遍歴の騎士と奴隷の少女が入れ替わって危機を乗り越え幸せになる話 作:てぬてぬ@TSF
オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル
タグ:R-18 残酷な描写 性転換 TSF TS 入れ替わり 奴隷 ロリ ハッピーエンド
「はぁっ!」
裂帛の気合とともにロングソードが振り下ろされる。袈裟に切り裂かれたゴブリンは、血を噴き出しながら地面に倒れ伏した。見事な斬撃を放った男は、油断せず辺りに視線を飛ばす。数体のゴブリンが転がっている畑には、動くものはもう無かった。
「・・・・・・ふぅ」
構えを解き、ロングソードを鞘に戻す。動きやすい革鎧と旅装束に身を包んだ男は、明るい口調で大声を上げる。
「もう出てきても大丈夫ですよー!」
畑に隣接する粗末な家から、おそるおそるといった様子で農夫が顔を出した。返り血に染まった男の姿を見ると、顔を青くしながらも駆け寄ってくる。
「だ、大丈夫ですか騎士様!?どこかお怪我を・・・・・・」
「あぁいえ、返り血なので問題ありません。それより、少し人手を集めてもらえますか。ゴブリンたちの死体を畑に放置するわけにはいかないので、移動させないと」
「へ、へぇ!分かりました!」
農夫は早走りで他の村人を呼びに行ったようだ。その様子を見ながら、男は独り言を呟いた。
「全く、こんなところにまで魔物が出るなんて」
憂うような顔つきで、ゴブリンたちがやってきた方角を見やる。鬱蒼と茂った森は、何も答えずただざわめいていた。
男の名はリジル・カーゴラル。貧乏貴族の三男に生まれた彼は、幼い時より騎士物語に憧れていた。12歳の時、口減らしも兼ねて小姓として別の貴族に仕えることになった彼は、そこで真面目に勤めつつ並行して武技を磨いていく。15歳の頃には主に付き従って戦場も経験し、騎士見習いとして認められるまでになった。
しかし、それから二年後の夏。流行り病により家族全員が亡くなり、また主も命を落としてしまう。主の兄より放逐を宣言されたリジルは、それからは遍歴の騎士を名乗りつつ、各地を放浪しながら研鑽を積んでいる。
(あれから、もう五年か)
今年で23歳になるリジルは、ゴブリンの死体を村人と片付け終わった後、貸してもらった簡素な小屋で体を休めながら過去を思い返していた。あれから、冒険者のように各地を巡りながら人助けや魔物退治を繰り返している。今回も、たまたま通りかかった開拓村でゴブリンが出るという話を聞き、わざわざ自分からゴブリン討伐を申し出たのだ。報酬を提示せず、無償で働く者など殆どいない。それなのにそうしてしまうのは、誇りというよりは見栄なんだろうと、リジルは夜風が隙間から漏れてくる小屋の中で自嘲した。
(明日、とりあえず森を探索してみよう。ゴブリンの生き残りがいるかもしれない)
そう考えながら武器の手入れでもしようとしていると、足音が小屋に近付いてくるのが聞こえた。程なくして、扉が叩かれる。
「どうしました?」
「へぇ、村長から飯を持っていってやれと。何も払えないがせめてこれくらいはってことで」
「あぁ、それはありがとう、嬉しいです」
扉を開けると、先ほどの農夫が大きな木皿を持って立っていた。皿の中にはたっぷりの豆と野菜の煮込みが入っている。出来立てのようで、沢山の湯気が上がっていた。
「すみません、ご馳走とか用意出来ねえで。折角村があぶねえところを助けてもらったのに」
「構いませんよ、好きにやっていることですから。ご飯、ありがたくいただきます」
農夫はペコペコと頭を下げながら去っていく。リジルは座り込み、木のスプーンで煮込みを掬って口に運んだ。
(温かいな)
味は、決して美味しいとはいえない。しかし、体の芯から温まるような、優しい気分になる。
(僕の見栄も、そう悪いものじゃないと思っておこうか)
煮込みと一緒に、村人の好意を噛み締めるように味わった。今日は、心地よく眠れそうだ。
翌朝。森に入ると、思っていたよりは歩きやすそうだった。リジルは草木をかき分けながら慎重に進んでいく。
(足跡はあるけど、乱雑過ぎて追跡は難しいな・・・・・・)
ゴブリンの痕跡はそこかしこにあるのだが、どれもが新しいもので見分けがつかない。どうやら、ゴブリンたちはここ最近になって村の近くまでやってきたようだ。
(もう少し奥に行ってみようか、幸い日の光が差し込んでいるし)
森の中は薄暗いとはいえ、太陽の光は木々の影を突き抜けて辺りを照らしている。これなら、日が暮れるまでは探索を続けられそうだ。
リジルは奥へ奥へと進んでいく。周囲を警戒しながらではあるが、その速度は速い。と、何かを見つけたようでしゃがみ込む。
(これは・・・・・・ブーツか何かの足跡か?まだ新しい・・・・・・)
ゴブリンは、足の皮膚が厚い為基本的に靴を必要としない。ということは、この森には人間か、それに類する何かがいるということだ。
(これ以上は危険か?いや、何か怪しい。山賊か何かだとしたら確認しておかないと)
経験則が警鐘を鳴らすが、それ以上に開拓村に害を為す存在だとしたら放置しておけない。リジルは覚悟を決め、より慎重に靴の足跡を追跡し始めた。
二時間と少し、リジルは途切れ途切れの足跡を追った。途中で誰かが合流したのか、複数の靴を履いた足跡が増えている。そして、
(・・・・・・見つけた)
そこは、古い砦跡のような場所だった。あちこちが崩れている小さめの砦が、乱雑に木材で補修されている。恐らく見張りであろう二人の男が入り口付近に立っているが、そのいで立ちは明らかに暴力を生業にしているような雰囲気を醸し出していた。
「なぁ、おい。結局俺らはいつまでここにいりゃあいいんだよ」
「どうだろうな。お頭はあのフード野郎のことを利用するつもりらしいが、どうにも信用出来ねえ。金貰ってる以上文句は言えねえが、いっそ殺しちまってもいいんじゃねえか?」
「そいつは不味いだろ、邪教の神に祟られて死ぬより先にお頭に殺されちまう。でも、森の中ってのもいい加減飽きちまったよ。金貰ったんだし女でも抱きに行きてえ」
暇潰しに話しているだろう二人の会話を聞きながら、リジルは慎重に、木々や茂みに隠れながら近付いていく。
「おいおい、女ならいるだろうが。生贄だのなんだのの為に連れてこられた奴隷の奴が」
「あんなガキ、勃つもんも勃たねえよ。むしろてめえはよく突っ込めるもんだ、お貴族様か?」
「へっ、たまにはあぁいうのも悪くねえぞ。痛いくらいに締め付けてくるからなぁ。まぁ、実際あいつには激痛だろうが」
会話を聞くに、どうやら彼らは何かの目的の為にここに潜伏しているらしい。
(ただのならず者達なのか・・・・・・?しかし、フード野郎というのが気になる。邪教、というと・・・・・・)
思考を巡らせるリジル。そういえば、ここに来る前に寄った街で聞いたことがあった。人々の魂を捧げて悪魔を使役しようとする邪教の存在。もし、目の前の男たちが関係しているのならば、到底許してはおけない。リジルは息を潜めながら、剣の柄を握りしめる。と、
ガランガランガラン!!
砦の方で大きな音がある。鐘を鳴らしたような音に、見張りの男二人は腰に下げたサーベルを引き抜いた。
(見つかった!?いや、それは無いはず・・・・・・っ!)
突然のことに、リジルの思考が僅かに鈍る。隠れ続けるべきか、撤退するべきか。数瞬迷った時間が、命取りになった。
「っ!?」
砦の奥から、赤く光る何かがリジル目掛けて一直線に飛んでくる。横っ飛びに飛んでなんとか避けるも、見張りの男たちに気付かれてしまった。
「いたぞ、捕まえろ!」
声を上げながら追いかけてくるならず者たちは、真っすぐにこちらに向かってくる。リジルはロングソードを引き抜き、応戦の構えを取った。突進しながら振るわれるサーベルの刀身を横に叩いて受け流し、体勢を崩したならず者を斬り上げる。倒れかけるならず者を抱え、そのまま二人目の方に押し出した。
「なっぐわぁ!」
思わず受け止めた二人目のならず者を前蹴りで蹴り飛ばす。二人が倒れている隙に、リジルはこの場を離れようとした。砦の方からは十数人のならず者たちが出てきているようで、このまま戦っても勝ち目は薄いと思ったからだ。が、逃げようと振り向いた先にはこちらに近付いてくるならず者が三人いた。野うさぎを腰に下げている辺り、たまたま食料調達に出た者達と鉢合わせてしまったらしい。
(不味い・・・・・・!)
