「ロドスに異常性愛者を放てっ!」のスレ主産慎ましいモノまとめ 作:絵文字さん(フウ)=団長
執務室には大抵の場合、特定の3人が入り浸っている。部屋の主であるドクター、表向きの秘書であるラップランド、そして一見するといないように思えるがドクターが呼ぶとすぐ姿を表す護衛のレッドである。
今日も今日とて退屈な机仕事に勤しみ、理性が切れそうになるとレッドかラップランドがドクターのケアをする。それの繰り返しでロドスはいつも回っているのだ。
さて、コツコツとリズミカルな音にラップランドがドクターの方を見やれば、彼は机に手袋を脱いだ平手を押し当て、開いた指の間を刃物で順々に繰り返し刺していく、所謂ナイフゲームというものをしている。
「ドクター、もしかして理性切れかい?」
「一歩手前ってとこかなぁ、ちょっとすれば戻るでしょ」
答えるとドクターはナイフがわりのメスを止め、先ほどまで刃傷沙汰一歩手前の状況だった片手を眺めた。日焼けのない不健康な白色の肌には傷ひとつない。その事実を確認し、満足そうに再び手袋にその手を収める。
「ラップランド、手出して」
「絶対やだ」
「…………」
「…………」
沈黙。停滞した空気を裂いたのはドクターであった。
「ラップランド、手」
「嫌だあああああああああ!」
普段の彼女ならば絶対にあげないであろう喚き声が室内にこだまする。
「シラクーザで恐れられてるんだからこのくらいいいじゃん、大丈夫私これすっごい上手いから」
「シラクーザでの風評と君に痛めつけられるのを拒否するのに関係ないよね!?あとキミは上手い上で絶対失敗してくるから絶対やだ!やらない!」
声を張り上げて拒否する彼女をドクターは嘲笑しながらその姿に癒されていった。それはそれとしてラップランドの指の間に何回も刃物を通したい気分なので交渉は続ける。
「なんでそんな必死なのさ、トラウマでもあるなら話聞くけど」
「分かってるだろうけどボクのトラウマの9割はキミお手製だからね?」
「そういうのいいから」
「良くないよね?」
「あーもう面倒臭いな」
ドクターは立ち上がって一気に距離を詰めるとラップランドの左手を押さえつけ、小指と薬指の間にメスを突き立てた。
「今から30秒間、私なら動かないかな」
「ちょっと待っ」
ハイテンポでリズミカルな殺意が鳴り始めるとラップランドの呼吸は一瞬止まり、そのまま口を結んだ。根本スレスレに狙いを定められたメスの刃は五指の第一関節をに冷ややかさと危うさを演出しラップランドの脳に恐怖を反響させる。
しかし30秒はあっという間、もはや終了2秒前。そしてそこから4回目の刺突でこの行為は制限時間を迎えた。
「……あ、怪我ない」
「成功したあああああ!」
世にも珍しいドクターの大声と謎の衝撃音。後者の禍根はラップランドの手の甲の真ん中に深々と突き刺さったメス。
「え?……痛っあれ?あれ?上手くいった筈……」
「ラップランドに安寧は似合わないでしょ」
「え?……んん?」
ドクターは躁鬱患者特有の感情の乱高下を見せたあと仕事に戻った。ラップランドはそんな彼をじっと見つめたまま放心状態に陥っている。
「おかしいよね?」
返事はない。もう一度聞こうかとも思ったが、長い付き合いから意味がないことを察したので、机に磔になった左手を使わずに仕事を再開した。