※この作品はR-18です。

ヨルさんと中年オヤジが『幸せ』になる話   作:a-su

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Bパート(♡)

 昨夜、課長のペニスが下腹部に残した重い感覚。深いため息が、私の口から押し出されました。

 

「ため息をつくと幸せが逃げるよ、ブライア君」

 

「あ、次長……」

 

 よく通る張りのある声。

 制服のまま庁舎の裏庭でベンチに腰掛けていた私は、ハッと我に返りました。

 

「そんなに暗い顔で。美人が台無しじゃないか」

 

「すみません……ちょっと疲れていて……」

 

 次長はそうかと頷き、隣に腰を下ろしました。

 

「……」

 

「あの……」

 

「いい天気だねえ。こんな日はのんびり昼寝でもしたいもんだ」

 

「はあ。まだ少し、肌寒いですけれど」

 

「ははは、違いない」

 

 朗らかに笑って空を見上げる仕草は、とても優雅でした。いかにも爽やかでハンサムなのです。

 

「──そういえば、ゲルゲス課長の件だが」

 

 ドキリとして、体が強ばりました。どうして私に課長の話を?

 

「私は彼をあまり評価していない。それは君も知っているだろう?」

 

「……はい」

 

 それどころか、毛嫌いしています。確か次長は三十五、課長は四十。五つも年上の部下をみんなの前で叱責する姿を何度も見ました。

 

 ……そのたびに屈辱に歪む、課長の表情。同僚たちの冷たい視線の中を歩く()()()は、まるで針のむしろの上にいるようで……。

 

「奥さんの家柄が良いだけで出世したような男さ。そのくせ一人前のつもりで頑張りたがる。無能な働き者ほど迷惑なものはないね」

 

「……そうでしたか」

 

 正直、課長が有能か無能かをつぶさに観察したことはありませんでした。私にとって市役所は正体を隠すための隠れみのであり、平穏無事に勤務できればそれでよかったからです。

 

 でも……課長の、奥様。私を凌辱する課長の配偶者、ひょっとしたら課長が愛してやまない相手かもしれません。

 

「課長の奥様は、官僚か何かのご令嬢だったのですか?」

 

「ああ、そうだ。お父上が財務省の高官でね。ゲルゲス君との娘も、今年名門校を受験する予定らしいよ」

 

「……」

 

 財務省の高官……名門校を受験……

 ……胸がムカムカしてきました。

 

 奥様。あなたが、もっとしっかりなさっていれば、課長が私を脅迫することもなかったのに。

 私の胸なんかに顔をうずめて、あんな幸せそうな表情を浮かべることもなかったのに……!! 

 

 心の中で毒づいていると、次長は私の顔を覗き込みました。

 

「ところでブライア君。悩み事でもあるのかね?」

 

 どきりとして思わず顔を逸らしてしまいました。もちろん、心当たりがあるに決まっています。

 

「力になるよ。君は美しい女性だ。もし何か困ったことがあったら私に相談して欲しい。どんな問題でも解決してみせるよ」

 

「ありがとうございます……次長」

 

 ……どうしたものでしょうか。

 

 次長ならば荒っぽい手段を使うことなく、奥様と娘さんを傷つけず、穏便に課長をどこかへ追いやれるのでしょうか。

 自分が世間知らずなことが悔やまれます。ですが、決断の時が来たのかも知れません。

 

「……実は私……」

 

 私は意を決して話し始めました。殺し屋という秘密は伏せ、しかし課長の非となる内容だけを()()摘んで、自分に都合よく……。

 

「……ほう! それは大変だ!」

 

 次長の反応は予想以上に大げさで、逆に面食らってしまいました。彼はすぐに立ち上がり、私に手を差し伸べてきます。

 

「よし、分かった! 私が君の助けになろう! 一緒に問題解決の手段を話し合おうじゃないか!!」

 

 ──こうして私は、蜘蛛の巣に自ら身を投げてしまったのです。

 

 ◆◆◆

 

