――平穏な日々が一番だ
突然だが、人は誰しもそう思うだろう。
私もその一人だ、できれば戦いなど好まないし命を奪う行為もできることならしたくない。
だが、今の私の状況は平穏とはかけ離れていた。
「おい、我が妻よ……少しは夫である我に尽くさぬか」
私のベッドの上でのんびり横になっている男――英雄王ギルガメッシュ、この男とは前のレイシフトの際に借りがある。
”夫は妻と一緒に居るものだ”という無茶ぶりも、その借りを返すという意味で条件を付けて許可を出したのだが……
「ギルガメッシュ……確かに、私は少しの間なら部屋に居ても良いと言いました。ですが……ッ!」
「何故……私の部屋を勝手に改造しているんですか……ッ!!」
元々の何も置いていなかった部屋が見事に黄金色に輝き、いかにも普段のギルガメッシュらしい部屋へと変貌してしまっている。
「良いではないか我が妻よ、あんな質素な部屋より我流に改造したこの部屋が貴様には似合うぞ」
悪気があってやっているわけではないというあたりが、この英雄王の恐ろしいところである。
むしろ誇らしげに胸を張れている、それだけで拍手を送りたい気分だ。
「はぁ……前のレイシフトの時に見せたあの美しさは何処へ行ってしまったのでしょう……?」
頭を抱えながら、少し前の出来事を思い出す。
あれは確か――邪竜と相対していた時だったか、邪竜のブレスに対抗して宝具を解放……するものの押し返されて重症を負った。
もう駄目だ、と覚悟を決めていた時に現れたのがギルガメッシュ――
「(あの時のギルガメッシュはどこか違う意志を感じた……)」
普段はいい加減に戦っているギルガメッシュがあそこまで怒りを露わにするとは予想だにしなかった。
そして、その次のレイシフトには普段”我の認めた者しか抜かん”とまで言っていた宝剣エアを直ぐに抜いて、シャドウサーヴァント達を消し飛ばしてしまったあの姿は間違いなく本気の姿であることは間違いない。
やはり、あの姿を見てしまうとギルガメッシュを心の底から嫌いにはなれない。
「どうした……?我が妻よ、何か浮かないことでもあったか?」
「な、何でもありません……!」
じっと見つめられた瞳を逸らし、意識を現実に戻す。
「(はぁ……どうしてでしょうか?ついついギルガメッシュのことを考えると、うっとりしてしまう……)」
この感情はなんだろうか?と何度も自問自答するが、答えは出てきそうにない。
何度も考えてみるが、やっぱりこの感情は理解が出来なかった。
「ああ。そういえば、我はお前に何かをしてやったことがなかったな……」
神妙な顔をしながら突然ギルガメッシュはそう呟く。
今までを振り返ってみると、自分が一方的に犯されただけで、プライベートで何かをしてもらったりなどは一切なかった。
「我が妻よ、我のものとなったからにはお前に多少は褒美を与えてやろう……何が欲しい?」
欲しい物……そう聞かれた瞬間に頭に思い浮かんだのは、ライオンの愛らしい人形だった。
だが欲しいと言っても、ただ欲しいわけではない。
「どうした?遠慮するでない……お前も我と同じ『王』だったのだから欲を少しは出したらどうだ?」
「い、いえ……あるんですが……そ、その……言いづらくて……」
「なるほど……アルトリア、まさかお前が欲しがっている物は今すぐに手に入る物ではないな?」
自分の心を見透かされたようなギルガメッシュの言葉に頬を赤く染めてしまう。
「ふむ……我の読みは当たっていたようだなぁ……?我が妻よ?」
「ち、違います……私は、ただ……」
「隠さなくても良いと言ったであろう?もっと素直になれ、アルトリア……」
頬に手を当てられ耳元でギルガメッシュがささやくように呟く。
