※この作品はR-18です。

(本編完結)ホロライブラバーズX infinity   作:とも667

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 35対1。樹くんの死闘をご覧下さい。


hololive lovers

俺に向けられる、殺意の暴風。それは、俺を今にも仕留めようとしている……奴によって、『ゲージ』を操られたから。-100、その文字が全てを壊していく……

 

「呼んだらどんな時だって来てくれる、だって愛してるから……! 素晴らしい『友愛のストーリー』ね!! 友愛に潰されなさい、アハハハ!!」

 

「そう上手くはいかない……!! 俺は貴様の作ったくだらん友愛をぶち壊す!!」

 

「私達の友情をバカにするな!!」

 

 次々向かってくる、名前も知らない人達。奴が言う『ホロメン』だな……名を聞いている暇はなさそうだ。振り下ろされた斧を躱し、女性の尊厳を踏みにじる『ゲージ』に鉄拳を見舞う。バラバラと崩れると同時に、水色の髪をした人は倒れた。しかし、その後ろから人が飛び出した。

 

「すいちゃんの仇ぃ!! 喰らえー!!」

 

「っ、ぐ……!?」

 

「ナイスみこちィ!! 打首だ極悪人!!」

 

 音を立てて放たれた、桃色の電撃。俺の体を襲ったところに、金髪で眼帯をつけた人が狂気的に笑いながら突っ込んできた。右手には鮪包丁、一撃で首をはねるつもりらしいな……だが、この程度……誰かの尊厳が踏みにじられるのに比べれば!!

 

「痛くも痒くもないなァ!!」

 

「う……ぁ……?」

 

「はあとちゃ……うっ……」

 

 また二人分破壊したら、これで……あと31人。先は長いな……そう思っていると。

 

「ぬぅ……!? 早い……!!」

 

「なんだか知らないけど!!」

 

「隙ありぃ!!」

 

 止まるのが少し早い。パワーが上がった分、体が限界を迎えるのも早いのかよ……!! 心の中で毒づきながら、向かってくる二人を見据える。一人はナイフ、もう一方は拳らしい……一方はエルフか。そう思っている間に、俺に攻撃が炸裂しそうになる……いけない、少しでも触れたらおしまいだ。エラーを即座に解除した……鉄拳をもろに喰らう。

 

「っ……」

 

「死ね!!」

 

「ぎ……ぃぃあぁ!!」

 

 エラーを起動して、胸に向けられた狂気の刃を避けた。すかさずゲージに拳を浴びせて、破壊する。また解除して、時間を節約する……必須テクニックだな。

 

「これで……あと29人……!?」

 

「ハサミギロチン!!」

 

「やべっ……ぎっ!?」

 

 ジェット噴射で急接近し、大きなハサミで切り裂こうとしてきた機人が一人……何とか避けたが、特徴的な赤の髪飾りをつけた人に銃で撃たれた。

 

「ナイス、あずきち!!」

 

「ミサイル……っ、くそ!!」

 

「向かってきた……!?」

 

 ミサイルをエラーで『止めて』、消し去る。それに驚いたのか、動きが止まった……今だ!!

 

「き、消えた……!!」

 

「そこだ!!」

 

「あぅ……」

 

 また、一人。銃にはタックルだ……そう思って撃ってくる『あずきち』と呼ばれた人に突っ込む。

 

「っ、近寄らないで!!」

 

「そんなものが効くか!!」

 

「うぁ……」

 

 これで、また減ったな……そう思っていると、後ろから危険な気配を感じた。

 

「アイアン・メイデンッ!!」

 

「ぬぅ……!? 拷問器具……!?」

 

「しぶといなぁ、クソ男のくせして」

 

 その人は金髪で、黒い服を着ている……あの羽は魔族のものだ。

 

「メル様、私も手伝うわ」

 

「ありがとう、ちょこ先生! よぉし、メルも頑張っちゃう!! なんたって、他でもないジギタリスちゃんの頼みだもんね!!」

 

「ジギタリス様もいいこと言うわね、この男を殺していいだなんて……ますます好きになりそうだわ」

 

 奴は後ろですくみあがっている……振りをして俺達を嘲笑っている。

 

「……ブラッディヴァイト!!」

 

