揉める俺と桜花の前に車で現れたのは結衣とその彼氏である俊介だった。
「何で俊介が来るんだよ。それに結衣!俺がお前に何をした!!」
俺の怒りが爆発し、俊介の後ろへと隠れる結衣。
「そう怒るなよ。結衣が大変な事になるかもって来てみたんだが、喧嘩の最中か?」
「うるせえ!お前には関係ない!」
俊介に隠れている結衣を睨み付けていた。
「折角結衣ちゃんが教えてくれたのよ、邪険にするって、本当にあの人と浮気をしてたんじゃないの?
あの人だけは嫌だって言ったじゃない!
何で隠れて会ってたのよ!」
「違う!俺は隠れて会ってない!それに――」
「聞きたくない!圭君なんて会わなければ良かった!もう終わりよ!何もかも終わりなんだからあ!」
「そんな!これはハメられたんだって!桜花!冷静に俺の話を聞いてくれ!」
「圭介、往生際が悪いぞ!浮気をしたのはしょうがないが、夏休みの間スワップして、それからもずっと会ってたんだろ」
「そうよ!会っていたに違いないわ!」
「結衣!お前が言うな!!あの時お前は――」
「もう全部イヤ!私のバイクも乗ってくれないし、もう私なんかいらないんじゃないの?
だって初恋の相手なんでしょ、仁科さんって。私なんか口も悪いし、あんなのマネ出来ない!
バイクはあげるわよ!気に入らないんなら売ってしまえば?車は明日にでも引き取りに行くから。仁科さんとお幸せに」
「あのなあ!桜花!」
「人の名前を気安く呼ばないでぇ!もう嫌ああ!全部!全部イヤなのおおおお!」
涙をポロポロと流しながら泣き始めた桜花。
今は何を言っても無駄なのかもしれない。
1言えば倍になって帰って来る。
少し収まれば桜花も冷静になるだろう。
「桜花がそうしたいんだったら俺は何も言えない。でも分かってくれ!俺は――」
「圭介、見損なったわ。あの時だけの関係だと思ってたんだが。桜花ちゃんがダメと言ってた千歳とこっそりあってたのは事実だろ。もうお前に桜花は任せられない!桜花は俺が守るからな!これから近づくなよ!!」
「え?」
「え?」
俺と誰かが声を上げていた。
「俺は本気だぜ。絶対に桜花を泣かせやしない!これからは俺が彼氏として桜花を守るからな!」
俊介は泣いている桜花に近づき、涙を指で拭い、そしてキスをした。
俊介の車のライトに照らされる二人は、口の中が動いていた、口の中がどうなっているのかなんて想像が出来た。
「え?え?」
誰かが何か言っている。
だが、目の前で見せつけられるディープキス。舌を絡め合い、挙句の果てには胸まで揉んでいた。
ブラ無しの胸は形を変え、撓み、変形し、そして俺にまで鼻息が荒くなっている様子が聞こえた。
そこにいる二人は恋人同士でしかする事の出来ない行為を行っており、先日まで恋人と思っていた桜花に対して無抵抗で見せられる。
その行為はとてもショックだった。
随分長いキスを見せつけられた。
唇が離れる時に、舌と舌が伸びて唾液がライトで光っていた。
そして泣き止んでいた桜花が一言言った事で全てが分かった!
「バカぁ、こんな時に……ここでしなくっても…………」
え?
「お前…………ひょっとして…………」
「俺の彼女にお前って言うな!もう別れたんだろ!桜花は俺の彼女だからな!」
俊介は車に桜花を乗せて、目の前の高級マンションの駐車場へと入って行った。
駐車場から現れた俊介は、片手でバックを持ち、そして反対側の腕で桜花の肩を抱いていた。
そして俺らを振り返ると出入口の目の前で、これ見よがしに再びキスをし、俺らをチラ見してからエントランスへと入って行く。。
中へと入って行くのを俺はショックの余り見ているだけしか出来なかった。
呆然と立ちすくむ俺。
冬の冷たい風が身体も心も冷やしていた。
だが、桜花が最後に言った言葉。
“ここでしなくっても”
じゃあどこでしたんだ?
“こんな時に”
ってなんだ?じゃあ何時《いつ》どこでしたというのか?
ハメられた!!
何が原因かは分からないが、多分桜花が隠れて会っていたのは俊介だ!
一ヶ月の間、俺に隠れてどこで何をしていたのか?
あんなに嫌っていたと思っていたのに、何処で何を間違えたと言うのか?!
