守銭奴、実力至上主義の学校に入るってよ 作:トラファルガー
パァンッ
綾小路のスパイクが伊吹のブロックを突き抜け、ブロックによって軌道が曲がり俺のレシーブは失敗となる。
ピィィィッ!
それに伴い笛が鳴る。試合終了だ。
結果は21ー15と26ー24とストレート負けだ。2セット目は何とかデュースに持ち込んだが綾小路の規格外のパワーに押し切られてしまった。
ぶっちゃけ腕が物凄く痛い。森下の相手は基本的に伊吹に任せて、綾小路の相手は大半が俺だったがアイツのサーブやスパイクは威力が桁違いで、レシーブやブロックの度に痛みを感じた。
試合中は何とか乗り切ったが、いざ終わると痛みが倍増した気分だ。一部は真っ赤になってるし。
「……ごめん。私も終盤に森下のサーブを受け損ねてなかったら……」
「気にすんな伊吹。チームスポーツである以上、俺の責任でもある」
余程足を引っ張っていたならまだしも、森下との勝負では伊吹の方が優っていた。あくまで終盤に森下の調子がよかっただけで、総合的に見れば伊吹の方が上だった。よって伊吹を攻めるつもりは毛頭ない。
「テメェでも勝てなかったか」
「悔しいが肉体のスペックに大分差があるな」
これでも100メートル走は10秒29、ベンチプレスでは150kgと身体能力にはかなり自信があったのだが、綾小路はパワーでもスピーチでも更に上だろう。学校に帰ったら指導するだけではなく、1から鍛え直すとしよう。
「まあ鍛え直すしかないだろ。それよりひよりには謝っとけよ。お前の勝ちを期待していようだしな」
龍園の笑みはムカつくが、確かにひよりは試合中に大声で俺の名前を呼んでいたが、普段静かなひよりが大声を出すって事は期待した可能性はあるだろう。
そう思いながらひよりを見ると、ひよりは遠目でもわかるくらい真っ赤になって立ち上がって走り去っていく。行き先は海岸沿いの岩場のようだ。
何故逃げられるかはわからないが、どうも放っておけないので俺はひよりを追いかける為にコートを出るのだった。
(うぅ、思わず逃げてしまいました……)
ひよりは恥ずかしい気持ちを抱きながら早足で砂浜から岩場を走っていた。思わず大声で狂夜を応援して恥ずかしい気持ちを抱き、試合が終わってから狂夜と目が合ったら恥ずかしさが爆発して逃げ出してしまったのだ。
狂夜が悪いわけではないが今狂夜の顔を見たら恥ずかしさが増してしまいそうだった。
だから今も逃げているのだが……
「きゃあっ!」
次の瞬間、岩場に足を引っ掛けて横に転んでしまう。横には大量の尖った岩があり、当たったら大きな怪我をしてしまうのは簡単に予想出来る。
ひよりが思わず目を瞑るが、直ぐに腰を掴まれる感触が伝わるだけで痛みは感じない。
恐る恐る目を開けると……
「大丈夫かひより?岩場は危ないし走るなよ?」
狂夜が自身の腰を掴んで支えていた。
また助けて貰ったという事実を認識するとひよりは恥ずかしさと嬉しさを胸中に宿しながら顔に熱が溜まるのを自覚する。
「はい……また助けられましたね……ご迷惑をおかけしました」
「気にすんな。次から気をつけろ。というか何故逃げたんだ?」
狂夜にそう言われ、ひよりは口籠るが2度も助けてくれた狂夜に話さないのは不義理と判断して話すことにした。
「その……大声で狂夜君の名前を呼びましたが、はしたないと思われたので……」
「はしたない?アホか、そんな事微塵も思ってねぇよ。寧ろ友達からの声援に力が入ったわ」
言いながら狂夜はひよりを優しく抱きしめる。
「きょ、狂夜君?!」
「だからそんなんで岩場を走るな。さっき俺が止めなかったら顔面を怪我してだかもしれないだろ?女の顔の傷は一生モノだぞ?」
狂夜の顔を見ると目には怒りの心配の色が宿っていて本気で心配しているのがひよりも理解出来て、申し訳ない気持ちが生まれてくる。
「……はい。ごめんなさい」
ひよりも狂夜の気持ちがわかったので抱き返しながら謝る。
「結構。じゃあ戻るか」
そういう狂夜だが……
「すみません。もう少しこうして貰っても良いですか?」
ひよりは狂夜から伝わる温もりをもう少しだけ感じたかったのでそんなおねだりをする。
そんなひよりのおねだりに狂夜は小さく笑ってから近くの巨大な岩の陰に移動してから、地面に座り、ひよりを膝の上に乗せてから優しく抱きしめる。
「あっ……狂夜君っ……」
ひよりは小さく息を漏らして狂夜の背中に手を回す。この温もりに包まれているだけで幸せな気分になってくるのを自覚する。
そんなひよりに対して狂夜がひよりの頭を優しく撫でると幸せな気分が増してくる。
