守銭奴、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
「いやー、気持ちのいい蹴りだったな」
俺は木の上から綾小路の蹴りを見て小さく呟く。篠原と池を川に蹴り落とした綾小路は先程よりもスッキリした表情になりながら千秋、小野寺と体力のある2人とベースキャンプを去っていく。
残っているのは体力のない連中と恵と櫛田だが、表向きは優しい櫛田以外は誰も池と篠原を心配していない。櫛田は2人に駆け寄ってタオルを出しているが内心では面倒に思っているだろうから実質的に2人の味方は居ないだろう。
しかしこれについては自業自得だ。千秋や恵からDクラスの内情については聞いているが須藤、池、山内、篠原は5月1日から全く成長してないらしいからな。
とはいえこれを問題提起するつもりはない。だって他クラスの生徒への暴力は禁止でも自クラスの生徒に対する暴力は禁止されてないからな。
(っと、そろそろ時間だな)
時計を見れば集合15分前だ。10分前行動は大切だからな。
俺はDクラスのベースキャンプを離れて自分のクラスのベースキャンプに戻る。入り口付近では作業着を着た男性数人が仮設トイレと仮設シャワーを設置している。
洞窟の中には15人くらいいる。これについては10分前行動を心がけたのだろう。
「お疲れ様。何か良い情報はわかった?」
ユキが胸ポケットにあるデジカメを指差す。
「各クラスのベースキャンプとAクラスのリーダーはわかった」
『おおっ!』
この場にいる全員が歓声を上げる。
「Aのリーダーは町田だ。とはいえ最終日にわざと怪我してリタイアする可能性もあるから最終日の指名直前の点呼の際には誰か1人にAクラスのキャンプを見張って貰う。で、町田が居なかったら無線で連絡しろ。ソイツの点呼欠席のペナルティについては気にするな」
点呼欠席によるペナルティは5ポイントマイナスだが、リーダー指名失敗のペナルティは50ポイントマイナスだからな。リーダーである町田の有無の確認は大切だ。真面目な葛城が仮病作戦を使うとは考えにくいが、純粋な体調不良って可能性もあるからな。
そう思っているとどんどん人が戻ってくる。皆が様々な物を持ってくるが、中でも浜口、夢、麻子のトリオは釣り竿を持ってきた。
「それ、どこにあったんだ?」
「ここから海岸沿いに1分くらい歩いていたら林の影に小さな小屋があって、中にありました」
「なるほど。一応聞いとくが中にスポットはあったか?」
「海岸の近くには小屋が二つあって、片方はスポットがあってもう片方はなかったからそっちから持ってきたよ」
つまりスポットがない場所からは取り放題って所か。
「わかった。ちなみにまだ残ってたか?」
「10本くらいあったのでまだありますよ」
「じゃあ今から何人かで全部持ってけ。そうすりゃ小屋のスポットを占有出来なかったクラスがポイントで釣り竿を使う可能性がある」
最低限の生活の確保は大切だが、節約出来るところは可能な限り節約して、他クラスにポイントを使わせたいからな。
片道1分なら集合時間前に戻れるからな。
『了解』
俺の指示に従って7人が出ていく。そして他の連中もどんどん戻ってくる。
「島の中央付近にてとうもろこしが沢山あったよ」
「川のほとりに木の実があったよ。けど島の真ん中あたりにDクラスのキャンプがあったからスポットの干渉には気をつけた方が良いわ」
「岩山の隅にほら穴があって中に調味料があったわ。スポットは無かったけどAクラスの生徒と鉢合わせして半分ずつ分けて取ってきたよ」
様々な報告を受けるが思ったよりも、島には食料があるようだし、学校側も調味料を用意するあたり食料を買わなくてもやり過ごせそうだ。
「それと鳳橋。龍園から伝言があるんだが」
ここで時任がそう言ってくる。
「内容は?」
「2つあって『俺達はバカンスを過ごして3日目に全員でリタイアするから今日か明日遊びに来い』と『その際に俺達が買った物資をプライベートポイント契約で売ってやっても良い』だってよ」
