※この作品はR-18です。

波間の向こうを目指して   作:夢枕 七変化

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新たな友人

 シャンクス達は1~2週間フーシャ村に滞在し、修理や補給を行うとまた航海に出るのを繰り返していた。そのサイクルの中で、私とウタは2~3回に1回は村に残されてしまう。

 子供を連れていては問題のある所へ行く時に置いて行くのはわかるけど、ウタとしては辛いだろうと思えばこそ、私はつい甘やかしがちになる。だって、私がいるから今はいいけど、いなければ……ウタはいつもひとりぼっちだったのよ。

 私のように中身がオバチャンなら残されたっていい。でも、ウタは正真正銘の幼い少女で……追求せずに送り出すのは、認めてるのでも、理解してるのでもなく、諦めているのだ。

 それが分かるからこそ、苛立たしい。こんなにも可愛い娘を置いて行けるその神経が理解できないのよね。

 フーシャ村に残っている間は、酒場と直結している宿に宿泊させて貰える事になっていたので、私はそういったタイミングで蜜柑洗剤を作って自分とウタの物として使っていたし、ベルメールさん達にも定期的に手紙を出していた。シャンクスがいない間はルフィが私にベッタリで、最初のうちは何度もどうしてナミは船に乗せて俺は乗せてくれないんだと騒いで大変だったけど、最近ではウタがその潤滑剤になってくれている。

 ウタとルフィは事ある毎に勝負だ!と言って争う。それが早食い競走やら可愛さ対決やらで平和なのもあり、基本的には放置してたりするんだけど……。

 叫ぶようなウタの声が聞こえて来ると、その限りでは無い。何かあればすぐ動けるようにしつつ、作曲を続けて行く。

 

 「もうっ!いい加減にしてっ!!ルフィはナミとシャンクスに近付かないでー!」

 「何でだよ!ナミは俺のだぞ!」

 「何がどうなったら、ナミがルフィのものになるのよっ!?ナミは、私のお母さんになるんだからっ!!」

 

 間髪入れずにウタが言う。その言葉にか、勢いにか、ルフィが黙った。

 やはり女の子には口で勝てないのだろうか。そうなると、ベックマンって口だけで勝てるんだから相当だって事よね。

 ……あれ?面倒になると黙って実力行使するから、口で勝ってるわけでもないのかな?

 そんな事を考えて悩んでいると、ルフィから珍しく真っ当な返答。それにウタは何故か勝ち誇ったような顔で笑うのだから、眺めてたり聞いてるだけで飽きないのもわかって貰えると思う。

 

 「……母ちゃんには、後からはなれねェだろ?」

 「ふふん、ルフィはコドモね!シャンクスは私のお父さんなんだから、ナミがシャンクスと結婚したらナミは私のお母さんよ!」

 「シャンクスとナミが、ケッコン!?駄目だ!ナミは俺のだっ!」

 「だから、ナミは私のっ!」

 「俺のだっ!!」

 

 二人のやり取りは可愛くて微笑ましいけど、私はベルメールさんとノジコのものよ。だから、二人のものにはなれないの……とは、心中で。

 そんなやり取りを聞き流しながら書き上げた曲は、こうして共に数年過ごしたからこそ思い出せたのかもしれない。ねぇウタ、私はこの歌のように、本当にずっと傍で守りたいと願っているのよ。

 でも、かなわない事も知ってる。だから、その想いを込めて、ただ音を響かせたいの。

 腰にさしていた笛を抜き取り、そっと唇に押し当てる。そうして音を奏れば、ルフィは黙りウタは笑顔で飛び付いてきた。

 

 「ナミ!私、その歌知らない!歌って!」

 「歌うのは、ウタの役目でしょ?」

 「その歌はまだ知らないもん」

 「楽譜を見れば歌えちゃうクセに……仕方ない子ね」

 

 クスクスと笑いながら、そっとその頭を撫でる。そして、マキノさんにピアノを借りられないかと視線で問えば、即座に頷いてくれた。

 ウタが歌ってくれるなら、笛を吹けばいい。でも、自分で歌うなら笛は無理だもの。

 

 「『明日は来るから』」

 

 題名を告げて伴奏を入れる。ハミングが本来ならば入った筈だけど、今回は無しにさせてもらうつもり。

 この曲は日本語なのに、韓国の人達が歌っていたのだけれど、それを感じさせない優しい歌だったと思う。問題は五人で歌っていたから、交代で休めるのもあって間奏が一箇所しかないところ。

 その上、バックコーラス的に重なる歌詞が多いのだ。歌える範囲でそっちも歌うけど、完全に重なる所はどうにもならないわよね。

 

 「ーーー」

 

