実は訳がありまして…このキャラをTSして男と女の姿を使い分ける対魔忍として対魔忍シリーズ20周年記念のイベントの一つ「オリジナル対魔忍」に応募したかったんです!
絵が!絵が描けなかったんです!俺もイラストの勉強をしておけばと後悔の念に苛まれています。
………長文でお気持ち表明してすいません、本編どうぞ。
時は数分前に遡る。
「陸郎!ここにいたか!」
先ほどの雷鳴を視認し、慌てて離れようとしていた陸郎と篝火が再会していた。
「篝火さん!やっと来てくれた。ってその刀は!?」
「これか、おそらく金剛夜叉だ。前に見たことがあるからすぐにわかったよ。魔法堂ってところの店主からもらった」
「よかった!…でもアンネローゼさんがこの状態だと…」
「あぁ、それに蒼月も重症を負っている。電話越しで悲鳴をあげるほどのな」
「そんな!?じゃあ彼は?」
「おそらく負けたかもしれない。本来だったらあいつが時間稼ぎをしてる間にしたかったが…陸郎、彼女を連れてここを離れろ。僕はここで任務を遂行する」
「まっ、待ってください!」
篝火の言ったことが本当ならばおそらく最悪の状況だと言うのにそんな中でも淡々と蒼月から伝えられてた作戦を実行しようとする篝火を陸郎は慌てて止める。
「だったらあなたも今すぐこの場から離れないと!」
「ばーか、そんなことでこの策をおじゃんにできるか」
「でも!もしあなたの言うことが本当なら彼は今頃…」
「だったら弔い合戦だ。若長が死んで配下は逃げましただなんて子孫に笑われることをするぐらいならここで散れれば本望。それにだ…」
「それに?」
「…奴はただでは死なないさ。僕は奴と再会して少しの間柄だけど理解できるよ、あんな計算高い上に悪辣で執念深くて諦めの悪い奴は他にいない」
「それって…褒めてるんですか?」
「あぁ、だからこそ奴はきっと何かを残してくたばるか、死んだふりして敵の隙を伺う筈だ。だから僕もそれを信じて全力も抵抗するまでだ」
「篝火さん…「だったら私も参加していい?その抵抗に」…え!?」
「ッ!?」
突如陸郎に抱えられたまま一言も発さなかったアンネローゼの突然の一言に二人は驚きの顔を彼女に向ける。
「アンネローゼさん!意識が…」
「えぇ、話しは途中からだけど聞かせてもらったわ。あの魔術師は返しても返しきれない恨みがあるからね」
陸郎の持ってた刀を奪い取るように握りながら鋼鉄の魔女は魔術師への怒りを露わにする。
「だったら蒼月の対魔粒子を追ってくれ。おそらくその魔術師に捕まってる可能性が高いからな」
「?どうやって追うんですか?その…対魔粒子って奴を」
「クナイを貸してくれ。一本は彼女の治療用に渡してるだろ」
「えぇ、これですよね」
「それだ、これに対魔粒子を流せば……」
すると篝火の手のひらのクナイはピンと上を向き、彼が指で軽くつついてもその向きを変えることはない。
「この先に奴がいる」
「へぇ、このクナイにそんな力が…」
「あくまで今の使い手の対魔粒子だけだがな。それじゃあ彼や作戦のこと、お願いしますよ。アンネローゼさん」
「わかったわ」
「それに陸郎、お前も一緒に行け」
「えっ、俺も行くんですか!?」
突如自分の名を呼ばれ、陸郎は戸惑う。
「彼女が戦える以上、今は彼女の後ろにいた方が安心だろ。それにあんた死なないんだし」
「いやその…死なないって言ったって…」
「いえ、一理あるわ、行くわよ陸郎」
「アンネローゼさん!?」
「何を迷う必要があるの?あなたミチコは助ける気はないわけ?」
「いえ……そんなわけないじゃないですか!僕はアンネローゼさんの下僕です!とことんつきあいますよ!」
「決まりね!それじゃあこの場は貴方に任せたわよ!」
腹を括った陸郎を連れて、アンネローゼは建物の外へと出ていく。おそらく直接上へ行くよりも壁を走った方が早いと踏んだのだろう。
「……さてと、こっちもおっ始めるか」
「その刀…あの女め、盗んで売り捌いてたか!」
「もしかしてさっき逃げた彼女が?だったら感謝しかないわね、バルド・バルド!さっさとそこにいるミチコとここにいるはずのはぐれ対魔忍を返しなさい!」
