バカと恋と友情~もう一つの現実ともう一つの恋 作:ハラミハラ
一次創作に疲れこちらに脱走してきました。
さて、最終話の後書きで冬デートのことを書くとか言ってましたが、時期が時期なので予定を変更して花火大会のお話にしました。コロナで花火大会も中止になったので創作の中で楽しんじゃおう! なんて気持ちで書きました。
今回のお話は今まで無視してきた空白行を取り入れて見ました。僕的には詰めている方が好きなのですが、割と文字が離れている方が見やすいとのお声がありましたので。
是非意見を頂戴したいところです。
話の時系列はあのまま戦争が終わり、三年になった明久達の夏休みというお話です。
正直言えば今回のお話に山谷ほとんどありません。ただ優子をみたかった。それだけで構成されております(花火なんか知らん)
なので今までとは毛色が異なり「おや?」と思う方もいるかも知れないですが、そこはハラミハラの執筆力なんだと嘲笑ください。書いてないとホントになまるんですよこれが……
では言い訳は後編の後書きにて言いましょう。言うな?言わせてお願い。
ではではさてさて、本編お楽しみ頂ければ幸いです。
「花火大会?」
「月末に県外であるのよ」
夏休みにも関わらず、教室の机に向かう僕に提案してくる美少女、木下優子。信じられないことに僕はこの子と付き合っている。今でも時々夢なんじゃないかと思う。
「そっか、行けたら行きたいね」
普段なら両手を上げて喜ぶお誘いだけど、そうはできなかった。
「行きたくないの?」
心配そうに
「行きたいよ。でもさ……」
花火大会は大好きだ。知っている町ががらりと空気を変えて、今までどこに潜んでいたか分からない屋台がたくさん並び、最後には全員が空に咲く花を仰ぐ。
しかし僕にはそうできない理由がある。
「これを月末までにできると思う?」
机には六法全書も逃げ出してしまうほど積み重ねられた紙の束がある。
これは僕が不登校になった際のカリキュラムをカバーするもの。これをやらないことには僕の留年は確定してしまう。いつものごとく脱走するなんて論外だった。
一緒の大学に行けないまでも、一緒に卒業したいのだ。
「この課題は流石に不憫じゃのう」
「あ、秀吉。休憩?」
ちなみに僕だけじゃない。他のみんなも試召戦争で遅れた授業分をこなしている。僕よりはいささか軽い課題だ。変わってほしい。
「うむ。流石に疲れたぞい」
僕が秀吉と呼んだのは優子と瓜二つの美少女。優子とは二卵性の双子であるが故に男だ。僕は未だに市役所の書類ミスを信じている。
真に女の子である優子を差し置いて、秀吉は男にモテる。モテまくる。
僕も優子と別れる様なことがあれば秀吉に……冗談は隣から殺気がきているのでやめておこう。
「まったく、この程度で情けない。アタシなら三日もかからないわよ」
「姉上は規格外なのじゃ。そもそもやっておらんではないか」
秀吉の言うとおり、優子はこの夏休みに出席しているのはFクラス。
これには多少の説明が必要だろう。
去年の暮れに三年と戦い、勝利を収めた僕たちは時間の流れに逆らうことなく進級した。
そして二度目となる、授業と教室のランクを決める振り分け試験を受けたのだが、僕たちは回答を無記入で提出し、Fクラスへと振り分けられた。
もう今の仲間以外に考えられなかった。そしてこのメンバーでまたAクラスに挑戦し、堂々と勝つ。その予定だったのだけれどーー
「まさかお前らまでFクラスにくるとはな」
「雄二、霧島さん」
説明するまでもないだろう。ツンツン頭でブサイクの坂本雄二と、容姿端麗、文武両道、完全完璧な美少女霧島翔子さんだ。
最近の彼女はさらに綺麗になってもはや美女と呼ぶのがふさわしいかもしれない。
そして僕以上に信じられないことに二人も付き合っている。
「だって、絶対こっちのほうが楽しそうだし。ね? 代表」
「……雄二とせっかく付き合えたのに、また戦うなんてイヤ」
三年との戦争は文月学園に大きな波をもたらした。犯罪行為に手を染めたAクラスへの見る目が変わってしまったのだ。それよりも楽しく、懸命に上を目指すFクラスの方がずっと健全なのではないかと。
いや絶対そんなことはないと思うんだけど。
「まーあのFクラスのまま、戦いに来られたらボクは絶対に負けてたしね」
「勝ち逃げなんて趣味が悪いぞ、工藤」
またもや僕らの話に入ってきたのはボーイッシュでスレンダーな工藤さん。すらっとした手足は健康的な日焼けに目がいってしまう。ほんとエロいからスパッツの日焼けあとは隠してほしい。
「それだけすごくなったんだよ。君たちは」
「勝ってもいないのに褒められても困るな。それに入ってきたやつもいれば抜けたやつもいるな」