プルルルル
突然電話の音が聞こえ、正気に戻った。
着信音は俺のスマホでは無く、音のする方を見るとそこには俊介と一緒に来たはずの結衣が立ちすくんでいた。
電話の音で正気に戻ったのは、結衣も同じなようだった。
「はい!私だけど!何でこんな事に!え?ええ?別れる? なにそれ?ちゃんと言ってた事したじゃない!一ヶ月間も合わずに頑張ったじゃない!結婚も考えるって言ったじゃない!何でこんな事になるのよ! ねえ!ねえ!聞いてるの!聞いて…………………………」
膝から崩れ落ちる結衣。
「お前も騙されたのか。お前がこんな事をしなければこうならなかったのかもな。自分で自分の身を亡ぼすってやつだ。今度からは考えて行動しろよ」
悲しすぎて、悔しすぎて結衣を責められる事が出来なかった。
俺は軽いはずのバイクを押して行く。
やけにバイクが重たく感じられた。
ああ、この買ったプレゼント……無駄になったかもしれないな。
背中に背負ったバックの中に、仁科と結衣のおすすめで買ったクリスマスプレゼントのリングが残っていた…………
自分の部屋に戻り、ベッドに腰掛け呆然としていた。
今となっては結衣はどうでも良く、セキュリティーのしっかりした桜花のマンションに忍び込むのは無理だった。
明日、大学で会った時に説明すればいい。
まだ可能性が無くなった訳じゃない!
入学式で久しぶりに出会い、そのまま流れで付き合った。
献身的に色々してくれる桜花に次第に惹かれ、気が付けば一番大事な人へとなっていた。
いつから俊介と繋がっていたかなんて気にしない!
いや……少しは気になるが、『雨はいつか止む』『汚れれたら洗えば良い』が信念なんだ。
いつかこの傷も笑って過ごせると信じていた。
もう直ぐ冬休みが来る。
それまでにこの勘違いから始まった事を説明しなきゃ!
余り遅いと取り返しのつかない事になってしまいそうだった。
高校に入り、気に入っていた仁科にいつか告白しようと思っていた。
それが隆之が買ってきたコンドームから始まったフェラチオ行為。
爆発した隆之が仁科とヤリだし、そのままホテルへ。
その時思った。
いつかじゃダメなんだ。
思ったが吉日と言う言葉は確かにあった。
高校に入ってからでも告白は遅く無かったのだ。
引き延ばした俺が悪かった。
どっちにせよ、もし付き合っていたとしても結局は性生活の不一致で別れただろう。
攻める方が好きな二人。
上手くいく訳が無かったのだ。
だからと言って告白が遅くなった言い訳にはならない。
だが、その事は仁科と話をして終わった事だった。
俺は桜花が好きだ。
もう二度と離したくない!
多分結婚してもうまくいくだろう。
だから桜花の本音が聞きたい。
もし誤解が解けて、それでもダメならば諦めよう。
だけど、俊介よりも俺の方が良いと少しでも思ってくれるのならば、全力で愛そう!
その切っ掛けが……話を聞いてくれるかどうかは桜花次第だが。
俺は昼から何も食べておらず、買い置きのカップラーメンでも食べようと思った。
今から外に出て何かを買う勇気も気力も残っていなかった。
琥珀や心愛と一緒にいるのも失礼だと思った。
時計を見ればあっと言う間に9時になっていた。
俺はキッチンへと行き、ケトルでお湯を沸かす。
棚の中から買い置きのカップ麺を取り出した時、メッセージの着信音が鳴った!
直ぐにスマホを持ち、画面をタップして確認する!
「えっ」
これは戦線布告か?
それとも戦勝報告か?
画面には全裸でベッドに仰向けになっている桜花の姿が映っていた。
腕を上げ、一切隠す事をしない桜花は少し微笑んでいた。
少し前までその笑顔は俺のモノだったのに。
そして次の画像はその身体に跨り勃起チンポを胸に今から挟もうとしている所だった。
そして…………
最後の画像は、その結果桜花の可愛い顔に顔射している所だった
何筋もの白濁した射精の後が顎から上へと伸び、目を瞑った桜花の鼻や目、口元にも白いスジが出来ていた。
『俺の桜花だから、お前には渡さない』
その画像とメッセージをいつまでも俺は眺めていた。
ピーピーとなっているケトルの音が聞こえないように周りの音をシャットダウンし、ずっと眺めていた。
何処かで救急車の音が聞こえた気がしたが、俺の意識は画面から外れなかった…………