「起きろ。……おいお前!起きろ!」
「んぁ?あ、ああなんだ亮か……」
翌朝、オレは突然怒鳴りつける亮の怒号で目を覚ます。
「お前……俊をどこへやった?」
「…………は?何言ってんだ亮?頭おかしくなったか?」
身体を起こし亮の方を向くとそこには凄まじい形相でオレを睨む亮の姿があった。
普段起こったときにも見せないような、はっきりとした”憎悪”の表情。
オレは見知ったはずの亮が、まるで鬼になってしまったかのように感じて恐ろしくなってしまう。
「お、おい亮落ち着け……俊はオレだろ?なぁ、落ち着けって!」
「冗談に大概もしろこの売女。俊は男だろうが!これを見ろ!これが男の俊だってお前は言うのか!?」
「ちょっ……おち、落ち着けって!」
オレの胸ぐらを掴む亮。
そのままオレを引きずって居間の
「よく見て見ろよ。お前はどこの誰か、聞かせてもらうからな」
冷たく言い放つ亮が、正直オレは――――怖かった。
まるで突然別の人間になってしまったかのような反応に、オレは恐る恐る姿見を見る。
そして――――何が起きたのかを理解した。
そこにいたのは……紛れもない美少女だったのだ。
ほっそりとした腰のくびれに明らかに男のそれではない鎖骨から肩までのライン。
特別大きいとは言えないものの、はっきりと女性を主張する膨らんだ胸。
「な……なんだ……コレ?」
そして、さっきまでは亮の態度に混乱して気付いていなかったが、女性にしてはやや低いものの男のそれとは到底言えそうに無い、オレから発せられる高い女の声。
「お、おれ、オレが……女に……なっ……てる?」
「そんな馬鹿な話があるかよ。一体いつ俊と入れ替わった?事と次第によっちゃ無事で返してやれる自信がねぇぞ?」
女になったオレを別人だと思って問い詰める亮。
そりゃそうだ。オレだって朝起きて隣に亮じゃない別の女が寝てたら首根っこ引っ掴んで亮の居場所を吐けと言うだろう。
「お……落ち着いて聞いてくれ亮。お前がそう思うのはわかる。正直俺自身まだ何が起こってるか信じられねぇが……オレが俊なんだ」
「まだくだらねぇこと言うつもりか?」
信じる様子のない亮。まぁそりゃそうだろう。
オレはなんとか亮に信じて貰おうと、オレしか知らない亮のとっておきの秘密を口にする。
「亮が最後におねしょしたのは小学4年、オレの家」
「な――――っ!?なんでそれを!?」
「一緒に隠したけど結局バレて大目玉だったよな?」
「まさか……いや、まだだ。事前に俊から聞き出したかも知れねえからな。俊の初恋の相手は!?」
ぐぅっ……それを聞くかよ……!
どこまで疑ってんだよ……!
「お、同じクラスだった美代ちゃんだよ……」
「ふっ、語るに落ちたな。正解はオレの母さんだっ!」
「ちっげえわボケ!アレは単にダチのお母さんに感謝してるだけだって毎回言ってんだろうがぁ!オレの初恋は美代ちゃんだっつってんだろ!いい加減わかれこの馬鹿野郎!」
「マジか……その反応マジで……俊なのか……?」
判断基準そこかよ!!
だがようやく亮もオレが星野俊だと言うことを理解したようだった。
まあ確かに姿見を見る限り今のオレは昨日抱いた村の娘達と比較しても勝るとも劣らない美少女だ。
とてもむさ苦しい男子高校生には見えない。
「……いくつか確認させて貰うぞ」
そう言って亮がオレの顔を両手でむんずと掴む。
そのままわさわさとオレの横髪を掻き分けたかと思うと、オレの耳をベタベタと撫で回って形を確かめる。
そのままオレも姿見を見てみるが、女になったとは言え普通の耳だ。
「この村の鬼娘になった……ってわけじゃないんだな」
「あ……そっか。そういうことか」
この村の娘はあの幽という少女をはじめとして皆耳が長い。
そんな耳の長い村の娘達を亮は『鬼娘』と呼んでいるようだ。
そしてオレが女の身体になったという事実を前にして、最初に気になったのはオレの性別が変わっただけなのか、それともこの村の鬼娘達の身体になってしまったのかということのようだ。
「それに……大分変わっちゃあいるが、確かによく見ればガキの頃の俊の面影がある」
「うっそ。マジかよ」
まじまじとオレの顔を見てそう言う俊にオレも鏡の方を見て確認してみるが、全然別人の美少女にしか見えん。
「良く見ろって。ここの目元のとことかお前のお袋さんによく似てんだろうが」
「はぁ……まぁそう言われれば……いやわからん」
全然わからん。
確かにそう言われりゃ似てるような気がしないでもないが、うちの母さん若くしたってこんな美少女にはなんねえだろ。
そんくらい造型が違う。
