守銭奴、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
平田に殴られた日の昼休み、早いうちに意識を戻した俺は顔に包帯を巻いた状態で教室に入る。
教室に入るとその場にいるクラスメイトがギョッとした表情を浮かべる。
「ちょっ?!何で鳳橋君がここにいるのかな?!」
一之瀬が詰め寄って質問してくる。キスしかねない距離に白波がギロリと睨んでくるので睨み返すと真っ青になって俯く。お前は彼我の実力差を理解しろ。
内心呆れながら一之瀬に視線を向ける。
「授業に出るからに決まってるだろうが。見た目はエグいが授業を受ける分にはそこまで支障はないし……あ、そうそう。中間試験における俺の勉強グループメンバーに言っとくが、3日後の放課後は平田の暴力について保護者を交えて話し合いをするから勉強会は休みにするから」
話し合いがどれくらい時間がかかるかわからない以上、グループメンバーを待たせたら士気に悪影響が出るだろう。
「いやいやいや!傷を治すことに専念しなよ!リーダー争いについても別の機会に回すからさ!」
一之瀬がそんな風に休むように促すがコイツは何を言ってるんだ?
「大袈裟な奴だな。鼻の骨が折れたくらいで休むとはゆとり社会かよ」
「っ……!」
一之瀬は息を呑むが驚く事じゃないだろうに。
「はぁ……もし俺をイカれていると思うならお前はリーダーに向いてねぇよ。リーダーってのはどんな状況で折れず部下を指揮して導く義務があって、生半可な事で折れたら士気の低下に繋がるぞ。今回の件なら顎の骨が砕けて喋れないとかならまだしも、たかが鼻の骨が折れたくらいで休むなんてリーダーとして三下以下だ」
「……なんで」
一之瀬がポツリと呟く。顔を見れば心底理解出来ないといった表情だ。
「高いスペックを持っていて更にそれだけ立派な信念があるなら正々堂々戦っても凄いと思うよ。なのに何で意地悪なやり方を使うの?」
それ、昨日も小橋に似たような事を言われたな。
「簡単な話だ。お前は人が喜んでいるのを見たら嬉しく思うのかもしれないが、俺は人が苦しむ姿を見ると嬉しく思うだけだ……でもそれっておかしいのか?」
「……おかしいよ。そんなの間違ってるよ」
「ならばその考えが生まれつきだとしても?生まれながらのサディスト……精神が一般的でない事は悪なのか?つまりお前は生まれつき障害を持った人間を悪と断じるのか?」
「違う!」
「そう思うなら人の考えを否定する権利はない。俺は親の影響でサディストになった自覚はあるが、生まれつきサディストな人間も同じサディストだ。なのに何故俺は悪であると判断する?」
「そ、それは……」
一之瀬は口籠る。俺はサディストであるが一之瀬の善性を否定するつもりはない。人に人の考えがあるからな。ただ俺は俺自身の考えが1番であると思って譲らないだけだ。
「うだうだと良い加減にしてよ!そんな人格の人が帆波ちゃんを悪く言う権利なんかない!どんな形であってもマトモな人格じゃないなら、結局碌でもない人間なんだからマトモな人に従ってれば良いじゃん!」
そこまで考えていると白波が割って怒鳴ってくるが……
「千尋ちゃん……それ、本気で言ってる?」
白波が庇った一之瀬本人が悲しみの眼差しで白波を見る。クラスの大半もドン引きした眼差しを白波に向ける。
正直言って俺もかなり引いている。人によっては障害者に偏見を抱く人もそれなりにいるだろうが、障害者は正常者に従うべきって言うほど傲慢な考えを持つ奴はそこまで多くないだろう。
多分俺と一之瀬を比較した事による発言だろうが、今ので白波の人間性をかなり疑われるだろう。
「っ!」
白波も今自分がヤバい言った事を自覚したようで真っ青になって周りを見回すが、やがて俺と目が合って……
「ほ、帆波ちゃんを悪く言ったのが悪いんだから!」
そのまま俺の所為にして出口に向かって走り出す。
「千尋ちゃん!」
一之瀬がいつもより険しい声で呼び止めるか、白波は一瞬ビクッとするだけで教室から出ていく。
「ったく……本当に面倒だな。おい一之瀬」
「な、何?」
「お前が俺の考えを間違いと考えるのは別に構わない……が、俺の場合は既に考えが頭に染み付いているから今更変えるのは無理だ。俺の考えが間違いと思うなら次の中間試験で俺に勝て」
所詮この世は弱肉強食。勝った方が正義なのだから。
「……負けないよ」
一之瀬も結局勝負するしかないと判断したのか頷きながらそう返すので俺は席に着くがこちらも負けるつもりはない。
リーダー性って自然に現れるもので、意図的に作り出せるものだからな。
数時間後……
「はい。じゃあ今日のHRは終わりね。テスト勉強は頑張ってね。鳳橋君は7時までに検査に行くように」
星之宮がそう言ってHRが終わる。
「じゃあ図書室行こっか……」
一之瀬はチラリと俺を見てくる。昼休みの件を気にしているようだ。
昼休み終了直前に予鈴が鳴って白波が教室に戻ってきた際、一之瀬は白波に俺に謝るように言ったが白波は私は悪くないとソッポを向いたのだ。
それでも一之瀬が謝らせようとしたので、俺がちょっと悪意を込めて「他人に強いられた形の謝罪に価値はない。ましてクラスで1番能力が低いカスの謝罪なんてな」って言ったら白波はブチ切れて、昼休みが終わるまで罵詈雑言を俺にぶつけてきた。それこそ俺の罵倒が霞むレベルで。
真面目な一之瀬のことだから俺に謝罪させられなかったのを気にしてるようだが、白波の謝罪なんか無価値だから気にする必要ないのに。
俺は猫を追い払うようなジェスチャーで一之瀬に行くように促すと、一之瀬は申し訳なさそうに教室から出て行く。
しかし白波は堂々と一之瀬の後を付いているがどんだけ面の皮が分厚いのだろうか?
