※この作品はR-18です。

カラミざかり 紅い青春   作:みやびまい

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Vol.3後編

「飯田?」

 

 高成が驚きながら振り返ろうとすると、里帆は高成の腕を引っ張り背中に抱き付いた。

 

「もっといようよ…」

 

 …その声はどこか寂しいように高成は感じた。

 

(飯田…?)

 

 高成は里帆の正面に向き直る。里帆は再度高成へすがりつくように抱き締める。高成が里帆の頭をそっと撫でると里帆の身体がほんの少し跳ねあがった。

 

「山岸くん…」

 

 2人は引き寄せられるようにキスをする。

 そしてリビングのソファで2人はもつれあうように抱き合う。高成が里帆の胸に触れると、彼女の胸の柔らかさと徐々に熱さを伴いながら早くなる心臓の鼓動が同時に高成の手から全身へと伝わって来る。

 

(やわらかいし、すごいどきどきしてる)

 

 服を脱ぎながら互いの体へ刺激を与えていく様は愛し合う男女のそれとなんら変わりは無い。高成は里帆の身体を求めながら、こないだの日向の時とは違い、己のそれが反応していくのを自覚しつつあった。

 

(やっぱり違う、やっぱり…おれにとって飯田は運命で、課題なのかもしれない。)

 

 里帆の身体を求めながら高成の胸の奥で彼女への想いが沸き上がる。彼女に一目ぼれした時から、彼女について思うところはあったものの好意は変わってはいなかった。里帆が高成を求める姿はより彼女と正面から向き合わなければならないと意識させる。

 

(茜谷さんと同盟組んでなければ、色々と違ってたかもしれない…)

 

 高成の頭の中でふと優里の姿も思い浮かぶ。

 

「…くん?…山岸くん?」

「…っ!」 

 

 里帆に呼ばれた事に気づかなかった高成は、思わずごめんと呟く

 

「もう、入れていいよ」

「…うん」

 

 高成は自身のリュックから避妊具を取り出すと、それを着用して里帆の中へと挿入する

 

「ああっ…」

 

 奥まで入れると手をきつく握るようにぎっちりと締め付けてくる。

 

(すごっ…なんか離さないって言ってるみたい…って何考えてんだおれ)

 

 そのまま何度も激しく突きまくる度に里帆の声があふれ出す

 

「あっ!…そこっいいっ…!」

 

 彼女のとろけた表情を見ると高成の鼓動がさらに早くなるのと同時に、別にある感情が湧いて出てこようとしていた。

 

(…あれ?)

 

 体位を変えながら里帆を抱いていく高成。里帆は高成に抱かれ快楽の奥の奥まで溺れている様子を見せていたが、何度も絡み合う中で高成は段々と里帆とは様子が違っていく。

 

(…気持ちいいのは確かなんだけど…なんか、足りない…)

 

 里帆を抱いていて気持ちいいのは紛れもない事実だし、もっと里帆を抱いて居たいというのも事実だ。しかし高成は「足りない」という感情を知覚してしまっていたのだった。更に物足りなさを感じた事で何度目かの下腹部の疼きを強烈に発するようになってしまったのである。

 夏休みの肝試しのさなか、優里と共に日が出るまで不良男達に代わる代わる犯されたあの蠱毒のごとき快楽を、高成は里帆を抱きながら求めそうになっていた。

 

(飯田とやってるのに足りない、いやおれはしたいんじゃなくてされたいんじゃないか…?もしかしておれ…ビッチなのか?)

(こんなの飯田に言えるわけない…絶対引かれるだろこんなん)

 

 この後も高成は迷いを隠しながら里帆を抱き続けたのであった。

 

「山岸くん。また明日ね」

「おう、また明日」

 

 里帆は1階のフロアまで高成を見送ってくれた。高成は手を振って彼女に挨拶をすると帰路につく。

 日が暮れつつある空を見上げながら高成は己へ様々な感情を抱えながら歩いていく。

 

「…茜谷さん…」

 

 …そんな高成の下腹部にはまだ疼きが残っている。

 時を少し戻す。

 

「帰ろー」

「うん。途中でカフェ寄ってかない?」

「うん。いーよ」

 

 放課後。優里のクラスメイトは各々部活へ行ったり帰路についたりしていた。優里は日向ら友人とは会話する事も無く1人で荷物を片付けていた。その顔は暗い。

 

「おい、茜谷」

「…永瀬。何?」

 

 そう言う優里の声はいつもよりトーンダウンしている。優里と一緒に帰ろうと誘いに来た雄也だったが、彼女の声を聴いてこないだの優里の様子を思い出しとっさに持っていた飴を渡す方向へと舵をきる事にした。

 

「これでも食う?」

 

 オレンジのキャンディを手渡された優里は無言で頬張る

 この時、優里はどうしようもなくイライラとムラムラとした感情を抱いていた。高成への想いと彼の体を求める欲・そして同盟に縛られ板挟みとなった彼女の心は半ば自暴自棄の領域へと傾きつつあったのを、理性で食い止めている状況だった。

 

「…」

 

 おとなしくなった優里の様子を見て雄也は彼女を刺激しないように声をかける。

 

「あのさ、近所のマックでも寄る?おれおごるからさ」

 

 しかし優里からの反応は無い。しかも雄也の声を聴いた優里の心はより自暴自棄の方向へと傾く。

 

(山岸くん…ああ…なんだかもうどうでもいいや)

 

 優里はうつむいた顔を上げて雄也を見る。そして吐き捨てるようにつぶやいた

 

「ちょっと来て」

「お、おい!」

 

 雄也の腕を引っ張り、空き教室へと移動していく。途中。優里や雄也とも仲の良いクラスメイトの村田と言う男子と遭遇する。

 

「茜谷と永瀬?どうした?」

 

 村田が声をかけると優里は無意識のうちに彼の腕も取り、歩き出す

 

「おい茜谷!待てって!!」

 

 優里は無言のままだ。その様子を後ろから村田の彼女である花池という女子が遠くから見ていた。

 

「あれ、…むーくん?…茜谷さん?」

 

 優里は2人を連れて空き教室へと入っていく。呆然と立ち尽くす花池を日向は優里の様子と共に横目で見やると何も言わずに校舎を後にした。

 空き教室内では困惑する2人の男子をよそに、優里は制服を脱ぎ始める。

 

「何するんだよ茜谷…」

 

 村田が外へ出ていこうとするのを下着姿の優里が腕を掴んで阻止するのと共に、床へと押し倒した。

 

「おい、何す」

 

 優里は村田へキスをして口をふさいだ。村田は抵抗しようとするも徐々に快楽へ溺れようとしていた。雄也は黙って眺めているが彼の股間は反応し始めている。やがて優里が口を離すと、村田は彼女を説得しようと試みた。

 

「おれ彼女いるから…やばいって。これ以上はやめよう」

「…」

 

 だが、優里にはその言葉は聞こえていなかったようだ。優里は力なくブラジャーを外すと村田の腕を自身の胸に当てようとする。

 

「落ち着け茜谷!落ち着けって!」

 

 そこでようやく優里は目を大きく見開いた。その時、ドアをノックする音が聞こえてくる。花池だった。

 

「…3人とも」

 

 花池の声が聞こえてくる。パンツ姿の優里は後ろを向いたままだ。

 

「茜谷さん」

 

 花池は我慢ならずに優里の前へと歩む。花池からむーくんの事好きだったの?と聞かれるとそれに対してははっきりと否定した。

 

