ネオ・アルカディアの終焉を目の当たりにした。
英雄、エックス様を滅ぼされた人間たちは民衆たちはDr.バイルを持ち上げた。
その結果齎されたもの。
それは恐怖政治であった。不穏分子と断じられた者はレプリロイドのみならず人間すらも処分を始めた。
レプリロイドに対する扱いが元々ぞんざいだったフシこそあれど、それが目に見えてわかりやすい形で現れ、人間すらいとも容易く武装したレプリロイドに殺されていくのをあなたは目の当たりにした。
四天王も、エックス様もいなくなったことで混乱は増しテロリストたちが独自に入手した情報がネオ・アルカディアの民衆にも流入するようになった。
当然、流入し始めた時点ではこれまで生きてきた環境を覆すような話だ。鼻で笑う者も多かった。
ゼロが実は妖精戦争やイレギュラー戦争を終結に導いた存在だとか、今の指導者ことDr.バイルが6割の人間を死滅させたとか。
荒唐無稽な話があるかと。
あなたは情報ではなくただ、レヴィアタンを信じた。
彼女がネオ・アルカディアを裏切るなんてことは何かちゃんとした理由があるからに違いないから、と。
あなたはただ、彼女の帰りを待ち続けた。
表向き、四天王は叛逆したイレギュラーとして報道されていた。
彼女はそれなりに上手いこと誤魔化してくれたからか追及はあなたに向くことは決してなかった。
今彼女は何をしているのだろう。
今もどこかで戦っているのだろうか。それを知る術は今のあなたにはなかった。
◆◆◆◆◆◆
あなたの中で決定的に何かがキレたのは、それから数ヶ月後のことだった。
あなたは以前の仕事とは比べ物にならないほど良い職場を手に入れてそれなりの生活を送ってきた。
けれども、職場にいた人間の同僚が。
そして、警備のパンテオンの友人が。
ある日突然、兵士に連れて行かれて殺されてしまった。罪状は国家反逆罪だった。
まるでおとぎ話の悪党のような手際で。裁判なんて形式上でしかない。
かけられればほぼ死刑だ。
ドサ袋に詰められていく友人の姿を見ながらあなたは恐怖した。
彼らが何をしたのだろう。
確かに愚痴っぽいところはあった。エネルギーの供給制限がいよいよキツいしやってらんねぇと嘆くパンテオンの友人やら、冗談でネオ・アルカディアを出て行ってやろうか。とか言っていた人間の友人。
でも、彼らがイレギュラー扱いされるようなことをしたわけでは無い。
もし彼らがイレギュラーならば、今こうしてレヴィアタンを見逃した自分はなんだ。
Dr.バイルの怨念があなたの周りにまとわりつき始めた頃。
周りにネオ・アルカディアから出ていこうという話が回り始めていた。
けれども、ネオ・アルカディアを出て外で生きようとする者すら容赦なく殺されていく事実は、そう現実が優しくないことを突きつけているようだった。
あなたがネオ・アルカディアを脱走したのはしばらくしてからだ。
レヴィアタンが帰ってくることを期待してももう無駄なことはなんとなく分かっていた。
行き先は分からない。
ネオ・アルカディアから抜けた先に人の生きる場所なんてないのかもしれない。
けれども。
あのままDr.バイルの下で生きているともう彼女には会えない気がした。
行けるところまで、行くこととする。
ネオ・アルカディアを抜け出した先に待っていたのはかつての大戦で大惨事を起こした宇宙コロニー落下跡地だった。
ユーラシアコロニー。というらしいが、これが地球に落ちたのはあなたが生まれるよりずっと昔の出来事だ。
テロリストのレプリロイドが占拠し、コロニーを地球に落とし多くの人間とレプリロイドを犠牲にしたという。
そんな
そんな場所、100年以上経過しても不毛の地のままだろう。そう誰もが思っていた。
だが現実は違った。そこには植物が生い茂り、鳥が木の実を啄ばみ、川が流れ魚が泳ぎ回る。
ネオ・アルカディアの手の及ばない場所で一つの環境が形成されていた。
この環境ならば少しの機材と道具があれば人が生きる場所を作ることができる。あなたの中にもそんな希望が芽生えていた。
勿論希望だけでは人は生きていけない。
希望的観測だけで腹は膨れない。
ネオ・アルカディアにいた頃よりは生活の形が変わってしまい。なにぶん使える機械も限られ、住居も人間が住めるように最適化されているわけでもない。
だからこそ人間たちは居場所を作るために懸命に抗う。
放っておけばいいものを何故か執拗に追ってくるネオ・アルカディア、いやDr.バイルの私兵たちの怨念めいた攻撃をやり過ごし、レジスタンスを名乗る集団と共に抗ってきた。
そして、終わる兆しを見せない泥沼の戦いを経て、とめどなく落ちてきた流れ星たちが落ちてきたある日の夜から──
Dr.バイルの私兵がここにやってくることは無くなった。
そして間も無くして、ネオ・アルカディアが宇宙からの砲撃で消滅したという報せを耳にした。
犯人はネオ・アルカディアのレプリロイドだったという。
全てが終わってから1年ほどの月日が経った。
新しい仕事のユーラシアコロニーの環境維持システムのメンテナンスは安定してきたところだ。
レヴィアタンとやりとりする手段はもうない。
ふと使い物にならなくなった端末のメールボックスを開いてみても当然彼女の事務的なメールが届いてくるはずもない。
でも、少し心が折れそうになった。
いつものように憎まれ口を叩いて欲しかった。
暴君わがまま娘ムーブして苛立たせて欲しかった。