このままでは包囲されてしまう。リジルは射かけられる矢をかわしながら、人のいない方に駆け出した。しかし。
「がっ・・・・・・!」
その動きを読まれたかのように、前方に赤い光が着弾する。リジルは身を翻すも避け切れずに衝撃に吹き飛ばされ、木の幹に背中を打ち付け呼吸が止まりかける。全身が痺れ、すぐには立ち上がれない。
(早く、逃げないと・・・・・・!)
なんとか立ち上がりかけた所で、ならず者達に追いつかれてしまった。殺気を漂わせた彼らはリジルにサーベルを向け、じりじりと距離を詰めてくる。どうやら、動けない間に囲まれてしまったようだ。
「くっ・・・・・・」
ロングソードを構えるが、突破口は見えない。リジルが僅かな可能性に賭けて突撃しようとしたところで、妙にねちっこい声が聞こえてきた。
「まぁ、その辺でしょう。傷つけなければ相応に使い道がありますから」
ならず者達が道を開けると、黒いフードを目深に被り、口にはにたりと笑みを張り付けた男が近付いてきた。傍らには、ボロボロの布切れを纏い、手枷を嵌められた少女を連れている。
「どうですか?今降伏すれば命までは取りません。えぇ、取りませんとも」
どう見ても怪しげなその男を、リゼルはキッと睨みつける。彼の纏っているローブの紋様は、確かに街で聞いた邪教のものと一致していた。
「お前は、邪教の司祭か何かか?」
「邪教とは人聞きの悪い。まぁ、我らの崇高な考えを理解できないのも致し方ありませんかねぇ」
フードの男は嘲るように笑い、持っていた杖を一振りする。すると、リゼルを中心に、地面に魔法陣が浮かび上がった。
「何をする気だ・・・・・・!」
「さて、なんでしょうねぇ?あぁ、貴方達は下がっていてください、巻き込まれると面倒なので」
男の言葉に、ならず者達は渋々といった様子で従う。中には明らかに疑いのまなざしを向ける者もいたが、フードの男は気にも留めずに何かの呪文を唱えていた。
(このままでは絶対に不味い・・・・・・!こうなれば、せめて奴だけでも・・・・・・!)
ロングソードを握り直し、ローブの男に斬りかかろうとする。しかし、足が動かない。まるで地面に張り付いたように、一歩も進めなくなっている。
「あぁ、無駄ですよ。貴方はもうそこから動けません。残念でしたね?」
呪文を唱え終えたのか、ローブの男は嘲笑しながらリゼルに告げた。そして、横の少女を促して魔法陣の中へと歩かせる。茫洋とした表情の少女は、意思の感じられない虚ろな瞳をしながらリゼルの前まで来て、何もせずに立ったまま止まっている。
「さぁ、さぁ、さぁ!今こそ我が秘術をお見せしましょう!」
高らかに、歌うように宣言するフードの男。そして、彼は杖を高く掲げ───
(今だっ!)
───その隙を、リゼルは逃がさなかった。
「はああぁぁぁぁっっ!!!」
渾身の力で持っているロングソードを投げつける。足が動かせない為不完全な体勢からの投擲だったが、ロングソードは回転しながら飛んでいき、フードの男の胸に突き刺さった。
「あ」
間抜けな声を一つ上げ、崩れ落ちる男。その瞬間、持っている杖から強い光が放たれた。同時に魔法陣も赤い光を発し、リジルと少女を飲み込んでいく。
「くそっ!!」
リジルは庇うように目の前の少女に覆い被さる。そしてそのまま、二人を赤い光が包み、リジルは焼き切れるように意識を飛ばされた。
全身の痛みを感じて、意識が覚醒した。冷たく、固い。石畳に転がされているようだ。意識を取り戻したことに気付かれないよう、薄目を開けながら周囲の様子を確認する。
(ここは・・・・・・あの砦の中か?)
見えたのは、石造りの壁と、頑丈そうな扉。どうやらどこかの部屋に閉じ込められているらしい。部屋の中にはむせるような変な匂いが染み付いているようで、鼻が曲がりそうだ。僅かに身じろぎをすると、手枷と足枷を嵌められているようで鎖がジャラリと小さく鳴った。
(どうする・・・・・・?部屋の中には他の者はいないようだけど、外には間違いなく見張りがいるはず。ここからどう脱出すれば・・・・・・)
思考を巡らせる中、ふと違和感に気付く。全身の感覚が妙だ。何かが、致命的にズレている。
(なんだ?まるで、自分の体が自分のものではないような)
一度気付くと、違和感はどんどん大きくなっていった。全身の疲労感はともかくとして、上手く体を動かせない。順々に体に力を入れていくが、いつものような筋肉が動く感覚がしないのだ。
(あの男に、弱体化の魔術でもかけられたのか・・・・・・?)
しばらく、そのまま体の調子を確認する。しかし、どうしても違和感が拭えない。その間、扉の方からなんの物音も聞こえなかったのを確認して、ゆっくりと体を起こす。
「う・・・・・・これ、は」
体が想像以上に重い。壁に背中を預けながら、なんとか上半身を起こすことが出来た。やはり、体がおかしい。それに、思わず漏れた声も、いつもと違って細く高いものだった。ひとまず、両手を確認する。
「・・・・・・え?」
そこには、煤けて汚れた、剣など握ったこともないようなひ弱な手があった。腕は枯れ枝のように細く、軽く叩いただけで折れてしまいそうだ。
(ど、どういうことだ!?)
混乱しながら体を確認すると、ボロ布のような服を着させられ、足は手と同じように細い。なだらかな胸部の下にはあばらが浮いており、何よりも股間にあるべきはずの感覚が無かった。部屋の隅にあった酒瓶の破片を拾い、反射で顔を映そうとする。
「こ、これって」
そこに映っていたのは、リジルと一緒に赤い光に飲み込まれた、奴隷の少女だった。ぼさぼさの前髪に隠された痣や生傷だらけの顔は、驚愕するような表情をしている。頬を触ると、確かに感触が帰ってくる。奴隷の少女が状況を飲み込めないままに、部屋の扉が開き、酒焼けした声が聞こえた。
「っ!?」
「よぉ、元気にしてるか?向こう見ずな冒険者さんよ」
入ってきたのは、ならず者達を連れた禿頭の大男だった。巨躯を揺らしながら、下卑た笑みを浮かべている。咄嗟に酒瓶の破片を隠し、大男を睨みつけた。
(くっ、動揺していて足音を聞き逃した・・・・・・!)
「はっは、そう睨まなくてもいいじゃねえか。で、その体の調子はどうだい?何日も気を失ってたんだ、さぞかしいい夢でも見れたんだろうな」
「・・・・・・一体、僕に何をした!」
「さぁな、俺たちにも詳しくは分からねえよ。だが、まぁ。見た方が早いだろ。おい」
大男が顎をしゃくり、近くのならず者に命令する。少女は大男を睨み続けながら、なんとか状況を整理しようとした。
(こいつが見張りにお頭って呼ばれていた奴か?どっちにしろ、僕の現状に繋がる手掛かりが見つからない・・・・・・!)