つうか、ガキの頃のオレにこんな美形要素があったら今頃オレはとっくに童貞卒業してるっつうの。
「後は……下半身だな。どうなってるか教えてくれ」
「下半身って……」
「ついてんのかついてねえのか。どうなってんのか確認しておけよ」
「ついてるって……あぁ!」
慌てて寝間着の下を脱いでトランクスを引き下ろすが……
「……ない!やっぱりない!」
呪いだかなんだかででっかくなった亮のイチモツとは比ぶべくも無いとは言え、16年間常に共に過ごしたオレの股間の主砲は跡形もなく姿を消し、なだらかな丘と化していた。
鏡の前で尻餅をついて両脚を拡げ股間の根本を確認するが、そこにあったのは少しだけ盛り上がったマン肉に挟まれたキレイな一本の縦スジだけであった。
「おお……
「ていうかお前!……少しは隠せ!」
「いてっ!」
パシーン!と亮に頭をはたかれる。
そしてはたかれることでようやくここに亮が居ることを思い出す。
冷静になって周囲を見回すと……顔を真っ赤にして左手で多う亮と、その亮から丸見えの位置で鏡に向かってM字開脚ポーズでオマンコ開けっぴろげの美少女のオレ。
「――――――――っ!?」
状況を理解して一気に羞恥心というヤツが襲ってくる。
顔が一気に紅潮したのか熱いほど赤くなるのを感じる。
慌ててトランクスを、次に寝間着を引き上げるが、あまりの恥ずかしさに亮の顔を見ることが出来ない。
「…………顔、洗ってくる」
「ああ……そうしてくれ……」
そう言ってオレは逃げるように洗面台に逃げ込んだ。
* * * * *
「……落ち着いたか?」
「む。スマン……落ち着いた」
戻ってきたオレに声をかける亮。
しばらく顔が真っ赤で脳内パニック状態だったが、洗面台で顔を洗いながら冷やしているとようやく少し落ち着くことが出来た。
洗面台で改めて自分の顔をまじまじと見たが、もしこんな美少女がオレの高校にいたら毎日誰か男連中に告白されて大変な騒ぎになるだろうこと間違い無しだ。
何度見てもそれが自分の顔だと言うことが信じられなかった。
しっかし、一体どうしてオレがこんな姿になってしまったのだろうか?
ここはカクリヨ村とか言う不思議な場所で、そんなところに迷い込んだ時点で十分おかしくはあるのだが、それでも亮は特に……いやチンポがエグい事にはなってたが……性別が変わるなんて事は起きて無い。
オレと亮、一体どこに違いがあったのか。
「なぁ俊、お前オレとなにか違う行動をとったか?」
「違う行動?特には無いと思うけど……」
「良く思いだしてみろ。一昨日の夜ここに来てから今朝までの間の事」
ここに来てからのことねぇ……
亮と一緒に迷い込んで、亮と一緒にあの幽って娘と会って。
「そう言えば、初日はオレだけ風呂に入ったな」
「うーん、でも風呂なら俺も昨日入ったろ?可能性がないとまでは言わねぇけどいったんそれは保留だな」
うむむ……そうか。
でも風呂以外だと――――――――――あ。
俺は慌ててキッチンに向かう。
冷蔵庫を開けて牛乳瓶の並ぶあたりを漁ってみるが、普通の牛乳・コーヒー牛乳・フルーツ牛乳はあるが……俺が飲んだピンク色のピーチ牛乳だけがない。
何度も冷蔵庫の中を探すけど……あの桃色乳白色の瓶だけがどこにもなかった。
「俊お前まさか……その冷蔵庫の中のものをなにか口にしたのか?」
そんなオレの背後にいつの間にか立っていた亮が俺に問いかける。
「あ、ああ。風呂上がりに牛乳飲むのが俺の習慣なのお前も知ってるだろ?普段あんまり見ねぇレアなピーチ牛乳があって上手かったから飲んだんだよ」
「1回だけか?」
「最初の夜と……あと昨日も」
「それで、その飲んだヤツだけが今ないんだな?」
亮の顔が怖い。
朝起きがけに俺を問い詰めたときのような緊迫した亮の表情。
「あ、ああ……」
「つうか、ここがこの世じゃないヤベえ場所だってわかってんだから、勝手に食いもんに手をつけてんじゃねえよ!」
「そ、そんなに怒ることねぇじゃねえか……つーかそれを言うなら亮はどうなんだよ?ここまで2日飲まず食わずか?」
「俊はそれ以外になんか喰ったか?」
「いや…………あれ?」
そう言えば。
オレ達がこのカクリヨ村について二晩開けて今日。
俺と亮は食いものらしい食いものをほとんど口にしていない。
昨日の膳も、結局ほとんど手をつけずに乱交パーティになっちまったし。
よくよく考えれば、こんなに長い間まともに食事をしてないというのに、腹も減らなきゃ喉も渇いてない。
ピーチ牛乳を口にしたのだって、俺にとって風呂上がりに牛乳を飲むのが習慣になっているからと言うだけで、決して喉が渇いていたからではない。
「――――
