつを殺してよ!!」
「ってわけだから、死ね」
「前々から、大っ嫌いだったんだよねぇ……」
好意も嫌悪も、自由自在。こいつのせいで……このアバズレのせいで!! 煮え滾る憎悪のままに、エラーを起動した。これが愛であってたまるか、もし本当にそうなら『愛』なんて、クソ喰らえだ。殺意の兵隊が、こちらに牙を剥く。
「眠いからさ、とっとと死んでよ!!」
「できるだけ痛めつけて……二度と蘇らないように殺してね!!」
「死ぬのは貴様だァァァァッ!!」
そう言って俺は、殺意の渦の中へと飛び込んだ。このくだらないゲームを、終わりにするために。
バイくんは、絶対に勝たねばなりません。