お久しぶりです
第一弾は見える子ちゃん
本当は年始ぐらいから始めるつもりだったのにサボりすぎて遅れました
過去に書きっぱなしで保存したままの作品を加筆・修正して出してます
見える子ちゃん、見えない彼(見える子ちゃん)
ぐち、ぬぢ、ずちゅ、ぷぢゅ……♡
「はあっ♡ んぅ♡ くふっ♡ あぁ♡ んあぁああぁっ♡♡」
『気持ちいい? みこちゃん』
「あん♡ んんっ♡ そ、そんなのいいからっ、早く終わらせ……ひぃうっ♡」
『ダメダメ。せっかく現役JKとアオカンしてるんだから、じっくり楽しみたいじゃない?
それにほら、口ではなんだかんだ言っても、こっちはトロトロに濡れてぎゅうぎゅう締め付けてくるし。みこちゃんも実は割と楽しんでるんでしょ?』
「うぅ、そんなこ……ふあんっ♡♡」
ズンっ♡♡ と強めのピストンが膣奥を叩き控えめだった嬌声が跳ねあがる。慌てて口を押さえ恨めしげな視線を後ろに送るも、男はヘラヘラ笑いながら腰を止めない。
路地の奥まったところで、黒髪の少女がコンクリートの冷たい壁に寄りかかっている。白ワイシャツにカーディガン、プリーツスカートにローファといった女子高生の出で立ち。やや暗めな印象だが容姿は整っており、身体も年相応の健康的な成熟ぶりであった。
少女――四谷みこは尻を突きだした姿勢で前後に揺さぶられている。内股気味の膝には丸まったショーツがひっかかり、アソコをかき混ぜられるたび、ポタポタと透明なツユが地面に滴っていた。
震動の原因でありみこを貫く男は、妙に影が薄い。目鼻はちゃんとあって、まあまあイケメンの部類だ。しかし、全体で見るとモヤがかって印象に残らず、あっという間に記憶から薄れていくような儚さがある。浮世のモノではない、不思議な雰囲気だった。
「ヒトが、来るかもしれないんだから♡ んっ♡ さっさと終わらせてよっ♡」
『だーいじょうぶ。さっきまで黒いのが何体もうろついてたくらいなんだから。よっぽど鈍感じゃなきゃ、普通の奴が近づけやしないって。
フフ、にしても知らない人が見たら、みこちゃんが一人お尻を突きだしてえっろく悶えてる感じだからねぇ。もし仮に覗きにくるのが男だったらそのまま襲われちゃうんじゃないかな?』
「現在進行形で♡ はんんっ♡ あんたに襲われてるっ」
表面上は嫌がるみこだが、陰茎がヒダの凹凸をなぞり、めくるたびに感電するような快感が神経を走っている。垂れた目尻と赤らんだ頬は、どう見ても快楽にとろけた浅ましい雌の顔色。
断続的なストロークに、くいくいっ♡ と無意識にしゃくりあげてしまう迎え腰がいじらしく、雄の嗜虐心に火をつける。
「ひゃん♡♡ あっ、あっ、あぁ♡ 強いぃ♡♡」
『ほら、ベロちょうだいみこちゃん』
「やっ♡ ぁもぅん、んんーっ♡ ちゅぷ♡ んっ、れりゅ、ぴちゃ、んれりゅ……っ♡」
いちゃつくカップルの同然に睦みあい、口の中を貪りあう。ピストンはなおも激しく打ち込まれ、コンコン♡ と子宮を小突いては背筋をおののかせる。その背中に張り付いた男が服の上から胸をまさぐり、充血したクリトリスを指先で弾くと、少女のうなじに鳥肌がブワリと浮き出た。
「ぁあああ♡ らめ♡ いっぺんにそんな……ふぁあああっ♡♡」
『早く終わらせたがったのはみこちゃんでしょ? モタモタしてたら本当に誰か来ちゃうかも。
