五車町…全国に散らばった対魔忍とその家族が住む対魔忍の街である。
その街中にある学園、五車学園に蒼月は開いてた教室の窓から勢いよく入り込んだ。
その中の生徒たちが驚き、悲鳴をあげるが、それよりも先に少し離れたところにある校長室にノックをして、入れと言う校長の声を聞くとともに校長室に入った。
「帰還しましたよ、アサギさーん」
馴れ馴れしい挨拶をした蒼月に目の前の人物、井河アサギは厳しい目つきで彼を睨む。
「今は先生と呼べ、蒼月」
「嫌だなアサギさん、俺は'元,生徒ですよ」
'元,と言う言葉を強調し、蒼月も目つきを変える。今の彼にとって井河アサギは先生ではなく情報を提供し合う言わばビジネスパートナーのような関係であった。
「そうだな、だが入り方は考えろ、教室の悲鳴は貴様の仕業だな」
「これでも騒ぎの少ないように入ったんですけどね、素直に校門から入ったらそこら中真っ赤になりますよ…俺に襲いかかった対魔忍どもの血でね」
今蒼月が言ったのは全て事実である。
彼は抜け忍になった後でも何度かアサギに助けてくれたお礼として裏世界の情報を資料にして持ってきてくれるが一度だけ校門から入ろうとした時、彼の姿を見て襲いかかった対魔忍たちを数人まとめて相手をした結果が彼が今言った通りであった。
そのため、アサギは侵入方法についてはこれ以上何も言わなかったが、新たな資料を蒼月に渡し、蒼月も対魔忍たちのデータが入っているUSBを彼女に渡した。
「これがヨミハラの最近の情勢だ」
「ありがと、ここ最近はアミダハラにいたから、最近のヨミハラのことはわからなかったんだ…んで、他のやつはどうでもいいが、ここにゆきかぜに凛子さん、そして涼姉がいるんだな」
彼は五車学校にいた時ある理由で他の生徒、先生から敵視され、殺されそうになったこともしばしあり、前述の校門の襲撃の理由も彼がただ抜け忍だっただけじゃなかった。
その中でも仲間と呼べるものはいた。
それが水城ゆきかぜとその幼馴染で彼氏の秋月達郎、そして彼の姉の秋月凛子…そして自分を受け入れ、チームを組もうと言ってくれたすず姉こと緑院涼音であった。
その内の三人がヨミハラに任務に行ったきり、帰ってこないのであった。
それをアサギが蒼月の知人を通して連絡、彼は拠点にしてたアミダハラから慌てて五車町に戻ってきたのである。
「いや、ゆきかぜの動向は分かっている…だが」
「動向?どんなヒントでもいい、見せてくれ」
蒼月の頼みにアサギは歯を食いしばり、とある生徒から預かったパソコンを起動させ有料動画サイトを開いた。
アサギの隣に移動した蒼月が画面を見て、嫌な予感が脳裏をよぎる、アサギが動画を再生をした瞬間、その予感は確信になった。
画面の向こうには数多の男たちを前に女性の大事な部分を晒したまま、足を開いて、男達を誘う言動をしているゆきかぜの姿があった。
その後、彼女は男達と…と言う前に蒼月がパソコンを力強く閉じ、アサギの胸ぐらを掴んだ。
「どう言うことだこれは⁉︎なんであのゆきかぜがあんな男達に股を開く娼婦みたいなまねしてやがる⁉︎」
彼は目の前の光景を、信じられないでいた。
ゆきかぜは仲間であり、良き戦闘訓練の相手だった。
だから知っている。彼女の強さを、その身で思い知っていた。
それに彼女は達郎のことをいつも好きだと言うのも知ってる。蒼月は友達の秘密は必ず守るからとゆきかぜの惚気話を聞くこともあった。
そんなゆきかぜが行なっていた行動に彼は晴らせぬ怒りをアサギに向けていた。
「すまない、ゆきかぜは…ヨミハラに母がいると言う情報を聞いて…侵入するために…凛子と共に娼婦に…」
「⁉︎」
蒼月は胸ぐらを掴んでいた手を離した。
今校長室にはアサギと蒼月以外いなかったが、
もしアサギの妹のさくらやアサギの親友である紫がいれば彼の首が飛んでいたかもしれなかった。
「そして達郎もこの任務についていた、最初は娼婦のことは知らされずに」
「ッ!、じゃあ達郎は⁉︎」
「今、案内する」
アサギと蒼月が保健室に行くとそこには目に光のない達郎がベッドの上にいた。
「彼はゆきかぜが娼婦と知った後も矢崎から送られた動画を見ていたらしい、そして妊娠したゆきかぜの幻でも見てたのか、廃人になった所をここに送…蒼月?」
蒼月は寝ている達郎に近づき、頭に手を置く。
「なぁアサギさん、こいつとゆきかぜはどこまで行ってた?」
「まだキスだけだと凛子が」
「ハハ、あいつらしい、ガツンといけって言ったら頬染めながら、俺に怒ってたこともあったわ、そして凛子さんも…」
「あぁ、ゆきかぜと同じく、だが涼音の連絡が途絶えたのはつい最近だ」
その言葉に蒼月は瞠目した。
涼音はゆきかぜや達郎、凛子と同じ…いや、それ以上に大切な存在であった。
「なぁ、アサギさん」
「どうした?」
「ヨミハラにパイプ役、いるだろ?」
