恋縛のユーフォリア~青髪美少女TS転移者ちゃんの強制ガチ恋身体改造人生終了クエスト~ 作:クマノミの実
――懐かしい夢を見た。
「やーい。おんなおとこ~!」
「おんなおとこ~」
「や、やめてよぉ……」
子供の頃のボクが数人の子供に揶揄われている。
小さなボクは言い返すことも出来ずに、涙目で俯いている事しか出来なかった。
「お前、女なのに男の振りをしてるんだろ~」
「そうだそうだ~!」
「違うよぉ……。ボクは男の子だよぉ……」
「うっそだぁ~!」
「嘘吐き~」
「うぅっ……」
子供の頃のボクは、気弱で力も弱く、喋るのもあんまり得意じゃ無かった。
それに名前も
…………今でもそんなに変われている訳じゃないのが恥ずかしい所だけど。
「こら、アンタたち!また有の事をいじめて!」
「――げっ。おとこおんなだっ⁉」
「逃げろ~!」
「こら~、逃げるな~~~!」
幼い少女の元気な声がその場に響く。
やって来たのは、ボクの幼馴染の女の子だった。
「大丈夫だった、有?」
「……うん。ありがとう■■ちゃん」
「また、アイツらに何かされたら言ってね!引っ叩いてやるんだから!」
「う、うん……」
少女がブンブンと可愛らしく腕を振り回す。
彼女は、こんな情けないボクの事を、いつも元気に助けてくれていたのだ。
「大丈夫、有はわたしが守ってあげるからね!」
「あり、がとう……」
元気に胸を張る幼馴染の姿を見ながら意識が浮上する。
最後に、夢の中の自分と、今の自分の想いが一致した。
――こんな情けないボクだけど、いつか逆に彼女を守れるような、男らしい男になりたいな、と。
*****
都立・
適当に朝のニュースを見てみれば、星座占いで1位。同じく、適当な雑誌を開いて出て来た占いでも1位。
朝ごはんの時に出て来たお茶の中には茶柱が立ち、通学途中には白猫を見かけ、自販機で飲み物を買えば、当たりが出てもう1本手に入った。
そしてそんな彼だが現在――――
(どこが、今日1日良い事が続くでしょうなんだ……)
有は、自分の身に起きたあり得ない
何が起こったのか、彼自身も良く分かっていない。
学校について自分のクラスに入り、席に着いてHRが始まるのを待っていた時に、突然大地震が起こったのだ。
「地震だ⁉」とか「きゃぁあああ‼‼‼‼」とか「机の下に隠れろ‼」だとか、有のクラスメイト達はそれは大慌てで、有も狼狽してしまって何1つ行動する事が出来なかった。
そうこうしている内に、何故か教室の中を、意味不明で強力な白い光が覆っていき、気が付いたらこんな場所に居た、と言う次第である。
全く、意味が分からなかった。
そんな風に混乱の極致にあった有だが、そんな彼にさらなる驚きの展開が待ち受けていた。
「ようこそ、新たなる玩具たち!私はお前たちを歓迎しよう!」
「――――――――ひっ」
先ほどまで何も無かった筈の空間に、正体不明の巨大な存在感を持つナニカが鎮座しているのだ。
「何故、私がお前たちを呼び寄せたのか。それを説明してやろう!」
そうして、曰く有を此処に呼び寄せたらしい巨大な光は、その目的を説明しだしたのである。
「――と言う訳だ」
「そん、な……」
纏めると、
①自分はお前たちが言うところの神様的存在。
②お前たちには自分の暇つぶしの為に、異世界に転移して貰う。そう言うの、流行っているんだろう?
③ただしその代わり、異世界の言語能力に加え、1人につき1つだけ、ランダムで特別な力を与えよう!
と言った感じた。
どうやら他のクラスメイトも同時に、別の空間?で同じ説明を受けているらしい。
それはとても理不尽でフザケタ代物だったが、しかし有は反論することが出来なかった。
それは有が気弱だから――ではない。きっと此処にいたのが別の人間でも同じ反応を返しただろう。
謎の邪神?だが何故か日本のサブカルに精通している上に、所々で妙にフランクなのだが、そんな事を気にする事ができないほどに、存在感が人とは違いすぎるのだ。
彼の者が喋るたびに空間が震え、有は失神しそうな程の衝撃を受けた。
大地震や大津波に対して、どうしてこんな酷いことをするんだ‼なんて語りかける人間が居ないように、徒人である有に出来るのはただ震えて猛威が去るのを待ち続ける事だけなのである。
「さあ、お前の運命を決する賽を振るが良い」
「うぁ……」
その言葉と同時に、有の目の前にちゃちなガチャガチャの機体の様な物が現れた。
これでスキルガチャを引け、ということらしい。
もっと豪勢なものをいくらでも出せるだろうに、態々こんな粗末な物を出してくる辺りが、目の前の存在の悪意を物語っている様に、有には感じられた。
けれどもやはり、抵抗は出来ない。
有は無言の圧力に負けて、おずおずとガチャガチャのレバーを回すしか無かった。
どう考えても、絶体絶命で最悪の事態。しかし、ここで流れが大きく変わる。
有がレバーを回した途端、ガチャガチャが強く光り輝き、中から七色に煌めく野球ボール程の大きさの球体が出てきたでは無いか!