それか、イヤラシイ姿、見せつけちゃおうか?』
「こ、んのぉ……はぉ♡ ふぃぃっ♡ あほぉ♡ 変態♡ えっと、あ、悪霊ぉ♡」
『悪態ついてもかわいいねみこちゃん。バカにする語彙力ないのかわいいねみこちゃん。ちんぽきゅうきゅう締め付けて気持ちいいのに流されそうなヨワヨワおまんこかわいいねみこちゃんっ』
ざぁーこ♡ ざぁーこ♡ とやたら耳元で甘口に囁かれてゾクゾクが止まらない。ふざけたメスガキムーヴをかます男に、とっくに
「遊ぶなぁ……っ♡ はんっ♡ うあ♡ はぁああっ♡ もう、はやくイってよぉ……っ♡」
見つかりそうで見つからない危機感と背徳のエッセンス。貪り食われる被虐の悦。
青姦の醍醐味を存分に味わいつつ、みこはついに催促を繰り返す。さらに、早く終らせたいと焦る気持ちが、妖しく腰を操った。男との度重なる性経験を経て、すっかりこういった動きも身体に仕込まれてしまっていた。
みずからが教えた性技によって、追い討ちをかけられるも、それをむしろ歓迎するように挙動を合わせ、二人揃って高みに昇っていく。
獣の息遣いが薄暗がりにこだましていた。
「早く、早く、早くっ……♡♡」
『うっ、ぉ、出すよ……っ』
びゅぐん♡ どぶっ♡ びゅぷるるるぅぅっっ♡♡♡
「っ♡ っ♡ っ♡ ……んぅっ、く、ふぅぅぅぅ……っ」
白熱がお腹を満たしていく。ドクリドクリと脈打つたびに、人ならざる種が蒔かれた。
妊娠の心配がないとはいえ、感触や熱量は本物同然(知らないけど)。口を抑えていた手で思わず下腹を撫でる。放蕩に子宮をチャプチャプ泳ぐ子種たちを当人そっくりだとこけ下ろしながら。
なんとか絶頂を甘イキにとどめたみこは射精後も一向に肉棒を抜こうとしない相方に不信感を覚え、同時に嫌な予感を察知する。
「ちょっと、変なことかんっ……ひやぁああっ♡♡」
ズンっズンっズンっっ♡♡♡
射精直後のくせに固さを保ったまま猛然と肉刺しが再開された。ただそれは、自分の欲望を発散するためではなく、みこを追い込むための……。
「はひっ、くぃぃいん♡ やぁ、やあぁああ♡ さっきイったのにぃ♡」
『中途半端は良くないよ。外だからって我慢せず、おもいっきりイっちゃえっ』
霊体である指先は衣服を透過して直接乳首を捻り、陰核を潰し、耳を食まれたまま、ナカのイイトコロを執拗に引っ掻かれて……。
「あっあっあぁぁっ♡ んあっ♡♡ だめ♡ あぉ、お♡♡ イっ! ッ――……くぅぅ~~~っっ♡♡♡」
凄まじいエクスタシーが少女を痙攣させた。
膣内に放たれたときとは比べ物にならない絶頂に膝から脱力。尻を上げて這いつくばるような体勢となり、打ち寄せる荒波に感覚を揉みくちゃにされる。
ぷしっ♡ ぷしゅっ♡ と股間で潮がはぜて、地面を濡らす。
『顔真っ赤にしてアクメ声こらえるみこちゃんは本当にかわいくてエロい! 男心が満たされるよまったく。
……さてと。平気? 立てる? もうちょっと待とうか?』
気遣わしげな声音で尻を撫でる男。些細なセクハラにもみこの身体は打ち上げられた魚みたく敏感に反応する。
「くっふ……っは♡ はぁ、はあっ♡♡ ……あんた、絶対ぃ……っ」
ワナワナさせる握り拳。どうせすり抜けられるなどと考えるでもなく、反射的に手が出かけて……。
ゾク―――!