「やはりそれが目的かアンネローゼ!だが今の二人は私にとっては人質同然!私の指示ひとつで無様な二人の姿を貴様に晒すことも…」
「へぇー、俺たち以外に人質がいるの?誰?」
「…何?」
「え?蒼月さん!?」
三人が声のした方を向くと、先ほどまで捕まっていた筈の蒼月がミチコを肩に担ぎながらアンネローゼの隣に立っていた。
「馬鹿な!?奴は一体…」
バルド・バルドが後ろを向くと、先ほど蒼月を呑み込んでいた怪物は上下に両断され、ミチコを拘束してた機械も無惨に破壊されていた。
「き、貴様ァァァ!」
「悪いね、あの雷でも気絶しないくらいには受け慣れてるさ。陸郎、ちょっと彼女持っててくれ」
「え?あ、ちょっ…」
陸郎からの返事も聞かずにミチコを彼に渡すとアンネローゼの隣に立ち、バルド・バルドに右手に持ったナイフを向ける。
「しかしお早い目覚めだな、服も身体もボロボロだがいけるか?」
「人の裸見ておいてよく言えるわね。それよりもあんたは大丈夫なの、その髪?チリチリになってるわよ」
「バケモンの胃酸に少し浸かったんだ。察してくれ」
お互いに軽口を返し合いながら、アンネローゼも左手に持った金剛夜叉をバルド・バルドへと向ける。
「フッ、まさかこの状況で私を殺せると思っているのか…ならそれは大間違いだ!」
バルド・バルドが指を鳴らすと後ろに現れた装置から黒い穴が現れ、そこから蒼月を拘束していた怪物に似た姿の怪物やその怪物の触手が巻きついた狼の魔族が無数に現れた。
「おかしいな、まさかお前に魔族の伝手があるとは……」
「そこの使い魔のおかげさ、魔族の住む世界のゲートを開けたことで作れた私の実験の成果を思う存分味わうがいい!行け!!」
バルド・バルドの指示を受け、怪物と魔族の軍勢は一斉に二人に向かい襲いかかる。
「アンネローゼさん!蒼月さん!」
「陸郎!ミチコを連れて隠れなさい!この場は…」
瞬間、襲いかかってきた怪物たちは……二人の放った一閃で全て真っ二つになる。
「私達だけで十分よ」
「どれだけ数を並べようとも所詮は有象無象の集まり、こいつらごときで俺らを止められるとでも思ってる?」
「思っているとも。何せ私の兵はまだまだいるのだからな!」
だがバルド・バルドが指を鳴らすと再び出現した黒い穴怪物と魔族が先ほどの倍は現れていた。
「まだこんな数が…」
「このゲートを止める方法は二つに一つだな、ゲートを破壊するか…あの魔術師を殺すか、どっちが楽だと思う?アンネローゼさん」
「愚問ね、バルド・バルドを殺す方が早いわ!」
「だな!」
瞬間、二人が駆け出し、互いに魔族へと切り掛かる。
「ハアッ!」
アンネローゼの振るう金剛夜叉が二体の触手魔族の肉体を上下に両断し、その刃を赤く染める。
「グルアァァ!」
「フッ!」
「グルッ!?」
「これで!」
更に襲ってきた狼魔族に向けて刀についた血を払い飛ばすと、一瞬で狼魔族の心臓を貫き、怖気付いた魔族たちに金剛夜叉の切っ先を向ける。
「死にたくないなら道を開けなさい。私の目的はそこにいる魔術師よ」
「グラアッ!?」
一方の蒼月は狼魔族の首をナイフで切り裂いて絶命させると、その近くにいた別の狼魔族へ蹴り飛ばす。
「グラオッ!」
「後ろがお留守だよ」
「グルッ?」
その亡骸を払い飛ばした狼魔族の背後からナイフを首へ当てると、そのまま横に切り裂いた。
「初戦は雑兵…にしてもきりがないな。一気に減らすか」
そう言いながら蒼月は小さな青い玉を作り出しそれを地面に投げて踏みつける。
「『流遁 破巡変場』」
瞬間、地面から槍のように尖った無数の対魔粒子が多数の魔族の肉体を貫く。
「クッ!厄介な技を!」
蒼月の技がバルド・バルドにも襲いかかるが、すぐに転移の魔法を発動してその場を逃れる。
「なっ、今度はどこに行ったんだ!?」
「っ!後ろよ陸郎!」
アンネローゼの声で反射的に陸郎が後ろを見るとバルド・バルドは二人に杖の先を向け、今にも魔法を放とうとしていた。
「うわあっ!」
「させるか!引き寄せろ『比翼十番』!」
「ガハッ!?馬鹿な、いつの間にクナイを!」
