性技の指揮官:ORE NIKKEがえちえちで困る 作:もみにい
後で手直しするかも!!
「『セブンスドワーフ』―――レディ」
悠然と呟かれた言葉と共にスノーホワイトは腰だめの機械に備え付けられたレバーを引いた。
四の武装が宙に吐き出され、両の手で構えられた純白の対艦ライフルに纏わり付き―――姿を変えていく。
構えられた純白が―――光を吸収するように輝き。
「『アクティブ』―――爆ぜろ」
轟音が鳴り響き―――トーカティブの半身が吹き飛んだ。
『――――ッッッ!!!ヵ゛ァ゛……』
圧倒的―――まさにその一言が相応しい、一撃だった。
「状況終了」
純白に張り付いた武装が剥がれ落ち……腰に装着したシリンダーに格納される。……顔を覆ったバイザーは音をたて外れ―――意志の強い金色の瞳が輝き、ベビーフェイスが顕になった。
『……ク……ヵ……』
ぼんやりと意識の戻ったラピに肩を貸した俺を一瞥し、牽制の言葉が投げかけられる。
「人間、下がれ……私はあいつに話がある」
「俺も―――待てッ」
俺の返答など興味が無いかのように、少女はトーカティブに向かい歩みを進める。
「やっと捕まえた。貴様に聞きたいことが山ほどある」
『助け……て……』
「……命乞いか。哀れな異形の獣よ。いかなる理由でこの世に生まれ、それほどに悲しく鳴くのか」
『助け……て……くだ……さい』
「……醜いな」
「女……王……様……」
脳裏に雑音と共に……声が―――聞こえた。それに従い、張り裂けんばかりに雄叫びをあげる。
「―――スノー!!飛べッッ!!」
「!!チッ―――」
光線が降り注ぎ―――スノーホワイトが居た場所は、地面が深く抉れ紅く染まった。
「あら、避けられましたか―――どうして避けられたのか分かりませんが……いいでしょう」
薄暗かった空に―――亀裂が走る。
光なのか闇なのか―――区別がつかないものに包まれ舞い降りてきたのは―――
ラプチャーを纏った―――何かだった。
十メートルを超える巨大な鎧はその全てがラプチャーで構成されており……兜が開き―――中から銀髪の……ニケが姿を見せた。
「人間、助かった。礼を言う」
俺の側に降り立ったスノーホワイトは、目を銀髪のニケに固定したまま呟いた。
「あれは―――なんだッ」
……全身に鳥肌が立つ―――トーカティブとは比べ物にならない程の純粋な『悪意』が肌を突き刺す。人類に向けられた……明確で残忍な―――紛れもなく純粋な悪意。
「……トーカティブ。可哀そうに。安心してください。私が助けてあげます……あなたですか?私の仲間を傷つけたのは」
何故か―――輪郭が見えないほど離れているにも関わらず、まるで耳元で囁かれているように声が拡散し―――酷い違和感に襲われる。
「ヘレティック……クイーンの直属。異端……!人類を切り捨てた裏切り者!!ラプチャーを選んだニケッ―――!!」
矢継早に捲し立てたスノーホワイトの右腕……機械仕掛けの手がレバーを握り締めたが―――シリンダーは煙を吐き続け反応しない。
「呼び方が多すぎますね。モダニアと呼んでくれませんか?」
「今日はついているな。クイーンにまた一歩近づけた!」
レバーから手が離れ、アサルトライフルを構えたスノーホワイトはリロードを手早く済ませ、発砲した。
「トーカティブの事を考えると、あなたにはここで死んでもらいたいですが。大切な仲間の命のためにも、この辺で引き下がります……その顔。ちゃんと覚えておきますね」
「もう逃さない!」
駆け出したスノーホワイトを……俺は見ている事しか出来なかった。
「あなたの相手は私ではありません」
モダニアと名乗ったニケが纏っていた鎧が分離し―――巨大なラプチャーがスノーホワイトの前に立ち塞がる。
「お願いしますね。みなさん」
踵を返したモダニアを合図に巨大なラプチャーが更に分離し―――三体に別れ、飛び退いたスノーホワイトの声が響いた。
「退けッ!!」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
意識を取り戻したラピが戦闘に加わり、三体のラプチャーは瞬く間に機能を停止した。俺は、戦闘に参加せず……ずっと考えていた。
モダニアと名乗ったニケの一撃……それが放たれる直前に聞こえた雑音が混じった声。
エコーがかかったように響き、耳に纏わりついたモダニアの声。
俺は―――そのどちらにも、何かを感じた。
「くそ!逃したか!……人間!お前は帰れ!」
「……俺も、連れていけ!」