氷柱を背中に放り込まれたような悪寒に襲われた。
淫らな熱が即座に引いて、違う意味で震えが止まらなくなる。
「あ、あ……」
暗がりの深い向こうから、のっそりこちらへ歩いてくる巨体。
ズタ袋を被った恐ろしい刃物を持つ人影。スプラッタ系ホラー映画の主役級を飾りそうな身の毛もよだつ気配のモンスターが、一歩一歩、見る者の恐怖を煽るようにゆったり近付いてくる。
あれは、間違いなく人に害なすモノだ。
冷ややかな地面に広がるアンモニアの泉。へたり込んだ自分が漏らしてしまっている事実にも気づかず、みこは路地裏の闇から歩み寄る存在を
【ォォォ……】
見られていることに気付いている怪物は、ギャリギャリと手にした赤錆と刃こぼれだらけの刃物をこすり合わせ、不快な金属音で威嚇する。か弱い少女の怯えるさまに、興奮を隠せないように。
だが。
『なにヒトのオンナ見て興奮してんだボケ』
ドンっ! と。
あまりにもアッサリ、恐怖の怪人は消え去った。
代わりに佇むのは、みこを陵辱していた男。
一瞬で距離を詰め、一撃で殴り飛ばす。
彼が行ったのはそれだけだ。幽霊らしからぬフィジカル任せのシンプルな力。
演出たっぷりにも関わらず、わずか数秒の登場で悪霊は現世から退場させられた。
「えぇ……」
これには怯えすくんでいたはずのみこも困惑顔で引いてしまう。男が強いのは知っているはずだったが、あんなヤバそうなのも他の雑多な幽霊処理と変わらないなんて。
呆然と尻餅をつくみこに、男は冷徹な仮面を投げ捨てて歩み寄る。ある意味違う恐怖を感じる、軽薄で裏のある笑みを刻みながら。
『みーこちゃんっ。さっきのも含めて、あとで追加補給分、よろしくね♪』
明け透けで締まりのない表情に、みこはまたオモチャにされなければならない未来を憂い、路地裏の狭い空を見上げた。
***
彼との遭遇は命の危機から始まった。
ほんのすこし前まで自分のことをごく普通な一般的女子高生だと認識していたみこの価値観を、ある日から不気味な存在たちが彩った。
おどろおどろしく。
「まだ見える……」
みこは起きると、毎朝窓辺から見えるゴミ捨て場に注目する。
普通の人ならなんでもないゴミ捨て場。しかし少女にとっては猟奇殺人の死体遺棄現場じみていた。
他の誰にも見えない存在の手足や頭がバラバラにゴミ袋から突きだしている。
アレが何を示唆するモノなのか、深く考えることを放棄したみこはさっとカーテンを閉めて落胆のため息をこぼすのだった。
毎度、今日はこそ見えなくなっているかなと祈りながら行う習慣。成果があるかどうかは、お察しの通りである。
「学校行こ」
切り替えて洗面台に向かい顔を洗い軽く身だしなみ。鏡に映りこむ背後の黒い影には一切視線を向けない。
「おはよう」
「うーす」
「はいおはよう。早くご飯食べなさいね」
『やぁみこ。おはよう。今日は午後から雨らしい。傘は持っていけよ?』
『お、ォォ、ォはヨォ……』
リビングに入ると、弟と母親、家族が出迎える。一部父親にそっくりな誰かと、四足歩行の目ン玉お化けなんて見てない見えない。
みこはいつも通りのスルースキルを遺憾なく発揮し、たとえすぐ隣に化け物の顔があっても表面上はなんの反応も示さず登校した。
当然内心は(はぁぁあぁああっ……怖い怖い顔めっちゃ怖い! お父さんはともかくなんなのアレ!? なんでお父さん平然と叱ってんのよ!? いつかガブリといかれない!?)と動揺しまくりであったが。
今日も今日とて、みこの表情から憂鬱の影は消えない。
「はぁっ、はぁッ、ひぃっ……!」
ほんの些細なきっかけだった。
友達と放課後お気に入りのキャラグッズを買いに行って、遭遇する怪物たちを回避しながら一人帰宅していた。それが、一瞬の油断で彼らのうちの一体と目が合ってしまい、しかもリアクションを取ってしまったのだ。
【ミ、タ、ナァ?】
本能に衝き動かされて、みこは咄嗟に全速力で逃げた。今さら見えない振りなどする余裕もなかった。あちこちを逃げ回っては、黒い人影に怯え、また別方向へ走り出す。そんなことを何度か繰り返した。だが、地獄のチェイスはやがて終わりを迎えてしまう。
