※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して   作:夢枕 七変化

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狂乱の船宴※

 二人が冷戦のように静かに会話を繰り返しているのを遠い世界の出来事のように感じながら聞いていた。だけど、私はそこまでしか覚えていない。

 ……いつ、どうやって船に帰ってきたのか、記憶が無い。鷹の目はそんな私を当然のようにベッドに組み敷くと、動けないように関節を抑えている。

 これがその辺のゴロツキならば、この状況からでも対応する術はある。その為に私は、ベルメールさんや赤髪海賊団のメンバーから護身術も叩き込まれているもの。

 でも流石に、シャンクス(師匠)と同格の男相手にそれが通用する筈もない。指導を受ける為に手を抜いてもらっていても、抜け出すのに苦労してきたのだ。

 それでも、いくつかの条件が揃えば抜けられるけど、今の状況においては不可能と言う他ない。どうしたものかしら……と思いながらも、死んだら楽になれるのかも知れないと言う甘えた逃げの感情が脳裏を掠め、つい自嘲してしまう。

 

 「……主は、何故彼岸を見詰め微笑む?」

 「気付いて……?」

 

 突然の言葉に息を飲む。どうして、知ってるの。

 彼岸を見てるのなんて、心でも読めなければそんなの分かる筈もないのに……どうして、確信を持って言えるのよ。この程度、本来の肉体なら我慢していれば終わる事でしかないけど、相手がこの男なら行為中に死んでもおかしくないからこそ、楽になれるかもって思っただけなのに。

 そんな私の心の声が聞こえたかのように、鷹の目は言う。その声は残酷な程に温度を感じさせず、淡々としている。

 

 「戦う者に、その程度解らぬ筈も無い。なればこそ、天夜叉も主と話すと言ったのだろう」

 「……あの人はお仕事で〝宝玉〟の事を調べる為ですよ。ミホークさん、あの、普通に話しませんか。逃げませんから、お茶かお酒でも呑みながら」

 

 強がりながら笑い掛ければ、鷹の目は獰猛な笑みを浮かべた。それは、明らかなる拒絶。

 鷹の目の眼差しは、その通り名を預けた人物を褒め称えたくなるような煌めきを持っている。その眼光だけで、私の強がりを知った上で鼻で笑ってるのだと伝えられてしまう。

 

 「俺が戯れでこのような事をしているとでも?」

 「え?」

 「……月が太陽を恋うように、月光がナミの姿を映し出しているな」

 

 髪の、色を言ってるのかな。確かに今日は月が怖いくらいに綺麗で、この髪は太陽の色にも思えるけれど……。

 怖いような、けれどもどこか現実感のない空気。色気の塊が何か喋って、私の髪を撫でている。

 それを見るともなく眺めながら、思考が散らかるのを感じていた。抵抗する手段と、逃げる算段を会話の中から見つけたいのに逃げる以前に会話でさえ翻弄されている現実。

 視線を窓の外へと向けた瞬間、鷹の目の唇が私の唇を塞ぎ、貪る。呼吸さえ奪うような激しく獰猛なそれに、私は無駄と知りながら抵抗しようと試みた。

 四肢は動かなくても、身体を捩り頭を振ればと思うのに、それも出来ない。鼻で呼吸をしている筈なのに、苦しくて酸素を求めるように少し大きく唇を開けば、更に奥まで蹂躙される。

 吸われた舌があまりの強さに悲鳴を上げる。痛みから必死に逃れようとしても、舌が引きちぎられるような勢い。

 

 「……っ……ぁ……」

 

 唇が合わさった状態で、無意識に助けを求めるように、心の内に住み着いてる人達を思い浮かべ言葉としてそれを口にしていた。それは音としては紡がれないけれど……シャンクス、ベック、助けてと。

 その瞬間、鷹の目の唇が私から離れて、即座に逃げようとした筈なのに、指先を動かすより早く衣服が切り裂かれた。驚き目を見開く私に、鷹の目は暗く嗤う。

 

 「良い、度胸だ……」

 「え?ゃ……!」

 

