※この作品はR-18です。

イフ・ゴーカイジャー   作:丈兄〆

1 / 1
あれから、ちょうど十年。
長いようで、短くも感じられる、この期間。
細かく振り返れば、一日じゃ足りないくらいの想い出もあるだろう。

しかし‥
この一纏めを線で見た時、浮かび上がってくるものは、何だろうか。
あるいは、何一つ変化なき線なのだろうか。
真っ直ぐで、起伏のない十年‥‥‥
そんなもの、存在するのだろうか。


どれだけ平和を望んでも、今も世界のどこかで、戦争は起こっている。
どれだけ信念を貫いても、今も誰かの傲りによって、その善意は踏みにじられてる。


ならば‥‥正義とは、何だ?
何のために"正義"と呼ばれる存在を尊び、それらを疑うことなく信じるのか?
所詮は辛い現実から逃げるための幻想であり、
一時を忘れるために欲する、娯楽という名の麻薬なのか?
だとすれば、子供に『正義と自称する虚構のヒーロー』を勧めるのは、
むしろ悪ではないのか?

本当に将来を見通して、たくましく生きてほしいなら、
突然無人島に放り込まれても生きていけるサバイバル術や、
失敗や借金せずに生きていくのに必要な、社会の構造や政治の仕組みを、
まずは教えるべきじゃないのか?


人は、理想を実現する為に、戦いを繰り返す。
大切なものを守る為なら、相手への武力行使も止むを得ない。
そこで"平和的解決"を望んでも、結局はどちらかが攻撃を始めて、
そんな"戯言"を話す暇もなく、あとは祭りだ。


それが、この世界の現実であり、
いくら逃避したところで変わることのない真実にして、人類史そのものだ。

まさに『弱肉強食』であり、その真理は、別に人間に限ったことではない。
"人間も動物"なのだから、さっさと原点に立ち返って、
もっと素直に、悪だの正義だの考えず、
欲望のままに生きてった方が、よっぽどシンプルで美しいのではないか‥‥‥





そう思えたら、

そう信じきれたら。

どれだけ楽だっただろうか‥‥。











【序章】スカイフォール

 

とある部屋の入口に、一人の男が現れる。

 

暗い影に身を包みながら、ゆっくりと通路へ入っていく。

 

奥の方まで進んだ時、その先にある部屋から差し込んだ光が、

 

彼の目元を映し出す。

 

 

 

鋭くも濁りのない澄んだ瞳に、赤いコートを羽織った男の名は、

 

キャプテン・マーベラス。

 

またの名を、ゴーカイレッド。

 

 

 

先には一触即発の敵が潜むことを予測し、

 

古くから連れ添った愛銃・ゴーカイガンを構えながら、

 

更に奥へと進んでいく。

 

 

通路から次の部屋の入口へ進み、少しづつ部屋の様子を見渡していくと、

 

時は既に遅かったことを悟る。

 

入口の少し先には、一人の男の死体が転がっていた。

 

そこから左方向にあるバスルームにも、また一人、男の死体が横たわっている。

 

焦りや危機感を覚えつつ、更に中央の部屋へ進むと、

 

今度は部屋の真ん中で、ビンテージな椅子に座った男が一人。

 

彼は一見、くたびれて寝込んでるように見えたが、近づくとハッキリ認識する。

 

血まみれで重傷を負っていることに。

 

 

 

『ロンソンが負傷。至急医療班の手配だ』

 

マーベラスは片耳イヤホン型の無線機・インカムで、

 

椅子に座っているロンソンを助けるよう呼びかける。

 

「例のモノは? そこにあるの?」

 

インカムから、女性の声が返ってくる。

 

彼女はコードネーム・Mと呼ばれている、作戦司令官だ。

 

『ハードディスクは無くなっている』

 

「確かなの?」

 

一瞬で辺りを見回し、敵は見当たらないと判断すると、

 

ロンソンの周りにある、パソコンや機械関係のモノのざっと確認していく。

 

『あぁ‥‥ちょっと待ってくれ』

 

それどころではないロンソンを気にして、傷の様子を見るマーベラス。

 

「奪われたんだわ‥持ち去った奴を追って」

 

Mは何としてもハードディスクを奪い返させるよう、マーベラスを急き立てる。

 

『応急処置をする』

 

「時間がないの」

 

『だが出血がひどい!』

 

「彼はいいから!」

 

