前置きになりますがこのお話しから始まるアミダハラの激闘シリーズはアニメ版「鋼鉄の魔女アンネローゼ 04 魔女の陥落」の後の話に私のオリキャラを突っ込んだ形となっております。ぜひともアニメ版鋼鉄の魔女アンネローゼを見てからこちらを読んでください。
忍びの一族と言えば人々は何を答えるだろう。よく名前が上がる伊賀か甲賀か、はたまた風魔一族か。美濃という答えを出す者もいるだろう。だがある一族の名が呼ばれることはない。対魔忍たちを除いては、の話だが………
「いやぁ悪いね。喧嘩止めてもらって」
アミダハラの街中を歩きながら蒼月が陸郎に一応の謝辞を述べる。
「本当に驚きましたよ。来た瞬間あんな喧嘩が始まるだなんて」
「僕もまさか全速力からの急ブレーキで吹っ飛ばされるとは思わなかった」
「俺を揶揄ったお前が悪い」
五車学園でユキカゼを怒らせるほど二人の関係性を揶揄ってたお前が言うなと思いたくなるような状況ではあるが、それを知らぬ二人が指摘できるはずもなくそのまま歩を進めていく。
「おっ、あったぞ篝火」
すると蒼月がお好み焼きの書かれた看板と軽くテントの張られた店を見つける。
「ほう、これが件の店か」
「…あの、アンネローゼさん達は?」
「何を言う。二人も大事だが腹が減ってはなんとやら、先に腹ごしらえだ」
陸郎の戸惑いを余所に蒼月は二人の背中を押して店の中に入る。
「「「いらっしゃいませ!」」」
店員たちの明るい声とともに鉄板からは料理の焼ける音が聞こえてきていた。
「予約なしの三名だ。席はあるか、それとできるなら鉄板のないテーブルに着きたいんだけどいいか?」
「はい、すぐにご案内できますよ」
「ということだ。お前ら先に座っといてくれ」
「……先に?」
「この店、先払いできるみたいだから先に払っとくわ」
「…わかった。席はどこにある?」
「はい、あちらの席になります」
「あっ、待ってください」
蒼月の言葉に一瞬疑問を覚えた陸郎を置いて篝火は店員に連れられ、店の奥の席へと向かっていき、慌てて陸郎も席へと向かっていった。
「………」
「………」
二人が席について数十秒、無言の時が続く。二人の共通の知人である蒼月がレジで少し揉めているのか二人の席に来れず、篝火もスマホをいじるだけで陸郎には見向きもしない。
「あの〜」
「……何だ?」
その空気を変えるため陸郎は篝火に話しかけると、当の本人はスマホに向けたまま、陸郎に言葉を返す。
「貴方と彼って…どういう関係なんですか?」
「………」
「さすがに答えれませ「代々続く双賀一族の専属鍛冶師」ってえ?」
「聞こえなかったか?安土桃山時代から表舞台に名を残さずに代々続いてきた双賀家の末裔とその専属鍛治師の末裔、と言ったんだがな」
「…い、言ってくれるんですね。って双賀…一族?」
「あぁ、僕たちと関わらなければ聞くことのない一族だ。概要については……奴から聞け」
そう言いながら篝火の指さした方向を陸郎が見ると蒼月が店員と話を終えたのか二人の席へと来て、篝火の隣に座る。
「時間かかってたな」
「そりゃいきなり万札数枚出したもん。店主から食い切れんのかいって心配されたよ」
「え?そ、そんなに食べるんですか!?」
二人の会話を聞いた陸郎が目をギョッとさせた。
「ああ、今回はな」
「ちなみにここの食事代は後で依頼料に上乗せしとくから。いくらアンネローゼさんたちに恩があるとは言え、ただで受けるには俺の出費が痛い」
陸郎の問いに二人はメニュー表を見ながら答えていた。
「は、はぁ…」
「それとお前も少しぐらい頼みな、この後は休みなしの長丁場になるだろうから」
「わ、わかりました」