「よ……ヨモツヘグイ?なんだそれ?」
「この世の人間があの世、黄泉の国に迷い込んだ時に黄泉の国の食物を食うことを
「そ……それで、それを破るとどうなるんだよ……」
――――口が渇く。
まるで俺が絶対にしてはいけない禁忌を犯したとでも言うような亮の口ぶりに心臓がドクンドクンと鳴る。
「
「じゃ、じゃあ俺だけ……俺だけ帰れなくなるって言うのかよ!?なぁ亮教えてくれ!?俺はその……ヨモツヘグイで帰れなくなっちまったってことかよ!?」
気付けば俺は亮の胸ぐらを掴んで揺すっていた。
亮はただ悲しそうに俺を見つめるばかり。
「そんな……俺だけこのカクリヨ村に閉じ込められちまうってことなのかよ……」
「そうは……させないさ」
「…………亮?」
亮は俺をどかして冷蔵庫の中からコーヒー牛乳を取り出すと、キャップを開けてゴクゴクとそれを一気飲みで飲み干して見せた。
「亮……」
「
俺が犯してしまったタブーを自分も犯して一緒だという亮。
そんな亮に、俺は知らず知らず涙を流してしまっていた。
「バカかよお前……泣くことはねぇだろ」
「え?あれ?い、いや……そ、そんなつもりは……ぐす、なかったんだけど……」
だけど、本当に嬉しかったことだけは――――確かだった。
「とにかく、何が起きたのかあの女に聞いてみるしかないか」
あの女……幽のことか。
とにかく、俺は亮と一緒に村のどこかにいるはずの幽を探すことにした。
* * * * *
「まあ亮様。今日はどのようなご用件で……?して、そのおなごは……?」
幽は村のはずれにある北の村娘達の住む小屋にいた。
ここに来るまでの村の道中、至る所で男女が
あっちでアンアン、こっちでアンアンと、まるで蝉の鳴き声に負けてたまるものかと嬌声をあげる女達。
それだけでもこの村の異常さが見てとれた。
幽の話ではこの村で生れるのはみなあの鬼娘達で、男はみな
村に出回る女達はほとんどが長耳の鬼娘達で、たまにそうじゃない……客人の女を見つけたときは男と常にカップルのように一緒にいることがほとんどのようだ。
村そのものはオレ達の街の近くにもあるような寒村と言った趣だが、そこで男達と鬼娘達がそこかしこで乱交している姿だけが異常さを際立たせている、そんな村だった。
村の奥で幽を見つけると、はじめはニコニコと笑みを浮かべていた幽が俺の姿を見るなり一瞬目を細め値踏みするように刺す視線をしたことに気付く。
「幽。悪いが教えて欲しいことがある」
「まあ亮様、そのようなご丁寧な対応を。村の牝である私のことは犬を扱うようにしてくださってかまいませぬのに」
そこまで丁寧とは言えない亮の対応にすらもっと手荒く扱えという幽。
その言葉には彼女自身が言った『男か女か。客人か村の者か』という序列をはっきりとさせたいという秩序への信奉が見てとれた。
「なら教えろ幽。これは俊だ。昨日まで男だったはずの……俊がこうなった」
「俊様……で、ございますか?このおなごが……」
「俊がこうなったのは
幽の襟を掴んでねじり上げる亮。
だが、そんな亮の乱暴な様子にうっとりした様子の幽。
まるでオスにそうされることが至上の喜びであるかのような淫らなメスの顔をしていた。
「まぁ……♡なんて素敵に乱暴なご様子……♡ですが、申し訳ございませぬが一体私にも何が起きたのやら……本当にその見慣れぬおなごが俊様だと?」
「俺がそんな冗談言ってどうするんだよ。だが……本当に知らないのか?」
「えぇ……そのような事は今まで見たことも聞いたことも……ですが、亮様がそう仰られるならばそうなのでございましょう。村の牝である私には客人様の牡である亮様には逆らうことなどございませぬので……♡」
恍惚とした表情で亮を見つめる幽。
だが、とにかくそれほどに村の序列を大事にする幽が『絶対的に優越する』とまで言った客人の男である亮に知らないと言うのは、ある程度信じても良いのでは無いかと俺は思った。
「ですが……もし俊様がおなごになられたというのであれば……もう一度お伝えしなければならぬことがございますね。よろしければどうぞこちらへ……」
そう言ってオレ達を案内する幽。
オレ達が案内されたのは、誰も住んでいない小さな屋敷だった。
「ここは時に集会にも使うこともある場所にございますので」
そう言って畳敷きの床に座布団を敷いて座る幽。
まるで良家の子女のように優雅な動きに、この少女が見た目以上の刻を重ねて過ごしてきた歳月を感じさせる。
「それで……俊様、でございますか。俊様のお体がどうなっているか……今一度確かめさせて頂いてもよろしいですか?」
「あ、あぁ……」
