というifストーリーとなります
作品独自の設定・オリキャラも出てきます。苦手な方はブラウザバック推奨
「同盟?」
「うん。私と山岸くんとで同盟組みたい。皆には言えない事山岸くんになら伝えられるかもって、思ったから。」
(茜谷さん…という事はおれは信頼されてるって事かな。)
優里が持ちかけた「同盟」の話。高成は次第に胸を高鳴らせていた。
(なら…)
「うん。組もう。」
「ほんとに?やった!」
優里は高成の手を取って喜んだ。高成も自然と笑顔がほころぶ。
「じゃあ…「茜山同盟」でどう?」
「いいと思う!」
「じゃあ次は…ルールきめとこっか。一応。」
「うん。」
優里は高成の目を外すことなく真っすぐ見つめる。
「私は彼氏がいる。山岸くんには…里帆ちゃんて子がいる」
「うん…という事は」
「だからこの同盟間では恋愛禁止で私は山岸くんを、山岸くんは私をそれぞれ「好き」になってはいけない。…でどうかな?」
「それでいいと思う。…そういうのはちゃんと決めておくべきだし」
「うん。…って事でこれからもよろしく!」
…こうして「茜山同盟」が結成されたのだった。
同盟結成後2人は各々の家で喜びをかみしめていた。優里の様子を見て帰ってきたばかりの栞は何かあったの?と聞くと優里はこう答えた。
「うん。…でも秘密」
その後のやり取りで同盟は2人の間だけの秘密となった。またお互い隠し事をしないという事も新たに決めた。
これにて優里と高成は互いに秘密を共有する2人だけの同盟関係になったのであった。
次の日。優里は学校の廊下で日向から気まずそうに片言気味でごめんと謝罪を受けた。優里は受け入れると次からは気をつけてほしいと注意する。その様子を雄也は遠くから見ていたのだった。
高成は放課後またも貴史から誘いを受けた。しかし智乃は行けないと断った上、貴史は突然野球部のミーティングが入った事によりドタキャンとなったためそのまま解散となった。
気が付けば教室には高成と里帆が2人っきりで残されている。
(飯田と2人っきりか…うう、こんな時に…)
すると里帆は高成にこう話しかける。
「せっかくだし、一緒に帰らない?…寄りたい場所があって」
「えっ?…うん、いい、よ。」
里帆からの予期せぬお誘いに高成の頭には様々な感情が襲い掛かってきてがんじがらめになっている。そんな彼女の寄りたい場所はどうやら書店のようだった。
(折角だし参考書見ようかな)
高成は参考書や書籍を見ていると里帆も傍まで近づいてきた。
「山岸くんて真面目?」
「そうかな?」
「こないだも予備校行くって言ってたよね。そういえばさ、オープンキャンパスはどうだった?」
(忘れてなかったのか…)
意外にも高成の事を忘れてはいなかったようだ。それを聞いて高成は内心マジか、とっくに忘れてると思ったと感じながらもオープンキャンパスを振り返った。
「良かったよ。分かりやすかったし。」
「そっかあ。私も行けってお母さんに言われてるから、行こうかなって…」
「そうなんだ…」
(どこ行く気なんだろ、…ちょっと聞いてみるか)
高成がどこの大学のオープンキャンパスに行くつもりなのかと里帆に聞いた所、3.4つある候補で悩んでいるという。
その時偶然にも里帆のお腹が減った音がした。
「あっ…ごめん、おなかすいた…」
「ああ…じゃあ、どっか食べる?…これ払ってくる」
高成は参考書の会計を済ませると里帆と共に外へ出る。
(まるでデートみたいだ…飯田とデートか、マジか…)
(うう…緊張してきた)
高成は里帆にとりあえず何を食べたいかと聞くとなんでも、と答える。その為近くのカフェやファーストフード店をいくつか見て回ったがどこもお昼時という事で満席だった。
「うーん…空いてないねえ」
「うん…」
(くっそー…ああもう、こんな時に…)
「ねえ…良かったらさ、あそこ行く?」
里帆が指さしたのはビルの中にあるカラオケ店だった。確かに食事も楽しめる場所ではある。高成は里帆が言うならアリかと里帆の提案に乗る事にした。受付を済ませて部屋に通されるとテーブルの上に置かれているメニュー表に目を通す。
「うーん…どれにしようかな」
「ねっ見てこれ…」
「ん?」
里帆が目を輝かせていたのはドリンクバーだった。どうやら何か興味を持っているようなそんな目つきをしている。
「ドリンクバーだ。懐かしい…」
「…」
(喜んでる?)