微かな呼吸で生死をさまよい、言葉を発することもできぬまま、

 

マーベラスを見つめるしかないロンソン。

 

 

 

彼は、この任務前からの戦友だった。

 

歳下ながら、マーベラスに劣らぬ実力の持ち主にして、

 

夢や仲間の為なら危険をもかえりみない言動には、

 

まるで若き日のマーベラス自身と重なって見え、

 

一際見殺しにし難い思いを抱く仲間。

 

 

 

しかし状況から見て、彼の命がもう数分と持たないことは明白。

 

ここは戦場であり、彼以外だって、一分一秒が命運を分ける任務を遂行してる。

 

今、名残を惜しんで敵を見逃せば、もっと広大な被害が出るし、

 

彼もいつ死んでもおかしくない覚悟で、この任務に参加していたはずだ‥‥

 

 

 

そんな“戦争下では当たり前の常識”を、自己暗示のように思い起こす。

 

最後にもう一度後ろを振り向き、死にそうなロンソンを一瞬見るも、

 

マーベラスは任務遂行のため、敵の逃げた出口へ向かっていく。

 

 

 

出口に向かうと、眩しいほどの太陽が視界一面を照らし、

 

さっきまでの暗く・陰惨とした空気とは正反対な、喧噪な街中に出る。

 

 

マーベラスが出てくるタイミングを見計らったかのように、

 

一台の車が彼の目の前に停まる。

 

この運転手もまた、マーベラスと共に任務遂行をしている、

 

コードネーム・イブと呼ばれる女性諜報部員。

 

チーム内ではまだ実戦経験は浅い新入りだが、スパイとしての実力は申し分なく、

 

頭脳明晰でコミュニケーション力も高いため、

 

今回の任務では欠かせない、マーベラスのサポーターとなる存在だ。

 

 

 

敵を追跡するため、マーベラスも助手席に乗り込む。

 

『どこへ行った?』

 

「あの黒のアウディよ」

 

彼女もインカムで司令部からの情報を聴きつつ、標的を見逃さぬよう、

 

持ち前のハンドルさばきで軽妙に車を走らせていく。

 

「ロンソンは?」

 

『撃たれた』

 

「‥‥‥」

 

彼女もまた、ロンソンの負傷に動揺を隠せなかったが、

 

彼の死を無駄にしないようにと、すぐ頭を切り替え、目の前の逃走相手に集中する。

 

 

 

ものの数メートル走っただけだが、相手も尾行に気づいたようで、

 

明確な車道や規制がない街中で、巻くように急加速や急カーブする逃走車。

 

イブも、ここで見失うわけにはいかないと、

 

両脇のサイドミラーを粉砕しながらも、

 

追いつくためにアクセルだけを踏み続ける。

 

 

 

次第にヒートアップし、今にも事故を起こしかねない二台のカーチェイスは、

 

賑やかなれど平和だった街中を、一瞬で恐怖と混乱の世界に変えた。

 

ここで交通事故を起こせば、

 

逃走車なら追い詰められ、追跡するイブたちなら見失うだけで、

 

追う側も追われる側も、意地でも事故らない運転をせざるを得ない状況であるが、

 

そんな状況も分からないどころか、

 

数秒前まで、近くでカーチェイスが起きてる事すら知らなかった市民は、

 

突然の異常事態に、ただ慌てふためき、逃げ惑うよりほかもなく‥‥

 

 

 

二台の車は遂に、街の中心地まで進んでゆく。

 

カーチェイスを見かねた街の警察官たちが数台、バイクで追いかけてきたことで、

 

いよいよ街全体も大パニックに陥る。

 

 

イブが車を、逃走車の隣にまで追いつかせた時、

 

マーベラスは突如ハンドルを奪い、急角度で逃走車へぶつける。

 

結果、急速度で走っていた逃走車はバランスを崩し、

 

九十度近くまで横転しながら、街中の出店と衝突。

 

 

何とか追い詰めたと思ったのも束の間、

 

マーベラスは『頭を下げろ!』の一言を残し、車から飛び出す。

 

すると今度は、逃走車の運転席が開くと同時に、

 

逃亡者のサブマシンガンが、イブたちの車を蜂の巣にした。

 

 

車から離れたマーベラスも即座に反撃。

 

ゴーカイガンを連射しながら逃亡者の方へ向かおうとするが、

 

サブマシンガンの乱れ撃ちをまともに喰らうわけにもいかず、

 

