12年分の恋が溢れ出したので、愛で覆い尽くしてみた 作:暁英琉
「ん……ぁは、おっぱい……触られちゃった」
ゴツゴツした指先が首筋からワンピースのフリル、リボンを弄り、服の上から鎖骨を撫ぜてその下、二つの膨らみに添えられる。ガラス細工を扱うように優しく触れられるだけで、甘い痺れが全身に広がっていく。
「やわらけえ……」
「ん……ふふ、当たり前でしょ――んぁっ」
まるで初めて見るおもちゃを観察する子供のようなルフィの様子がおかしくて、ウタの喉が震える。どこか真剣さとあどけない表情が混在した幼なじみに親愛の情が膨れ上がる。
豊かに実った果実の輪郭を確かめるように二つの手が肌を撫で、その柔らかさを覚えようとするように十本の指が柔肉に沈み込む。その度に意思に反して嬌声が口から溢れ出した。
「ん……ふぁ、ク……ふ、んんっ、ぁ、ぁっ……ルフィ、きもち、いいよ……」
親愛と快楽。二つの違う感情が同時に湧いてきて、ぞくぞくと背筋を駆け上がるものにウタは困惑した。困惑しながらも、それに身を任せた。
「直接、触っていいか?」
「……うん」
不意に顔を上げた幼なじみの言葉に、こきゅ、と喉を鳴らしながら頷く。ライブ衣装としてウタが選んだのは白いノースリーブワンピースだ。直接、となれば脱いでしまわなくてはならない。
右手を胸から離さずに裾の布地を巻き取るように弄る様子を見るに、ルフィもその事を理解しているらしい。
ベッドの上で半歩分程度距離を離し、おずおずとワンピースを脱ぐ。ウタ本人からすれば恥ずかしさからの行為なのだが、ゆっくりと脱衣をする様はまるで焦らしているようで、布ズレの音にまぎれてルフィの喉が大きな水音を立てた。
――おっぱい、触りたいんだから……ブラも、脱いだほうがいい……よね?
「…………」
下着だけという状態が心許なくて目を伏せてブラを外す。そのせいでバックホックを外すときに背を反らせて胸を見せつける形になっていることにも、獲物を仕留めるチャンスを今か今かと待ち構えている肉食獣のような目をしている幼なじみにも気づかない。
ぷちり、と小さな音とともに肌に密着していたブラが緩み、二つの柔肉がまろび出る。綺麗な薄紅色の突起が一瞬ルフィの視界に入り、すぐにウタの手によって隠されてしまった。
「ど、どうかな――きゃっ」
しかし、局部だけを手で隠すという行為が余計にその姿を扇情的なものにしていた。
沸騰しそうなほど沸き立つリビドーに性に慣れていないルフィが耐えられるはずもなく、ウタを押し倒す。
ベッドのスプリングが二人分の体重を受けて沈み込み、ギシリと音を立てる。先端部分を結われただけの長い紅白の髪が広がる。
「――綺麗だ」
「……バカ」
率直な感想が余計に羞恥を誘う。それでも褒められたことが嬉しくて口元が緩んだ。両手は手ブラでふさがってしまっているから、その表情はルフィに丸見え。嫌がっていないことが気配だけでなく視覚でもわかって、ルフィの頬も緩む。
「ウタ」
「ぁ……」
胸を隠している手にルフィのそれが這わせられる。それの意味するところを理解して、少しの沈黙の後に小さく首を縦に動かす。
そろりと手が外れ、桃色の乳首が二つ顔を出す。胸の成長に対して幾分慎ましやかなサイズだが、ルフィの責めに反応したのか、ぷくりと固く起立している。
「ぁんっ、こ、こらぁ……ぁ、ぁっ、あっ――あそ、ばないでよ……」
「でもよ、こうすると気持ちいいんだろ?」
「んぁ――っ」
その膨らみを、まるで初めて見た生き物を恐る恐る触るように指先でツンツンとつつかれ、甘い声が漏れる。抗議の声を上げるが、ウタの内心を読み切っているルフィには大した効果もなく、図星を突かれた上に優しく乳首を摘まれ、はぐらかされてしまう。
「ん、ぁ……んんっ、フ、ぅ……ゃあ」
羞恥心は確実にあるはずなのに、触られる度にそれを快感へと書き換わっていく。ルフィのことしか考えられなくなる。
「ルフィ……」
「ん?」
「もっと……もっと……して?」
やめてほしく、なくなる。
くにくにと快楽に弱い突起を虐められるだけでは満足できなくなる。
「じゃあ……さっきは右だけだったから……」
