バカと恋と友情~もう一つの現実ともう一つの恋 作:ハラミハラ
さて、本編もいよいよクライマックスが近づいて参りました。が、ここからあと何話書くかは定まっていないので今しばらくお付き合いください。
それではまた次話お会いしましょう!
――――――三年Aクラス
「さて、これからどうするのですか高城君」
三年生で随一の天才にして随一のバカに葵小暮が話しかける。
「そうですね、伏兵として二年のB、Cクラスを買収していたのが予想外の方向に動いてしまいましたからね」
「予想外?あれは高城君が命じたことなのでは?」
小暮は頭にハテナを浮かべる。
(と、するとあれは彼らが自発的にしたということ?)
「裏切りの裏切りですか。まあ、結果的には良かったではありませんか。相手の戦力は二クラスも、それもAクラスを除いては強い方なのですから」
そう、戦力的にはこちらが圧倒的に有利。まさに勝利の女神が今三年側に微笑みかけている。
「葵小暮嬢。あなたというものが珍しい」
「何がです?」
「私が声をかけたクラスはB、Cクラスのみ。二年を内側から崩す計画が大きく狂ってしまいました」
淡々と話す高城の言葉に小暮はハテナを消しきれない。
二年が二クラス分も戦力ダウンしたのだ。こちらの思惑が外れたのは少し痛いが戦況はこちらに有利に傾いた。 それの何がいけないというのか。
「おいおい、さっきからなんの話だよ?」
坊主頭の同級生が自分も入れろと言わんばかりに会話に入ってくる。
.......名前なんだっけ。
「これからの作戦ですよ」
「そんなもん簡単だ。俺が全員ぶっ飛ばしてやるよ」
「はぁ、あなたはAクラスなのにお猿さんですか。それをやるなら私の方が美しくやれますよ」
どっちも猿だ。と小暮は心の中でツッコむ。
「で、実際はどうするつもりなんですか?」
「正面突撃です」
こいつはもう天才ではなくなってしまったのか......。
「高城....さすがにそれは」
「ま、待ってください。ちゃんと考えがありますよ!まずA、Bクラスで二人一組のチームを作ります。そして弱い方の戦力を削っていき、こちらの陣形を拡大させます」
「それって割と普通の作戦じゃないのか?」
「これだけだとそうですね。なので私は彼らの真似をしようかと思います」
「真似とは?」
「以前、二年FクラスがBクラスに勝った時の手法です」
まさかこいつは停学になりたいのだろうか。
「高城君、私はもう進学先を見つけているので問題は起こしたくないのですが」
「誰が壁を破壊するなどと言いましたか。真似するのは窓から入るところです」
Fクラス対Bクラスの戦争は一時期校内でも話題になったので小暮もそのことはすぐに察しがついた。
「最悪、窓を割るだけなら弁償で済む。ということですね」
「はい」
この笑顔で返事をする男はとうとう壊れてしまったのだろうか。いったい倫理観をどこで落としてきたのか。
「あ、それでさっきの珍しいとは?」
「ああ、そのことですか」
『報告!!二年が一斉に攻めてきた!』
「バカに火をつけると恐ろしいということです」
二年side
「深追いはするでない!常に三人で一人を狙うのじゃ!」
「「おう!