ここで退けば、俺は―――大切な何かを失う……そんな予感がする。
「指揮官っ!」
詰め寄るラピを腕で制し、そっと手を握った。
「一緒に来てくれ、ラピ」
俺をジッと見詰める瞳から不安が消え……決意の炎が宿った。
「言っても無駄なようです……はい、どこまでも!」
「ちっ……!ペースはお前たちが合わせろ。勝手について来い!」
スノーホワイトは走りだし……二人で後を追う。
「ラピ……ありがとう」
「―――いえっ……私はまた、守れなかった」
「守ってくれた……それに守るだけがラピの仕事じゃないだろう」
優しく呟いた言葉は、しっかりとラピに届き、銃を握り締めた手に力が籠もるのを感じた。
「!!―――……はい、私の使命は指揮官の側にいることです!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スノーホワイトを追い続ける。吹雪が吹き荒れ、必死で目を凝らし白を追随する……呆れたように振り返ったスノーホワイトは止まり、俺達に近寄った。
「おい、ニケ。人間を背負え」
「ラピだ……名前で呼べ」
「?……分かった。ラピ、人間を背負え……吹雪が酷くなる前に走り抜ける」
「奇襲に対応できなくなる……得策ではない」
「私がお前たちを守る。信じるか―――人間」
答えなど決まっている。
「ラピ、背負ってくれ」
「はい、指揮官」
「……ちっ、少しくらい迷え、人間」
宣言通り、道中のラプチャーは全てスノーホワイトが蹴散らした。全ての敵を一撃で始末し、ペースを維持したまま追跡は長く続いた。
寒い……ラピの温もりに張り詰めた糸が切れ……身体が休息を欲している。
「よし、痕跡が続いている。しかし吹雪がこんな調子では、急がないと痕跡が全部消えてしまう」
地面の痕跡を調べるスノーホワイトの言葉にも、反応する余裕が無い。
「……視界が悪い。ちゃんとついて来てるか?」
「問題ない」
俺の代わりにラピが答え、薄れ行く意識が戻った。
「……そう多くの指揮官を見てきたわけではないが、こんなに無茶苦茶な奴は初めてだ」
「それは……否定できない」
頭を振り、側に近づいたスノーホワイトに疑問を投げかけた。
「……トーカティブとは、どうやって出会ったんだ」
「最初はただ、クイーンに会うために、手当たり次第ラプチャーを見つけては破壊した―――」
破壊したラプチャーは言語はおろか、内部データも普通だった……進展が無かったとスノーホワイトは吐き捨てた。そして、偶然出会ったと―――アークから大きな光の柱が上がった日に……アークの近くで喋るラプチャーに出会ったと告げた。
「アークから……だと」
「そうだ……突然、希望が見えた気がした。クイーンに関する情報を聞き出せると思ったからだ……しかし、奴は狡猾だった。あの手この手で逃げてしまう。そのおかげで、今まで一度もまともに話したことはない。今回こそはと思ったが、予想もしない奴が出てきやがった」
ラプチャーの鎧を纏った―――銀髪のニケ。
「アレは何だ?」
「裏切り者だ―――敗北者でもある……奴らに関しては、あまり長くは話したくない。一つだけ確かなのは、あいつらは間違いなく人類の敵だ。そしてクイーンにたどり着く鍵でもある」
「―――ヘレティック」
ラピが小さく呟いた言葉は耳に残り、それを聞いたスノーホワイトも、苦虫を噛み潰したように顔を歪ませた。
「―――ちっ、話が長くなってしまった。ペースを上げよう」
「最後に教えてくれ、クイーンとは何者だ?」
「ラプチャーの女王だ。それを倒せば、再び人間の時代が来るだろう……」
そう言って俺達から離れたスノーホワイトはペースを上げ、聞こえぬように……小さく呟く。
「ラピ、俺の事はスノーホワイトに伝えるな……頼む」
「……はい、指揮官」
徐々に冷たくなる身体は、背負っているラピが一番把握している。俺が無理を言って着いてきたんだ。足手纏いにはなりたくない。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
体が冷え……緊張が緩み、脚が酷く痛む。吹雪も勢いを増し、……このままでは、不味いかも知れない。
「良いペースだが吹雪が厄介だ……おい、大丈夫か?」
「大丈夫……だ。問、題ない」
俺の手を握るラピの手に、力が籠もる。
「ラピ、こいつを連れて帰―――いや、今は帰りたくても帰れないか。……まだまだだな。一ミリも成長していない」
「気にする、な……勝手に付いていく」