「じゃあなんで!?…茜谷さんは相談乗ってくれたりとかいつも優しくて良い人だと思ってたのに!!信じられない!!」

 

 泣きながら叫ぶ花池の声だけが無情に響き渡る

 夜。優里へ電話をかけてみようかと高成がスマホに手を伸ばした時。電話がかかって来た。智乃からだ。

 

「新山ー?どうしたの?」

「あー山岸?あのさー運動部の男子が好みそうなご飯て何?」

「えー?やっぱから揚げとか焼肉とか生姜焼きとかじゃねーの?」

 

 智乃はやっぱりかー…と観念した様子で話すと高成にから揚げ作るの手伝ってくれるか?と頼み込んできた。

 

「いいけど…じゃあ先に親にちょっと作り方聞いてくるわ。また電話する」

「ごめーん。よろー」

 

  高成は母親からから揚げの作り方について聞きながらメモを取ると、智乃の家へと向かっていった。

 

「新山お待たせ―今家行ってるから」

「りょーかい」

 

 家へたどり着きインターホンを押すと、智乃が出迎えてくれた。

 

「ごめん山岸。どうぞ入って」

 

 智乃は高成を家へと招き入れた。聞けば両親は幼なじみの両親と共に旅行へと出かけており不在なのだという。今日はその幼なじみが家に来ているのだった。

 

 リビングに行くとソファには高身長の男子高生が座っている。彼の左手の甲付近にはギプスが巻かれていた。

 

「えーと、こいつがうちの幼なじみの颯」

 

 颯太は飛び上がって高成へ挨拶をした。

 

「えっと初めまして、1年の永野颯太って言います!よろしくお願いします!」

「山岸って言います。初めまして」

「あの、山岸先輩って呼んでいいですか?」

「おう、いいよ。」

 

 颯太は緊張しているのかどこかしゃきしゃきっとしたぎこちなさを見せている。智乃がこいつうちの同級生だからそんな気使わないでいいよと声をかけたが、先輩だし…と言って首を振る。

 

「永野さんだっけ?何部に入ってるの?」

「バレー部です。数日前に怪我して休んでますけど…」

 

 左手の甲のギプスは練習中に怪我をした時のものだと颯太は語った。

 

「そっか。無理はしない方が良いよ。…ところで新山具材は買ってる?」

「これからいくとこ」

 

 3人は家を出て近所のスーパーへと向かう事になった。

 

「颯太、どれくらい食べる?」

「うーん…じゃあこのくらいのサイズで…」

「ええっ!?そんなに食べるの?!!」

「新山、バレー部ならそれくらい食うと思うよ?」

 

 3人でわちゃわちゃとスーパーで必要な食材を買い終えると、智乃の家へ戻りさっそく調理を始める。高成が用意してきたメモを見ながら時には悪戦苦闘しつつ(特に肉を揚げる場面で)なんとかから揚げと味噌汁を作り終えた。

 備え付けにはスーパーで購入した卵とツナが入ったポテトサラダとレタスが添えられている。高成はよそい終えるとじゃあ、そろそろ…と家から出ていこうとすると、智乃と颯太に引き留められる

 

「せっかくだし山岸も食べていこーよ」

「用意できたの山岸先輩のおかげですし、ぜひ」

「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて。…もう夕飯食べてるからちょっとだけになるけど」

 

 高成は食卓テーブルに座り、テーブルに置かれたから揚げを1つようじで刺して頬張った。噛んだ瞬間じゅわっとたれの味と鶏肉の味が高成の口の中で広がっていく。

 

「美味しい!」

 

 高成の反応を智乃と颯太は嬉しそうに見つめていた。

 

 智乃と颯太が食べ終わり高成と共に食器の後付けを終えると、高成は家へと帰る事になった。

 

「それじゃ、2人とも気をつけて」

「ありがとうーじゃ」

 

 高成は帰路につくとふと空を見上げる。丁度月が雲に隠れようとしていた。

 

(新山に幼馴染いたのか…なんか藤野先輩といるより楽しそうというか)

(まあ幼馴染だもんな、その辺変に気使わなくて済んでるというか気楽なのかも)

 

 帰宅した高成は、母親にから揚げ作りが上手く行ったことを伝えると自室へと戻る。

 

(新山の幼馴染…良い体つきだったな)

 

 その言葉と共にほんの一瞬、自身が颯太に犯される様が脳裏に映る。高成は頭を左右に振るとスマホに目をやった。

 

「茜谷さん…電話してみようかな」

 

 しかし何度か電話をかけてみたが、優里は出ない。これまで高成とのやり取りの中でこんな事は初めてである。高成はどうしたのかと不審に思い、ラインに今忙しい?と送ってみても一向に既読はつかない

 

「何かあったのかな…」

 

 高成の腹の底には優里への心配と下腹部の疼きが揃って騒ぎを起こしている。

 その頃。里帆は母親と遅めの夕食を取っていた。デミグラスソースで煮込んだハンバーグとミネストローネスープからは湯気が出立ち込めている。ちなみにハンバーグは里帆の手作りである。

 

「ごめんね、遅くなって。」

「ううん、大丈夫」

 

 食卓テーブルに料理を並べ、食べ始める2人。そこで里帆の母親はこう切り出した。

 

「あのね、結論から言うとお母さん転勤するかもしれないの。」

「…え?」

 

 母親から受けた衝撃的な言葉に里帆の手が止まった。

 

「ど、どこに行くの…?」

「千葉に同じ系列の所があるんだけど、人手が足りないから来てほしいって…」

「…!」

 

 里帆はごくりとつばを飲み込む

 

「もし、もし…転勤になったらどうなるの?」

「…引っ越すことになるわ。里帆も」

「転校しなきゃいけないって事…?」

「そうなると思う。だって…1人暮らしはまだ里帆にはしんどいでしょ?」

 

 母親の言葉が里帆の胸に冷たく突き刺さる。

 

「大丈夫だよお母さん。ご飯だって作れるし、家事だって…」

 

 里帆は自分1人でもやっていけると母親へ語るが、母親は無理でしょと冷たくあしらうだけだ。

 

「それにお母さんも心配なのよ?何かあったら困るじゃない」

「…」

 

 里帆は黙り込んでしまった。そのあと、2人は話題を口にする事無く黙って夕食を食べ終えるのだった。

 翌日。あれから高成は優里へメッセージを送ったものの未だに既読すらついていない状況である。

 

(やっぱり忙しいのかな。テストも近いし。…これ以上メッセージを送るのはやめよう。迷惑かけてもだめだし)

 

 しばらくは様子を見てまたスタンプなり送ってみようという結論に達した高成は、下駄箱で貴史と遭遇する。

 

「おはよー」

「おっす」

 

 そんな中雄也も実のところあれから優里へラインのメッセージを送っていたもののこちらも既読すらついていない状況である。

 …昨日。花池が泣きさけぶ中、優里は1人着替えたのち何も告げることなくその場から走って出ていった。雄也は優里を追いかけたが途中で見失ってしまったのである。

 心配した雄也は優里に何度か電話を掛けたりラインにメッセージを送ったりしてみたが、高成同様反応は無かった。雄也は教室へたどり着いたが、そこに優里の姿はいない。

 

(まだ来てないだけか?)