少女の思考も纏まらない中、しばらくして一人の男が部屋に連れられてくる。手枷を付けられたその男に、少女は見覚えがあった。いや、見覚えがあるどころではない。何故なら、その男は、
「ぼ、僕!?!?」
そう、リジルその人だったのだ。驚愕する少女を見てニヤつきながら、大男は告げる。
「お前はな、邪教の野郎が飼っていた奴隷と入れ替わっちまったんだよ。お前が最後っ屁で殺した、邪教の野郎の魔術でな」
リジルは、茫洋とした表情と虚ろな瞳でこちらを見つめてくる。それを見た少女は、大男の言葉が事実だと確信した。この世には常識では測れない様々な魔術が存在する、ということを、少女は理解していたのだ。大男の言う通り、リジルと少女は入れ替わってしまった。それを無理やりに受け入れながら、少女は大男に問いただす。
「入れ替わった僕たちを、どうするつもりだ」
「へぇ、随分と落ち着いてるな。流石なもんだ。で、別にどうにもしねえよ。本来そのガキの体は悪魔に捧げる生贄だったはずなんだが、邪教野郎が死んじまったからなぁ。お前の体になった奴隷は肉体労働でもさせるとして、お前はまぁ、今まで通り手下の性処理でもしててもらおうかねぇ」
下卑た笑みを浮かべたまま、大男は当然のように嘯く。
「まぁ、安心しろよ。俺も鬼じゃない、一日くらいは覚悟を決める時間をやるさ。それじゃあ、これから性奴隷として頑張ってくれよ!はっはっはっは!」
笑い声と共に、大男とならず者達、そしてリジルは去っていった。一人残された少女は、冷静になるよう心を落ち着けながら、聞いた情報を整理する。
(つまり、あの女の子と僕は入れ替わって、その魔術をかけた男は死んで。他の奴を統率している男は、僕たちを奴隷のように扱う気だと)
一つ息を吐いて、少女は石畳に寝転がった。疲れ切った体を少しでも休めようと目をつぶりながら、ひたすらに考え続ける。
(状況は絶望的だ。この体では、ならず者一人倒すのも難しいだろう。だけど)
少女は、諦めるつもりは毛頭無かった。これ程の特殊な状況は初めてだが、今までも何度も命の危険には晒されてきた。何より、エゴで騎士と名乗っている者が、この程度で折れるわけにはいかない。この砦からリジルと一緒に脱出する為に、思考を巡らせ、突破口を探る。
(武器と呼べるものは、このガラスの破片だけ。後は、奴らがどう行動しているかを把握したいけど・・・・・・)
恐らく、大男とならず者達はこちらからの反撃を想定していないだろう。奴隷の少女と入れ替わってしまったことで、無力化出来たと思われている。はずだ。
(つけ入る隙はそこにしか無いか。なら・・・・・・)
考える、考える、考える。鍛え上げた肉体を失った以上、今の少女に出来ることはそれだけだった。今までの旅の経験と、折れない心。その二つを支えに、少女は考え尽くす。
(出来れば、この体でも扱えそうな武器が欲しい。短剣がベストかな。となると、まずは)
一つ、案が閃いた。少女にとってそれは屈辱的なものだったが、しかし、
(僕の屈辱一つで、僕と入れ替わってしまったあの子を助けられるなら。大丈夫だ、耐えられる)
決意を固め、作戦を決める。そして、少女はチャンスが来るまで体力を温存しようと意識を落ち着かせる。華奢でひ弱な少女は、しかし獲物を待ち伏せする狼のような気配を漂わせながら、浅い眠りを貪るのだった。
ならず者の一人、グリーは不満だった。お頭に命令され、今は奴隷の少女になった男に食事を運ぶ途中、グリーは文句を漏らして通路の石ころを蹴る。
「けっ、犯すなってどういうことだよ。わざわざ飯を持っていってやってるんだから別にいいじゃねえか一回や二回」
お頭に命令された際、少女で性処理することを禁止されたのだ。グリーはいつも少女に食事を運んでいたのだが、それは一人で少女の体を愉しむためだ。他の奴の目があるとどうにも気持ち良くない。なので、食事を運ぶついでに一人で少女を好きに犯す。それが彼の日課であり、息抜きだった。
「クソっ、中身が入れ替わったとかよく分からねえが、所詮ガキはガキじゃねえか。なんで今日に限って駄目なんだよ」
ここ二日、グリーは少女を犯して発散することが出来ていなかった。邪教の男が儀式の準備と称し、少女を連れていってしまったからだ。グツグツと煮えたぎるような性欲を持て余し、グリーは苛立ちながら少女を監禁している部屋の前に立った。懐から鍵束を取り出して、扉の鍵を開ける。
「おい、ガキ!飯持ってきてやったぞ、感謝しやがれ!」
中に入ると、少女は部屋の隅で縮こまり、こちらを睨んできていた。普段は感情が抜け落ちたような態度だった少女の敵対的な反応に、グリーの下半身が反応する。
「なんだ、おい、その目は!?感謝一つも言えねえのか!」
普段と違う様子に、グリーは自身が興奮していくのを感じる。彼は人形のような者を犯すより、反抗的な者を力で組み伏せて犯す方が好みだった。扉を閉め、持ってきた固いパンとコップに入った濁り水を部屋の隅に置き、グリーは少女に近付いていく。お頭からの命令は、既に頭から飛んでいた。
「おら、舐めろや、いつもみたいによ!」
ズボンを下ろし、ペニスを露出させる。ロクに体も洗っていないグリーのペニスは、数日分の痴垢で汚れ凄まじい匂いを発していた。少女の口に押し付け、頬を掴み無理やりに口を開かせて突っ込む。
「んぐっぶぅっ!!?」
「オラッどうだ俺のは!美味えだろうが!!」
少女のことを考えず、喉の奥までねじ込んだ。久しぶりの快感。少女の口の中はぬめついて温かく、あっという間にこみ上げてくる。顔を苦痛に歪め、涙目になりながらも反抗的に睨んでくる少女の姿が、射精欲をさらに加速させた。
「へへっいいねぇその顔!もっと見せろよクソガキがっ!」
少女は噛みつこうとしているのか、ペニスに歯が当たる。その感覚すら今のグリーには快感だった。少女の頭を両手で抑え込み、ペニスを根本まで突っ込む。
「出してやるっ!ありがたく受け取れよオラァ!!」
ペニスの先端から、熱く汚れた白濁が放たれた。粘つくそれが少女の口内を蹂躙し、強制的に腹に流し込まれる。飲み切れなかった分が少女の口から溢れ出し、床にぶちまけられた。
「ぐぅ、おぇっ、ゲホッゲホッ!」
「何零してんだ、もったいねえだろ!」
口から精液を零しながらせき込む少女に平手打ちするグリー。どさりと少女が倒れ、グリーはそのままのしかかった。
「股ぁ開け!俺が犯してやるんだ、ありがたく思えよ!」
少女の足を掴み、無理やりこじ開ける。殆ど濡れていない膣の入り口に精液でドロドロのペニスをあてがい、強引に腰を進めた。
「ぎっっ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・!」
「はっ、泣き叫んでもいいんだぜ!ふっぅぅ、きっちぃ!」
少女の呻き声と苦痛に満ちた表情が、グリーをさらに高ぶらせていく。狭い膣内をゴリゴリと削るように犯しながら、グリーは喜悦に染まった顔で笑った。
「ひっははは!どうだよ、おい!痛えか!?苦しいか!?それとも気持ちいいかよ!」
グリーは貪るように一心に腰を振る。精液が白く泡立ち、結合部に汚れた泡が溢れ出していた。程なくして、グリーは再びこみ上げるものをぶちまけようと幼膣にペニスを深く突きこんだ。
「おらぁっ今度は中に出してやるよぉっっ!!」
狭い膣内を押しのけるようにペニスが膨らみ、二度目とは思えない量の精液が噴き出した。未成熟の子宮は受け止めきれず、ゴボリと結合部から溢れ出てくる。グリーは汚い笑顔で震えながら、少女の中にぶちまける快楽を味わった。と、
サクッ
「あ?」
何かが、刺さるような感覚。首の横が、熱い。手で触れると、ぬるりとしたものが噴き出しているようだ。
「は、ぁ・・・・・・?」
少女が、決意を抱いた瞳でこちらに手を伸ばしている。丁度、首の部分だ。何をする。怒鳴ろうとしたグリーは、体から力が抜けるのを感じた。
「て、め、ぇ・・・・・・」
少女が何かを引き抜くと、ぬるりとした液体・・・・・・血が、より一層激しく噴き出す。グリーは少女に手を伸ばそうとするが、動かない。やがて、彼の意識は闇に堕ちて、二度と目覚めることは無かった。
「ふぅぅぅぅぅ・・・・・・」
男の体を押しのけ、少女はゆっくりを息を吐く。男が無防備になる、射精の瞬間。少女は、それを狙っていたのだ。血まみれのガラスの破片を置き、動かなくなった男を見やる。
(なんとか、上手くいった。口に突っ込まれるのは想定外だったけど)
無理やりに犯されたせいで全身が痛い。特に、股間から感じるそれは今まで経験してきたものとは質の違う痛みだった。
(休んでる暇は無い。早く行動しないと・・・・・・!)