 悲鳴さえ、恐怖からか上手く音にならない。それでも、深呼吸して腹筋に力を入れればと思った時、声が降る。

 整ったその顔が、残酷に口の端を上げた。それだけで、頸椎を狙われた小動物のような心持ちにさせられてしまう。

 

 「海の上で、海賊旗を掲げる船から悲鳴が聞こえて、誰が来るだろうな」

 

 その言葉に背筋が冷えた。身体が私の意思を無視して、勝手に小刻みに震える。

 抵抗って、どうしたら出来るんだっけ。感情さえ動きが鈍くなっていく気がする中で、怯えるべきか泣くべきかと打算が脳裏に閃く。

 

 「来るのは助けではなく、参加したいと望むものだろう。それで良ければ叫ぶが良い。その場合、混ぜてやるのも致し方あるまい。それを望んだのはナミだ」

 

 私は必死で首を横に振る。けれども鷹の目は「ならば大人しくしていろ」と言い放ち、私の首に噛み付くように跡を遺した。

 受け入れるなんてできない。でも、誰かが来るかもと言うそれに心が萎縮していく。

 この世界にも撮影機能を持つ物は存在する。カメラもビデオもあるのだから、泣き寝入り以外に何を選択できるというのか。

 

 「んっ……!」

 「先日主を抱いた者は、随分と執着しているようだな。跡のない場所が見当たらぬ」

 

 抱いたって……。誰が、何を……?

 そう思ったところで、ルフィが先日森の中でやった事を思い出して赤面する。そして、思わず言葉を放っていた。

 冷静さなんて既に無い。あるのは、必死なばかりで愚かしい自分だけ。

 

 「まだ、未遂よ!私は誰ともっ……!」

 

 しまったと思った時には、既に遅い。鷹の目は一瞬驚いたような顔をしてから、蠱惑的な微笑みを浮かべた。

 それに息を飲んでいる間に、身体に装着していた武器は取り払われ、大きく足を割開かれる。嫌だと暴れてみても力の差は歴然で、鷹の目は意に介す事なく隠れているべき敏感な所へ顔を近付けて来た。

 

 「やっ……いやっ!ぁ……っ」

 

 抵抗する声と心を置き去りに身体は勝手に反応して、自分から淫靡な水音が聞こえる為に、羞恥心が煽られて更に音が肥大する。身体が小刻みに震えて、嫌だと頭を横に振るのが精一杯。

 声を出せばそれが全て喘ぎとなるから、言葉で拒絶する事さえ出来なくなって……縋るように鷹の目に視線を向ける。もう、やめて欲しいと。

 けれども視線が確かに絡んだ筈の鷹の目は、私に更に刺激を与えるから、身体が大きく痙攣して目の前が真っ白に染まる。それが怖くて、悲鳴のような声をあげながら身をくねらせて逃げようとしてしまう。

 

 「嫌!やだ!ミホークさん、やだ!」

 

 それに対して、鷹の目は残酷に囁く。「そんなに他の男達の前で犯されたいのか……?」と。

 その言葉に、心と身体が凍りついたように動かなくなってしまう。そこへ鷹の目の指が当然のように侵入して来て、異物感に眉を寄せると、小さく喉の奥で笑ったのが分かる。

 

 「慰みよりは楽しめそうだ。力を抜け……」

 

 そんな事を言われても、無理な物は無理な訳で、嫌なものは嫌な訳で……!なのに、抵抗する手段が思い浮かびさえしない。

 ただ思い浮かぶのは、何かあれば助けてくれると言ってくれた優しい人達の顔。私の名前を呼ぶ、優しい声。

 思わず居ないと知っていても助けを求めたくなる。縋るように、幻影に手を伸ばしそうになる程に頼ってしまう。

 

 「や……だ……助け……「ここで他の男の名を呼べば、辛くなるのは主だぞ」」

 

 自分の声に重ねられた言葉にビクリと身体が震える。それに対して鷹の目は、その鋭い眼光に暗い色を添えた。

 ゆっくりと開く唇が、死刑宣告する看守に思える。私が、何をしたって言うの?

