ここは愛知県・名古屋市の某所にそびえる、天川財閥の豪邸。
天川財閥は日本でも数知れる、有名な巨大企業グループだ。その財閥の会長である天川玄洋がこの豪邸の主だ。
彼には二人の娘がいる。双子の姉妹だ。
姉の方が、なんでも武術の師範代の息子の元で世話になっているらしく、現在はここを留守にしている。
いまここにいるのは玄洋とその妻、そして双子の片割れである弥生だ。
この豪邸には多くの執事・メイドがおり、家事全般を任せている。
豪邸のセキュリティも万全で、忍んでやってきた窃盗犯も攻略不可能とされている。
豪邸内には数多くのお宝があるのだが、それらは厳重に管理されている。
だが、そんな豪邸にも秘密の部屋というものはあるものだ。
その秘密の部屋はこの家の書斎の中にあるという。書斎内部は天井まで届くほどの本棚に囲まれていて、床には絨毯が敷かれていた。
蔵書されている本は、日本の有名な文豪が執筆した小説、経営学や帝王学に関する知識が記載された読本、英語のみで書かれた分厚く古い本、日本に在住する社長が書いた本を中心だ。
それらがびっしりと本棚の中に詰められている。
暗い書斎の中を古めかしいランプが照らしており、壁に掛けられた絵画と本棚に収められた本が暗闇の中で存在感を放っていた。
ここにその秘密の部屋はどこにあるのかというと…。
あるはずの場所にない。
確かにこの部屋にあるはずだ。
しかし、部屋の中を見回してみてもどこにもないのだ。
だが、どこか違和感を放っている本棚がある。
そこは、日本の小説家が執筆をした本が数多く収められた本棚だ。
どの本もかなりの年月を経てきたようで、表紙の色あせ具合が凄まじいことになっている。
その中で一冊だけ異彩を放つ本があった。
他の本と比べて背表紙の色が違うのだ。よく見るとその本だけは真新しい色をしているようだ。
まるでつい最近作られたような感じさえ受ける。
その本は青緑色のブックカバーがかけられていた。
どうやら手作りで作られた本のようだ。表紙には『夢幻界』というタイトルが書かれている。
この『夢幻界』と書かれたその本を出してみると…。
ゴゴゴゴゴ…。と音を立てて、本棚が引っ込み、古めかしい扉が現れた。
暗い赤茶色をした、木で作られた扉だ。
その扉を開けてみよう。
キィィー…。ときしむ音を立ててその扉は開く。
その扉の向こうは…。部屋というべきかわからないが、青々とした芝生が広がる庭園が広がっていた。
扉の先に広がっている光景は明らかに現実ではない。
空はオーロラのような色をしており、どこか神秘的だ。
木々が多くそびえ立っており、まるで森のようになっている。
ここは天川財閥の庭園なのだろうか。部屋のはずなのに、外に出たかのような錯覚に襲われてしまう。
草や葉の色は、現実世界のものよりも少し青みがかっているようにも見える。そこに一人の男性がいた。
彼女の髪色は銀色で、逆立った髪をしている。肌の色はどこか日焼けしたかのように黒くなっている。
褐色とまではいかないが、健康的に日焼けした小麦色だ。
服は黒を基調とした和服を着ている。手には日本刀を持っている。
和服から鍛え抜かれた胸筋が見えており、彼の腕も引き締まった筋肉をしていた。
腰にはベルトを巻き、そこにはポーチがつけられている。
顔立ちは精巧に作られた人形のように整っている。鼻は高く伸び、唇は薄い桜色の口紅をつけたかのような色合いだった。
目は切れ長で鋭く、瞳孔は縦に長く細い。瞳の形はアーモンド型である。
髪の毛は短めのウルフカットになっており、頭頂部付近だけが長いアシンメトリーとなっている。
この男性こそ、天川財閥の会長を務める男、天川玄洋だ。
首にはネックレスをつけており、それが彼が動くたびに揺れていた。
玄洋は片手に日本刀を持ち何をしているのかと言うと、剣舞と呼ばれる武術の稽古をしていた。
刀を振るうその姿はとても優雅であり、それでいて力強い。まるで踊っているかのように彼は舞う。
「……」
玄洋は無言のまま、真剣な表情をして刀を振り続ける。