だがそれに気づいた蒼月が右手でクナイの一本を持ちながら引っ張るような動作をすると、バルド・バルドの背中に気づかれぬほど浅く刺さっていたクナイが深く突き刺さると、強力なネオジム磁石のように彼の身体ごと蒼月のところに向かっていた。
「くたばれ!」
「グウッ!くたばるのは貴様だ!」
向かってくる獲物を切り裂こうと構え始めた蒼月に対して、バルド・バルドも杖から雷を放つ。
「なんてな、頼むぜアンネローゼさん!」
「何っ!?」
「ハアアアアッ!」
だが蒼月は雷を上を跳んでかわし、それでも身体を引っ張られるバルド・バルドに、その先にいたアンネローゼがすれ違いざまに刀を振り、なんとか避けようとした彼の杖を持った右腕を切り飛ばした。
「グアアアアッ!そんな馬鹿な!」
「アッハッハ!引っかかった引っかかった痛っ!」
「ちょっと!説明もなしにやらないで!急に身体が引っ張られて驚いたんだけど!」
急に対応したとはいえ予想外の出来事に晒されたアンネローゼはバルド・バルドを指を指して笑っていた蒼月の頭を刀の柄で軽く叩いていた。
「あんたならそれぐらい対応できるって信じてやったのに酷いなぁ」
「信じてくれるのは良いけど敵に囲まれてる時にやらないで!」
「無駄口はそこまでだ!行け!何としてでも奴らを殺せ!」
二人が話している間にバルド・バルドは左手で杖を握り直して振るとまたも敵が黒い穴から現れる。
「蒼月?あの作戦は順調?」
アンネローゼからの問いに蒼月は床を触って勝利を確信したようにニヤリと仮面の中で笑みを浮かべる。
「あぁ、俺も奴への仕込みは済んだしあっちも順調だな、目算だが…後1分だ」
「充分すぎるわ!それまで暴れるわよ!」
「乗った!」
その言葉と共に二人は同時に飛び出し、再び敵を切り裂き始める。
「ハハハ!何度やっても無駄だ!この数の差はいつまでも埋まらんぞ!」
「それはどうかな?行け!比翼十番!」
バルド・バルドの自信のある言葉に返すように蒼月は八本のクナイを取り出すと触手の怪物たちに投擲すると、クナイは八体の怪物の肉体に深く突き刺さると、蒼月は両手の指で印を結び、恐ろしい術を唱える。
「『流遁 響詐洗動』!!ほーらお前ら!餌は俺たちじゃなくてそこのゲートから出てきた連中どもだ!たらふく食いまくれ!」
するとクナイの刺さった怪物たちは蒼月の言葉に従うように同胞であるはずの怪物たちに触手を巻きつけて、捕食し始めていた。
「なっ!?何馬鹿なことをしている!早くそいつらを…?」
慌てて触手の怪物に届くはずのない指示をするバルド・バルドは自信の身体から何故か溢れている'何か,に気づく。
「何だこれは………'汗,?私が奴らに冷や汗でもかいているというのか!?」
「ハアアアアッ!」
「グッ!」
バルド・バルドが驚いてる隙をつき、アンネローゼが飛んで切り掛かるも彼は慌てて杖で刃を受け止める。
「オラァ!」
「ガハァッ!」
だが今度は蒼月が一瞬で距離を詰め、バルド・バルドの腹に拳を叩き込む。
「ゼイッ!ハァッ!デリャァ!」
そこからバルド・バルドに怒濤の連撃を叩き込み、最後に顔面に一発を入れて、殴り飛ばす。
「所詮は魔術師だな、下手に動かない分一発殴ったサンドバッグよりも拳を当てやすかったわ」
そう言いながら蒼月はいつのまにかバルド・バルドの背中から回収したクナイを指先で軽くいじると身体から流れる汗を腕で拭っていると、蒼月にクナイを刺されて同胞を捕食していた怪物の一体がバルド・バルドに目をつけて触手を伸ばした。
「クソっ!この役立たずどもが!こうなったら新しい連中を呼び出すまでだ!来い!」
その触手を風の刃で切り裂きながら杖を振るうと今度も装置から魔物たちを呼び出そうとする。
「?何故だ!?何故現れん!何がどうなっているのだ!」
だが黒い穴は現れないどころか、機械は異音を出しながら稼働を停止し、呼び出した怪物たちも次々と倒れていく。
「ふざけるなぁぁ!!一体何が起こればこんなことg…」
怒りを隠せずに二人にあたるはずのない雷を放っていたバルド・バルドはふとあることに気づく。
(今戦っている二人も自分と同じように大量の汗を流している…まさか!?)
