「新しい彼女ができたの、池上クン」
飲みかけの珈琲を喉に詰まらせそうになり、誤魔化すように咳こんだ様子に女は噂になっているわよと小声で囁いた。
「結構、見られているわよ、あなた」
「そ、そうなのかい」
「真相を知りたいけど」
にやにやとした笑いで相手女性の笑顔に、これは知っているんだなと池上は小さな溜息をつきながら、木桜さんの娘だとカップに口をつけた。
本当にと疑問を含んだような問いかけに池上は何故と問いかけるような表情になった。
「実の子、なのかしら、彼女は男もだけど、女のパートナーがいたって噂もあるし、それに年、容姿からして違和感を感じない」
「それは」
「あら、もしかして」
池上は困惑した表情で友人を見た。
「彼女が娘だと言ったんだ、君だからいうが、その」
言葉が出てこないのか、見つからないのか、そんな池上の顔を見ながら、いいんじゃないと女は笑った。
「彼女が自分の娘だって言ったんでしょ、多分、あたしもそうなのねって頷いてしまうかもしれないわ」
予想もしない、いや、意外な言葉だったのか、池上は肩すかしを食らったように女を見た。
「バイトを始めて、今、元気になってきたんだ」
「病院で昏睡状態だったんでしょ、大変よね」
「で、一緒に暮らしているの」
「まさか、あの娘は一般人だよ、もし」
「そうよね、あなたは一応、芸能人、歳だって離れているからパパ活とか、愛人とか言われたら可哀想だわ」
気をつけなさいよと言われて池上は勿論だと頷き、女の顔をまじまじとみた。
忠告かいと聞くと女は友達ですからと真面目な顔になった。
「気をつけてあげてね、彼女」
「勿論だよ、彼女の娘だからね」
すると女が違うのよと首を振った。
「彼女、色々と付き合いがあったでしょ、皆が好意的だと思わないで中には恨んでいる人間だっているかも」
まさかと言いかけて池上は相手の真剣な顔つきにはっとした。
「彼女、外国に行ってたの知っていたかしら、春雨よ」
「そう、なのか、動けたのか」
「薬でね、でも、日本では駄目な服薬で費用も半端ではないらしいのよ、彼女には、そんな大金、あったとは思えないし、親戚や友人というのも考えられないし」
「恋人、それとも、あの子の父親というのは」
「母親、恋人かもしれないが」
「生きていても、死んでもなんだかヤキモキさせるわね、関わらなければいいんだけど、好き、なんですものね」
あなた派と聞かれて池上は黙りこんだ、学生時代があっというまに過ぎて、社会に出て仕事ができるようになって嬉しかった。
周りが次々と結婚して招待状を送りたいからと声をかけられて、そのとき彼女が亡くなった事、娘がいること。
そして、彼女が自分に会おうと連絡先を人に尋ねていたことを知ったとき。
その結果が、今に至るのだ。
以前、書いたものを設定を見直して書き直しです。
序章ですが、部分的にシーンを書くかもしれません。