高成と里帆は互いに食事を注文する。そして里帆は高成の分も飲み物を用意すると言って1人ドリンクバーへと向かっていった。しばらくすると里帆はグラスを2つ持って部屋へ戻ってきた。彼女が手にしているのはどちらも茶色い飲み物だ。
(お茶かな?)
里帆からグラス受け取った高成はごくごくと3分の1程度一気に飲む。すると酸味の効いた何とも言えない味が高成の舌にしみこんできた。
(ん?!!なんだこれ?!?!)
「これって…」
「あっそれね、ジンジャーエールと紅茶とオレンジジュース混ぜたやつ。…名付けてみるなら里帆スペシャル、どうかな?」
(ジンジャーエールと紅茶とオレンジジュース?!)
里帆はニコニコと嬉しそうにしていた。
そんな里帆の笑顔を見た高成は心臓をばくばくさせながら一気に飲み干し美味しいと言った。どうやら里帆は幼い頃からドリンクバーでよくこのジュースを飲んでいたようだ。最近レストランへ行く機会が無かったようでドリンクバーは久しぶりという事で新鮮だったようだ。
「…ほんとに美味しかった?」
「うん!勿論!!」
「へへ…そっかあ…」
里帆の笑顔は変わらずだ。高成はそんな彼女の表情を見つめつつ里帆スペシャルの味が舌から離れずにいた。
(結構すっぱかった。ちょっと辛み?もあったような)
(…もしかして甘いの嫌いなタイプだったりするんだろうか)
ほどなくして注文していた食事もやってくると2人は美味しいと舌鼓を打っていた。里帆は肉うどんとおにぎり、高成はハンバーグ定食を注文しており、里帆は肉うどんに七味を少量かけて食べていた。
「飯田ってさ、もしかして辛いの好きだったりする?」
「えー…うーん、どうだろ…」
里帆はあまり自覚がない様だ。食べ終えると綺麗に片づけソファに深く腰掛けながらスマホを見ている。スマホ画面には数学での公式やら何やらが映し出されていた。
高成が食べ終えると里帆は自身のスマホを見せながら質問をしてくる。
「ねえ、山岸くん」
「何?」
「ここの公式って…分かる?」
「あ、ここは…XとYが…」
「…ああ…ふんふん…成程」
高成が教えると里帆はその内容をノートに書き始めた。ページの隅には落書きしたものと思われるうさぎのイラストがあった。
(飯田も落書きするんだ。意外)
里帆は高成から教えてもらった公式の解き方についてノートに書き終えると、ノートとシャーペンをバッグへ戻す。
(…やっぱ真面目…)
そんな里帆はじっと座ったままだった。
(?)
高成が不思議そうに見つめていると里帆も視線を合わせて来る。
そして首をかしげながら小さくこう言った。
「…しないの?」
「え」
「個室だから大丈夫と思うけど…する?」
(は?!ここでやんの?!)
驚愕の提案に高成は驚きを隠せない。
里帆がそう誘うやいなや、外の廊下からカラオケ店のスタッフによるかつかつという靴音が聞えた事で余計に高成を混乱させる。
(いやいやいや!!)
しかしながら里帆の期待するようなまなざしは変わらない。
(まあ確かにこれまで飯田と何度かしたけどさ…!)
(ダメだ学校外だからかなんか緊張してきた…てかこれドア白い模様はあるけどガラスだし見え…る、よな…?ある意味露出プレイじゃんか!)
