※この作品はR-18です。

アイノカタチ   作:花鳥 ユイ

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二人の邂逅

 

   二人の邂逅

 

 柔が耕作に会いにアメリカに行っている間、富士子は毎朝娘を夫の花園に任せて10kmのジョギングをこなしていた。富士子はバルセロナオリンピック後、柔道を引退して子育てに専念するつもりでいた。その事をバルセロナの時に柔に打ち明けてもいた。柔は寂しそうな顔をしていたが、富薫子の為と知ると納得してくれた。そして、オリンピックが終わり日本へ帰国した時に、夫の花園にその話しをすると、花園は少し難しい顔をしてすぐには賛成してくれなかったのだ。

 

 「富士子さん…引退についてはもう少し考えてみてくれないか?俺もフクちゃんの面倒は出来るだけ頑張って見るつもりだし、俺に至らないところがあればどんどん言ってくれて構わないっすから!」

 

 愛娘のフクちゃんの為なら、花園はすぐに賛成してくれると思っていた富士子は、夫の思わぬ反対に思わず面食らってしまった。

 

 「ど、どうして?花園さん!あたしはふフクちゃんの為に…!」

 

 花園が何故賛成してくれないのかと不満の気持ちを富士子は花園にぶつけた。すると、花園が真面目な表情をして真剣に自分を見ている事に気付き、富士子は口を噤んだ。そして、花園の意見を聞いてみようという気持ちが沸いた。

 

 「富士子さんの引退したいっていう気持ちは、猪熊は知ってるのか?」

 

 「ええ、バルセロナで話したわ。フクちゃんの為ならって納得してくれたの」

 

 「…そうか。でも今はまだ君は猪熊の側に居てやった方が良いと俺は思う。猪熊は結構寂しがり屋だろう。それにまだ猪熊は松田さんともどうにもなっていないんだろう?」

 

 そう言われ、富士子は夫の観察眼に少し驚きながらも頷いた。それは確かにその通りだったからだ。柔と花園は高校時代からの友人同士で柔道では師匠と弟子の様な関係でもあり、彼女の事はよく知っているのだ。

 

 「それに、猪熊のライバルの本阿弥さやかやジョディ・ロックウェルもすでに結婚している。彼女達にもいつ子供が産まれてもおかしくない。そうなれば最低でも1年は休まなければならないだろう。そうなるとライバルもいない、富士子さんもいないんじゃ、猪熊は柔道で独りになってしまう。それに何より…」

 

 花園は一旦言葉を切って富士子を見つめた。ほんの少しだけ顔が赤くなっているがその目はとても真剣だった。富士子は多少の不満はあったが黙って花園の意見を聞く事にした。

 

 「俺は、俺は君が柔道で輝く姿をもっと見たいし、フクちゃんにも見せてあげて欲しい!富士子さんが今引退してしまうと、フクちゃんは映像でしか君が柔道している姿を見られないだろう?それに、自分の母親がオリンピックで銅メダルを取れる程の選手だったのに、自分の為に早く引退してしまったと知ったら、フクちゃんは将来複雑な気持ちになるんじゃないか?」

 

 「…‼︎」

 

 富士子は夫の言葉に衝撃を受けた。富士子としてはもう、柔道に関して思い残す事はもう無いと思っていた。バルセロナオリンピックで銅メダルを取る事が出来て、自分には身に余る程の栄誉だった。それに、柔の事についてもどうやら長年の父親に関しての悩み事も解消された様で、その事も嬉しそうに自分に話してくれたのだ。それに、柔の柔道に関しても松田さえ柔の側にいてくれれば何も心配無いと思っていたので、自分が柔道から離れる事に関しては全く心配はしていなかったのだ。それに自分は今の事に精一杯て、将来のフクちゃんが感じるであろう気持ちなんて、全く考えてもいなかったのだ。そして、夫である花園が、自分などよりも余程色々な事を考えて気遣う事のできる人間なのだと、この時改めて気付いたのだった。