「地上で長く過ごしてきたとはいえ、私はニケだ。人間を見捨てることはできない……丁度いい、ちょっと休もう」
「気にする、な……進むぞ」
「いや、休む。痕跡から見ても決戦は近い……私も整備が必要だ」
崩れた瓦礫を指差し、脚を進め……ラピがその後を追った。
「指揮官。家があります。もう少しです」
「運が良いな、人間」
瓦礫は……どうやら廃墟だった―――ようだ。
廃墟の一室に侵入した直後、スノーホワイトは自分のマントを破り、俺に差し出した。
「被れ。発熱マントだ。人間にはちょっと熱いかもしれないが、今の状況なら、ちょうどいいだろう」
「……優しいんだな」
手渡されたマントを被り、冷えた身体に血が巡るのを感じる。
「……それこそがここまで私がやってこれた原動力だからだ」
遠くを見た瞳が金色に輝き、目を閉じたスノーホワイトは自身の整備を始めた。
マントを脱ぎ……顕になった姿は―――華奢な少女にしか見えない。……腕も、脚も、傷だらけになり、それでもなお戦いに身を投じていることが、良く分かった。
「……よし。何とか動けるな」
ラプチャーから回収した部品を分解し、自身の身体に装着したスノーホワイトは、身体の調子を確かめマントを羽織る。
「体が……ボロボロじゃねぇか」
「ちゃんとした整備を受けてないからな」
「いつから受けてないんだ」
「……覚えていない。第一次ラプチャー侵攻の時からだ。少なくとも数十年は経っているだろう」
「……数十年」
「これ以上は聞くな。もう話したくない……ところで、お前は何者だ?何故トーカティブに捕まっていた?」
「思い当たる節はあるが、正確には分からん」
アイツが俺に寄越した情報は、裏切り者がいること、俺の能力、幼い頃に病気をしたかどうか、後はアーク出身なのか……これだけでは大雑把な仮説しか立てられない。
「何かあるみたいだな。まあ、あの虚勢からしてただ者ではないだろう……私も奴らのことは、よく知らない。一つ確かなことは、奴らはクイーンの直属であり、奴らの後を追いかければ、クイーンに会えるということだ」
そう言って、黙り込んだスノーホワイトは武器の整備を始め、周囲の警戒にあたっていたラピが帰ってきた。
「指揮官、体力勝負になります。少しでも何か食べた方がいいかと」
そう言われれば、確かに腹が減っている事を思い出し、意識すれば途端に腹が減った。
「そうだな……ラピも食うか?」
「!!?」
「いえ、私は大丈夫です。後で手を繋いでください。それが一番力になります」
「!!?」
甲高い音が響き、二人で音がする方向を見ると、手から工具を落とした少女が口をぽかんと開けていた。
「……どうした?」
「いや―――何でも無い」
チラチラと此方を伺う姿に思うところがあるが、大方ニケがどうこう言い出すのだろうと無視を決め込み、取り出した携行食の封を開けた。
「!!?っ」
「ん?」
こっちか?……視線が完全に固定されている。左右に揺らすと綺麗に泳ぎ……口もとから涎が垂れた。
「食うか?」
「いいのか!!?」
凄まじい速度で迫ってきたスノーホワイトに、視界の隅で思わず銃に手をかけたラピの姿が見えた。
「いいぞ、手持ちは数個しかないが……わーったよ。一個だけ俺が食う。後は全部やるよ」
そんなに目で見られたら、誰だってそうするだろう。
「!!!ほ、本当……そ、それは悪いっ!」
……なに、この子……可愛い。
「やるよ。どちらと言うと水分が欲しいんだ。持ってないか?」
「あ、ある!!水がある!!」
「なら、交換しよう」
視界の隅でそっとボトルを締まったラピは、薄く笑みを零した。
「な、何だと……賞味期限前の、食べ物だ……ぁ、甘ぃっ!!」
甘ったるい羊羹に似た携行食に齧り付き、リスのように頬を膨らませて詰め込む少女を見詰める。幸せそうに頬を膨らませる姿は、見た目相応に幼く、緩んだ瞳が何とも可愛らしい。
「ゆっくり食えよ。誰も取らねぇからな」
「はぐっ……ふぐっ……ごくっ、んぐっ!!」
トーカティブを一撃で戦闘不能に追い込んだ凛々しさは、どこに行ってしまったのか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
武器の整備を申し出たラピに対し、食べ物の虜となったスノーホワイトは黙って頷いた。最後の一つをジッと見つめながら、凛々しく顔を引き締め……懐にしまい込んだ。
「す、すまん、助かった」
「口もとが汚れてるぞ……動くな」
「……ふぐっ……美味かった。ありがとう」
「俺こそ、ありがとな。……なあ、アークに戻ろうと思ったことはないのか?」