 確かに目の前にある筈の、周り中に舞い降りて来た雪でさえ手に落ちては溶けて消えて行く。皆と過ごしている今も、それは同じようなもの。

 ねぇ、大切な事は壊れやすいなんて、そんな事を言って見てるだけでは、傍に残してはおけないよ。だから、私達は静かに漂う事しかできないのかな。

 それが皆の優しさだと知ってるけど、同時にそれは残酷でもあるわ。どうかせめて、ウタの事だけは……その手に掴んで欲しいと願う。

 

 「ーーー」

 

 はるかな海の片隅で、こうして出会えた偶然の奇跡。ウタにこの気持ちが伝わればいいのに。

 届いて欲しい、伝わって欲しいと願う気持ちは、上手く言葉にできない。あなたはひとりぼっちじゃないんだよ……も強く抱き締めて、離さずにいたいのに……それさえ上手くいかなくて。

 そのまま最初で最後の間奏に入る。ウタは瞳を輝かせて聞いているし、ルフィも凄い凄いと全身で示す。

 きっと私が歌い終えたら、ウタが今度は歌うと言い出すだろうから、その時私はハモリを入れてあげよう。シャンクス達が帰ったら、この歌を聞かせたいだろうと思えばこそ、無邪気に喜ぶ姿が殊更に愛しく感じられる。

 そっと息を吸い込む。この先、一人で歌いきるのならば、間奏なんてものは存在しないから。

 

 「ーーー」

 

 ただ、伝えたい言葉が上手く形にできなくて、迷ってばかり。答えを探して、黙ったまま生きて来た。

 今になってひとつの答えを見付けた気がして、追い掛けてる。この未来を追いかければ、本当に誰も不幸にしないで済むのか……なんて確約は無いのに、ううん、だからこそ落ち着かないのよね。

 

 「ーーー」

 

 何度も立ち止まりながら、涙と笑顔に見送られて先へと進もうと足掻いてる。皆と歩いてるこの道のりの先に、家族の幸福が有ればいいとそれだけを祈って、望む真実に突き進む。

 その家族の括りに、いつの間にか増えた人達。守りたい人が、幸福になって欲しい人達が増えていく。

 

 「ーーー」

 

 血の雨が降るなら、その身を汚さなくてすように傘となり庇うわ。風で倒れそうだと言うなら、壁となり守り抜く。

 どんなに闇しか見えない深い夜でも、明けない夜は無いと囁くから……。だから、幸福でいて欲しい。

 そばにいられる限り、守ると誓うから。だからどうか、その心を曇らせないで。

 

 「ーーー」

 

 春に咲く花を見て笑い、夏の砂浜で駆け回る姿。秋の黄昏を悲しそうに見詰め、冬の陽だまりにホッとした様子を見せるその仕草。

 そんな全てが愛しくて、守り続けたいと願うの。いくつもの季節が巡って、重ね合う祈りがいつか大切な人達の糧となれば嬉しい。

 歌の終わりに、大きく息を吸い込む。ここは、最後の息継ぎとも言える場所だから。

 

 「ーーー」

 

 この偉大な海の片隅で、想いを歌にする。奇跡のような出会いが齎した、愛しいという気持ちを伝えたくて。

 

 「ーーー」

 

 何度も立ち止まりながら、悩みながら、それでも笑顔を涙を守りたいから。この先何が起きても、これまで共に過した時だけは消え去る事はないのよ。

 時が過ぎても、過去になっても、事実は消えない。大切な思い出は、いつか心を支えてくれるわ。

 

 「ーーー」

 

 雨が降るならそれを吸って成長しよう。風に揺れて、楽しく歌えばいい。

 どんなに闇の深い海にも、生きる物はいるのだから。必ず、私は家族の味方であり続けるわ。

 愛しい家族に伝えたいの。必ず、輝く未来が存在すると。

 歌い終えて、演奏を終える。すると、ルフィが呆然とした顔でこっちを見てるのに気付く。

 それに笑ってしまえば、顔を真っ赤にしたルフィが突撃して来て、ウタの演奏会を開くのは少し先になりそうだと思い知らされた。だって、こうなったルフィは中々離れてはくれないのだもの。

 ルフィがナミに飛び付いたのを見ながら、ウタは今の曲を脳内で反芻していた。泣かなかったのは、奇跡と言えるかも知れない。

 明日は来るから……と告げてから歌い出したそれは、これまで知らなかった母親という存在を彷彿とさせるものだったから。始まった音は美しく、優しい音色で、歌い出しは冬の物悲しさを伝えた。

 静かに漂っているのは、私か、それともナミかと考えた時、歌で愛を伝えられて、歌には想いを届ける力があるのだと思い知らされて。……その暖かくて悲しい愛に、震えて崩れそうになる足を必死に耐えたのだ。

 なのに、間奏に入った時のナミが余りにも儚くて、消えそうに思えて……本当に歌に関する悪魔の実を宿していないのかと疑わしくなってしまう。それ程、浮世離れしているのは、その大人びていると言う言葉では言い表せない程の余裕と落ち着きが理由だろうか。

 ねェ、ナミは何を追い求めてるの?