 

 「富士子さんがフクちゃんの側にいてあげたいと思うのは、母親として当然の気持ちだと思う。その気持ちは本当に嬉しいっす。でも、今すぐ決めてしまわないでもう少し考えてみてくれないか?俺も、子育ては出来る限り協力するっすから!でも、それでも富士子さんが柔道を辞めると言うなら、俺はもう反対しないっす」

 

 花園は、富士子に対してのフォローもしっかり忘れなかった。けれど、富士子にもっと柔道を続けて欲しいと思っている事は明白だった。

 

 「…分かったわ、花園さん。あたし、もう少し考えてみるわね」

 

 富士子はこの時そう応えたのだ。この後、しばらく柔道を続けるかどうか悩む事になったのだが、富士子の出した結論は’’柔道の継続’’だった。本当に悩んだが、柔の恋がなかなか進展せずに親友が元気が無い姿を目の当たりにして、少しずつ柔道を続ける事に前向きになっていったのだ。そして、決定的になった出来事が起きた。それがあの柔の国民栄誉賞授与式での一件だった。その後に親友の長年の片思いが実った事を知って喜んだのも束の間、彼が仕事でアメリカへ旅立ってしまった事を聞いた富士子は、娘の面倒もしっかり見つつ、親友の側にせめて自分がいなければ!と感じて柔道を続ける事を決意して今に至るのだ。正直、自分の柔道をしている姿を娘に見せるという事には、私なんてという気持ちも無くはない。けれど、自分が柔道を辞めた事に関して娘が責任を感じて将来苦しむかもしれない、と言われた事も、富士子の中では大きかった。

猪熊さんはしっ

 「あたし考えたんだけど、もう一度柔道やってみようと思うの」

 

 そう伝えた時の夫はとても嬉しそうで、子育てへの更なる協力を約束してくれた。親友の柔は、最初こそ驚いてフクちゃんの事は大丈夫なのかと心配されたが、夫の花園に相談してもう一度よく考えて決めた事だと言うと、親友はとても喜んでくれたのだ。彼がアメリカに行ってしまった後だったから、余計に自分が復帰した事に安心したのだろう。本当はとても寂しかったに違いない。それからは一緒に走ったり稽古をしていたが、柔がアメリカに行っている今はこうして朝一人で走っていた。

 

 (猪熊さん、松田さんと上手くやれてるかしら?やっとお互い想いが通じたんだから、猪熊さんには絶対幸せになって欲しいわ!)

 

 自分と猪熊柔の出会いは短大だった。出会ってすぐ仲良くなったが、その時にはもう柔と恋人である新聞記者の松田は既に出会っていた。当時はまだ自分は二人の関係についてはよく分かっていなかったが、今にして思えばもうこの時には始まっていたのかもしれない。柔の想いがハッキリしたのはユーゴスラビアでの世界選手権の時だったが、何故か柔は彼への想いを認めようとしなかった。松田さんなんて関係無いもん!などと言いながら、その態度は頑なだった。何故そんなにも自分の気持ちを認めようとしなかったのか、富士子には分からなかった。柔の素直じゃない性格故かとも思ったが、それだけでは無い様な気もしていた。でも、今はやっと素直になれて恋人同士になれたのだから、彼女達の事をヤキモキしながらずっと一番側で見守っていた自分は、ようやくという気持ちがあった。柔は松田が見守ってくれてさえいれば絶対大丈夫だという安心と自信が富士子にはあるからだ。けれども、松田はやっと柔と恋人同士になったと思ったらアメリカに転勤してしまった。正直な気持ちとしては松田がアメリカにいる間に柔の試合があった時、また柔が精神不安定になってしまうかもしれないという危惧も富士子にはあった。もしそうなってしまえば松田本人にしかどうする事も出来ない。そこだけは、何とかしたい気持ちが富士子にはある。

 