すぐに杖の先についてる球を覗くと自身の塔の床に両手の指を突っ込み、そこから超高温の熱をこの塔の中全体に流している青年の姿が映った。
「貴様かあああぁぁぁ!」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…ん?」
「篝火さん!」
それに気づいたバルド・バルドが小さな黒い穴を出すとそこからはこの状況を引き起こした存在が覗かれていた時と同じ体勢で彼の目前に姿を現した。
「………もしかして、僕ピンチ?」
「死ねぇ!」
「させないわ!」
篝火に魔法を放とうとするバルド・バルドにアンネローゼが切り掛かり、その隙に篝火も後ろへ飛び、蒼月の隣に着地する。
「ぎゃあ!身体焼けるから近づくな!」
「…………」
だが蒼月は慌てて篝火から距離を取るが、逃げられた当人は慣れているのか彼の方を向かずにただ首を鳴らしていた。
「グウウウッ!この惨状を引き起こしたのは貴様だな!」
アンネローゼの刀を杖で受け止めながら怒りの言葉を放つバルド・バルドに篝火は笑いながら答える。
「あぁ!この薄情者に言われた通り、すべての設備をダメにするほどの高熱を塔全体に送り込んでやったさ!そのついでにお前の手下も使いものにならなくなったようだがな」
「クソっ!なのに暑さを感じない!まさかあのクナイに!」
「ご名答、俺のクナイが刺さった時点でお前の身体に俺の対魔粒子を流し込んで暑さを感じない身体にしといたから、馬鹿みたいに蒸し暑い中での配慮だよ」
刺した当人はケラケラと笑いながらそう答えてはいるがそのせいでこの策に気づいた頃には全てが手遅れとなっていた状況の中でバルド・バルドは……笑っていた。
「熱で頭でもやられたか?」
「おかしいさ、私の長年の成果がこんなガキどもに一夜で亡き者にされるとは……だが…まだ終わらん!!!」
そう言いながらアンネローゼを払い飛ばしたバルド・バルドは再び転移の魔法を発動させ、姿を消した。
「しまった!」
「また人質でも取る気か!?」
蒼月とアンネローゼは同時に慌てて陸郎たちの方を駆け出す。
「蒼月さん、向こうに奴が!」
「何ッ!?」
しかしバルド・バルドは蒼月が向かった方向とは逆の怪物たちが倒れた場所へと姿を現す。
「馬鹿な奴め!本当の目的はこいつらの力を得ることだ!」
そして杖を怪物の一体に刺してとある魔法を発動するとその怪物の肉体がどんどん彼の中へと取り込まれていく。
「止めろ篝火!」
「無論だ!」
蒼月の指示を受けた篝火はすぐに火球を生成してハンマーで叩き飛ばすがその火球はバルド・バルドの背中から生えた触手の投げた瓦礫が盾になって当人には届かなかった。
「チッ、来るぞ!」
そこから発生した黒煙を振り払いながら現れたのは………
「ハーハッハッハ!どうだ!魔族どもを取り込んだ私の姿は!」
常人の三倍の大きさとなり、背中や切り飛ばされた右腕など身体から無数の触手を生やした文字通りの化け物となったバルド・バルドであった。
「そんな、自分の部下を取り込んだのか?」
「所詮、奴にとっては全てが自分のための生贄だったってことだな」
「どこまでも魔術師らしい男ね、バルド・バルド」
「………………」
その姿に三人は思い思いの意見を述べる中、篝火は巨大化したバルド・バルドをじっと見つめ、そして口角を上げる。
「潰し甲斐がありそうだな。若長!あの術を使わせてもらうぞ!」
「な!あれか……こうなったら仕方ない!撃て!!」
「了解!!!ウアアアアアア!!!!!!」
蒼月からとある術の使用許可をもらった篝火が雄叫びを上げると彼の背中からは巨大な槌を持った足がなく荒ぶる焔をまとった赤い巨人が塔を突き破りながらその姿を現す。