 

 …しかし結局この日は優里が姿を現す事は無かったのである。放課後。クラスの女子は優里についてひそひそと話していた。

 

「茜谷さん来なかったね」

「どうしたんだろう」

「昨日花池さんと揉めてた?ような…永瀬何か知ってる?」

 

 クラスの女子に聞かれた雄也はとっさに知らないとはぐらかした。そんな彼の顔を日向は一瞬捉えると、また机へと視線を戻した。

 

「そっかー。何かあったのかなー」

「優里ちゃんなら大丈夫だよ」

「だよねー…てか昨日やっぱ花池さんと揉めてたっぽいね。彼氏がどうとか言ってたし」

「マジ?ちょっ詳しく聞かせて」

 

 雄也の元から離れるも優里の噂話は続けられる。雄也は教室内の微妙な空気に耐え切れずさっさと出ていった。

 

「ったく…茜谷…」

 

 高成の高校。この日も里帆は高成を自宅に来ないかと誘ってきた。

 

「大丈夫なの?」

「うん。誰もいないから」

 

 里帆に誘われるまま、彼女に自宅へと向かい彼女の体を求めていく。そんな日がしばらく続いた。里帆と体を重ねる事は確かに高成にとっては悦びである。だがやはり物足りないのだ。

 

(飯田とやってるのにここ最近ずっと満足できない。おれはやっぱりビッチなのか…?)

 

 涼しくなりつつある日の放課後。貴史が高成にテスト前で部活が休みになったので一緒に帰ろうかと誘ってきた。

 

「いいけど…」

 

 すると里帆も一緒にどうかと尋ねてくる。

 

「わかった…」

 

 結果。3人は里帆の家で勉強会をすることになった。家についた貴史と高成へお茶を出した里帆はいつも通り笑顔だった。

 

「ここどうすんだっけ」

「えーとここの公式を使って…」

 

「さんきゅーこーせー。…おれも来年部活引退したら予備校行かなきゃ駄目かなあ」

「志望校によってはいかないとやばいかもな。甲子園行けたら推薦取れるかも知んねえけど」

「だよなあ…頑張らねえと」

 

 短い秋が終わるともうじき冬が訪れる。普段はおちゃらけた様子の貴史も真剣な目つきに変わった。

 それから1時間ほど経過すると貴史がトイレはどこかと里帆に尋ねた。

 

「玄関の近く。向かって左のドアにあるよ」

「さんきゅー。ごめん行ってくる」

 

 貴史が離席すると一瞬にして静かな空気が流れる

 

「…」

 

 互いに沈黙が流れた後、最初に均衡を破ったのは里帆だった。

 

「んっ?!」

 

 いきなり高成を押し倒してキスをする里帆。高成は突然の事に驚きを隠せない。

 

(えっ!?今ここで?!)

 

 高成が一度起き上がって里帆をなだめようとしたところで、貴史が戻って来た。貴史もその光景は予想だにしていなかったのか、口をあんぐりと大きく開けて驚きの表情を見せる。

 

「えっ、お前ら…?!」

 

 貴史の目の前には里帆が高成を押し倒してキスをしている構図が映し出されているわけだが、里帆のスカートの中も同時に見えている。スカートの下は黒いスパッツを履いてはいるが、そこから浮き出されるお尻のラインやスパッツのの食い込みはどこか肉感がくっきりしているせいで余計に艶めかしく見える。

 

「あ…そのー」

 

 貴史は申し訳なさそうに口を開く。高成が里帆へまた今度にしようかと告げるべきかと悩んだが、里帆は高成から口を離してこう答える。

 

「吉野くんも一緒にいいよ」

「おお、まじか。3Pって事か」

 

 貴史は一瞬迷いを見せたものの、すぐに後ろから里帆の尻を撫でまわす。その間高成は再び里帆に唇をふさがれた。両者の舌が熱く絡み合う。

 

(んっ…)

 

 次第に高成の下腹部が熱を持つのを感じた。貴史が里帆のスパッツとパンツをずらして、濡れたそこへ指を入れる。

 

「んっ…」

 

 高成の唇をふさぐ里帆から思わず声が漏れた。

 

(飯田…)

 

 貴史は里帆の中をぐちゅぐちゅとかきまぜると硬くなったそれを入れた

 

「んんっ」

 

里帆の声が更に増す。後ろから突き上げる度に声が出るのを高成は間近で見ているとより下腹部の疼きが増す。自分もあのようにされたいという欲が増してくる

 

(おれも…)

「ああっ!はあっ…!」

 

 バックで突かれる里帆は何度も体を震わせながら達していく。達しそうになった時に高成が里帆の乳首をぎゅっとつねると更に声があふれ出る。

 

「んっ…んんっ!」

 

 里帆が何度目かの絶頂を迎えた時、貴史はそれを抜いて里帆の口に精を吐き出した。里帆はそれをごくんと飲み込む。

 

「はあっ…はあっ…」

(おれもしたい…)

 

 里帆が倒れて息を切らす姿を見るとより高成の犯されたいという願望が膨らむ。

 

 …そしてついに我慢できずに貴史にこう漏らしてしまうのである

 

「なあ、貴史…」

 

「こーせー?」

「おれにもやって…ほら…」

 

 高成が貴史に自身の尻を向ける。今まで見た事がない姿に里帆は口を開けていた。

 

「いいのか…?」

「いいから早く…」

 

 貴史は高成のそこへ指を入れてほぐしていく。ある程度ほぐしおえたら指の数を増やしていく。それは先ほど里帆にやった事よりも慎重さを増していた。

 

「んっ…」

 

 前立腺を刺激されると高成からも声が出た。大分ほぐれたと見るや貴史は再び避妊具を装着し、高成の中へそれを入れた。

 

「ひぎぃっ…!」

 

 情けないが快楽を感じる声が高成から出る。それを聞いた里帆は更に高成へと目線を向ける。彼女からは目の前の光景に対して気味悪がったりドン引きする表情は無く、むしろ興味を抱いているような、そんな表情だった。

 

「動く、ぞ…」

「うん…」

 

 高成が頷いたのを確認して、貴史はゆっくりと腰を動かし始めた。

 

「あはあっ…ああっ…」

 

 先ほどの里帆と同じようにバックで突かれる高成。彼の頭の中はもう何も考えられなくなっている。そんな高成に里帆はこうつぶやいた。

 

「山岸くんすごいっ…」

「へ…?」

「すごいエ ッチ…」

「…っ」

 

 その後も貴史は言われるままに里帆と高成を抱き、高成自身も里帆を抱いた。日が落ちて家路を向かう高成に貴史が声をかける

 

「なんかこーせー…ビッチみたいだった。飯田よりエロいっていうかさ」

「え?」

「いや、なんでもない。じゃあ」

 

 貴史はそのまま振り返り去っていった。高成はその背中を見送る。

 

(飯田の目の前でしてしまった…おれはやっぱり…)

 

 高成もまた家へと急ぐ。

 

 しばらくして里帆の家に母親が帰って来た。夕飯の支度を一緒にしている時。母親が切り出す。

 

「ごめん里帆。…やっぱり転勤になったの」

「…そう、なんだ…じゃあ、私、は」

「転校することになるわね。」

 

 里帆はショックのあまり何も言い返せなかった。夕飯を食べ終え自室へと戻る里帆は身を投げ出すようにベッドへ横になる。

 

 すると涙がこぼれてきた。次第に里帆の視界が涙でぼやけていく。

 

「…っ」

 

 里帆は手で覆い涙をぬぐうも、とめどなくあふれ出てくる。

 

「…だよねえ…」

 

 彼女は声を押し殺して泣き続ける。少し時間が立って、目線はクローゼットへと向けられる。

 

「…」

 

 次に向けられたのは、高成とのラインのやり取りだった。里帆はそれを眺めると、先ほどまで泣いていた目から何かを決めたような目つきへと変貌を遂げる。

 

「いっそ…」

 

 …どうにもならないなら、逃げてしまおうか。そう言ったように聞こえる。

 翌日の放課後。この日は里帆からの誘いは無かった。校門を出るとある人物と再会する。栞と雄也だった。

 

「お久しぶり!」

「お久しぶりです…!」

 

 互いに挨拶を交わし終えた時。栞と雄也は真剣な・必死の表情を浮かべた。

 

「茜谷が、不登校になって…!」

「山岸くん、その…山岸くんも力を貸してもらえる?!」

「えっ…?」

 

 高成はいきなりの情報に戸惑う。

 

(てっきり忙しいのかと…どういう事?)