なるべく人気のある場所を通っていたはずが、いつの間にか誰もいない夜の公園に追い詰められる。昼に降った雨のせいで地面はまだ濡れていた。暗闇に染まった公園に立つ数本の街灯だけが光源だった。
「フーっ、フーっ、……っ」
草むらの中に身を隠し、口元に蓋しながら荒ぶる呼吸を大人しくさせようと息を整える。
ずちゃっ、と音が聞こえたのはそんなとき。
「……っ!」
ぬかるみを踏むような音。普通に人間かもしれない。けれど、顔を晒して確認する気にはどうしてもなれない。
相手は執念深かった。どこまでもみこに追いすがってくる。このまま考え無しに家に帰ってしまえば、怪物も一緒に引き連れていくことに……。母と弟を巻き込むわけには。
【ミ、ツケ、タァ……】
「ひぃぃ!?」
藪をすり抜け、醜悪に歪んだ顔面が真横に。
尻もちをついて後ずさるみこに、怪物はその巨体を覆いかぶさらせる。
緊張の限界を迎え、股から熱いモノが垂れ流しになった。だが、粗相に頓着している余裕はない。みこは、これからどうなってしまうのかという恐ろしい未来予想でいっぱいだ。涙を浮かべ、噛み合わない歯の根がカチカチと音を鳴らす。
オーバーオールに似た格好の怪物はニタリと笑みらしき歪みを作った。
少女の恐怖する姿に、嗜虐心を刺激されたかのような、人間くさい仕草だ。
暗い手が伸ばされる。それに触れられたら、もう自分は助からないかもしれない。
「ぁ―――――」
もはや目を開いてはいられなかった。根負けしたみこは、最後の瞬間に震えながら視界を閉ざす。
……しかし、いつまでたっても何も感じない。
恐る恐る瞼を開けば、そこに、怪物の顔はなく、代わりに二本の脚が立っていた。
『女の子イジメちゃだめだろ、オッサン。そういうプレイはよそでやれよ』
【カッ……ガグァっ……!】
何が起こっているのだろうか。
怪物が首を掴まれて藻掻いている。相撲取りのような巨体が、腕一本で宙吊りだった。あれほど恐ろしく感じた存在が、ただの人のように圧倒的強者に成すすべもない。掴み上げているのは一人の男。みこの前に立つ、暗さで横顔が不明瞭な青年とおぼしき若さの影だった。
そして、彼もまた、いままでの怪物や父親と同じ、生きている者ではないことを理解する。
ミシっ、と手のひらにさらなる力が込められた瞬間、バチュン! と怪物の頭がまるまる砕けた。肉風船が弾け飛び、辺りにグロい肉片が散らばる。卒倒しそうな猟奇映像だったが、それも次第に煙のごとく消滅した。
残った身体を雑にポイ捨てて、男がみこに振り返る。
しゃがみこんでじっと顔を覗きに来る男の顔は、暗闇とかとは別の理由で、なぜかよく見えなかった。容姿がモヤがかって鮮明じゃない。まるで、ネット記事で見たことのある、人の顔を認識できない症状みたいな……自分の眼に異常が起きたのかと疑う状態だった。
『………』
「あ、あいたた……探し物してて転んじゃったぁ。どこいったのかなぁ、メメのストラップ」
往生際悪く、四つん這いで物を探すフリをする。あくまで、わたしは何も見えていないというスタンスを貫かんとするのは、したたかではあったが、この場ではかなり無理やりだった。
しかし、みこにとっては命懸けのことなのだ。
『そうやって今までアイツらみたいなの避けてきたんだねぇ……ほい』
もにゅっ。
「ひゃあああっ!?」
いきなり尻を鷲掴みにした男。悲鳴を上げるみこを余所にモミモミとセクハラを続ける。
「や、やめてっ」
咄嗟に手を払いのける。手を出してしまった事実に凍り付くみこだったが、男ははたかれた部位をヒラヒラさせて軽薄に笑うばかり。
『そうそう。無視はいかんよ。俺は君を知ってるんだぜ? 見える子ちゃん。略してみこちゃん。なんせ、ここしばらく君を影ながら張ってたからね。君が健気に連中から身を守ろうと奮闘する姿は、なかなか見ごたえがあった』
「な、なに、なんなのよあなた! 張ってたって、ストーカーしてたってこと?」
