※この作品はR-18です。

性技の指揮官:ORE NIKKEがえちえちで困る   作:もみにい

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 声が―――聞こえた。

 

 走馬灯のように蘇る―――鮮明な記憶。

 

『し、き……かんっ……こ……こ……で、す』

 

 身体が砕けても―――彼女は俺の為に、自身に銃口を向けた。

 

『私が支えますね』

 

 ふらつく俺を支え―――

 

『私が必ずお守りします』

 

 真っ先に敵に向かい駆け―――

 

『だって、指揮官もいるし……』

 

 恥ずかしがそうに頬を染め―――

 

『ふふ。指揮官はお優しいのですね』

 

 花よりも綺麗に微笑んだ彼女の声が―――

 

 

 

『ありがとう―――指揮官。ずっと、大好きです』

 

 

 

 ―――聞こえたんだ。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 スノーホワイトの一撃は中央のコアを穿ち、塵も残さず銀髪のニケを滅ぼすはずだった。

 

 全てを台無しにしたのは―――俺だ。

 

 鎧の残骸が轟音を立て地面と衝突し、少女は俺の胸倉を掴み―――怒りとも悲しみとも……呆れとも言えない、そんな泣き出しそうな顔をしていた。

 

「―――っ……おいっ人間ッ!―――くそっ」

 

 吐き捨てられた言葉と同時に掴まれた手から力が抜け―――俺は雪原に倒れた。

 

 ―――整理の付かない感情を押しのけ、必死で顔をあげる……。

 

「―――ッ、ま……ま、てッ……」

 

 弾を逸した事に後悔はない。だが、それでも……このままで良い筈が無いッ……。

 

 振り返る事などせず、スノーホワイトは脚を引きずりながら、前へ進む―――雪を握り締め、動かない身体を必死に動かし、這いずりながら俺も前へ進む。

 

「……待てッ、待ってくれッッ……頼むッ!スノー、俺を連れていけッッ!!」

 

 ―――痛みすら、感じない。既に限界を超えている。だが……俺が……俺がッ、行かなければッッ……。

 

「―――納得のいく説明を……してもらうからな、人間」

 

 体を掴む手は優しかった。気遣うように抱き起こされ、少女は肩を貸してくれた。

 

「あ、ああ……ありがとう、スノー」

 

「ちっ……毒されたか」

 

 ……満身創痍の身体に鞭打ち、一秒でも早く脚を前へ進める。そこに何があろうとも、俺は―――

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 発砲音が鳴り響く中心に―――彼女はいた。

 

 プロテクターで目元を覆っているが……俺には分かる。

 

「ラピっ!!指揮官様を連れて逃げてっ!!」

 

「それは、出来ないっ!!」

 

「私が殿を努めます!二人は師匠の元へ!!」

 

 銃を放つ三人は、ドーム状に磁場を展開した彼女に、何度も銃撃を繰り返していた。

 

「ラピっ!!早く行ってっ!!」

 

「―――っ、必ず戻る!!」

 

 踵を返したラピと視線が交錯し、ラピの手が……俺の手を掴んだ。

 

「っ、指揮官っ!!ここは危険です!!―――っ!?」

 

 手を振りほどき、ラピの肩を掴む。

 

「……お願いだ、少しだけ待ってくれッ」

 

「―――指揮官……分かりました」

 

 ラピが俺の隣に寄り添い、銃を構えた。

 

「ラピ!?指揮官様っ!!何しているの!!早く逃げて!!!」

 

「アニス……頼む、俺に時間をくれッ!」

 

「ば、馬鹿な事言わないでっ!!はやくっ―――」

 

「アニスと言ったか、私が守る。好きにさせてやれ」

 

 視線が交わり感謝を伝えると、スノーホワイトは顎をしゃくり、俯く彼女を見据えた。

 

「ピルグリムっ!!ふざ―――」

 

 顔を突き合わせ、震える声を絞り出す。

 

「頼むッッ」

 

「っ―――ぅん……」

 

 アニスはそれ以上何も言わず、俺の側に移動し武器を構え直した。

 