「血を吸い尽くすつもりか……!!」

 

「ヘルズバインド」

 

 ちょこ先生、そう呼ばれたその人が俺を力で空中に縛り付けた。確かこの人は、学園の保健担当じゃなかったか? おいおい、そんな人まで支配対象なのかよ。

 

「わぁ~、いい気味!! じゃあ……いっただきまーす!!」

 

「はい、召し上がれ……美味しくないかもしれないけどね」

 

「……かかったな」

 

 力を込めて、エラーを強めた。ヘルズバインドと呼ばれたその力が断ち切られ、近づいていた二人の隙をつく。

 

「っ、そん……な……?」

 

「メル様……え……?」

 

「あと……25!!」

 

「一期生全滅……でも、切り札はとっておかないとね」

 

 そう言って、他の人間を物扱いするジギタリス。どこが愛だ、ただのブラック企業じゃないか。しかも最悪なタイプの。

 

「黙れアバズレ!!」

 

「……ちょこ先生の仇よ、やっちゃって! 『二期生』!!」

 

「ぶっ潰れろ!!」

 

 鎖付きの錨が飛んできた……どうやら、あの四人が残りの『二期生』らしい。

 

「今のでやられていいのに……そんなに苦しんで死にたいのかな?」

 

「きっとそうだ余! 燃やし尽くしてやろう余!!」

 

「ここから逆転サヨナラだぁぁ!!」

 

 魔法、錨、二本の燃え盛る刀、バット……強いな。だが、やるしかないんだ。

 

「かかってこいよ!! 全員まとめて相手になってやる!!」

 

「上等だオラァ!!」

 

「シオンの大事なジギタリスに手を出したんだから……殺したっていいよね!!」

 

 バットのフルスイングが足元を薙ぐ。ゲージを破壊して、シオンと名乗った魔法使いの方に向かう。

 

「シオンちゃん危ない!!」

 

「あくあちゃん!? 危ないから下がってて!!」

 

「っ……」

 

 驚いた……目の前に何より憎い相手がいるのに、自分が殺られるかもしれないのに……友達を優先できるのか。自分よりも他人を気にして……そう思っていた時。

 

「二人とも下がって!!」

 

「な……っぎ!?」

 

「ありがとう、あやめちゃん!!」

 

 顔を斬られた……そこに風魔法が飛んでくる。体が容赦なく切り裂かれた。

 

「ぐ、が……」

 

「命中~!」

 

「トドメはあてぃしが刺す!!」

 

 錨が俺に向けられる……だが、この程度で戦いをやめるわけにはいかないのだ。

 

「……!!」

 

「あ……え……?」

 

「あくあちゃん!!」

 

 傷による激痛を無視し、あやめちゃんと呼ばれた人の憎たらしく光るゲージに、鉄拳を叩き込む。

 

「うっ……!?」

 

「あやめちゃ……」

 

「隙ありィィ!!」

 

 やった……これで、『二期生』は全部だ。

 

「あ、れ……?」

 

「……これでお前のカードはまた減ったぞ」

 

「何言ってるの、満身創痍じゃない」

 

 奴の言うことは正しい……だが、俺は笑ってみせてやる。奴の怒りを煽るために……エラーを解除し、ニタニタと笑う。

 

「どこがだよ……俺は立ってるだろうが。所詮、お前の洗脳じゃ力は引き出しきれないのさ」

 

「言わせておけば……!! 洗脳ですって!? これは愛よ、愛に基づく行動は全てがラブストーリーの一部なのよ!! 例え、それでどんなことが起きようとも……他人が迷惑を被ろうとも、『愛』なら許される!!」

 

「んなわけねぇだろうが!! それなら……俺の親への愛を否定したお前も大罪だろうに!!」

 

 俺が叫ぶと、奴はそれを鼻で笑った。

 

「グロリオ達から聞かなかったの? 『エラーは全ての生物より下の存在』だって。人間に干渉しなければ、ゴキブリだって生きていていいけど……お前達エラーはダメ、だって異常だもの。エラーの家族だって、異常になる可能性があるから……疑わしきは罰する。人間以下に相応しいやり方でね……『愛』なんてものを口にする資格すらないんだから、否定もクソもないわよ。そんなこともわからないの?」

 

