「会いたかった!!」
走って来た桜花が俺の顔に胸を押し付けるまで飛び上がり、俺は落とさないようにお尻と腰を抱えた。
「桜花、おっぱいで苦しい。」
ピョンと俺の手から降りると、両手をもって左右にブンブン振る桜花。
「久しぶりなんだから!良いでしょ!」
一切会う事も連絡する事も無かった、あの夏の思い出が明確に蘇った!
両手を振る度に、その大きなお胸がブルンブルンと揺れてるんですけど。
それを桜花の後ろからジト目で見ている俊介。
「お前知り合い?って言うか彼女?さっき知らないって。」
「え?知らない?私にあんな事やこんな事をして、挙句の果てにあんな姿を見られて…恥ずかしさの余り、次の日挨拶も出来ずに早々に逃げ帰った私を。」
俺を軽く睨んでくる桜花。
「いや、知らないって言ってないし!」
「いやっ!壇上に上がった彼女を見て知らないっていったじゃん!」
「アレは見えないから分からないっていったんだよ。って!桜花主席?!」
「へへんっ! 元々頭はいいのら~参ったか?」
「何故経済学部?」
「うちの会社に入るのに、医学部なんて役に立たない…まあ立たない訳じゃないけど、こういうの趣味じゃないからね。」
「桜花って…確か桜グループだったか?」
「さっ!桜グループ?! 付き合って下さい!」
俺の話を聞いていた俊介は桜花の腰に抱き着いて告白していた!
「ええい!お尻を触るな!顔を擦り付けるな!あたしは圭君のモノなの!!」
桜花は俊介の頭に肘を食らわしゲシッと蹴り飛ばした!
「あうっ!ナイスキック!」
こいつも負けてないな…
高給スーツが汚れるのも気にせず、もう一度飛びつこうと狙いを定め、お互い対峙していた。
その時!
「あれ?圭介君見つけた!」
後からやってきた仁科と美香さんが寄って来る。
「あうっ~またまた綺麗なお姉さま!お姉さま達で良いから俺と付き合って下さい!」
方向を変え、やってきたばかりの二人の手を握る俊介。
「お姉さま?……」
「達ですって?……」
「そうそう!どっちでも良いから!」
「「私は…」」
ヤバイ、二人とも目が据わってる。
「同じ歳だ~!」
「同時にナンパするな~!」
ゲシゲシと蹴りを喰らい悶える俊介。
「まあまあ、悪気があっての事じゃないから。」
「この男、圭介君の友達?」
「ああ、入学式で一緒だったんだ。長野俊介って言うんだ。」
「よろしくね、可愛い子ちゃん。」
俊介は蹴りを喰らった美香さんの足に抱き着き、やあ!と片手を上げていた。
「いつまで抱き着いてんの!」
ほっぺにゲンコツをグリグリやられて幸せそうだ。うん、こいつのナンパはしつこさ命なんだな。
「この細い足に惚れました!ああ、おっぱいも大きいっすね!美人大歓迎っすよ!付き合いましょう!」
「いやあ~!」
足にチューしようと口を尖らせる俊介を手で押して阻止しようと美香さんが奮闘中だ。
「俊介、そろそろ離れないと警備員が来るぞ~」
俺の一言でシュタッと立ち上がり短い髪を整える。
「ご一緒にランチでも?」
「あんたは二重人格か!」
更に蹴られる俊介を黙らせ、学食へと引っ張って行く。
かなり多い食堂に着き、自己紹介を兼ねて二人を紹介した。
「圭ちゃんのセフレ。」
まだ頭に来ているのか、美香さんは一言爆弾発言をして、回りの学生がギョッとして見て来た。
「圭介くんにふぇ、ふぇ、フェラならした事あるよ…」
恥ずかしそうに余計な事まで言っちゃう仁科に、回りの耳がダンボになる。
「去年海で圭君に全てを捧げた桜小路。」
今まで聞かれても無かったし、教えても無かった事にギョッとする仁科と美香さん。
「ムフフ、クリスマスから私達は同じ時を過ごしているのである!」
勝ち誇った顔でスーツの袖から白い時計を出して来る桜花。
「あ!」
クリスマスに知らない人から送られた時計。この時計と全く同じモデルの小さいバージョン……
「ペアモデル…」
「そう!太陽が私達を照らす限り、この仲は永久に時を刻むの!」
「お前、図ったな?」
「ずっと時計を付けてくれてたんだね。私、うれしい…」
時計に頬ずりする桜花。
やられた…
「おい、圭介。お前の彼女は誰だ?」
「はーい!私でーす!」
隣に座っていた桜花が大きな声で俺に抱き着く。
「おい、皆見てるって。」
「こういうのは初めが肝心なの。周りに分からせるのよ。要らない邪魔者が減って楽だわ。」
「って事でどちらかくれ!」
まだ諦めない俊介。
「私はセフレだから。」
二度も周りに言いふらす美香さん。
「じゃあ千歳ちゃんが俺の彼女って事で!」
「ええっ?」
「だって今フリーでしょ!圭介も彼女がいるし、取り敢えず付き合おうよ。俺も圭介みたいにそこそこカッコイイでしょ!」
「まあ…それはそうだけど…………じゃあ取り敢えずだよ。」
ジト目で見ている仁科…
ゲッ!マジかよ!!