「師匠……良く分かりませんが、師匠に怪我はさせません!」

 

「―――ああ、助かる」

 

 皆に支えられ歩を進め―――彼女との距離が縮まり、声が……聞こえた。

 

「……おかしいですね。性能にしろ、何にしろ、どうみても私が優位なのに、何故こうなったのでしょう」

 

「指揮官様のおかげに決まってるでしょ」

 

「もしかして、自分を過大評価してたんじゃないですか?」

 

 煽るように二人が声をかけ、顔を上げた彼女の瞳を覆うバイザーに亀裂が走る。

 

「ん?……プロテクターが……」

 

「「!?」」

 

 彼女が触れた事により―――バイザーが崩れ落ち……顕になった相貌を見た二人の手が強く握り締められた。

 

「久しぶりだな、マリアン」

 

 投げかけた言葉に、彼女は反応を示さなかった。

 

「あら……やっぱりニヒリスターも一緒に来るべきだったでしょうか」

 

 彼女を見ると、脳裏に記憶が蘇る。

 

 

『心配なさらないでください。私があなたをお守りします。なにがあっても』

 

 ―――出会いは鮮烈だった。

 

『指揮官。ここにも包帯を巻いてください』

 

 ―――笑顔の彼女に包帯を巻き。

 

『ふふ、ありがとうございます。もう全然痛くありません』

 

 ―――たかが包帯に―――心からの笑顔を向けた彼女は。

 

『ここ……で……す』

 

 瞳が紅く光り―――

 

『指揮……か、ん……ほう、帯……う、れし……か……った、で、す』

 

 俺の握った銃を自らの額に誘導した彼女が、鮮明に脳裏に描かれ―――抑えつけた感情が爆発する。

 

 

「マリアンッッッ!!!」

 

 叫ぶ俺に、鮮血に染まった瞳が向けられる。

 

 出会った当初、瞳の奥に薄く宿っていた赤色が―――悪意を帯び瞳全体に広がっているように見えた。

 

「……私のことですか?悪いですが、人違いのようです。私はモダニア、クイーンに仕え……」

 

 言葉を止めた彼女の瞳が光を失い……小さく零れた。

 

「―――マリ、アン?」

 

「マリアン!!俺だッ!分からないのかッッ!!!」

 

「―――人間っ……くっ」

 

 俺を支えてくれた少女は、全てを悟ったように―――地面に視線を落とす。

 

「マリアン……不思議ですね。何だか、すごく懐かしい響きです」

 

 彼女の頭には、あの時の包帯が巻かれ……光りが戻った瞳がほんの少しだけ―――優しくなった気がした。

 

「マリアン!お前はマリアンだ!!俺の、俺だけのニケだろッ!!!」

 

「……だけの……ニケ……マリアン―――」

 

 小さく呟きながら瞳から再度光りが消え、確認するかのように何度も同じ言葉が繰り返され―――

 

「マリアン、マリアン……マリアン―――マリアンマリアンマリアンマリアンマリアンマリアン」

 

 地面が振動し、マリアンの体を黒いエネルギー波が包み込み―――俺は脚を踏み出した。

 

「マリアンッ!!」

 

「指揮官!!近づいてはダメです!!!」

 

「指揮官様っ!!絶対に近づいちゃダメ!!」

 

「師匠、我慢して下さい!!」

 

「―――離せッ!!!マリアンッッ!!!」

 

 左右から抑えられ、前には進めない。張り裂けんばかりに叫ぶ事しか、俺には出来なかった。

 

「シルバーガン……分隊の……マリアンと……申します―――よろしく……お願い……します」

 

「マリアンッ!!!戻って来いッッ!!!」

 

 ―――神よッ!!もし……もしいるのなら、俺への仕打ちは全て水に流してやるッ!!!マリアンをッ!!!助けろッッッ!!!

 

「指揮官様っ!!」

 

「指揮官!!」

 

「師匠!!」

 

 ―――頼むッ、離してくれッ、頼むッッ!!