「あひゃっ、ん……うん、耳も、もっと虐めて……はァ、く、んん――ッ」
ウタのおねだりに、少し思案の表情を見せたルフィは顔を近づけ、ウタの左耳にふっと息を吹きかける。ビクリと肩を跳ねさせたウタはおずおずと両腕を幼なじみの首に絡めた。
それは、これからやろうとしていることを受け入れたサイン。
もうさっきのような怖さはない。不安はない。自分がどうなったとしても、二人が離れることはないと分かっているから。
「れ、ぺろ、はむ……ちゅ、ちゅるるっ、ん、ウタ……ふ、ぬろおォ……」
「ん、ぁあっ、ゥ……ふ、ひぅっ、ク――ん……これ、はげし……っ」
まあ、彼女にとって誤算があったとすれば、そんな全幅の信頼を表す行為が性行為に疎いルフィの官能を大いに刺激したことと、胸と耳を同時に責められることによる快感の相乗効果を考えていなかったこと。
「じゅる、ちゅぷ、ぁ……、れる、フ、はぷ、ぁむんれぇ――」
「るふぃ、るふぃ……っ! ふあっ、ぁっ、んんっ……!」
その快感を身体が、心が受け入れてしまったことだろう。
乳首を優しく弄っていた手はいつの間にか胸全体を包み込んでいる。勝手がわかってきたのか絶妙な力加減で柔肉を揉みしだかれる度に手のひらで乳首が擦れ、二つの違う快感が広がっていく。
耳への責めも先程より容赦がない。耳ごと食べてしまうのではないかと錯覚するほどに耳介を舐め回し、甘噛みし、穴を蹂躙する。止むことのない水音がウタの脳を埋め尽くす。幾多の音楽を聞いてきたウタの鼓膜を海賊が独占する。
それは、ルフィの声もまた、ウタが独占しているというわけで。
「ちう、ちゅ、れぇぇ……ウタ、すき、だぞ……」
「っ!! わたし、も――っ、すき……好きだよ、ルフィっ」
耳そのもので伝えられる愛の言葉にウタは目を見開く。禄に焦点の合わない視界に火花が散り、快感とは明らかに違う喜びが全身を満たす。
幸福の海で溺れながら、同じように愛を言葉にして伝える。
「――――」
快楽と愛情に溺れている歌姫は気づかない。その言葉が、余計にルフィを燃え上がらせることに。
胸を弄るのは右手、耳を虐めるのは口。……左手がまだフリーだということに。
「ひゃんっ!? るふぃっ、おしり……んんっ、あぁっ」
「ウタが悪いんだからな?」
下着越しに臀部を擦られ、一層ウタの声が跳ねる。ひとしきり柔らかさを楽しむように五指を動かしたルフィはその手をするりとショーツの中に滑り込ませた。
「ルフィっ、そこ、汚いから――」
「? ウタ綺麗好きじゃんか。汚えわけねえだろ」
「そ、そうじゃなくって――ひぅんっ」
尻の半分を余裕で掴めるほど大きくなって手。その指が割れ目に入り込み、流石に羞恥が打ち勝ったウタが声を上げるが、ルフィにその意図が伝わらない。
正直これは仕方がないことかもしれない。ウタにとってそうであるように、ルフィにとってもフーシャ村でのウタとの生活は大切な思い出だ。突然の別れという辛い記憶を忘れるためにその記憶を美化してしまうのは、モンキー・D・ルフィという男の性質からして当然と言える。
そんな美化された記憶の大切な女の子に汚い部分など、例えそれが排泄に用いる穴の近くだろうとない。彼は本気でそう考えているのだ。
故に制止の言葉は届かない。むしろそんな反応すら自分を誘っているポーズに見え、内心「これがサンジの言ってた女のダメは本当はいいってやつか」などと考えたりしていた。
……まあ、実際羞恥心こそあれ、本当に嫌なわけではないのだが。
「んーっ! はあ……っ、ゃ、ぇあ……っ」
「れりゅ、ちゅ、ちゅる……気持ちいいんだな」
「き、聞かないでっ」
尻の割れ目をすりすりと指が這いずる。上へ下へと滑る度、菊門の皺を指先がかすめる度にくすぐったさに近い快楽電流が流れた。
「ぁっ、ぅ……はうっ、んン……ふ、ふぅ――っ」
そんな曖昧な感覚が尻肉を揉みしだかれる度、割れ目を広げるように指圧される度、臀部の輪郭を詳細に把握しようと指を滑らせられる度に明確なものになっていく。明確な“それ”が全身に広がっていき、じわりとお腹の奥に熱を帯びさせる。
――これ、言い訳できない……!