 私を守る為なら、簡単に身を呈してしてまうその戦い方が悲しい。それは、シャンクス達への信頼が理由ではないと、分かるからこその悲しさ。

 笑顔も涙も、二人で積み重ねたいのに、ナミはいつもその背に庇い胸に抱き締めて、その全貌を見せてはくれない。傷も、悲しみも、痛みさえ感じさせないで、微笑むばかり。

 庇わないで、守らないで、私と共に生きて傍に居てくれたら他には何も望まないから。お願い、孤独の闇にまたひとりぼっちで残さないで。

 季節が過ぎる度に、強くなる焦燥感。いつ、喪うのかと心が悲鳴をあげそうになるの。

 大きく息を吸ったナミを見て、締めに入るのだと気付く。これで、自分の歌がそれ程上手いわけじゃないと本気で思ってるんだから恐ろしい。

 ナミは、私が憧れた最初の歌手だと言うのに、その自覚が欠片もない。ナミは、私に甘いけど、物凄く残酷なんだって自覚してくれないのよね。

 歌い終えたナミが鍵盤から指を離せば、泣きたいのを耐えてる間にルフィが飛び付くから、ナミは私のよと駆け出す。やっと手に入れた傍に居てくれる優しい存在を、ぽっと出の少年に奪われたくないと、それだけを思っていたの。

 

 「こら!ルフィもウタも辞めなさい!ナミが潰れちゃうわよ!」

 「「マキノはどっちの味方なの!?」」

 「どっちとか、そう言う話じゃないでしょ?」

 

 二人のシンクロする声と言葉に、困ったように笑うマキノさんに苦労かけてるな……と思うけど、正直少し助かった。子供は遠慮も容赦もないから、結構苦しかったのよね。

 離れたわけじゃないけど、意識が他に向いた事で少しだけ力が緩くなる。本気で抜け出したいなら今がチャンスだけど、そんな事をしたら二人が泣いてしまうから……と眉を寄せた。

 

 「わかった。なら、次の航海では俺も連れてくなら離れてやるっ!」

 「私にそんなの決められるワケ無いじゃない!シャンクスに言って!そして、ナミから離れて!」

 「ウタ、ありがとう。大丈夫よ」

 

 私を守ろうとしてくれるウタの頭を撫でて、ルフィを真っ直ぐに見詰める。こうなると二人ともちゃんと離れて話を聞いてくれるし、元来素直で優しい子達なのだ。

 我儘を言うには、言うだけの理由がある。この子達はただ、寂しいのだ。

 

 「ウタはシャンクスの娘で、音楽家。だから船に乗せて貰えるのよ。そして、私は航海術が使えるから乗せて貰えるの。……今のルフィは何も出来ないから、乗せては貰えないわ」

 「俺は強いぞ!俺のパンチは、ピストルよりも強いんだ!」

 「どこがよ!ヘナチョコぐるぐるパンチしかできないじゃない!」

 

 ルフィの言葉にウタが間髪入れずに言う。その言い分は正しいかもしれないけど、初めからできることなんて何も無いのだと言う事をウタはまだ分かってない。

 初めからある程度できた人は、挫折も早い。だからこそ、今は弱々しいルフィは最強の存在になれるのだろう。

 弱さを知るから、強くなれる。痛みを知るから、優しくなれるのよ。

 

 「なんだと!?」

 「なによっ!!」

 「ハイハイ、二人とも辞めなさい。……ルフィ、強さだけでは船には乗れないわ。強さだけで船に乗るには、船長にでもなるしかない。……シャンクスは船長だから、ルフィと一緒に航海する事はできないってことになるわね」

 

 まさかこの時の会話が理由で、ルフィは船長以外になる気がなくなったのだとは、随分先になるまで知らなかった。こればかりは、私の責任ではないと声を張り上げて主張させて貰いたい。

 ……この頃、私は何度も何度も同じ夢を見るようになっていた。それによって飛び起きる事も少なく無くて……情けないと自らを叱責するも、改善は見られないのが辛いところ。

 これがただの悪夢ならばいいのに、何故か単なる悪夢ではない気がする。だから……私はその夢を見る事を辞めたくないとさえ、心の何処かでは思っていたのかもしれない。

 雪の舞う船の中に裸の女が座り込んでいる。アレは、原作のナミちゃんなのか、それとも私なのか。

 髪の長さの他はそのままの容姿だから、どちらなのかを判断する事が出来ない。取り敢えず18歳の私か20歳のナミちゃんまたは私が、裸で雪の中にいる。

 その状態で出逢う大き過ぎる人。彼は……ドフラミンゴの弟、コードネームコラソンで2代目だった筈。

 本名ロシナンテだった筈の彼の傍で、幼いローが冷めた眼差しで睨み付けて来るのが、雪よりも冷たそうに見えてしまう。コートを貸してくれて、ローを預けたロシナンテが雪の中を駆け出して私の衣服を用意してくれる。