『 2-F 近藤 渡
2-F 山本 健 VS 3-A 山本 悟
2-F 溝口 歩
歴史
58点
32点 395点
65点 』
「「「ぎゃああ―――」」」
「全員Fクラスでも意味がないじゃろう!?」
『三年Dクラス代表打ち取ったぞー!!』
秀吉がツッコんでいる間に戦況は動いていた。
「ナイスじゃ!みんなもう一息じゃ!このまま防御を固めるぞい!」
「そう好き勝手やらせるかよ!」
「!?」
足元にいた秀吉の召喚獣に突如攻撃が入る。
寸前でかわし、声のした方向を見てみると......。
「おい、ちょっとまて。俺の顔見ただけで泣きそうになるのはやめてくれ.....」
立っていたのは常夏コンビの常の方だった。
過去にお化け屋敷でこの男に告白された秀吉は反射的にトラウマを思い出す。
「い、嫌じゃ、もう嫌じゃ、許してくれ.....」
「おれなんもしてないんだけど!?ま、まあ怯えているお前もなかなかそそられるものがあるな.....」
プツンッ
常村の弁明どころか火に油な言葉がトリガーになったのか、秀吉の中で何かが切れる。
「ああああああああ!」
「な、なんだどうしたんだ!?」
日本刀を持った秀吉の召喚獣がまっすぐに走る。
「木下が壊れた!?」
『 2-F木下秀吉 VS 3-A常村勇作 歴史 380点 VS 320点 』
「おいおい、なんだよこの点数.....!」
「おお、木下弟がなんかすげえぞ!」
「いいぞー!やっちまえー!」
「くっ!この、くそ、があ!」
縦、横、下、斜めと無尽に繰り出される連撃にしびれを切らした薙刀は無防備になった刀を持つ召喚獣の横腹を捉える。
「ぐっ」
『 歴史 木下秀吉 150点』
ガードが間に合わなかった召喚獣の点数は大きく削られてしまう。
「お、おい。あれ援護に入った方がいいんじゃないのか?」
「無茶言うな!あんな激しい戦い俺には無理だ!お前行けよ!」
「俺も無理だ!」
「「「じゃあ言うなよ」」」
(くっ、このまま押し切りたかったのじゃが......)
あたりを見回すと皆、見てはいるものの加勢する気はないようだ。
(まあ、周りはFクラスばかりだから仕方ないのぉ。.....点数は二百点くらい空いてしもうたが、諦める理由にはならんな)
構え直された日本刀はチャキッと音を立てる。
「......まだやるってのか。もういいだろう、ほとんど勝負はついている。降参しろ」
「ふざけるな!まだ、まだ友達が戦っておるというのにどうしてワシだけが負けを認めれるのじゃ!!」
ビリビリと響く秀吉の声は空気ではない別の何かを震わせる。
「構えろ!お主の存在ごと叩き切ってやるわ!!」
「ふ、それでこそ俺の惚れた「舌も切ってやる!」それ死ぬからな!?」
互いの召喚獣は獲物を構えて睨み合う。
たった数秒が永遠に感じられるような張りつめた緊張感が漂う。
そして――――――――
「「勝負!」」
二体の召喚獣は勢いよく走りだした。
――――――二年Aクラス
「また全面突撃なんて無謀な作戦だね雄二」
「一種の賭けだったが、上手くいったろ?向こうも同じ作戦できた」
「でもそれだとこっちが不利のままだよ?」
「このまま、だとまあジリ貧だな。でもそうはならないさ」
「どうして?」
「......向こうは作戦を見破られたと思っている」
雄二と話しているとまたも影から現れる霧島さん。
「そういうことだ。そして高すぎた鼻が折れると急に人は焦りだす」
「ごめん、最初から」
「おお、話についてこれない明久は久しぶりだな」
どこか雄二が安心した表情をする。
失敬だな。否定できないけど。
「つまりだなB、Cクラスの裏切り。あれの真意は知らんが高城の表情を見た限りあれは予定して行われたものじゃなかった。しかもムッツリーニの情報によれば、裏切り者はその二クラスしかいないときた。俺たちもかなり驚いたが、向こうはそれを確認する余裕はなかったみたいだな」
「つまりあれは裏切りじゃなかった?」
「さっきも言ったが事実は本人たちしか知らない。だが、向こうはそう思うだろう」
雄二は黙々と説明を続ける。
「ん?それがわかってるならどうしてあんなに暗い顔してたのさ」
「余裕をなくしたバカがどうなるか、お前が一番知っているんじゃないか」