陸郎の返事を聞いた蒼月はテーブルのボタンを押して店員を呼ぶ。
「はい、ご注文はお決まりですか?」
「えーと、じゃあ焼きそばとウーロン茶で」
「シンプルだね〜。あ、俺はシーフードミックスのお好み焼きとバターコーンとサーロインのガーリックライスと…俺もウーロン茶かな。篝火は?」
「僕は1〜4ページ、そこに書かれているお好み焼きと広島焼き、それに焼きそば…まずは全部一つずつにメロンソーダ、出来次第持って来て」
「え!全部ですか!?」
「ブッ!」
篝火のあまりの注文量に店員も驚き、陸郎も飲んでた水を吹き出しかけていた。
「まぁ食い切れるわけないと思いながら持って来てくれ。そのための金はもう渡したんだから」
「か、かしこまりました。少々お待ちください!」
そう言うと店員は慌ててオーダーの書かれた端末を片手に厨房へと入っていった。
「……で、双賀一族について知りたいんだっけ?」
「ええ、篝火さんにあなた達のことを聞いたら双賀一族のことだけ言ってあとはあなたに…」
「ったく、そこまで聞いてんなら特別に教えてやるけど…他者に言いふらすなよ。特に対魔忍どもに言った日には……双賀の関係者とみなされて殺されてもおかしくねぇからな」
「は、はい…」
最後の言葉から漏れ出た殺気に陸郎は身体を身震いさせた。
「よろしい、では昔の話を一つ。出典は我々双賀一族に代々伝わる秘伝の巻物から。双賀一族の歴史は安土時代、ある一人の忍びから始まったんだ…」
………
「その者の名は波良双雲、門から進出してきた魔族に対抗するために魔族と交わり、生まれた人魔の混血児を戦わせようとした時代で、彼は危険な力を持って生まれたがためにまだ一桁の歳の時に大人たちの総意で故郷を追い出されたんだ」
「一桁の歳…そんな頃に追い出されたなんて、そんなに危険な力だったんですか?」
「あぁ、簡単に言えば魔族やその血を受け継いだ混血児が持つ「魔」の力、俺たちは「対魔粒子」
と呼んでいるんだけど、本来対魔忍はその力を火や雷に変えていく、その対魔粒子に直接干渉する力なんだよ」
「た、対魔粒子?に直接干渉…それって強いんですか?」
「…まぁ、そう言われるのも無理はない。なら自分なりにわかりやすく教えてみるよ。陸郎君、君は魔法使いで目の前の俺を焼こうと対魔粒子を使って炎を出すイメージで右手を出してくれ」
「っ?こうですか?」
そう言いながら出された右手の平にナイフのように真っ直ぐ伸びた蒼月の左手の先が少し刺さった。
「はい、この時点で君が放とうとしていた炎は俺の気分次第で無力化することもこれであんたを焼き尽くすことも可能になったわけだ」
「え?たったこれだけでそんなことになるんですか!?」
「あぁ、ゲームで言うところのMP、ってやつに直接干渉して支配しているようなもんさ、さっき言ったやつ以外にもこの力をナイフにして相手の体内を切り裂いたり、爆弾にして爆発させることも容易な力を代々双賀一族は受け継いでるんだよ」
「さ、さっきから言ってること怖いですよ」
「まぁ怖い例しか上げてないからなこいつは。だがこの力を自分に使って体内の自然治癒力を上げ、傷の修復を早めると言った使い方も可能だ。それと蒼月、お前双賀一族の歴史を話してたんじゃなかったか?」
「あ、そうだった」
篝火の指摘で話がズレたことに気づいた蒼月は軽く咳払いをして話を戻す。
「確か故郷を追い出された後だったな。無論一人で生きていくしかなかった彼は時に泥棒、時には他者を手にかけながら、生き続けた双雲様は葵さんという女性と出会ってね、彼女との出会いが彼は変えたらしくてね。自分のためだけに生きてたあの人は他者のためにもその力使い始めて、色んな人達を様々な困難から救って来たんだよ」