口元は微笑んでいてもその目は射貫くような凍てつく視線で俺を見据える幽。
まるで異常なこの村に紛れ込んだ真の異物であるオレを見定めようとするような視線。
亮はと言えば、そんな幽の所作を見逃すまいと黙ってオレと幽を見つめている。
緊張するが、とにかく今は成り行きに任せるしかない。
幽がオレの服を脱がしていくのに黙って従う。
全ての服を幽が脱がせると、屋敷の中一糸纏わぬ姿で立つオレを囲む幽と亮と言う構図になった。
(めっちゃ見てる……見られてるな……)
正直亮やそこまで深い仲ではない幽に裸を見られることに恥ずかしさが無いと言えば嘘にはなるが、とにかく今は亮が考えるとおりに動くしかない。
そう思って湧き上がる羞恥心を抑えて耐えることにした。
「俊様、失礼いたします」
幽はそう言うとオレの股に手を添え、出来たばかりのマン筋を人差し指でつつ……とひと撫でする。
そのままクン……と力を込めると、マン筋に幽の指が沈み込んでいく。
「ん……っ」
くすぐったさについ声が漏れてしまったが、その声を咄嗟におさえる。
男の意地ってヤツだ。カラダが美少女のそれになったとしても……オレはあくまでも男だ。
男のつもりなのだ。
「ほんとうにおなごなのですね……まさかとは思いますが、性を――――偽っていたというわけでは……ありませんね?」
幽の声音が一段低くなる。
そこには、村の禁忌と幽が言った『性を偽る』と言うタブーをオレが破っていたのでは無いかという懐疑の含みがありありと見える。
そして――――万が一そうであるならば……という冷徹な声。
だが、亮ははっきりとそれを否定した。
「俊は昨日
「では……」
亮の言葉に幽が合図をする。
そうすると、どこからともなく村の娘達がぞろぞろと集ってくる。
まるで最初からそれを予期していたかのような準備の良さ。
その準備の良さが逆に、もしオレが村の禁忌を破っていたら……と言うことを想像させてゾッとしてしまう怖さがある。
「昨日俊様に抱かれた者は前に出なさい」
何人かの娘達が前に出てくる。最終的には10人ほどの娘達が前に出る。
途中記憶が曖昧だったから、全員を覚えているわけでは無いものの確かに見覚えのある娘が何人かいる。
つうか10人も抱いてたのかオレ……
「昨夜俊様に確かに牡らしく
「はい……それがこのおなご様かはわかりませんが……」
「なるほど……」
娘達の顔を見つめて深く思案する幽。
長く長く考え込んでいた幽だが、最終的にはまとまったようだ。
「――――わかりました。それでは貴女達は下がって結構です」
幽の言葉に屋敷をでていく村の娘達。
そしてまたオレと亮、幽の3人だけになる。
そうして――――オレの回想は今現在へと戻ってくる。
* * * * *
しかし……思い返せばとんでもないことの連続だった。
まず、亮と一緒にこの『カクリヨ村』と呼ばれる不思議な異世界に迷い込んでしまったこと。
その歓待の宴と言う場で、村の鬼娘達と幾度も情交を重ね童貞を卒業したこと。
いつもの習慣で飲んだ村の不思議な牛乳のせい……かどうかはわからないが、おそらくその『
ただですら異常なこの村で、村のことはなんでも知っていそうなこの幽という娘すらわからないと言う『女体化』というさらなる異常事態に、オレは内心パニックだった。
だがそれでもオレが平静さを装えるのは、亮がどっしりと構えていたからだった。
「あの……それで、いい加減服着ていいかな……?」
「ああ、そう言えば……」
この集会場代わりの屋敷に幽に案内されてから今の今まで、オレは全裸で事の推移を見守るしか無かったのだが、オレが女であること、そして性を偽ると言うこの村のルールを破っていたわけでは無いことがわかった以上、いい加減この恥ずかしい見世物で居続けることはイヤだった。
だがそんなオレの言葉にまるで『女が裸でいることは普通の事だから忘れていた』とでも言うような幽の態度に少しだけイラッとしたが、亮がそれに何も言わない以上事を荒立てても良いことはないと我慢する。
とにかくお許しは出たようなので服を着ていると、亮が口火を切る。
「それで幽、俊がこうなったことについて、お前は思い当たる節がないんだな?」
「ええ。このような事態……私には初めての事でございまして……」
幽の答えを待つことも無く亮は既にそれを確信しているようだった。
まぁ、もし幽が女体化について知っているならばここまで俺の事を疑うようなことはしないだろう。
ここまではあくまでも念押しの確認といった感じだ。
「それで、この村の食物を食うことでなにかおかしな事になったヤツはいないのか?」