 そこから先は、あっという間でした。次長は柔らかい態度とこなれた口説き文句で、心の隙間に潜り込んできました。

 

「ここは私の行きつけでね。居心地のいい店だよ」

 

 アフターファイブ、私は誘われるままバーに足を踏み入れていました。シックな雰囲気で統一された店内には、私と次長の他に客の姿はありません。

 

「えへぇ~、このお酒、美味しいれす~」

 

 火照った頬に手を添えて舌っ足らずな喋り方をしている私を見て、次長が微笑みます。

 切れ長の瞳に見つめられ、いつもの私なら赤面していたでしょう。ですが、今日は全然平気でした。

 

 だって次長が勧めてくれた「青いお酒」を飲むと、何だか色々な事が()()()()()()()()()()()んですも―ん♪ 

 

 ……んっ♡ 

 

「ほら、またこぼしてるじゃないか」

 

「ごめんなさーい♪」

 

 こぼれた水滴を、ハンカチで拭かれちゃいました。次長の手が私の脚に触れ、太ももを撫で上げてます。スーツのスカート越しでも触られている感触が分かっちゃいます。

 

(課長とは大違いです)

 

 課長の、あの怯えたような目付き、何かを期待するような手つき。次長はそんなものと無縁でした。私の体を()()()()()()()()()()()眺めながら、()()()触ってきます。

 

(あー、お酒おいしいなー)

 

 そんなことを考えているうちに、グラスは空になっていました。次長を見上げておかわりを要求します。

 

「おお、良い飲みっぷりだ。ブライア君は酔っても美人だね」

 

「えへへー……ふぁ……」

 

 ああ、気持ちいいです……♪♪ 

 ふわふわしています……♪♪ 

 ついつい、次長に頭を預けてしまいたく……

 うふふふふ……♡♡ 

 

 でもだめです、何か──()()()()()()()

 それは、とっても不快な感覚……

 おそらく危機感と呼ばれるものですが……

 

 今の私にとってはどうでもいいことです……

 そんなことよりも……

 

 ……あ、あれ? なんだか……

 頭がボーッとしてきて……

 うまく考えがまとまらないです……。

 

「へ、効いてきた効いてきた。乳もケツもデカいし、世間知らずの地味女もたまにゃ悪くない」

 

「……??」

 

 次長が何か言っているようでしたが、上手く聞き取れません。いえ、聞き取れても理解できなかったでしょう。

 次長が、私の胸に軽く触れてきます。

 

「……ッ!?」

 

「へへ……」

 

 頭の中がグチャグチャになりました。体の奥からマグマのような熱がこみ上げてきたのです。

 その熱さが喉を通って言葉になり、口から漏れ出ます。

 

「あ……ぁ……ああ……!」

 

「おやぁ? 大丈夫ぅ? 酔っちゃったかい?」

 

「は…………い……」

 

 私は危機感を覚えていました。情欲が、腰の奥深くでジリジリと煙を上げていたのです。それを認識した瞬間、自分の呼吸が荒くなっていることに気づきました。

 

 心臓が早鐘を打っています。体が熱い。特に下半身は熱の塊みたいでした。全身がじっとりと汗ばみ、ブラウスが肌に張り付く感触に思わず身をよじります。

 

「辛かったら、お手洗いに行ってくるといい。ここのトイレは個室だから、()()()()()()()()()からね」

 

 次長の声は優しくて、そして淫靡でした。私の耳に息を吹きかけながら囁きかけてきます。

 

「……はい……」

 

「へへっ」

 

 ぞくりと背筋が震えましたが、嫌悪感を感じる暇もありません。それよりもこの疼きを鎮めたくてたまりませんでした。

 

 ふらふらと立ち上がってカウンターに手を突き、よろめくようにして歩き出します。

 背後から投げかけられる視線は、私の腰やお尻を舐め回してくるようでした。

 

 

 ◆◆◆

 

 トイレの中は無人でした。一人用の個室で、腰かけ式の便器とお洒落な洗面台があります。芳香剤と洗剤の匂いが混じった独特な臭気が充満していました。

 