 夢の中で、裸の状態であるのに幼いローを抱きしめている私らしき人は、どうやらローちゃんが可愛くて仕方ないらしいと気付く。幼い子供が好きなのは、ナミちゃんと私の共通点だと思ってるんだけどね。

 だからこそ、どちらなのか理解できない。私なのか、ナミちゃんなのか。

 ただ、この夢にあるシーンが現実には有り得ない邂逅なのは理解している。何せローちゃん……では無くトラファルガー・ローはナミちゃんよりも歳上。

 更に、この夢で初対面を果たしたロシナンテは、ナミちゃんがこの年齢に達する頃には既に実の兄であるドフラミンゴに殺されていた筈だから。そんな奇妙な夢の中でも、何か情報はないかと必死になってしまう。

 そんな時に夢の中の人物がナミと名乗った事で、私だと気付いた。名乗り方が、ナミちゃんと私では違うからと言うのが分かった理由かも知れない。

 夢の中の私はローちゃんを助ける手伝いをして、ローちゃんが生きられるように手伝いをする。どうして大人の私がその場に居るのかとかを無視するならば、有り得そうなところが怖いけど。

 夢の中で、ロシナンテを死なせたくないらしい私が、2人を残して飛び出して行く。悪魔の実を食べたばかりのローちゃんと、戦闘には向かないロシナンテの能力で、ドフラミンゴとの戦いは無謀な事だからだろうか。

 それでも彼は海兵の筈。それも、正義を背負う権利を持った肩書きを持ってる。

 それなのに、庇いたいと、守りたいと思うのは……原作を知ってるから。どうにかしてその生命を繋ぎたいのだと、分かってしまうの。

 駆け出した私は、二人から少し離れた所で騒音をたてて注目を集めたかと思うと、ファミリーと共に姿を見せたドフラミンゴと対峙する。その絶望的な構図に、けれども余裕の表情で立ち、挑発する姿は自信に満ち溢れているのと同時に覚悟を決めていると伝わって来て……それ程までに大切なのだと伝わってしまう。

 だからなのか、ドフラミンゴの顔に青筋が立つ。そんな相手に、ドフィ……なんて艶やかに呼び掛ける私に対して辞めなさいと言いたくなるのは、傍観者の立場だからね。

 だって、きっと……私もその時になったらやるだろう事はわかってるもの。警戒心剥き出しだったローちゃんが、大切な人を喪わずに済むようにするには恐らくこれしか方法は無い。

 守りたい……と、願ってしまった。だからこそ挑発的に、既に保護されていると言いながら笑う私に、ドフラミンゴが糸を放とうとして……僅かにその指先を迷わせる。

 それでも糸は結局放たれる。その戸惑いが意味する所を、幾度繰り返して見ても私には理解できないのだ。

絶体絶命のピンチ。この先で切り刻まれるのだろうか、それとも拘束されて拷問にかけられるのだろうか。

 そう思った時、糸が迫るその瞬間だけ第三者視点から私の立場に視点が切り替わり、襲い来る攻撃に内心悲鳴を上げている状態で……私は飛び起きる。どちらが現実か分からなくなる事はないけど、脂汗が滲む。

 目覚めて暫くは脈も落ち着かない。でも、あれのお陰で多分二人は助かっただろうと思えば少し気が楽になる。

 懐いてくれた幼くも可愛いローちゃんと、ドジだけど優しくて暖かいロシナンテの幸福がこの先にある事を願えるから、きっとこの夢は不幸なものでは無い。そんな中で気になるのは……ドフラミンゴの事。

 サングラス越しだから絶対とは言えないけど、弟に裏切られた事に絶望しているその姿は、まるで飼い主に飽きたからと捨てられてしまったペットのように見えて……。胸が締め付けられる。

 あの場に本当にいたら、恐らくは殺されていただろうと思うのに、抱き締めてその頭を撫でて、孤独なんかじゃないのだと、世界には優しさや愛情も沢山あるのだと教えたくなる程に、悲痛な叫びが聞こえてくるような雰囲気。どうして……ただの夢なのにこんなにも鮮明なのか。

 元々はドフラミンゴにそれ程興味が無かった私なのに、夢で見る度に彼の孤独と絶望が深過ぎる事に気付いてしまう。何も出来る筈もないのに、少しでもその心が癒させたら良いなんて願ってしまうのは愚かな事かな。

 

 「んー……?ナミ、起きたのか?」

 「ルフィ……おはよう」

 「……こわいやつ、夢に出たなら、俺がやっつけてやるぞ」

 「ルフィは、カッコイイね。ありがとう」

 