一緒に耳を舐められているからとか、胸を触られているからとか関係なく。
ウタはお尻で感じていることを認めざるを得なかった。
とはいえ、ルフィと同じように記憶が美化されていたのは彼女も同じ。弟のように思っていた存在にそんな恥ずかしい申告をすることは――例え相手が未知の手段でわかっていたとしても――できないわけで。
かと言って胸の内に秘めたままでは頭がおかしくなってしまいそうで。
「ぁぁ、くぅ……へぁっ、ぅ、ぅう……る、るふぃ……!」
「ぅお!?」
快感を発散させるようにルフィの首に回した腕に力を込めた。
二人の身体がより密着する。ウタの胸はルフィの右手ごと彼の胸板に押し潰され横に柔らかく広がった。
そして、二人の距離が縮まったことで、ルフィの手が届く範囲も広がり――
「ぁあっ!?」
尻から潜り込んだ指がぬかるみに沈み込んだ。自分の声に混じって聞こえたかすかな水音に吐き出そうとした空気の半分ほどを飲み込む。
「濡れてる……」
「だ、だって……っ」
抗議の声は少し指を動かされただけで掻き消える。くぷりと粘度の高い音が鼓膜を震わせて、何も言えなくなってしまう。
「ん、ひぁっ、ぁっあぁっ、くぅ――ン……」
「すげえ狭い。ぬるぬるしてるのに、めちゃくちゃ締め付けてくる」
女陰の浅いところで指を動かされるだけで、ウタの視界に何度も火花が散る。
指一本。たった指一本でいいように喘がされてしまう状況に困惑する暇もない。溢れ出る声を抑える余裕もない。
「やァ……んっ」
「……ここがいいんだな」
半分ほど埋まった中指が腟内をまさぐるうちのお腹側のざらついた壁を擦り上げ、一際大きい声がウタから飛び出る。反応の変化に気づいたルフィはその部分を刺激しやすいように挿入する指を親指に変え、優しくぬるつく肉の壁を虐め始めた。
「ふぁ、ん、ひぃっ……ン、ぁ、ぁぁぁ……ゥ、おっ、ぅぁ――」
否、特に弱い部分ばかりを重点的に刺激する行為は決して優しいと表現するべきではないだろう。ただでさえ先程までより太い指が入った膣内、その弱点のひとつとも言えるGスポットを何度も何度もしつこくイジられて、ウタは酸素を求めるように口をパクパクさせながら止めることのできない喘ぎ声を発することしかできない。
「にゃっ!? むね、も、なんて……っ、ひぐ、は、んんっ!」
さらに一時の間止まっていた胸への愛撫も再開されたのだから、ただでさえこの手の刺激に不慣れなウタには先程の三点責め以上の刺激となっていた。
自分の意思に反して腰が勝手に浮き上がる。お腹の奥から快感の波が外に出ようとしている感覚に抗えない。
「ウタ……」
「るふぃ……ん、ちゅ、んれぇ、はぷ……ちゅ、ちぅ……」
絶頂というものをよく知らないルフィでもウタが限界なことを察したのだろう。ふっと目を細め、その唇を奪う。ウタがそれを拒絶するはずもなく、どちらからともなく舌を絡め始める。味蕾同士が擦れあう刺激が全身を駆け巡る快感を乗算させる。
絶頂から逃れようとするようにもじもじと脚を動かすことも、耐えようとするようにルフィの首に回した腕に力を込めることもまるで意味をなさず――
「ぴちゅ、ぁっ、ふぁっ、ン、んん~~~~――――ッ」
幼なじみの腕の中で、ウタは果ててしまった。電流が流れたように身体が何度も跳ね、一瞬の硬直を経て脱力する。かろうじて腕だけは引っ掛けるような形で離さないながらも、その身体をくた、とマットレスに沈み込ませた。
自身が認識している中で初めての絶頂。未だ意識がふわふわする中、その事実を漠然と理解して、それが幼なじみから与えられたものだと実感して、不思議とウタの頬を緩んだ。
そんなウタを刺激しないようにそっと膣から指を引き抜いたルフィは、右の手でそっとその頬を撫ぜる。柔肌に優しく触れる手のひらを、未だ呼吸の荒い歌姫は自分を押し付けるようにして堪能する。