「……はぁ……んく……私、こんな顔で……ふ……ふあぁ……♡」

 

 鏡の中から、潤んだ瞳が物欲しそうに私を見つめ返してきます。瞳は潤んで、揺れて、まるで泣き出す寸前の子供みたいでした。

 そんな自分の顔を見ていると、ますます興奮してしまって……

 

「んっ……あっ……ん……く……あ、ああ…………鍵、鍵を、閉めないと……」

 

 ブラウスの上から乳房を揉みながら、震える手で後ろ手にドアの鍵を掛けます。カチャリという乾いた音がとても大きく聞こえました。

 

 ちゃんと鍵はかかったでしょうか。

 万に一つ、かけ損ねていたら。

 誰か入ってきてしまったら。 

 

 その恐ろしさに身震いしつつも、手は止まりません。それどころか激しくなる一方です。乳房をぐねぐねと歪めるように揉むたびに、甘い痺れが走ります。

 

「──あふっ!?」

 

 突然、脳天まで響くような刺激に襲われました。気づかぬうちに、乳房を揉むのと反対の手でクリトリスをまさぐってしまっていたのです。

 

 ストッキング越しとはいえ敏感な突起を弄り回しているのに、痛みなんてちっとも感じません。むしろ心地よさすら覚える始末です。指の動きに合わせて、腰が勝手にカクつきます……っ♡ 

 

「はぁーっ♡ はああぁっ♡♡ はっ♡ はぁん♡♡」

 

 私は二十七、世間では婚姻していないことを怪しまれる年齢の女です。性欲だってありますし、課長に犯されて処女でもなくなりました。

 それでもこれほどの情欲を感じたことはありません。酒精のせいだけではないはずです。

 

 ないはずだけど、ああ、もう……! 

 我慢できないッ!! 

 

「はぁ♡ はぁっ……♡ だめぇ……こ……こんな……こんなのぉ……!!」

 

 どうしよう……これ……! 

 すごすぎ……っ♡♡♡ 

 

 布越しなのにこんなに感じるなんておかしいです。絶対に変です。それなのに指が止まらないんです……っ! 

 

「ああ……ああっ……! 気持ちいいの、どんどん膨らんでくっ……すごいぃっ……♡♡♡」

 

 パンツの中はもうドロドロで……触る前から湿ってたんですけど……触ったら余計にヌルヌルになっちゃって……もう私、お漏らししちゃったみたいにびしょ濡れで……!! 

 

 ああ、私、ヨル・ブライアは、バーのトイレでしちゃってるっ♡ オナニーしちゃってますっ♡ 

 

「い、いくっ、イクッ、い、いっ、いぃっ……あ゛っ!!!」

 

 ビクビクって痙攣して、そのままトイレの床にしゃがみ込んじゃいました。

 こんな、私……私ぃ……! 

 

「はーっ、はーっ、ふうぅ……ううっ……」

 

 床に手をついて四つん這いになったまま荒い呼吸を繰り返します。頭がクラクラして何も考えられない。とにかくすごく気持ちよかったことしか思い出せません。

 

「……も……戻らなきゃ……」

 

 ふと思い至り立ち上がろうとしましたが、足に力が入りません。洗面台に手をかけて、なんとか立ち上がります。まだ余韻が残っているのか膝が笑ってしまっていました。

 

「あ、ああ、私……」

 

 洗面台の、鏡の中。そこに映るのは、見たこともないほどイヤらしい顔をした女性の姿です。

 顔は真っ赤に紅潮し、目は虚ろに濁っています。口の端からは涎を垂らし、半開きになった唇から赤い舌が覗いています。

 

 黒いスカートの裾から伸びる足は内股になってガクガクと震えていて、立っているのがやっとです。しかも、ストッキングが破けて露出した太ももの内側を、透明な液体が一筋伝っていました。

 

 それを意識した瞬間、ゾクゾクとした感覚と共にお腹の奥の方が切なくなってしまいます。

 

 まるで発情期の犬みたい……。

 ……これが私……? 本当に……?? 