 

 三人に引き摺られマリアンとの距離が離れていく。

 

「俺の元に帰って来いッッ!!マリアンッッ!!!」

 

「マリ、アン……くっ―――!あ……ああ、ああああ!!」

 

 悲鳴をあげたマリアンに少しでも近づくように、手を伸ばす。

 

「マリアンッ!!!」

 

「っっ、あぁああああ!!っ―――指揮……官?」

 

 真っ赤な瞳が―――優しく垂れさがり……瞳から大粒の雫を零したマリアンは―――俺を見つめ手を伸ばした。

 

「―――これが、奇跡か」

 

 純白の少女は瞳から雫を流し呟き。

 

「うそっ……」

 

 三人の力は抜け―――マリアンとの距離が縮まる。

 

「―――しきっ!!!」

 

 ……後少しで手が重なる瞬間―――マリアンは頭を抑え蹲り―――

 

「っ、ぃ!―――いゃああああ!!」 

 

 黒い稲妻が俺とマリアンを分断し―――辺り一帯が黒く染まった。

 

「―――マリアンッッ!!!」

 

 届く事を願った手は……虚しく宙を彷徨い―――風が吹き荒れ、身体が宙に浮く。

 

「クソッ!クソォォオッ!!!マリアンッッッ!!!」

 

 それでも、俺は蹲るマリアンに―――手を伸ばし続けた。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 何故俺は、倒れている?―――体を跳ね上げ、手を伸ばし……純白の少女と目が合った。

 

「目が覚めたか、人間」

 

「―――クソッ!!!」

 

 届くはずだった。この手に掴む―――はずだったッッ。

 

「……気持ちが分かるとは言わない。だが、現実を見ろ」

 

 憤る俺に対し、少女は優しい声で呟き、ジッと俺を見つめ続けた。

 

「……みんなは、何処だ」

 

「全員が意識を失っている。私だけでは運ぶことが出来ない……助けたければ、手伝え」

 

「行くぞ」

 

 外に飛び出した俺の後ろで、スノーホワイトが地面に倒れた―――身体が……俺はこんな少女に気を使われていたのか……。

 

「―――ガッッ!!……ブッ」

 

 全力で殴り……折れた奥歯を吐き捨てる。

 

「おい……人間、何をしている?」

 

「ケジメだ。……すまん、スノーホワイト―――ありがとう」

 

 倒れた少女を抱き上げ、肩を貸し歩みを進める。

 

「……本当に、お前は不思議な人間だ」

 

 俺を見上げた少女は、小さな声で呟いた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 雪が強さを増す……急がなければ吹雪になる可能性が高い。体に痛みは感じない。折れていた脚も動く。まるでマリアンが俺を支えてくれているかのように、全身には力が満ち溢れていた。この感覚は―――昔の自分を思い出させた。

 

「あの後、どうなった?」

 

「ヘレティックが起こした爆発で全員が散り散りになった。私は右脚が大破して、まともに動けない」

 

 スノーホワイトの右脚は力なく垂れ下がっていた。脚を引きずりながら、俺だけでもあそこまで運んでくれたのか……。

 

「一番近くにいたはずのお前だけが……無傷だった」

 

 ―――マリアン……また、助けられたのか。

 

「……知り合いだったか」

 

「かけがえのない存在だ」

 

「……そう、か―――そうか……」

 

 スノーホワイトは目を見開き……噛み締めるように呟いた。……その後、ポイントに到着するまで、少女が言葉を発する事は無かった。

 

 

「ここだ―――軽く埋めておいた、掘れ」

 

 スノーホワイトは周囲を警戒し、雪に埋もれたネオンを引きずり出し、頬を叩く。

 

「ネオン!!おい、ネオン!……」

 

「―――何度も奇跡は起こらない、か……決めろ」

 

 意味深に呟いたスノーホワイトは……俺に選択を迫った。

 

「……何をだ」

 

「ここも安全ではない。見捨てて行くか……意識が戻るのを待つか―――決めろ」

 

 奇跡は何度も起こらないと少女は言った……まるでネオンの意識が戻らない事が分かっていたように聞こえた―――ふざけるなッ。

 