「山岸くん…」
とうとうしびれを切らしたのか里帆は高成に近づきキスをしてくる。
(あっ…ここはもう、腹括るしかねえか)
そのまま高成は里帆を抱き寄せて彼女の胸を揉む。
「んっ…ふうっ…」
里帆は一旦高成から唇を離すとシャツのボタンを外すとインナーをめくり上げた。そこから後ろへ向いて高成へ背中を見せる。里帆の背中も綺麗なシルエットをしているのが分かる。
「…ごめん、ホック外してもらっていい?」
「分かった」
高成がすっと薄紫色のブラジャーのホックを外すと、里帆の胸が露わになった。大きさは智乃より小さいものの、張りのある乳房をしている。色白な肌と同じく乳首も薄い桜色をしていた。
(うわ、飯田の胸だ…綺麗な形してる…)
里帆は高成の腕を掴んで自身の胸に当てる。高成は里帆の乳首をつまんだりして刺激を与えながらキスをした。
「んっ…」
ベッドへゆっくり押し倒すと里帆の反応はさらに上がる。里帆は足を開いて既に濡れているそこを高成の股間に擦りつけながら入れてほしいとねだる。
「もう…」
「飯田…」
(仕方ない。やるか…)
結果。2人はカラオケ店の個室で何度も何度も絡み合ったのであった。
その頃。優里は1人で帰宅途中またもや彼氏から呼び出されていた。自宅へと向かうとこの間匿ってと頼んでいた友人がまたいたので優里は思わず身構えてしまう。
しかし結局彼氏を怒らせたくないという思いから断り切れずに3Pに興じてしまうのであった。
「あっ…んん“っ…」
「やばっ…」
「すごいな…」
(やだ、痛い…)
彼氏のものを手でしごきながら友人のものが奥を突いてくる。
「こないだよりは濡れてんじゃね?」
「もう慣れたんだろ。やっぱこういうのは回数こなさねえとな」
「いやあ~さすがはヤリチンの言う事は違う!」
優里は一瞬しごいてる手を止めてしまう。優里の彼氏がん?と気づくとまた手を動かし始めた。
(…やだなあ…今も私以外ともやってたりするのかなあ)
(…聞きたくは、なかった…)
優里の心中はとても快楽へは集中できないものであった。
その後。自宅へ帰宅した優里は夕ご飯を食べ、シャワーを浴びて着替えたのち自室へと向かう。やはり股間のひりひりとした何とも言えない痛みは以前よりほんの少し落ち着いてはいるが、それでも痛いのは変わらない。
「はあ…」
優里の口からは大きなため息が漏れた。
(なんかなあ…ああー分からん)
そんな優里はふと机の上に置かれたスマホが目に付く。
「…山岸くんならなんて言うかな」
優里は意を決して高成に連絡した。
「あのさ。今日もさ…彼氏とその友人と3Pして…」
優里は今日あった事と自身が感じている感情を高成に吐き出した。
「そうなんだ…こっちも今日飯田とカラオケ店でやってさ」
「向こうが求めてきたからやらなきゃとは思ったけど、なんかこう…複雑と言うかなんというか…飯田への感情が整理つかないというか」
「山岸くん…」
互いに互いが感じる感情は一言では説明できないものであった。
「なんかね…語彙力が…」
「でも分かるよ。多分私が感じてるのと同じだと思う」
「茜谷さん…」
「だからこの同盟結成した訳。少しでも共有で来たら辛さも軽減すると思ってさ」
「そうなんだ…確かに、言えたら少しは楽になれた。…ありがとう。」
「良かった。」
高成と優里はその後も会話を続けたのだった。
次の日。高成はトイレに立ち寄るとなにやら智乃が見知らぬ男子生徒と話している所を見かける。
(新山と…誰だろう)
するとクラスメイトの女子がひそひそと噂話をしているようだ。
「新山さん…藤野先輩と話してる」
「セフレって聞いたけどマジ?」
「マジらしいよ。空き教室でやってるって噂」
「ええ…新山さんってもしかしてビッチ?吉野くんや山岸くんとも噂あるよねあの子」
智乃の動向を伺いつつそっとばれないよう聞き耳を立てている高成だが、智乃についての噂話は止まらないうえに自身の名前も出てくるとはさすがに予想だにしていなかった。
「てかさー藤野先輩ヤリチンって聞いたけど?」
「えっマジ?引くわ…病気移されそう。」
「あの先輩はやめといたほうがいいって話マジだったかー。今度遊ばないって誘われたけど断っとくわ。」
「断っときな。どうせ良い事無いし」
(まじか…そんなやつと。もしかしてこれからやんのかな)
高成は噂を聞き終えるとゆっくりと智乃の後を追った。
たどり着いた先は中庭の人気のない箇所。そこで2人は話をした後身体を触り会う。
「んっ…」
(や っ ぱ り!!!)