 

(ど、どうしてこんなことに……?)

 

 原因は分かります。さっき飲んだ「青いお酒」のせいだということは間違いありません。

 

 でも、なぜ? 

 どうして次長が、とっくに汚れた私なんかを? 

 

「は、は、うう、ああ…………火が、火がついちゃってる……っ」

 

 体の奥底から炎が燃え上がっていて、それが私を苛んでいます。炎の正体については考えるまでもないことです。私は熱く疼くお腹に手を当てました。そうするだけでもピリッとした甘い感覚が走り抜けていきます。

 

(ああ……ここ……子宮だ……)

 

 私は知っています。そこが自分という女の中心であることを。

 

 だって、課長の大きなペニスが何度も何度もここに叩きつけられて、何度も射精されてしまったんですから。

 私の初めてを奪っただけでなく、その後も幾度となく犯されたんですから。

 

「ぬ、脱がなきゃ……」

 

 ふらつく足で何とか便器までたどり着き、そこでストッキングとショーツを脱ぎます。

 クロッチ部分が糸を引くほどに愛液でビショビショになっていて、脱いだそばから滴った蜜液がトイレの床を汚します。

 

「……っ……」

 

 便座に腰掛けるとひんやりとして少し気持ちいいのですが、火照った体にはそれも物足りません。すぐにもっと熱くなることは分かっていましたから。

 

「んっ、んっ……」

 

 右手の指を舐めて濡らし、それからそっと秘所に触れます。途端に電流のような刺激が背筋を駆け抜けました。体がビクッと跳ね上がり、脚が閉じてしまいそうになるのを必死にこらえます。

 

「あふぅぅっ!」

 

 陰唇はぱっくりと口を開き、物欲しそうに指の腹へ吸い付いてきました。それを押し戻すようにして、膣口に中指を沈めていく。すると待ちわびた刺激を与えられたと言わんばかりに、膣壁全体がきゅうっと収縮して歓喜に打ち震えました。

 

「あ、ああ、あ、あ、あ、あ、あ」

 

 最初は一本だけ、ゆっくり抜き差ししていたはずなのに、いつのまにか人差し指も挿入し、二本で膣内をかき回していました。

 ペニスとつながるために、拡張された女の(ほら)

 

「あは、すっかり広げられてしまいました……」

 

 誰に? 

 

 その瞬間、脳裏によぎったのは課長のことでした。この体は()()()を受け入れられるように作り替えられてしまったのです。 

 その事実がたまらなく嫌で、でもどうしようもなく興奮してしまいます。

 

「あぁ……すご……い……いい……いひぃ……♡」

 

 自分が唯一受け入れたモノの形、その大きさを想像して下腹部がきゅんと疼きます。膣内の天井部分を擦り上げる度に電撃のような快感に襲われ、背中が大きく仰け反ります。

 

 グチュッグチュッグチュッ、とはしたない水音を立てているのは、私の体から分泌される体液です。まるで失禁したかのように溢れ続け、あっという間に手首まで伝ってきました。 

 

「ふぅ……うう……!」

 

 次第に興奮で頭がぼんやりとして、妄想はエスカレートしていきます。 

 あの人の、課長の、大きくておぞましいペニス。

 

 亀頭の形。

 雁首の段差。

 肉茎の硬さ。

 血液の流れ。

 浮き出た静脈。

 汗と尿が入り混じったような男の臭い。

 昂ぶる体温と、熱病に浮かされたような言葉。

 

『好きだぁ、ヨルくんっっっ』

 

 何もかもが鮮明に蘇ってきて、そして……

 

「……っっ!!!」

 

 私は、二度目の絶頂に達してしまいました。頭の中が真っ白になり、全身が激しく痙攣します。

 そして数秒後に訪れる脱力感。私はそのまま、ぐったりと背もたれに寄りかかりました。

 

「……ああ………………♡」

 

 肩で息をしながら天井を見上げます。そこには一匹の蜘蛛がいました。冬なのに、たった一匹、来るはずもない獲物を待って複雑な巣を張る蜘蛛。

 

 じっと動かないその姿はどこか滑稽で、けれど何故か目が離せませんでした。

 私と同じ。来るはずもない幸せを、ただ待ち続けている……。

 

 ──ヨルくん! 僕のヨルくん! 