 (そろそろだいぶ走れたわね。フクちゃんも待ってるし帰ろうかしら)

 

 正直、どうすれば柔の試合の時に松田に来てもらえるのか富士子には分からなかった。もし松田がいない事が原因で柔が不調に陥ってしまう様な事はあってはならない。それくらい松田は柔の柔道にとって必要不可欠な存在なのだ。でも、松田がアメリカに行ってしまっていつ帰って来るのかも分からない以上、自分にはどうする事も出来ない事が富士子にはただただ歯痒かった。新しく出来てしまった悩みについて考えながら帰宅する為に踵を返した。すると少し離れたところに一人の女性が立っていて自分を見ていた。

 

 (あれは確か…日刊エブリーのカメラウーマンさんよね?取材に来たのかしら?でも、記者さんはいないみたいだけど…)

 

 不思議に思いながら何だか嫌な気持ちになった富士子は軽く会釈して前を通り過ぎようとした。

 

 「あっ、ちょっと待ってよぉ!富士子さん!あたしあなたに用があって来たのよ!すぐ終わるから!」

 

 呼び止められ仕方なく立ち止まって女を振り返った。眼鏡を掛けた胸の大きい女性だ。その女性は紛れもなく加賀邦子その人だった。

 

 「私に用事ですか?取材でしょうか?記者さんはいないみたいですけど」

 

 何だか嫌な予感がして富士子は少し態度が悪くなってしまった。

 

 「そんなに邪険にしないでよ。ここで立ち話もなんだから、公園でも行きましょ!すぐ終わるからさ、ねっ!」

 

 「あ、あたしはもう帰りたいんです!フクちゃんが、娘が待ってるんでぇ〜!」

 

 半ば強引に邦子に腕を掴まれて、富士子は公園に移動した。ベンチに座ると邦子は富士子の腕を離した。

 

 「それで一体何なんですか?話しって。早くしてください」

 

 「…今までごめんなさい!」

 

 「…は?」

 

 突然頭を下げて謝罪され、何の事か分からなずに富士子は困惑した。

 

 (急に何言い出すの?この人。私は何もされた覚え無いけど…)

 

 「富士子さんは、柔ちゃんが耕作の事ずっと好きだった事、知ってたんでしょ?」

 

 「ええ。もちろん知ってましたけど…。でも猪熊さんは本当は松田さんの事好きなくせに"松田さんなんて関係無いもん" なんて言って全然自分の気持ちを認めようとしないんですもん。もう本当に焦れったくて…」

 

 「そうだったのね…。それ、あたしが原因の1つでもあると思うわ。あたしもね、耕作の事ずっと好きだったの。だから、柔ちゃんが一人でいる時とか狙って、柔ちゃんに色々言ってたの。耕作と結婚して耕作がうちの実家の店継ぐとか、作り話したり意地悪な事もだいぶ言ったわ」

 

 その時、富士子はある事を思い出した。それはユーゴスラビアでの世界選手権の時の事だった。この加賀邦子が自分達の前に現れて、耕作は柔ちゃんの事飽きちゃったとか何とか言ってきて、その時から急激に柔の元気が無くなっていったのだ。まさか、柔が恋敵からあんな酷い事を度々言われていたなんて全く知らなかった富士子は、柔がかなり辛い恋を今までして来た事を、この時初めて知ったのだった。こんな手強そうな恋敵がいて色々ある事無い事吹聴されていたのなら、なかなか素直になれなくても仕方ないのかもしれない、と富士子は思った。と同時に今まで柔の辛さに全く気付かなかった自分自身と、柔の恋路を邪魔していた邦子に対し、何とも言えない腹立たしさを感じ、その気持ちを富士子は邦子にぷつけてしまった。

 

 「あなたが猪熊さんに対して陰で酷いこと言ってたなんて…そんな卑怯な事する人を松田さんは絶対好きになんかならないですよ!猪熊さんはずっと松田さんの事を好きだったんですよ?あなたの言葉でどれだけ猪熊さんが傷付いたか…あなた分かりますか!」