やがて、動きを止めるとゆっくりと息を吐きながら構え、目を閉じて静止する。
そして、しばらくすると目を開き、手に持っていた刀を鞘へと納める。
「ふぅ……」
かなりの時間剣を舞っていたためか、彼は額から汗を流していた。
彼の所有している日本刀は、天川家が所有する、銘・雲切丸。
天川財閥が開発した、特殊な合金によって作られた日本刀だ。
通常のものよりも強度が高く、また斬れ味も抜群だ。
玄洋はそんな日本刀を相棒のように可愛がっていた。手入れも毎日のように行っており、刃こぼれは一つもない。
「長く運動しすぎたせいか、暑くなってきた」
玄洋がいるこの森は、涼しげな風が吹いているため、暑さを感じずに済む。だが、長時間動いているとさすがに暑いと感じてくる。
玄洋は暑さに耐えかねた顔で、おもむろに自分の履いている、幅広の袴に手をひっかける。そのまま一気に下まで下ろすと、純白のふんどしを包んだ下半身が露わになった。
そんな下半身でさえも、彼の肉体美の良さをうかがえる。
贅肉のない、程よく鍛えられた体。無駄な脂肪など一切ない。
その体はまさに彫刻のモデルにふさわしいだろう。
鍛えに鍛え抜かれ、隆々とした太ましい太ももと脚。
汚れ一つない白いふんどしに包まれた、男の勲章ともいえる立派で雄々しいペニス。
それこそが、天川財閥会長、天川玄洋の肉体だ。
彼は書斎に隠されたこの神秘的な空間で、隙間の時間に修行をしていたのだ。
袴を脱ぎ下半身を丸出しにした彼は、森のそよ風で暑くなった身体を冷やしていた。
心地よい風が、股下と脚を冷やしてくれる。
この庭園の中には彼一人しかいないので、こんな淫らな姿になっても何ら問題はない。
たくましい肉体をしているため、晒しても問題はなさそうである。
もっこりと怒張した股間も、いやらしさを感じさせず、むしろ男らしさを感じさせてくれる。
同性が見ても惚れ惚れしそうなほどの、素晴らしい肉体だ。
この空間には誰もいない。
ガサガサ……。と茂みが音を立てて、玄洋は歩いていた。
茂みの草木が生の太ももに刺さったりしていたが、鍛え抜かれたその脚には蚊に刺された程度の痛みしか感じていない。
玄洋の下半身が、茂みの中に隠れる。
玄洋がなぜ、茂みの中に入ったのかというと…。
じーっと、茂みの中に入った玄洋は目の前にある大きめの岩を意味深に見ている。
ふんどし丸出しの雄々しい男が、その岩に何をするのか。それはすぐにわかることになる。
玄洋は履いている白いふんどしを脱ぎ捨てる。ぶるん、と、大きな男根と金玉袋が露わとなった。そして、それを両手で掴む。
彼が掴んでいる男根も鍛えたのかという感じで大きく太ましく立派だった。
褐色に染まった亀頭とカリ首は、まるでキノコのような形をしており、その下にぶら下がっている二つの玉もかなり大きい。
その大きさは、まるでいなり寿司を彷彿とさせる。
さらに、その下にある太い幹のようなペニスは、血管が浮き出ており脈打っている。
まさに剛直と呼ぶにふさわしい立派なものだ。
そんな彼のペニスの亀頭がぴくっ、と震える。
「ふーっ…」
玄洋は息を思い切り吐き、リラックスした表情をする。
男根がぴくぴくと震えた後、その大きな岩に向かって、ブシャーッ、と大きい音を立てて小便が放たれた。
黄金色の小便が勢いよく飛び出していく。まるでホースから放たれた鉄砲水だ。
完全に下半身を裸にした玄洋は、気持ちよさそうにおしっこを岩に放っていた。
屈強な彼でも、この瞬間だけはどこか無防備な子供のように思える。
しばらくすると、玄洋は息を荒げて満足気な顔をして立ち上がる。
小便の勢いが少しずつ収まってくる。そして、完全に放尿が終わった。
「あぁ……スッキリした……」
玄洋が出し切った顔をする。そして、プルプルと、男根を上下に動かしてしっかりとおしっこを切る。
「今日も絶好調だったぞ」
玄洋は笑顔を浮かべながら、小便で濡れた大きな岩を眺めていた。まだ袴とふんどしは履いていない。
雄々しい男の勲章をぶらぶらと揺らしながら、雪隠にした岩を見てるのだった。