「俺が担ぐ、乗せろ」

 

 神なんていなかった。奇跡なんてクソくらえ。俺が俺自身の力で救ってやるッ。

 

「―――無理だ人間、それは―――」

 

「ゴタゴタうるせぇぞッ!!早く乗せろッッ!!!」

 

「……分かった。身を持って知れ、人間にニケは救えない」

 

 スノーホワイトが抱えたネオンが背中に乗せられる―――重い……二百キロを超える重み……これが、命の重み―――

 

「―――ッッガァァ!!」

 

 ―――だが、今の俺ならばッ!!力だけなら、誰にも負けねぇッッ!!

 

「無理だ、諦め―――お、おい!?」

 

「―――ッッ、……急ぐぞ」

 

 ネオンを担ぎ歩き出した俺を、銃を杖にした少女が追いかける。

 

「お前は本当に人間なのか?」

 

「……俺、が……人間だッ」

 

「!!っ―――そ、そうか……人間とは凄いな」

 

 それ以上喋る事無く歩みを進め、俺とスノーホワイトはバンカーにネオンを運び、次のポイントに向かった。

 

「大丈夫か?人間」

 

「も、んだいねぇ……行く、ぞッ」

 

「少し、休め」

 

「必要ねぇ!急ぐぞッ」

 

 渋る少女を連れ向かった次のポイントには、ラピが眠っていた。意識は戻らず、ラピを担ぎ一歩一歩を踏みしめる。

 

「強いな……人間」

 

「……そん……ねぇ」

 

「ああ、喋るな。喋ると体力を消耗する。独り言だと思って聞き流してくれ」

 

 俺の気を紛らわせるように、スノーホワイトは語った。自分が何故戦うのか……俺の疑問を見通し、先回りするように答えを紡ぎ……少女は『これ以上、誰かが死ぬ姿を見たくない』と紡ぎ……自嘲気味に笑った。

 

「この体も三割程度はラプチャーの部品だ。……この調子だと、怪物の相手をするための―――『怪物』になってしまう、かもな」

 

 その言葉は聴き逃がせない。

 

「違うッ―――お前はッ、怪物なんか、じゃ、ねぇッ!!」

 

「……喋るな人間。すまない、余計な事を言った」

 

「俺は……お前を、尊敬するッ……お前の心は、人間なんかよりよっぽど―――綺麗だッ!」

 

 目を見開き視線を逸した少女は……小さく呟いた。

 

「―――もぅ、喋るな」

 

 

 雪が徐々に強さを増し足取りが重くなる。何とかラピを担ぎ込み、アニスの元へ向かう……ここで倒れる事など、あり得ない。必ず助ける……必ずだ。

 

「指揮官……様?」

 

 雪に身を隠したアニスの声に緊張が解け……体の力が、抜けた。

 

「……意識があるのか、良かっ―――」

 

「ピルグリム!指揮官様を何で連れて来たのっ!!こんなっ!っぅ……死にかけじゃない!!」

 

 脚に力を注ぎ込み、立ち上がる……後少し……まだ倒れるわけにはいかないッ!

 

「―――アニス、俺の意志だ……歩けるか?」

 

「……指揮官様っ……あ、脚が動かないの……私の事は良いから、指揮官様を安全な場所に連れて行って!!」

 

 俺から目を逸しスノーホワイトに投げかけられた言葉で全て理解した。

 

「俺が担ぐ……乗れアニス」

 

「―――ダメっ!無理よ、指揮官様っ!」

 

「こいつは既に二人担いでいる。早く乗ってやれ、話している時間が勿体ない」

 

「!!?―――そ、そうだ、ピル……スノーホワイト、私を撃って!頭だけ、頭だけ持って行って。それなら軽いで―――」

 

「アニスッッ!!!黙って乗れッッ!!!」

 

 俺の怒声に体を震わせたアニスは、瞳から雫を零し顔を伏せた。

 

「心配するな……ちゃんと連れて帰る」

 

 どこかで死を予感していたのだろう……アニスの体は小さく震え続けていた。

 