「それも……そもそも、ここは老いることも死ぬことも無い場所。食事もあくまで娯楽のためでございまして……」
「
「ヨモツ……ヘグイ、でございますか……この村ではそのようなことは……」
首をこてんとかしげる幽。
その仕草は電話やスマホの事を聞いたときと同じような反応だった。
おそらく、本当に知らないのだろう。
「しかし――――この村にも禁忌はございます」
幽が厳かに口を開く。
この村の禁忌――――掟について。
「俊様の事でございますが、おなごと言うことであらためて村の掟をご説明させて頂きます」
「は、はぁ……」
「まず1つ。この村の序列は殿方が絶対的に優越します。俊様は今はおなごにございますので、村におわす殿方様には絶対の服従をしなければなりません」
「絡まれたら……逆らうなって事かよ……」
ハァ、と失望したようなため息を吐く幽。
「丈夫たる殿方様に求められたならば、喜んで股を開くのが牝の役割にございます。逆らうなどもってのほか。決して逆らってはいけませぬ」
この村に来たときのオレは全てにおいて優越する男だったから気にしてもいなかった村の掟。
だが、こうしてオレが『優越される側』になると言うことはどういう事なのか。
それが幽がわざわざもう一度村の掟をオレに語る理由だと言うことが……嫌と言うほどわかってしまった。
『絶対的に優越する』ということはそういう事なのだ。
たとえレイプされようとなんだろうと……牝には一切の拒否権がない。
それがこのおぞましい淫習村の――――――決して破ってはならない掟。
「そして……牝であっても客人様には村の者は敬意を払うこと。ですので、客人様であらせられる俊様は村の者にはぞんざいに扱われることは無いでしょう」
だが、その序列はそのまま女が男に逆らえないことの裏返しでもある。
それがわかってしまった今となっては、素直に喜べない自分がいる。
「次に『婚姻儀式』を済ませた牝に対しては、同意なく手を出してはいけないこと」
人の嫁さんに手をだすなよって事だよな。
最初に聞いた時ものべつまくなしに誰かを抱くようなこの異常な村の淫習に染まるつもりは無いオレと亮は聞き流していたが……亮はそうでは無いようだった。
「つまり――――『婚姻儀式』を済ませていない牝は……同意無く手を出しても文句を言われる筋合いは無いってことだな?」
「もちろん……殿方はこの村では絶対的に優越いたしますゆえ」
亮の質問に当然だと返す幽。
そのやりとりでオレも亮の意図と、その掟が意味することを理解する。
つまり『婚姻儀式』を済ませない限り――――オレの安全は保証されないってことだ。
この村で客人の女が1人でいない理由もこれでわかってしまった。
男に犯されることを至上の喜びとする狂った倫理観の村娘達と違って、あくまでも普通の倫理観で育った女達にとって――――この村は地獄以外の何物でも無い。
そして……その地獄に、オレも放り込まれたのだ。
「もし亮様が俊様を誰かの牝穴にしたくないとお望みならば……一刻も早く俊様をご自身の牝であると宣言し『婚姻儀式』を済ませてしまうことです」
幽が亮を見据えて『忠告』をする。
だがその対象はあくまでも『客人の男』である亮に向けてのもので、牝であるオレの事は一瞥もしない。
それが、それこそがこの掟の意味を十二分に物語っていた。
「そして最後に――――性を偽ってはならないと言うことでございます」
幽が振り返ってオレを見る目が一段鋭くなる。
「たとえ俊様がかつて殿方であったとしても、今の俊様はまごう事なきおなご。殿方のように振る舞うことはたとえ客人様であろうと決して許されませぬ。
そういう幽の声音と表情にははっきりとした警戒がある。
それはオレが
「もし……掟を破ったら……」
「その時は――――極めて厳しい罰が待っております。滅多に無いことではございますが、まぁ、殿方にとってはもしかすれば楽しい催しになるかも知れませんね……」
厳かな言葉の中に、わずかな愉悦を感じさせる声音。
俺はその言葉に背筋が凍るほどの恐怖を感じずにはいられなかった。
「おわかりに――――なりましたか?」
静かに問う幽。
だが、その言葉には『これ以上の忠告はしない』と言う意思が言外に感じられる声音であった。
「……わかった。ありがとう幽」
「俊の扱いに関してはしばらく考えさせて欲しい。だが、それまでは俊は俺の『婚姻儀式』の候補だ。そのつもりでいてくれ」
「……亮?」
亮の言葉に思わず問い返してしまう。
今――――亮ははっきりと言った。
亮はオレと『婚姻儀式』をするつもりだと。
それがどういう意味なのかわからないほど、オレも馬鹿ではない。