 

 高成は2人から詳しい事情を聴くと、優里の家へ行く事に決めた

 

(本人から話を聞かない事には…!)

 

 3人は共に優里の家へと走る。

 

「!ついた…!」

 

 雄也は玄関で待機し、栞に連れられ中に入る高成。栞が部屋をノックすると優里が出てきた。今まで見たことのないくらい憔悴しきっている表情である

 

「茜谷さん!」

「…山岸くん…」 

「あ、茜谷さん…」

 

 栞は優里へ高成を連れてきたと話す。

 

「やっぱり、ここは山岸くんと会って話した方が楽になるんじゃないかって…おせっかいかもしれないけど」

「…ううん。ありがとう」

 

 そう返した声もやはり暗かった。高成は優里の様子をじっと見つめる。

 

「お茶でもいる?私そろそろサイン会行かないとだから…」

 

 栞の問いに高成は自前の水筒があるので大丈夫と断った。

 

「じゃあ、行ってきます。お母さんもお父さんも今日は忙しくて帰ってこないみたいだから気をつけて」

 

 栞はそう言い残して出ていった。玄関には変わらず雄也が待機している。

 

「…」

 

 高成と優里。2人の間には沈黙が流れる。しばらくして沈黙を破ったのは意外にも高成だった。

 

「ごめん。こんな事になってるとは思わなかった」

 

 素直に謝罪する高成に、優里は山岸くんは悪くないと告げる。

 

「全部私の問題だから…山岸くんは悪くないよ」

 

「…」

 

 ここでもまた会話が途切れてしまう。

 

(何話せばいいんだろうか)

 

 高成は必死に頭を巡らせる。雄也も静かに玄関で待っていた。

 

(ここで向うへ行けば茜谷には逆効果になる。ここは山岸くんに全て任せるしかない)

 

 必死に考えをよぎらせる高成の頭の中である言葉がふと再生された。

 

「…皆のペースで大丈夫だからね。無理する事も焦る事も必要ない」

 

「1人じゃないから。こうして皆いるから。困った時はお互いを頼ればいい。1人で抱え込む必要なんてない。でしょ?」

 

 あの時2人にかけた栞の言葉。そうだ。おれたちは茜山同盟じゃないか。困った時は互いを頼ればいい。と…

 

「あのさ、おれで良かったら…話聞くから」

「山岸くん?」

「だって…同盟相手だろ?おれたちは」

 

 高成がそう言い切った時。優里のなかで「何か」が堰を切った。

 

「…だけどね。同盟相手に恋愛感情を持つのはルール違反。覚えてる?」

「茜谷さん…?」

「私は山岸くんが好き。…好きになってしまった。里帆ちゃんが好きでっ…いつもひたむきな山岸くんを応援したいって、思ってたのに、君を好きになってしまった!!」

「あかね、やさん」

「同盟破りたくないのに!!なんで…なんで…!!」

 

 優里の悲痛な泣き声が部屋中にこだました。

 

「茜谷さん…!」

「ごめん…!言い出しっぺの私から同盟破ろうとするとか、バカだよね…」

 

 優里は大きな声でわんわんと泣く。高成は彼女を見ていると、そっと引き寄せて抱き締めた。

 …これは高成が計画して意図した行動では無く、自然とそうなった結果である。まるで母親が子を抱きしめるような安心感とぬくもりが、そこにはあった。

 

(あたたかい…)

 

 優里はそのぬくもりに触れると次第に胸の内がほぐれていくような、そんな感覚を覚える。

 

(だから私は、山岸くんの事好きになったんだ。そして私たちは同盟相手なんだ。) 

 

 しばらく無言のまま抱き合う2人。暖かい雰囲気が立ち込めていた。雄也は静かに部屋へ近づき、中をドアの隙間から見つめ、ほっと息をつくのであった。

 

(山岸くん来てくれて良かったな)

 

 優里は高成から頭を離して正面から向き直る。

 

「ありがとう」

 

 わずかに光を取り戻したかのような笑みを浮かべれた優里から、自然と感謝の言葉がこぼれた時だった。

 

♪~

 

 これまでの雰囲気をぶったぎるようにラインが鳴る音がする。高成のスマホからだ。

 

「ん?誰だろう?」

 

 高成がおそるおそる画面を開いた。やはりと言うべきか、送信したのは里帆だった。

 

「飯田か…!」

(里帆ちゃんから…何か嫌な予感がする…)

 

 ただならぬ雰囲気を察知した2人。コメントを見るとそこには「さようなら」の5文字だけがあった。

 

「…どういう事?…茜谷さん、どう思う?」

 

 高成は優里にどう思うか質問を投げかけてみた。優里は久方ぶりに頭を巡らせる。

 

「…何かあった?」

 

 最も抽象的だが最も的を得た返し。ここで高成と優里の思惑は一致した。

 

「行こうっ…!」

「どこから行く?」

「一旦飯田の家で!」

 

 優里は服を着替える。その為一旦部屋の外へ出た高成は廊下で雄也と遭遇した。

 

「何かあった?」

「飯田が…こんなライン送ってきてさ」

 

 高成は雄也にラインを見せる。

 

「…なあ。なんか不穏じゃね?」

「それな。で今から2人で飯田の家周辺行こうと思って」

 

 雄也は成程ね、と呟くと、一呼吸間を置いてまずはそれでいいと思うと返した

 

「良かったら永瀬さんも手伝ってくれる?人多い方が良いだろうし」

 

 高成の提案は理に適っている。ただ雄也は優里の事を思うと果たして一緒に行っていいのかと不安が襲う

 

「おれさ、今茜谷とあんま仲良くはないと自分では薄々思うけどさ…行っていいと思う?」

 

 雄也の提案に高成は言葉を返せないでいた。するとそこへ着替えた優里が近寄って来る。優里は雄也へ目線を向けたものの、彼へは何も言葉は発さなかった。

 

「行こうか」

 

 高成の問いかけに対し優里は、うん。と頷くと3人は家を出た。雄也も放っておけないのか一応はついてくる事に決めたようだ。高成はその間里帆へ何度か電話をかけて見るも繋がる事は無かった。ラインにメッセージを送っても既読はついていない。

 里帆の家があるマンションへたどり着いた3人はそこである人物と遭遇する。

 

「里帆…?どこに行ったの?」

 

 それは里帆の母親だった。高成は一旦彼女に声をかけてみる事に決めた。

 

「あの~何かあったんですか?」

 

 里帆の母親は、あなたもしかしてあの時手紙を持ってきてくれた、里帆のクラスメイト?と高成に尋ねると高成ははい。と頷いた

 

「里帆がいなくなったの…!スマホは部屋の中に置きっぱなしで…!」

「えっ…?いなくなったんですか?!」

 

 3人とも開いた口がふさがらなかった。里帆の母親も動揺を抑えきれていない。

 

「あなたたち里帆見てない?」

 

 高成らは首を振って見ていないです、と答える。

 

「どこへいったのかしら…」

(どこにいったんだ、飯田…) 

(里帆ちゃん…)

 

 焦りが募って来るのを強制的に抑え込みながら、その周辺を探すも里帆は見つからない。

 

「里帆…!どこにいるの…?」

 

 母親がどれだけ心配しているかが高成にも優里にも雄也にもダイレクトに伝わって来る。

 

「あの…里帆ちゃんのお母さん…警察に連絡してみましょう」

「…そうね…それしか、ないわよね…」

 

 ついに警察へ連絡し、駆けつけた数人の警察官も加わって捜索が始まる。

 

(さようなら、しか書いてないんだよな…これが何かきっかけ?キーワードだったりするんだろうか?)