「この巨人………彼が出してるの!?」
「…………」
その様子にアンネローゼは困惑の声を上げる中、陸郎は店での彼との会話を思い出す。
『でもこの食事って本当に必要なんですか?』
その言葉は22皿目のお好み焼きに手をかけた篝火を見ていた陸郎の口から不意に漏れていた。
『うん、めっちゃ必要だ。陸郎、こいつが使うのは炎の術なんだがな。その炎を作り出すには何が必要かわかるか?』
『………もしかして食べ物の栄養とかですか?』
『惜しい!正解は糖分と脂だ。篝火家の肉体はな、その二つを燃料にして体外に排熱したり、炎を生み出して刀を打つことができる。今回は大量の熱が欲しいからここまで食わせている状況だ……まぁ本当ならこのくらいでいいと思うんだが…あいつは人一倍食う奴だからな、あれ見ろ』
そう言いながら陸郎と蒼月が篝火の方を見ると、彼はあれだけ食べていたにも関わらずお好み焼きを食べながらメニュー表を吟味していた。
『あれ以上はヤバくないですか?』
『………まぁ、用心に越したことはないさ。使える時が来ると思うよ……多分』
「………まさか、あれ全てが篝火さんの炎なんですか?蒼月さん」
「あぁ、これが奴の切り札だ」
「絞め殺してやる!!」
バルド・バルドが自身の触手を篝火の肉体を巻きつける。
「なッ!?私の触手がっ!」
だがその触手は篝火の身体へと触れた先から焼け焦げていく。
「『篝火流 業火遁………」
篝火はそれを意に介さずにハンマーを振り上げると赤い巨人もそれに呼応するように大槌を振り上げ、そこに焔がどんどん集まってゆく。
「させるかァ!」
それを見たバルド・バルドは触手を伸ばすだけでは埒が開かないと判断し、直接篝火へと襲いかかると同時、篝火は自身の右手に力を込め、最強の術を発動する。
「火之迦具槌』!!!!」
篝火のハンマーと同時に巨人が振り下した焔の大槌はバルド・バルドの肉体を音を立てて叩きのめし、その衝撃は地面を粉砕して、化け物は声を上げることも出来ずに落ちていった。
「え?キャアアアアアア!」
「やっぱりこうなるか………」
「こうなるって……わかってるなら早く言ってくださいよおおお!!」
だが地面が粉砕されたことで生まれた穴は後ろにいたアンネローゼ達をも巻き込んで落下していった。
「フゥ、スッキリした」
この状況を生んだ当の本人は炎を出し尽くした顔をしながら真っ逆さまに落ちていた。
「やりすぎですよ篝火さん!」
「場所が最悪だったな。兎に角足場を見つけて着地するぞ。この高さからじゃみんな助からなドワァ!」
そんな中でも冷静に分析していた蒼月に無数の触手が襲いかかり、彼は慌ててそれを避け続ける。
「触手…まさか!」
「うわぁ!」
「ま…ダ…だ!マだ終ワらん!」
それを見たアンネローゼが下を見ると、そこには叩き潰されたバルド・バルドが肉体が黒焦げになる程焼けてもなお、恨みのままに襲いかかり、陸郎と彼が抱えていたミチコ、そして篝火が触手に絡め取られた。
「陸郎!」
「貴様ラダけハ!殺シてヤル!」
「グッ!苦しい!」
バルド・バルドがアンネローゼ達に向けて触手をのばしている間にも三人に巻きついている触手は力を強めて彼らをしめ殺そうとしていた。
「クッ、こうなったら蒼月ッ!力を貸しなさい!」
「あぁ!最後は任せた!」
蒼月は触手を切り裂きながらそれを足場にして、アンネローゼのもとに近づくと彼女の足に自身の両足をつける。
「行くぜ!『流遁 発破勁殴』!」
「グあアアあアあ!!!」
そして足から放たれた蒼月の術によって加速したアンネローゼはバルド・バルドの触手を避けながら、最後の一撃を放つ。