「……そんな理由で、俺の母さんと父さんは……!! 貴様のような奴らのせいでッ!!」

 

「お前が生まれてきたからいけないのよ。お前がエラーでなければ、父親も母親も死ななかった。ただのモブであり続けていればよかったのに……私の慈悲で、可愛い美少女様に殺してもらえるんだから……感謝して欲しいわね!!」

 

 笑みに浮かぶ狂気と、人をなんとも思わない醜悪な精神。俺はそれを見て、憎悪がエンジンから溢れ出すのを感じた。溢れ出したものは、殺意と狂気に変わる……アザレアを殺した時よりも、狂気が強い。憤怒と憎悪が抑えきれない……生まれた狂気は俺から、痛みや躊躇を消し飛ばした。

 

「さっさと洗脳した人を出せ。全員解放する」

 

「やれるものならやってみなさい、今度の人達は強いわよ? やりなさい、『三期生』!!」

 

「……メイス!?」

 

 人の背丈程もあるメイスが、俺目掛けて飛んできた。暴力的に地面を叩き割って……現れた。

 

「ありゃ、当たらなかったか」

 

「いいじゃん、こいつはすぐ死ぬんだから」

 

「それもそうだね!!」

 

 あの二人、仲が良さそうだな……

 

「こ、怖い……のです」

 

「船長の後ろにいな、るしあ!!」

 

「マリン……」

 

 全員がこちらに殺意を向けているのは変わりない。今のうちに何とかしないと……エラーをまた起動し、突っ込むと……気配を感じて、咄嗟にエラーを解除して防ぐ。

 

「っ、だいぼうぎょ……!!」

 

「ちっ……運のいいやつぺこ!!」

 

「ぺこ……?」

 

 そういえば、元樹が言ってたな。そんな人がいるって。この人がそうなのか……姿を見る限り兎のようだが。持っているのは……人参型の片手ハンマー、それを両手に一つずつ持っている。どうやら、アレで撲殺する気だったらしい。

 

「いや、いい感じだったよ?」

 

「ふぁんでっどさん……お願いします、なのです!!」

 

「アンタ達! 出番ぺこだよ!!」

 

 その獣人が髪に挟まった人参を投げると、丸い兎っぽい生物が大量にやって来た。その上、あの緑の子はネクロマンサーらしく……アンデッドを呼んでいる。物量作戦か……

 

「じゃあ、さっさと終わらせますか」

 

「脳天ぶち抜いて終わりにしよう、それがいいよ絶対」

 

「るしあはやらないよ、汚らしい男め!!」

 

 ……上に浮くゲージを見て、狂気を燃やす。痛みを遠ざけ、目的以外を考えないように……

 

「……突破する!!」

 

「おらぁ! 一斉にかかれぇ!!」

 

「あいつを殺して、ふぁんでっどさん!!」

 

 その全てが、俺に向かって襲いかかってくる。俺はまとわりつかれて、鋭い牙やアンデッドが持っている武器による攻撃を次々受けた……だが。

 

「ぬぅぅ……邪魔だァァァッ!!」

 

「嘘……!? 一気に全部振り払った!?」

 

「大丈夫、団長に任せて……砕け、白亜の鉄槌ッ!!」

 

 全力で投げられたメイスが、俺の頭を粉砕しようと猛スピードで向かってくる……攻撃を当てて消すわけにはいかない、そう思って俺は……

 

「うらぁ!!」

 

「……地面が消えた!? いや、潜って避けたのか!!」

 

「変な技使うやつだぺこ……みんなどうする?」

 

 どうにか避けた……早く勝負を決めないと、エラーも長くは持たない。頭の上に浮いてるから足じゃ蹴れないし……あと、一分もないぞ。

 

「大丈夫、私に任せてよ……出てきたら撃ち抜くから」

 

「さっすがフレア!!」

 

「気がついたって避けようがないよ、私の矢は外れない……!!」

 

 弓を引く音が聞こえる……行くぞ。削り取った地面から這い出て、タックルを仕掛ける。

 

「向かってきてくれるとは……そのまま遠くで死んでよ!! 行け!!」

 

「……え!? なんで……矢が消えた!?」

 

「っ、るしあ……!!」

 