前の自分であれば、すぐさま手を払い除けて斬りかかっていただろうが、不思議とその手を自然と受け入れている。
不快感はなく、むしろ心地よさが全身に行き渡る。
「さぁ……言ってみよ、何が欲しいのだ?」
ギルガメッシュの甘い声に先程まで働いていた心の葛藤はすぐになくなり、自然と自分の思いを口に出し始めてしまっていた。
「あ……ぅ……わ、わたし……は、ライオンの愛らしい人形が欲しいです……ただ欲しいのではなくて、ギルガメッシュ――あ、あなたにプレゼントしてもらいたい……です」
私がぼそぼそと思った事を口にすると、数秒の間、ギルガメッシュは少し驚いた顔をして硬直していたが、すぐさまその顔を満面の笑みに変える。
「よくぞ言ったな、我が妻よ――ッ!その願い、叶えてやろうではないか――ッ!くく……ッ!フハハハハハ――ッ!!」
てっきりギルガメッシュは「くだらんな」と一笑するかと思っていただけに私は思わず目を丸くしてしまう。
「わ、笑わないのですか?私の願いを?」
「笑う?何故だ?我が妻の願いとならば、どんなことでも尊い願いよ……笑う奴など我が処刑してくれるわ」
曲がりなりとも自分を考えてくれているんだと、それが分かっただけで自分の胸の鼓動は自然と早くなってしまう。
「こうなれば、早く準備に取り掛からねばな……!我が妻よ、楽しみに待っていると良いがいい!」
急ぐように部屋を出ると、相変わらずの高笑いをしながら廊下を駆け足で去って行った。
「ギルガメッシュ……本当に、子供っぽい人……」
自分に少しでも振り向いてもらおうと機嫌を取る姿や、思いついたことをすぐに行動するところからは邪な念は感じられなかった。
回りくどく口説いてくる男よりも、少々強引にでも自分を求めてくる男、そんな男が自分には合っている
……そんな気がする。
「(だって、あの人とは結ばれることはなかったのですから……)」
遠い儚い記憶に潜む、赤毛の青年。
彼とは結局最後まで結ばれることはなかった。
色んな要因が絡まった結果としてあのような結果になったが、それでもどこかで恋する相手を自分は求めている。
「……もう少し貴方が私に好意を見せてくれたら、考えてなくもないんですけどね……」
この場にはいないギルガメッシュの顔を想像すると、穏やかな顔をしてギルガメッシュとの”デート”に想像を膨らませるのであった。
**
「なるほど……シミュレーションとはいえ、すごく精密に作られていますね……」
視界に広がる人々や屋台の姿を見て、思わず感嘆してしまう。
遠くの太鼓の音、そして笛の音が私の身体を揺らすが如く聞こえてくる。
「はぁ……ギルガメッシュはまだでしょうか……?折角、浴衣を着たというのに……」
この場に居ない英雄王を思うと、しょんぼりと肩を落としてしまいそうになる。
今の私の服装は、祭りに相応しい和の服。
青を基調とし、
かれこれ、待たされてしばらく経つが一向に来る気配が無い。
「(もう……ッ!気合い入れて浴衣を選んだ、私が馬鹿じゃないですか……ッ!)」
少しばかりイライラしていると、ようやくそれらしき人物が前方から歩いてくる。
いつも逆立たせている髪を下ろし、黄金色の派手な浴衣に袖を通している男を見た瞬間、それがギルガメッシュであることはすぐに分かった。
「すまんな……我が妻よ、少々……準備に手間取ってな……」
「準備……?それよりも、私をこんなにも待たせるなど、どういう了見ですか!」
「許せと言っているだろう……後で思う存分にそこらの屋台で色々な物を食わせてやる、どうだ?」
「むむ……!それなら、仕方ありません……許しましょう……」
食べ物を引き合いに出されては私もそれ以上は追及はできない。
