転生者は天国へ行きたい 作:オーバーヘブン
天国へ行く決意をしてから数十年の月日が流れた。
僕が産まれた時代はまだ隠れ里が出来る前の時代だったらしく僕が表では宗教を創立し、裏で術の研究を始め十数年が経ってから木ノ葉隠れの里が出来た。
どうやら僕は火の国の出身だったらしく、運が良い事に二代目火影と友人関係になれた。
そして火の国である程度の地位を得た事で彼の持っていた禁術を知る事が出来た。だけどそれ以上に良かった事は転生術に対する知識だった。
原作においても砂隠れの里で己生転生という術が開発されていたから、輪廻眼の外道・輪廻天生の術が無くても人間を蘇生させる事自体は可能なのだろう。ただ輪廻眼無しの転生術は死体や魂を入れる器が必要不可欠だから、そういう意味では輪廻天生は最強の転生術だろう。
尤も、転生術の最大のリスクである術者の命と引き換えというのは変わらない絶対の法則だし、器も穢土転生で用意出来るからそこまで変わりはしないか。
いや、それでも大勢の人間を一度に蘇生できるのは最強か。
まあ、転生術についてはこれぐらいにして、時間停止の術は木ノ葉隠れの里が出来たのと同時に完成した。
これについては意外と早く出来た。チャクラを時空間忍術を応用して光速にする事で時間停止を実現させることが出来た。そのついでに時間に干渉できるようになった事で物質の時間の流れを停止させる術も完成し、自分の身体の成長を止める事が出来た。
おかげで不老になれたのは良い事だ。尤も、これを維持するのにチャクラをめちゃくちゃ使うのはいただけないが。自分のチャクラ量が多いから成立しているだけで、不死を求めている大蛇丸が使ったら一日も持たないだろう。
僕も老いを止めている間は他の術の大半が使えなくなるから戦闘なんてまず無理だ。
「長所と短所は表裏一体、本当にままならない話だよ」
うちはマダラがやっていたように蘇る方法も考えておかなければいけないか。
そう考えていると隣に座ってる少女が話しかけて来た。
「どうしたんだってばね?」
「いや、何でも無いよ。色々とあって疲れちゃってね。クシナちゃん」
隣に座っているのはうずまきクシナ。
いずれ主人公であるうずまきナルトを産む事になる少女だ。
そしてここは渦潮隠れの里。彼女はまだ木ノ葉隠れの里に引っ越しておらず、まだ幼い時だ。
彼女こそ僕の目的であり、後の為に楔を打ち込んでおきたい相手でもある。
「僕もそろそろ帰らないといけないから」
「えっ、何でだってばね?」
「僕は弱いからさ。昔は忍びから忍術を教わってた時もあったけど、教えてくれた人から忍びの才能が無いって言われちゃったからね。辞めたんだよ」
クシナは僕が居なくなる事が寂しいのか不貞腐れた顔をする。
ここ暫くの間、この渦潮隠れの里に滞在して良かった。お陰でで彼女と良い関係を築けた。
「それにそろそろ結婚相手を見つけるように言われてるからね。はぁ…………」
「ふうん。私がなってあげても良いってばね!」
「はは。ならきみが大人になった時に迎えたいくよ」
「むぅ、子ども扱いして!!」
子どもをあやす様にクシナの頭を撫でながら二つのある呪印を気づかれない様に刻む。
触れても他人に見えない様に念入りに組んだ。
取り敢えずこれで準備は完了した。
内心笑みを浮かべながら、もう暫く滞在した後渦潮隠れの里を後にした。
※
クシナと別れてから十数年の時が流れ、木ノ葉の里に九尾が襲撃したという事件が発生した。
それを聞き、僕はようやく天国に行くために必要な物を作れると喜んだ。
うずまきクシナは主人公であるうずまきナルトを産んだ。それは救世主を産んだ聖母とも呼べる存在でもある。
なら彼女を蘇らせて僕と子どもを作り神の教えに忠実になるように育て上げれば条件は達成出来るようになるのではないか?
必要なのは友だが、条件を満たせば親子であっても問題なく行ける筈だ。
「飛雷神の術」
幼少の頃に彼女に刻んだマーキングを使い、クシナの亡骸を自宅に呼び寄せる。
そして現れた彼女の肉体をチャクラで覆い、時間を巻き戻す。
「さて、後は蘇生する為に転生術をっと」
地下を降り、この前捕らえた山賊を一人連れて来る。
幻術の支配下に置かれている為、彼の意識は朦朧としていて僕の命令に従う。
「じゃあ彼女に転生術を使う様に」
「…………分かり、ました」
山賊が僕の開発した転生術、彼岸転生を使う。
するとクシナの顔に生気が戻り、逆に山賊から生気が失われて行く。
そしてクシナが呼吸を始めるのと同時に山賊は息を引き取った。
「うん。呪印はまだ刻まれてるな」
飛雷神で山賊の亡骸を海の中に飛ばしながら彼女の頭を確認する。
自身の刻んだ印がまだ残っている事に安堵しつつ、印を組んで呪印を発動させる。
「あ、うぁ…………」
呪印の効果が発動した事でクシナは呻き声を上げる。
二つの呪印はそれぞれ彼女の意思と行動を縛る為のもの、そして彼女の記憶を封印するものだ。
本来なら色々と手間がかかってしまうが、彼女が幼少の頃に脳に直接自身のチャクラを植え付けている為、ある程度は自由が効く。
頭に直接刻み付けた為に思考をある程度操作する事も出来るし、記憶の一部のみを封印したりも出来る。
こうでもしなきゃ彼女は抵抗するだろう。と、いうか抵抗するに決まっている。
幼少期の時に結婚の約束をした男が、既に既婚者であるにも関わらず、別の男の子を産ませようとしているのだから。死んでいても蘇らせて略奪婚しようとしてると、字面だけを見れば恐怖を覚える事だ。
まあ、子どもの頃の話とはいえ、迂闊に結婚の約束をした彼女が悪い。
僕は有言実行しに来ただけだ。
「まあ、流石に今すぐ手を出すつもりは無いけど」
うずまきナルトを産んでから暫くの間は身体を休めなければいけない。
穢土転生体で蘇生させれば別かもしれないが、生け贄を二人も用意するのは少々手間がかかる。
と、いうか呪印とかも本当に手間がかかり過ぎる。
別天神があればそんな手間を掛けることなく、操る事が出来るのに。
「うぅ、ここは…………」
「気が付いたようだね」
意識を取り戻したクシナに語りかける。
目覚めたばかりのせいか、それとも蘇ったばかりのせいか頭が回っていないみたいだ。
とはいえ、呪印や封印はきちんと作用しているのが見てわかる。
「久しぶりだねクシナちゃん。僕の事は覚えてる?」
「えっ、あっ…………子どもの時の!」
「その様子だと大丈夫そうだね。でもビックリしたよ。クシナちゃんが家の前で倒れてたんだから」
僕の言葉を聞いてクシナは少しだけ顔を顰めながら頭を抑える。
現在、彼女の記憶の中からうずまきナルト、波風ミナト、そして九尾と九尾の人柱力といった情報が消えている。
そして僕の言った話を信じられるように呪印で操作している。
「何があったかは聞かないよ。忍びって大変らしいし。でも暫くはここで傷を癒していきなよ」
「あっ、うん…………」
困惑するクシナを尻目に僕は部屋を後にした。