バカと恋と友情~もう一つの現実ともう一つの恋 作:ハラミハラ
書き始めてもう一年以上。ここまでやってこれたのも登録や感想を言って頂いた皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!!
至らない点が多々ありますが(ほとんどなんて聞こえない)これからもよろしくお願いします。
感想、ご意見があればお願いします。
優子にはなんてお礼を言ったらいいのだろうか。さっきの会話で何度も涙を流しそうになった。だから、それに報いるためにも
「美波」
「なに...?」
優子の言葉を受けてからほとんど硬直していた彼女に話しかける。
「美波!本当にごめん!!美波の気持を知っておきながら、僕はそれを踏みにじった....」
「今さら、なんなのよ....」
「今の僕が何を言っても言い訳にしかならない。だから...」
彼女には誠心誠意の謝罪をしなければならない。けど言葉を発するほど、それは言い訳になる。だったら僕にはこれしかない!
「ちょ、アンタなにしてっ」
「僕を好きなだけ殴ってください!!」
我ながらバカだと思う。セリフはないよね、しかも土下座しながらなんて。
「.....ウチをバカにしてるの?そんなので」
「わかってる!!この程度で許されて言い訳がない!だから煮るなり焼くなり好きにして---」
「アキ、立ちなさい」
「...え?」
頭にハテナが浮かんでるけど、言われたとおり立つ。次の瞬間、重たい衝撃が僕を襲った。
「がっ!?」
美波の拳だった。
「ふざけないでよ....。ウチが今までどんな気持ちだったか何も、何も知らないくせにー!!」
ゴッゴッと周囲に音が響いていく。今までのどんな攻撃より重たい。でも痛くない...
「瑞希なら!まだ!我慢もできた!!諦めることもできた!!!」
悲痛な叫びと一緒に繰り出される拳。でもこんなのは、美波の痛みに比べれば....痛くもかゆくもない。
「なんで他の女なんかとー!!!」
バキィ!!と顎から盛大な音と共に二人とも崩れ落ちた。一体どのくらいの時間、殴られていたのだろうか。長くて長くて短い時間だった気がする。
「ハァ、ハァ......」
「....」
「アンタ、さっき告白されたときなんて答えるつもりだったの...?」
「まだわからない、かな...」
「そう」
それだけ聞くと美波は立ち上がり去ろうとする。
「美波!」
「もう、ワタシに近づかないで。アンタとは絶交よ。どこで誰と何をしようがワタシにには関係ない。......たまには瑞希に連絡ぐらいしてあげなさい」
「....ごめん、美波」
「What a shit man you are」
懐かしい言葉を最後に彼女はその場から姿を消した。
僕はそのまま仰向けになって空を見ながら考えていた。これでよかったのか?もっと平和的な解決があったかもしれない。でも、もう彼女は僕を許してくれることはない。だから、僕を忘れるきっかけにでもなればいい。それに最後のセリフと『ワタシ』に戻った一人称は僕との決別なんだと思う。
「人に謝るのって、難しいなあ」
つぶやくと、雨が降ってきた。ものすごい勢いで。このタイミングでゲリラ豪雨はないでしょ...。神様どんだけ僕のこと嫌いなの?また風邪ひいたら優子、心配するかなあ。ん?雨が止まった?違う、傘だ。
「よ、明久」
「....なんで雄二がいるの?」
「ワシもおるぞ」
「.......同じく」
いきなり現れた三人を見てしばらく言葉を失う。
「お主の言いたいことはわかるぞ。ワシらは島田が来るのを知ってての、ずっと隠れて見ておったのじゃ」
「なにそれ...」
「......立てるか?明久」
ムッツリーニの差し出した手を使って何とか起き上がる。
「うわ、こりゃまたずいぶん派手にやったもんだな。一年のとき、俺が殴った時よりひどくないか?」
「これくらい、なんともないよ」
「大変だったのう」
「......おつかれ」
こいつらときたら全く、わざわざウソなんてついて見守ってくれてるなんて。
「おせっかいだなぁ」
「なに言ってんだ明久」
『親友だろ』...じゃろ?」
秀吉が遅れて付け足したのに思わず吹きそうになる。本当にバカな友達を持ったもんだよ。
「....ありがとう」
三人はどういたしましてと、目で頷く。もう、今朝食べた味噌汁が目から出てきそうになるじゃないか。あ、今朝の記憶ないんだった。
「明久君!!」
少し遠くで僕を呼ぶ声がした。
よく見れば、優子だ...なんか、すごく濡れていらっしゃるんですが。
「って!優子傘は!?」
僕の声が聞こえてないのか、まっすぐこっちに走ってくる。......ちょ、そんなに勢いじゃっ
「ぐふぅ!?」
言うまでもなく腹にドス!と優子が飛び込んだ。ここにきて身体中の痛みがっ
「ゆ、ゆう.....」
離れるように言おうとしたけど、やめた。震えてる......。
「じゃあ俺らは帰るわ」
「うん、ありがとう三人とも」
「あとは二人でごゆっくり、なのじゃ」
「......明久」
「ん?なに、ムッツリーニ?」
優子がおなかにくっついてる状態で話してるけど、なんかすごくやりづらい......