痛む体を無理に動かし、死体を漁る。腰のサーベルは重すぎて今の少女では使えない。焦りながら、使えそうな武器を探す。
(鍵束・・・・・・!後で枷に試すとして、短剣か何かは無いのか・・・・・・!?)
見つけた。内ポケットに鞘付きの粗末な短剣が入っている。これなら、非力な少女でも扱えそうだ。が、喜ぶ暇も無く足音が部屋に近付いてくるのに少女は気付いた。
(っバレた!?いや、違う、走ってきていない。でも、どうしたら)
扉は閉まっているが、鍵はかかっていない。仮に施錠したとしても、覗き窓から中の死体を発見されてしまうだろう。
(時間が無い・・・・・・!)
足音はすぐそこまで近付いてきている。部屋の前まで来るのに十数秒ほどしかかからないだろう。絶体絶命の状況に、少女は覚悟を決めて立ち上がった。
「おい、グリー!お頭が呼んでるぞ、なにサボってんだ!」
グリーの同僚である男は怒鳴りながら部屋の前まで歩いていく。どうせ、少女とよろしくやっているに違いない。お頭にも言われていたのに抜け駆けをしやがって、と男は怒りながら扉の取っ手に手をかけた。
「おい、いるんだろ!この馬鹿、開けるからな!」
荒々しく扉を開ける。そこには、少女を犯し愉しんでいるグリーが・・・・・・いなかった。いや、グリーはいる。だが、彼は首から血を流しながら倒れ、ぴくりとも動かない。男は予想だにしない光景にしばし呆然としたが、ハッと正気に戻りグリーに駆け寄った。
「お、おい!大丈夫か、一体何が」
目の前に出来事に動揺している男は、扉の影に隠れている少女の存在に気付けない。少女は男に忍び寄り、背後から短剣で喉を突く。柔らかい肉の感触を感じながら、そのまま思い切り横に引き裂いた。
「っぁ・・・・・・!?」
喉を裂かれ、断末魔を上げることも出来ず倒れる男。しばらくもがいていたが、すぐに動かなくなった。噴き出す血がかからないように、少女は離れながら鍵束を握る。
(綱渡りだったけどなんとかなった・・・・・・とにかく、他の者に見つかる前に手足の枷を外さないと)
出来るだけ早く、鍵で枷を外せないか試していく。数本目で足枷は外すことが出来たが、手枷はどの鍵でも外れることはなかった。
(仕方ない、足枷が外れただけでも御の字だ!後は、あれをこうして・・・・・・)
限られた時間の中、少女は疲労の抜けない体を酷使しながら動き出す。その瞳には、燃えるような意志が宿っていた。
「大変ですお頭!グリーたちが!」
お頭と呼ばれた大男は、彼の部屋に駆け込んできた手下に目をやり、立ち上がった。
「何があった」
「こ、殺されてます!それに、あのガキの姿が見えなくて」
それを聞いた大男は舌打ちをし、手下を怒鳴りつけた。
「馬鹿野郎!だから油断するなと言ったじゃねえか!まだ遠くまでは行ってないはずだ、探して捕らえろ!手足の一、二本くらい折っても構わん!」
「へ、へい!」
慌てて立ち去る手下に続いて、大男も部屋を出る。苦々しげな表情を浮かべ、ずかずかと進み手下に指示を飛ばしながら考える。
(クソが、役立たず共め!まぁいい、弱り切ったあの体じゃあ逃げ切れねえだろう。それに)
ちらりと見やる先には、茫洋としたままに木材を運ぶリジルがいた。中身が心の壊れた奴隷少女だからか、文句の一つも言わずに働いている。何より、使えない手下達に比べて体力も豊富で力も強い。最悪手下がさらに死んでも、お釣りが来るだろう。
(はっ、邪教徒が死んじまったから悪魔を従えることは出来ねえが、こいつがいりゃあそれなりだ。戦い方を教えりゃ中々に使えるだろうさ)
気を取り直すように考えていると、手下の一人が報告してきた。
「お、お頭!血痕が南の方に続いてます!それと、門の近くにこれが!」
足枷を見せてくる手下。どうやら、少女は上手く外して外に逃げたようだ。だが、あの体で逃げ切れるはずが無い。
「よぅし!ロクに体力もねえガキだ、五人毎に分かれて囲い込むように追え!」
一通り命令し、大男は森に入っていく手下達を眺める。念の為に備え、残った手下を四方に見張りに立て、ようやく気分が落ち着いた。後は、少女が捕まって連れてこられるのを待っていればいい。近くの石段に腰を落ち着け、大男は連れ帰った少女に与える罰を考え始めた。
(そうだ、邪教徒が遺してたあれがあったな。試してみるのも悪くねぇ)
何かを思いついたのか、大男はすぐに立ち上がりとある場所へ向かった。地下の、邪教徒が使っていた部屋へと。
少し時は遡る。
(声が聞こえる、死体が見つかったか)
少女は、暗闇の中息を潜めていた。窮屈そうに体を縮めながら、聞こえてくる音を逃さないよう耳をそばだてる。
(さて、後は上手く罠にかかってくれれば・・・・・・)
彼女は、この状況を打破しようと危険な賭けに出ていた。まず、わざと血痕を残しながら砦の外に向かい、ついでに足枷を置いて自身が森に向かったと印象付ける。その後血痕を残さないよう砦の中に戻り、今は食材用の木箱に姿を隠している。
(これで上手く奴らを外に誘導出来れば、チャンスが生まれるかもしれない)
外に向かうフリをしている間に見つかる可能性もあったし、そもそも罠に引っかからない可能性もある。しかし、この少女の体ではあの数を相手にするのは到底不可能だ。だからこそ、少女は土臭い木箱の中で待ち続けていた。少しでも、砦内から人数が少なくなるチャンスを。
微かに聞こえてくる大男の怒鳴り声をどうにか聞き取ろうとする。その声を聞く限り、どうやら仕掛けた罠は成就しつつあるようだ。
「ふー・・・・・・」
小さく息を吐いて、手元の短剣を握りしめる。恐らく、どれだけ人数が少なくなったとしても大男本人と数人は砦に残っているだろう。それに、外に連れていっても足手まといになりかねないリジルの体も砦に残っているはずだ。
(全部希望的観測だ。でも、やるしかない)
殆どの足音が聞こえなくなった。少女は慎重に木箱から外を伺い、誰もいないことを確認して外に出る。声と足音から考えて、リジルは砦の西側にいるはずだ。残っているかもしれない手下達に見つからないよう、少女は物陰に隠れながら少しずつ中央に向かった。
(他の奴らがどれくらいで戻ってくるか分からない、出来る限り早く見つけないと・・・・・・!)
焦る気持ちを抑え、ボロボロの通路を進む。なんとか砦の西側に辿り着き、足音を頼りにリジルを探す。すると、
(・・・・・・いた!)