 

 高成はラインの画面を里帆の母親に見せるべきか迷っていた。

 

(茜谷さんに聞いてみようか)

 

 優里に聞く事にした高成は、彼女にちょっといい?と小さく声をかけ、質問を投げかけてみた。

 

「うーん…私なら見せないかもしれない」

「なんで?」

「内容がほら、なんかこう…これで余計に焦ったら逆効果になるというか…」

 

 優里は自分でも内心驚くほど冷静さを取り戻しつつあった。高成も確かにそうだ…と頷く。

 

「だよね。…ありがとう」

「いえいえ」

 

 その後も捜索は続くが、里帆は見つからないままだ。辺りはすっかり日も落ちて暗くなっている。

 

「…あの。あなたたちは、学生さんみたいですし…今日はもう帰った方が良いんじゃないかな?」

 

 女性の警察官が高成たちの前へ歩みよってそう提案すると、3人は顔を見合わせる

 

「ここは警察の人に任せた方が、いいかもね…」

「うん」

 

 3人は彼女の提案を飲み、ひとまずは家に帰る事になった。里帆の母親が手伝ってくれてありがとうと3人へ会釈をする。

 

「早く見つかるといいのですが…」

「そうね…」 

 

 帰宅後。優里の家にはサイン会を終えた栞が帰宅していた。

 

「おかえり」

 

 優里は一旦迷いを見せるが、何か手がかりがあるかも?と思いとどまった結果、里帆の事を話すことに決めた

 

「実は…」

 

 優里は里帆が高成へメッセージを残していなくなったという事を全て栞に打ち明けた。

 

「それ…大丈夫なの?」

「心配で…一応警察の人が探してはいる、けど…」

「そっか…後は警察の人やお母さんに任せるのが吉だと思う。早く見つかるといいけど…」

「だよねえ…」

 

 夕飯を食べ終えて自室へ戻ると、優里はスマホ画面を見る。そこには高成からのメッセージが映っていた。

 

「今更だけどあれから殆どスルーしてたわ。既読にしておこう…」

 

 ふとそこである疑問が思いつく

 

「山岸くん、里帆ちゃんにはもう告ってるのかな?」

 

 その疑問に気づいて自身の記憶を辿る。

 

「まだ聞いてないなよういや」

 

 里帆に告白したというそのような話はまだ彼からは聞いていない事を再度脳内で確認した優里は、次第に焦りのような感情が浮き上がってくるのを感じた。

 

「…もし、手遅れになったら…!」

 

 頭の中に浮かぶ「さようなら」の文字。先ほどは高成の里帆の母親にそのことを告げるべきか否かの質問に対しては冷静に伝えないで良いと発言した優里に段々変化が起きるのが優里自身も知覚し始めていた。

 

(さようならって…やっぱり…伝えた方が良かったのだろうか?)

 

 何のために同盟を組んだのか。なんで自分が高成を好きになったのか…もし仮に里帆に何かあったら、いや…死んでしまったら、もう二度と高成は彼女へ胸の内を真正面から告げる事が出来なくなる。正直高成が里帆と結ばれる事はほんのちょっぴり羨ましさを感じないと言えば嘘になる。だけどそれ以上に想いを告げる事が出来なかったという悲しいバッドエンドなんて、見たくない。…そう感じた優里の胸と頭の中は閃光が走るように動き始める。

 

「山岸くん?起きてる?」

「茜谷さん?起きてるよ?」

「今更だけどさ、里帆ちゃんに告白した?…まだだよね」

 

 その事実を突きつけられた高成は、そうだと伝える。

 

(飯田の事が好きだ。だけど、そういえば、まだ…)

「手遅れになる前に、伝えなきゃって思って…!」

(茜谷さん…!)

 

 このまま告げれずにバッドエンドとなるか、それとも想いを伝えられるか…後悔はしたくない。高成はためらわなかった。

 

「いこう…!もう一度…!」

 

 深夜に差し掛かりつつある時間帯。高成と優里はわずかな荷物を持ってこっそり家を出た。指定した待ち合わせ場所である公園で落ち合うとあてもないまま里帆を探す。

 終電ギリギリの電車に乗り、予備校のある市街地へ向かうと、そこにはまだ人ごみが溢れている。

 

「どこいったんだろう」

 

 あてもないまま2人はネオンが照らす夜の街を進む。

 

「勢いよく来たのはいいけど…なんか怖いなあ…」

 

 優里がそうぼそりとつぶやいた。

 

(だよな、おれも正直怖い)

「今は離れず一緒に居よう。色々危ないし」

 

 高成が優里に声をかけると、優里ははっきりと頷く。

 ネオンが妖しく照らす夜の街は見ているだけで酔いそうなほどだ。2人が里帆を探しながら歩いていると、金髪でピアスをいくつもあけた不良チックな男性が声をかけてきた

 

「君ら何してんの?見る感じ若そうだけど、学生?」

 

 いきなり声をかけられ身構える2人。一度間を置いて優里が勇気を出して反応する

 

「実は人を探してまして…黒髪ロングの女の子で、身長は私と同じくらいなんですけど、見ませんでした?」

「あー…それなら大分前に駅の方でそれっぽい子見たなあ。でもこの辺歩いてもよく似た子何人かいたし、君らが探してる子かどうかは…もしよかったら手伝おうか?」

「そうですか…お気遣いありがとうございます。お気持ちだけ受け取らせて頂きます。ありがとうございました。」

 

 優里は誘いを丁重に断り頭を下げる。高成も並んで頭を下げると足早に駅の方へと向かった。

 

「電車乗っていったかなあ…でももう終電だしなあ」

「どうする?」

「始発を待つか、歩いていくかのどっちかだよねえ…」

 

 始発を待つならどこか安いホテルかネカフェで寝泊まりする、歩くなら夜を徹して…という事にはなる。高成と優里は考え抜いた末、歩いていく事に決めた。

 

「もし途中でしんどくなったら、その時は一旦休もう」

「うん」

 

 ひとまずは駅まで向かい、そこから線路を辿るように進むことに決めた。

 

「…」

 

 次第にネオンの明かりがさらに増す。ここで高成はなぜか頭の中に一瞬、ある光景がちらつく。

 それは、海へ還ろうとする里帆の姿だった。なぜその姿がちらついたのか、高成には全く分からないが何か胸の奥で引っかかるような「もの」を覚える

 

(あれ、なんで…?いや、もしかして…?)