……少しギルガメッシュに負けた気もするが。
「しかし、アルトリアよ……貴様のその姿はとても美しいな……我も見惚れてしまいそうだ……」
「……ッ!それは良かった……です……」
素直に褒められた事もあってか、私は思わず頬を赤く染めてしまう。
「ギルガメッシュもすごく、浴衣は似合っていると思います……」
「おお……!そうか、そうか……ッ!我が妻に褒められるとは我も鼻が高いというものよ!」
ギルガメッシュもかなり気合いを入れて選んだ服装だったのか、珍しく顔を少年のように綻ばせる。
私はそんなギルガメッシュの顔がすごく愛おしい物に映った。
『粗暴で乱暴なギルガメッシュ』はいつの間にか消え、私の中では『頼もしくて、素敵な笑みを見せるギルガメッシュ』に変わっていた。
「それでは、存分に楽しむとしようか……!我が妻――アルトリアよ……!」
「そうですね!ギルガメッシュ!行きましょう……!」
横に出された手を繋ぐと、そのまま屋台が立ち並んだ通りへと2人で駆け出して行った。
「まずは、お前の願いから叶えてやらねばな……しかし、獅子の愛らしいぬいぐるみなど置いてあるものなのか?」
シミュレートされた大勢の人混みの中で迷わぬよう、私の手をしっかりと握り締め、ギルガメッシュは私の欲しいと言った物を必死に探してくれる。
普段、私以外に物事を頼まれてもやろうとしない彼が私の為にわざわざ労力を割いているところを見ると、自分がギルガメッシュをコントロールできているようで不思議と嬉しい気持ちになる。
「マスターから聞いたところによると、もっと奥の屋台にあるそうですよ」
「そうか……少し面倒ではあるが、我も妻の為に骨を折ってやるとしよう」
やれやれと言わんばかりにため息をつきつつ、ギルガメッシュは立ち並ぶ屋台の奥へ奥へと進んで行く。
りんご飴、わたあめ、焼きそば、ポテト……奥へ進んでいくと食べ物の屋台が私の視界へと入り、身体が無意識にそちらの方へと進みそうになるが、何とか理性で踏み止まり、再度ギルガメッシュの手を握った。
そうしてしばらく歩いていると、ようやくお目当ての屋台が見えてきた。
「あれか?お前の言っていたものは?」
そう言って、ギルガメッシュの指差す方にあったのは、紛れもなく私の目的のものがある”くじびき”と書かれた屋台。
あそこに私の欲しいぬいぐるみがあると、事前にマスターへ聞いていたので間違いないだろう。
ならば、一刻も早くぬいぐるみをゲットし、食事……いや――ギルガメッシュとの一時を楽しむのだ。
「早く!早く!早くしないと、私の欲しいものがなくなってしまいます!」
「……っ!?ま、待て!我の手を引っ張るな……ッ!」
カルデアに来てから、楽しいことは食事ぐらしかなかったが、今となってはギルガメッシュと居る時間も楽しく思えてしまう……悔しいが。
でも、悔しく思っていても、彼と居る時間は自分が少女に戻った時のように純粋な気持ちになれる。
それが、今の私の幸せだった。
**
「んっ、はぐ……っ!はぐ……ッ!美味しい……やはりマスターに聞いていた通り美味ですね」
屋台のある通りから少し離れた公園のベンチにて、ギルガメッシュにプレゼントしてもらった獅子のぬいぐるみを膝に置き、私は屋台のグルメを存分に満喫していた。
フランクフルト、リンゴ飴、わたあめ、焼きそば……等々を器用に両手で持ちつつ、私は幸せな気分でそれらの食べ物を頬張っていたが、一方隣で座るギルガメッシュの方はどうも幸せな気分ではないらしい。
「我は、疲れた……疲れた……」
いつもの自信に溢れる表情は鳴りを潜め、少しばかりげっそりとした顔でベンチに腰掛けるギルガメッシュ。
――もっと、しっかりしてください!