 そっと頭を撫でると、寝ぼけた顔で私を見て腕を掴んだかと思うとそのまま眠ってしまった。そんなルフィに笑っていたら、逆側からやはり私を呼ぶ声が聞こえて来る。

 振り向けば不満そうなウタがいて、大好きよと笑いかければ漸く笑顔を見せてくれた。その笑顔のまま飛びつかれれば、腕をルフィに拘束されてる私には、避けるなんて事は許されないので迎えいれるしかない。

 襲って来た衝撃に耐えてると、ウタが寂しそうに言う。それは消え入りそうに、小さく掠れていた。

 

 「ナミは、ルフィの方が可愛いの?」

 「……ウタ、大好きよ。でもね、どっちが好きかとか、可愛いかなんてのはその時で変わるからなんとも言えないわ」

 「ナミって、狡い」

 

 少しだけいじけた様子で、でも、どこかホッとした様子で言葉を紡ぐウタに、私は笑ってしまう。

 いつもお姉さんぶりたがるのに、私と二人の時は年相応な姿を見せてくれるから。その信頼が、甘えが、こそばゆくも心地好く感じてしまうの。

 

 「ふふ、ごめんね」

 「いーよーだ!……そんなナミが好きだもん。私、ナミに大切にされてるの分かってるから、それでいいの」

 「……うん。ごめんね、ウタ。私、嘘ついたわ」

 「え?」

 

 不思議そうに首を傾げるウタの為にそっとルフィの腕を離して、ウタへと腕を伸ばす。そうして抱き締めると戸惑いを隠さないから、素直に言葉を紡ぐ。

 ここで伝えなければ後悔する。これだけは、間違いないと断言出来るわ。

 

 「ウタは、私の大切な家族よ。愛してるわ」

 「ナミ……!」

 「ウタは、赤髪海賊団の娘。なら、私の娘でもあるのよ。世界一愛しい私の愛娘に決まってるじゃない」

 「ナミっ!!」

 

 いつまでもこんなやり取りをしてたら、ルフィが起きない理由が無い。そのままルフィとウタが喧嘩始めるところまでが、ルーティン。

 これがひと月続けば流石に疲弊して来るけど、他には何も問題等無いから、私はシャンクスのいない今の内にしか出来ない事をいくつかこなして行く。その為に気持ちを切り替えようとシャワーを浴びてから、身支度を整えて出発した。

 ルフィとウタは私がシャワーを浴びてる間に、二人で仲良く競い合いながら朝食を食べるのを知っていたので、特に心配はして無い。マキノさんに二人を宜しくねと声をかけて酒場を後にすれば、そこからは一人の時間。

 町中でスリをしながら進み、インク等の消耗品を買い込んでいたらエースとサボの気配を感じてその場を飛びずさる。か弱い女の子に突然棒で殴りかかるなんて、何を考えているのか。

 

 「……女の子一人に男の子二人が武器で襲い掛かるなんて事、していいと思ってるの?」

 

 キッと睨み付けながら言う私に、エースはサボに視線を向けてほらな?なんて言う。サボはサボで本当だ……なんて言っていて、反省してる様子は無い。

 エースの発案で襲い掛かってきたらしい事は、今のやり取りと先程の攻撃で分かる。エースは躊躇いも何も無くて、サボは戸惑いと躊躇いをその武器に纏わせていたから。

 それでも、巫山戯るなインクが割れたらどうしてくれると思った私は二人に回し蹴りを食らわせて、エースの腹部に足を落とす。それによりグッと呻くエースを見下ろして、サボにも視線を向ける。

 仰向けで女の子に踏みつけられてるのに動けないなんて、初めての体験だろうなと少し思う。普通なら跳ね除けられる筈だけど、私は多少だけど覇気を使えるから、子供の力で抜け出すのは不可能。

 

 「……一言、謝罪さえすれば許してあげたのに。先に手を出したのは君達よ?……覚悟は、出来るわよね」

 「待ってくれ!悪かったよ、話を聞いてくれないか」

 

 サボが慌てた様子で言うから、悔しそうに睨み付けて来るエースに視線を投げてから、そっと足を退ける。それからわざとらしく溜息を落として、話を聞いてあげるわなんて答えたのは……きっと、毎晩見るあの夢のせいで気が立ってたから。

 二人について行くと、木の所に上手く作られているツリーハウスもどきの隠れ家に到着した。そこまで二人は猿のように登っていくので、私もそれを見守って目的地を把握してから、ピョンと飛び上がってそこへ行くと二人から妙な顔をされてしまう。

 何かおかしな事でもしたかな?……普通にここまで来ただけよね?

 ……あ、スカートの中が見えたのかな。うん、思春期だもんね、気になるか!