 

 意を決して優里に伝える事にした。

 

「あのさ、海ってどこの方角になるのかな」

「あー…駅の建物の中に、地図かなんかあれば…」

 

 駅の改札口の横に各路線を記した地図があった。2人は現在地と照らし合わせながらそれを見る。

 

「やっぱ始発まで待った方が良いかなあ」

 

 時計を見ると午前2時を過ぎたところ。つまりは丑三つ時だ。始発は午前5時過ぎなのであと3時間はある。

 

「…どうする?」

「うーん…」

 

 頭を抱えて迷う優里と高成。ここで高成がある事を思いついた。

 

「タクシーで行く?」

「…そうだね」

 

 駅前の道路にはまだ3.4台タクシーが待機していた。2人はその内の一台に乗車し、海に近い〇×駅までお願いします、と運転手に告げた。タクシーはネオン街を進む。道中酔っ払いが暴れているのか喧騒も聞こえてくる。更にラブホテル街まで見えてきた。ラブホテル周辺にはカップルや複数の女性グループらが列を作っている。

 

「結構人いるね…」

 

 優里は窓から眺めながらそう呟く。

 

 運転手曰くこのラブホテル街は内装がきれいで食事や各種サービスが豊富に取り揃えられているため、客が絶えないのだという。最近はカップルよりも女性グループの方がよく見かけるのだそうだ。

 

「へえ~…ラブホテルで女子会かあ」

「カラオケとかで盛り上がれそうだよね」

 

 高成と優里が会話をしていると雨が降って来た。

 

「ああ、降って来たなあ…傘持ってないや」

 

 優里が窓の向こうを見ながらそう呟く。

 

(飯田…)

(里帆ちゃん…)

 

 雨脚が強くなってきた所で、海に近い駅にたどり着いた。料金を払って下車すると2人は雨に打たれる。外は思いのほか寒く雨も冷たい

 見かねた高成は上着を脱ぐと、優里に着せた。

 

「いいの?山岸くん着ときなよ」

「おれは大丈夫…」

 

 高成は言い切ったものの、寒いのは変わらない。駅の横にある自販機でホットのコーヒーを買うと、寒さを紛らわせるように一気に飲んだ

 そんな高成を優里は見ていたのだった。

 

「そういえばさ、山岸くんはなんで海の方へ、と思ったの?」

「ああ…実はその…」

 

 高成は一瞬海に還ろうとする里帆の姿が脳にちらついたことを優里に告白した

 

「そうなんだ。…なんだろう…?お告げ…?」

「おれにもよくわかんないけど、ほっとく訳にもいかないなって」

 

 2人が海のすぐ近くまでやって来た時、誰かが海の中へ入ろうとするような音が聞えた。

 

「?誰かいる?」

 

 しかし辺りは暗く何も見えない。スマホの明かりを灯し周辺を見渡すと、今にも海へ入水しようとする女性の姿が見えた。

 

「っ!!」

 

 高成と優里は一目散にその場へ駆け寄る。更に駆け寄った事で女性の詳しい容姿が明らかとなった。高成は女性を抱きかかえ入水を阻止する。

 

「飯田!!」

「…山岸くん?!」

 

 入水しようとした女性は紛れもなく里帆だった。

 

「っ離して!」

 

 里帆は後ろから自身を抱きかかえ阻止する高成をはねのけようとする。激しく動くたびに波しぶきが上がり、体は海水へつかっていく。

 

「だけどっ…!待ってくれ!」

「だって…!」

 

 高成だけでは危ないと察した優里も里帆の横へ現れ、地上へ戻るよう促す。

 

「里帆ちゃんだめだって!皆悲しむよ!!」

「…!」

 

 優里と高成は何とか里帆を引き上げるように地上へと戻した。3人とも雨と海水に濡れている。

 

「はあ…はあ…」

 

 里帆の身体は寒さゆえかそれとも興奮状態にあるのか判別できない程小刻みに震えている。

 

「ぜえー…ぜー…」

 

 優里と高成も寒さから体が震え、手足がかじかむ感覚を覚える。

 

「いったん、場所変えようか…」

 

 優里はぼそりと呟く。

 立ち上がって浜辺から道路へと駆け上がり、どこか雨風がしのげる場所は無いかと探す。すると近くにファッションホテルがあるのが目に入った。

 

「山岸くん、あそこは?」

「行ってみよう…!」

 

 高成が言いきったところで、里帆が突如崩れ落ちた。

 

「っ飯田?」

 

 里帆の体は完全に冷え切っており、顔色は悪い。試しに優里が里帆の額に手を当てるとかなり熱くなっているのが分かる。

 

「熱があるかも!」

「なら、はやくいかないと…!」

 

 悠長にしている暇はない。高成は急いで里帆をおぶるとホテルへ向けて走り出す。到着し、受付を済ませると優里は手早く里帆をバスタオルで拭いてバスローブへと着替えさせると、ベッドに寝かす。

 

 里帆はありがとう…と小さな声で優里に告げるもぐったりとしている。

 

「これ…!」

 

 高成が水に濡らして絞ったタオルを里帆の額へと当てた。

 

「茜谷さん…ここ、体温計ってあると思う?」

「どうだろう…聞いてみようか」

 

 ベッド横にある電話の受話器を持った優里は、緊張の面持ちでホテルのスタッフへ体温計は無いかと聞いてみたところ、電話に出たスーツ姿の若い女性スタッフが体温計を持ってきてくれた。

 里帆の体温は38.8℃。やはり高い熱が出ていた。スタッフは夜間救急のある病院を紹介しましょうか?と声をかけるも、里帆は大丈夫だと断った。そんな彼女を見て優里と高成はだよね、と心の中で呟く。

 

「里帆ちゃん、何かあったまるものでも食べる?」

 

 見かねた優里はそう里帆に質問すると、里帆は食べるとゆっくりと頷く

 

「スープとか味噌汁とかありますか?」

「ありますよ。どれにしますか?」

 

 スタッフがテレビの横に備え付けられたメニュー表を優里と高成に見せた。

 

「飯田、味噌汁とコーンポタージュどっちがいい?」

「…味噌汁」

 

 味噌汁と焼きおにぎりを注文する。ここで優里と高成もきつねうどんを注文した。

 

「では、また何かあればおっしゃってください」

 

 スタッフは礼をして去っていった。

 

「優しい人で良かった…」

 

 優里はほっと息をつく。

 しばらくしてチャイムと共に先ほどのスタッフが注文したメニューを持ってやってきた。熱々のきつねうどんは見ただけで食欲をそそられる。焼きおにぎりからも醤油の香ばしい香りが広がる。

ベッドから起き上がった里帆は、味噌汁に焼きおにぎりを入れてかき混ぜ、おじやのようにしてから食べていた。ゆっくりではあるが何とか食べられているようだ。

 

「きつねうどん美味しい」

「あったまるー」

 

 昆布とかつおの合わせだしがお揚げに染みてまろやかな味だ。

 

「どう、食べれそう?」

 

 優里が里帆へそう聞くと、里帆は大丈夫だと告げた

 …しかし、里帆の体の震えは以前止まっていないように見える。更に何とか食べられてはいるものの、倦怠感があるのか全体的に動きが緩慢としていた。優里は頭の中で大丈夫なのか?と彼女の状態を不安視する。高成もまた里帆の未だ続く体の震えに気づき、不安を抱いていた。

 

(病院連れて行った方がいいんじゃないのか、これ)

(でもさっきは断ったしなあ…無理やり連れていく訳にもいかないし)