(狂夜君にくっついているだけで幸せです……願わくば、学校に帰ってからもこうやって……)
ひよりはそこまで考えると狂夜の胸に顔を埋めて、抱き合いながらもスリスリして甘えるのだった。
(ひよりからの抱擁、他の女子からされる抱擁と大分違うな……)
岩場の陰にて俺はひよりと抱き合いながらそんな事を思う。
これまで沢山の女子と抱き合った経験はある。しかし殆どが性欲に繋がっていて、情欲が生まれていた。
しかしひよりからは情欲が殆ど生まれてこないのだ。多少はあるが微小だ。ひよりは知り合った女子の中でもトップクラスの美女なのに、生まれてくるのは安らぎが大半だ。
こうやってただ抱き合っているだけで幸せな気分になり、美女を抱いた時と同じくらいの満足感が生まれてくる。
「なぁ、ひより」
「?何ですか?」
思わずひよりに話しかけてしまう。特に明確に言いたいことはないが思わず話しかけて、ひよりが不思議そうな表情で俺を見上げてくる。
「……いや、大した話じゃないんだが、もう少し抱きしめて良いか?」
「はいっ……もちろんです」
ひよりは小さく頷くと抱きしめる強さを強めてくるので、同じようにこちらも抱きしめる力を強める。それだけで幸福な気持ちになってくる。
「あの、狂夜君。私達は今日でリタイアするのですが狂夜君は最終日まで島に残るのですよね?」
「ん?アクシデントがない限りはそのつもりだ」
本音を言えばBクラスと同じようにバカンスをした後にリタイアして、豪華客船で夏休みを満喫したかったけど。
「その、試験が終わってからなんですけど、狂夜君が嫌じゃなければ……2人で過ごす時間を作って貰えませんか?」
ひよりは不安そうに、縋るように俺を見てくるが、俺が断ると思っているのか?
「良いぞ。試験が終わったら空いてる時間を確保しとくわ」
時間はあるからな。それに明確に約束しているのはひより以外だと愛里だけだから時間の確保は簡単だ。
「っ、ありがとうございますっ。楽しみにしていますね」
「ああ。俺も楽しみにしてる」
まあ楽しむというよりも癒されるってのが正確な表現だけどな。ひよりと過ごす時間は楽しいというより安らぐだからな。
俺の答えにひよりは嬉しそうにスリスリしてくる。
「甘えん坊だな、ひよりは」
「すみません……何故か狂夜君には甘えたくて……」
「謝る必要はない。お前に甘えられるのは悪くないし、好きなだけ甘えろ」
「はいっ……」
ひよりは頷き更に甘えてくる。叶うなら卒業までこんな穏やかな時間が続いて欲しいものだ。
俺はそんな事を考えながら時間の許す限り、ひよりと抱き合いながら他愛ない雑談をするのだった。
「……甘過ぎだろあの2人。というか鳳橋の野郎、あそこまで優しい面が出来んのかよ」
龍園は呆れ半分驚き半分の表情で狂夜とひよりの抱擁を見ていた。
中学時代から狂夜と関わった龍園は狂夜が敵には誰よりも冷たく、側近には誰よりも優しく接していたのは知っていたが、あそこまで優しく接しているのは初めて見るので驚きだ。
そんな中で2人は抱き合いながらスリスリし合うので、龍園は砂糖を吐きながらその場を後にした。
しかし次に行った場所では綾小路が森下と山村相手に同じような事をしていて、再度砂糖を吐くのだった。
おまけ
バカテスト
問題(国語)
好きな四字熟語を書きなさい
一之瀬帆波の答え
一致団結
教師のコメント
貴女らしい答えです。これからも頑張ってください
坂柳有栖の答え
優勝劣敗
龍園翔の答え
弱肉強食
鳳橋狂夜の答え
酒池肉林
教師のコメント
き、君達らしい答えですね……(震え)
石崎大地の答え
焼肉定食
教師のコメント
絶対に誰かが書くと思ってました
綾小路清隆の答え
絶対強者
教師のコメント
それは君自身の事を言っているのですか?それともティガレックスのクエストについて言っているのですか?
山内春樹の答え
酒池肉林
教師のコメント
君には縁もない四字熟語……ゴホンッ!正解です。特に言うことはありません。
オリ主と真逆の考え方を持つ一之瀬、徹底的に貶めてから逆らえない奴隷にするのはアリか?
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アリだ。雌犬にしてやれ
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アリだけど程々に
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無しで