「!!っ、ぅ……ぅぅ……ぅぇ、ご、ごめん、なさぃ」

 

 泣きながら俺に背負われたアニスは、何度も何度も……謝り続けた。

 

「アニ、ス……そんなに謝るな……俺は、笑ったお前が好きだ」

 

「ぐすっ……ぅぅ、ぅん、しきかんさまぁ」

 

「帰った、ら……一緒に、だらだら、しよう……な」

 

「ぅ……ぅん、ぅん!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 アニスを連れ……何とかバンカーに戻って来た。

 

 部屋に入った瞬間……脚が笑い、崩れ落ちるように倒れた俺はアニスに抱えられ……意識が遠のいていく。

 

「指揮官様っ!……しきかんさまぁあ」

 

 また、泣かせるのか俺は―――アニスの涙声が響く中、俺をジッ見下ろした少女は、懐から取り出した物を俺に渡し、視線を逸し呟いた。

 

「―――食え、次は……一緒に食べよう」

 

「……ははっ、次はもっと美味い飯……食わしてやるよ」

 

 身体に栄養を取り込み、意識を手繰り寄せる。……あれだけ楽しみに取っておいたのに、借りが出来たな。

 

 携行食を食べ終わり、アニスに抱き締められ意識が薄れていく―――鈍い鉄の音が響き、急速に意識を覚醒させた。

 

「―――ラプチャーだ。タイラント級っ、マザーホエール……最悪だ」

 

 小さく呟かれた最後の言葉は微かに聞こえた。あのスノーホワイトが最悪と言ったのか……タイラント級―――まだ、眠れないッ……一人では絶対に行かせない……もう二度と失わないと誓っただろがッ!!

 

「しきかん……さま、っ?」

 

「人間……手を離せ」

 

 武器を片手に外を伺ったスノーホワイトの肩を掴み、側に寄り掛かる……外を見ると遠くで巨大な鯨が空を泳いでいた。

 

「支えが……いる、だろッ」

 

 目を見開いた少女の瞳が、金色に瞬く。

 

「っ―――ダメだ」

 

「駄目じゃねぇ!」

 

「やめろっ!お前の体が持たない」

 

「だ、だめっ!指揮官様っ!!」

 

 必死に声をあげ縋り付いたアニスの髪を撫で、服を握った指を一本一本外し、立ち上がる。

 

「俺は死なない……約束、するッ」

 

 俺をジッ見上げた少女は、無言のまま俺の肩に手を回した。

 

「ゃだっ、ゃだよっ……指揮官さまぁ!」

 

 泣き崩れるアニスに振り返り、俺達は似た言葉を同時に呟いた。

 

「必ず生きて帰る……良い子にしてろ」

 

「必ず生きて帰す……信じろ」

 

 バンカーから飛び出した俺達は、岩に向かい歩みを進める。空の鯨はゆらゆらと揺らめき、こちらに気づいた様子は無かった。

 

「気づいていないのか?」

 

「みたいだな。だが……アレは熱源を感知する。必ず見つかるし、逃げる事などあり得ない―――先手を取って一撃で葬る」

 

「無茶すんじゃねぇぞ」

 

「するさ。私が見逃したラプチャーが、誰かを殺してしまうかもしれない」

 

 岩を背に銃が展開される。四の武装が展開され―――スノーホワイトは固唾を飲んだ。

 

「俺が嫌なんだ……少しは俺の言う事を聞け―――」

 

 俺に背を無け座った少女の顔を掴み唇を奪う。

 

「……んんっ!……んぅ!……んんんぅ!!―――ぉ、ぉい!」

 

「―――二回も奪ったんだ、後一回あるからな。生きろ、スノー」

 

 そう呟き、笑いかける。

 

「……ふんっ、確かにアレを仕留めるには、力が足りなかった所だ―――『セブンスドワーフ、フルアクティブ』」

 

 三の武装が展開され、名前通り七の武装を纏った銃は純白に輝いた。

 

「それもあるが、関係ねぇ。俺がしたかったんだ、甘かっただろ?」

 