マーベラスもイブも、殆ど障害物の前で屈みこみ、

 

相手が撃ち止める一瞬を待つほかない状態に。

 

 

 

市民も、彼らの周りから逃げ惑う中、

 

反対に、地元の警察バイクが彼らの下へ集まってくる。

 

だが警官たちは、逃亡者の乱れ撃ちに巻き込まれ、

 

次々とバイクから振り落とされていく。

 

 

そのうち、警官が振り落とされたバイクの一つが、

 

逃亡者の下に滑り込んでくると、

 

これ幸いと立て直し、そのバイクでまた走っていく逃亡者。

 

 

足止めに狙撃しようとするが、逃亡者との間に沢山の市民がいるため、

 

発砲できず、逃げられてしまうマーベラス。

 

逃亡者を追うため、

 

トランスポッドと呼ばれる小型転送装置を起動。

 

 

三秒後には、彼の目の前に、

 

全身は赤く、フロント部分がチーターの顔にデザインされたバイクが、

 

超高度な転送技術及びデータ再構築機能によって現れる。

 

 

 

 

こんな便利な技術が前からあったのに、

 

なんで人間や医療班を転送できる域にまで、技術開発を優先しなかったんだ‥‥

 

と、マーベラスはまた一瞬、

 

武力や攻撃要因の技術向上ばかりに捉われ、人命救助の技術発展を疎かにしてきた、

 

今参加しているチームや、

 

ひいてはあらゆる軍事産業・またそれらを指揮する政治家や関係者たちに、

 

憤怒するほどの疑問と嘆きを募らせつつ‥‥

 

 

 

 

バイクが現れるとすぐさま乗り出し、逃亡者を追いかける。

 

イブも、蜂の巣にされ見えづらくなったフロントガラスを叩き割り、

 

司令部の指示をあおりながら、乗っていた車で追いかける。

 

 

 

「分かってるわね、あのリストを失うわけにはいかない」

 

『了解』

 

Mの一方的な物言いに苛立ちつつ、

 

極力冷静に、逃亡者を追い続けるマーベラス。

 

 

 

 

バイクチェイスになったことで、

 

街中のより狭い道や、屋内へ通ずる階段、

 

そして屋上の屋根から、また隣の屋根へと、

 

まるでバイクスタントショーのように、

 

危険な逃走劇を繰り広げていく。

 

 

一方司令部は、逃亡者・マーベラス・イブの三車の位置を、

 

レーダーで確認。

 

そして彼らが移動する街の地図を見ながら、

 

逃亡者を挟みうちできる地点を分析。

 

 

司令部はイブに、

 

彼女が走っている先から少し離れた、左の道に橋があることを伝え、

 

そこで何かしら障害物を作って食い止めるよう指示する。

 

 

数分後。

 

逃亡者は狙い通り、橋の方へ向かうが、

 

イブの強引な巻き込み事故のおかげで、

 

橋の上の車たちは、パニックで渋滞を起こし、

 

逃亡者が橋の上に着く頃には、

 

さすがのバイクスタント技術でも通れないほどの、交通障害が出来上がっていた。

 

 

 

イブがこちらに向かってくる逃亡者を見つけると同時に、

 

逃亡者もイブに気づいたため、踵を返して逆走しようとするが、

 

反対方向にはマーベラスが、すぐそこまで迫っていた。

 

 

挟みうちされた逃亡者は、

 

その場にバイクを捨て、橋の上から、

 

真下の道に走っている列車の上に飛び降りた。

 

 

見事列車の上に飛び移った逃亡者を、

 

イブは銃撃するも届かず‥‥

 

と落胆しかけた次の瞬間、

 

今度はマーベラスが、バイクに乗ったまま、

 

列車の上へ勢いよく飛び移る。

 

 

バイクと共に飛び降りたことで、

 

橋のガードレールを乗り越えきれず、

 

バランスを崩して空中分解するバイクとマーベラス。

 

 

列車の外側まで弾き飛ばされそうになったところ、

 

何とか手をかけて、貨物列車の上部へと乗り移る。

 

そしてバイクも、放り出されて二・三転しつつ、

 

奇妙なほど無事に、脇道へと流れ着く。

 

 

 

 

「どしたの?」

 

「列車に乗りました」

 

「列車に?」

 

「飛び乗ったんです屋根の上に!」

 

「だったらすぐに追いなさい!」

 

 

列車に飛び乗った二人の状況を説明したイブにも、

 