そう言いたい気持ちはあったが、ここまで私の我儘に付き合ってくれたのだ。少しぐらいは休ませてあげるべきだろう。
「(しかし……相変わらず行動力が凄いですね……)」
ぬいぐるみをくじで引き当ててもらった後、私が歩きながら食べたい物を呟いていると、ギルガメッシュは私に”待っていろ”とだけ言い残し、驚くことに数分後――呟いていた屋台の食べ物を全て胸に抱えて持ってきてくれたのだ。
しかし、流石にギルガメッシュも数分で複数の店を回るのは骨が折れたのか、こうして私の横で意気消沈した様子でベンチに座り込んでいる。
「(不思議です……なぜ、ギルガメッシュはここまで私の為に動いてくれるのでしょう?)」
特段深い意味はないが、私の中で自然とそんな疑問が湧いた。
本来……というより、私の知るギルガメッシュは基本的に他者の為に積極的に動くような人物ではないはずだ。
マスターや一部の英霊を覗いたほとんどの英霊を”雑種”と呼び、あまりカルデアの英霊達と親密な関係を築けていないというのは見ていて分かった。
だというのに、どうして私を特別扱いするのか。そのことがどうしても気になってしまい、気付けば私は思ったことを思ったままに言葉へ出していた。
「あの……ギルガメッシュ。一つだけ聞いてもいいですか?」
「……なんだ?我は疲れたのだ、下らぬ小話なら後で――」
「私のこと、愛してます?」
特段何か含みを持たせたわけでもない、心の底からの疑問。
私としてはそんなつもりで発した言葉であったのだが、それを聞いたギルガメッシュの顔は少しばかり不機嫌そうに変わった。
「何故、そんなことを聞く?」
「あ、いえ……貴方が私に色々としてくれるので、本当に私を愛しているのかと思って聞きました……気に障ったようなら、ごめんなさい」
一旦頬張っていた食べ物を横に置き、宥めるようにしてギルガメッシュに言葉を掛けるものの、やはり彼の表情は不機嫌で少し怒っている様子であった。
――何か癪に障る事でも言ってしまったのだろうか?
私は必死に思い当たることはないかと思考を巡らせるが、別に彼を怒らせることは一つも言っていない。
「(私から聞かれたのが嫌だったのでしょうか?もしかしたら、自分で言いたかった……?)」
怒っている理由を無理矢理考えてみても、ギルガメッシュがその程度で怒るわけがないとしか思えないものばかりである。
そんなことをあれこれ考えていると、何やら呆れた様子でギルガメッシュがゆっくりと私の方へと顔を向けた。
「我が妻、アルトリアよ。貴様がそこまで鈍い女だとは思わなかったぞ……貴様はもっと聡い女だと思っていたのだがな」
「ど、どういうことです!私が賢くない、馬鹿な女だとでも言いたいのですか!?」
「はぁ……ここまで言って分からぬとは……お前には、身体に教え込んだ方が早いだろうな」
含みを持たせた言い方をし続けるギルガメッシュに反論の一つでも言おうとした時、突然――私は顎を掴まれた。
そして、首を傾げる暇もなく次の瞬間……ギルガメッシュが私の唇を奪っていた。
「ん……っ!?んん――ッ!??」
抵抗する間すら与えられぬまま行われた接吻は、とても激しいものであった。
最初は驚きのあまり咄嗟にギルガメッシュから身体を離そうとしたが、ギルガメッシュはそれを許さぬとばかりに私の顎を掴んでいた腕はそのままにしつつ、片方の腕で私の身体を自身の傍へと抱き寄せ接吻を続ける。
――ああ、気持ちいい……
昔の私なら確実に嫌悪感で頭をいっぱいにしていただろうが、今の私はギルガメッシュからの接吻を存分に楽しみ、快感を貪ってしまっていた。
「(不思議です……こんなに接吻が気持ちいいなんて……)」
ギルガメッシュと舌を絡ませ合い、唾液を交換する度に、頭へ電流が走ったような快感がくる。
彼の顔を見ながら接吻をするだけで、私の下腹部が疼いてしまうのだ……
「もっと、もっと……してください」
「言われずともしてやる」