「ふ、ふざけた事を言うな……おい、人間。お前の名を教えろ」

 

「……悪いが、俺には名前が無い」

 

「そんな事が―――あり得るのか?」

 

「いや、正確にはあるんだが、俺は自分の名前が言えない。それに聞こえない」

 

 荒唐無稽な話だ。信じてくれるはずもないが……黙りこんだ少女の手に、手を重ねた。

 

「……初めて話したんだ、信じてくれるか?」

 

「初めて……か―――信じる。なら、どう呼ばれたい?」

 

「お兄ちゃんとかか」

 

「却下だ」

 

「……お前が聞いたんじゃねぇか」

 

 光が収束を強め、鯨が旋回する。まっすぐに俺達に向かい進路を変えた鯨に銃口を定め、少女の顔を無骨なバイザーが覆い隠した。

 

「一度しか言わない……ぉ、お兄ちゃん、死ぬなよ」

 

「ククッ……外すなよ、スノー」

 

「っ、誰に言っているっ!―――貫けっ!!」

 

 ―――放たれた弾丸は寸分違わず鯨を穿ち……この世から存在を抹消し……雪が眼前に迫った。

 

「―――これほどとは―――!!?おいっ、大丈夫か!?」

 

「……な、何とかッ……生きてる、よ」

 

 倒れ伏した俺を抱き上げたスノーホワイトは、マントを広げ俺を包み込んだ。

 

「あったけえな―――」

 

「お前は……たかがニケに何故そうまでする」

 

「―――お前たちが、好き、だから……だ。人間より……人間らしい―――それに、美人だろ」

 

 笑いかけた俺に少女は少しだけ頬を染め、瞳を瞬かせた。

 

「っ―――そ、そぅか……」

 

「手……貸せ……違う右腕だ」

 

 機械仕掛けの手は、冷たく温もりを感じない。傷つき、整備もされておらず……それでも俺はこの無骨な手が―――

 

「―――固くて、冷たい―――」

 

「……っ」

 

「でも、お前が頑張ってる事が良く分かる……俺は好きだぜ、この手」

 

 この手が好きだ。

 

「!?っ―――そぅか……少し……救われた気がする」

 

「生きろスノー、必ず生きろ……死ぬことは俺が許さん」

 

「私たちは何も達成できていない……だが、一歩前に進めた……生き方を変えるつもりは無い……つもりは無いが、お前がそう言うのなら―――考えてみよう」

 

 今は……それでいい。だが、いつか……この純白の少女がこれ以上傷つかないよう、世界を救う必要がありそうだ。

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 何とかバンカーまで戻ると、二人は意識を取り戻していた。俺を見て安心し……瞳を伏せた二人に声をかけ、全員の状況を確認した。アニスは骨盤が大破し立つことすらできず。ネオンは脊椎部分のスタビライザーが破損し移動不可能。スノーホワイトは先程の一撃で完全に右脚が使い物にならなくなった。

 

 そしてラピは、あばら骨が破損しコアに突き刺さっていると告げた。

 

「コア……正直に言え、大丈夫なのか」

 

「……動きたくても動けませんので……二日は持つでしょう」

 

「本当だな」

 

「二度と―――二度と指揮官に嘘は言いません」

 

「……そうか」

 

 二日……どれだけ早くアークに帰れたとしても、一日はかかると考えた方が良い。

 

「通信は出来るか」

 

「依然として断絶状態にあります。ここで救助を待つ以外の選択肢がありません……」

 

 そう、か……外は吹雪が更に強さを増している。視覚がほとんど役に立たない。それでも―――

 

「―――指揮官っ!」

 

「何だ?」

 

「指揮官様、立ち上がってどうするのっ!」

 

「煙草を吸うだけだ」

 

「嘘よっ!ネオン、ラピッ!指揮官様を止めてっ!!早くっ!!」

 

 ……なんで、分かんだ。

 

「……俺が助けを呼んでくる」

 

 這い寄るアニスにそう告げる―――顔を見ることは出来なかった。

 