急き立てるように追跡を命じるM。

 

再び車を走らせ、

 

列車の後を追うイブ。

 

 

すると今度は、司令部のレーダーが圏外表示となり、

 

三人の消息がつかめなくなってしまう。

 

 

「シグナルが消えた‥‥どうなってるの?!」

 

「今追跡中です!」

 

 

監視カメラや衛星の映像を出して、

 

三人の現在位置を把握しようとするが、

 

自分たちの技術に頼りすぎ・あるいは溺れていたのか、

 

中々外部技術や他の手段では、彼らの位置を割り出せない司令部。

 

 

 

その頃、撃たれぬよう忍びながら列車の前車両へと進むマーベラス。

 

少し先で逃亡者に見つかり、走る列車の上でまたしても障害物を挟んでの銃撃戦。

 

が、すぐにゴーカイガンが弾切れを起こし、その間に右胸を撃たれ、

 

致命傷を負うと同時に、進むに進めない状態に。

 

 

 

この致命傷は、常人なら戦意喪失ものだが、

 

それでも今、ここで気を緩めれば、

 

一瞬で命取りになるほど、今のマーベラスは危機的状況に陥っている。

 

 

と同時に、今彼が命がけで行っている任務は、

 

普段クールなMが冷静さを欠くほど、決して失敗が許されない、

 

世界の命運を分けるほどの大仕事でもあった。

 

 

だからこそマーベラスは今、

 

様々な想いや葛藤を抱きながらも、

 

その大いなる責任を一身に背負い、痛みや重圧に耐えては、

 

始末すべき逃亡者と、生死を分ける攻防を繰り広げている。

 

 

 

ふと周りを見渡すと、銃撃から身を隠していた障害物が、

 

ショベルカーだったことに気づくマーベラス。

 

相手も弾切れを起こし、弾倉を詰め替える隙をついて、

 

ショベルカーの操縦席に移動したマーベラスは、

 

アームを動かし、バケット部分で相手の銃撃を防ぎながら、

 

ショベルカーを前進させていく。

 

 

銃撃が効かず、また前に進んでくるショベルカーにも気づいた逃亡者は、

 

自分のいる車両と、一両後ろにあるショベルカーを見て、

 

この二つの車両をつなぐ連結部分に発砲。

 

 

 

二人がいる位置まで追いつき、

 

車で隣を走りながら状況を見ていたイブは、

 

マーベラスに「連結器が外された」と、インカムでサポート。

 

 

 

それを聞き、ショベルカーを前進させつつ、

 

逃亡者のいる前車両へ、アームとバケットを振り下ろすマーベラス。

 

力ずくで前車両との連結を繋ぎ止めたところで、

 

逃亡者の弾倉も底をつく。

 

 

逃亡者は銃撃を諦め、更に奥の車両へと逃げ込むが、

 

マーベラスもショベルカーのアームをよじ登り、

 

前の車両へと飛び移る。

 

そしてマーベラスが飛び移ったと同時に、

 

力ずくで連結していたショベルカーは、

 

それより後ろの車両と共に引き剥がされ、

 

その勢いで、飛び移った前車両の後ろ一部まで、引きちぎられる。

 

 

幸いにも、そこに人はおらず、人的被害は起きなかったが、

 

あと数メートルずれていたら‥‥と、

 

車両にいた乗客たちは、突然の異常事態に戦慄し、息を呑んでいた。

 

 

 

「ゴーカイレッド、あなた無事なの?!」

 

『車両を移っただけだ』

 

Mの心配も冷笑的に返すしかないほど、

 

今はただ、この先に潜む逃亡者にだけ集中するマーベラス。

 

 

 

 

「どうなってるの報告しなさい」

 

「状況説明が難しいんですが、ゴーカイレッドは追跡中」

 

 

相変わらず現在位置すらも割り出せてない司令部を横に、

 

より焦りを募らせるMを、なだめるようにフォローするイブ。

 

 

 

現場だけでも手一杯なのに、余計な気を遣わせないでよ‥‥

 

と考え事で一瞬目を離した次の瞬間、

 

暴走する列車の巻き添えを喰らった車が、

 

こちらを目掛けて飛んでくる。

 

 

 

持ち前の反射神経で、間一髪で避けたが、

 

その瞬間思わず悲鳴が出ていたため、

 

「今のはなに?」とMに聞かれるイブ。

 