『ああ。学校で授業を受けてるときはもちろん、家の中もちゃあんと、ね。トイレやお風呂場のあられもない姿だって知ってるんだぜ?』
「そ、そんなわけっ……あなたのことなんか、一度も見たことない!」
『そりゃ、気配を隠してたからさ。みこちゃん、連中がたまに出たり消えたりを繰り返すのは知ってるだろ? ああいう不安定な亡霊は、切れかけの電球みたいに気配が濃くなるときと弱まるときとがある。それが結果的に、見える側の人間にとっては、いきなり現れたり消えたりといった現象になる。そして、俺はそれを自分の意思で制御できるのさ。なんせ、俺はトクベツだから』
アイツらにだって俺は簡単に認識できないんだ、と自慢げに男は語る。
確かに、自宅の父親や四足の眼玉お化け、外で遭遇した怪物たちはなんの違和感も持っていなかったように思う。だが、彼の言う通りなら、乙女のプライベートはズタズタに引き裂かれているも同然という現実であった。
「へっ、変態っ! なんでわたしのことを……どうして、こんな……わっ、わたしだけ……」
少女は項垂れた。今までこらえにこらえてきた防波堤が、先ほどの出来事で決壊したのだ。臆病ながらも気丈に振る舞い、日々怪物たちに気取られないため無視を続ける……みこはずっと、安らかに気を許すことができない環境であった。少し前まで普通の女の子だったのだから、気持ちにガタが来ても仕方ない。
「え?」
ふわ、と。男の両腕が涙を流すみこの背中に優しく回される。
『そうだね。みこちゃんは何も悪くない。いきなり見える子ちゃんなんかになって、わけがわからないまま不気味な連中に苛まれて……辛かったね。寂しかったね。誰とも同じ視点を共有できなくて、家族にも打ち明けられない。唯一まともに見えたお父さんにだって、無視を続けなきゃならなかったんだ。それを今まで貫き通せたみこちゃんは、とってもすごい。えらい、えらい』
「っ! ……ふ、ぅぐっ、ぅぅうう……っ」
みこは、ただ泣いた。
同じ亡霊であるはずなのに、なぜか暖かさを感じる、たくましい男の胸板に縋って。
ようやく甘えることを許された少女は、これまで溜めこんだ様々な感情を、清らかに流し落としていった。
「スン……っ、ごめんなさい、いきなり、泣いたりして」
『なに、女の子の涙は受け止めるのが男の度量さ』
落ち着いた頃になって、眼を腫らしたみこは男に謝罪するも、朗らかに返され苦笑する。
あの亡霊を簡単に倒せてしまったことからして、たぶんすごく強い霊なのだとは思うが、今まで見た奴らのように、暗い瘴気に染まっていない。
一体、彼はなんなのだろうか。
「あの、助けてくれてありがとう。でも、どうしてわたしを追ってたの?」
『うん。実のところ、俺も目的も有象無象の連中と大して違いはなくてね。自分を誰かに見つけてほしかったってのがひとつ。あとは、そう……契約を持ちかけに来たんだ』
「契、約?」
首を傾げるみこに、真剣な口調で男は続けた。
『今回の件で、みこちゃん、君はこれまで以上に亡霊どもに付け狙われると思う。君があの変態悪霊から逃げ惑う姿は、多くの連中が目撃してしまった。たぶん、この街の亡霊は全員、みこちゃんが見える側の人間だと認識して、これから接してくることになる』
「そんなっ……!?」
確かに、逃げる最中にも影や怪物は見た。逃げるのに必死で気を回していられなかったが、まさか事態がそこまで深刻化するなんて。
今まで以上に、なんて。これまでだって割と限界いっぱいだったのに。
絶望に蒼ざめていくみこに、男は優しげな声で提案する。
『そこで、提案。俺が君の守護をしよう』
「え?」
『俺の力量は見てもらった通りだ。今日追っかけてきたようなのくらいなら、たとえ何十匹束になっても負けたりしない。俺がみこちゃんを守る。代わりに、みこちゃんには俺に関する情報収集と、エネルギー補給を頼みたい』
「情報? それに、エネルギーって、なに?」
順番にまとめると。