私が顔を蕩けさせながらギルガメッシュへ呟くと、更に接吻の激しさは増した。
「ん……れる、れりゅ……」
「……ん」
淡々と接吻をこなすギルガメッシュに対し、私は娼婦のように厭らしく舌を積極的に絡ませ、下半身に走っている疼きを誤魔化そうとする。
だが、こうしてギルガメッシュと接吻をすればするほど疼きは強くなっていくばかりで、私の頭の中はすっかり秘部を弄りたいという欲でいっぱいになってしまっていた。
「ふぅ……もう良かろう前座は。これから貴様の身体に――ふっ、準備万端のようだな?」
唇を離したギルガメッシュが私に問い掛けるように笑うと、私は無言でこくりと頷いた。
その時の私は、きっと浅ましい雌の顔をしていたのだろう。
**
「ここで、するんです……か?」
ベンチの近くにあった木へ前屈みさせられ、尻をギルガメッシュの方へと突き出す私。
既に浴衣の帯を解き、中に着ていた下着も脱いだ今の自分は変態と言われてもおかしくない程に肌を露出させている。
透明な液を垂らす淫らな秘部に、あまり大きいとは言えない乳房。
そんな情けない姿を晒しているにも関わらず、ギルガメッシュは真剣な眼差しを私へと向けた。
「ああ、ここでする。別にいいであろう?お前のそこも待ちきれぬようだしな」
「……わ、分かりました」
「だが……その前に、一つやっておくべきことがある。少し待て」
ギルガメッシュがそう言うと、不意に自身の蔵から焼き鏝のようなものを取り出す。
それは、以前に私の下腹部へ焼き印を付けたものと同じものであった。
「我も最初はどんな手段を使ってでもお前を手に入れようと考えていたが、もうそんな気も失せたわ。よって……こんなものは――要らぬ!」
最後に語気を強めたと同時に焼き鏝を地面へ落とすと、ギルガメッシュは間髪入れずに蔵から宝剣を取り出し、その焼き鏝を真っ二つにしてしまう。
すると、私の下腹部の疼きが一気に収まり、下腹部にあった淫紋も跡形もなく消え去っていた。
「これで良いな……我が妻よ」
「ぎ、ギルガメッシュ……どうしてこんなことを……?」
「どうしてと聞かれても理由は特にない。単にお前を我の手で物にするのに、あの玩具は不必要になっただけのこと……要するに我の気まぐれだ」
首を傾げる私にそれだけを言い、ギルガメッシュは自身の浴衣の帯を外し、浴衣の間から男性器を露出させる。
既にギルガメッシュの逞しい男根は限界まで勃起しており、少し苦しそうに思える程に反り返っていた。
――やっぱり、大きい……
カルデアに来てから散々ギルガメッシュと交わったせいか、私は男性器を見ただけで気分を高揚させ、すぐに淫らなことばかりを考えてしまう。
もう既に淫紋も消えているのに、そんなことばかり考えてしまうということは、私が本心から彼と交わることを望んでいるに違いない。
「来てください……ギルガメッシュ」
熱っぽく私が彼の瞳を見て呟くと、ギルガメッシュは私の秘部へと男性器をあてがい……そして――一気に私の膣へと男性器を沈み込ませた。
「――ッ!入っ……た……ぁ……!」
何度もしているおかげか、やはり痛みはない。
だが、身体全体に走る快感は今までの比ではない程に激しく感じる。
「……っ!最初から激しくするぞ、よいな……?」
「は……はい……っ!」
ギルガメッシュの言葉に頷いた途端、その言葉通りに男性器の動きは激しくなる。
それは今までの彼からは考えられない程に乱暴で、快感を与えようとする動きというよりは、自身で快感を貪ろうとしているような腰の動きであったが、私にとってそれがたまらなく気持ちよく思えてしまう。
「あ……ッ!ん……っ!イク……ッ!!」
膣の奥を亀頭が触れる度に声が漏れ、竿が膣の中で擦れる度に絶頂し、秘部から愛液を垂れ流してしまう情けない自分だが、当の私はそのことを全くもって気にせず、ただひたすらにギルガメッシュとの行為を受け入れていた。
――もっと、もっと……ッ!