(亮……もしかして、オレの事『
「亮様。ですがいつまでも曖昧なままではいられません。殿方が俊様を求める限り――――私が村で生れた牝である限り、それをおとどめし続けることは出来ないと言うことだけはお忘れ下さらぬよう……」
そして、この件でこれ以上の協力をするつもりは無いと言う幽。
村の掟に忠実であるが故、仮にオレをどうにかしようという男がいても、牡に絶対服従の掟に縛られた幽は助けられないと言うことだ。
「わかった。またなにかわからないことがあれば聞きに来る」
「どうせならば――――肢体を求められてもよいのですよ亮様♡」
淑やかではあるが、しなを作り亮に愛想を振りまく幽。
「行くぞ俊」
「あっ、ああ……」
そんな幽を無視してすっくと立ち上がる亮。
そしてその後に続くようにしてオレ達は屋敷を後にする。
オレ達の後ろで幽がずっとニコニコと微笑みを浮かべていた。
だがその視線の先に既に『牝』になってしまった俺の姿は無い。
それが……この村でのオレの扱いを象徴しているようで、オレは空恐ろしいものを感じずにはいられなかった。
「俊、家に着くまでに絶対に俺の側から離れるな。たとえ一瞬でもだ」
「わ、わかった……」
一見過保護にも見える亮の言葉が、俺がどんな地獄にいるのかを亮が理解していると言うことを物語っていた。
* * * * *
「帰ってこれたな……」
あてがわれた家に着いた第一声はそれだった。
正直、女になったと言うだけなのに昨日までとは村の景色がまったく違って見えた。
軒先で、道ばたで、草むらで岩場で。
村のあちこちで犯されている村の娘達に、どうしても自分を重ねてしまう。
これからのオレは客人として村を楽しむ側では無い。
村に訪れた男達を楽しませるための供物として捧げられる側なのだ。
それを否応なく感じて、帰りの道中オレは前を行く亮の手を放すことが出来なかった。
家に着くまでの道中、本当に怖かったのだ。
オレは喧嘩ならば地元で負けたことが無い。
むやみやたらに喧嘩を売るようなことは絶対にしないが、道ばたでどんな悪に絡まれようと少なくとも一方的に嬲られる立場になるなんて事は想像すら出来なかった。
だがこの村ではそれが禁忌になる。
禁忌を犯せば、待っているのは幽をはじめとする村の者達からの『厳しい罰』だ。
それはつまり――――村中がオレの敵に回るということ。
一体どうされてしまうのか。
その想像がオレのカラダを竦ませるのだ。
それと……幽との会話で気になった亮のあの一言。
オレはそれを亮に聞かずにはいられなかった。
「なぁ亮。あの時、オレと『婚姻儀式』をするつもりだって言ったよな?」
「ああ。言ったな」
「それって……どういう事なんだ?」
どういう事かは――――わかっている。
それは……亮がオレを牝として扱うと言うこと。
だから、本当に聞きたいのはそこじゃ無い。
だが、亮はオレの言葉からそれを察したようだった。
「ああ、あれか。別にお前をどうこうしようとか、そう言うんじゃねえよ。だけどお前も聞いたとおりここは女に人権なんてものが無い村だ。もし俺がいないときに別の男がお前を襲おうとしたらどうなる?」
「…………」
言うまでも無い。
俺が危惧していたことを、亮も理解しているようだった。
「そんなとき、名目だけでも『俊は俺と婚姻儀式をしている牝だから手をだすな』って言えるだろ?」
「じゃあ、オレの身を守るためだけに……ってことか?」
「それ以外何があるんだよ。ただ……その『婚姻儀式』ってのが何なのかわからんうちは迂闊にそうするとも言えないからな。それまでは『婚約』っつうことで逃げたワケだ」
事も無げに言う亮の態度に、オレはホッとする。
やはりコイツはオレより一歩も二歩も先を考えて行動してるというわけだ。
「だが幽のあの態度を見る限り、『婚約』じゃお前がどこまで安全なのか確証がない。しばらくは俺以外との単独行動は控えろよ俊」
「あ、ああ……わかった」
亮の目は真剣だ。
それだけオレと同じくらい……いや、それ以上にこの村の危険性を感じていると言うことだ。
「あとな。万が一お前の言葉遣いにどうこう言われたら、全部俺に命令されて言わされるって言っとけ」
「……?どういうことだ?」
「村の掟を忘れたか?『性を偽ってはならない』――――つまり、お前が男らしいとこみせたら、それが禁忌になる可能性があるってことだ」
亮の言う村の掟。
確かに性を偽ってはならないってのは幽が言っていた。
だが、だからこそ亮はわざわざオレが女になったことをまるで見せつけに行くように幽にそれを告げて疑いを晴らしたんじゃ無いのか?