なるほどな。龍園がリタイアするかは知らないが、龍園が1人で島に潜伏するならバレないためにも物資は使わないだろうから売って金の足しにする腹か。
「わかった。交渉については俺がやる。それとお前らに頼みがあるんだが、この中で数人、夜中に見張りをやって欲しい」
「それは夜中に侵入してくる生徒を警戒してか?」
「それもあるが夜中に白波がクラスの内情を売りに行ったり、キーカードの捜索をするかもしれないからな。場合によっては蹴り飛ばして構わない」
「じゃあ私がやるよ」
「いや、ここは俺がやる」
「僕がやるよ。白波さんに暴力を振るえる可能性があるしね」
「あ、狡い。私も彼女を殴りたいのに」
この場にいる大半が立候補していく。どうやら余程白波を殴る口実を欲しいようだ。平和主義の柴田や渡辺も全く止めないし、躊躇いがなくなって何よりだ。
「まあその辺りはジャンケンでも何でも良いから4人選出しろ。決まったら夜までゆっくり休め」
その4人は試験中は昼夜逆転の生活を送って貰った方が良いだろう。
それからして浜口達が釣り竿を持って戻ってきて、他の連中もゾロゾロ戻ってくるが……
「一之瀬と白波が戻ってきてないな……見た奴は?」
まだ一之瀬と白波が戻ってきてないが白波がまたしても足を引っ張ったのか?
と、ここで別府が手を挙げる。
「20分くらい前に洞窟ど真逆の場所から戻ろうとしたウチのグループと会ったな。で、そろそろ戻るべきだと提案したら白波に「余計なお世話だ。出しゃばるな」って喚かれて、白波は一之瀬を引っ張っていた」
どうやら白波は物理的にも一之瀬を引っ張ったようだが、どんだけ厚かましいんだ?今日はもう学校から食料を買ったが、明日以降はアイツの分の飯は用意しなくて良いだろう。
そう思いながらも俺は今後の話を一之瀬と白波以外の全員にするのだった。
「ねぇ千尋ちゃん。そろそろ戻ろうよ。集合時間過ぎてるよ」
海岸にて一之瀬は白波にそう注意する。根が真面目な一之瀬からしたら遅刻は望ましくない。
「もう少しくらい良いじゃん。あの屑には道に迷ったって言っとけば良いよ」
一之瀬の注意に対して白波は我関せずとばかりそう返し、一之瀬の気を重くする。
「あのさ千尋ちゃん。悪い事は言わないからさ、鳳橋君に謝りなよ。このままじゃ千尋ちゃんは危ないよ」
これについては紛れもない事実だ。白波が赤点を取って以降、クラス内において白波の扱いは虫ケラ以下だ。しかも赤点の理由は純粋な実力不足と努力不足な上、助けた一之瀬の忠告を無視して未だに狂夜に反抗的な態度を取っている。
「ほ、帆波ちゃんはあんな屑の味方をするの?!あんな他人を道具に思ってる屑なんかより帆波ちゃんがリーダーになるべきって当たり前の事を言ってるだけだよ!」
しかもコッチの忠告に対して納得しないでいるくらいだ。
「私は中間試験で大差で負けたからリーダーの座を引いただけ。千尋ちゃんも納得して」
リーダーの座は中間試験における両グループの総合点の平均点で競ったが、一之瀬のグループが368.5点で狂夜のグループは462.4点だった。
1点や2点の差だったら勝負は時の運だと言えるかもしれないが、90点以上の差は純粋な実力差でしかない。
「っ!無理っ!帆波ちゃん以外の下につくなんか絶対に嫌!それより帆波ちゃん、あんな屑の命令なんか無視して海岸を散歩しようよ!」
白波はそう言って半ば強引に一之瀬を引っ張る。
しかし……
(何で……何で千尋ちゃんはわかってくれないの?アレだけ暴力を振るわれてるのに……何で理解してくれないの?)
一之瀬に背中を向けているので気づかなかったが、一之瀬の目に僅かにだが憎悪の色が混ざっていた。
オリ主と真逆の考え方を持つ一之瀬、徹底的に貶めてから逆らえない奴隷にするのはアリか?
-
アリだ。雌犬にしてやれ
-
アリだけど程々に
-
無しで