疑問に思いながら俺は自身のグループ以外が出て行くのを待つ。
「さて、全員いるし今からお前ら個人個人の対策プリントと、期末試験までの範囲の簡易テキストを配るから名前順で並べ」
「ちょっと待って!今なんか個人個人の対策プリントって凄い事を言わなかった?!」
網倉が驚きながら聞いて、他の面々も似たような表情を向けてくる。
「言ったが。お前らから得意不得意のデータを貰ったし、昨日からそれに基づいて作った」
「5教科全部?!」
「当たり前だろ。網倉は出席番号が1番若いんだしさっさと来い」
俺が並ぶように促して、呆然とする網倉に5科目の簡易テキストと網倉用の対策プリントを渡す。
「次、飯田」
並んでいくメンバーに次々と渡していく。成績優秀な神崎や小橋、浜口あたりは対策プリントは薄く、成績があまり良くない南方とかは割と厚い。
「全員貰ったな。予定としては今週中に4月分の内容を完璧にマスターして貰う。で、次の週は5月に習う範囲を授業と並行して理解を深める。で、最後の週の前半は5月に習う範囲のマスター、後半は俺が模擬試験を2、3回分作るからそれをやって貰う」
「待て、模擬試験もお前が作るのか?」
「当たり前だろ。今回はリーダー性……メンバーを導く事を競う勝負だ。俺が作らないで誰が作るんだよ」
今回の俺は卑怯な手は使わないと決めてるからな。
「……お前、それだけ正々堂々と出来るのに卑怯な手を使うのはどうなんだ」
神崎が呆れ全開の表情を向けてくる。
「だから性分って言ってんだろうが。ぶっちゃけ卑怯な手を使って良いなら使ってるぞ」
「卑怯な手?」
「知りたいか?」
「いや、遠慮しておく。それより勉強会を始めるのは良いんだが1つ問題がある」
「何だ?」
「Bクラスについてだ。お前は知らないだろうが、朝からBクラスの連中から嫌がらせを受けている」
良し、龍園は俺の依頼通りに嫌がらせをしてくれたようだ。
「嫌がらせとは?暴力なら証拠を掴んで学校に訴えて、Bクラスからポイントを奪いに行け」
「いや。今のところ暴力は振るわれてないよ。何というか……いちゃもんを付けてくる感じ」
「うん。廊下を歩いて並んで歩いてたら邪魔だって物凄い表情で凄んできたり、お昼ご飯を食堂で取ってたらその座席は狙っていたって怒ったりしてきたね」
「後ぶつかったら、わざとだわざとだって煩かった」
俺の問いに網倉と小橋と姫野が順番に不満をぶちまけてくる。予想以上の働きだ。龍園よ、褒めて遣わす。
「つまり勉強中にも邪魔される可能性がある……良し、わかった。じゃあお前ら、ちょっと付いてこい」
「?どこに行くんだ?」
「職員室」
「教師に報告するのか?それなら一之瀬が既にやってるが、小競り合い過ぎてお咎め無しだったぞ」
「そんなものは予想の範囲だ。ちょっと買いたいものがあるんでな」
俺がそう言うとメンバーは訝しげな表情を浮かべながらも付いてくる。
実際これは全て龍園の協力を得た俺の自作自演だ。速やかに対策を取る事で一之瀬との格差を見せる為だ。
現状、人間性による信用は一之瀬の方が遥かに上であるので、こっちはそれ以外の場所で信用を得る必要があるからな。
俺はグループメンバーを連れて職員室に向かうが、窓の外から数人の女子が一之瀬のグループにいちゃもんを付けているのを発見するが、この調子で頑張ってくれよ。
オリ主と真逆の考え方を持つ一之瀬、徹底的に貶めてから逆らえない奴隷にするのはアリか?
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アリだ。雌犬にしてやれ
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アリだけど程々に
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無しで