雄二の言うとおり、だいたいのFクラスメンバーは残ったけど、成績を上げて実力を示した人もいた。そんな人たちはEやDクラスに上がれている。本当にすごいと思う。
「まあAクラスの上位がいきなり全員無回答だった時は先生に泣かれたけどねー」
ケラケラと笑う工藤さん。決して笑い事ではないと思う。
「先生達のボーナスが下がらないことを祈ってるよ……」
ボーナスに影響するかは知らないけど、職員会議と保護者相談会が行われたらしい。
こんな具合に去年、一緒に戦ったメンバーがFクラスに集結したのだ。
「でも島田ちゃんがいないのは少し寂しいな」
「アタシはまったくだけどね。ね? 明久くん?」
「あ、あはは……」
FクラスからDクラスに上がった数少ない生徒の中に、島田美波がいる。
彼女とはあれから付かず離れずといったよく分からない関係が続いていた。
「さ、こんな課題さっさと終わらせちゃいましょ」
そして僕らは地獄の様な課題を見事夏祭りまでに完成させた。
尊敬する人は宮崎金次郎です。
「きたぞー! 花火大会ー!!」
「愛子。浴衣が崩れるわよ」
「ではアキ君、姉さんは仕事があるので帰りにまた呼んでくださいね」
「うん、ありがとう姉さん」
花火会場まではそれなりの距離があったのだが、姉さんが車で送ってくれたのだ。
ワンボックスカーで送ってもらうなんていつかの日を思い出す。
「ちょっと懐かしいな。明久」
雄二が隣から話しかけてくる。どうやらコイツも僕と同じ感情に浸っていたようだ。
三途の川をともに切り抜けたのだ、無理もない。
「それにしても広いわね、この会場」
会場は大きな河川を両サイドに屋台や休憩所なんかがずらりと、気が遠くなるほど並んでいる。
それに加えてメンバーは僕、雄二、ムッツリーニ、秀吉、優子、霧島さん、工藤さん。と七人もいる。少し油断するとすぐにはぐれてしまいそうだ。
「それはそうと……」
「なに? 明久くん?」
「い、いやべつに!」
車に乗る前にも一度見ているけど、今の女性陣は浴衣を着ている。それが夜の景色と屋台や街灯のライトで照らされた彼女達は一層華やかに見える。
どうでもいいけど男はTシャツに短パンでサンダルだ。
「あー!吉井くんがいちゃいてるー!」
「わ、ちょ!工藤さん!?」
首に腕を回し頭を絡め取られ、ヘッドロックの形になる。
ちょうど僕の頭が工藤さんの胸の位置に行ってしまう訳だけど……なんか、変に柔らかいような……。
その状態のまま工藤さんがひそっと囁く。
(吉井クン。ここだけの話、今日……付けてないんだよね)
「「ブハッ」」
うっかり鼻血が出るけど、なんかもうひとり出血してない?
「あ、土屋君くん聞こえてた?」
「ムッツリーニー!!」
「あはは、ごめんごめん」
「じゃあボクはムッツリーニ君のお世話しとくからみんなで楽しんで来て」
ムッツリーニの肩を持って休憩所まで運んでいく工藤さん。
「……愛子、わざと」
去って行く背中を見ながらポツリと霧島さん。
「そうなの?」
「……コクリ。愛子は分かりやすい。雄二も休憩、する?」
「かわいく聞いてもダメだ。構えたチョキをしまえ翔子」
「じゃあ、私も付けてない」
「は!? ちょっばっ! お前周りに聞こえたらどうする!!」
「雄二が一番うるさいよ」
それはそうと女性陣の下着事情が気になる。
「こ、これからどうするかのう!」
「と、とりあえずなんか食べる?」
この妙に気まずい雰囲気は耐え難い。いつ霧島さんのはだけた浴衣に目が行ってしまうかわかったもんじゃない。
「そうじゃの。花火の最中に腹が減っても買いに行けそうにないからの」
「……」
このとき黙りこくっている彼女の存在に早く気づくべきだったと後になって後悔した。
「じゃあお前達なんか買ってきてくれ。俺は翔子と場所取りをしておく」
雄二がさっと申し出る。コイツは場所取りとか雑用を嫌うはずだったけど、それも仕方ない。霧島さんの顔色が良くない。
「わかった。じゃあ場所取れたら連絡して」
「おう」
ちゃんと彼氏をしているようでなによりだ。
「えらく人が減ってしまったのう」
開始から四人脱落だ。すこし寂しい。
「そうだね、秀吉なにか食べたいものある?」
「ではこの河川の列を全部奢ってもらおうかの」
「石油王にでも頼んでよ」
なんて、どうでも良いことを話しながら歩くことしばしば。
(さっきから優子がしゃべらないんだけど)
(ふむ、霧島のように体調が悪い訳ではなさそうだの)
(だよね。どうしたんだろう)
(むう、あの状態では怒っているのかそうでないのかわからんの)
と秀吉は僕とのアイコンタクトを切って鳴ってもいない携帯を開く。
「おっと、雄二が場所を決めたようじゃ! ワシは買った分を届けてくるから残りは二人で頼んだぞい!」
「あ、ちょっと秀吉ー!」
この裏切り者ー!! まだなにも買っていないくせにー!!
