「ご主人くんのエッチっ、スケベっ、性欲魔神っ!」
情事の熱も冷め、そよ風に肌を撫でられた二グリュは、身震いと一緒に正気を取り戻していた。乱れた衣装もそのままに、守るように両手で身体を抱くと、ご主人くんからズサっと距離をとる
「違いますって、誤解ですからっ」
「誤解なもんかっ! あんな乱暴に私を犯しておいてっ!!」
もちろん、これこそただの八つ当たりだ。自分から誘っておいて、彼にはさぞ理不尽に聞こえた事だろう。しかしだ、一夜の過ち、若気の至り、ふって湧いた独占欲は、ゴミみたいに脆いニグリュの情緒は感情を処理しきれず、その結果を受け入れるほどの余裕なんて最初から無いもんだった
「そ、それはだって、ニグリュさんも悪いじゃないですか。あんな風に言われたら乱暴にだってなりますよ。僕だって本当は、もっとお互いに気持ちよく…なれるような、その、なんか…はい」
勢いで捲し立てて、自分が口走ったセリフに気づいたご主人くんの顔が赤くなった。そういう所はズルい。可愛いとは思うし、思わず許してしまいたくもあるけど、だからこそ聞かなきゃならないこともあった
「じゃあ、気持ちよくはなかったんだ?」
「へ?」
「私に乱暴したくはなかったし、精液でちゃったのも生理現象だって言うんだ?」
「そ、それは…」
「ねぇ、ご主人くん…こっち見て? 正直に答えて?」
何度も交わしあった視線だ、カトブレパスの呪いで即死なんてしやしない、その言い訳は過去のもの。気まずそうに目を逸らした彼の顔を、私はじぃっと呪い殺すような勢いで責め続けた
「き、気持ちよかった…です」
「どのくらい?」
「どのくらいって…。それは、だって、寂しそうなニグリュさんをみてたら、なんか抱きしめたくなってしまって。分からせてほしいのかなって、それで、乱暴にしてみせたら、なんかこう…。僕のものでグチャグチャになってるニグリュさんの姿が、凄い興奮をしてしまって…そしたらもう止まれなくって、いつもより一杯、中に出してしまって…。ああ、もうっ…これで良いですか?」
赤面するご主人の必死の独白。同じ男同士なら、あるいはインキュバス娘辺りなら理解もしてくれそうなものだったが、ズズッと身を引いたニグリュは更に身持ちを固くして、ご主人から距離をとってしまっていた
「ご主人くんのえっち、スケベ、性欲魔神。あってんじゃん、最初の反応で正解じゃんっ。可愛い顔してとんだ性欲モンスターだよ、モンスター息子じゃんっ」
「も、モンスター息子って。な、なんですか、それっ。さっきまであんなピーピー鳴いてたくせにっ、もっと分からせないとだめですかっ! 犯しますよっ!!」
「ほーらーっ。本性出すじゃんっ、ちょっ、近づかないでってこっちくんなっ!」
「ニグリュさんこそ逃げないでくださいよっ、捕まえたくなるでしょうがっ!!」
未だおぼつかない足元を必死に動かし、尻もちをついたままジリジリと後ろに下がるニグリュの後を、顔を真っ赤にしたご主人くんが追いかけていく。食うか食われるか、一触即発の空気の中、ご主人くんの先攻で始まろうとした第2ラウンドはしかし
「ぁっ! とっ、わわっ…」
木の根にご主人くんの足が攫われると、そのまま体勢を崩し前のめり倒れ込んだ。ぎゅっと目を閉じ、痛みに備えるが、訪れる筈の痛みとは別に、柔らかい何かに顔を突っ込んでしまっていた
「とっ! やっぱり、危なっかしいね…君は」
「あぅ…。ニグリュさん、ごめんなさい…すぐ、退きますから」
「いいよ、別に。ていうか、私を犯すんじゃなかったの?」
「いや、それは…。なんか引っ込みが付かなくなっただけといいますか」
「じゃあ、もう良いんだ?」
「今日は、はい。あ、でも…た、たまになら、また、良いでしょうか?」
「ご主人くんのえっち。まあ、でも…考えとく。君がどうしてもって言うならさ…」
顔が熱いな。「考えとく」なんて言いながらも、次の機会を想像しただけで、胸がドキドキしてくる。一週間後か、3日後くらいか、思えば思うほどに近づいてくる機会から目を逸らすと、未だに抱きついたままの彼にに視線を落とした
「いつまでそうしてんの? おっぱいがそんなに良いわけ?」
「ニグリュさんのだからです」
「誰にでもそう言って」
「だとしても、何度だっていいますよ。ニグリュさんが好きだって」
「おっぱいがね」
「ニグリュさんが、です」
「バーカ」
「かもしれません」
その時、ニグリュさんが笑っていたような気がした。その顔が見たくなり、けれど「見ないで」と、照れ隠しに押さえつけられた頭は重く、押し付けられたおっぱいの向こう側からは、ドキドキと胸の鼓動が伝わってくる
子守唄のようだと思った
その音色に何処か安心を覚えてしまう。子供っぽいだろうか? それでも、頬に感じる胸の柔らかさと温もりは離れがたく、彼女にされるまま頭を撫でられていると、その内に瞼が落ちていった