 

 「……赤髪でも、呼ぼうとしたか?……それとも、あの腹心か?」

 

 身体中に殺気と似た何かが襲い掛かり、けれども殺気では無いこれの正体が掴めない。震えるのは、身体か、心か。

 その時窓から羽音が聞こえて視線を向けると、クーちゃんが窓から入って来て部屋の中を飛び回る。基本的に攻撃される事はない筈のクーちゃんが警戒して距離を取りつつ、けれども私に近付こうとしているのが分かればその名を呼んでしまう。

 

 「クーちゃん……」

 

 呼び掛けるとベッドに降りて心配そうにしてくれるけど、流石に危ない。視線さえ動かさない鷹の目の様子が、逆に恐ろしくて……クーちゃんを庇わなければと思うのに身動ぎひとつとれない現実。

 鷹の目がクーちゃんの存在を無視して行為を続けようとした時、クーちゃんが威嚇の声を上げる。それにより視線を向けた鷹の目の眼光に怯む事なくクーちゃんが鷹の目に突進して行き、鷹の目はそれをひょいと躱す。

 

 「……よく、手懐けたな。だが、邪魔だ」

 

 嘲るような言葉と共に殺気を向けられたクーちゃんは、床に落ちてしまう。咄嗟に助けようと身体を動かそうとしたのを鷹の目が笑い、中に埋め込んでいる指で内壁を擦る。

 それに反応して、身体が跳ねる。それだけで鷹の目は、この身体の弱い所を的確に把握していく。

 

 「んぁっあ……アッ……!」

 

 夜なのに、鳥目なのに、心配して来てくれたクーちゃんを守る事も出来ず、ただ喘ぐ。そんな私から指を引き抜いた鷹の目は、代わりに自身の雄を入口に宛てがう。

 恐らく前座だろうものでこれだけ消耗してるのに、ここから痛くて気持ちの悪いばかりの行為が始まるなんて耐えられない。それに、この身体を勝手に傷付けられないわ。

 

 「ミホークさん、お願い、もう……」

 

 言葉の途中で挿入され始めたそれに、息が詰まる。異物感と圧迫感に嫌だと拒否しようとしても、はふはふと口を動かしているだけとなる現実。

 意識がハッキリして鷹の目を睨めば、僅かにその瞳が揺れる。それはどんな感情を宿していたのか、それだけはよく分からないけど。

 

 「漸く、彼岸から帰ったか……」

 

 言われた意味が分からなくて鷹の目を見れば、ふっと笑われる。そして、唇に鷹の目のそれが重なるのと同時に一気に奥まで貫かれた。

 声は、悲鳴は、嘆きは、全てその唇に飲み込まれて音となる事は無い。けれども生理的に流れる汗と涙は、水滴となりベッドへと静かに落下して行く。

 掻き乱され、突き上げられ、その度に身体は私の意思を無視して痙攣を繰り返す。ぐったりとする身体を無理に起こされて、獣のように後ろから貫かれればそれまでよりも深くまで届いてしまう。

 

 「たかのっ……!も、やぁ……!!」

 「ならば、良い事を教えてやろう。声を抑えずとも、誰にも参戦されぬ方法だ」

 

 どうしたらいいのかと縋るように視線を向ければ、鷹の目はニヤリと笑った。その笑みは悪魔を思わせ、背筋に冷たいものが走る。

 私は、縋る相手を間違えたのではないか。そんな気がして息を飲む。

 

 「俺の名を呼び、もっと……と強請れば良い。俺とまぐわっていると知って、飛び入る愚か者はおらぬ」

 「い、るかも……しれな……っあああっんっやぁだっ!鷹の目っ!」

 

 喘ぐのを耐えていたのに、言葉の途中で激しくされれば抑えられる筈もない。でも、私はこんなの知らない。

 私は痛みと苦痛と気持ち悪さの伴う、おぞましいものだと思ってたのに。今はこれまでに感じた事の無いゾワゾワしたような甘い痺れに、翻弄されてる。

 

 「たかっ……!!んぁ!」

 「ナミ、俺の名は〝鷹の目〟では無い。呼び直せ」

 「んっ……やぁ……っ」

 「ならば、見物人を集めてやろうか」

 

 残酷な言葉に、卑劣なそれに身体が震える。何かが、記憶の奥で光った気がした。

 レンズが向けられて、抵抗できなくて……。そして、激しい恐怖と喪失感。

 想像したくもない未来予想に、心臓が締め付けられるような気がした。そして、理性を失ったかのように身体の奥から悲鳴を上げてしまう。

 