「......このことは明日クラスにばらしておく」
「それだけはやめて!!」
「......フ」
「なにその鼻笑いは!?おーい!!」
アカン、三人とも行ってもうたで......。ちょ、これやばいんとちゃうか?ワシ、明日ホンマ、えらいことなるんとちゃうか?
「まあ、いいか」
グロテスクなんて今更だ。それに、そろそろ優子を何とかしないと、髪のいい匂いとか体のごく一部の柔らかさとか......あとこんな雨だからいろいろ透けてるしでいつ理性が飛ぶか分かったものじゃない。
「えと、優子?....おーい、優子さーん?」
返事がない。ただのしかばね.....じゃない、きれいな人形のようだ。屍を思う寸前ピクッと優子が動いた。なんで口頭はスルーでこっちは反応するんだろ?僕の思考リアルタイムで伝わってるんだろうか?
「そんなわけないでしょ」
「伝わってる!?」
僕の胸に埋まっていた顔がようやく動く。
「ねぇ、明久君」
「は、はい......?」
今さらだけど、この状況はかなりロマンチックな状況だと思う。雨の中、女の子が自分に飛びついて数分、しかもさっき告白されたばかり。その張本人の彼女から出る最初の言葉は......?だめだ、いま心臓が鳴るとくっ付いてる優子に完全にバレる!
「傘は?」
「...........」
心臓の高鳴りゲージがキュウーンと音を立てて萎んでいく。
「ええと、雄二が持って帰りました」
ごめんね雄二。さっきあんなに良くしてくれたのに。でもね、僕にも言い分はあると思うんだ。さっきあいつが持っていた傘は折り畳み式。それだけならよかった。けど実は、ムッツリーニに流されて言えなかったど......あいつの左手には間違いなく、僕が不登校になる前に置いてた傘があった。
「お前らこの雨の中何をしとる!??」
声の先には鉄人がいた。やばい、この状況はいろいろとやばい!優子も驚いてすぐに離れる。
「吉井、どういうことか説明してもらおうか?」
「え、え~と、それは......」
「西村先生、これは違うんです!」
「ほう、何が違うと言うんだ?木下」
「優子?」
僕が何も言わないでいると優子が語り始めた。
「吉井君はその、さっきまで錯乱していて!それで......いろんなところに体をぶつけていたので止めました!以上です!!」
流石にそれは厳しんじゃないだろうか。ていうか錯乱って。鉄人も疑いの眼差しをして......
「なるほど、それは仕方がないな」
信じた!?
「そういえばさっき、保健室の先生がカギを閉め忘れたそうでな、まだ開いていているから使っていいぞ。体操服の予備もあるから着替えるといい。使い終わったら閉めずにそのまま帰るように。体操服は後日洗って返せ。傷の手当もしてやるといい」
「はい、ありがとうございます」
な、なにこれ?鉄人がこんなにやさしいなんて.....優子の優等生パワーなのか?
「じゃあ、俺はこれから出張だからな。......吉井、変な気を起こすんじゃないぞ」
あ、よかった。僕は全く信用されてないや。鉄人は急いでいたのか駆け足で帰っていった。隣で優子がヘクチッと可愛いくしゃみをしていた。優子まで風邪引いたらさすがにまずいな。
「じゃあとりあえずそっち行こうか?」
「......へ、変なことしないでしょうね?」
「し、しないよ!たぶん」
「たぶん!?」
なぜか僕らは妙に和やかな雰囲気だった。優子やみんなのおかげ、というやつだろうか。
明久君はまたも強引に立ち直ります...