「……ない。私たちは何も達成できていない」
金色に瞬いた瞳が伏せられる。……私たちとスノーホワイトは言った。他にも仲間がいるのか……。
「きっと……歓迎されるぞ」
「そんなことは望んでいない。慰めからの歓迎なんて、私たちには無意味だ……否定された気持ちになるだろう……私たちは失敗してもよかった。そんなに頑張る必要はなかったんだ……そういう気持ちになるだろう……そうはなりたくない。そして―――私たちはアークを知らない」
吐き出される言葉を黙って聞き……最後の一言がどうしても分からなかった。
「アークを知らない……どういう意味だ?」
「言葉通りだ。私たちはアークを知らない。どんな世界なのか、どんな環境なのか―――全く知らないんだ。だから私たちはアークには行かない。行きたいかどうかすら分からない。私たちはただ、死んでしまった地上をさまよい、儚い希望を探し求める巡礼者に過ぎない」
独白のように吐き出された言葉に、なんと返せばいいのか……。
「指揮官……吹雪が弱まりました。今のうちに進みましょう」
思考を止め、ラピの言葉に促され全員が立ち上がった。
「そうだな、行くか」
「少しジッとしてください指揮官。唇が汚れています―――」
―――何で俺は、こんな状況で舌を絡め取られてんだ?
確かに、決戦に向かうに当たり効果はあるのかも知れないが……そんな事を少しばかり考え、這い回る舌に意識を集中した。
「は?―――な、何をしてるんだお前らっ!!」
何か、すまん。
「ぷぁ……指揮官にはニケを強化する力があるの、キスしてみれば分かる……きっと貴方にも効果があるわ」
それは、スノーホワイトが俺に好意を抱いている可能性があると言っているのか?……あれは食欲だろう。
「なっ、巫山戯るなっ!は、早く行くぞっ!!」
ほんのりと頬を染めたスノーホワイトを追いかけながらラピに尋ねる。
「なんで、キスしたんだ?」
「指揮官を守る仲間は多い方がいい。……それと、私がしたかったから、です」
左手を触りながら、ラピはそう呟いた。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
小高い崖の上から巨大な鎧が確認できた。吹雪も止み視界は良好。トーカティブは半身を失ったまま身じろぎせず、動く気配も無い。
「見つけた。ヘレティックとトーカティブだ。トーカティブを修復しているのだろうか。仲間思いな奴らだな」
皮肉交じりに告げられた言葉に、身を引き締める。
「スノーホワイト、どう動く?」
「狙撃してから一気に畳みかける。ラピ、近づけるか?」
「……分かった。指揮官を頼む」
「任せろ。美味い飯の礼だ」
ラピが大きく迂回し崖を下り……ポイントに到着した。手信号で合図を送るラピを見据え、スノーホワイトが対艦ライフルを構えようをした瞬間―――
「なぜ、分かってくれないんですか」
―――眼の前に巨大な鎧が立ち塞がった。
「!!いつの間にっ!」
「あなたを逃してあげたのは、私の慈悲だったのに。この世界を寂しく彷徨う、その悲しい限りの運命に送る、同情だったのに」
憂いを帯びた声は全くと言っていいほど心に響かず……悪意に塗れていた。
「……黙れ」
スノーホワイトが純白のライフルを構え、鎧の兜に狙いを定める。
「……あ、そういうことですね。あなたは、その悲しい運命に嫌気がさしたのですね。だから私を捜した。その運命を終わらせたくて」
「たわごとはよせ!裏切り者め!!」
「では、あなたのその運命。私が引き取りましょう」
対艦ライフルが火を放ち、弾丸が射出された―――それは、モダニアに届くことなく爆破した。
「磁場……!?単身でこの密度は……!」
「単身でこの程度の武器とは……少し驚きました。でも、きちんとメンテナンスされてないようですね。かわいそうに」
また声が、―――右翼が―――振るわれッ……。
「避けッ―――」
右翼が振るわれスノーホワイトが吹き飛ぶ、間に合わなかったッ……瞬きの間に鎧が消え―――スノーホワイトの眼前に出現した。
「ラッ―――」
「ぐはっ……!」
倒れ伏したスノーホワイトを左翼が掴み持ち上げる。俺の足元には手から零れた対艦ライフル―――ラピは、間に合わないッ。
「……痛覚センサーも故障したんですか。本当にかわいそう」
「あなたが人類のために献身した時間に敬意を表して、最大の苦痛と共に殺してあげます」
「……!!」
このままスノーホワイトが嬲り殺しにされるのを見ている気は無いッ!