 「いやぁぁぁ……!ゆる、して……」

 「そう言いながらも、締め付けは良くなっている。見られたいのならば、恥じらうことは無い。素直に言えばよかろう」

 

 残酷に笑うそれは、明らかに猛禽類のそれ。最低な男。

 なのに、勝ち目が見えない。悔しくて、情けなくて、力も入らなくて……涙が溢れそうになるのを必死で耐える。

 

 「みほ……く……」

 

 名を呼んだ瞬間、圧迫感が増した。息を詰まらせると鷹の目も苦しそうに天を仰ぐ。その直後に中に熱い広がりを感じて、ゾクッとしてしまう。

 まさか、今。嘘でしょ?

 

 「やっ!ぬいてっ!中は、いやぁっ!!」

 「今更遅い」

 

 遅くないっ!今更でもなんでも、これ以上はされたくないの。

 作中でナミちゃんが妊娠してるなんて無かったけど、このまま続けてもしそんな事になったら物語が成り立たないわ。逃げなきゃ、これはまずいっ!

 必死で抵抗して暴れるけど、腕力の差が大き過ぎる。簡単に抑え込まれて、それどころか暴れようとすればする程にそれを利用して中を抉るように擦られてしまう。

 

 「やっ……あぁっ!あかちゃ、できちゃ……ぅ」

 「孕んでも構わぬ。だから、好きなだけ鳴けっ」

 「いやっ……いやぁぁぁ!!」

 

 首を横に振り、四肢に覇気を纏って暴れようとしたけど即座にそれ以上の濃度の覇気で抑えられてしまう。動揺して見詰めた直後、覇王色の覇気が当てられれば身体が防衛本能で中のモノを締め付ける。

 その直後に弛緩した身体は、少しの間ではあるけど力が入りにくくなり覇気を纏えない。恐らく格上相手の影響だろう。

 

 「覇気まで使うか。東の海(こんな所)に残しておくには勿体無い逸材だ」

 

 言葉と同時に動く腰が、経験した事の無い快楽と呼ばれるだろう愉悦の波を与え、思考力を奪いに来る。でも、子供を宿す訳にはいかない。

 身体を開かれただけでも申し訳ないのに、子供がいたらこの先海に出るなんて夢のまた夢。アーロンにバレたら、それこそ永遠に飼い殺しにされてしまう。

 必死でうつ伏せとなり四肢が使えるのを利用して前に進もうもすれば、腰を掴まれ引き戻されてより深く繋がる事になってしまった。必死で飲み込んだ声は、同時に呼吸さえ止める結果になってしまい長くは持たない。

 

 「見られたくない。中に出されたくないと言うのであれば、一つ方法があるぞ」

 「ほん、と……?」

 「ああ、このまま風呂場に運んで中を綺麗に洗ってくれと強請れば良い。ナミが望むなら、叶えてやろう」

 

 悪魔のような言葉を鋭い鷹の目の眼光そのままに告げる姿は、すでに同じ人とは思えない。それでも、その言葉に縋る他の道を私は持っては無いのだ。

 やめてもらわねば、私の身体も心も持たない。もうこれ以上、この身体を傷付けたくないの。

 

 「たか「名を、間違えるな。次に違えれば、二発奥に放つまで何も聞かぬぞ」」

 

 脅迫以外の何ものでもないその言葉に、小さく震える。それでも、強姦してる男が偉そうにと思えば睨むのは当然の事。

 覇気も押し負ける。力ではかなわない。

 なら、今は従順なフリして隙見て逃げるしかない。このままではいずれ来る未来の二年の修行期間が、出産育児期間になってしまうわ。

 

 「お願い、ミホーク。私の中を、綺麗に洗って……」

 「ここでか?ならば、あと何発か出して古い物を掻き出すしかないな」

 「それじゃ、意味無いじゃないっ!」

 

 泣きそうになる。でも、涙は落とさないぞと心で誓って、キッと睨み付けた。

 そんな私に鷹の目は笑う。駄々を捏ねる子供を眺めるような眼差しで。

 