 ──君の事が好きなんだ!

 ──僕は君を愛している! 

 

 初めて犯された時、課長は無我夢中で腰を振りながらそんな言葉を叫びました。

 あれは、どういう意味だったのでしょう。

 

 まさか本気な訳がない……だって、だって……

 ……だって、あの人は最低な人です。

 

 奥様がいるくせに、娘さんがいるくせに、部下の私を脅迫して、無理矢理犯すようなひどい人なんですから。

 

 でも、だったらなんで、あんなに熱っぽい目で私を……あれは……その場の雰囲気に流された……だけ……? 口から……出まかせ……? 

 

「課長……」

 

 私の手は、いつの間にかブラウスのボタンを外して胸をはだけさせていました。

 簡素な白のブラに包まれた二つの膨らみを、両手ですくうように持ち上げます。柔らかいそれは、手の中でムニュリと潰れて谷間を作りました。

 

『ヨルくん、き、きれいだ、ヨル君、とても綺麗だよ……! 』

 

 課長は、この谷間に顔を埋めるのが好きなようで、幸せそうな顔で甘えられます。

 もちろん私は嫌悪感を感じるのですが、なんだか赤ちゃんを抱いているような気分を味わったのも確かです。

 

「……はぁ……」

 

 ブラを上にずらすと、乳房の全貌が現れます。とっくに成長期は終わり、芯も痛みもなく張り詰めた、成熟した女のもの。たっぷりとしたソレらは、自分で触ってもとても柔らかく、温かいものでした。

 

 大きくて、重くて、何の役にも立たない脂肪のかたまり。こんなものをぶら下げているせいで肩はこるし、戦う時は邪魔だし、服だって選ぶ必要が出てくる。

 

 そして、男性から欲望の対象にされてしまう。いい事なんて一つもありません。

 けれど。

 

「んん……イイ……♡♡」

 

 白い脂肪全体を掌で包み込みながら、親指を使って乳輪をなぞるように撫で回し、そのまま円を描くように優しくマッサージします。

 膣内をいじっている時の激しいものとは違う、ゆったりとした波のような快感……♡ 

 

「ああ……んっ……んふ……ふっ……」

 

 自分の体の一部とは思えないほどいやらしい形をしている二つのかたまり。それはいつも私を不安にさせると同時に、妙な期待を抱かせる存在でもありました。

 

 もし、もっと女性らしい装いで街を歩いたらどうなるでしょう? 

 すれ違う人が振り返るくらい魅力的な女性になれたなら、普通の幸せを手に入れることができるでしょうか? 

 

 素敵な殿方と街でデートしたり、お互いの家を行き来したり、将来を誓い合ったり。

 

 私より年上なら、連れ子がいるかもしれません。でも私は年の離れた弟をずっと世話していましたから、きっと仲良くできるはずです。愛情を注いで、賑やかで幸せな家庭を築けたら。

 

 想像するだけで、幸せな気持ちがこみ上げてきます。穏やかな快感の中で、私はそんな夢を見ていました。

 

 ──そして、いつか家族が増えたら、このずっしりと大きな乳房でお乳をあげるのです。

 

「はぁ……あ……あ……!」

 

 私は夢中で自分の胸にしゃぶりつきました。大きな乳房は自分で乳首を口に含むことができ、自慰の道具として使うにはもってこいなのです。

 

「んふーっ! んふーっ!」

 

 唾液まみれにして下品な音を出しながらすすり上げれば、頭の奥がジーンとして意識があいまいになっていきます。ただ目の前の肉塊を口に含み、舌の上で転がしてはチュパチュパ吸い上げる。それだけに夢中になれます。