高成はまるでスパイか探偵のように壁に張り付き2人の行為を見続ける。そんな高成に気づいていないのか2人はキスをしながら互いの敏感な箇所に刺激を与えていく。
「んふっ…」
「濡れてるね…」
「んんっ…」
(うわ…)
濡れた智乃のそこを慣らすたびに彼女の喘ぎ声が聞えてくる。高成は時折自身の手で目隠しをすると2人はあっという間に本番行為へ突入していた。
バックの体制で突かれるたびに智乃の声が大きくなるのを藤野先輩は感じていたのか、すっと智乃の口を手で覆った。
「んっふっ…」
「すごいね、ぐちょぐちょ」
(うひゃー…マジでやってる…)
その後も2人の絡みは続く。予鈴が鳴ると手早く身なりを整えてこれまでやっていた行為が嘘だったかのように解散していったのだった。
高成も慌てて教室へ戻ろうとすると智乃に見つかってしまった。
「あ」
「山岸」
気まずい空気が流れる。智乃はさっきのは内緒ねと言うと、予鈴鳴ったから急ぐよと高成に声をかけながらこう言った。
「あ!…後で話したい事あるんだけど、いい?」
「お、おう…いいよ」
(話したい事?なんだ?)
放課後の掃除タイムで高成は教室のゴミ出しに向かっていた時、おーいと智乃が走って追いかけてきた。
「ちょっといい?あとそれ片方持つわ」
「えっ…ああ、いいの?結構重いよ」
「ダイエットがてらに丁度いいでしょ」
中庭へと移動すると、智乃はこれ秘密にしといてねと前置きしたうえで高成にある内容を打ち明ける。
「あのさ。こないだ吉野がベッドに血がついてたって話、したじゃん?」
「…おう。してたな。」
「あれ、私の。里帆のじゃないと思う。」
「え?」
智乃の告白に高成は戸惑いを隠せない。
「私はあれが初めてだったし、帰ったらパンツに血がついてたのもちゃんと見た。嘘じゃないから。マジで。」
「…で、飯田は?」
「痛がる素振りも無かったでしょ?あの後ライン送ったら血も出てないし慣れてるから大丈夫だって言ってた」
智乃はちゃんと証拠も見せると言ってスマホを取り出し、里帆とのやり取りを高成に見せた。そこには確かに智乃の言う通りのやり取りが記されている。
(って事は…飯田は…)
「…里帆は、処女じゃない。もしかしたら筋金入りのビッチかもしんないし、過去そうだったのかもしんない。」
「…」
「これ、うちらだけの内緒だから。分かった?」
「分かった…」
智乃はこの話はおしまいと区切ると早く行くよと高成の腕を掴んでゴミ捨て場へと走っていった。
(飯田が非処女で筋金入りのビッチかもしれない…なんて反応すればいいんだ?情報量が多すぎる!)
高成の頭の中は混乱しっぱなしである。そんな中優里との茜山同盟を思い返す。
(新山には秘密って言われたけど…茜谷さんは別の高校だし、大丈夫かな?)
