※この作品はR-18です。

千歳 ~その後の千歳~   作:A.N.F

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佳境を迎えています。
次話がラストになります。


第86話 二人の最後

 

 

 俺はペッタンコのお腹を両手で包んだ。そこそこくびれのある腰からお腹へと手を滑らせる。

 

いや、全く膨らんでいない。

嘘か、それともまだ妊娠初期だからか?

 

軽く前かがみになっていた俺の目に駐車場のライトに照らされた何かがキラリと見えた。

 

 

ドンッ

 

無防備の左脇に鋭い痛みが走る!

 

咄嗟に後ろへと下がってみると、何かが左脇から飛び出ていた。

 

木?ゴム?

 

黒っぽい何かが何かが飛び出している?

 

前を見ると結衣が笑っていた!

 

「このクソがああ!」

 

ズキンッ!

 

「う゛ッ」

 

鋭い痛みと熱さ!

咄嗟に刺さった物を抜こうと右手を伸ばすが、鋭い痛みで抜く事や、触る事すら出来ない!

 

 

ザシュッ!

 

「ひぃッ」

 

右首に痛みが走り、振り向くと血が!俺の血が噴水の様に出ている!

 

手で押さえても出て来る血液!

ゴボゴボと喉の中にも血が入り苦しくなっていく!

 

 

「死んで! もうあんたは要らない!死んで頂戴!」

 

首を押さえる俺が見た物は、包丁の様な物を振り被る結衣の姿だった。

 

ドンッ!

 

という衝撃と共に目に痛みが走り、倒れた俺をめった刺しにしてくる結衣。

 

何で

 

何で俺がこんな事に?

 

熱かった脇や首も感覚が無くなり、寒くなって行く。

 

そして次第に痛みも消え、意識も……………なくなって……………

 

 

 

 

◆結衣◆

 

 

 私を裏切った男は目の前で血を流しながら静かになっていった。

 

死んで当然よ!

 

あんなに尽くして愛していたのに!

 

こんな仕打ちは考えられなかった。

 

だけどもう私の行く所などどこにも無かった。

手首を切ったけど死にきれず、親からはバカな事をと怒られる。

 

帰ってきなさいと言う事を聞かず、もうどうにでもなれと思っていた。

 

でも、裏切ったアイツは許さない!

 

最後のチャンスを不意にしたアイツの心臓付近に持って来た包丁を横から突き刺した!

 

作戦は成功。無抵抗のまま脇腹に包丁が刺さった!

だが、心臓までは届いておらず、信じられないと言う表情のコイツのがら空きの首目掛けて一閃!

 

1/3程切り割いた首から血が噴水の様に噴き出る。

 

何か言っているコイツの目を目掛けて私は包丁を突き刺した!

 

倒れるコイツに刺す!刺す!刺す!刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す刺す

 

何処かの骨にでも当たったのか。

気が付くと包丁は折れていた。

 

言っ圭が分からなくなった顔にツバを穿き、表に停めた車から青いジャンバーに着替える。

そして箱を持ち帽子をかぶり玄関へと入って行く。

 

インターフォンを押すのは泥棒ネコの桜花のすぐ下の階に居る誰か?

 

直ぐに返事がして宅急便だと言うと玄関を開けてくれた。

 

 

泥棒ネコ住む直ぐ下の階までエレベーターで行く。

そして非常階段で上にあがり、段ボールから出した携帯ガソリン缶から通路、ドア、階段、エレベーターなど、ありとあらゆる所にぶちまける!

 

ドオオオオオオオオン!

 

階段からガソリンに火を付け燃えていく様を眺める結衣。

 

その顔は満足気な様子だった。

 

 

その後、階段にもう一つのタンクからガソリンを足れ流し、一階まで流すとそれまで火を付け、駐車場に行くと倒れている俊介に残ったガソリンをぶちまけた!

 

「さよなら。愛していたわ」

 

倒れて息をしていない俊介に抱き着き、そしてそのまま火を付ける!

 

爆発的に燃えだす俊介!

抱き着いたまま火だるまになる結衣!

 

 

暴言を吐いていた結衣がどうして一緒に死のうと思ったのかは、遺書も無く無からなかった。

 

だが一つ言えるのは、この二人の間に何が有ったのかが一切分からなくなってしまった事だけであった。

 

 

 

 

◆圭介◆

 

 

 俺らの車列が桜花のマンションに近づく頃、夜だと言うのに当たりは真っ赤になっていた!

 

火事だ!