「お……男らしいとこって……どういう事だよ?オレがどうしたら性を偽る事になるってんだ?」
「例えばそうだな……その口調。自分の事『オレ』って言うのも、もしかしたらそうなるかも知れないって事だよ」
「まさか……そんなことでか?」
「わからん。俺の心配しすぎかもしれねぇけどな。ただ何が咎められるかわからん状態で、不意にお前の言動にケチつけられるかもしれねぇだろ?」
まぁそれはたしかに……そうかも知れない。
正直、村の娘達の様に股を開いて男に媚びなきゃ牝として偽ってんだよ!なんて言われる可能性がないとは言い切れない。
「そんなとき、『亮様に言われて仕方なく……』なんて言っとけば、村の掟の一番大事な事――――――男に逆らうわけには行かないって理由があれば、多少は納得させることが出来るんじゃねえかと思ってな」
「……なるほど」
村の掟には村の掟って事か。
どっちが優先されるのかはわからねえが、亮の言うことには一定の説得力がある。
「ぶっちゃけ、幽はお前が俊だって事すらいまだ内心疑ってる節がある」
「あれだけ大がかりに確かめてもか?」
「アレは単にお前が本当に女かって事と、ここに来た時点で既に嘘ついてねぇかって事だけで、その前提となるお前が実は俊とは別人の女かも知れないって事は、最後まで完全には納得してない節があったな」
「そうなのか……」
確かに最初、俺が俊だと言っても一切信じて無い様子だったな……
「だが大事なのはそこじゃない。幽はそれを疑いつつも飲み込んだだろ?それはどうしてだ?」
「お前が……客人の男がそう言ったから……か」
「そうだ。男の言うことはこの村では絶対らしい。普通疑うような事すら、男が言えば通ってしまうのがこの村だと言うことだ。だから、俺がお前の行動を命令してて、お前はそれに従わざるを得ないってポーズを取ってさえいれば、大抵の事は許されるだろうと思ったんだよ」
なるほどな……よく考えられている。
まあ俺が亮の作戦に口を挟めるほど頭のデキはよくないから、俺に亮の作戦の穴を見つけるなんて事は出来ないわけだけどさ。
とにかく、亮の庇護下に俺が入り、亮がその行動の全責任を被ることで俺の行動を正当化しようというのは正直ありがたい。
「しばらくは……それで行くしかねぇな。悪いが亮、迷惑かける」
「いいさ。別にお前が悪いってんじゃねぇ。あの幽も知らなかった事態って事はどうせ予期することは出来なかったさ」
そう言って笑う亮。
ずっと厳しい顔をし続けていた亮の表情が緩んだのを見て、ようやく少し落ち着けた気がした。
気付けば外は夕暮れ時。
基本的に夜になれば静かになるこの村では、外に出るのももう遅い時間でもある。
「少し早いが……今日はもうゆっくりするとしようか俊」
「ああ、そうだな亮。とりあえず俺は風呂入って来るわ」
「緊張したし、汗もかいたしな」
そう言って立ち上がる俺を見送る亮。
ソファに深々と座るその姿は、俺だけで無く亮も神経を張り詰めさせていたのだということがうかがえるものだった。
* * * * *
「はぁ……しかし、これが今の俺か」
脱衣場で服を全て脱いで風呂場に据え付けられた姿見の前に立つ。
鏡に映る一糸纏わぬ美少女の姿は、もしそれが俺自身で無ければきっと惚れてしまうだろうと思うほどの美貌だった。
ゴツゴツして節くれ立った男の頃の俺の指はまるで陶磁器の様にスベスベでキレイな細い指になっているし、水に濡れて顔に貼り付く髪はゴワゴワだった俺の髪の毛とは似ても似つかぬほど細く繊細な毛に変わっていた。
密かに鍛えていた俺の腹筋は腹を撫でればその残滓を感じることが出来ると言った程度に柔らかい女の柔肌に包まれて隠され、均整の取れたボディラインを美しく飾る程度になってしまっている。
(これが……オレのカラダねぇ……)
シャワーを浴びながら自分の肢体を指でなぞる。
オレのボディラインに沿って流れるシャワーの湯を追うように指を降ろしていくと、その指先は湯に導かれるようにオレの両脚の付け根と胴を区切る鼠径部を通って、両脚に挟まれた股間に吸い込まれていく。