 一人で納得しつつも、その事を蒸し返す必要性を感じ無かったから、本題に入る為言葉を向ける。高圧的になってしまわない事を内心で祈りながら。

 

 「それで、話って?」

 

 便箋とかインク等の入った袋を小屋の入口近くに置いて二人を見ると、二人は奥に入り腰を下ろしたから私も入口付近で腰を下ろした。そんな私にエースが嫌そうに口を開く。

 これがもし、もっと期待を込めてとか、助けを求める様子なら返事は変わったのかな。そんな事を僅かに思いながらも、間髪入れずに答えたそれは本心。

 

 「お前、強いみたいだから、一緒に行動しないか」

 「断るわ。私忙しいの」

 

 心底嫌そうに言ってる様子から見て、私が快諾すると思っていたらしいエースは驚愕の眼差しで私を見て来るけど、そもそも私はこの島に居着くつもりは無いのよね。私には強くなって、ベルメールさん達を守る使命があるんだから。

 ルフィもエースもサボも自力で生き抜けるから、心配していないというのもあって、今は関わりたくない。だから名前も教えるつもりはな、いの……よ?

 

 「ナミー!どこだー?ナミー……!」

 

 なのにっ……泣きべそかきながら人の名前を連呼するルフィの声に、私は脱力感と共に深く溜息を落として、エースとサボに視線を向ける。そもそも、ウタはどうしたのかな。

 二人でいた筈なのに、どうしてルフィは私の名を連呼してこの場にいるのか。ただ間違いなく、予定外に名を知られてしまった事だけは間違いないわね。

 

 「今はまだ、足手纏いにしかならない弟みたいなのがいるから、私ではエースやサボの期待に応えられないの。他を当たって。まぁ、あの子ももう少ししたらそれなりになるから……嫌わないで欲しいところだけど」

 

 そんな事を言ってから荷物を持ってルフィの所へと降りて行くと、ルフィは泣きながら飛び付いてくる。それを受け止めてどうしたのよと声を掛ければ、知らない子供達と森に入るのが見えたから追いかけてきたけど、見失って怖くなったらしい事を必死に訴えて来た。

 ウタの事を聞けば、どうやら一人で歌の世界に閉じこもっていて反応がなくなってしまったらしい。つまり、寂しくなった頃私を見付けて追いかけて来たという事だろう。

 本当にこの時のルフィは可愛い。これが未来の海賊王かと思えば、何が起きても不思議等ないのだと痛感させられる。

 

 「……探しに来てくれて、ありがとう。帰ろうか」

 「でもよ、ナミは用事だったんだろ?」

 

 そう思うならついて来るでない!と言いたいのを飲み込んで、ルフィの頭を撫でる。そう言えば、この時点では、私の方が少しだけ背が高いのね。

 今回は危険な相手じゃ無かったから良いけど、もしもコレで私が稼ぐ為に危険な所にいたらと考えたらゾッとしない。この子を傷付けたくは無いのよ。

 

 「大丈夫よ。でも、荷物少し持ってくれる?重たくて」

 「おう!全部持ってやる!」

 「ありがとう、落とさないでね」

 

 インクだけ回収するかとも考えたけど、ルフィは普通の子供よりは断然力もあるし、ダメになったらまた買えばいいかとルフィに荷物を託す。任されたりしながらやれる事を増やして行く事で自信がついて、人任せではなく自分から色々やる人に育つとか聞いた事あるわ。

 買い物の時も、卵とってカゴに入れてくれる?とか言って役目を与えた方が、ちゃんと大人しく着いてくるとかね。そうやって参加したりしながら見ている内に、買い物のやり方を覚えて一人でも買い物が自然とできるようになる……なんて事もあるらしい。

 そんな事を考えてルフィを見詰めていたら、そこへエースとサボが降りてきた。その流れで試すように襲い掛かってくるのが分かり、咄嗟にルフィを抱えてその場を飛びずされば、サボが口笛吹いて拍手して、エースは愉しそうに笑った。

 ……流石は海賊王の息子と言いたくなるような凶悪な笑みを浮かべられれば、ルフィを庇うように前に立って対峙するしかない。驚いて反応出来ないでいるルフィだったけど、すぐに何すんだよと言って殴りかかろうとするから慌ててそれを止める。

 

 「ルフィ!私の荷物お願いしたでしょ!今は辞めて!」

 「でもナミ!」

 「ルフィが強いのも、優しいのも知ってるわ。だけど、私が買い物した物を持ってくれる約束でしょ?」

 「……わかったよ」

 

 ルフィは話せば分かってくれる。決して、馬鹿だけど愚かではない。

 ……この彼が世界中に愛される、いい男になるのだから世界は不思議で満ちていると思う。まぁ、今も充分すぎる程に可愛いけどさ。

 

 「ルフィってのか、お前。女に守られて、悔しくないのかよ」

 

 エースが挑発するように笑えば、ルフィはグッと唇を噛んで俯く。それを見て私がエースを睨めば、息を飲んで一歩後ずさった。

 子供の戯言。だけど、言われてるのはエースよりも幼い子供だから、言われる原因になった私が守るべきだわ。

 