 

 「今はあたしだって分かってるつもりよ。あたしね、耕作はあたしの事を好きなんだってずっと勘違いしてたの。耕作は厳しい時もあったけど優しくてね、好きって言われた訳じゃなかったけど照れて言ってくれないだけだと思ってたわ。柔ちゃんが耕作の事を特別な目で見てるのもすぐに分かったわ。だから本当に柔ちゃんが邪魔だった。柔ちゃんと耕作が近付き過ぎない様にあたしは柔ちゃんを耕作から遠ざけようと必死だったの」

 

 「…何でそんな話し、私にするんですか?猪熊さんや松田さんに謝ればいいじゃないですか」

 

 「まあ、そうなんだけどね、でも富士子さんだって柔ちゃんの1番近くでずっと見てたんなら、思うところもあったでしょ?」

 

 確かに富士子には思うところはたくさんあった。何故柔があそこまで頑なに松田への恋心を否定していたのか、柔が素直じゃない性格だからというだけでは納得出来なくて、ずっとヤキモキしていたのだから。

 

 「あたしね、バルセロナでは耕作のパートナーに選ばれなくてね、だからバルセロナまで自分で耕作を追いかけて行ってね、それであたし、あっちでちょっとだけ危ない目に遭っちゃったんだけど、耕作が助けに来てくれてね、で、あたしもう嬉しくてその日の夜に耕作に裸でアタックしたら見事に振られちゃってさぁ〜!好きな人いるからごめんって言われちゃったのよ」

 

 (バルセロナで裸で松田さんにアタック…?なんて大胆な事する人なのかしら…?ん…?バルセロナで…あっ!まさか…!猪熊さんが濡れて帰って来た時と何か関係してるんじゃ…!)

 

 突然雷に打たれた様に富士子の頭の中にあの夜の出来事と彼女の話しが結び付いた。柔がジョディ・ロックウェルとの決勝戦前夜、プレスカードを松田に返し、自分の気持ちを伝える為に松田のホテルの部屋に赴いたのだが、柔は雨の中ずぶ濡れで歩いて帰って来たのだ。てっきり松田と幸せな時を過ごして来るものだとばかり思っていたのに、彼女は何も言わずずっと沈んだ顔をしていて、何も訊ける状態ではなかった。いったい松田と何があったのかと、心配するしか術が無かった。でも、邦子の話しを聞いた富士子は、もしかしたら松田と何かあったのではなく、邦子と何かあったのではないかと思ったのだ。その方が自分としては納得がいく様な気がした富士子は、邦子に訊いてみる事にした。

 

 「あの…もしかしてその日とか、猪熊さんがホテルの部屋に行きませんでしたか?」

 

 「…あら、察しが良いわね、富士子さん。そうよ、柔ちゃんホテルに来たわ」

 

 そこで富士子は邦子かはあの夜の出来事を聞きなんとも言えない複雑な気持ちになった。そしてそんな中でも金メダルを獲っている柔を改めて凄いと思ってしまった。

 

 「富士子さん、あたしは今はね、柔ちゃんと耕作の事凄い応援してるのよ。このあたしを振ったんだから、二人には本当に幸せになってもらわなきゃ困るの。その証拠に耕作のアメリカでのアパートの部屋に、ゴムをたくさん送っておいたから〜!」

 

 「…ええっ!?」

 

 「あら〜?そんなに驚く事無いじゃない?今柔ちゃんアメリカ行ってるでしょ?耕作に会いに,。必需品じゃないの。あの二人絶対自分達で用意なんてしてないだろうし。あたし用意周到でしょ?」

 