壁に穴が空いている部分に、リジルはいた。今の少女では到底運べないだろう木材を軽々と運び、穴の近くの床に置いている。そんな惨めな元自分の姿に、少女はやりきれない痛みを感じた。
(周囲に人影は・・・・・・無い。よし、行こう)
元自分の体、それを動かしているであろう奴隷の少女。感情の読み取れない表情をしている彼に、少女はそっと近付きながら声をかける。
「君、僕の声が聞こえるかな」
ゆらりとこちらを向くリジル。相変わらず、茫洋とした表情をしている。
「僕はリジル。ここから逃げ出す為に、君にもついてきてほしいんだ。奴隷じゃなくて、君としての人生を生きるためにここから脱出しよう」
少女の声に、リジルは特に反応を示さない。虚ろな瞳で少女を見ながら、ぼぅっと突っ立っている。
(やはり、心が死にかけているのか・・・・・・?しょうがない、命令をすればついてきてくれるかもしれない)
「僕と一緒についてきてくれ。僕の言っていること、分かるかな?」
少女の質問に、リジルはしばらくした後に頷いた。そして、リジルは少女にとって思わぬ言葉を漏らす。
「あなた、は・・・・・・わたし?」
自分の声で訊ねられた言葉。それに、少女はどう答えていいか分からなかった。魂が入れ替わっていることを説明しようにも、今のリジルに理解できるとは思えない。
(・・・・・・時間が無い、とりあえず先に移動しよう)
「説明するから僕についてきて。移動しながら話すよ」
苦し紛れにそう言い、少女はリジルの手を取って歩き出す。ここに来るまで人影が見当たらず、声や足音も殆ど無かったということは、砦内にいる人間は極端に少ないようだ。罠で誘導した南側とは逆の北側に移動しながら、少女は手を引かれるままについてくるリジルの方を見る。
(僕の体に奴隷の子の精神が入っている・・・・・・改めて見ると、ありえない状況だ。彼女にどう説明しよう)
少女は悩みながらも、このまま無言でいるよりはと口を開いた。無論、周囲の警戒は怠ってはいない。
「実はね、君と僕は今、入れ替わってしまっているんだ。君の体に僕が入って、僕の体に君が入っている。意味、伝わってるかな?」
少女は自分のものだった顔を伺うが、表情に変化は無い。感情の感じられない茫洋とした表情で、ただじっと少女を見つめてくる。
「もちろん、戻れるように尽力、頑張るよ。でも、まずはここを脱出しないといけない。だから、僕の言うことを聞いてほしいんだ」
リジルは、言われたことを分かっているのかいないのか、こくりと曖昧に頷いた。そして、細く小さな少女の手をぎゅっと握ってくる。少女の手で感じる自分の手は、酷く大きく節くれだって感じた。
(伝わった、のかな?)
安心させるようにリジルに微笑みながら、少女は先を急ぐ。手を引かれついてくる自分の姿を見ると、何故か湧き上がってくる苦しさを押し殺しながら。
少女とリジルは周囲を警戒しながら進み続け、なんとか砦の北側、天井の無い吹き抜けの部分までたどり着いた。もうしばらく進めば、北門から砦を抜けることが出来るだろう。が、しかし。
(やはり、見張りが立っているか・・・・・・)
砦の四方に設置された監視塔に人影が見える。このまま出ていこうとすれば、たちまちに見つかってしまうだろう。
(せめて、北側の見張りだけでも排除しないと・・・・・・でも、どうすれば)
監視塔に上るにははしごを使う必要がある。しかし、悠長にはしごを上ろうとすれば他の見張りに見つかる可能性が高い。少女はリジルと共に物陰に身を隠しながら考える。
(距離は大体30m・・・・・・体が元に戻っていても、投擲で狙うには遠すぎる。それに、仮に倒したとしても他の見張りに気付かれる可能性が高いか。なら、見つからないような道を探すしかない)
冷静に状況を把握しながら、考える程に脱出が困難なことを思い知る。だが、このまま諦めるわけにはいかない。見える限りの砦の構造を頭に叩き込み、脱出ルートを模索する。と、
「そと、でるの?」
リジルが、呟くように話しかけてきた。ぼんやりした瞳に見下ろされるように見つめられながら、少女は答える。
「うん、外には出たいんだけどね・・・・・・見張りに見つかりそうだから、隠れて進めるところを探しているんだ」
それを聞いたリジルは、少しだけ不安げな表情で微かに首を横に振る。少女は苦笑しながら、安心させるようにポンポンと背中を叩いた。
「大丈夫、僕が必ず君を脱出させるから。だから、もう少しだけ我慢してくれると嬉しいな」
そんな少女の様子を見つめるリジルは、今までとは違う、何かの感情が瞳に浮かんだ気がした。しかし、思考に没頭し始めた少女は気付かない。真剣な表情で考える少女を、リジルはじぃっと見つめ続けていた。
「・・・・・・よし。壁伝いに、監視塔の影に隠れるように進んでいこう。ついてきて」
考えが纏まったのか、少女は再びリジルの手を取って歩き出す。監視塔の死角をなぞるように慎重に進み、少しずつ砦の外へと向かっていった。時折り遠くから聞こえる手下達の声や、隙間風の音に敏感に反応しながらも少女たちは進んでいく。少女が考え抜いたルートを通ったからか、運がよかっただけか。見張りに見つかることなく、あと少しで脱出出来そうな位置までたどり着いた。
(よし、もう少しだ)
周囲を警戒しながらも、僅かな安堵が少女の心に生まれる。このまま何事も無ければ、あと数分で脱出することが出来そうだ。───しかし。少女を嘲笑うように、予想外の事態が発生する。
(っ足音!?)
足音が、近付いてきている。
(この位置は不味いっ・・・・・・!)
今少女たちがいる場所は、隠れるところが殆ど無い。壁沿いから離れればいくつか隠れられそうな場所はあるが、そうしてしまえば見張りに見つかってしまうだろう。足音から逆側に向かってもいずれ見つかる可能性は高く、何より脱出が遠のくことになる。
(足音の主を倒すしかない・・・・・・!それも出来る限り早く、声を出させずに・・・・・・!)
咄嗟にそこまで考えた少女は意を決し、リジルに話しかけたる。
「ごめん、ちょっとここで待っててね。もし僕に何かあったら、あちらの門の方まで走って森に入るんだ。その後は森を抜けて、人を見つけたら助けを求めればいい。頼んだよ」
そう小声でまくし立てた少女は、リジルと繋いでいた手を振り払って走り出す。名残惜しげに手を伸ばすリジルの姿は、少女には見えていなかった。
「あ?なんでここに」
すぐにならず者の姿が見える。驚き、動きが止まっている今がチャンスだ。走る勢いそのままに、腰溜めに短剣を構えて突撃する。体重を乗せた一撃は、少女の非力さを補ってならず者に突き刺さる・・・・・・はずだった。
「っ!!?」
少女の足がもつれる。ここまで、衰弱した体を気力で支えてきた少女だが、それ故に体が限界を迎えていることに気付けなかった。倒れるようにならず者にぶつかった少女は、揉み合うように地面に転がる。短剣はならず者の脇腹を浅く傷つけたものの、致命傷には程遠い。
「ってめぇっこのガキぃっ!」
ならず者は力任せに少女を跳ね飛ばし、馬乗りになって拳を振り下ろす。鈍い殴打音と共に、少女の顔に衝撃が走った。
「ぐ、ぅっ!」
「よくもやりやがったな奴隷の癖によぉ!ぶっ殺してやる!!」
振り下ろされる拳には一切躊躇が無い。このまま、後先考えず少女を殴り殺そうとしているようだ。一発、二発、三発。少女は腕を上げて防御の体勢を取ってはいるが、非力な細腕ではあまり意味が無い。さらに、びきりという音と共に右の腕の骨にヒビが入り、殴打される毎に激痛が少女を襲う。
(この、まま、だ、と・・・・・・!)
少しずつ意識が薄れていくのを感じる。激痛のおかげで辛うじて意識を保ってはいるが、あと何発か喰らえばもう耐えられないだろう。跳ね飛ばされた衝撃で短剣は遠くに転がってしまっており、反撃の手段は無い。
(く、そ・・・・・・!)