「ちなみに僕の一族もその内の一つ、これが僕と彼の関係。知りたかったんだろ?」
「はい。ここまで長い話しになるとは思いませんでしたけど…」
「もう少し続くよ。その後双雲様は葵様や彼女との子供達、それに彼らについていくと決めた者達と共に双賀一族を結成したんだよ。まぁその方針は…あまり褒められたものじゃなかったんだけどね」
「え、な、何をしたんですか?」
「伊賀や甲賀の名を騙って仕事をしてたんだよ。双賀の名が広まって諍いが起こるのを避けようと言う意図があったと思うけど、任務に失敗すれば騙っていた連中の信用がガタ落ち。向こうもそんな事をされれば血眼で偽物の正体を探るだろ…4〜5年でバレたと言うか…もバレなかったと言えばいいのかな、その間に双賀一族に恨みを持っていた連中が手を組んで双賀一族の隠れ里を襲ったんだよ。その戦いで初代双賀一族統領の双雲様とその妻の葵様を始めとした多数の者が命を落とした中、実子の何人かは協力者の手引きで逃げ出して生き延びたんだ。まぁその後、時代が変われど双賀一族は殺され続けてな。その数少ない生き残りがこの俺ってことさ。ちなみにその名を普通の人間が知らないのはさっき言った双賀一族のやり方もあるが、他の忍び連中が双賀一族に関する書物やらを焼き尽くしたんだよ。よほどこの名を後世に残したくなかったみたいでな」
「成程…」
陸郎がそう納得していると厨房からは店員の声と共に彼らの頼んだメニューがテーブルへと並ぶ。
「さて、こんな長話をしてたら飯の時間だな。次はあんたの番だぜ、色々聞かせてくれよ。あの二人とのこと…それに今回の依頼についてな」
………
「バルド・バルド、やっぱりあいつが絡んでたか。しかしあの紅天楼の主を殺して体内の石を奪ったとなると、これは早めに動かないと少々やばいかもな。場所は…あいつが所有している中で特に大きなビルに乗り込んでみよう。俺なら彼女達を見つけることができるから、彼女達を救出次第、奴を叩き潰すぞ」
「でも今は動こうにも動けないじゃないですか。篝火さんがまだ食べ終わってないんですよ……新しく頼んだ奴」
その恨み言と共に陸郎は四、五十枚は積まれた皿を横目にまた新たなお好み焼きに手をつける篝火を睨んでいた。
ちなみに最初に頼んだメニューをあっさり平らげ、またメニューを開いた篝火に陸郎がお腹のことを聞いたら「まだ腹三分」と答えた彼に陸郎は恐怖を覚えたと言う。
「まぁまぁ、さっき頼んだやつで終わりにするって言ってるんだし、篝火が食べ終わり次第すぐに行動開始だ」
「で、ですけども…」
最後に運ばれてきたメニューを見た陸郎は信じられないものを見る目で篝火を見ていた。
「お、お待たせしました……こちら…と、特盛スペシャルガーリックライスになります」
先程まで熱々の料理を運び続けて汗だくの女性店員が疲弊した声で最後のメニューを、お好み焼きの皿を積んでいた篝火の前に置く。
その量たるや、蒼月が最初に頼んだものの三倍の量で、鉄板で焼かれた肉やシーフードがこれでもかと乗ったガーリックライスであった。
「今食べなきゃダメなんですか!?」
「仕方ないだろ、次はいつ来れるかわからないんだから」
陸郎の戸惑いをよそに篝火は食べ終えたお好み焼きの皿を積み上げて最後のメニューを食べ始めていた。
「次って…来れない事情があるわけじゃないんですから……」
「…いや、実はあるんだよ、その事情ってやつ」
「え…本当ですか……」
「うん、篝火の本業は刀鍛冶なんだけどな、一度アンネローゼさんの刀、金剛夜叉の研ぎ直しにこいつを呼んでな、その仕事終わりにてきとうな飯屋に入ったんだよ…」
「それってまさか…」