 

 里帆はなんとか…という具合で焼きおにぎりと味噌汁を食べ終えると、ふらふらとまたベッドに戻り、座ってぼーっとし始めた

 

「…大丈夫?」

 

 高成が声をかけたが頷いているのかいないのか分からない曖昧な返事が返って来る

 

「飯田、もう一回熱計ってみたら?」

 

 高成は体温計を里帆に渡す。

 

「39.3℃…」

「上がってるね…」

 

 優里もきつねうどんを食べながら体温計を高成の横から覗き見る。優里は覗き終えると残ったきつねうどんのだしを全て飲み干し、箸をおいた。

 

(…病院行った方が良いと思うんだよな、私は。なんとか説得してみよう…)

「里帆ちゃん、病院行く?夜間救急紹介してくれるって言ったしさ」

 

 里帆はやはり首を縦には振らない。

 

(茜谷さんの気持ちはもっともだ。この場にずっといる訳にもいかないし…)

(おれは、飯田が好きだ。だからこそここは飯田を…さっきのようにもう一度止めなきゃいけないのかもしれない…そのためにも気持ちを伝えるべきなのかもしれない…!)

 

 高成はきつねうどんを全て食べ終え、里帆の元へ歩み寄った。

 

「こんなところで言うのもなんだけどさ、おれ、飯田の事好きだよ」

「え」

 

 里帆と優里は互いには目を見開く。

 

「飯田の事が好きだからこそ、今の飯田がすごく心配。これ以上飯田に何かあったらって思うと…しんどい。だからおれも茜谷さんと同じで病院行くべきだと思う」

「…」

 

 緊張した空気が流れる。

 

「…分かった」

 

 里帆はそう言い終えるとゆっくりとその場を立ち上がったが、ふらついて倒れてしまう。

 

「飯田!!」

 

 なんとか里帆を受け止めた高成は、一度ベッドに座らせると、優里と一緒に荷物の整理をし始めた。

 

「さっきのスタッフさんに電話してみる…茜谷さん準備お願いできるかな?」

「…了解!」

 

 高成の目はいつになく真剣なまなざしとなっていた。その変化は優里にも分かるほどである。

 

(高成くん、こんな目出来たんだ。あの人を助けた時もこんな感じだったのかな)

 

 結果、先ほどのスタッフが夜間救急に電話をしてくれた。支払いを終えると、手配してくれたタクシーに乗り込む。

 

「ありがとうございました…!」

「お気をつけて…!」

 

 海の向こうの水平線は徐々に紫色に近づいている。夜明けが迫ってきていた。里帆はぐったりとしており、先ほどよりも反応も鈍くなっていた。

 

「飯田!しっかり!!」

 

 高成は必死に声をかけ続ける。それは里帆がいなくなった時以上に自分より遠くへ行こうとしているように見えたからだ。そんな高成の姿を優里は目に焼き付けていく。

 

(そうだ。そんな山岸くんだ…)

「お客さん、つきましたよ!」

 

 運転手が声を上げた。料金を払い、自力で歩けないほどに衰弱が進んだ里帆を、高成が抱きかかえて入口へと入る。受付を済ませた後、すぐに診察と検査並びに処置が始まった。

 待合室で里帆を待つ高成と優里。ここである事に気づく。

 

「この病院てもしかして…」

「栞さんが運ばれた場所かも」

 

 そう。3人がいるこの病院は、かつて栞が運ばれた場所でもあり、高成と優里が出会った場所でもあった。

 

「まさかもう一度ここに来るなんて…」

 

 短い旅路はここで終わり。優里と高成は、里帆が見つかったと警察や自身の家族に電話をかけて報告した。しばらくすると里帆の母親が荷物を持って飛び込んでくる。

 

「あなた方が見つけてくださったんですね、ありがとうございました。ご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 

 里帆の母親は2人へ丁寧に頭を下げると、看護師と医者に連れられて里帆のいる病棟へと歩いていった。

 しかし里帆は依然としてまだ意識は戻らない。

 

「もっとはやくに飯田を見つけていれば…」

 

 高成から後悔の言葉があふれ出す。高成を見た優里はしばらく間を置いて、彼へ声をかけた。

 

「大丈夫…里帆ちゃんなら必ず目を覚ますから。…それに山岸くんは里帆ちゃんの事好きなんでしょ?信じよう」

 

 力強く言い切った、優里の目に迷いは無かった。

 

「そうだ…おれは飯田が好きだ。…ありがとう」

 

 高成は優里の言葉に勇気をもらったのである。

 その後、高成と優里は栞たち互いの家族と再会した。勝手に家を抜け出したという点については怒られはしたものの、里帆を見つけて説得し、病院へと連れてきた点は褒められたのだった。

 

「高成はほんと優しいね。以前も人助けして」

「あ…それ、私です。彼にはお世話になりました」

 

 朝日が彼らをやさしく照らしている。

 それから2日後に里帆は目を覚ました。母親は泣きながら喜んだ。母親は高成と優里が里帆をここまで連れてきた事と、見つかって良かった事を話し終えると、なぜ家を出て行ってしまったのか、と里帆に問う。

 

「…どうしてか…」

 

 母親に自分がどう思っているかについて、聞かれた事はこれまでほとんど無かった。里帆はしばらく考え込んでこう伝える

 

「みんなと…山岸くんと離れたく、無かったから…」

 

 夕方。高成と優里が見舞いに訪れた。目を覚ましている里帆の姿を見てほっと安心する。

 

「良かった…」 

 

 高成と優里は病室内にあるソファとパイプ椅子に腰かける。それぞれ里帆へ今の体調や、食事など状態を聞いたり、自身の近況を伝えた。

 話が少々弾んできた所で、高成は核心をつく質問を投げかける。

 

「なんで飯田はあそこにいたの?」

 

 …ここで里帆は2人へようやく事実を打ち明けた。

 

「お母さんが転勤する事になって、私も転校しなきゃいけなくなった。本当は1人暮らしでもいいから今の学校に通いたかったけど、お母さんに反対されて…」

「飯田…」

「このまま皆に会えなくなるのは嫌だから、無我夢中で飛び出した…何もかもやけになって、そしたら「偶然」海に落ちた。落ちたならいっそもう…って思ってそのまま身を任せたらしばらくして岸へ流されて…」

「そうだったんだ…」

「そのあとは、何度も海に身を投げても、体は岸に戻される。その繰り返し。そしたら2人に会った」

「里帆ちゃん…」

「…私、「山岸くんが好き。山岸くんと離れ離れになったら生きていけない」」

 

 里帆の口から生まれた告白を高成は真正面から受け止めた。しかし、その質量の重さに足が崩れ落ちそうになるも、必死にとどめた。

 

「飯田…」

 

「私は山岸くんを愛してる」

 

 …この重いまでに真っすぐな言葉の威力はおそらく高成にとっては、全身を跡形も無く木っ端みじんにするほどの威力であったと推察する。また優里にとっても同等の威力があったと言えるだろう。

 今の高成に出来るのは、いや、やらねばならないのはこの言葉を真っ向から浴びる事で里帆の気持ちを受け取り、自身の本当の姿と心にある里帆への愛を伝えるという事になる。

 茜山同盟があるのは、里帆と高成が結ばれるためというのもあるのだから。

 

 頑張れ、高成。負けるな、高成。逃げるな、立ち向かえー

 

「おれもだ。おれも飯田が好きだ。こんなおれを愛してくれて、ありがとう。だけどおれは男ともやるビッチだけど、それでもいいの?」

 

 里帆の返事は変わらない。

 

「どんな山岸くんでも、私は好きだよ。山岸くんもこんな変な私、愛してくれる?」 

 

 里帆は迷わず言い切った。

 

(飯田は、そう言ってくれた)

 

(この際飯田がビッチでも関係ない。おれもビッチなんだから一緒だ。それにあそこまでやったって事は、愛は変わらない…!)