(ってか情報量が多すぎておれ1人で抱えられるレベルの話じゃない気がしてきた…)
掃除が終わって教室へと戻ると、里帆と貴史が何やら話をしていた。
「おっ飯田も来るか」
「うん。智乃ちゃんと山岸くんは…?」
「私はいいけど…山岸は?」
「ああ…」
(なんか、ぶっちゃけこんな状態でやれ言われても集中できねえ…)
高成は誘いを断った。貴史は残念そうにするも仕方ないと言って里帆と智乃を連れてどこかへ消えた。高成は帰り支度を整えるとスマホを手にする。
「茜谷さん…出るかな」
高成は校舎を出て駅へ向かう。人の少ない駅舎内につくとそこの一角で優里に電話を掛けてみた。
(どうだろ、出るかな…)
優里はすぐに電話に出た。
「もしもし?どしたの?」
「あっ茜谷さん…!あのさ…今から会える?」
「えっ…あっちょっと待ってて!折り返してまたかけ直す!」
優里はそう言って一旦電話を切る。約10分後再び彼女から電話がかかってきた。
「ごめんお待たせ!いいよ!…出来れば皆に見つからない場所の方がいいんだけど」
「おれも一緒。どこにしようか」
話し合った末、ある猫カフェで会う事になった。高成は電車に乗る。降りると駅舎内には既に優里が待っていた。
「おっすーお疲れ」
「よっ」
「いこっか」
猫カフェに到着し受付を済ませると2人は大広間の角の一角へ座った。優里が試しにねこじゃらしを振ってみるとブチ模様の猫が近づいてくる
「可愛い…うん。とりま本題に入ろっか。…何かあった」
「うん。実はー…」
高成は智乃から聞いた里帆に関する話を打ち明けた。
「…最初っから非処女だったかもしれないって?」
「簡単にまとめると、そうなるかな…」
(え…?まさか、そういう系?)
優里は手を顎の下に乗せて少し考え込むと、真剣な表情をして高成にこう伝えた。
「あのさ…もしかしてだけど」
「何?」
「闇深というか、訳アリというか…自分はそういう系なんじゃないかって思った。」
「マジ?」
優里は声のトーンを落として更に自身の考えを述べていく。
「うちら高2じゃん一応。里帆ちゃんもそうでしょ?」
「まあそうだけど」
「高2で非処女かもで本人は慣れてるって言ってる…なんか、ねえ?…怪しくない?」
ただならぬ雰囲気が両者の間に漂い始める。
「あっ!一応里帆ちゃんの陰口とかそういうつもりで言った訳じゃないから。そこは信じてほしい。けど…なんか。怪しいなって…」
「茜谷さん…確かにおれもなんかあれ?って思う気がする…」
「そうなんだ…」
「ほんの少しだけど、うん…」
高成と優里は互いに里帆への違和感を確認した。
「あのさ、ここでしっかりしときたいと思うから聞くね。…山岸くんは里帆ちゃんの事、好き?」
(おれが今も飯田を好きか…好きなのは間違いない。けど…違和感は拭えない。)
「うん。飯田が好き。だけど…違和感は拭えない。これが今の気持ち。」
「そっか。それが山岸くんの気持ちだね。…嘘ついてないよね?」
「ついてないついてない!!」
「勿論嘘つくのは同盟ルール違反だからね~…正直な気持ちが聞けて良かった。その好きと言う気持ちは大事にしてね。」
優里の芯の通った強い口調に高成も力強く頷いた。
「ただ問題は違和感の方だよね…」
「だよね…」
「あまり詮索しない方が良い事なのかもしれないけど。やっぱりある程度は知っておかないといけないのかもしれない…?」
「…確かに。ある程度把握しておかないと地雷とか踏むかもしれないし」
優里の頭の回転の速さは流石のものだ。
「やっぱさ。一度、里帆ちゃんときちんと話した方が良いんじゃないかな?」
「だよな…」
「そこで行けそうと思ったら告白するとか?」
優里の提案に高成は少し考え込んで自らの意見をひねり出す
「でも、おれはもうちょい距離詰めてからの方が良いような気もするというか…」
「ああ~…」
「うん分かる!分かるよ!!思うよね!!」
優里が高成へ共感の気持ちをついうっかり叫んでしまうと近くにいた猫がびっくりしてしっぽを逆立てて逃げてしまった。
「…ごめん。一旦落ち着くね。…という訳で一度里帆ちゃんをどっか誘ってみたらいかがかと。」
「だよね。…どこにしようか」
「夏祭りとかやってないの?」