男は、生前の記憶が何一つ残っていないという。気が付けば亡霊として街中を彷徨い、各所を巡っては自分の軌跡がないかを探していた。彼の手掛かりは確実にこの街にある。だから本能的に、街の外に出ようとすると気分がふさぎ込んでいくのだとか。
幽霊の記憶喪失などというのがあるのかはわからないが、しかし、凄惨な事故やトラウマになるような出来事が死因だったら、それくらいのことはありえるのかもしれない。
『多少ショッキングな事実は受け入れる覚悟さ。そうでなきゃ、自分探しなんてやってられないよ。
ただ、自分が何者だったのか。どんな風に生きて、どんな風に死んだのか……真実が知りたい』
決意に満ちた目だった。でもやはり容姿がよくわからない。パーツは確かにそこにあって、部分ごとにどういう形状なのかも分かるのに。認識が損なわれるフィルターがかかってるようだ。
『俺も鏡なんかで自分の顔見てもよく見えないんだ。呪い、って感じ。これもたぶん、記憶を取り戻せばどうにかなるんだと勝手に思うんだけどね。俺のイケメンフェイスをハッキリみこちゃんに見せられなくて残念だ』
「あぁ、そう」
段々と掴めてきたが、この男存外ナルシストっぽい。
あるいは、正体不明な不安の裏返しとも取れる。
「それで、えっと、エネルギーっていうのは?」
『どんな物にも原動力は必要だ。たとえこの世のものでなくなっても。
亡霊は、放っておいたらいずれ消えてしまう。強烈な未練で世界に居残ることはできるけど、それにも限度があってね。一部の連中はそれを本能的に理解してるから、他の亡霊を誘いこんだり、喰らったりして自分の糧にしてる。他の未練をため込んで、より長く存続できるように』
そのうち色んな未練が混じりあって、自分が自分でなくなっちゃったりするんだけど、と。恐ろしいことをサラッと後付けする。
「食べたりするのって、やっぱりそうなんだ……え、じゃあ、あなたの言うエネルギーって……」
肩を抱き、自然と後ろに下がるみこに苦笑する男。
『大丈夫。みこちゃんを食べるって意味じゃない。……ある意味ではそうかもだけど』
ボソっとした呟きはみこの耳に入らず風にさらわれた。
『亡霊から補給するのと、生きてる人から補給するのとでは、方法が違うんだ。生きてる人間からは、生命力の象徴たる心……感情を貰う』
「それって、もしかして廃人になるようなやつじゃあ……」
『加減をしなければ、ね。悪質なヤツらに生きる気力を喰われて、自分では何もできなくなった人間はそうなる。安心して。俺はみこちゃんを殺したりしないよ。守ろうって言ってるんだから』
ぴん、と彼は注目させるようにみこの前で指を立てた。
『補給に必要な感情には、それぞれ好みがある』
人間の味の好き嫌いのように、亡霊にも適応するしない感情があるのだ。
亡霊らしい不気味な見た目のヤツは、嫉妬や恨み、憎しみや不満といった負の感情しか受け付けない。
『恐怖、なんていうのが結構代表的。だから悪霊は人を怖がらせて怯えさせる。質はまちまちだけど、手段として手っ取り早いからね。だから見えてる人ってのは恰好の的なんだ』
「………」
ぶるっ、と、いまさら過ぎ去った恐怖に震えが走る。……あと、黙っているが下着が冷たい。意識すると途端に落ち着かなくなってきた。
『けど、俺が欲しい感情は……』
ス……顔を伏せたみこの耳元に唇を寄せて。
『幸福感』
「え?」
『心地いい、気持ちいい、幸せ、って感じるあま~い感情。特に若い女の子がかもす幸福感はとても瑞々しくて好きなんだ。
だからね、みこちゃん』
どくん、どくん、と脈を打つ心臓。異性にここまで接近されたことなんて、家族以外になかった。
しかし、ただ昂揚しているのではなく、みこは男の声音に微弱な毒が含まれていることを察していた。
とても甘く、思考を鈍らせる、食虫花のような桃色の吐息が、鼓膜を撫でた。
『俺と、エッチなことしてくれない?』
ウマイ話には落とし穴がある。
みこはそれを、のちのち嫌というほど、身をもって思い知ることとなった。
続きは気が向けば、ね?