死の際にいるからか、時間がゆっくりに感じる。鈍化した世界の中で、少女は考える。この状況からなんとか抜けだす手段を。しかし、見つからない。意識が途切れかけ、痛みすら遠くなっていく。
(っ・・・・・・)
ゆっくりと、視界が暗くなる。痛みどころか体の感覚が無くなっていき、深い闇の中に落ちていく。そして、
「───ぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
何者かの咆哮と共に、ならず者が突き飛ばされた。
彼女は、奴隷になってしまってからずっと心を閉ざし続けていた。それが、心を守る唯一の手段だったのだ。
ある日。両親が率いるキャラバン、その馬車の中で揺れに任せてうとうとしていた時。悲鳴と蛮声が周囲に響き、彼女の日常は一瞬にして崩壊した。賊に捕まった彼女は、ひとしきり愉しまれた後、奴隷商に売られた。それからのことを、彼女はよく覚えていない。覚えていたら、とっくに心は壊れていただろう。
その頃には、彼女は感情の無い使い魔のように、命令に従うだけの存在になっていた。心を閉ざし、殺す。心が亡ければ、痛むことも、苦しむことも無い。そうして、彼女は受ける苦しみも、痛みも、全てをぼやけさせて生き延びてきた。
気付けば、彼女の所有者は怪しいローブの男になっていた。変な薬を飲まされたり、体に血で紋様を描かれたような気もするが、よく覚えていない。そして、森に連れていかれ、赤い光に包まれて。目を覚ました彼女は、妙な感覚を覚えた。
意識が、はっきりしている。五感に靄がかかっていたような感覚が、無くなっていた。彼女は混乱する。これでは、苦痛に耐えられない。なんとか意識的に心を押し殺し、周囲にバレないように振る舞った。気付かれてしまえば、余計に苦痛を与えられるかもしれないからだ。幸い殴られたり犯されたりはせず、肉体労働を命令され、それに従う彼女。不思議なことに、普通なら持てない重たいものを簡単に持ち上げられたし、どれだけ動いても疲れることも無い。
そういえば、奇妙なことがあった。髪の無い男に連れていかれた部屋に、自分によく似た少女がいたのだ。枷を付けられたボロボロの少女は、しかし、その表情は似ても似つかない。強い意志を感じる瞳をこちらに向け、男を睨みつけている。不思議な感情が湧いてくるのを感じながら、彼女は連れられて部屋を後にした。
その後、命令されて木材を運んでいる彼女の元に、少女が現れ話しかけてきた。頬を腫らし、纏っているボロ布には血痕が付いている。それでも、少女は煌々と輝く瞳をこちらに向けながら話してくる。
「ここから逃げ出す為に、君にもついてきてほしいんだ。奴隷じゃなくて、君としての人生を生きるためにここから脱出しよう」
言っていることが、彼女にはよく分からなかった。逃げる?ここから逃げて、どこに行けばいいのだろう。とうに、自分の人生は壊れてしまっているというのに。しかし、命令されたのならついていくしかない。言われる通りついていく前に、彼女は自分に似ているが全く似ていない少女に質問をしてみた。
「あなた、は・・・・・・わたし?」
彼女は疑問だった。自分と同じに見えるこの少女は、何故ここまで力強く感じるのだろうか。何故、心が折れていないのだろうか。少女は移動しながら、信じられないことを話し出した。
少女と彼女は入れ替わっている。つまり、彼女の今の体は、リジルという青年のものなのだと。ということは、目の前の少女は間違いなく自分の体だということだ。彼女・・・・・・リジルは、不思議で仕方がない。だって、自分ならこんなことが出来るはずが無いのだ。
ずっと心を殺して生きてきた。いや、生きながら死んでいた。それなのに、目の前の少女は微塵も諦めを感じさせない表情で、自分の手を引いて歩いていく。混乱しながら、リジルは少女についていく。
しばらく歩いた後。もう少しで外に出れそうな場所で、少女は立ち止まり何かを考えているようだ。外に出ないのか聞いてみるが、見つからないようなルートを考えている、とのこと。見つかったらどうなるのだろう。不安を浮かべたリジルに、少女は苦笑しながら背中を叩いてくれる。
「大丈夫、僕が必ず君を脱出させるから。だから、もう少しだけ我慢してくれると嬉しいな」
か細いはずのその声は、何故かとても力強く感じた。考え続けている少女を、リジルはじぃっと見つめる。リジルの目には、少女が光り輝いているように見えた。降りかかる苦痛を意志の力で振り払う、英雄のような存在。それが自分の体ということが、酷く奇妙だったのだ。
そして、二人は歩き始め、少女が何かに気付いて焦りながら走ってゆき、置いていかれたくなくて追いかけたら少女が男に殴られていて。リジルは激しく動揺した。
馬乗りになって、少女が殴られている。殴られているのは少女であり、リジルであり、自分だ。自由を奪われ、ずっと虐げられて、奴隷として生きてきた一人の少女。このままだと、殴られ続けて、きっとすぐに死んでしまう。体が、心が、命が痛む。苦しい、辛い、でも、どうしようもない。だって、今までもそうだったから。自分は、何も出来ないのだから。───本当に?
気が付けば、落ちている短剣を掴みながらリジルは走り出していた。今まで与えられてきた苦痛に、奪われた人生に、反旗を翻すように叫びながら突っ込む。馬乗りになっている男目掛けて思いっきりぶつかり、そして───
「・・・・・・え・・・・・・」
何が起こったか分からない。霞む目を凝らすと、リジルが短剣を手に、荒い息を吐いているのが見えた。
「はっ、はっ、はっ・・・・・・!」
短剣には、鍔にまでベッタリと血が付いている。吹き飛ばされたならず者は、胸の横辺りから血を噴き出しながら倒れている。恐らく、死んでいるだろう。
「ぐ・・・・・・」
気力を振り絞り、少女は上半身を起こす。自分のしたことが信じられないというように呆然としているリジルに手を伸ばし、短剣を握り締めている血まみれの手を両手で包んだ。殴打によって血だらけになった口で、優しく呟く。
「あり、がとう。助けてくれて」
「う、あ」
リジルが短剣を取り落とす。震える体で、縋るようにボロボロの少女を見つめた。
「大丈夫、大丈夫だよ。だから、落ち着いて。息を整えたら、ここを離れよう」
「おっと、そいつは許せねえな。悪いが逃がさねえぞ」
少女の声を遮るように、酒焼けした声が聞こえる。振り向くと、大男がローブの男が持っていた杖を片手に立っていた。
「ったく、散々殴りやがって、死んじまったらどうするんだ。あぁ、ありがとよ、そこの間抜けを殺してくれて」
皮肉を吐きながら、大男は少女たちに近付いてくる。少女は、短剣を拾い上げてリジルを庇うように前に出るが、足取りが覚束ない。衰弱した体に先ほどのダメージが加わり、立っていることすら難しそうだ。
「はっ!見事なもんだぜ、ここまで根性ある奴は見たことねぇ。だが、それも終わりだ」
大男はニヤつきながら、杖を構えた。先端に取り付けてある宝石が赤い輝きを放ち、光が少女を包もうとする。後ろにリジルがいる為、少女は避けることが出来ない。
「くぅっ・・・・・・!?」
赤い光をもろに浴びた少女だが、意識を失ったりはしなかった。むしろ、体の衰弱、ダメージが回復しているように見える。だが、
「っんくっ!?!?」
熱い。体の奥から熱っぽい感覚が湧き上がり、全身を蝕んでいく。初めての感覚に、少女は思わず膝をついた。
「僕にっ、何を、した!」
「そう怒るなよ、俺は死にかけのお前を助けてやったんだぞ?少しは感謝したらどうなんだ」
大男の言う通り、体の傷は治り、体力も回復しているように思える。だが、それ以上に未知の感覚が全身で暴れ回り、少女は混乱する。
(なんだ、これは・・・・・・!?)
下腹部がずくりずくりと疼き、四肢に力が入らない。汗が噴き出し、頬があっという間に上気する。少女は混乱しつつも、大男を睨みつけた。
「っはは、いいじゃねえか、貧相な体でも案外そそるもんだな。さぁて、折角だから教えてやるよ」
先端の宝石が砕けた杖を放り投げ、大男は嘲笑を浮かべながら、少女に近付きつつ朗々と話し続ける。
「今お前にかけた魔術はなぁ、悪魔を呼び出した後、捧げる生贄にかけるもんだ。効果は治癒、回復と・・・・・・発情さ」
「はつ、じょう?」
「そうだ!邪教徒共が悪魔をどうやって従えるか知ってるか?捧げられた生贄を、三日三晩悪魔に犯させるんだと。それで契約を結んで、悪魔を従えるんだそうだ」
少女の目の前まで大男が来た。汗と不潔さが混ざった匂いが少女の鼻をつき、下腹部の疼きが強くなる。
「つまり、さっきかけた魔術は、三日三晩のセックスに耐えられるよう体力を回復させ、さらにどんな刺激でも快楽に変えられるように発情させる魔術だってことだ!ははっ、どうだよ女の体は!男よりも気持ちいとは聞くが、実際どうなんだ、えぇ!?」
大男の声が耳に響くと、それだけで腰が砕けそうになる。経験したことの無い快感が少女の精神を蹂躙し、潤んだ瞳で大男を見つめてしまう。
「はっ、物欲しそうな目ぇしやがって!お望み通りくれてやるよ!」
大男がズボンを下ろすと、勃起したペニスが姿を現した。太く長いそれは、痴垢がたっぷりとこびり付き異臭を放っている。その剛直に少女は圧倒されながらも、匂いが鼻から脳に沁み渡り、くらくらと意識がぼやけていく。
(これ、は、駄目だっ・・・・・・!)
