八木を殴った次の日。
周は久しぶりに一人きりで夕食を食べていた。真昼が作り置きしていたオカズを温め、炊いたご飯と共にテーブルに並べる。美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐり、食欲が刺激された。
しかし、そこに真昼がいないだけで美味い料理も味気ない物となってしまう。ゼリー飲料だけで夕食を済ませていた頃から考えると凄い変化だ。それだけ真昼と過ごす事が当たり前になっていたのだろう。
ぼうっと空いている対面の椅子を眺める。いつもそこに座っていた彼女は、今日は自室で過ごすと告げてきた。壁を一枚隔てた隣の部屋で今頃同じように食事を摂っているのだろう。
別に喧嘩している訳ではない為、会おうと思えばすぐにでも会う事が出来る。しかし、その勇気が今の周にはなかった。
八木から真昼の過去を聞いた事で、彼女を見る目が変わる事が怖かったのだ。真昼が他の人が思っているような"完璧な天使様"ではない事は理解していた。人並みに悩む事もあるし、少し不器用なところも知っている。それを可愛らしいと思う事はあっても、失望する事はない。
──だけど、彼女の清純さだけは疑っていなかった。
勝手に、男の欲望とは無縁の清らかな存在だと決めつけていたのだ。それを昨日のあの瞬間に自覚した。真昼の過去に彼女の非は一切ない。それは断言出来る。だが、それでも彼女に対する認識が大きくズレたのは間違いなかった。
きっと、周が真昼に向ける目は今後変化してしまうだろう。そして真昼の方もそれに気付いてしまうに違いない。周にはそれが恐ろしくて仕方なかった。
「──八木……。アイツさえ現れなければ……」
周は全ての元凶とも言える男の名前を口にする。
昨日、怒りに我を忘れて彼を殴った後、冷静さを取り戻した周はまんまと挑発に乗せられた自分に悪態を吐いた。真昼の現状を良くする為に話し合いを設けたのに完全に状況を悪化させてしまったからだ。
八木の過去の悪行がどうであれ、周が同じマンションの住人に暴力を振るった事実はどうにも出来ない。八木が訴えればマンションを退去させられる可能性もあるし、普通に警察沙汰になってもおかしくない。真昼を護るどころか逆に一人にさせてしまいかねない状況だった。
八木はこの件を大事にするつもりはないと話したが、その時に彼が浮かべた不気味な表情を思い出し、周は不安を募らせる。こちらが晒した弱みを見逃すような優しい男ではない。何らかの仕返しをしてくるのは間違いないだろう。
ただ、彼のターゲットが自分になっている間は真昼は安全だと言える。八木の真昼に対する興味が未だに続いているかは分からないが、行動を起こすにしても邪魔者の周を排除してからになるだろう。
──そんな風に周は考えていた。
★
──ピロンッというメッセージの受信音で周は目を覚ました。
部屋の中は薄暗く、手探りでスマホを手に取る。時間を確認するとまだ朝の5時を少し過ぎたところだった。窓の外に目をやればずっと遠くの空が僅かに明るくなっている。
「誰だ、こんな時間に……」
眠い目を擦りながら体を起こし、スマホを確認する。待ち受け画面には1件の新着メッセージがある事が通知されていた。
差出人の名前は『八木涼平』とある。それを見た瞬間、周の気分は一気に下降した。彼とIDを交換した覚えはないが、電話番号から検索したみたいだ。
昨日の一件についての内容だろうと予想し、周はトーク画面を開いた。
昨日、君が俺に振るった暴力については忘れてあげてもいい。十分楽しませてもらったからね。健気な彼女に感謝する事だ。でも次はないから、それだけは覚えておいてくれ。
それと、彼氏の君を差し置いて俺達だけ楽しむのも悪いからプレゼントをあげるよ。真昼ちゃんには内緒でね。彼女、今は疲れて寝てるだろうから部屋に乗り込むのはやめてあげるんだよ。
────ご馳走様。美味かったよ。
そのメッセージを読み終わった頃、更に4つの動画ファイルが連続して送られてきた。容量はそこそこ大きく、10分程度の動画だと思われる。これがメッセージにある"プレゼント"だろうかと周は訝しんだ。
それにしても、八木が真昼の名前を出している事が気掛かりだった。一つの不安が解消された事に安堵する余裕もなく、それ以上の不安が生まれてしまった。
なぜ、八木が今の真昼の状態を知っているのか。その理由を予想しようとすると、どうしても最悪の答えが真っ先に思い浮かんでしまう。
どうか違って欲しいという思いで送られてきたファイルを開いた周は、ごくりと唾を飲み込み、動画を再生させた。
スマホの画面に映ったのはどこかの部屋にいる真昼と八木の姿だった。しかし、その真昼の見た目は今よりも少し幼く、一瞬、彼女の妹のようにも見えた。着ている制服も周の見慣れない物であった為、声を聞かなければ本人だと確信は持てなかっただろう。
周はその映像が数年前の物であると理解した。
動画では、ベッドに腰掛けた八木が腕の中に真昼を捕え、彼女のスカートに手を差し込んでいた。真昼は必死に逃れようとしていたが体格の差は歴然で、ほとんど抵抗出来ていない。
涙声で『八木さん、やめてください……っ』と懇願する彼女の姿は、画面越しでも胸が苦しくなるほど悲痛なものだった。しかし八木は逆に興奮した様子で小さな身体に手を這わせている。