「絶対に愛してみせる」

 

 高成は里帆をかたく抱きしめた。里帆もまた高成をはなすまいと抱き締める。そうすると互いに熱い涙がこぼれ落ちてきた。

 その様子を優里はじっと見つめていた。

 

(めでたし、めでたし…かな…)

 

 茜山同盟のかいもあって里帆と高成は結ばれてこれにてハッピーエンド。めでたしめでたし。

 そんな優里にも涙が落ちてきた。しかしそれは里帆と高成が流しているものとはまた違ったものだった。

 

(これで、同盟も終わりなのかな…?でも、こっちの恋はまだ…)

 

 優里は部屋から退出していった。

 

 これでいいんだと言い聞かせる脚はだんだんとはやくなっていく。

 

「これでいい、これでいいんだ!」

 

 病院の敷地から出ようとした時、雄也から電話が来る。優里は里帆が見つかり、紆余曲折あって目覚めた事を雄也に報告すると、彼はよかったと口にする

 

「あと…山岸くん里帆ちゃんに告白した。両想いになった」

「そうか、頑張ったんだ」 

 

 雄也から高成をねぎらう言葉がかかる。

 

「茜谷も頑張ったもんな」

「!…うん…」

 

 雄也はそう言い終えると、電話を切る。同時に優里からは決壊した堰のように涙がとめどなくあふれ出てきた

 

「…っ…っく…」

「茜谷さん!!」

 

 優里を呼ぶ声が聞える。なんと高成だ。

 

「山岸くん、なんで…っ」

「茜谷さん…茜谷さんにも、言わなきゃいけない事あって…」

 

 高成は息を切らしながら、優里へこう問うた。

 

「あのさ。同盟組まない?」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 あれから。時間がたち彼らは大人になった。

 

「いらっしゃいませ…山岸くん、お疲れ」

「おっ、飯田もお疲れ」

「ありがと」

 

 ここは喫茶店。アンティークな雰囲気の内装にジャズ音楽が店内のBGMとして聞こえてくる。一流企業に就職しサラリーマンとなった高成は、この喫茶店でアルバイトしている里帆と同棲しながら生活している。

 

「何にする?」

「コーヒーとナポリタンで」

 

 高成が注文を終えると、里帆は厨房にいるマスターへ注文内容を伝える。しばらくすると白いカップに入ったコーヒーと、銀色のお皿にのった熱々のナポリタンが里帆の手によって運ばれてきた。ナポリタンの上には目玉焼きがのっており、麺と絡めて食べると甘みとコクが出て非常に美味しい。

 

「今日は、これから…?」

 

 里帆はゆっくりと頷いた。食べ終えると会計をしてお店を出る。去り際里帆は高成へ午後からも頑張ってねと声をかけてくれた。

 

「ありがとう。行ってきます」

 

 帰社する道中。高成の元にはラインが来ていた。優里からのものだ。

 

「ごめん。今日遅くなるんで夕飯はどっか寄って食べる。さきに夕飯食べといて。」

 

 高成は了解とかかれたスタンプを押した。

 

 …実は高成は優里と里帆の3人と同棲もとい共同生活を送っている。高成と里帆は大学を卒業後、それぞれ今の職場に進み、優里は大学院へ進んだ。

 また里帆はアルバイトをしながら、小説家を目指している。なぜこのような奇妙な関係が続いているのか説明しよう。

 

「あのさ、同盟組まない?」

 

 高成があの時提案したのは、高成と優里の2人で構成された茜山同盟へ、里帆も交えた3人による新たな同盟を結成するという事だった。

 高成にとって確かに里帆は大事な想い人である。しかし優里がいなければこのような事にはなっていないであろうという事を、高成は重く理解していた。だからこその新たな同盟結成の誘いだった。そして優里にとっても高成は重要な存在だ。要はwinwinの状態があったのである。

 さらに付き合う以上、里帆をもっと知る必要もある訳で…ならいっそ。という事で彼女も加えたらどうか?という話である。

 この同盟を結成するにあたり、以前と違い新しくあるルールが追加された。それは「自分が犯された話をする」という内容である。

 自分が犯された話という自身の性癖と合わせて抱え込みやすい話題を「あえて」する事で、より同盟の中での秘密の共有をしやすくするため。という狙いがある。

 

「お互い隠し事と一人で抱え込むのは無しにしたいから」

 

 提案した高成の狙いを聞いた優里と里帆は勿論了承した。

 その後同盟を再結成し、茜山田同盟となり優里は雄也となんとか関係を修復する事が出来た。ただ今はお互い別々の進路を歩んではいるので、疎遠になりつつはある。

 日向へも優里は関係を修復しようと試みたのか、拒絶は変わらなかった。そして今は疎遠となっている。どうやら彼女とよく似た売れっ子のAV女優がいるらしいという噂があるようだが、彼女がどうなったのかは分からない。

 貴史も真面目にスポーツへ取り組み、今は一流のトレーナーになるため日々勉強の毎日である。智乃は藤野先輩と颯太を天秤にかけた結果、颯太を選んだ。

 颯太は日本代表まで上り詰め、海外で活躍している。

 夜。帰って来た優里は高成に出迎えられる。キッチンでは丁度里帆がホットミルクを入れていた。

 

「ただいま~」

「おかえりー」

 

 優里は手洗いうがいを済ませると、今日あった出来事を話し出した。

 

「今日ね、後輩の河邊くんが論文書くの手伝ってくれたの」

「へえ~よかったじゃん。それで?」

「ラーメン食べに行ったらそこで告白されてさ」

 

 高成と里帆はかたずをのんで、どうなったの?と優里に問う。

 

「…断った」

「なんで?」

「河邊くんのこと好きな女子がいるみたいだし、それに…今のこの同盟がなんだかんだで心地いいからさ。セフレならありだけど、彼女…島田さんの事考えたら、踏みとどまってしまった」

「そっか…」

「里帆ちゃんは喫茶店とのマスターはどうなってるの?」

「したよ。あのあと。でもあまり時間無くて…で、奥さん帰って来て仲直りしたからもうしないと思う。高成くんは?」

「おれは…今日先輩とした」

「結婚してる人だっけ?」

 

 里帆の問いに対し、高成は頷く。

 

「うん。お見合いで結婚した人。色々あって奥さんとは出来ないからおれとセフレになってる。今日もやってて前戯とか結構丁寧だなとは思う」

 

 互いに淫談が盛り上がるところで、そろそろ日付が変わる時刻を迎える。窓の外は星が見えていた。優里は今もAV女優を続けている栞から貰った桜色のマグカップに、おかわりで里帆のつくったホットミルクを注ごうとしていた時、流れ星を見つける。

 

「あ、あれ流れ星じゃない?」

「どこ?」

 

 こうして3人は今日も同盟としてあるのだった。

 秘密の共有から不思議な縁が始まる。

 その縁は、その赤い糸は、生涯にわたってあなたを支え続けてくれるかもしれない。

 

 

 紅い青春・完

 

 

 

 

 

 

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