 『るしあ』、そう呼ばれた人を庇う赤髪の人。ゲージを狙って、拳を振るった。

 

「あ、ぅ……」

 

「そ、そんな……マリン!!」

 

「ぬぁぁぁっ!!」

 

 忌々しいゲージを叩き割る。次だ。

 

「っ、くそ……弓が効かないって、どういうこと……」

 

「らぁぁっ!!」

 

「う、ぇ……?」

 

 ゲージが壊れて、次々倒れていく。

 

「あ、アンタ達! ぺこーらを……」

 

「ぬぁぁりゃっ!!」

 

「うっ……」

 

 最後は……メイスの人だった。気がつけばその人は、メイスを振り上げて……

 

「死んでよ、友達殺し」

 

「……っらぁ!!」

 

「うぁ……」

 

 クロスカウンター、と言うのだろうか。ゲージには当たったが……俺もメイスをもろに食らった。脳天には当たらなかったから、脳震盪は免れたが……片腕が折れたらしい。そして丁度良く、片腕の方も動かなくなった……最悪だ。そう思って、エラーを解除する……時間を稼いで、どうにか再使用できるようにするしかないか。

 

「……いい気味ね。これでもまだ、お前の罪には足りないけど……」

 

「お前は戦わんのか……? 他の奴らはみんな、自分の武器で戦っていたが」

 

「あるわよ……? あなたのような、汚らわしいエラーに使うのは気が引けるってだけ。それも気にせず殴りに行けるグロリオがおかしいのよ」

 

 ってことは……近距離武器なのか。

 

「お前の武器は、近距離武器なのか……?」

 

「そうよ。愛の武器……まぁ、当たれば絶対に殺せるし、まだ使う気なかったけど……飽きたから、そろそろ終わりにしようかしら」

 

「……使う気か」

 

 奴は他の奴と同じく、地面に手を置いて言った。

 

「特殊番号05、『ラブウィップ』」

 

「……愛のムチ、ってか? それで引っ叩くつもりってわけかい」

 

「叩くだけじゃない……自由に伸びて、敵を縛ることだってできる。便利なのよ、これ……美しき私の愛の象徴」

 

 茨のように刃がついたムチを、こちらに振りかざすジギタリス……食らったらまず、体はズタズタになるだろう。あと少しなんだ、時間を稼げ。

 

「お前の武器はそれか、ジギタリス……」

 

「そうよ、これであなたはおしまい。で、どうするの? もしここで土下座して頼むなら、楽に親元に送ってあげてもいいけど」

 

「断る、お前は何がなんでも殺してやるよ」

 

 ……戻った。両腕とも戻ったぞ!

 

「もういいわ……面倒くさい。最後の切り札もまとめて、一気に出してあげる……来なさい!!」

 

 まとめてぞろぞろと入ってくる人達……holoxの人達もいる、どうやら『ホロメン』に含まれるらしい……計15人、4と5と6ってことか。

 

「……15対1、か」

 

「そうよ? さらに……あの中心にいる人が私の切り札、このゲームでの性能ダントツ一位……0期生、『ときのそら』。全ての始まり……そりゃ強いわよね。私含めて16対1……勝てるかしら?」

 

「勝てる勝てないじゃない……勝つ。お前を殺してな!!」

 

 折れた腕を無理矢理動かす。痛覚を憎悪で遮断する。雑念を憤怒で焼却して……拳を握った。

 

「じゃあ死ぬまで戯言吐いてろよ、ゴミクズ。やっちゃえ、みんな」

 

「喰らえ!!」

 

「チッ、やはり物量が多いな……」

 

 次々飛んでくる銃弾や魔法……それらを避けて掻き消して、どうにか対応する……

 

「……囲んだ!」

 

「一斉にかかれぇ!!」

 

「これでおしまいなのら!!」

 

 ……回避は無理だ。ならば……さっさと破壊するまで。血と一緒に狂気を巡らせ、邪魔な痛みを消し飛ばす……ヤバい攻撃だけ避ければいい。天使と思わしき人の飛行しながらの殴打を避けて……カウンターした。

 

「うっ、あ……」

 

「かなたん! くっそぉぉ!!」

 

「……らぁっ!!」

 

 今度は羊か。角で突進を喰らい、片方の角が腹に刺さったが……気にせず、殴りつけた。

 