大男から離れようとするが、体が動かない。むしろ、物欲しそうにペニスに顔を近付けてしまう。
「ははっ、いい様だなぁ?そんなに欲しけりゃ、自分で咥えろよ!」
大男のペニスが少女の唇に触れる。ねっとりとした痴垢が擦り付けられ、その感触と匂いに少女はうっとりとした表情を浮かべてしまう。自然に口を開こうとする体を必死に止めようとする少女。しかし、発情し切った体には抗いようも無く、ゆっくりと口を開いてしまった。
(駄目だ、耐えろ、流されるな!)
必死に耐えようとするも、体は勝手に動き、大男のペニスを咥えようとする。意志ではどうしようもない、生物としての本能。煮えたぎる性欲が少女の心を蹂躙していき、抗おうとする意志が押し流されていくようだ。
「だ、駄目ぇっ!!」
リジルが駆け寄り、さっきのように大男を突き飛ばそうとする。だが、大男は突っ込んでくるリジルを軽々と受け止め、逆に投げ飛ばしてしまった。
「がっ、ぅぐ・・・・・・!」
「下手な真似するなよ奴隷風情が!後でたっぷり躾けてやるからそこでうずくまっていろ!」
したたかに壁に背中をぶつけたリジルは、うつ伏せに倒れ、せき込みながらも大男を睨む。怯えの色を残しながらも決して逸れることの無い瞳に、大男は苛立たしげに舌打ちをした。
「ちっ、随分反抗的になったもんだなおい!よぅし分かった、死なない程度に痛めつけててめぇの立場って奴を自覚させてやろうじゃねえか!」
大男は少女に背を向け、うずくまるリジルに近付いていく。絶好のチャンス。しかし、少女は立ち上がることが出来ない。四肢が自分のものではないようだ。ただただ、己の内から湧き上がる情欲に振り回され、股間からダラダラと愛液が溢れる。その様子をちらりと見た大男は、にやりと笑ってリジルの方に向き直り胸倉を掴み上げた。
「そこで自分自身の体がボコられるのを見てるんだな!」
リジルはどうにかもがいて逃れようとしているが、大男の腕力は相当なものらしく、がっちりと掴まれて逃げられないようだ。そのまま、大男はリジルの顔面に拳を叩き付ける。
(クソッ、どうして・・・・・・!)
どれだけ動こうとしても、体は思い通りに動かない。さらに、劣情は少女の精神を焼き尽くすようにとめどなく溢れてくる。全身を暴れ回る異性の快楽。それは、少女の意志をすら屈服させかけていた。
(このままじゃ、駄目だ・・・・・・!でも、どうすればいい!?どうすれば・・・・・・!)
目の前で、大男に胸倉を掴まれ、壁に押し付けられたリジルが殴られている。自分の体が痛めつけられる以上に、自分の体に入っている奴隷の少女が痛めつけられることを許すわけにはいかない。だが、方法が無かった。この絶望的な状況を打破出来る方法を、少女は思いつくことが出来ない。と、
「っつぅ!?こ、この野郎っっ!!」
大男が苦悶の声を上げた。拳には歯型が付き、血が滴っている。リジルは殴られながらも大男の手に噛みついたようだ。殴打で顔が腫れ、片目が塞がっているリジルは、しかし大男を睨みつけていた。
「わた、わたし、は、もう、奴隷はいやだ・・・・・・!」
「うるせえ!てめえは大人しく俺の言うことに従ってりゃあいいんだよ!!」
リジルを壁に叩きつけ、太い腕を喉に押し付け圧迫する大男。苦しげにリゼルが呻くが、構わず大男は喚き散らす。
「いっそこのまま殺してやろうか、あぁ!?てめえらの命なんぞ、なんの価値も無いんだよぉっ!!」
それでも、リジルは大男から視線を逸らさない。痛みで涙を滲ませながら、強い意志を感じさせる瞳で大男を睨み続けた。それを見た少女の胸に、情欲とはまた別の火が灯る。
(彼女は、まだ戦おうとしている・・・・・・!それなのに、僕が諦めてどうするんだ!)
火が、燃え盛っていく。女の身から湧き上がる情欲の熱を、意志の火が塗り替えていく。だが、まだ足りない。魔術によって増幅された情欲は、体にべったりとこびり付くように火に抗う。少女は、短剣を逆手持ちに強く握り、振り下ろした。
「っぐぅぅぅぅぅぅぅっっっ・・・・・・!!」
もう片方の手の甲に、短剣が突き立てられる。激痛と共に血が溢れ出し、少女は呻き声を上げた。そして、そのままガクガクと震える体を無理やりに動かし、立ち上がる。
(うご、け・・・・・・動け、動くんだよっ!!!!)
少女はあえて体を傷付け、その痛みで情欲を一時的に抑え付けたのだ。しかし、長くは持たない。少女は手の甲から流れる血を口で吸い上げ、片手で短剣を構え大男に突撃した。リジルを痛めつけることに夢中になっている大男は少女に気付けず、背中に短剣が突き刺さる。
「ぐわぁっ!?」
苦悶の声を上げて振り向く大男に、少女は短剣を引き抜いて距離を取った。大男の背中からは血が流れているものの、少女が片手だったのと大男の脂肪が厚かったこともあり、致命傷には至っていない。大男は顔を真っ赤にして腰の剣を引き抜き、少女に向けて振りかぶる。
「やりやがったなガキがぁ!もういい、切り刻んで豚の餌にしてやるこの間抜けがよぉっ!!!!」
大男は怒りのままに少女との距離を詰め、力任せに剣を振り下ろした。あらかじめ剣筋を予測していた少女は半身で躱すが、大男はそのまま体毎ぶつかってくる。今度は避け切れずに吹き飛ばされ、倒れ込む少女に大男が再び剣を振り下ろす。
「死ねぇっっ!!!」
今の少女では見切れない速度で刃が迫る。少女の体を切り裂く直前、剣の軌道ががくりと変わった。ボロボロのリジルが大男の片足にしがみ付き、大男の体勢を崩したのだ。
「駄目、駄目っだめなんだからっっ・・・・・・!!」
うわ言のように言いながら、リジルは大男の足にしがみ付いたまま離れない。
「どいつもこいつもクソがよぉっ!!俺の邪魔をするんじゃあねぇっ!!」
大男は怒り狂いながら剣をリジルに突き立てようとするが、その時少女が獣のように飛び上がり、大男に肉薄する。気付いた大男が迎撃しようとするも、少女の口から何かが放たれた。
「うぉっ!!?」
霧状になった血が大男の視界を奪う。一瞬だけ怯んだその瞬間に、少女は跳躍するように短剣を突き出した。喉に刃が食い込むが、大男は腕を払い少女を突き飛ばす。
「ごぼっ、でめ、でめぇえぇぇぇぇぇっっ!!!」
喉と口から血を溢れさせながら、それでも大男は倒れなかった。足を掴むリジルにも構わずに、立ち上がってこようとする少女をもう片方の足で蹴り上げ、咳き込む彼女の背中を斬りつけた。
「っくぅ・・・・・・!」
「死ね、死ねよぉ!!が、っぼ・・・・・・!」
叫ぶと同時に喉から血が噴き出し、刺さっている短剣が落ちる。大男がよろめき、その巨体がぐらりと揺れた。ゆっくりと倒れ伏すと、ずしんと辺りに地響きが起こる。
「ぐ、ぞ、がぁ・・・・・・」
口から血の泡を噴きながら、大男は振り絞るように呟き、そして動かなくなった。
(やった、のか)
大男の倒れる音を聞いた少女は、倒れて動けないままにそう判断する。背中からダラダラと血が流れ続け、このままでは失血死してしまうだろう。だが、蓄積したダメージか、あるいは先ほどの戦いで気力を使い果たしてしまったのか、少女の体はもう動けなかった。
霞み、暗くなっていく視界に駆け寄ってくる自分の体の姿が映る。リジルは泣きながら何かを言ってくるが、少女の耳はその声を拾えない。最後の力を振り絞り、少女はリジルに向かって呟く。
「逃げ、るんだ・・・・・・」
リジルの返事を聞く前に、少女の意識は闇へと落ちていく。そして、何もかもが、真っ暗になった。
熱っぽい疼きと共に、少女の意識はゆっくりと覚醒した。薄く目を開けると、木造りの天井が見える。