「おめでとう!排出率0.0000000001%のSSRスキルだ‼」
「……えっ、えすえすあーる?」
「それは持っているだけで英雄になれるのが、ほぼ確定するような強力な能力の1つ。些か興ざめではあるが、引かれた以上は是非も無し。素直に授ける事としよう」
どうやら有は、ほとんど出す気の無かった当たり籤を引いたらしかった。
どことなく面白くなさそうな雰囲気を見るに、かなり有用な物らしい。
それを悟った有の頭の中に1つの考えが浮かび上がる。彼は、身を焼き尽くさんばかりの恐怖心をなんとか押し殺して、その考えを実行し始めた。
「あのっ……」
「ふむ?」
「で、出来たらその力を、ボクの代わりに■■という子に与えてはくれませんか……!」
そう。有が思いついたのは、引いたSSRスキルを、同様の目に遭っている筈の幼馴染の少女に自分の代わりに与えて貰う事だった。
その結果、自分が辛い目に遭うのだとしても、今こそ彼女を守る時だと思ったのだ。
――有は、気弱で情けないが、しかし自分が危ない時でも他人の事を思いやれる優しい人間だった。
「それは認めない。しかし恐怖を押し殺して、提案した事は評価しよう!お前たちの転移場所は
「あ、ありがとうございます……」
礼を言う必要など全く無かったし、そもそも直ぐに分かるのではなく1年後かよ、と言う話だが、それを馬鹿正直に伝えて気を悪くさせて、与えられる力を没収されては元も子もない。
「それに1つだけ忠告しておいてやろう。禍福は糾える縄の如し――これを努々忘れないことだ」
「それは、どういう……?」
有の疑問に邪神は答えない。
その代わりに、有の全身がとても大きな浮遊感に包まれた。
どうやら、異世界転移が始まるらしい。
「さて、それでは精々良い人生を送るが良い。最後に引き当てた能力を授けよう!お前が引き当てたのはSSRスキル『
「……え?……あの?……え?」
最後に不穏な言葉を聞いて、有の視界は再びホワイトアウトしていった。
*****
小鳥の囀りが聞こえる。川のせせらぎが耳に入る。穏やかな陽の光が身体を包み込み、木々たちによって澄んだ空気が鼻孔を擽る。
気が付いた瞬間、有はそんな長閑な森の一角に佇んでいた。
先程までの何もない真っ白な空間でも、当然元いた教室でも無い以上、本当に異世界転移とやらをしてしまったのだろう。
しかし、今の有にはそんな事を気にしている余裕は無かった。
「こ、これ……」
何故だろうか、声が妙に甲高い。なんだか視界も頭1つ分くらい低く感じるし、自分の手を見てみると、肌がとても白くて柔らかそうだった。短く切りそろえられていたはずの髪がとても長くなっていて、オマケにした覚えのない三つ編みになっている。
有は、気を失ってしまいそうな意識の中、ふらふらと夢遊病の様に歩き始める。その足の向かう先は近くに流れている綺麗な川。
たどり着いた有は、止めどなく湧き上がる嫌な予感に従って、川の水面に自分の姿を映した。
「う、そ――」
二次元のキャラや、そのコスプレでしか見ない様な青い髪は、しかし一切の不自然さを感じさせず、滑らかで艷やかだ。
オレンジ色に近い明るい紅色の瞳は、昼と夜が交差する夕暮れの一瞬を思わせ、どこか郷愁すら覚えるよう。
氷の彫像の様に整った顔立ちはどこか冷たい印象を与えながらも、しかし同時に感じるあどけない雰囲気がそれを打ち消し完全なる調和を成し遂げていた。
華奢な体は、けれどもとても柔らかそうで、思わず抱きしめたくなるような魅力に溢れている。
唯一の
そんな、神話の世界の戦乙女の様な美少女がそこに居た。
……何故だか、有が着ていた手井江洲高校の男子生徒の制服に身を包んで。
有が思わず手を自分の顔に当てると、水面の彼女も同じ様に動いた。
もう、自分を誤魔化せなかった。
「ボク、女の子になっちゃった………………」
これが、幸運の後に待ち受けている不運だと言うのか。
生まれ故郷どころか、元の性別すら失った有に出来たのは、そんな風に力なく呟く事だけだった。