すると…。ガサガサ、と音が聞こえてくる。
茂みをかき分ける音だ。
「誰だ?」
音のする方を、玄洋は鋭い目つきをして見る。
そこには、一人の黒いスーツを着た、天川家に仕える執事がそこにいた。
「玄洋さま。三月様がお帰りになるようです」
娘が家に帰ってくることを伝えに来たようだ。
一物を隠し忘れた玄洋はその執事に怒ることはしなかった。
「そうか…。わかった」
玄洋は優しく微笑んで礼を言う。
その言葉を聞いて、執事は少し照れくさそうな顔をしながら、
「いえ、仕事なので……」
とつぶやくように言い、その場をそそくさに去っていった。
執事の後姿を見送った玄洋は地面に落ちている自分が履いていたふんどしを拾い、それを一物を隠すかのように装着する。
「三月…。正月早々に会いに来るとは」
ふんどしをつけた玄洋は、娘のことを考えていた。
俺は岩馬雷児。俺は今、天川家のリムジンに乗って、天川家の豪邸に行く途中だ。
一緒に乗っているのは、現在俺の家で同棲している、天川三月。
天川財閥の会長の娘さんで、俺を「監視」の名目で同棲をしている。
そんな俺だが、初詣の帰りなのか知らないが、三月がここに来たいと言ったため、こうして一緒に向かっていたのだ。
ちなみに服装はいつも通りだ。着物とかは着ていない。
今のご時世、晴れ着とか着ている奴はそうそういないだろう。
そんなことを思っていると、目的地である、天川の豪邸へと着いた。
黒いリムジンが門の前に近付くと、門が自動で開く。一般的な観音開きの扉だ。
なんとも大きい扉なんだろう。さすが金持ちの家といったところだな。
そのまま車が進み、玄関の前まで着くと、車のドアが開いた。
俺たち二人は、その高級車から降りる。
「付きましたよ」
「ああ、案内は任せた」
降りてすぐ目の前には、大きな屋敷がある。これまたすごい建物だな。
前に行った、三月が通う「聖マリア国際高等学校」のような雰囲気の、洋風のお屋敷だ。
財閥の会長が所有する屋敷なだけあって、その大きさも計り知れない。
こんな大きな建物は俺からすればテーマパークのアトラクションにしか見えない。
「では、私はこれで失礼しますね。あとは若い二人でどうぞ」
運転手はそう言うと、運転席に戻り、車は走り去って行った。
「さて、行きましょうか」
「おう」
俺は返事をして歩き出す。
三月に連れられ、俺は屋敷へと続く長い道を歩く。
周りを見渡すと、使用人と思われる人たちが忙しなく動いている。
すれ違うたびに挨拶してくるので、その度に会釈をした。
やがて、大きな玄関にたどり着く。
大きな木製の両開きの扉が開いており、そこから中に入る。
玄関では、執事やメイドが迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、三月様」
「ただいま」
三月は慣れた様子であいさつをする。
「この方が、お世話になっている、岩馬雷児さんです」
「岩馬雷児です。よろしくお願いします」
俺は丁寧に頭を下げて自己紹介をした。
すると、白い髪をした壮年の男性がやってきた。
黒いスーツを着ているので、見るからに執事だろう。
その執事が、挨拶をした。
「はじめまして。私、天川家に仕える執事をしております、小村と申します」
「あ、こちらこそ。岩馬雷児と申します」
俺も挨拶をする。
「小村、お父様に会いたいのだけれど、どこにいるの?」
三月が、小村という執事に話しかける。
「今でしたら、茶話室でお二人をお待ちしているかと」
「わかりました。ありがとうございます」
三月が軽く頭を下げる。
「ご案内いたします」
俺と三月は小村に続き、廊下を進む。
屋敷の内部は豪華な宝飾が飾られており、眩しいくらいだった。
しばらくすると、茶話室と書かれた部屋に着いた。部屋の前の扉を、小村がノックする。
「会長。三月様と、岩馬雷児様が来られました」
扉越しに小村が声をかける。
「そうか。入ってまいれ」
威厳のある声で、入るよう促されたので、俺たちは部屋に足を踏み入れた。
