バカと恋と友情~もう一つの現実ともう一つの恋 作:ハラミハラ
今回はやっと使いたかったキャラが出せました!
どうぞ見てやってください。m(__)m
二年Aクラス教室―――――――――
「さて、お前らも知っているとは思うが今の状況はかなり苦しい」
さっきまで混戦していた空間で教卓に立っている雄二が重々しく告げる。
その言葉を聴くみんなの表情もつられて重さを帯びてしまう。
「B、Cクラス代表の謀反で俺たち二年の戦力は半分削られてしまった。この状況は何とかしなければいけない。できない時は......負ける時だ。みんな、苦しくて辛いかもしれないが、ここが正念場だ。......どうか力を貸してほしい」
『..........』
頭を下げる雄二に皆は目を伏せて何も答えられない。
それも仕方ないことだろう。僕だってこんな状態の教室なんて今すぐ抜け出してしまいたい。
「さ、さあみんな!もうやるしかないんだから頑張ろう!」
優子が手を叩き、鼓舞するように声をかけるが、大半は表情すら動かない。僕もその中の一人だ。
でも、そんな中に僕にとっては光と呼べるのかどうか分からない粒子が教室に入ってきたのはきっとなにか意味があったのだろう。
「うわ、なにこのしんみりした教室。他のクラスには誰もいないし、どうなってんの?」
「.....み、な、み?」
その粒子は以前と変わらないポニーテールと勝気な目を作って僕たちの前に現れた。
「坂本、今どうなってんの?」
「し、島田、お前.....」
「なによ。ワタシはここにいちゃいけないって?」
「あ、いや」
「あんたたちもなに暗い顔してるの!他のクラスは仕方ないにしても、これだけしか取り柄のない馬鹿どもでしょうが!ちょっとは根性見せなさい!!」
突然教室に入ってきた美波に一括されて、みんなは唖然とする。雄二や秀吉でさえ口を大きく開いて呆けた顔をしている。
『そ、そうだな......。こんな状況今までいくらでもあったじゃないか』
『だな。こんなとこで諦めるなんて俺たちらしくない、か』
『うし!女子にここまで言われたんだ!やるぞお前ら!!』
『『『おおおおお』』』
Fクラスの面々が息を吹き返したように声を高々と上げる。
ただ復活したのはFクラスだけではなかった。
『ね、ねえ。Fクラスがあれだけやる気なら.....』
『そうだな、俺たちが戦意喪失ってのもカッコ悪いよな』
『最低のゴミ溜めのクソみたいなザコクラスがやる気出してるんだもんな』
誰だ良いセリフに見せかけてすごい貶し方した奴は。
Fクラスの士気が伝わったのかポツポツと言葉を出し始める他クラスの生徒たち。
そこで待ってましたと言わんばかりに雄二が再び壇上に上がる。
「お前ら!やる気は出たか!?」
『『『おう!』』』
「もうFクラスだとかAクラスだとか関係ねえ!二年全員で三年をぶっ倒すぞ!!」
『『『うおおおおおおお!!!』』』
雄二の雄たけびに女子も男子も関係なくみんなが声を天井に突き刺す。
さっきまでやる気すら失いそうになっていた人たちの声が今度は教室を振動させるほどに至る。人って分からないなあ。
さっきからすまし顔で壁にもたれているポニーテールの少女も分からないや。
「......あの、美波」
何か、何か彼女に言わなければ。そんな思いで彼女の元に足を運ぶ。
「なに?」
そっぽを向いたまま彼女の目はこちらにない。
「いや、その......」
どうしよう、何か言おうとしても頭も口も全く回ってくれない。
「言っとくけど、許した訳じゃないから」
「え?」
「他のみんなが頑張ってるのにワタシだけが引きこもってるのが性に合わないだけだったから」
彼女はこっちを見ずに淡々と答える。
声にも若干の怒りが感じられるので嘘ではないのだろう。僕も許してくれるなんて思っていない。でも、でも――――――
「......ぶはっ!」
「なに笑ってんの!?もしかしてこの前のやつで目覚めちゃったり......」
さっきまで険悪な表情だった美波が心配そうな表情を浮かべる。