 

 

一気に加速して隊列を抜け出す桜花の911!

 

前を走るSPのSクラスが追いかけていく!

 

俺も加速するが、鈍重なGクラスはV8turboと言えども桜花の911に敵う訳が無かった!

 

まだ消防車は来ていない!

 

だがマンション住人か、回りの人なのか、人だかりが辺り中に出来ていた!

 

限界まで近づく桜花の車!

出てきた所に追い付いたSPの一人が走りだす!

 

俺もクラクションを鳴らしながら追いつき車から降りると、SPに確保される桜花が見えた!

 

 

「大事な物が! アレが!アレがまだ部屋に!!」

 

「危ないです! 下がって下さい!」

 

「いやあ! アレだけは!アレだけは欲しいのおおおお!誰か取って来てえええ!」

 

 

桜花が叫んでいた。

何が

いるんだ?そんなに大事な物が部屋に?

 

爆音と共に燃え盛る駐車場の車。

一番最上階も燃える火が屋根を超えて火が上っていた。

 

不審火?

いや、これはアイツら二人……恨みを持っている結衣か?

 

都合良くマンションが燃えるはずがない。

多分結衣がやったんだろう。

俊介ならば桜花を奪いに来るはずだ。

 

俺は泣き叫ぶ桜花の元へと走って行った。

 

「おい桜花!危ないだろ! 下がれ!」

 

熱風が舞い上がり、近寄るとメッチャ熱い!

その中を入ろうとする桜花をSPに押さえられていた。

 

「アレが!あの絵がまあ部屋にあるの! 一つだけしかないあの絵が!!」

 

 

叫ぶ桜花。

あの絵……ハワイで書いた絵か!?

 

 

「もう無理だ! 絵ならまた描いてやるから!」

 

俺は押さえられていた桜花を肩に担いだ!

そして火事の現場から離れていく!

 

「待ってえ!お願い!あの絵だけでいいからあああ!」

 

「お前の命の方が重要だろうが!また書いてやるから我慢しろ!」

 

「あああ!あああ!一枚しかないのにいいい!お願い!おねがいいいいいい!」

 

 

 

 

まだ火事の炎は消えそうに無かった…………

 

 

 

 

◆心愛◆

 

 

「うらああ!」

 

「うぐうッ!」

 

 

白いバンに押し込められ、一人が私の側に来て、もう一人が車を発進させた。

直ぐに声を上げながら分厚い服を脱がされ、シャツを力で引きちぎられる。

 

インナーのババシャツまで千切られブラが丸出しにされるが、恐怖の為か寒さは無は感じていないが、ガタガタと震えていた。

 

 

アパートに向かっていたはずなのに離れていく。

その間にズボンのベルトを外されていく。

 

「へへへ、結構良い女じゃねえか」

 

「初めは中に出すなよ仁!」

 

「分かってるって圭さん。ちっと味見するだけっすよ」

 

 

ああ、やっぱり私回されちゃうんだ。

 

車が発進して10秒程経った時だろうか、いきなり斜め後ろから衝撃が走った!

 

「うおおおお!」

「なんだこりゃあ!」

 

後ろ斜めから誰かに押され、車高の高いバンはそのまま横転してしまう!

 

 

事故? 事故なの?!

 

 

シートをフラットにしており、そのシートの縁に手が入っていた!

車が横向きになる様子がスローモーションのように見え、引っ掛かっていた手に力を込める!

 

ガシャンと言う音と振動!そして砕けていくガラス!

破片が飛び散りながら車内で舞っている!

 

ドン!

何処かにぶつかり急停止するバン!

 

私はその衝撃で前へと吹き飛ばされる!

前席のシート裏に身体が叩きつけられ、真下に転がっていた私の服を剥いだ野郎の顔辺りに足から落ちた!

 

 

ボギッ!

鈍い音と共に足の裏に妙な感覚が伝わって来る。

 

 

「あがああああ!」

 

野郎が変な声で叫び出す!

運転席の男は冷静に上から這い出で行こうとしていた。

 

「あぶうばびひょはぶああ!」

 

「ふぁ?!」

 

出て行ったと思った男がフロントガラスを横切るように吹っ飛んで行く!

 

ガラガラと上にあるスライドドアが開き街灯で逆光になった上から男の声がした!

 

 

「掴まれ!」

 

「は……はい!」

 

ぐにゅぐにゅしている足元でバランスを取り、両手をいっぱい伸ばした!

 

パシっと掴んだゴツイ男の浅黒い腕!