 「ならば、どこで洗って欲しいのか告げよ」

 「お風呂場で、洗って、欲しい……です」

 「では、運んでやろう」

 

 その言葉と同時に身体を引き起こされ、ミホークの上に乗る形にされる。密着し、深く咥え込めば奥までいっぱいに広げられた身体が、小刻みに痙攣してしまう。

 そんな私の背に腕を回したミホークは、耳元に唇を近付けて囁く。悪魔のように。

 

 「今のが、イクという事だ……」

 「い、く……?」

 

 過去にも恐らく経験がない。この行為は、おぞましさと痛みと屈辱感、そして羞恥心と虚しさしか与えては来ない最低最悪な行為じゃないの?

 今だって痛みに苦しんでるのに、これがイクって。そんな筈ないわ。

 

 「腕と足で俺に抱き着け。そうしなければ辛いのは、ナミだぞ」

 

 その言葉に従わずにいれば、開通したばかりのその場所で体重を支えられてしまう。そうなれば感じるとか以前に、激痛が走り呼吸がままならなくなる。

 それでも痛みであるから、耐えられるわ。私は、痛みには屈しない。

 

 「やっ……くっ……ぅ……」

 「気の強い女だ……どこまでもつか、楽しませてもらおう」

 

 そのまま強制的に連れ込まれた風呂場で、壁に押し付けられながら深く繋がらされる。呻き声さえ出したくなくて耐えていれば、甘い刺激に変更され力が抜けてしまう。

 そんな私に、甘い方が好みかと快楽の中に沈めようとしてくる男は、捕らえた獲物を貪る猛禽類以外の何者にも表現しがたい。クーちゃんの無事を確認する事も、手当する事もできずにただ、揺さぶられ続ける。

 戦うには実力差と筋肉量に差がありすぎて、録な抵抗もできやしない。それでも武器を求めて、近くにあった掃除用のブラシに手を伸ばそうとした所を押さえられ、愛撫と呼ぶには乱暴な、けれども暴行と呼ぶには甘過ぎる快楽を与えられては、上手く身体に力を入れられないままに、抑えきれない声が出続けしまう。

 それが長時間続けば、徐々に声が掠れて、仕舞いには意識が飛ぶ。そうしてまたそこに刺激が与えられて意識を取り戻すのを、何度繰り返したのか。

 思考は溶けて、何も分からない。抵抗の筈の声はただの喘ぎとなり、抵抗の筈の噛み付きは甘噛みにしかならない。

 

 「ナミ……続きはベッドで、だな」

 「んっう……みほーく、さ……も、やめ……」

 

 最後まで言い切るより先に、キスで塞がれた唇。言葉ごと飲み込まれては、その先を紡げる筈もない。

 濡れた身体をいつ誰が拭いたのか、そもそも拭いてから移動したのかさえ覚えてはいないけど、身体の奥に広がる熱を感じて震えた時には、いつものベッドにいた。床に転がっている天候棒に手を伸ばす余裕さえ、既に失われている。

 それでもまたもやキスでもしようというのか、近付く顔を押し退けようとした時その手首を掴まれ、ベッドに縫い付けられてしまう。それが悔しくて、情けなくて、苦しい。

 

 「抵抗する事は、許しておらぬ。俺を、受け入れろ」

 「やっ……ぁ……!やァだ!もっ……やめ、アァッ!」

 

 奥まで深く繋がったまま反転させられ、中を掻き回すように擦られれば声を抑える余裕なんてない。ベッドのシーツに縋るように掴まれば、そのまま快楽と疲労で意識を奪われる。

 中に何度も放たれながら快楽という刺激を与えられ、意識を取り戻させられる。何処までも、ミホークを心と身体に刻みつけるように。

 

 「ナミ、俺のモノになれ。護ってやる」

 「や!ムリ!やめ、て……」

 

 哀願は無意味であるかのように、言葉と同時に身体をまたもや反転させられる。その衝撃に耐えようと息を止めれば、首筋に歯を立てられビクリと身体が震えた。

 そんな私にどことなく嬉しそうな声が降って来て、思考が白濁とするのを感じながらも同じ言葉を繰り返すばかり。どうしたら、この状況を打開できるの。

 