そう言えば、隆之の時も付けるだけだよと言ってゴムを口で付けてたりしたっけ。
そしてそのまま本番までしちゃって、やったから取り敢えず付き合ったみたいな感じだったし。
俺の仁科と付き合う大学生活は終わった…………
隣を見るとにへへと笑いながらおっぱいを押し当てる桜花の顔があった。
「なあ桜花の両親は来たのか?」
御飯を食べ終え、同じ経済学部の俺達は仁科と美香さんと別れ専用講堂に入って行った。
「仕事が忙しいからって来てないよ。圭君とこは?」
「うちん家も同じ。独り立ちしろってさ。」
久しぶりの再会に色んな話をする俺らの横で、スマホを見ながらヘラヘラしている俊介。
もうLINEのやり取りをしているみたいだった。
「お前さっきから気持ち悪いぞ。」
「だって千歳ちゃん可愛いんだもん。お兄さん義兄弟になるな。宜しくね。」
「俺は仁科とやってねえっ!」
「フェラまでさせといてやってないとは……インポ?」
「勃つわ!」
「それは私がこの身で体験したから間違いないわ。」
「お前も言うな…」
俺もだが、俊介と桜花の言葉に、講堂がザワザワしていた。
「皆にバレちゃった。」
「俺も千歳ちゃんとラブラブ写真撮りたいなぁ~っ圭介、写真撮ったら送るな。」
「勝手にしとけ。」
「(´Д⊂グスン、冷たいのね。桜花ちゃん、慰めてぇ」
俊介は俺を挟んで座っていた桜花の胸に人差し指でツンツンする。
グサッ!
「うおっ!ペンが!ペンがあ!」
どうやらボールペンを持っていた桜花に刺されたようだ。自業自得だ…
ってか、こいつ手が早いぞ。桜花まで取られてたまるか。
「はい、静かに。これから経済学部の説明を始める。」
学部長らしき人が出てきてみんな静かになった。
って言うか騒いでいたのは多分俺達だけだ。学部長と目が合ってしまった…………
カリキュラムや講義の説明、教授、助教授から先生方の紹介、パソコンの使える場所からWi-Fiの説明など色んな説明があり、明日から本格的なオリエンテーションが始まる旨の説明があった。
流石に俊介も大人しく説明を聞いており、一応目を付けられる事は無かったと思いたい。
「なあ圭介。サークル何に入るか決めた?」
説明会が終わり、先輩方が並ぶ新入生のサークル活動の勧誘通りにやって来ていた。
「うん、高校でもやってた美術系に入ろうと思ってたんだ。」
「ほー美術ね。俺も入ろっかなー。お前といると女子が集まってきそうだし。パソコンでのアートなんかは結構やってたんだけどな。」
「デジタルアートって奴?」
「ああ、写真を撮って加工したりしてアートっぽくする感じだな。」
「それ…女の裸じゃねえの?」
「う゛っ バレてますか?」
「まあな。それでもいいんじゃね?大学だったら裸婦像なんかもあるかもしれないし。」
「だよねー!サークルだったら真面目に行かなくてもいいし!お姉さん達も多そうだよね~」
隆之みたいに毎回やってる所を写真に撮っている奴もいるんだろう。女次第だけど。
勧誘している一角は大賑わいだった。
運動部から文学部、訳の分からないサークルや、ヤリサー紛いのサークルもあるように見える。
「桜花は何に入る?」
「もちろん貴方と同じ美術ですわ。これでも絵画を見る目は持っているつもりよ。」
「どうせ実家にはお高い絵画が飾られてるんだろ。」
「もちろん。圭君に私の姿を書いてもらおうかな。」
「1年ちょっとしかやってないし、飾れる程の腕はないよ。」
「それでも記念になるの! あっあれじゃない?」
簡易テントに美術サークルの名前が飾られてある。
それもパソコンでデザインしたアートっぽいヤツだった。
「アナログ、デジタルありそうだな、俊介。」
「ラッキー!あ、お姉さんさっきぶり~同じサークルっすね!」
そこには先に終わった美香さんと仁科の二人もいた。
「あんたは千歳の彼氏でしょうがっ!」
会うなり怒られていた。
でも、こんなに感情をむき出しにする美香さんも珍しい。冷静でクールな美香さんなのにな。
美術サークルは、思っていた通り女子が多いサークルで、1年男子は今の所1名しか入っていないが、俺達を除けた女子はもう4名も名前が記入されてあった。
「やっぱり高校とは違うよな。」
「私の高校では無かったと思うけど、やっぱり少ないの?」
「そうじゃないかな?俺達が三年の夏に引退した時、誰も居なくなって廃部になったくらいだからね。」
俺目的だった小島が辞め、仁科と別れた隆之も辞め、一人ではどうする事も出来ない小室も辞め、美術部は廃部になった。
でも、全校生徒が遥かに多い大学では、入る人も多かったみたいだ。
「今の所サークルの中心は2年生が中心よ。3年になると就活が始まるから引退に近い状態ね。」
受付の女性先輩が説明をしていた。
だんだん早くなる就活次期が3年を待たずに始まっているってのは本当だったか。
昔だったら3年の冬位が引退って聞いてたんだがな。
就職か。
2年なんてあっと言う間なんだろうな。
あ、長野さんに正社員制度の事を聞いてみようかな。
ん?って事は桜グループ…これは桜花の会社か?