 「……ルフィは、まだ幼いだけ。すぐに強くなるわ。それに……私が勝手に守ってるだけだから、ルフィに非は無い」

 「ナミ……俺……」

 

 悔しそうにしているルフィの頭を撫でて、笑いかける。今はまだ本来会う筈じゃ無かった三人が、この場で揃ってしまった。

 原作ではまだ会う予定も無かった筈なのに会わせてしまった事で、何か変わるかもしれない。ならばその罪咎は、すべて私に向けられるべきだわ。

 

 「ルフィをいじめないと言うなら、さっきの話もう少し詳しく聞いてあげてもいいわよ?」

 「ナミ?さっきの話って?」

 

 心配そうに聞いてくるルフィが、自分の置かれた状況を心配したり不安に思ってるのは勿論ある。でも今声をかけてるのはそれが原因ではなくて、同じ年頃の友達である私を……心配してくれているのだと分かるから、嬉しくなってしまう。

 なんて可愛くていい子なんだろうかと思えばこそ、抱き締めて頭を撫で回したい衝動を必死で耐えるしかない。今ここで抱き締めて撫で回したら、おかしな奴以外の何者でもなくなっちゃうもの。

 

 「……ルフィ、お前幸せ者だな。ナミはお前の姉ちゃんか?」

 

 私が煩悩と異種格闘技戦を行ってる間に、サボが少し寂しそうな声でそんな事をルフィに問い掛ける。すると、ルフィはキョトンとした顔で違うと言う。

 確かに違うけどね。でも、少しは悩むとかしてくれてもいいのに。

 そんな風に落ち込んでるとも、いじけてるとも言える心持ちでいた。そんな私の負の感情を吹き飛ばしたのもまた、ルフィと言う存在。

 

 「ナミは俺の仲間になるんだ!俺は海賊になるから!その時ナミは俺の仲間になって、コーカイシとして一緒に居てくれるから、その時は俺がナミを守るんだ!船長だからな!」

 「……ルフィ?私はそんなの一度も誘われて無いし、私は忙しいんだっていつも言ってるでしょ?」

 「でもナミは俺のだろ」

 

 疑う事の無い真っ直ぐな眼差し。当然のように確信を持って紡がれる言葉に……私は肉体での言葉を失う。

 ……何言ってるの、この子。私は私のものよ、いいえ、私はベルメールさんとノジコのものよっていつも心の中で言ってるのに。

 学習しない子ね……と深い溜息を落としてからその頭を撫でて軽くデコピンする。それを痛がるルフィを無視してサボに視線を向けて、声を掛けた。

 

 「……阿呆だけど、可愛いでしょ?私の友達よ」

 「「お前、鈍いな」」

 

 エースとサボの声が重なった。何が鈍いのか。

 動きが鈍いの?ルフィを庇う速度が?

 それは困る、やっぱりもっと真剣に修行しないと。二人に指摘される位、私はまだまだ弱いらしい。

 

 「……ナミって言うのか、お前」

 

 エースは、これ迄の話と私の思考を打ち切るように言葉を紡ぐ。そんなエースに私は素直に頷いてから、首を傾げる。

 それを見たエースが何故か少し顔を赤くするから、熱でもあるのかと咄嗟にエースに手を伸ばした。驚いた表情をするエースを無視してエースの首に腕を回してから、エースの額に自分の額をつければ、少し熱い。

 それもどんどん熱くなっていく。流石にこの体温は危険だわ。

 

 「……エース、熱あるじゃない!っとに、サボ!休ませられるところはある?」

 

 サボに問い掛けながら、エースを横抱きに抱えるとエースはじたばたと暴れ出すから、それに大人しくしなさいと一言告げて、そのついでに首の後ろに腕を回すように言う。その方が抱えてる側としては楽なのだ。

 ウタを抱く事も多いから筋力はそれなりにあるけど、やはり自分とほぼ同じ体格の男の子は少しキツい。だから言ったのに、えは更に体温を上げつつ苦しそうな様子で戸惑いをみせる。

 でも正直限界に近い。早く首を抱いてくれと、強く願う。

 

 「エース、早く抱いて……」

 「っ!わ、かった……」

 

 どんどん上がる体温に、これは不味いと内心で焦る。エースが病気になるなんて、考えた事も無かったのに。

 サボのこっちだと言う声に従って歩く。ルフィも私の後ろからついてくるので、どうやらエースが心配らしいと分かる。

 サボに案内されたのは先程とは違う別な隠れ家のようで、そこにエースを寝かせられそうな場所があるのを確認して寝かせると、ぐるりと建物を見渡す。水も火も建物内では使えそうにないと理解して、私はサボに薪になりそうな物が欲しいと頼む。