腰が抜けそうな快感が全身に襲い掛かって来るが、それでも私は本能的に僅かだが腰を揺すって彼の男性器の感触を存分に味わおうとしてしまう。
はたまた、中に出してほしいとすら思ってしまった。
「(中に出されたら、もっと気持ちいいのが……でも――)」
膣に精液を出す行為は子を宿す為のもの……いくらサーヴァントの身体は妊娠しないと言っても、元は宿敵のような相手においそれと膣に精液を出されたくはない。
過去に無理矢理膣へ出されてしまったことはあったが、今は自ら望んで行為に及んでいる状況で彼の精液を受け入れてしまうのは、少しばかりではない嫌悪感が心の奥底から湧いてくる。
だが、反対に得体の知れぬ悦びの感情も湧き上がってきていた。
「(ギルガメッシュとの子供……赤ん坊……)」
少し前の私であれば考えることすら悍ましかった、ギルガメッシュと子を成し本当に妻になるという選択肢。
私の中では初めからそんな選択肢は無いに等しいものであったはずだが、彼とこの数日を過ごす間に”それも悪くないな”と思う自分が居り、現に私は自分がお腹を膨らませた姿を想像して興奮を覚えている。
それは、紛れもなく彼に恋心を抱いている証拠だ。
「(ああ……幸せ、こんなに幸せな気持ちになったのは何時ぶりでしょう……?)」
男性器に膣を突かれる感覚に身を任せ、押し寄せる快感に幸福を感じてしまう私は、いつの間にか表情を笑顔にしていた。
「ぎ、るがめっしゅ……もっと、来て……私の膣に……出して……」
「……っ!?良いのか……?」
「ええ、出してくだ……さい……っ!」
若干の戸惑いを見せるギルガメッシュに微笑みかけると、それに応じるかのように腰の動きが激しくなる。
そして、ギルガメッシュの顔も満足した笑みへと変わった。
「まさか、こんなにも早く我が妻の可愛らしい姿を見れるとは思わなかったわ……ッ!!アルトリアよ……存分に快楽を味わうがよい……!」
私の腰をがっちりと掴んで息を荒くする彼の様子からして、すぐでも射精へ至ることは間違いない。
元々固くしていた男根を限界まで硬化させ、私の子宮を正確かつ激しく突いてくる。
「……ッ!あ……っ!……ッ!……ッ!!」
何度も自分の中で”サーヴァントは妊娠しない”と言い聞かせているはずなのに、ギルガメッシュが私を孕ませようとしているように思えてしまう。
それだけギルガメッシュが私に向ける情熱は強く、愛を感じるものだった。
だからこそ、私もそれに応えたいと思い”膣に出して欲しい”と言ったのだろう。
「(気持ちいい……!気持ちいい……ッ!気持ちいい……ッ!!)」
快感から何度も身体の体勢を崩しつつも、何とか木の幹へとしがみつき、ギルガメッシュの男性器を受け入れる私は瞳から涙を見せ、口からは涎を溢す情けない姿を晒している。
でも、構わない。円卓の騎士達が見れば失望してしまうであろう姿を見ているのは、目の前の彼だけなのだから――
「……そろそろ出すぞ……ッ!覚悟は良いな……ッ!?」
「はい……ッ!いっぱい、いっぱい、出してください……ッ!!」
ギルガメッシュの言葉と共に、私の膣を突いていた男性器の動きが小刻みなものへと変わる。
その動きは過去に中へと出された経験から、もう射精する一歩手前の状態で間違いない。
「(はぁ……っ!はぁ……っ!中に出される……怖い。でも、嬉しい……ッ!)」
今まで散々ギルガメッシュに弄ばれてきたことが私の中から霧散していき、気付けば彼に命懸けで守ってもらったことや共に過ごしたことしか思い出せなくなっていた。
こうして今、ギルガメッシュと交わって快感を味わう度に彼への好意……そして”彼の子を孕んでみたい”という気持ちが強くなっていき――