 

 そうしているうちに頭の中が真っ白になり、ふわふわした幸福感に包まれるのです。その感覚は麻薬のように甘くて中毒性がありました。まるで赤ん坊に戻ったような安心さえ覚えて、いつまでも味わっていたいと思わせる何かがあります。

 

「ふーっ! ふっ……! ううう~!!」

 

 それでも、下半身はいつまで放っておくんだと不満を訴えてきています。子宮のあたりが激しく疼いて切ないのです。早く欲しい、満たして欲しいと訴えかけてきます。

 

「ぷあっ」

 

 乳房を口から離すと、先端からは涎の糸が伸びていました。それを絡め取るように人差し指でなぞります。

 

「ひひっ、ひっ、ひっ♡」

 

 乳輪の縁をくるっと一周させて焦らし、また中心部分をつつくようにして苛め抜きます。そうすると腰がガクガク震えてたまらなくなります。

 

(だめ……こんなの……我慢できない……)

 

 私の右手は自然と自分の下半身に向かって伸びていきました。陰毛を掻き分け、陰核に触れます。

 課長のアレと同じように充血して勃ち上がったクリトリス。おしっこも精液も出さない、ただ快楽のためだけに存在する、いやらしい女の器官。

 

「ははっ……すごい、おおきい……」

 

 あまりの勃起ぶりに、つい笑ってしまいました。海綿体と快楽神経の集合体はぷっくりと膨らんで、包皮からは先端がはみ出しています。 

 

「うぅ~……」

 

 またイキたい。切ない気持ちがどんどん強くなっていきます。今すぐシコシコと激しくシゴいてしまいたい。私は鼻息を大きくしながら股間に手を伸ばし、包皮に指をかけました。

 

「あっ、あ、あ……!」

 

 ゆっくりとむき上げていくと、痛いくらいに充血して肥大化した肉の芽が現れます。普段は隠れている陰核亀頭は、外気に晒されただけでピクンと小さく震えました。

 

「はあ……はあ……ああっ……!」

 

 私は口で大きく息をしながら、そこに指を触れました。軽く触れるだけで電気が走ったみたいにビリビリッと痺れます。

 

「ああ……っ、すご……っ、はぁ……っ」

 

 本で読みました。クリトリスは、性感帯の中でもペニスと同じくらいに有名だと。

 もちろん個人差はありますが、大体の女性はそこを弄られるのが大好きで、自慰行為を行う際には必ず触る部位だと書かれていました。

 

「ふうーっ、ふーっ……」

 

 私も、ここへの刺激は大好きです。目を閉じて鼻から息を吸い込み、指先を動かし始めました。

 優しく表面を撫でるだけのごく弱い上下運動です。しかし、たったこれだけでも凄まじい快感が得られます。

 

「いい、いい……これ……」

 

 気持ちいい。気持ちいいです。脳天まで突き抜けるほどの快感に全身を支配されます。指を動かすたびに電流のような衝撃が駆け抜け、頭の中にチカチカと火花が飛び散ります。

 

「はっ……はぅ……うぅぅぅぅぅ♡♡♡」

 

 オナニーというのは不思議なものです。こういう性的な事をほとんど知らずに育った私でさえ、これほどまでに強烈な快楽を得られるのですから。

 

 これはダメかもしれないと思うほどの快感なのに、どうしても手を止めることができません。むしろもっともっとと貪欲になり始めて、ますます強く激しくそこをコスろうとします。

 

「ひゃっ……あふっ……あ、あっ、あああっ♡」

 

 危うい部分を指の腹で撫で回したり、爪で引っ掻いたりしているうちに頭の中はどんどん真っ白になっていきます。何も考えられなくなっていって、気持ちいいってことしか分かりません。

 

「はひっ、あふっ、だめ、ダメ……もう……っ」

 