「……ふ。うふふふ。あはは、あははは……ああ、下品な笑い方でしたね。どうです、耐えられそうですか?」
「おい……!」
「はい、どうぞ」
「下が……かゆいな……!ちょっと……かいてくれるか?」
馬鹿みたいに重いライフルを構え―――
「ふふ、もちろんです」
「がはっ……!」
―――引金を引いた。
「ガァ!!―――」
轟音が鳴り響き、弾は発射されたが、鎧に命中することはなく―――空高く消え去った……反動を受けた身体が沈み、咄嗟に手を地面につく。一発でこのザマか。だが……。
「……?何をされているんですか?」
「悪あがきってやつだ……足掻いたかいは、あったなッ」
スノーホワイトを掴んだまま俺に向き直った鎧は、宙をゆらゆらと泳ぎ……俺の側で止まった。
「ゴホ、ゴホッ!お、おい」
咳込みながらもスノーホワイトにも見えたのだろう。
「はい、どうぞ」
「後ろ、気をつけろ」
「……はい?―――!!」
爆撃が鎧に命中し、翼から抜け出したスノーホワイトは着地し―――崩れ落ち……片足で飛び、距離を取った。
「……何ですかこれは」
「指揮官!!」
「師匠!!」
「指揮官様っ!!」
流石、俺の仲間だ。……信じていた。必ず来てくれるとッ!
「ラピ、ネオン!スノーホワイトを回収しろッ!!アニスは援護だッ!!」
「「「了解!」」」
即座に散開したカウンターズは、一糸乱れぬ連携でスノーホワイトを回収し俺の側に集まった。宙で揺らめく鎧は行動すること無くそれを眺め―――淡い光りを纏った。
「仕方ありませんね。全員纏めて殺してあげます」
鎧が空高く舞い上がり光を溜め込んだ。
まただ―――また、声がッ。
「全員隠れろ!!光線が来るぞッ!!」
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
光線による初撃をやり過ごし、即座に指示を出す。
「全員俺に従えッ、スノーホワイト!お前もだッ!」
「っ、ふざけるな人間!お前に何ができる!」
声が―――聞こえるッ。
「……三秒後に両翼から爆撃が来るッ!アニス翼の上部!中央を狙え!二発で撃ち落とせッ!!」
「う、うん!指揮官様!!」
「―――撃てッ!!」
両翼から飛び出した爆撃の数は片翼で三。アニスの爆撃が寸分違わず中央を撃ち抜き―――誘爆した。
「!!スノーホワイト!お願い、従って!指揮官様に従って!お願いっっ!!」
「……奇跡―――か。いいだろう人間。私を使ってみろ!」
「短期決戦だ、チャンスは一度きり」
一撃で仕留めなければ、俺も皆も―――持たない。
「カウンターズ!回避のタイミングは俺が指示する!絶えず動き回って撹乱しろッ!必ず二秒で身を隠せる位置を維持しろ!」
「ラピ!牽制はお前だけだッ!コアを、中央を叩けッ!」
「了解!!」
「アニス!迎撃はお前にかかってる。大丈夫、お前なら出来るッ!!」
「っ、うん!!」
「ネオン!散弾は届かない。零れた小型はお前に任せる。小型の処理と中継を担え。責任重大だ。出来……やれッ!」
出来るかと言おうとしたが、決意の籠もった瞳には―――無粋だった。
「任せて下さい!!師匠!!」
酷く悲しい声が雑音と共に脳裏に響く。その声が次の行動を教えてくれる。
「俺の指示は聞き逃すなッ!必ず生きろッ!!」
どこかで―――聞いたことが、ある―――俺は、この声を……知っている。
「十秒後に広範囲のレーザー兵器で薙ぎ払われる。各自速やかに身を隠せッ!!―――散れッ!!」
同時に飛び出した三人は散開し遮蔽物に身を隠した。きっかり十秒後、モダニアの左腕が光を帯び―――輝剣が薙ぎ払われた。
「スノーホワイト。撃ち落とせるか?」
安否の確認など行わない―――必ず生きている。