「あぁ、ゾクトと言う奴隷商人が…まさか⁉︎」
「何、全部奪い返してやるよ、ゆきかぜも、凛子さんも、そしてすず姉も…だから達郎、ゆっくり夢でも見ててくれ。あんたの起きる頃には…全て終わる」
蒼月の手が達郎の目を通り過ぎると達郎は目を閉じ、眠ってしまった。
「俺がいればこんな悲劇が起きなかったんだ、せめてものけじめはつけてやる」
ヨミハラのとある娼館
「ブフー、君が初めての子かな?」
「はい、愛菜海って言います♡」
初体験だと言う一人の娼婦の部屋にデブの男が入ってきた。
男は裏社会を牛耳る男の一人であり、この娼館の上客であった。
「君みたいな子をめちゃくちゃにできるなんて僕幸せ者だね」
「はい、私、あの元対魔忍?って人みたいになりたいんです」
「ん?ゆきかぜちゃんのこと?最高だったよ、何回入れてもキツキツで締まりが良かったよぉ、愛菜海ちゃんは大丈夫?ガバガバになったら飽きるからね、この後、実験体?になってるゆきかぜちゃんレイプコースにも参加してるからね」
その一瞬、愛菜海はその男を蔑むような目で見たが、すぐに表情を取り繕い、男の胸に顔と手を寄せた。
「でも私初めてだから緊張してるんです一緒に深呼吸してください」
「わかったよ、嬉しいね、こんな密して、胸がはち切れそうだよ、じゃ、君の髪の匂いを嗅ぎながらでいいかな、いくね、スー…」
瞬間、ブシャ、っと言う音が男の胸の中から聞こえてきた。
「あれ、僕の胸本当にはちき、グッ」
その音を境に呼吸ができなくなっている。
自分の身体がおかしい、まるで…
「まるで酸素が肺にいってない、って感じになってますかぁ♡」
「ガッ、ガッ」
「そりゃそうですよ♡だって肺への管、切っちゃいましたもん♡」
「オッ、オッ」
「大丈夫ですよ♡お代は…あった♡今言った場所の書いてある紙で充分です♡」
愛菜海は男のポケットからついさっき聞いたコースの場所の紙を抜き取った。
「オッ、アッ」
「もぉ♡ゆきかぜさんのヤりすぎ自慢に私、腹がたっちゃったから♡てめぇに生き地獄見せてやろうと思ったんだよ!」
愛菜海の突然の豹変に男は驚き、助けをよぼうにも、声が出せなかった。
愛菜海は部屋の脱衣所からタオルを取り出し、窓に腰掛ける。
「苦しみながら死にやがれ、クズ」
愛菜海は後ろ手に中指を立て、そのまま窓から落ちていった。
数時間前、奴隷商人のゾクトはアサギから一人の対魔忍を娼婦として潜入用に送ると言う連絡を聞いて待っていた時、そこに来たのはあのはぐれ対魔忍であった。
そしてゾクトは出会い頭に3発ぶん殴られた。
彼曰く「三人を見捨てた罰」であった。
しかし娼婦は女性しかなれないと言うと、彼は狐の面をゾクトに向けて投げつけた。
ゾクトがそれを避けるとそこには忍びの姿はなく、彼のいた所に女の子がいた。
彼女はゾクトに媚びを売るように二枚の写真を見せる。
「愛菜海です♡このお客さんの相手をしたいのでこのお店に入れてください♡」
と言った彼女を伝手でその娼館に入れた数時間後、娼婦内で男が殺されたと言う報せを聞いた。犯人は今日入ったばかりの愛菜海と言う娼婦だと言う報せも一緒に聞いてゾクトは卒倒しそうになった。
「あの野郎、やりやがった」
「おいゾクト!出てこい!殺してやる!」
あの娼館の店長である知り合いの声が聞こえる。当たり前だ、あの店の上客をゾクトの伝手で来た娼婦が殺したのだから、
「…逃げる準備、するしかないのか」
これ以降、奴隷商人のゾクトの名は誰も聞かなくなったと言う。
ヨミハラのとある建物の屋上
そこに愛菜海の姿があった。
「ちょっと語尾にハートを入れすぎたかな」
いや、愛菜海ではない、彼女は懐から狐の面を出し、被る、するとそこには娼婦の姿などどこにもおらず狐の面をつけ、対魔忍の戦闘服を改造したような装束の忍びがいた。
はぐれ対魔忍である、彼は自身の術で姿を変え、男の身体の中を切り裂いたのである。
「って忘れてた、ばっちい!ばっちい!」
彼は慌てて面を取り、娼館から拝借したタオルで男と接触した部分を拭く。
タオルには相当汗と垢がついていたとだけ言っておく。
そのタオルを放り投げ、彼は男から抜き取った紙を見る。
「ここにいるんだな、ゆきかぜ」
はぐれ対魔忍…いや、蒼月はヨミハラの景色を見る。
あの明るさは偽善の明かり。
その裏に数多の犠牲と絶望がある。
その中にゆきかぜ、凛子、そしてすず姉がいるのなら。
「全員救ってやる、待っててくれ、みんな」
蒼月はそう言って娼館の屋根から飛び降りた。
pixiv版からの変更点 すず姉を涼姉に変更
「すず姉」にするとヤングマガジンの作品に同名であだ名も同じというキャラがいたのでせめて漢字だけでもと変更
最後の文を一部変更
文に違和感を感じて変更
2度ほど試し読みして確認してますが誤字とかあったらぜひコメントで教えてください。