 それからルフィにエースが動き回らないように見張っててと言って、近くに居るだろう獣を仕留めに向かう。取り敢えず、何か食べさせてから薬飲ませないと。

 悪魔の実……メラメラの実を食べてからならまだしも、今あれだけの熱があるのは不味いとしか言えない。何だって隠すのかと考えて、サボは信頼できてもライバルだから言えなかったのかなと思えば切なくなる。

 クリマタクトがあるから、水を汲まなくて済むのは正直助かるし、獲物を確保するのも簡単になった。薪があれば、火起こしも簡単なのは素直に有難いわ。

 取り敢えず適当な獣を倒して持ち帰ると、小屋の前で火を起こす。それから簡単にその獣を捌いて焼いて行けば、涎の大洪水を起こしそうなのが待っているような幻覚に襲われる。

 どうせ彼らの食欲じゃ一瞬で消えるのは分かりきってたので、残す事とか保存なんて考えないで全て調理して行く。巨大な葉の上に積み重ねた肉の匂いにつられて出て来たルフィとエース、そして戻って来たサボに食べるよう言えばあっという間にそれらは消費されていった。

 その肉の内一つを私が食べ終える頃には、彼等は綺麗に完食してくれていて凄いなと思う。私は一つ食べ切るので精一杯だと言うのにと笑いながら見ていたら、エースとサボが何処か気恥ずかしそうにしているのに気付く。

 それからすぐにエースに解熱剤とビタミン剤を渡して、飲むように言う。流石にこのままじゃ、栄養が偏り過ぎてしまうわよね。

 

 「これは?」

 「解熱剤とビタミン剤。元手かかってないからタダで良いわよ」

 

 これを作りたくて色々考えて調合してたら、ルーに俺の飯は不味いのかと泣かれたのは記憶に新しい。でも、食糧難に陥った時の事や、怪我や病気が酷くて食事が喉を通らない時の為にも作りたかったのよ。

 ホンゴウが取り成してくれて、ベックマンも協力してくれたからなんとか完成に漕ぎ着けたんだけどね。そんな事を思い出したら、少し表情が緩むのを自覚した。

 そんな私の様子を伺いつつも、エースは怖々とそれを飲み、サボも不安そうにしている。それを見て、私はサボにもビタミン剤を手渡しつつエースに部屋で寝てるようにと言えば、何故か反論もせずに小屋へ帰って行ったのでその背を見守る。

 

 「ナミはさ、何でもできるんだろ?」

 

 ルフィの突然の言葉に私がへ?と言うのと同時にエースとサボも動きを止めてルフィを見る。なのにルフィはまるで今日は雨だと言うような気楽さで、私を見ているだけ。

 早く休むように声をかけるべきだと思うのに、それも出来ずに言葉を待つ。それはきっと、エース達も同じなのだろう。

 

 「マキノとウタが言ってた。ナミはコーカイジュツも持っててソクリョーも出来るし、イガクにも明るいからシャンクスさん達に守って貰ってるのよって。だから、俺は乗せないって言ってるシャンクスがナミは船に乗せてるって」

 「ああ、その事ね。私はね、やらないといけない事があるから色々出来るだけで「航海術を持ってるのか!?」」

 

 私の言葉を遮ったサボは、私に詰め寄る。それは必死な様子で、何か変な事を言ったかと内心で焦ってしまう。

 でもどうやら私がおかしいのではなく、サボの目的の為に必要な手段だという話らしい。その必死さが、本気度合いを伝えてくれる。

 

 「航海術について、教えてくれ!頼む!」

 「エースとサボも海賊になりたいんだっけ?なら、そうね、教えてもいいわよ」

 

 彼等がどうやって一人で旅を出来るだけの技術を身に付けたのかは、原作の何処にも書かれていなかったから、ここで私が何かしても大きな影響は無いと判断した。それから私はエースに視線を向けて、だから早く風邪治しちゃいなさいと笑った。

 そのやり取りにルフィが加わり、俺もー!なんて言うけど、教える事が無駄になりそうな唯一の存在だなと思いながらも、その頭を撫でてハイハイと頷いた。ルフィはそれを満足そうにしていたと思ったら、そのままの勢いで抱き着いてくるから、甘ったれめと言いながら抱き締める。

 そのやりとりをサボは呆れたように、エースはつまらなそうに見ていた。それからエースがボソリと、手合わせもしてみたいと言うから私はそれにお手柔らかにと微笑んだ。

 私としてはいつかは鬼よりも強くなる三兄弟の胸を借りられるし、同じ相手ばかりでは癖ができてしまうから良いと思えた。それに、身長の近い相手との戦いは、成長してから必ず活きるもの。

 でもまさか、これがこの三兄弟に何かの化学反応みたいなものを起こすようになるなんて、少しも考えては居なかったのだ。私はただ、新たな友人達の未来が少しでも安全になればいいと、それだけを考えていた。

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