確認など彼女たちへの侮辱であり、命を賭けて戦う少女達の信頼に泥を塗る行為でしか無い。
「……撃てる……と言いたいが。脚をやられた―――照準が定まらない」
「俺が支える―――撃て」
「!!?なっ本気っ―――な、なにをっ」
機械仕掛けの腕を掴み、身体を支え走る。ここはもう危険だ。次の場所に移動する間も、指示を飛ばし続ける。
「アニス!同じ爆撃二秒後だ!時差コンマ五秒!右翼ッ!!」
「分かった!!」
「ネオン!北西の小型を蹴散らせッ!!」
「了解しました!!」
「ラピ四、六、九で銃撃が来るッ!!身を隠せッ!!」
「了解っ!!」
絶えず送られる情報は脳を圧迫し、酷い頭痛が伴った。
「おい、人間!血がっ!!」
「うるせぇぞ。黙ってろッッ!!」
だが分かる。この声が俺を助けてくれる。
俺が傷つく事に涙を流しながら―――それでも声が途切れないのは、俺が生きる事を願っているからだ。
「ここで狙う……準備しろ」
スノーホワイトを離し、服を掴まれ顔が近づいた。
「―――!!?おい、何を?」
「口吸いというのは―――存外、悪いものではないな」
頬を染めた顔がバイザーに覆われ、見えなくなる。
「―――三十秒。お前に託す。私を守れ人間!」
「―――ハッ、任せろ姫様。傷一つ付けさせねぇよッ!!」
「なっ……チッ、やってみせろ、人間!!―――『セブンスドワーフ―――アクティブッ』―――なっ!?」
スノーホワイトは地面に座り込み銃を構え―――機械仕掛けの手が、レバーを引き―――宙に七の武装が展開された。
「どういう―――!ははっ、不思議だな、人間」
歪な音が鳴り響き、放出された七の兵器が意志を持ち……スノーホワイトの構える銃に纏わり付き―――姿を大きく変えていく。
「ネオンッ!!アニスをフォローしろッ!!小型二体ッ!!急げッ!!」
「はい!!」
「ラピッ!アニスッ!右翼を狙えッ!二人でぶち壊せッ!!」
「「了解!!」」
「ネオンッ!ラピとアニスを守れッ!!」
「了解!!」
身の丈を超える巨大で無骨な銃は純白の輝きを放ち―――バイザーが開き、ニヒルな笑みを浮かべた少女が囁いた。
「……人間―――待たせたか?」
「待ってねぇ―――カッケーじゃねぇか」
「ふっ、ここまでの力を解放した事はない……反動は未知数―――」
頭に手を置き、優しく撫でる……少女はそれ以上言葉を発さなかった。
「……俺の合図で撃て」
「死ぬな―――人間……聞きたいことが山ほどある」
「―――たりめぇだ」
スノーホワイトの身体を抱き締め、巨大な岩盤を背に―――全てを終わらせる準備が整った。
「最後に―――ダメ押しだ」
「――――っ、なっ――」
「やはり、これは良いものだな……美味い」
唇をぺろりと舐めた少女は、バイザーで顔を覆い敵を見据えた。
「―――スノー、終わったら話しをしよう」
「ああ、私もお前と話がしたい」
抱き締める手に力を込め、彼女を支える―――照準をあわせた純白の輝きは光を収束し―――俺達を明るく照らした。
闇に覆われたのなら―――晴らせば良い。
「全員伏せろッッ!!!―――撃て」
収束した輝きが一点に集中し―――
「いくぞ『セブンスドワーフ―――フルアクティブ』―――貫け」
―――全てを終わらせる一撃が放たれた……。
大気が震え―――宙に浮かんだ巨大な兵器は『半身』を穿たれ……地上に落下する……。
バイザーが開き、信じられないと言わんばかりに目を見開いたスノーホワイトと目が合った。
一撃が放たれる瞬間―――俺は照準をほんの少しだけ―――強引に外した。
「―――マリ……ア、ン……」
脳裏に―――声が、響いた……一撃を放つ直前―――鮮明に聞こえた。
『ありがとう―――指揮官。ずっと、大好きです』
―――マリアンの声で……はっきりと聞こえた。
ソーダ……お高いおっぱいでした。