「え、角が消えて……あぐっ!」

 

「ルーナ、やるよ!!」

 

「任せろなのら!!」

 

 攻撃が二段になって飛んでくる……それに突っ込んで、消しながら進む。これで……

 

「っ……!?」

 

「隙あり。私達だっているんだよ?」

 

「ナイス、ししろん!!」

 

 また撃たれた、しかも急所を撃ち抜いてきている……地面が凍りつき始めた、どうやら凍らせる気のようだ……避けられそうにもない。

 

「だいふく行くよ!! アイスストーム!!」

 

「チッ……!!」

 

「……こっち来た!? なんで、確かに凍ってるのに……!!」

 

 この程度で諦めるわけにはいかない。奴への殺意は消えない……息を吸うな、肺にこの空気を入れちゃいけない。

 

「ラミィに近寄らないでっ!!」

 

「……!!」

 

「あぅ……!」

 

 殴りかかってきたところを、殴り返す。相手は倒れたが、俺も顔の骨を折られた。

 

「ねねち!! この……火の輪くぐり、ライオン!!」

 

「……ライオンが出てきた!? くそったれ……!!」

 

「噛み付け!!」

 

 噛み砕かれたら終わりだ……あの人のゲージを破壊するためには、あの輪をくぐらなきゃいけない。跳ぶしかないだろ!! ライオンの背を蹴って、火の輪を潜る。

 

「……ギャウ!?」

 

「ライオンを足場に……!?」

 

「そこだ!!」

 

 ゲージ、2つ目。今度はもう撃たれない……!!

 

「……なんで消えるわけ? チートでも使ってんの!?」

 

「うおらぁっ!!」

 

「ぎっ……」

 

 よし……次だ。

 

「ししろん……! っ、氷の城壁!!」

 

「壁……? そんなもの……!!」

 

「今だ、ぶちかませ!! ココ!!」

 

 ……後ろか!?

 

「クロスファイア! ブレスッ!!」

 

「龍……!? 一体どこから……!!」

 

「燃えろ、燃えろぉ!!」

 

 くそ……これは当たっちゃいけない、さっさとゲージを……!!

 

「やらせない! 近づくな!!」

 

「アイススピア!!」

 

 くそ……holoxの人達も攻撃に参加している。奴は……笑いながらそれを見てる。相変わらず、ムカつく奴だ……

 

「だいぼうぎょ……!」

 

「はかせ!!」

 

「okラプちゃん、喰らえ!!」

 

 だいぼうぎょとエラーを解除して、薬の範囲から離れる……どうにか激しい炎の範囲からも抜けて、龍の背に乗った。

 

「ッ、この……落ちろ!!」

 

「ぐぅぅ……らぁぁ!!」

 

「ぎゃっ……」

 

 龍が倒れた……山のような龍の体から飛び降りた拍子に、『ラミィ』と呼ばれた人……エルフと思わしき人のゲージも破壊した。

 

「しまっ……う……」

 

「ッ……次!!」

 

「トワ様、危ないっ!!」

 

 ラプラスさんが魔法を撃ってきた……時間か、左腕が動かない。あと一分もないな……!!

 

「ラプラス……! 危ないよ、下がって!!」

 

「嫌だ! あんなクズ野郎に、トワ様がやられて欲しくない!!」

 

「……ラプラス、避けて!!」

 

 会話を気にしてはいけない……操られてるんだ。解放するためには……これしかない。

 

「え……あ……」

 

「よくもラプラスをッ!!」

 

「撃たせるか……!」

 

 肘鉄をゲージに叩き込んだ……大分減ったぞ。

 

「あぐ……」

 

「アンタもだッ!!」

 

「こっち来んななのら!! ぐっ……」

 

 お菓子が次々飛んできたが……実弾なら、消して進める。

 

「……いただきまーす」

 

「っ……シャチか!!」

 

「避けられた……すばしっこいな」

 

 確か、沙花叉クロヱだったか。邪魔はさせん、俺には時間がないんだ!!