 「……無理?〝嫌〟ではなく、か?」

 「んっ……むり……あぁぁ!」

 

 霞む意識の中で、いくつか質問をされたのに対して、私はなんと答えたのだろうか。記憶のない間の問い掛けと、それに対する答えを知るのはきっと、この先もミホークだけなのだろう。

 

 「ナミはここが好きだろう」

 「好きじゃっな……ぃ……!」

 

 覚えているのは、必死で抵抗して悪態ついて、それでも終わってくれない絶倫な事実。そして、その仕草等のひとつひとつが無駄に卑猥である現実のみ。

 そして、鷹の目の体力が無尽蔵で、体力は普通の女よりだいぶある筈の私でさえこれなら、世間のお嬢さんなら生きて朝を迎えられないだろうという事だけを脳裏で思った。そんなのは、余計なお世話なのかもしれないけど。

 

 「気持ち良いと、素直に言え」

 「気持ちよく、なんて……ないっ!!」

 「そうか……ならば、激しくしても問題ないな」

 

 すでに幾度もイクという事を覚えさせられた身体は、その快楽に、激しい行為に、言葉だけで期待して強く締め付けた。それにミホークが気付かない筈もない。

 ギリギリまで引き抜き、勢いよく差し込まれるのを繰り返された身体は無様に悦ぶ。それを知っていて、平然と言うのだ。

 

 「ナミ、イク時は素直にそう言え」

 「いわな……ぃ……っんぅ……っ」

 「言えるようになるまで、続けてやろう」

 

 船室を満たすパンパンという卑猥な音。どちらが発したのが原因か分からない水音。

 耳さえ犯されているような気分になる。これがずっと続くのかと、絶望しそうになりながらも涙に歪む視界でミホークを睨み上げた。

 

 「これだけイカされ、中に放たれてもなおその気の強さか。……堕とし甲斐があるな」

 「んっ……も、やぁ……!」

 

 僅かでも逃げようと腕を動かすけど、それを悪用されて腰を持ち上げられれば、上半身はベッドに沈む。お尻だけを高くあげさせられて、お腹に腕が通されて力を入れられるだけで強制的に腰を動かされてしまえば、ミホークは動かなくても簡単にピストン運動ができてしまう。

 もう、解放されたくて言葉を口にする。それしかないと判断して。

 

 「も、むりぃ……イク……からぁ」

 「そうか。許可する。好きなだけイケ、ナミ」

 

 言葉と同時に動きが激しくなり身体が痙攣すると、そのまま完全に身体から力が抜けるのを感じる。なのにミホークは、そのままじっとしているのだからタチが悪い。

 疲れたんなら、抜いてから休んでよ。言ったんだから、解放して……。

 

 「言った、んだから……抜きなさ、い……よね」

 「断る」

 「はぁ!?」

 「言わねばやめぬと言ったが、言えばやめるとは言っていない。……残念だったな」

 

 そんなのってない。酷すぎる。

 そう思っても、今の自力では指先ひとつ動かせない。それでも呼吸を整えて全身を硬化してやろうと思った瞬間、身体を簡単に反転させられてしまう。

 そして空気に晒された胸に唇を落とすミホークに、抵抗する手段がない。こんな状態でも、身体はまだまだ喜んで強く締め付けるらしく、それを指摘されれば死にたくなってくる。

 でも、死ねない。まだ、ベルメールさんやノジコを解放できてないから。

 そう思うのに、筋肉質に見えないその細身からは考えられない力で抱き締められると、身体が軋む。そんな状態で続くピストン運動に意識が段々薄れて行くのを感じて、無意識で助けを求めた相手は大切な……。

 

 「ナミ、答えろ」

 「んっ……やぁ……だ……べるめ……さ……」

 

 その名を聞いた瞬間、ミホークはナミの意識がすでに朦朧としていると気付く。そうなれば問い掛けていくのは、当然とも言えた。

 気になる女から、気に入りの女になり、気の強さと甘さと、強さと儚さを同居させる女を求めてしまったのだから。欲しいと思った直後には泣かせたくないと思い、抵抗される度に殺しそうになる衝動を抑えながらも、涙を見るともっと泣かせたいと思ってしまう。