ただただ、あなたはもう戻らない大切な存在のことを時々思い出しては胸が締め付けられる思いをした。
シエルと名乗るレジスタンスのリーダーと環境維持システムメンテナンス関係の仕事で、何度か話したことがある。
レジスタンスのリーダーをしつつ科学者もしているというハイスペックを絵に描いたような凄い女の子だ。
レジスタンスのリーダーというのだからファーブニルやハルピュイアみたいな戦士的な雰囲気や、エックス様のような不思議な雰囲気を持つ者だと思っていたのにその実態は、あなたの年齢の一回り下の可憐な人間の少女だったのは予想外に他ならなかった。
彼女も大切な存在を失っても懸命に生きていた。
その失った大切な存在がレプリロイドだったという話を聞いて少し親近感を覚えたりした。
したのだけれども何か背筋が凍るような感覚がしたのは気のせいだ。きっと気のせいに違いない。
背筋をひんやりとした刃物が突きつけられているような感覚なんてきっと疲れているのだ。
シエルと話していた時、無性に彼女の話がしたくなった。
もうレヴィアタンの話をしてもいいだろう。今の彼女を咎めるネオ・アルカディアはもうないのだから。
するとシエルがとても驚いていた。
ちょっと仲間を見つけたからか安心をしているようでもあった。
そして別れ際に言った言葉は良く覚えている。
「信じてあげてください。レヴィアタンのことを」
同じ残された者同士帰る場所を守らなくてはならない。もし仮に戻って来なかったとしても、とっくにバイルの私兵に殺されていたとしても。笑って彼女のもとに──レヴィアタンのもとに胸を張って逝けるように。
◆◆◆◆◆
仕事を終えたあなたは疲れた体を引きずるようにコンテナで積み上げられた場所へと向かう。
その中が今のあなたの家だ。見てくれは微妙だが中は昔の家に限りなく近づけているので存外快適だ。
あなたはコンテナに近づくと先客が一人いることに気づいた。
誰だ。まさかバイルの私兵だろうか?
暗闇のせいでうまく見えない。長期間にわたるキャラバン生活である意味荒んだとも言える状態のあなたは、身構えながらゆっくりと隠れて近づいていく。
徐々に闇に隠れたそれのシルエットが明らかになっていく。
「…………」
そして、あなたは自らの目を疑った。
綺麗好きな彼女らしからぬ煤と錆だらけ。女性のボブカットを思わせる青いヘルメットは所々欠けており、後頭部から伸びる二つ結びの髪かヒレのようなパーツは途中で折れてしまっている。
体もそうだ。
所々ヒビが入っておりいつ機能を停止するかわからなかった。
レヴィアタン。
久々に呼んだ名前でゆっくりと顔を上げる。その動きはひどく弱々しかった。
「だれ…………ぁ」
あなたの顔を見るや否や、瞳に光が宿りかけるが即誤魔化すように目を逸らす。
「まさかこんな所でほっつき歩いてたなんてね。にしても見ない内に老けたわね……」
など弱っても尚も憎まれ口を叩き始める。
その憎まれ口が懐かしくて仕方がない。老けたとは言ってもそこまで時間は経っていないだろうけれども。
対してレヴィアタンは破損こそすれど何も変わらない。
「何泣きそうな顔してるのよ……ねえ、埃まみれで最悪だし、メンテナンスジムとかないかしら? あとあんまり見ないでくれる? その……中身が見えちゃってるし」
ジムになぞ行ってる場合じゃないし早くシエルたちのもとに連れて行かないといけないのに、彼女がいつもの態度を貫けば貫くほど、帰ってきたという実感が湧いてくる。
あなたはレヴィアタンに自分の背中に身を預けるよう促すと、数秒の逡巡からとん、と重みがやってくる。そして彼女の細い腕があなたの首に回され、引き締まったふとももをあなたは腕でロックしてから立ち上がり、歩き出す。
レプリロイドの受け皿はあの出来事からかなり増えた。
きっとすぐ元通りに出来るはずだ。
これまでどんな事があったのかはもう敢えて問わない。彼女の身体を見るに凄惨な戦いがあったに違いない。
けれども今はただ一言だけ言いたかった。
たった。たった4文字だ。
この4文字を言うために年単位で時間がかかってしまったけれども。
あなたはレヴィアタンを背負いシエルたちのいる所まで向かいながら喉奥に出かかった、色んな感情が綯い交ぜになったその言葉をただ、吐き出した。
おかえり。
「うん……ただいま」
全てが終わり、憑き物が落ちたかのような笑顔をあなたが見えない所で浮かべながらレヴィアタンはあなたの事を絶対に離さないと訴えんばかりにぎゅっ、と腕に力を込める。
空から石が降ろうとも、帰る場所を泥に押し流されたとしても。
それでも水が引けばヒトは生きていく。夢を見ていく。終わりが来るまで。
せめて、笑って最期に眠れるように。
「それはそうと女の匂いがするのは気のせいかしら?」
前途多難だけれども。
※誤解です。本当にただ話をしていただけです。のろk……思い出話をしていただけです
※なお、シエルの匂いです。
※モチーフが嫉妬の大罪持ちだからゆるして
本筋(飾り)は終わったので後はいちゃエロだけです。シリアスはこの回で死んだ、もういない。
なお次回の部分50%くらい出来てます。内容は浴衣姿で青姦嫉妬搾り取りックスです、派手にイキましょう。
色々落ち着いたらエールさんとの元々異性とは見てなかった悪友系幼馴染的な話か、セフレになる話を書くのもいいかもしれぬ(小声)