「『夜叉一刀流奥義 魔刀閃』!!」
アンネローゼの振り下ろした巨大な金剛夜叉の刃は怪物となったバルド・バルドの首を切り落とした。
「アンネローゼさん!」
「陸郎!」
その肉体は音を立てて地面に落ち、アンネローゼは近くにいた陸郎とミチコを抱え、篝火も体勢を立て直すとその肉体に轟音を立てて着地する。
「蒼月!こいつに着地して!」
「無茶じゃない!?着地音半端なかったんだけど!」
「僕たちは無事だ、だから安心して落ちてこい」
「畜生オオオオオ!」
蒼月は篝火にあの術を使わせたことを後悔しながら化け物の亡骸へと………
「あ、ヤバいなコレ」
向かうことなく固い地面へと着地していた。
「痛ってええええええ!」
無論、落下の衝撃を直に受けた蒼月の足もただでは済まず、足を押さえながら三人の視線も関係なく大声を上げながら地面を転がっていた。
「あれ、痛いで済むんですね………」
「高所からの落下とかは奴にとってよくやることだからな」
「それにしても締まらない終わり方になっちゃたわね……」
陸郎と篝火が蒼月の様を見ている中、アンネローゼはその光景に呆れながらも視線はバルド・バルドの亡骸へと向いていた。
(この傷…やっぱり怪物になったとはいえバルド・バルドは篝火の一撃で確実に死んでいたはず、まさかあの時逃げた子が………)
グウウウウウウ!
「…誰?今の音の主は?」
「すまん僕だ、何か食べたい」
「もうお腹が空いたんですか!それじゃ帰ったらすぐにご馳走にしましょうか」
「じゃああの店のガーリックライス、あの時と同じ量を食わせてくれよ」
「ほら、貴方も大丈夫?立てる」
「あぁ、ったく肩も足もやべえよコレ」
こうして、数多の犠牲を生んだこの事件は鋼鉄の魔女とその下僕、そして双賀一族の二人によって解決と相なった。
「………全く、あの時バルド・バルドに力を与えたのは焼け石に水だったか」
焼け落ちたバルド・バルドの塔の頂上、そこにいた狐面の女性はポツリと呟いていた。
「ま、'これ,の試験台になってくれただけでも感謝かな、改良の余地はまだまだありそう。ん?」
右手に持った注射器を見ながら仮面の中で笑みを浮かべていた狐面の女性の端末にある人物から連絡が入った。
「はいはーい、どうせあの監視対象のことですよね?あいつなら死にましたよ、はぐれ対魔忍と鋼鉄の魔女によってね」
『…そうか、私にとっての脅威が一つ減ったか、だが奴は…双賀の末裔はまだ生きているようだな』
「今殺せだなんて言わないでくださいよ、あいつにはまだ利用価値がありそうですから」
『いや、君への指示はバルド・バルドの監視だけだ。すぐにこちらへ帰還しろ、'双賀の者,よ』
「ええ、私の新たな戦力と共に帰還させていただきますよ'エドウィン・ブラック様,」
狐面の女性、改め双賀の者は帰路につくアンネローゼたちを一瞥するとすぐにその場から姿を消した。
相も変わらず初出の術解説
「流遁 響詐洗動」
自身の対魔粒子を流した相手を洗脳し、意のままに操る恐ろしい術(本人談)
ただし、様々な意思を持つ人間には効きが悪く、操れるのは本能で動く動物や怪物くらいである。
「篝火流業火遁 火之迦具槌」
篝火の使う最強の術、実体を持った炎の巨人を顕現させ、焔の大槌で敵を叩き潰す。この時の篝火の体内の温度は彼曰く「ヤバい」らしい。
「篝火流業火遁 オーバーヒート」
技名は言ってませんが一応、塔の中を超高音に熱していた篝火の術。体内で生成した熱を辺りに放出する術である。
次回エピローグと過去話をしてから蒼月のはぐれ対魔忍としてのお仕事を見せようとおもってます。