「くっ……ぅ……ッ!」
「……ッ!!あ――き、た……ぁ……」
唐突にギルガメッシュの腰が止まると共に、ゆっくりと私の膣へと精液が流れ出す。
前に犯された時とは違い、じんわりと精液の熱が下腹部へと広がり、それに伴う快感も穏やかなものであった。
とはいえ、彼の男性器が吐き出す精液は一瞬の内に私の子宮をたっぷりと満たし、収まりきらなかった精液は地面へと零れてしまう。
「(ぁ……もったいない……)」
快楽の余波で身体を小刻みに痙攣させ、視界がぐらつく中でも、つい私はそんなことを考えながら自身の膣から滴る精液を呆然と見つめていた。
そんな疲れ果てた私を、ギルガメッシュは気遣うようにして頭を優しく撫でてくれる。
「良かったぞ、我が妻よ……今までで最高の交わりであった」
「はい、私も気持ち……良かったです……」
「そうか……なら、我もここまで交わりに全力を出した甲斐があったものよ」
おそらく今までで一番幸せな顔をしているだろう私の顔を見つめ、柔らかい笑みを見せるギルガメッシュ。
――ああ……貴方は、そのような顔もするのですね……
これまでギルガメッシュの傲慢で非情な面しか見てこなかったが、心を許した人には素敵な笑顔を見せてくれる……そんな彼の一面を知ったことで、ますますギルガメッシュに対しての気持ちが強くなっていく。
「ギルガメッシュ……最後に、接吻させてください……」
「ああ、よいぞ……」
高鳴る鼓動のままギルガメッシュと唇を合わせたが、意外にも彼との接吻は、激しいものにはならなかった。
「ん……れる……んっ……」
「ん」
最初は舌を激しく絡ませようとしていたものの、彼の落ち着いた接吻につられ、私は徐々に舌を絡ませることを止めてしまう。
彼の……ギルガメッシュとした接吻の中では一番と言っていい優しい接吻は、一瞬交わったまま接吻をしたことを忘れかけてしまう程に愛を感じるものであった。
そして、唇を離し接吻を終えると、いつの間にか高鳴っていた心臓の鼓動は落ち着きを見せていた。
「(ああ……もっと、もっとしていたい……)」
彼の唇が私から離れてしまうことが寂しく、思わず切ない気持ちになる。
もっと接吻をして、ギルガメッシュの温かさを感じていたいと心の底から思ってしまった。
本当は嫌いで、鬱陶しいとすら思っていたはずの彼と再び交わり、白くてドロドロした熱い精液を膣へ何度も出してほしいという願望を抱いてしまう。
「(妻になれば……もっとしてくれるのでしょうか……?)」
生前にギネヴィアと結婚はしていたが、彼女とこのような性的な関係を結ぶことは最後までなかった。
だからこそ、こうして英霊となってから男性と交わりたいという願望を抱いてしまい、遂には妻になるのも悪くないと考えてしまう私が居る。
それほどまでに彼の印象は、あの出来事があってから私の中で変わりつつあった。
「(ギルガメッシュ……貴方が本気で私を愛してくれるならば、私もそれに応えましょう……必ず――)」
前に彼が言った”花嫁になれ”や、”我の女になれ”と言った言葉をふと思い出して笑うと、私はギルガメッシュの顔を見つめつつ、密かに心の中で決意を固めるのであった。
**
ギルガメッシュとの少々刺激的なデートを終えて、数日が経った。
あれからアルトリアとギルガメッシュの間には特段珍しいことは起きておらず、いつも通り求められればマスターのレイシフトに同行する毎日が続いている。
強いて変わったことを言うならば、ギルガメッシュが傍に居てもアルトリアは嫌な顔をしなくなったことだろうか?