「認めません。絶対に認めません!」

 

 無理をして立ち上がったラピを一瞥し脚を進める。

 

「許可は、求めていない」

 

「っ、指揮官!!」

 

 三人の声が背中に掛かる中、歩を進め。―――出口に純白の少女が立ち塞がった。

 

「―――退けッ」

 

 肩に手を掛け告げた言葉に対し、少女は金色の瞳を彷徨わせ、迷いを晴らすように言葉を零す。

 

「……私を信じてくれるか」

 

 肩に置かれた手に自らの手を重ねた少女が、何を迷っているのかは分からない。それでも俺は少女に対し誠実に答える必要性を感じた。

 

「最初は―――信じて無かった」

 

 余りにもタイミングが良すぎた……あれでは疑うなと言う方が無理だろう。

 

「―――っ」

 

「二回、命を助けられ―――お前を知ることが出来た」

 

「……」

 

「二度と―――もう二度と疑う事はない。俺は……スノー、お前を心の底から信じてる」

 

 掛けられた言葉に対しスノーホワイトは重ねた手を離し、前に歩を進めた俺の体を押し留めた。

 

「……スノー?」

 

「―――私が行こう」

 

 少女は右脚を指差し、そう呟いた。

 

「何言って……!?」

 

 少女が指を指した先には……外骨格―――

 

「その外骨格―――貸せ」

 

 まさか、そんな事が……もし、もし出来るのなら―――俺が外に行くよりも希望はある。

 

「分かった……皆、手を貸してくれ」

 

 取り外された外骨格はスノーホワイトに付け替える事が出来た。余りにも歪に付けられたサイズが違う脚を、少女は強引に動かした。

 

「よし……何とか、動くな」

 

 脚の調子を確かめ、武器を持ち、出口に歩を進めた少女は一度だけ振り返り、決意の籠もった瞳が俺を貫く。

 

「必ず助けに来る」

 

「死ぬなスノー、必ず生きろッ!」

 

「―――約束する!!」

 

 吹雪の中に純白が飛び込んだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 スノーホワイトが姿を消し、三時間が経った。代わる代わる三人に抱き締められ体を温めて貰ったが……もう―――駄目らしい。

 

「まずいわ、雪がバンカーの中まで入ってきてる」

 

「このままだとバンカーの中が雪で埋まってしまうかもしれません」

 

「来ないね……まあ、理解できないこともないかな―――あの子は人間に捨てられたニケだから」

 

「……師匠、大丈夫ですか?」

 

「大丈……夫……」

 

「……体温が……ラピ、アニス……このままだと……」

 

「出力をすべてボディ温度へ変換しよう」

 

 薄れ行く意識を必死で繋ぎ止め、ラピの言葉に抗う……そんなことすれば―――。

 

「ま、まて……やめ、ろッ」

 

「―――指揮官様、あったかい?」

 

 躊躇せず、アニスの身体が熱を発した。

 

「三人で温めるのは、ちょっと恥ずかしいですね」

 

 ネオンの体も同様に熱を持ち―――

 

「っ……指揮官、これで……しばらくは耐えられま……」

 

 ラピの体も熱を持った。ば、馬鹿野郎……俺が助かっても……お前ら、が―――

 

「指揮官?……指揮官!!」

 

「な、なに!指揮官様!?」

 

「体温が下がり過ぎです!」

 

 

 三人の美女に抱き締められ終わるのなら……それも良いかもしれない―――後悔は……後悔は―――マリ……アン。

 

 

「これはこれは、熱い光景だこと」

 

「きゃっ、恥ずかしいです」

 

 ……ルド、ミ、ラ……アリ、ス―――

 

「大変だっただろう。私たちが来たからにはもう大丈夫―――絶対に死なせないわ」

 

 遠くで純白の少女が踵を返すのが―――見えた。

 

 俺に背を向けたスノーホワイトに手を伸ばそうとして……意識が暗転した。

 




北部、完ッ!!
後がたりが終わったら、ようやくエロに入れるぞーーー!


つ、次がエロとは言ってないよ(震え
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