 人間とは、矛盾の塊なのだ。女海賊が誰か一人のものになる筈もないと知っていながら、その心と身体を独占したいと、無理ならば壊したいと衝動的に思うのは、心を子供のままにして身体と経験だけ成長させた海賊であるが所以なのかもしれない。

 喘ぎと悲鳴の合間に、元来素直なのだろうナミはミホークの問い掛けに答える。大切な人達がいるのだと、その人達を守る為だけに自分は存在しているのだと。

 だが、何もかもが足りないと嘆くように口にする姿は年相応か、それよりも幼く見えて慰めるように頭を撫でてしまう。だから問いかけは自然と甘くなる。

 

 「何が、足りない……?」

 

 力が欲しいなら、力を貸してやってもいい。知恵が足りないなら、誰かを紹介してもいい。

 金がないなら稼いでやっても構わぬ。体力がないなら毎日犯して、体力をつけてやろう。

 そんな凶悪な考えを抱く俺に、焦点の合わない瞳が、けれども強い輝きを持って告げる。自力で守ってみせると。

 

 「能力も……実力も……お金も足りない」

 

 悲痛な声で、何もかもを備えて見える女が告げる。嘆く姿が美しいとは……何とも悲運な女だ。

 少し待てば、ナミは言葉を続ける。それは嗚咽と喘ぎにまみれていて、何とも痛ましい。

 

 「私がもっと強ければ、倒して終わらせるのに……。強さがない。足りないんじゃないの、ないのよ。私は、傷つけるのが怖い。殺したくないの」

 「誰を、倒したい?俺が、殺してやる」

 「だめ、運命が、変わってしまう。アイツにも家族がいるのよ、そんな事できない……。運命に存在しない私のせいで、誰かが喪われていい筈がないわ」

 「運命……?」

 

 何を言っているのか分からず、ミホークは首を傾げる。そのまま泣き疲れて眠ろうとしているのに気付き腰を動かせば、愛らしく鳴くのだからやめられない。

 それでいて意識さえ朦朧としながら、逃げようとしたり武器に手を伸ばすのだから頂けない。ただ、武器と呼ぶには玩具に近いと知っているミホークとしては、やはり甘さが目立つのだが。

 

 「私がもっと賢ければ……みんなに、負担かけないで、守れたのに……最後の手段のお金も足りない……っのぉ……!!」

 

 強く突き上げれば身体は素直に達して、痙攣した後、力が抜ける。筋肉質な身体は締まりも良く、けれどもか弱い女であるが故の柔らかさもあるのだから嵌ろうというもの。

 幾度放っても満足できず、揺さぶり続ければ身体は堕ちるのに時折戻った意識が、ミホークを愛していない事を、堕ちていない事を伝える。それがミホークには憎らしく、衝動的に首に手を伸ばしかけるが、指一本で生命を奪えるからこそ触れるのを戸惑う。

 そんな自分を振り払うためか、中に幾度目か分からない熱を放つと、全身を痙攣させながら身体を完全に弛緩させた。それを見て、唇が僅かに笑みを作ったのは不可抗力かも知れない。

 

 「声は迦陵頻伽(かりょうびんか)を思わせ、姿は木花咲耶姫(このはなさくやひめ)。目を離せば羽衣で天に帰りかねない儚さ。なんとも不運を集めたような女だ」

 

 そっと髪をひと房指に絡め、ミホークは軽く口付け、そのまま刺激を与えてみるが、反応はだいぶ鈍くなっており、体力も尽きかけているのだろうとわかる。それでも聞き出さなければならない事があるので、己を引き抜き抱き上げると風呂場へと連れて行く。

 風呂場で清めてやりながら聞き出せた金額は、手持ちでは足りぬ。風呂場でも洗う名目で犯してやれば、完全に意識を戻さなくなったが、寝具に横たえた時静かに流す涙が欲情を誘う。

 

 「泣き顔が男の劣情を刺激するのは、望まぬ体質であろうな」

 