「今日は、ご飯何かなー?」
鼻歌を歌いながら食堂へスキップしながら入ってきたのはマスターであるオレンジ髪の少女……藤丸立香。
今日はレイシフトの予定が無く、簡単に書類をまとめる仕事だけであった立香は、一足早く食堂へと足を運んでいた。
時間としては昼前ということや、いつもは食堂に居るエミヤが不在ということもあってか、普段は賑わっているはずの食堂にはあまり英霊の姿は見当たらない。
「えっと、とりあえず席はどこに座ろうかな……って、え……!?」
のんびり座る席を探そうとした立香がふと食堂の奥へと目を向けると、そこには思わず目を疑ってしまう光景が広がっていた。
「食事か……サーヴァントの身であれば、摂る必要もあるまい」
「そんなこと言わずに、ほら……この肉など美味しいですよ」
「むっ……そうか。お前がそう言うなら食ってやろう」
唖然とする立香が見つめる先で、仲睦まじく食事を共にしていたのはギルガメッシュとアルトリア。
立香の知る限りでは、アルトリアはギルガメッシュをあまり好いてはいなかったと思うが、どういう心境の変化なのだろうか?
動揺する心を抑えつつ、二人からは見えない死角の席に座って観察するが、どうやらアルトリアは嫌々ギルガメッシュと一緒に居るわけではないようだ。
むしろ、その顔は少しだけ赤くなっており、嬉しそうにしているようにも思えた。
「(あ……そういえば、二人はシミュレーションルームでデートしたんだったね……)」
数日前にアルトリアとギルガメッシュ両方からシミュレーションルームの利用の許可を求められたことや、アルトリアに何かと日本の屋台のことについて聞かれていたことをすっかり忘れていた立香は、ようやく二人の仲睦まじい姿に納得がいった。
「(まぁ、あの出来事があってからアルトリアも、なんか変わった気がするしな……)」
口では言い表すことはできないが、度々アルトリアを観察していた立香には、彼女のギルガメッシュに対する目が変わっていたことだけは確かに認識していた。
最初の頃は、とにかくギルガメッシュから離れようとしていたアルトリアも、思えば数日前ぐらいから嫌な顔をしながらではあったが、自身の部屋に入ることを許していた。
それを踏まえて考えると、今のアルトリアとギルガメッシュの二人は、数日前から関係を一歩……いや、二歩三歩と進めたのだろう。
「(良かった……二人共仲良さそうで)」
少し前まではアルトリアがギルガメッシュをゴミを見るような目で見ているということもあるぐらいには、最悪な関係性を築いていた二人があそこまで親密な仲へ発展しているなど予想もしていなかった。
一時期はギルガメッシュに”アルトリアへの接近禁止”と令呪をかけようかと真剣に考えていた立香だったが、もうそれも必要ない。
「あっ!ギルガメッシュ……!それは私のです!!」
「ん?ああ、すまんな。腹が減っていて……つい食ってしまったわ、許せ」
「ッ……!!ギルガメッシュ……!やはり私は、貴方のことが嫌いです!」
「騒ぐな、騒ぐな。たかが食い物の一つや二つのことで文句を言っていては、王の名が廃るぞ?」
相変わらず仲が良い様子の二人を見つめつつ、立香は席から立ち上がり、身体を食堂の出口の方へと向かわせた。
本当は小腹が空いていたはずの立香であったが、アルトリアとギルガメッシュの幸せそうな顔を見ているうちに、何かを食べようという気は失せてしまった。
それよりも今はただ、この場から離れて食堂に作られた甘酸っぱい雰囲気を怖さないことに努めよう。
「……お幸せにね、二人共」
そう一言呟き、立香は食堂を後にした。
二人の幸せを願って――