「ん……」
ぼーっと眺めていた幼なじみの顔が妙に愛おしく感じて、不意をつくように口づけをしてみた。先程まで散々舌を絡めていた後のソフトなキスは逆に新鮮で、快感とは違う熱が広がるのを感じて、目尻が和らぐ。
「ウタって」
「?」
「ちゅー好きなんだな」
「ちゅーってあんた……」
思わずそれまでの雰囲気も無視して呆れた声がウタから出てしまうが、仕方のないことだろう。十九の青年がキスのことを「ちゅー」と表現するのはいくらなんでもあざとすぎる。
――まあ、ルフィだし仕方ないか。
なお、呆れつつもそういう部分があるのはウタからするとドストライクなので、むしろ評価ポイントだったり。
自分の中で余計にルフィが好きになっていることにウタが気づくことはなく、うなじをくすぐるように撫でながらふっと笑みを浮かべる。
「うん。好きだよ。ルフィとだから、ね。ルフィは?」
「俺か? ニシシ、俺もウタとちゅーするの好きだ」
どちらからともなく小さく笑い、また軽く唇を触れ合わせる。互いにキスをする度に愛しさが溢れ出してきて、二度三度と繰り返す。
――あれ?
そうして身体から絶頂の余韻が引いてきた頃、ウタは小さな違和感を覚えた。
ベッドの上で互いに抱き合う形になっているため、二人の上半身は密着している。しかし、なぜか上半身の密着具合に反して下半身は一切触れ合っていないのだ。
正確には、ルフィの方が距離を取っていた。
だいぶ無理のある体勢になっているであろう幼なじみに首を傾げつつ視線を下に向けて――
「あ……」
「ん? あっ、これは……!」
思わず小さく声を漏らす。ウタの視線に気づいたルフィは慌てるが、抱き合っている状況で逃げ場などない。
ライブに参加するために買ったのだろうか、真新しいゆったりとしたハーフパンツ。
その股ぐらの部分が、不自然に盛り上がっていた。
「ルフィも……興奮してるんだね」
「…………」
さすがに恥ずかしいのか、ルフィは目線を明後日の方向に投げるだけでなにも言わない。だが、その反応が既に答えになっていた。
そんな幼なじみを見て、ようやく引いてきていた熱がまたじわりと広がり始める。
しかし、当のルフィは顔をそむけたまま動こうとしない。ルフィのように心情を読み取る術を持たないウタでもわかるほどに興奮しているはずなのに、それをウタにぶつけようとしてこない。
なぜ、と考えて、ウタはこの行為の意図を思い出した。
相手を好いての行為であると同時に、相手の中にある罪悪感を上書きするための行為。そこでルフィ本人が快楽を得るのは違うと、目の前の最愛の人は考えているのだろう。
――しょうがないやつ。
正直言えば、もうウタの中で逃げるという考えはほとんどなくなっている。ルフィと一緒にいたい。一緒に新時代を作りたい。それを成すには逃げてはいけないと考えている。
そして同時に、幼なじみと一つになりたいとも思っている。
だから、少しだけずるい手を使うことにした。
首に回していた腕を背中に回して、一度その胸に顔を埋める。相当鍛えたであろう胸板の感触に一瞬ずっとこうしていたい、などと考えつつ、上目遣いで相手を見つめる。
「ねえ、ルフィ。私、まだ不安なの」
「え」
「こんなバカなことしちゃった私が現実に残っていいのかって不安だし、まだそんな現実から逃げたいって思ってる」
すべてが嘘というわけではない。罪悪感が完全に消えることはないだろうし、それはずっとウタ自身が背負うべき罪だろう。
それを和らげることができるのは、受け止めてくれるのは、目の前の男だけなのだ。
「だから――もっとルフィで満たして? 私に、現実に残る理由を刻んで?」
そんな歌姫からのおねだりに、大海賊の喉がなる。まるで力加減に気を使っているような緩慢な動きでウタの肩にその手を乗せると、ベッドに横になっている彼女に馬乗りになった。