そこは、大きな和室の空間で、畳が敷かれていた。
そして、そこには一人の男が座っていた。
逆立った白髪のウルフカット。眉毛は整えられており、体格もがっしりとしている。
この人が三月の父親なんだろうか。それにしてはなんか若く見えるような…。
いや、この体格と顔からして、かなり鍛えているんだろう。
首からネックレスをぶら下げている。服は黒い和服だ。そんな男の前で、俺たちはソファに座った。
「三月。久しぶりだな」
「はい、お父さま。あけましておめでとうございます」
「ああ、おめでとう」
親子とは思えないほど、二人の会話はとても淡々としていた。
三月も父親も、同じ色の髪の色だ。
「あ、ご紹介します。こちら、私がいつもお世話になっている、岩馬雷児さんです」
三月が俺を紹介する。
「岩馬雷児です」
俺はもう一度挨拶をした。
「ふむ……」
父親は俺の顔を見るなり、少し考え込むように腕を組んだ。
一体何を考え込んでいるんだろうか? まさか、初対面で怒られるとかじゃないだろうな……? そんな不安な気持ちがよぎったが、すぐにそれはなくなった。
「君か。岩馬雷蔵様のご子息と言うのは」
「えっ、なぜご存じですか?」
俺が岩馬雷蔵の息子だったことを知っていたらしい。よほど日本では名が知れているらしい、俺の親父…。
「いや、名前だけでなく、顔でもわかる」
「そうなんですか……」
「ああ、君はあの方に似ている」
「へぇ、俺ってあんな風に見えるのか……」
自分の顔をまじまじと見る機会なんて滅多にないけど、似ていると言われたら悪い気はしないな。
今親父とは長年会えていないが、兄によれば現在銀座にいるとかなんとか…。
親父は岩馬家相伝の武術の師範代をしているらしく、今も修行中の身だとか。
親父が昔使っていた木刀もまだ残っているそうだ。
「まぁ、積もる話はまた今度しようではないか」
「そうですね」
「では、今日はゆっくりとしていくといい」
「はい。ありがとうございます」
俺は三月の父親に礼をした。
「私の名は天川玄洋。天川財閥の会長だ」
天川玄洋という名前か。これまたかっこいい名前だ。
顔もかっこいい。見た感じそこまで歳はいっていない。
こんな人が三月と弥生のお父さんなのか。
「さて、せっかく来たんだ。ゆっくりしていってくれ」
「はい!」
俺は元気よく返事をした。
それから、俺たちはお茶を飲みながら話をした。
主に、俺と三月の働きっぷりのことや、三月の学園生活のことなどを。
「なるほど。最近は忙しくしているんだな」
「でも楽しくやれてますよ」
俺はそう言った後に一息おいて、
「監視で来ているのに、いつの間にか楽しんでしまっている自分がいますね」
苦笑いをしながらそう言うと、三月もそれにつられて笑った。
「そういえば、雷児くんは今いくつなんだ?」
「23歳です」
「ほう、若いな」
玄洋が感心するようにうなずく。
「じゃあ、三月より年上か」
「そうなります」
「ということは、もうすぐ結婚できる年齢になるわけか」
「そ、その話はまだ早いですよ! 気が早すぎです」
三月が慌てて否定する。玄洋が笑う。
「ははは。冗談だ。まあ、私の子供たちの護衛をしてくれるとは、なんともありがたい話だ」
「正社員の登用の話も蹴り、今回の仕事をやるに踏み込んだんです」
「そうか……。君には少し悪いことをしてしまったみたいだな」
「いえ。これも岩馬の人間に課せられた、使命だったのかもしれません」
「使命か。我々天川家も、岩馬家と絡むのはある意味運命なのかもしれない」
玄洋が意味深そうな顔をし、テーブルに置かれた紅茶をすする。
「これからも、よろしく頼むぞ」
「はい!」
俺は元気よく返事をする。
その後、夕方になるまで、俺と三月は屋敷で過ごしたのであった。
三月の実家で楽しいひと時を過ごした後、屋敷をあとにした俺と三月は、自分のマンションへと戻った。
帰りは無論、天川家のリムジンだ。
リムジンの中に漂ういい匂いを味わいながら、俺は車の中から見える名古屋の背景を目に焼き付けていた。