「ああ、そういうこと」
余裕をなくしたり窮地に追い込まれたりすると見境がなくなって暴走する。経験談だ。
「あれ?そういえば優子は?」
優子は僕たちと共に霧島さんを護衛するのが役目になっている。しかしその姿はどこにも見当たらない。
「......三十分くらい前にトイレに行くって言っていた」
「遅すぎない?」
「ウン〇か?」
「.....すぐに戻るとも言ってた」
雄二の下品な発言に霧島さんは眉一つ動かさない。さすがと言うべきなのかなんなのか。
「そうじゃないとすると.....?」
背筋に冷たい感覚が走る。
まさか、そんなこと。
「断言はできないが、拉致された可能性があるな」
静かに、それでいてハッキリした声で告げられる。
「待て明久!いま無暗に行動するな!」
「止めるな雄二!優子が......優子が!」
「場所は分かっているのか?相手の戦力は?」
「そ、れは......」
雄二の言葉に言い返せず僕は押し黙る。
「すぐにムッツリーニに捜索をしてもらう。それまでお前はじっとしてろ」
「で、でも!」
『その通りです。軽率な行動は控えた方がいいでしょう』
「「!?」」
声がした方向は窓。
開け放たれている窓には一本の縄が下りていた。
そこから一人の人間が下りてくる。
憎んで憎んでも、足りないほどに憎い人間。
三年Aクラス代表、高城雅春が。
「どうも、皆さん」
「高城.....!」
「おや、先輩を呼び捨てなんて良くないですよ、坂本雄二君」
「ふん、ご自慢の伏兵があっさり看破されて今度は人の真似事か」
「ええ、これくらいしないともう貴方の裏は取れないと思いましてね。もっとも、これも読まれていたようですが」
雄二と高城が睨み合ったまま会話を続ける。
こんなところで時間を無駄にしたくないのに......!
このまま高城に勝って探す方が早いか?
「明久。三年クラスの辺りで木下がいたそうだ」
「え?」
「いまムッツリーニから連絡があった。行け」
「流石ですね、もう見つけるとは」
「ムッツリーニでも詳しい場所は分からないそうだ。総当たりしろ」
「ありがとう雄二」
礼を言って踵を返す。
雄二と霧島さんならコイツ一人くらい楽勝だろう。
「ふふっ、私のことは無視ですか。ではこういうのはどうでしょうか?葵小暮嬢、出てきてください」
教室の入り口に向かって投げられた声に応えるように、またこの空間に新しい人物が入って来る。
「くそ、二人か.....!」
悔し気に唸る雄二。二対一ならまだしも、ほぼ実力が拮抗したタッグとなるとこちらがやや不利である。
「さあどうしますか?これでも助けに行きますか?」
高城が満足げに笑みを浮かべる。殺してやりたい......!!
「そうそう、言い忘れてました。貴方がこの部屋から出た瞬間に見張りに情報が行くようにしています。その場合見張りには、好きにしていい。と伝えています」
「このクズが.....!!」
「構わん。行け、明久」
「うん。吉井行って」
「二人とも!?」
二人はこちらを見ずに言葉だけを発する。
「優子は吉井のことを待っているはず。だから、お願い」
「ありがとう.....!」
僕は教室から飛び出てひたすらに走った。全力で。
優子を危ない目には合わせない。もう誰にも悲しんでほしくない。
僕が、守らなきゃ!
「......行ったようですね。では連絡をするとしましょう」
「ほんとにクズだなアンタ」
「勝つためには必要な犠牲です」
「ほざけ、戦争が終わったら教師か警察にでも突き出してやる」
「あなたに、できますか?」
「雄二は勝つ。絶対に」
「いい関係ですわね。羨ましくなります」
「自慢の旦那」
「おい、まだ結婚してないぞ」
「そのうち、する」
「ざっくりなプロポーズありがとうよ」
「葵小暮嬢、先生を呼んできてください」
「はい」
「呼んでないのかよ」
「一緒に窓から降りてくれる先生が見つかりませんでした」
「やっぱあんたバカだろ。
「そういえばあなたは自分でフィールドを作れるのでしたね。ありがたい」
「無駄話はやめとこうぜ。行くぞ!
「「「
会話を終えた教室には魔法陣が展開され、他の者は誰も見ていないところで学園最高峰の戦いが切って落とされた。