 

「ラプの仇……討たせてもらう」

 

「……避けたか」

 

「私は鷹だ……舐めてもらっちゃ困るね」

 

 生半可なスピードじゃ追いつけないか……だがやるしかない。攻撃を見切れ、スピードに慣れるんだ。飛んでいようが、やることは変わらない。

 

「『ホークストライク』!!」

 

「っ……らぁぁぁ!!」

 

「くぅ……!?」

 

 ゲージを破壊した……これで、また減ったな。風真さんが踏み込み、構えを取っている。何かしてくるか。

 

「ルイねぇ!! くっそぉぉ!! 風真流……奥義ッ!!」

 

「……来るか」

 

「疾風断破ァァァ!!」

 

 地面を蹴る音がした……よし、見えたぞ!!

 

「ふっ!」

 

「そ、んな……」

 

「絶対に勝つ……ジギタリスちゃんのためにも!!」

 

 奴のせいで、攻撃をさせられる。その凶器はこんな下衆を守るために使うべきじゃない……! だからこそ……

 

「俺だって負けられないんだよ!!」

 

「それ以上喋るな!!」

 

「またか……!」

 

 沙花叉さんが水の中に潜った……その瞬間、姿が変わって、シャチの姿となる。俺を今度こそ食い千切るために。

 

「行け、助手くん!!」

 

「……自爆か!!」

 

「これで……おしまいだ!!」

 

 飢えたシャチが、大口を開けて飛び退いた俺目掛けて飛んでくる……ゲージはあるな。俺は……その体制のまま、ゲージに足裏をぶち込んだ。

 

「ぎゃう……」

 

「クロたん!! 助手くん……!」

 

「させるか!!」

 

 壁を蹴りつけて、拳を振りかぶる。ゲージを狙って……!!

 

「うぉらぁぁ!!」

 

「ぐぅ……!」

 

「ぜぇ、ぜぇ……あと、一人!!」

 

 どこだ? そう思っていた時だった……

 

「今よ、そら!!」

 

「……」

 

「……っぶねぇ!!」

 

 咄嗟に体を反らした……さっきまで心臓があった場所を、刀が薙ぎ払った。もしあのままだったら、俺は真っ二つだっただろう……

 

「チッ、当たらないか……まぁいい。お前は終わりだ……『ときのそら』は最強格のキャラクター。満身創痍で勝てるかしら?」

 

「やるって言ったら……男は、やるんだよ……」

 

「死んで」

 

 心臓への的確な刺突。俺と同じように、怒りと憎悪の籠った瞳だ。攻撃にもそれが現れている……その上。

 

「ぐっ、まずい……!」

 

「……そうか、今がチャンスだ!!」

 

「ありがとう、ジギタリスちゃん」

 

 腕が動かなくなりやがった……こんな時に!! 回復には三分程かかる……エラーを解除して、できる限り距離をとる。だが……エラーを解除した途端、激しい脱力感と虚脱感が俺を襲った。相当HPを削られたらしい。

 

「お、ごぇぇ……くぅ……」

 

「アハハ、いい気味ね……痛めつけてやりましょう、そら!!」

 

「うん、ジギタリスちゃん……ホロライブ学園はみんな仲良く。それの邪魔をするような極悪人は……苦しんで死んでもらわなきゃね」

 

 接近しながらの居合を、どうにか躱す。価値観まで変えてやがる、こいつの能力か……

 

「価値観まで改変しやがって……!」

 

「人を愛すると価値観が変わることくらいあるわよ」

 

「お前が勝手に変えたんだろうが!!」

 

 どうにか、振り下ろされた刀を避ける……あと少し、あと少しなんだ!!

 

「ジギタリスちゃんを悪く言う奴はみんな死ぬんだよ?」

 

「くそったれが……! 愛を人を奴隷にする免罪符にしてんじゃねぇよ!! アバズレがぁ!!」

 

「あら……それじゃあ、この街の全員が私の奴隷ね」

 

 ……は?