さて、どうしたものだろう……。
優子は俯いている訳でもなく、怒りを露わにしている訳でもない。こちらを見るわけでもなく、ただ真正面を向いている。いわゆる真顔だ。
「あの、優子?」
「なに?」
無機質な表情のまま返事だけをする優子。
よし、口は聞いてくれる。
「僕、なにかしちゃったかな……?」
ここで怒ってる? なんて聞くのは下策だ。自分が悪いと認めることを前提に話を聞き出す。これが優子との付き合いで得た怒った時の対処法だ。
これならいける!
「さあ?」
突き放された。やばい、万策尽きた。
怒っていることは間違いなさそうだ。だけど優子は理不尽に怒ったりしないから、原因はきっと僕にある。
一度僕の行動を振り返ってみよう。
昨日まで優子の様子に変化はなかった。となれば原因は今日にあるはず。
そう言えば今日車に乗ってからトイレに行く時間がなかった様な……いや、たぶんこれを言ったら別れ話に直結する。
気づかれない様に優子の様子を窺う。
短い髪が編み込まれ、それを綺麗な
浴衣も、紫のあじさいが淡く咲いて、身体の起伏がそれほど大きくないけれど、それがかえって繊細差を際立たせていた。
「……かわいい」
「へ!?」
「あ、や、ごめ! いまのはちがくて!」
やっちまったー! 口が滑ったー!
「……ちがうの?」
拗ねたように上目遣いになる優子。もうやだかわいすぎて吐きそう。
怒らせてしまっていることなんて忘れしまう。
「ちがく、ないです……。その、すごく、かわいいです」
「んー? んふふふふ」
笑みを堪えきれないのか、閉じようとした口からいろいろ漏れてしまっている。
「あ、嬉しいけど許してないから」
「えぇー……」
突然スンと戻るのやめてほしい。
「原因に気づいていないのに許せるわけないじゃない」
「ご、ごもっともです」
「ていうか本当に心当たりないんだ?」
「ごめん」
こういうときの女心は本当に分からない。だから変に知ったかぶりをするよりも素直に聞いてしまった方がよっぽど良い。
「その、教えてくれないかな? どうしてなのか」
「……はあ、もう」
優子はため息をついて、しぶしぶ教えてくれる。
「そうね、アタシが坂本君の腕にこうして絡んだりしたらどうする?」
言いながら優子は僕の腕に絡まるようにしがみつき、色々当ててくる。
たしかこの着付けをしたのは姉さんだったはずだけど、あの人、伝統とか変にこだわるからなぁ。工藤さん、ノーブラ痴女扱いしてごめんよ。
「ね? 分かったでしょ」
「うん、優子」
「言い訳ならどうぞ」
「鼻血でそう」
「浴衣汚したら許さないから」
なんて言いつつ怒った理由を話してくれて、人の少ない道脇まで連れて行ってくれる優子は本当に優しい。でもノーブラは色んな意味で危険だからやめて。
「あと代表の胸元ガン見してたのも分かってるから」
いっそ殺してほしかった。
「どう? 落ち着いた?」
「うん、ありがとう。それとさっきのことだけど」
血の気が引いたことを確認して一呼吸。
「もし優子が雄二にあんなことしたら、多分殺す」
「え」
ずささっと大げさに距離を取る優子。
「ちがうちがう! 雄二をだよ!」
そこまで僕はサイコパスでも自己中でもないやい。
「それもだめだと思うけど」
とは言いつつ、ほっと胸をなで下ろす彼女。そういえば優子もノー……やめろ胸のことは考えるな。
「僕がそんなことをするように見える?」
「いつもやってるじゃないの」
そういえばそうだった。
でも最初の勘違いは少し傷ついた。これでも優子のことは大事にしているつもりだったのに。
「この前姫路さんとメールしたんだけど『もし明久くんが他の女の子にデレデレしたらお仕置きしてくださいね』って言われて
仮にどんなお仕置きが良いか聞いたら、拷問器具の購入を勧められたわ」
どうやら彼女はまだ少しこじらせたままのようだ。
「だから明久くんもそんなことするのかと思っちゃった」
えへへと笑いながら、僕の頬に小さな手のひらが添えられて優しく方向を変えられる。すると優子の顔が近づいて、唇からチュッと音がなる。
「飲み物買ってくるね」
顔を真っ赤にした優子は足早に屋台の群れに戻っていく。
「今、死んでもいいや」
疑われたとかほんとどうでもいいや。
続く
始めてやったことが多いので、不備がありましたら教えてください。よろしくお願いします。