 

 

一気に引き上げられる力強い腕!

塗し過ぎて男が真っ黒に見える!

 

ああ!私の王子様!!

 

そのまま私は抱きかかえられ、車から一緒に飛び降りた。

そのまま王子様は周りにいる二人の男に指示を出す!

 

「チャーリーを確保!暴漢を取り押さえろ!」

 

 

チャーリー?私ってチャーリーエンジェル!

 

王子様と天使!!

正にベストカップルだわ!

 

王子様の部下はあっと言う間にブッ飛ばされた野郎を押さえ、後部ハッチから私の服を破ったブ男を引きずり出して来る!

 

口からダラダラと血が流れ、顎が砕けている気もするが問題ナッシング!

私が出来ない事を颯爽としてくれる部下達!

 

みんなカッコイイ!

 

「おい!胸がはだけてるが大丈夫か?怪我は?」

 

直ぐ目の前にいる浅黒い王子様が私のしんぱいを……しんぱい…………

 

「誰あんた?」

 

目の前にいるのは唇も分厚く、厳ついを通り越した地獄の使者のような黒人だった!

 

 

「行ってくれと言われて助けに来たんだが、怪我は無いのか?俺はSPのジョンだ」

 

 

「ジョン…………わんわん?」

 

「犬じゃないです。元軍人です。怪我は?」

 

「元軍人…………味方?」

 

「はい、だからSPだと。で、怪我は?」

 

「ちょっと待って」

 

 

私はSPの腕から下りると、腕を回し、屈伸し、背伸びをし、首をグルグル回す。

 

「ん!おっけー問題無し!」

 

「圭介さんにお礼を言っとくんだな。指示が無けりゃとっくに拉致されてたぞ」

 

「ん!圭介から言われてきたのね。分かった言っとく。取り敢えずおじさんありがとう」

 

「俺はまだ30だ!」

 

 

直ぐにパトカーのサイレンが聞こえだした。

 

助けてくれた人は王子様でも無けりゃ、ゴリラでも無かった。

圭介からしじされて助けに来たSPの黒人さんのおっさんだった。

 

まあ良しとするか!

 

「おい、下着まる出しだぞ」

 

自分の身体を見ると、シャツが破れてブラ丸出しになっていた。

 

「ビーチクが出てないなら問題無し!“グ”が見えてる訳じゃないんだから。 興奮する?」

 

「するか!これでも着ろ!」

 

来ていたスーツの上着を掛けてくれたが……

 

「汗臭い。お風呂入った?」

 

「入ってるわ!」

 

 

口の悪いおっさんだった。

 

その後現れた警察官にキャー助けて―と演技したが、まさか野郎の顎を砕いたのが私と言われてみんなしょっ惹かれてしまった。

 

 

 

 

◆圭介◆

 

 

 すぐに消防車が駆けつけてくれたが、それから火が消えたのは夜の9時を回った頃だった。

駐車場から1階2階を焼き、上から2階は燃えていたらしい。

 

現場検証が行われる中、俺達は警察に呼ばれ、そのまま近くの警察署まで同行した。

 

何故かと言うと1階駐車場から死体が出てきたと、そしてマンションの側から一台の車が。

その車を照会すると葉月結衣の車であり、遺体の一人は多分その人物であろうと言われた。

 

マンションの住人であり、燃えた部屋でもある。

遺恨の可能性も否定できず、色々と聞かれまくった。

 

直ぐに知らない弁護士が出て来て対応を行ったが、結衣が死んだとなるともう一人は俊介か?

俺の中で色々と疑惑が出ていた。

 

 

Nシステムで現場に居なかった事が分かり、詳しくは弁護士を通じてと言う事になった。

 

さて、どうしようかと言う時に、俺が頼んでいたSPのジョンが一緒に出て来る!

 

「ジョン!そっちは大丈夫だったか?」

 

「はい、辛うじて拉致される前に捕まえました。見事な判断でした」

 

まあ、電話番号はジョンしか知らなかったので掛ける相手がジョンだけだったって事だ。

そして助かった心愛も出てきていた。

服は破られ、デカいジョンの上着を着ていた。

 

 

「ええ!荷物は運んでた?! ああ!良かった!」

 

ジョンが桜花に説明していると、昼の間に転居先へ運ぶ荷物を纏めており、殆どの荷物を運んでいた。

 

勿論俺の描いた絵もだった。

 

 

これで全て上手く収まった。

 

かと思っていた。




次の話がラストになります。
どうぞ宜しくお願いします。
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