「なあ桜花、桜グループでバイトを募集してたか?人材派遣会社の長野って係長だけど。」
「名前まで知らないわよ。グループに人材派遣はあったけど、あっ。そう言えば親にどんな男だとか聞かれたわ。バイトで雇ってどんな男か調べるつもりなんじゃない?」
「なんだそれ。」
「私は関知してないわよ。もし桜グループが入っているのなら、どんな手を使ってでも調べると思うわよ。務めていたバイトを辞めさせ、自分の息が掛かる場所でどういう人か調べるくらいはするわね。」
「マジかよ。じゃあ働いてもないバイトが首になったのは?」
「うちの者の仕業よね、多分。後で担当を教えて。」
「ああ、分かった。」
そう言う事か。
でも、今から就職先が確保できるのは良いよな。コングリマリットって言う事だから異業種が集まってんだろ。
俺が目指す企業があるかもしれないし、ここは桜花の策に乗っておくか。
保険だ保険。
こうして俺は美術サークルに入る事が出来た。
今の所俺ら5名の他に5名の1年が入部予定だ。2年はと言うと受付にいる河合さんと言う部長以外に3名いるらしい。
3年は殆ど来ないらしいので論外だ。
それと意外な事に男は俺と俊介、そしてもう一人の1年しかいなかった。2年は全て女子だ。
これに俊介が食らいつく。
「ぐへへへハーレムや、俺はハーレムを作るんや。」
邪悪な面がモロに出ている。
こんなのと付き合って大丈夫っかなと言う顔の仁科が見ているが、面倒見の良い仁科の事だ。意外にコントロールするに違いない。
さあ、明日からのオリエンテーションの準備をしなきゃ。
……………あれ?俺、引きずられてる。
「一緒に帰るのよ。 愛沢、車を回しなさい!」
「あの、俺自転車で来たんだけど…」
「明日は車で来て自転車を乗っければ心配ないわ。」
遠くで俊介が手を振っている。
それも仁科の肩を抱いて。
その横で苦笑いしている美香さんも手を振っていた。
混雑する正面門に来ると、真っ黒なリムジンが停まっていた!
「おいなんだこのリムジンは。」
「マイバッハS600プルマンだったかしら?」
「そう言う事を聞いてるんじゃねえ。これは何だ?」
「ああ、そう言う事ね。心配しないで、防弾防爆のガード仕様だから。本社のを寄こしたのよ。今日は人も多いでしょ。だからこれで送ってあげる。」
にへへとダークサイドへ堕ちたような笑顔で言ってきた。
「おい、自転車で20分程度だぞ。」
「大丈夫よ、混んでても車で20分位だから。」
「おま、それ意味なくね?」
ばむっ!
分厚いドアが閉まり後部の四席ある後ろ向きの座席に座らせられた。正面には俺を向いて座る桜花がいる。
「愛沢、出して。」
シュッと音を立てて運転席との間にあるパーテンションが上がる。
「むふふ、これで誰にも邪魔させないわよ。」
スーツのジャケットを脱ぐ桜花。
「おい、ココは車の中だぞ。」
「圭君と私の間には何の障害もないわ。私の全てを知った貴方は、私を好きに出来る権利がある。また逆も然り!」
言い終わった桜花は後ろ向きに座る俺の所に飛び込んできた。
9か月振りの桜花のキスは、とても熱くそして甘美だった。