 

「たった一日で、この街の総人口全員と接触したのか!?」

 

「違う。セイントセブンである私だって、そこまでできない……『Love story』は他の人に移るの。私が関わった人が誰かに少しでも関われば、その人も私の愛の対象。その人がまた誰かに関われば、その人も……つまり、一日で街を『Love story』の対象にするくらい容易いの。わかる? もう日本とアメリカと……半数以上の国は私の思うがままね」

 

「……なんて能力だよ……!! 世界だってすぐに手に入るじゃねぇか!!」

 

 感染力が高すぎる……その上、支配している者は邪悪。こいつ……やろうと思えば、世界だって手に入れられるぞ。

 

「『この世界』は絶対神であるインフィニティ様のものよ。だから、私はそれをしない……やれるけどね。あ、この街の全員は流石に入り切らないから呼ばないわよ……それに、呼んだって足でまといだし」

 

「くそったれ……!! これまでの奴らが強力な兵器なら、お前は恐ろしい病気だ……!!」

 

「違うわ、世界を救う善性の細菌よ……お前という癌細胞を消すことによってね!!」

 

 ……やった、片腕が戻った!! そう思って、エラーを起動したその瞬間……一瞬だけ動きが止まってしまった。

 

「終わりだよ」

 

「……!!」

 

「うっ……!?」

 

 やった……これで、全員だ。だけど……

 

「……っ、くぅ」

 

「片腕は粉砕骨折、もう片方は切れ込みが入った。そして……時間もある。終わりね……」

 

「……ハッ、何を言ってるんだ?」

 

 骨折したって動かせる。俺の痛みなんざ、みんなの心の痛みに比べれば……1円の価値もないさ。

 

「黙れ……これで、終わりよ!!」

 

「……っ!!」

 

「避けて終わりだと思った? 愛は……『増える』のよ」

 

 奴がそう言うと……空振って叩きつけられた茨が、ひとりでに地面に刺さり……この部屋中から生えてきた。

 

「なに……!?」

 

「巻きつけ!!」

 

「っ……!」

 

 茨が巻きついて、棘が体中に突き刺さった。これは……返しまでついてやがる。

 

「これは他の奴らとは違う武器……エラー耐性がある武器よ。敵に直接くっつくから……エラーで抜け出されちゃたまらないからね」

 

「くそ……この武器には、通じんか……」

 

「さらに……!!」

 

 そう知って、こっそりエラーを解除しておく……棘から液体が漏れているが……毒か!?

 

「毒……!?」

 

「違うわ、これは愛……濃縮した愛よ。あなたを私の愛だけしか考えられなくして、たっぷり痛めつけるの……そして、仕上げ!!」

 

「ぬ、ぎぃ……あ……!!」

 

 感情が吸われている……廃人にするつもりか!!

 

「アハハッ、無様ねぇ……でも、この後の展開を考えると……ゾクゾクしてきたわ!!」

 

「う、がぁぁぁ……ぎ、ぎ……」

 

「……おかしい。このスピードで吸っているのにどうして……?」

 

 ……そうか。こいつ、俺の憎悪も吸ってるんだな……!? だんだん、脳内が憎悪と怒りだけになってきた……他の感情は吸われたらしいな。そんなことより……殺したい。早く……奴の息の根を止めたい……殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!

 

「なっ……まずい!! 回収しないと……鞭の積載量を超える……!!」

 

「……うがぁァァァァ!!」

 

「ま、まず……ぐぁぁっ!!」

 

 鞭が奴の手を跳ね飛ばして……真っ黒になった。あれが、俺の憎悪の色か……茨は全て弾けてなくなった。あとは……奴だけだ。愛とやらが、体から血とともに溢れ出していく。腕は……動く。エラーは消えてるな……?

 

「ひ、ひぃっ……化け物!!」

 

「化け物は貴様だ、このアバズレェェェッ!!!」

 

「やめて、樹……ぐぎゃあ!? せ、せめて……置き土産を……!! ぎぃぃ!!」

 

 その場で地面を思い切り蹴る。奴の頭に足裏をぶち込み……奴が倒れたが、無理矢理立たせた。母さんの顔をしているのに、声も同じなのに……戸惑いが湧かないし、葛藤すらできない。あぁ、これが狂気……殺意が臨界点を超えた証。それに身を任せて……奴より強い狂気を、奴にぶつける。悪意には悪意を、残虐には残虐を。狂気には、より強い狂気を……人間には、それしかないのだ。

 

「インファイト!! インファイト!!! インファイト!!! インファイトォォォ!!!」

 

「ごぎゃあぁぁぁぁーっ!!!」

 

「ウォラァァァァァーッ!!!!」

 