「‥‥フォルクスワーゲンです、恐らく」

 

 

マーベラスとは対照的なユーモアだが、

 

皮肉なフレーズでしかやり取りできなくなるほど、

 

戦場とは、正気を保ち難い空気で充満しているのかもしれない。

 

 

 

 

 

最前列の車両まで来たものの、行き場を失った逃亡者。

 

後ろを向けばいつの間にか、マーベラスも追いついていた。

 

弾を使い切った二人が取る手段は無論、

 

高速で走る列車の上での肉弾戦。

 

言葉を交わす事もなく、

 

ひたすらに、取っ組み合い、殴り合う。

 

 

マーベラスは、情報を引き出すためにも、

 

できれば痛めつけるだけに留めたかったが、

 

ほぼ互角の実力差である逃亡者は、

 

隙あらば列車から突き落とそうとするほど、

 

他人を殺すことに躊躇ない相手なので、

 

こちらもハードディスクを取り返し次第、

 

瞬殺するほかない‥‥という殺気が溢れていた。

 

 

 

 

「狙撃できるかもしれません」

 

トンネルに入って列車を見失うも、

 

逆にこの後列車が通る道まで先回りし、

 

そこからマーベラスをサポートすることを思いつくイブ。

 

 

 

車を数分走らせ、一足早く線路を見渡せる丘に着いたイブは、

 

トランクからスナイパーライフルを取り出し、

 

列車の上に立つ人間を撃ち落とせる距離感まで照準を絞った。

 

 

 

やがて二人を乗せた列車が、狙撃できる位置までやってきたので、

 

それも司令部に伝えようしたが

 

 

「狙いきれない‥‥繰り返す、狙いを定めきれません」

 

 

取っ組み合いで、落ち着くことなく動き続ける逃亡者とマーベラス。

 

そのため逃亡者に狙いを定めきれず、

 

マーベラスに誤射してしまうことを恐れるイブ。

 

 

しかし、今ここで狙撃が見送れば、

 

今度はもう車では追いつけないほど長いトンネルが待っていた。

 

 

「すぐ先のトンネルに入ったら見失います」

 

「位置を変えられないの?」

 

「無理です、時間がありません!」

 

 

スナイパーライフルの一撃は絶大なだけに、下手な発砲はできない。

 

だが今マーベラスをフォローしなければ、

 

それこそ最悪な事態になることも十分起こり得る‥‥

 

と、究極の選択を迫られ、

 

イブはどうすべきかわからなくなっていた。

 

 

 

 

 

戦い同様、時の流れもまた、残酷なもの。

 

戦地では、迷えば迷うほど、恐れれば恐れるほど、

 

"死"は、急激に襲いかかってくる‥‥

 

 

 

 

 

「‥‥撃つのよ」

 

冷静なMの声が、イブの耳に鳴り響く。

 

 

 

マーベラスに当たる確率は低くないと伝えてるのに、

 

なぜ即座に、彼女はそんな命令を下せるのか?

 

とりわけマーベラスとの信頼が強いはずのMなのに、

 

なぜ、まるでゲームの駒を進めるかのごとく、

 

容易く"撃て"と言えるのか‥‥?

 

 

 

「早く撃ちなさい」

 

自分の耳を疑ったが、どうやら聞き間違いではないらしい。

 

 

「無理です! マーベラスに当たる!」

 

今一度、必死に、

 

マーベラスを殺しかねない狙撃の危険性を訴えるイブ。

 

 

 

「さっさと撃つの!!」

 

 

 

命令は絶対。

 

その指示と従順があるからこそ、

 

隙も作らず一心不乱に、任務を全うすることができるし、

 

結果、我々はこれまで負け知らずで、

 

各々が信じる正義や信念も貫いて来れた。

 

 

ましてや、ベテランであるMの特命。

 

彼女を信じて、今‥‥引き金を引くしかない。

 

 

 

 

 

イブは、逃亡者を目掛けて発砲。

 

 

 

 

 

司令部にも、一発の銃撃音が鳴り響き、数十秒の沈黙が続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥ゴーカイレッド、落下。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マーベラスは、イブに撃たれた勢いで列車から吹き飛び、

 

線路の遥か下にあった滝へと落下。

 

 

 

 

 

逃亡犯は、イブを横目に、

 

そのまま列車で、トンネルの闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Respect Image OP Theme【Skyfall】
https://www.youtube.com/watch?v=DeumyOzKqgI
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。