「あぁ、無駄に図体のでけえ奴で脅して席代やら水代やら色々ぶん取るぼったくりで味も最悪なところだったんだよ。そしてな、この篝火は色々食いすぎて舌が肥えちまっていてな、そんな彼も不機嫌になるほどの味だったらしく「不味い」やら「一円を払う価値もない」に「ハイエナの飯の方がマシ」だとか言って連中を怒らせたんだよ」
「おい、なんか俺だけ悪いみたいな言い方だがそれ最終的にお前の『まぁまぁ篝火、群れるか脅すしかできない人間未満の落伍者共がまともな飯なんて食ったことないから』って言葉が引き鉄になって連中が殴りかかったんだろ」
「ああそうだった。それで俺達対連中何十人の殴り合いになって……結果、俺達無傷で店は全壊、連中みんなヤブ医者送り。って言えばその惨状は伝わるかな?」
「………」
つまりたった二人に何十人もの男達が歯が立たなかった、という事実を淡々と述べる彼の存在に陸郎は再び彼らに恐怖を覚えていた。
「…と言うわけ、だけど顔を隠してた俺とは違って素顔の知られた篝火はしばらくアミダハラに近づけるなってアンネローゼさん達に言われたけども…まぁ事情が事情だから仕方なく今回彼を連れてきたわけよ」
「仕方なく、ってなんだよ。別にいいじゃないか。連中も完膚なきまでに叩き潰したんだから」
「あぁ、だが奴らが俺たちへの復讐を望んでいたら何をすると思う?ただ因縁をつけても同じ結末になる。だったら人間以上の化け物、例えばトロルとかを雇って俺たちを叩き潰すとかしてくると思わないか?」
「…随分具体的な光景だな。蒼月」
「うん、だって数秒後の未来を言ったから」
「ハッ!?なn…」
「え?うわっ!」
篝火が言い切るよりも早く彼の服を掴んだ蒼月と彼らの後ろに視線をやった陸郎が慌ててテーブルから離れた瞬間、彼らのいたテーブルに巨大な棍棒が振り下ろされた。
「ね、連中の逆恨み精神を舐めてはいけない」
「ね、じゃねえよ!わかってたんなら先に言え!」
「それよりもあなた自分の後ろの状況わかってたんですか!?」
「その話しは後。今はこいつらを片付けるぞ」
蒼月がスペアの面をつけながら睨んだ先ではトロルを差し向けたであろう男達が血走った目で睨み返していた。
「やっと見つけたぜクソガキども…」
「……、ッ!!!」
男の声の方へ向いた篝火は彼らの足元を見て驚愕の視線を向けた。
「俺たちの店も顔も滅茶苦茶にしやギャアアアア!アヅィイイ!!」
瞬間、男の一人が怒りの言葉をぶつける前に自身の顔ほどの大きさの火の玉を顔面に喰らい、あまりの熱さに苦しみ始めた。
「…先に行け、二人とも」
そう言ったのはいつの間にかハンマーを右手に持ち、口からは高熱をまとった荒い息を吐いている篝火であった。
「で、でもあなた一人だけd「わかった。やれ」っていいんですか。彼だけで!?」
「まともに戦えないあんたが口出しすんな。それに見てみろ、トロルや連中の足下を」
蒼月に促され、陸郎が彼らの足元を見ると、そこには篝火が先程まで食べていたガーリックライスが無惨にも踏みつけられていた。
「篝火はああいう奴を一番嫌ってるから、こうなったら誰も止められないさ。篝火、すぐに終わらせて合流しろよ」
「あぁ、数分で終わらせる…」
「いくぞ、陸郎!」
「は、はい!」
多数の男達の相手を篝火に任せ、蒼月と陸郎は事の黒幕のバルド・バルドがいるであろう高層ビルへと向かっていった。
ちなみに篝火があれほど爆食いするのはとある理由がある。それはまたアミダハラの激闘シリーズの後編で、
ちなみに鋼鉄の魔女アンネローゼを知ってる方にあらかじめ言っておきますが音無美樹 アイシュワリヤ・レイは出てきません(アニメ版で殺されたため)一応念のため