「ああ、その手があったか。…そういや今度やるって親が言ってた気がする」
そこから2人は作戦会議を打ち立てた結果。夏祭りに誘い、里帆の本心を引き出し仲を深める。という内容だ。高成は自身の脳内にしっかり内容を刻み込むと優里に聞きたい事があると質問した。
「ちなみに茜谷さんは最近どうなの?」
「あー…良くも悪くも変わらないかな。でも彼氏はやっぱヤリチンだったっていうか…」
「今もセフレがいる的な?」
高成の指摘は珍しく図星だった。優里はうつむきながら語り始める。
「確証はないけど、彼氏の友人がヤリチンって言ったんだよね…今も何人かいるのかなあ」
「そうなんだ…」
先ほどとは違って自信を失い寂しく語る優里に、高成はそれは酷いんじゃないかと心配と彼氏やその友人に対する怒りを感じ始めていた。高成は言葉を選びながら優里にそう伝えると、優里はありがとね、と小さな声で返した。
「山岸くんは優しいね。」
「そうかな?…茜谷さんも優しい人だと思う。」
「やっぱり同盟組んで良かった。こういうの吐き出せる人ほんといないから。」
そう言った優里の頬に涙が伝う。高成はティッシュ使う?と尋ねると優里は自らの手で涙を拭って大丈夫と伝えた。
「…栞さん、お姉さんは?」
「正直言いづらさはあるかな。…仲悪いって事は無いんだけど、仕事で忙しくて家にいない時多いから迷惑かけるのもなーって」
「そうなんだ…良かったらさ、一度時間のある時に栞さんとも話してみたらいいんじゃないかな?…多分だけどさ、おれだけじゃなくて大人の栞さん目線の意見も茜谷さんには必要なんじゃないかって」
「大人目線か…」
高成は変な事言ってたらごめん、同盟を否定してる訳じゃないから!と言う。そこからしばらく間を置いて優里はこう答えた。
「成程ね…確かに、そうかも…大人目線から色々聞いてみるのは重要かもしれない。」
「ありがと。一度話してみるわ。…山岸くんも頑張れ」
「うん。頑張る。」
こうして、2人は猫カフェを満喫した後、解散していったのであった。
帰宅後。高成は改めてラインの里帆のアカウントを眺めていた。
「うーん…どう誘うか…てか、明日終業式で来週夏祭りかあ…」
高成はよし、と覚悟を決めると里帆へ『来週夏祭り行かない?』と打ち込んだ。打ち込むには約20分を要しつつ何とか送信ボタンを押すと、全身から力が抜けていくようなそんな感覚に襲われる。
返事は意外にもすぐに来た。『智乃ちゃんからも誘われているから良かったら一緒にどう?』という事だった。新山には悪いが2人っきりで気まずくなるよりより誰かいた方がましか、と感じた高成は了解と送信すると程なくして『浴衣着るから楽しみにしてて』と返信が来た。
(浴衣かあ…飯田の浴衣…)
浴衣姿の里帆が高成の脳内に星のようにちらつく。その中には何者か(おそらく高成?)犯されている姿の里帆もあった。高成はアホかおれ!とその妄想を消し払うと、ライン画面を眺めるのだった。
「おれの作戦は上手くいった…」
「茜谷さんは、どうなるか…」
自室にて優里は栞へラインで今度仕事が休みの日に会えないか?とメッセージを送った。しかし忙しいのか既読はついても中々返信は来なかった。
「だよねえ、忙しいか。やっぱり。」
優里はベッドで布団を抱え込むようにして横になる。
「うーん…山岸くんの作戦は成功したかな」
ふと優里の頭の中によぎったのは、優里の彼氏の姿だった。
「夏祭り誘ってみたいけど、あの人その日はシフト入ってたなそういや。やめとこ…」
「はあ…」
大きなため息が部屋にこだまする。
「私、あの人の事好きなのかな…」
何度も激しく抱かれ、聞きたくなかった事実も知った。自分は本当に彼氏の事を好いているのか。
「駄目だ…わかんない。」
「好きだけど…なんか心がそこに付いていかなくてもやもやするというか…」
よくわからないこの気持ちとその根っこからせり上がる不安感。優里はそのまま逃げるように就寝したのだった。
翌朝。優里はもぞもぞと起床する。スマホを見ると栞からの返信が来ていた。
『お盆ぐらいになるけど、それでもいい?』
やっぱりそうだよな、と呟いた優里は適当なスタンプを送信したのだった。高成が学校へ登校すると里帆と智乃は夏祭りの話をしていた所だった。