 それはそうかもしれないと富士子は思った。松田はアメリカ中を駆け回らなければならないくらい忙しく、柔は日本では有名であり人気者だ。ゴムなんて買えるはずも無いし、まだ恋愛面については超が付く程に初心者な彼女は、ゴムを買って準備しようとまでは思いも至らないだろう。そこでふと気付いた。何故邦子が今、柔がアメリカに行っている事を知っているのか?彼女の親友である自分と、彼女の母親くらいしかその事を知っている人間はいないはずなのに。

 

 「何であなた、猪熊さんが今アメリカ行ってる事知ってるんですか?」

 

 「ああ、だって柔ちゃんから聞いたもの。アメリカ行くって。凄く嬉しそうだったわ」

 

 その言葉を聞いて富士子は驚いた。富士子は正直に言うと今まで柔に対して嘘を吐き、酷い事を言っていた邦子に対してかなり腹立たしさを感じていた。だから邦子から嫌がらせを受けていた柔も、てっきり自分と同じ様に邦子に対して怒りを感じていて交流など持っていないと勝手に思っていたのだ。それなのに、柔はどうやら過去に自分に嫌がらせをしていた邦子と交流を持っている様だ。その事に富士子は驚きを隠せなかった。

 

 「まぁ、驚くのも無理ないわよね。普通なら嫌がらせしてきた相手と仲良くするなんてしないわよ。本当に柔ちゃんってお人好しだと思うわ。だからあたしも今までのお詫びも兼ねてめちゃくちゃ二人を応援してるのよ。あの二人って恋愛に関してはてんでダメだからあたし達が後押ししてあげないと前に進まないわよ!」

 

 「あ、それは私もそう思います。猪熊さんって本当恥ずかしがり屋だから、松田さんにしっかり甘えて来る様に口酸っぱくして言ったけど出来てるかどうか… エッチだって、せっかくゴム送ってても出来ないで終わるかもしれないですよー!」

 

 「ああ、それもそうかもね。あの奥手な二人ならあり得るわ!」

 

 富士子は、邦子の事を柔が許しているなら今更自分がとやかく言っても仕方ないと考えて邦子を許す事にした。それにかなり邦子が二人の恋愛成就の為に本気で応援してくれていると感じたからでもあった。まさかアメリカにゴムを送りつけているなんて、それも驚きだった。そして、このゴムが既に大いに役立っているとは、二人は思いもしていなかった。

 

 「富士子さんに事情話して謝るのはあたしの自己満かもしれないけど、あたしも新しい恋する事にしてね、鴨ちゃんと付き合い始めたの。だからなんかスッキリしておきたくてね」

 

 「えっ!鴨ちゃんってあの鴨田さんですか?」

 

 「そうよ。鴨ちゃん、ずっとあたしの事好きでいてくれてたんだけど、あたしが耕作の事好きだったからさ、気持ちに応えられなかったんだけど、失恋したから鴨ちゃんに応えようかなって思ってね」

 

 富士子は邦子の新しい相手にも驚いたが、まだ失恋してから日も浅いのにもう次の新しい恋人が出来ている事に衝撃を受けた。

 

 「富士子さんの言いたい事分かるわよ。早いなって思ってるでしょ。あたしだって耕作の事本気で好きだったのよ。だけど、あたしがいつまでも引きずってたら耕作も柔ちゃんも気にしちゃうじゃない?それにあたし、引きずるのも性に合わないのよね〜。だからあたしは二人の事を一生懸命応援しようって決めたのよ」

 

 そう言って邦子は明るく笑った。富士子は最初こそ邦子を嫌な人と決めつけてしまったが、根は悪い人では無いのかもしれないと思い始めた。この人も、ただ松田耕作という男を好きになってしまっただけなのだ。

 

 「ちょっと長くなっちゃったわね。引き留めてごめんなさいね。でもあたしがきちんと前に進む為にはきちんと話しをしておきたかったの」

 

 そう言うと、邦子はこれから仕事だからと言って帰って行った。富士子も急いで夫と愛娘が待つ家に帰って行った。富士子は邦子の話しを夫にもする事は無く、自身の心にだけ秘めておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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