 そっとその涙を拭い、額に口付けを落としてから身支度を整える。まだまだ注いでやりたいが、それをすればナミは死ぬだろう。

 まだ幼くも愛らしい顔立ち。幼いまま止まっていると思われる胸の成長。

 これは精神的な所が起因しての、成長の遅れだろう。成長していたのならば、この身体が清いままでは有り得なかったのだから。

 

 「守られる者達は、ナミにそれを強いて平然と安寧に過ごせるのか。違うならば主がその大切な存在を傷付けているだろうに」

 

 意識の朦朧とした状態でもナミは、護りたいのだと嘆くばかり。存在理由は、彼等だけだと言い切る姿に……何故己を鑑みぬのかと思う。

 大切な者を守るつもりで、傷付けていると気付かぬ愚か者。それに気付けぬ程に盲目的な愛情は、ある意味毒となるだろう。

 

 「愛される者にも、ナミ自身にも、な」

 

 その甘美な毒を呑んでみたいものだ。そんな言葉を口に出したかは、当人にも分かってはいない。

 天夜叉からナミを逃がす為、船を沖へと進めてから様子を見に戻る。そうして離れがたくなり、戻った己を少しばかり恨んでしまう。

 ミホークにナミの香りが移り、ナミにもまた、ミホークの香りが移る。にも関わらず、ナミの心はミホークに少しも向けられはしない。

 ミホークばかり心を奪われ、住み着かれる。攫って閉じ込めて、犯し続ければ身体は手に入るだろう。

 だが、抱けば抱く程にナミの心はミホークから遠ざかる。身体ばかりが従順になり、それでも静かに涙を流すナミの心はミホークに向けられる事は無かった。

 

 「……愛している。ナミ、次会った時は、また笑いかけてくれ。……頼むから、泣いてくれるなよ」

 

 その呟くような声はナミには届かず、そっと朝日に消えた男を見送ったのは、意識を取り戻したばかりのニュースクーが一羽のみ。太陽は平等に世界を照らし、時は平等に刻まれて行く。

 一人意識を失い、体力も尽きたまま眠るナミは何も知らない。自らが何を本気にさせてしまったのかも、これから来る未来さえも。

 

 「う……ん……?」

 

 意識がハッキリした時には、全て何事も無かったかのように整えられていて、腰が鉛のように重とか、痛いとか、まだ挟まってるような違和感とかが無ければ、全て夢だと思い込めそうな程だ。けれど、自分から麝香の移り香を感じて、身体の痛みと重さが夢ではないと告げている。

 見ればクーちゃんの姿も無くて、朝になった辺りで飛んで行ったのかなと思う。……クーちゃんには、悪い事、しちゃったな。

 船が動いている気配を感じて、引きずるように身体を動かしてみれば船は海上にあり、島を出ていたらしいと知る。ミホークの気配は既に無く、ダイニングテーブルには大きな鞄が1つと、メモが残されていた。

 

『ナミへ

手持ちが主の言う額に及ばなかったが、足しにすると良い。約束は違えぬ。

天夜叉に主を差し出すつもりは無いので、船は出した。無事逃げ切れ。

二千万はある筈だ。次の逢瀬も今宵のように愛らしい姿を見られたら嬉しいが、それよりも再び会える事そのものを楽しみにしている。

ジュラキュール・ミホーク』

 

 どうやら私は、三千万ベリー足りないとでも口にしていたらしい。そして、私はミホーク相手にどうやら見事に商売して見せたらしいと知る。

 それにしても一晩で二千万ベリーって、どんだけよ。凄い、流石はナミちゃんの肉体。

 そんな事を思って、でもとりあえずはと用意していた栄養剤と鎮痛剤を水で流し込んでから、船をココヤシ村に向けて動かし始める。運命の時はもう、迫っていると知っているから。

 でも私は分かっていなかった。この先に待つ、避けようのない残酷な現実を。

 何故なら、記憶から綺麗さっぱり消えていたから。だってほら、夜が濃厚すぎたもの。

 現在位置を途中で見えた岩で把握して、船を動かしていたその時、大きな影が私の上に掛かった。それに気付いた時には既に拘束されていて、甲板に降り立った男はフッフッフッと笑いながら身動きの取れない私に歩み寄ってくる。

 つまりそれが、始まりのゴング。それでも戦える相手では無い事くらい、私にも分かっていた。

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