彼は真昼の胸元をはだけさせて下着をずらすと、覗いた乳首に口を近づけた。そしてチュッチュと音を立てて吸い始める。膨らみのない子供の胸を舐め回し『乳首が勃ってきたよ』と笑う八木の姿は醜悪極まりなく、真昼は声も出せずに体を硬直させていた。
しばらく真昼の胸を弄んだ八木は、次に彼女のスカートを捲り上げる。『いや……っ』と短い悲鳴を漏らした真昼は、カメラの前に白色の下着を晒してしまった。装飾のない大人しめの下着は可憐な容姿の真昼に良く似合っている。動画の中の八木も、それを子供っぽいとは思わず性欲を刺激されているようだった。
彼は下着の両端を持ち、スルッと真昼の脚から脱がしてしまう。勿論彼女は嫌がって抵抗していたが、数秒時間を稼ぐのが限界だった。
『お、パンツ濡れてるじゃないか』
八木は脱がした下着の内側に、愛液による小さな染みを見つけると嫌がる真昼の目前に
自分が滲ませた恥ずかしい体液を嬉々として味わう八木の姿を、真昼は目に涙を浮かべて見ていた。
その後はしばらく二人の格闘の様子が流れる。スカートや上着を脱がそうとする八木と、それに弱々しく抵抗する真昼。勝敗の分かりきった戦いは二分程度で決着し、最後にブラジャーを脱がされた真昼は八木の手で生まれたままの姿にされてしまった。
「なんだよ、これ…………」
周はただ見ていることしか出来ない自分に苛立ちを募らせる。泣きながら裸を晒す少女の姿は見ていられないくらい哀れだった。
彼女は苛立った八木に何度か叩かれ、声を殺して泣いている。この段になってようやく相手の認識を"知り合いの男性"から"恐ろしい存在"へと改めたのだろう。先程まであった『必死にお願いすればやめてくれるかも』という甘い期待は見せなくなっていた。
八木は真昼の脚を開かせるとカメラの前に彼女の秘部を晒させた。恥丘にまばらに生えた陰毛と、その下にある一本筋の割れ目。そしてそこにある微かな潤いまで見る事が出来る。
──綺麗だ、と周は思った。恋人が襲われている動画を見ておかしな話だが、アップで映る真昼の女性器から目が離せなかった。
八木は両手の指をその場所に添え、ゆっくりと左右に引っ張る。すると、閉じていた割れ目がくぱぁと大きく広がった。薄いピンク色の陰唇が口を開き、彼女の最も大切な膣の穴まで丸見えとなる。
それはとても背徳的な光景だった。
可憐で儚げな容姿の少女がはらはらと涙を流す姿は絵画のように美しく、とても穢れないものに見える。しかし、その身体に視線をやればツンと上を向いた乳首や剥き出しにされた性器があるのだ。そのギャップが凄まじかった。
『真昼ちゃん下の毛生えてたんだ。当たり前だけどなんか意外だわ』
『ぐっ……ひくっ……』
『それにしてもマンコ小っさいな〜。入るかな、これ』
『…………!? っ〜〜〜〜!!』
八木はしばらく真昼の割れ目を指で弄った後、膣口へと中指を挿入した。自分の小さな穴に入り込む指を驚いた表情で見下ろす真昼。あっという間に指を深々と受け入れた彼女の女性器は、苦しそうにビクビクと震えていた。
それから八木は何度か指を出し入れさせて具合を確かめる。そうして今度は指で割れ目を小刻みに擦り始めた。初めての愛撫に呆気に取られている間に敏感な部分を探られた真昼は、次第に八木の指に翻弄されていった。
割れ目から水音を響かせ、真昼が絶頂を迎えたのはそのすぐ後だった。
1つ目の動画は、八木の指でイかされ、放心気味の真昼の顔を映して終わった。あれがイキ顔というやつなのだろう。快感と気怠さ、そして僅かに羞恥心を浮かべた表情は中学生とは思えないほどの色気を感じさせていた。
周は停止したスマホの画面を眺め、ぐちゃぐちゃになった感情を整えるように息を吐いた。
今の動画は真昼のトラウマとなった二年前の物なのだろう。この後彼女は八木に純潔を汚され、心に傷を作る事になる。それはもうどうしようもない。
「はぁ……」
周はもう一度息を吐いた。映像の中の真昼の涙が頭から離れない。過去の動画にこうも心を乱されてしまうのはそれだけ真昼が大切だからだ。
周は残りの3つの動画に目を向けた。恐らくそこには今の続きが映っているのだろう。肝心の部分の映像もきっとある。周はそれを再生するかどうか迷っていた。
真昼が他の男に抱かれる姿なんて見たくはないし、真昼だって周には見られたくない筈だ。だが、見ない事で悪い想像が膨らみ、気持ちを整理しきれなくなるくらいなら、正面から向き合うべきではないか、という思いもあった。
もう既に一歩踏み込んでしまった以上、真昼の過去を全て知ってから彼女と向き合う。それがお互いの為ではないだろうか。
そう結論を出した周は、2つ目の動画を再生する事にした。
──その動画は周の予想と違い、先の動画の続きではなかった。
映っているのは真昼と八木だ。それは変わらない。二人の体勢もさっきと同じで、ベッドに並んで腰掛けている。
しかし、映っている場所は何度か入った事のある今の真昼の部屋だった。真昼の見た目も現在と変わらず、身に付けているのは見慣れたいつもの制服である。
その動画はごく最近、それこそ昨日にでも撮られたように見えた。
『じゃ、始めよっか』
映像の中で八木はそう言うと、隣に座る真昼の下半身に手を伸ばす。
周はそれを青ざめた顔で眺めるしかなかった。
続きは夜に投稿します