「お、山岸おはよ」
高成が2人に挨拶をする。どうやら夏祭りには3人と貴史を含めた4人で行く事が決まったようだ。
(やっぱそうなるか。まあ2人っきりで気まずい雰囲気になるよりはましか)
放課後。高成は時折通うスイミングスクールで泳ぎながら自分を見つめていた。小・中学時代では競技でも活躍し、数々の実績を持っているが、高校入学時に患った怪我と病気によって競技生活からは遠ざかっていた。里帆への気持ち、優里への気持ち。そして自身の気持ち。里帆を好きな気持ちと優里への感謝は勿論変わらない。しかしバランスがどこか崩壊しそうな危うさをほんの少し現れている事に気づいた。
同盟相手である優里に恋愛感情を抱く事はルール違反である。そして里帆への恋を成就させるために同盟を組んだという背景がどこか結び目になっている…高成は冷たい水の中で考えを巡らせていた。泳ぎ終えると専属コーチからどこか迷いがあると告げられる。
その迷いが高成へ重くのしかかろうとしていた。
そして夏祭りの日がやってきた。貴史と共に指定された場所へ向かうと智乃と里帆が浴衣を着て待っていた。
「どうかな?」
里帆は自身の浴衣の袖や帯を高成に見せる。高成は似合ってると返すと嬉しそうに微笑むのだった。
一行は屋台をぐるぐる巡る。たこ焼きや焼きそば、ゲソ焼きやりんご飴を頬張るとあっという間にお腹が膨れる。里帆はりんご飴を綺麗に食べているのを見て高成は好きなの?と問うとまあまあかなと返す。
射的では里帆が上手く出来なかった為代わりに高成がやってみると次々と標的に命中していった。高成は景品を全て里帆に渡す。
「えっいいの?」
「…いいよ。持ってって。」
「っじゃあこれ!代わりにやってくれたから…」
里帆がくれたのは1等賞品の透明な写真立てだった。高成は受け取ると写真立てを眺める。
(きれいだな。ガラス製かな?)
夏祭りの夜はまだまだ賑やかだ。
「なあ…ちょっといいか」
ここで突然貴史が神妙そうに智乃へ話しかけてきた。智乃は何?と聞くと、貴史はちょっと…と言って智乃の腕を軽く掴んでどこかへと早足で歩き出す。
「貴史?」
高成と里帆も後を追いかけた。たどり着いた先は人気の少ない小さな神社。かなりの年月が経っているのか建物はあちこち傷んでおり、どこか不気味な雰囲気を纏っている。
「復帰近いしさ、もうしばらく出来ないから」
「あっ…んんっ…」
貴史は焦りを見せながら智乃の浴衣の襟元をはだけさせ、胸を揉みながらキスをする。
「…」
「山岸くん…」
里帆が高成に近づいた。里帆は高成の胸元に自身の頬を寄せる。高成は里帆の頭を撫でながら抱き寄せた。
(やっぱやる流れか)
(こうしてみると…皆何かにとりつかれたように見える…人気のない古い神社だからだろうか)
ガサガサッ…
なにやら音が聞えてきた。しかもこちらへと近づいてくる。4人は行為を止めて服を正す。なにやら声も聞こえてきた。
「ふう~…心霊スポットってここか?」
「らしいぞ?」
やってきたのは中年の男性3人だった。いずれもくたびれた身なりをしている。
「ん?おい!君らもしかして学生か?」
「あ…」
里帆は高成の背中に隠れる。
「学生がこんなとこにいるのはよくないぞー。早く帰りなさい。」
「おじさん達が送ってあげるから。」
3人組の男性はそのように高成らを誘う。小さくどうする?と耳打ちする。里帆は背中を小刻みに震わせていた。
結果、争い事を避けるため彼らについていく事となった。3人組の男性は高成一行を囲うようにして誘導する。
(なんか…嫌な予感が…)
すると男性の内の1人が里帆の身体を触り始める。里帆は震えたままで言葉が出ない。更にもう1人は智乃の尻を撫で始めた。智乃はその仕打ちに我慢できずに声を挙げる。
「やめてください!!」
その瞬間。智乃の動きを予測していたかのように、3人組の男性はそれぞれ里帆と智乃を羽交い絞めにする。
「飯田!新山!」
3人組は里帆と智乃にナイフを向け、高成と貴史に大人しくするよう要求する。そしてそのまま眼前で2人を犯し始めようとする。
(どうする…!?こういう時はまずは警察へ…!)