今は無くなった男根の残滓を探すように人差し指と薬指で縦スジを構成する左右のマン肉を割開く。
そうして開かれた穴の入口を中指で軽くなぞると、ピリッとした刺激が全身に走る。
「んっ……♡」
思わずオレの口から漏れた甘い声に、ゾクゾクと淫らななにかがオレの背骨を駆け上がっていく。
(立ったままだと……見にくいな……)
風呂椅子を持ってきて姿見に正対するように座る。
両脚を拡げて股間を鏡に突き出すような姿勢でもう一度男には無い未知の『穴』を指で拡げる。
ただ一本の筋のようにピッタリと閉じたそれを左手の人差し指と中指で強引に左右に割り開くと、肌の色のマン肉に隠されたピンク色の『中身』があらわになる。
(結構……グロいかもしれん)
宴席で無遠慮にチンポをツッコんだあの娘のオマンコはもっとビラビラしていたものがキレイにマン肉の中におさめられたオレのできたての女性器。
その割れ目の上の方に、埋め込まれたように隠された小さな丸い突起。
話でしか聞いたことがないが、これが――――オレのチンポの成れの果て。
「随分寂しくなっちまったなぁ」
右手の人差し指で軽く触れると、ビクッ♡と強めの刺激が全身に走る。
「…………っ♡」
さっきの事で心の準備が出来た分声をおさえることは出来たが、全身に走る刺激は先程よりもずっと強い。
それでもオレは左手で割り開いたオマンコを右手であれこれと弄ってみる。
マン肉に隠されたピンクの部分を指で突いてみたり撫でてみたり。
その度にピクピクと軽い刺激が全身に弱い波のように打ち寄せてくるが、これくらいならばまだまだ耐える事ができそうだ。
オレは思い切って右手人差し指をほとんど針が通る程度しか無いその中心……穴に指を押し当ててグイグイと圧迫していく。
――――――つぷん♡
しばらくその指を圧力に耐えていた穴が、ある地点でそんな音が聞こえそうなほどあっけなく拡がりオレの指を飲み込むサイズまで拡がっていく。
まるで口の中のようにほのかに暖かいその穴は、オレの指にピッタリと貼り付きながらも包み込んで締め付けようとする。
その穴の中はわずかばかりのヌルヌルと滑る粘液が流れて、それを潤滑油としてオレの指の摩擦係数を下げている。
怖いもの見たさでつぷつぷ……♡と指を押し込んでいくと、その粘液で滑るオレの指がどんどん膣奥へと
細い俺の指先にキュウキュウと吸い付くオレの膣壁が、ヌメヌメと滑りを増して指を飲み込みながら締め付けていく。
だがそれと同時にオレの内臓に指が強引に割り入ってくる異物感が、ゾクゾクと男の知らない未知の快感となってオレの肢体を駆け抜けていくのを感じる。
(やっ――――ヤバッ!)
慌てて指を引き抜く。
ちゅぽん♡と穴から引き抜かれる指と膣壁の摩擦にビリッと快感が走り思わず声が漏れそうになるが、それよりも『これ以上指を
鏡越しに映る指を引き抜いた膣穴はあっという間に元の小さな小さな穴に閉じ戻るが、そこからぴゅっ♡ぴゅっ♡と透明な粘液が噴き出してくる。
(これ……もしかして……愛液って……やつか……?)
気付けばそこにいたのは風呂場で自分のオマンコをほじくるオナニーに耽溺する女の姿。
ハアハアと甘い吐息を吐きながら火照る肢体に頬を赤らめる美少女。
それが自分であると言うことが――――不意に怖くなってしまった。
(一体…………オレは何してるんだよ!?)
急に我に返ると、さっきまでの自分の行為がとんでもなく恥ずかしい事のように思えてしまう。
慌てて湯を頭から被り、手早く風呂を済ませて出る。
「おお俊、今日は随分念入りだったな。まあ今日は暑かったしな」
「お、おおそうだな亮!」
「なんでキョドってんだよ?ヘンなヤツ」
「お、オレ今日はもう寝るわ!」
時計を見ると1時間近くも風呂に入っていた。
それを指摘する何気ない亮の言葉にも後ろめたいものを感じてしまい、咄嗟に誤魔化してしまう。
なんだか亮の顔を見るのも恥ずかしくなったオレは、そうそうに布団を被って眠ることにしたのであった。