 右手が撫でる陰核と同時に、左手で乳房と乳首も可愛がってあげます。手のひらで乳輪をなぞるように撫でまわし、乳首をきゅっと摘みます。

 両方の刺激を同時に受けると、頭がおかしくなりそうなほどの快感が襲ってきました。

 

「うあ、ああ、ああ、ああああああ……っ♡♡」

 

 もっと、もっと強い刺激が欲しい。私は我慢できずに乳首に噛みついてしまいました。歯を立ててぎゅーっと引っ張ると、ビリビリと激しい快楽が押し寄せてきます。

 

「はぶっ、はぶはぶはぶ……!」

 

 私は夢中になって性感帯を刺激し続けました。

 左手は相変わらずおっぱいを揉んでいます。

 柔らかい脂肪の塊をグニュングニュンと変形させ、形が変わってしまうくらい強く握りつぶせば、下腹部がキュンキュンと痙攣して切なくなります。

 

「んひいぃ……ッ!!」

 

 そして右手はクリトリスをいじくり回して、親指でグリグリ押し潰すように刺激します。

 もうこれ以上はないというほど敏感になっているそこを撫で回し、摘まみ上げ、引っ張ったり擦ったりして虐め抜くのです。

 

「あっ♡ あ──っ♡♡ ア゛ァ──ッッ♡♡♡♡♡」

 

 もちろん女穴には指を二本入れてグチュグチュかき回していました。Gスポットと呼ばれる箇所を探り当てると、そこを指先でこすり上げるように何度も何度も往復させているのです。

 

「ああ、凄い、凄すぎるぅ……♡ ああ……♡♡♡」

 

 性の悦びが、まるで麻薬のように私を虜にして離してくれません。一度知ってしまえば二度と戻れなくなる魔性が、この肉体には宿っているのです。

 

「ふーっ♡ ふーっ♡ ごめっ♡ なさっ♡」

 

 私はいつしか、自分の体に申し訳なさを感じ始めていました。

 

 惨めなオナニーばかりさせて、ごめんなさい。

 成熟した女である『あなた』には、セックスを満喫できるポテンシャルがある。

 なのに『わたし』が不甲斐ないせいで、それを奪ってしまっているのだから。

 

 でも、でも、私だってセックスを楽しみたい。普通の女になりたいのです。普通の恋人を作って普通のセックスをして、結婚して子供を産むような普通で平凡な人生を送りたいのです。

 

 それなのに、『わたし』にはそれができないのです。脅されて、犯されて、いいように弄ばれているだけの存在なのです。

 

 だから私を許してください。

 この悦びを否定しないでください

 せめて、今だけでも忘れたいのです。

 傷ついた心を、淫らな電流で焼き尽くしてしまいたいのです。

 

「はむっ……んっ……んんーっ……」

 

 もうイク寸前でした。あとちょっとでイケるところまできてるのですが、決定的な何かが足りなくて最後の一手を打つことができないのです。

 

 あと少し、ほんの少しなのですが、それを超えるには「バーのトイレでオナニーをしている」という異常な状況が邪魔していました。

 

 こんな所で絶頂に達してしまったらどうなってしまうのか? そんな想像が脳裏をよぎってしまうと、どうしてもブレーキがかかってしまいます。

 

 でも止められません。不安感がどんどん高まり、頭の中ではガンガン警鐘が鳴り響いているというのに、しかしそれを凌駕する圧倒的な欲望に支配されているのです。

 

「きもっ……ちぃ……♡ ああぁあっ!! ああぁあああっ!!!!」

 

 怖い。一人で孤独に迎える絶頂が、たまらなく恐ろしいのです。自分が自分でなくなってしまうような、自分という存在が消えてしまうような恐怖が全身を支配します。

 

(誰でもいいから包んで欲しい)

 

「あっ、あっ、あっ」

 

 体が小刻みに震え出し、膣全体がきゅうっと収縮しはじめました。

 

(本当のセックスを教えて欲しい)

 

「うっ……うぅう~~……ッ!」

 

 その瞬間を待ちわびるように全身が硬直し、私は喉の奥から絞り出すような声で泣きました。

 

(愛されたい、求められたい、幸せになりたい)

 

「う~~……! うう~~~~~ッ!」

 

 下半身が浮き上がるような感覚に襲われて、視界がチカチカ点滅しだしました。

 

(どうして、どうして『わたし』はこんなにもいやらしい体にされてしまったんでしょう……?)