そりゃ今の関係で急に笑い出したりしたらびっくりもするだろう。でも僕の言い分も聞いてもらいたい。
「だって、だって美波、さっきからすごく真っ赤なんだもん.....あははは!」
「~っ!!」
バッと咄嗟に顔を隠す美波。
さっきのが恥ずかしかったのか、今話している状況が恥ずかしいのかは分からないけれど、声と表情が確実に違っていることが伝わってくる。おかしくて仕方ない。
どうしよう、彼女に対して色々罪悪感とか変な覚悟とかいろいろなものがガラガラと音を立てて崩れていく。
「ねえ、美波」
僕が色々な想いで作った覚悟の大半は崩れてしまった。
けれど、その崩れ後から新しい覚悟が芽生えた。以前のモノより遥かに独善的で、身勝手で、最低な覚悟だ。
「なによ」
まだ少し赤みの残る顔で、彼女の視線はようやくこちらを向く。これを言ったら今度こそ絶好かもしれないなぁ。でも、言いたい。
「ち......」
「ち?」
「おねーさまー!!!」
はい、僕の想いは無に還りました。
「わっ!ちょ、美春!?は、離れて.....て?」
「おねーさま、おねーさま、良かった。またお会いすることができて本当にっ....」
「はいはいはい、心配かけてごめんね?」
突如美波に抱き付いて、ドリルの様な縦巻きロールを揺らしながら泣いている女の子は清水美晴さん。
この子は女の子である美波のことを好きになってしまった少し変わっている子だ。
想い方は少し歪んでいるけれど、きっと清水さんもつらい想いをしたに違いない。
「いつまでそこに突っ立ているつもりですか豚野郎。一度お姉さまから逃げた家畜が美春とお姉さまの感動の再会を邪魔しないでくださいそして死んでくださいむしろ出荷されて誰の口にも入らないままゴミ箱に入れられて燃えてください」
この子はとてもつなく男嫌いなので、口は自然ときつくなる。最近会ってなかったから忘れたけど、これが普通だよね?ね?泣いちゃうよ?
「み、美春、ワタシは大丈夫だからちょっと落ち着きなさい」
「いいえ、ダメです。こんな奴がいるからお姉さまは辛い思いをしたんです。もういっそこの場で......」
どこからともなく取り出したとても鋭利なハサミが僕に向く。
「ちょっ!清水さんそれは洒落にならないよ!?」
「あなたのしたことの方が洒落になりません!!」
吠える彼女の言葉に僕は俯いてしまう。
「あの雨の日、お姉さまとあなたのやり取りを全部見ていました。美春は必死に我慢して我慢して。それでもお姉さまが納得できる形でことが終わったなら美春は何もしないままでいるつもり、でした。しかし!!あなたはまた!お姉さまに近づく!話しかける!妙な優しさをかける!!それが本人にとってどれだけ辛いことなのかあなたはまるで理解していない!!!」
「美春、それはもう終わった話だから....」
「終わってません!この男が消えるまで終わりません!」
まるで番犬のように吠え、唸る清水さん。
こうなってしまってはきっと僕の声なんて届きはしないだろう。
「美波、また後でね」
そう言い残して彼女たちに背を向けると雄二が立っていた。
「いいのか?明久」
「うん、僕の話はいつでもできるからね」
雄二が何かを訴えるような目で僕をじっと見る。
「まあお前がそう言うなら構わんが」
「明久君、無理してない?」
僕らのやり取りを見ていたのだろう優子がこちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫だよ。それより今は戦争だ」
「ほお?ようやく本領発揮か」
「ヒーローは遅れて、でしょ?」
「そうだな。ヒーローにしてはいささか貧弱だがな」
そんなことないやい。
「......それで作戦は?」
いつの間にか雄二の後ろに立っていた霧島さんがポツリと促す。
僕らの作戦は結果的には相手の逆手を取れたけど、そこから巻き返されている。
これはその上を行く作戦で相手を遥かに上回ることが必要不可欠だ。
「ああ、いい作戦があるぞ」
雄二はニヤリとした口から作戦が告げられる。
女の子の機微は分かりません。