高成は見られぬように警察へ連絡しようとしたその時だった。3人組の前に不良集団がやってきた。その中には以前薬局で見かけた優里の彼氏もいる。
「おい、てめえら俺らのシマで何やってんだ?!」
「なっ…!!」
「っ!こーせー!今!!」
その隙に乗じて高成と貴史はそれぞれ里帆と智乃の腕を掴んで一目散に走り出した。後ろを振り返る事も無く走って走って走って走り切ると人ごみの多い箇所へと戻る事が出来た。
「はあ…はあ…」
「大丈夫か?」
高成は里帆と智乃の様子を心配そうに伺う。
「山岸…私は大丈夫。里帆は?」
「私も…大丈夫…」
皆息を切らしている。そこへ偶然にも通りかかった人物がいた。優里だった。
「あ…山岸くん…」
「茜谷さん…」
優里は目を丸くする。高成は3人を紹介すると、優里も簡単に自己紹介した。しかしいきなりの出会いだったのか、息が切れたためか…会話はそれ以上続かなかった。
「あ…門限が…」
里帆はスマホを見ながら呟く。結局夏祭りはこれでお開きとなった。里帆たちを近くの公園まで送ると高成と優里は2人っきりとなる。
「何かあったの?」
「実は…」
高成は先ほどあった事全てを優里に打ち明ける。優里はあれ、彼氏は今日シフトだと言ってたけど…と複雑そうな反応を示す。
「休んだのかな…それとも…嘘…?」
「…どうだろう…見間違え…?」
こうして騒乱の夏祭りは幕を閉じた。帰り際里帆の頭には優里の姿が思い浮かぶ。
「…」
夏祭りの騒ぎの余波が消えぬまま数日後。予備校にて高成と優里は再会した。
「久しぶりー!元気?」
「うん!茜谷さんは?」
「変わらず元気ってとこかな。」
たわいのない会話をしていると始業の時間が来て授業が始まった。高成は壁際の席でノートを取っているとなにやら窓の外の景色に見覚えのある人物がいる事に気づく。
(あれ…飯田?横にいるのは…飯田のお母さんか?)
予備校のあるビルの外の歩道を歩いていたのは里帆と彼女の母親だった。里帆は清楚な白いワンピースを着用していた。隣にいる里帆の母は里帆よりも背が高く、体格も肉付きも良い。黒いボブヘアに白いブラウスとズボンを着用している。高成が2人の動きを目で追っていると、なんと予備校のビルへと入っていった。
(!)
里帆と里帆の母がビルへ入っていった所で授業が終わり休み時間へと入る。
(どうするか、後をつけてみるか…)
高成が悩んでいたタイミングで優里が彼の元へ近づいてきた。
「山岸くーん。調子どう?」
「茜谷さん…ちょっとついてきてもらっていい?」
「えっ?!ちょ、ま…!」