 

「あ、あ、もう、もう……っ!」

 

 腰が勝手に浮いてカクカク動き出します。

 

(誰の? 誰の? 誰の責任?)

 

「課長……っ、ゲルゲス課長……っ」

 

 気がつくと、彼の名前を呼んでいました。すると突然、全身にびりびりと流れる甘い電撃。

 手が勝手に動き出し、クリトリスを指先で摘んで擦り合わせてしまったのです。

 

「んふぅ!? あ゛あッ♡♡♡ あああぁぁん♡♡♡♡」

 

 今までで一番大きな波が訪れました。あまりの気持ちよさに目の前が真っ白になり、一瞬意識が飛びかけます。それでも手を休めることはしません。

 

「あっ! あっ! ああ~っ♡♡♡」

 

 私の口はだらしない声を漏らしながら、パクパクと魚みたいに開閉を繰り返しています。

 

(すごいすごいすごいすごいすごい♡♡♡♡♡)

 

「は、う、うう、うううっ、ううううっ!!!」

 

 視界に無数の星が散って真っ白になり、全身が震えて汗が噴き出します。頭の中で光が明滅し、理性も何も吹き飛んでしまいました。

 

 一瞬の空白。そして──

 

「あ゛ぁぁあ~~~~~っっっっっ!!! ♡♡♡♡♡」

 

 獣のような叫びを上げながら、私は便座の上でオーガズムを迎えたのです。体中の筋肉が強張り、足先がピンと伸びてしまいます。靴の先が床を滑り、体はずり落ちる寸前でした。

 

 ビクンッと背中が大きく仰け反ります。喉からヒューッと笛のような息が漏れ、呼吸さえままなりません。

 ガクガクガクッと全身の痙攣が続き、尿道からプシッと音を立てて液体が迸ります。それは勢いよく噴き出して、トイレの壁や床に撒き散らされました。

 

「───────────ッ」

 

 声にならない声が喉から絞り出されます。私はきっと、恍惚とした表情を晒していたことでしょう。全身を駆け巡る快楽物質が脳を犯し、思考がどろどろに溶け出していきます。

 

 ああ、きもちいぃ……♡ 

 最高で最低な時間です……♡♡ 

 

 

 ◆◆◆

 

 やがて絶頂の波が引いていきます。私は全身汗だくになりながら、力なく便器のフタにもたれかかりました。

 

 頭がぼーっとして上手く考えることができません。まだ手足がビクビクと痙攣しています。息が苦しい。呼吸が乱れすぎて酸素が足りないようでした。

 

「……ふぁぁ……ぁ……あぁ…………♡♡♡」

 

 ああ、ああ……もうこのまま死んでしまいたい。嘘でまみれた関係から解放されて、何も考えずに消えてしまえたらどんなに楽でしょう……。

 

「はあ……ああ…………」

 

 放心状態で虚空を見つめていた時です。がちゃりと音がして、誰かがトイレに入ってきたのです。

 

「ッ!?」

 

 反射的に顔を上げれば、そこには次長の姿がありました。生地のしっかりとした背広にはシワひとつなく、ブロンドの髪には一点の乱れも見えません。

 

「へへっ……お楽しみは終わったようだねぇ」

 

「ひっ……! み、見ないで……!」

 

 しかし今、彼はその整った顔を醜悪に歪めていました。瞳は爛々と輝き、粘ついた視線で見下ろしています。

 

 何を? 

 

 もちろん、バーのトイレで乳房を露出し、スカートをまくり上げ、乳首や陰核や女穴を指でいじくり回して体液まみれで絶頂した淫乱女のことを、です。

 

(続く)

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