 それから……何十分、エラーを使わずに殴り続けただろうか。奴は……体中が無惨な姿になっていた。内蔵だって、潰れているだろう。血と胃液が、口から溢れていた。体から溢れ出した血か、奴の血か……それはわからない。

 

「ご、るる……」

 

「こ、ろし……て……ころ、し……」

 

「……」

 

 次の一撃で、どちらにせよ死ぬだろう。血に塗れて……俺はどんな顔をしているのだろうか。憤怒と憎悪は消えていない……きっと、悍ましい表情なのだろうな。奴にとっては……恐怖を煽るのだろう。そう思いながら、俺は……奴の心臓を骨ごと叩き割った。

 

「げぇ、あ……」

 

「……」

 

 俺は、大量の血を被った。返り血で、赤くない場所が体にない……そして、周りには気絶した学園の皆さん。地獄の光景だ……俺は周りから見れば、大量殺人をした悪鬼にしか見えないだろう。肉片だってついてるし……幸い病院が近い、連れて行こう。

 

「……」

 

 一人一人、運んでいく……血濡れになっていく皆さんが可哀想だが……仕方ない。吸われた感情が戻ってきたか……何分かして、運び終わった。全員ソファに寝かせている……

 

「……ゆ、幽霊……!?」

 

「誰が運んできてるの……!?」

 

「……」

 

 何か言われているが……聞こえない。お金を取り出して、血で文字を書く。

 

「ひっ……!?」

 

『お金を立て替える 彼女達の診察と治療を頼む 返さなくていいと伝えて』

 

「え……あ、はい……?」

 

 契約書のようなものがこちらに来たので、それを書いて……面倒なので、一億渡した。

 

「え……」

 

『まだ必要か』

 

「い、いえ……」

 

 なら、いいんだ。

 

『俺の治療も頼む』

 

「血が……何もないところから……!?」

 

「ゆ、幽霊だ……本物の!!」

 

 みんな逃げていく……見えてない? それって、どこかで……

 

『破壊したら最後、その人にアンタは二度と認識されない。二度と見えないし、聞こえないし、わからない。記憶も勿論無くなる……アンタは二度と、この子に会えないのよ』

 

『せめて置き土産を……』

 

「あ、あなたを……? でも、見えないんじゃ……保険証はお持ちですか?」

 

 ……やられた。奴の置き土産は……この街中の俺の認識を消すことか……さっさと頭を割っていればよかったな……多分、元樹は対象外だろう。でも、元樹はもう巻き込めない。何もないところに話す狂人になってしまうからな。

 

『釣りはいらん』

 

「え……お客様!?」

 

「……」

 

 そうか……それでも、俺のやることは変わらない。セイントセブンを、インフィニティを潰すだけ。そう思いながら、走っていると……出血多量だ、意識が保てなくなってきた。どうにか、薬屋に行って……金を1000万、一気に出した。

 

『回復薬全部くれ』

 

「は……!?」

 

『早くしてくれ』

 

 血が地面やカウンターに落ちる……

 

「ひっ……わ、わかった!! えっと、これとこれと……これで全部だ!!」

 

『釣りはいらん、とっておけ』

 

「え……ちょ、待っ……」

 

 外に走って、次々急いで飲み干す……体が楽になってきた。だが、深い傷が消えんな……これでは、血がまた出て同じことの繰り返しだ。家に帰りながら、考えた……

 

「……よし」

 

 俺は家に帰り、まだ血の流れ出る場所に対し……裁縫は骨折してるから無理だ。だから……焼けた俺の家に行って、庭で火をつける……

 

「……っぐ」

 

 傷口を炙って止血する。腕は全体的に炙ったな……よし。これで全部終わりだな……痛いとか言ってる場合じゃない。これでできた火傷は、回復薬を飲むことで解決しておく……痕は残るが、それは別にいい。

 

「よし、火を消して……」

 

 これでどうにかなった。奴の死体は……まぁ、放っておいてもいいだろう。戻る気になれないしな……さっさと帰って寝よう。そう思って……家に帰った後、作り置きのメンチカツを食べて風呂に入り……血を落としてから、ベッドに入った。次の日から、本格的に始めよう……もう、誰一人俺には気づかないのだから。




 樹くんは、戦います。
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