(僕は、確か・・・・・・)
記憶をたどりながら、ぼんやりとした頭のまま起き上がる。どうやら、ベッドに寝かされていたようだ。
「あぁ、目を覚ましましたか。よかったです」
ベッドの横、椅子に腰かけている女性が声をかけていた。修道服を旅装にしたためた服を纏った彼女は、少女の体調を確認するように顔に手を当ててくる。
「あな、たは」
「私はたまたま開拓村を訪れた冒険者です。少し待ってくださいね、後で説明しますから」
そう言うと、女性は首に下げた聖印を握りながら、なんらかの祝詞を唱える。少女の体を青色の粒子が包み、全身の熱っぽさが少し引いた気がした。
「ふぅ。これでしばらくは大丈夫でしょう。では、説明させていただきますね」
「・・・・・・お願いします」
敵ではないと分かり、警戒を解いた少女に女性は説明を始めた。少女が意識を失った後、何があったのかを。
彼女は、とある冒険者パーティーの一員だった。邪教の司祭を捕らえる依頼を受け、足取りを追った結果開拓村に着く。そして、そこの村人からリジルのことを聞いたのだ。数日前に、ゴブリンを追って森に入った男が戻ってきていない、と。
冒険者たちはすぐに森に調査に出た。すると、何かを探すように辺りを探索しているならず者たちと遭遇する。襲ってきたので反撃し各個撃破していくと、彼らは砦跡に逃げ込んでいった。しかし、程なくして白旗を振り投降。どうやら、リーダー格の人物が殺害されてしまったかららしい。
砦跡に入りならず者達を縛り上げていると、傷を負い意識を失った少女と、その傍らで泣きじゃくる青年を発見。近くにリーダーと見られる男の死体もあったことから、少女の治療をしつつ話を聞くことになったのだが・・・・・・。
「彼は貴女が傷ついたことに酷く動揺していまして。なんらかの魔術の影響もあるようで、今は眠ってもらっています」
「そう、ですか。命に別状は無いんですよね?」
「多少は打撃による負傷がありましたが、それは治させていただきました。むしろ、貴女の方が重傷でしたよ。あと少し私たちが来るのが遅れていたら、どうなっていたか分かりません」
「ありがとうございます、おかげで助かりました。お礼ではないですが、僕の知っていることを伝えます。信じては、もらえないかもしれないけど」
少女は、何があったのかを分かっている限り全て説明した。邪教徒の魔術でリジルと少女が入れ替わってしまったこと、なんとか脱出するために色々と動いたこと、大男に回復と発情の魔術をかけられたこと。一通り話した後、女性の顔色を伺う少女。しかし、女性は悲しげな顔をしつつも少女の話を信じたようだ。
「それは、災難でしたね・・・・・・」
「信じて、いただけるんですか?」
「えぇ。貴方たちが関わった邪教には、そのような呪いの魔術が伝わっているという話も聞いたことがあります。そうだとすれば、彼、いや彼女ですね・・・・・・彼女の錯乱っぷりにも納得がいきますし」
彼女の言葉に、少女は大きく息を吐き頭を下げる。
「ありがとうございます。正直、ここまで容易く信じてもらえるとは思っていませんでした」
「謝らないで。貴方達がリーダーを倒してくれたから、残りの者達に砦に籠られるということも無かったんですもの」
女性はニッコリと微笑みながら言う。しかし、すぐに表情を曇らせ、少女を見つめながら告げた。
「しかし、そうなると難しいですね。邪教の司祭が扱う魔術には謎が多く、未だ解呪の方法は見つかっていません。肉体の発情に関しては、定期的に解呪の魔術をかけていけば抑えられるでしょうし、時間経過でいずれ薄れていくでしょうが・・・・・・入れ替わりの方をどうにかするのは、はっきり言って厳しいと言わざるを得ません」
「・・・・・・そう、ですか」
女性の言葉に衝撃を受ける少女。しかし、ある程度予測してあったことなので衝撃は小さく済んだ。二十年以上共に生きてきた自分の体と別れるのは悲しいことだが、それ以上に心配なのは。
「そうなると、彼女が心配ですね。奴隷として生きていて精神が消耗していた上に、他人の体になってしまっているわけですから。事情を理解して、ケアをしてくれる人がいるかどうか・・・・・・」
少女が呟くように話していると、女性はどこか驚いたような表情で少女を見つめる。何か、不思議なものを見たかのような表情だ。
「えっと、どうしました?」
「あぁいえ、すみません。てっきり、もっと動揺するものかと。貴方は強く、お優しいのですね」
そう言って微笑む女性に、少女はなんと返せばいいのか分からなかった。口ごもっていると、女性は立ち上がり言う。
「分かりました。ひとまず、彼女には貴方から説明していただけますか?多分、それが一番いいと思います」
「は、はい」
少女は女性に連れられ、リジルに会う為に部屋を後にした。
「彼女はここで眠っています。軽く肩をゆすれば起きると思うので、お任せしてもいいでしょうか?」
「分かりました。ありがとうございます」
開拓村の小屋の一つ。そこの床に敷かれたシーツの上に、リジルは寝かされていた。毛布代わりの獣皮をめくり、肩をゆする。
「ぅ、ん・・・・・・」
ゆっくりと目を開けるリジル。焦点の合わない視線が少女に合わさり、リジルは慌てて起き上がった。
「あ、わ、私っ大丈夫!?」
「うわっ!?だ、大丈夫、僕は大丈夫だから落ち着いて。ね?」
肩を掴んで揺さぶられながら、少女は優しくリジルに話しかける。宥めるように頬を撫でると、リジルはハッとして少女の肩を離す。
「ご、ごめん、なさい」
「大丈夫だよ、気にしないで。君の方こそ、何か体が痛かったり苦しかったりはしないかな?」
「わ、わたしは、痛くない、です。たぶん」
おそるおそると言った感じで、どもりながら答えるリジル。少女は微笑んで、今度は頭を撫でた。
「よかった。落ち着いたら、話したいことがあるんだけど・・・・・・その前に、君の名前を教えてくれるかな」
「私の、なまえ?」
少女の言葉に、リジルは首をかしげる。
「無理に言わなくてもいいし、覚えていないならそれでも構わないよ」
顔色を伺いながら言う少女に、リジルは眉間にしわを寄せて何かを考えているようだ。しばしの沈黙。リジルが口を開くのを、少女は根気強く待ち続ける。
「・・・・・・ルーニ。たぶん、私の名前だとおもう」
絞り出すように、リジル───ルーニが言う。
「ルーニちゃんか。僕はリジル、よろしくね」
少女───リジルも名乗り返し、柔らかくルーニの手を握る。ごつごつとした元自分の手と、か弱い今の自分の手が合わさり、彼女は少し奇妙な感覚を覚えた。その感覚を振り払いながら、リジルは続ける。
「それでね。ルーニちゃんに、伝えなきゃいけないことがあるんだ。これからの、君と僕のこと。聞いてくれるかな」
こくりと頷いたルーニを見て、リジルは説明し始めた。入れ替わりの事実と、戻る方法が見つかっていない、ということを。
「・・・・・・だから、しばらく一緒に行動してほしいんだ。僕は全力で元に戻る方法を探し出す。君が元に戻れるよう、頑張るから」
まっすぐにルーニを顔を見つめながら話すリジルに、ルーニはどこか眩しそうに眼を細めた。
(元は、私なのに。ぜんぜんちがう。すごいなぁ)
「うん、わかった。でも、私も手伝いたい。リジルみたいに、がんばりたい」
こうなりたい。ルーニは、リジルを見てそう思った。元の自分の体でこんなに頑張っているリジルを見ていると、ルーニの心も温かくなる気がするのだ。だから、ルーニは真っすぐにリジルを見返しながら言う。
「これから、よろしくおねがいします」
深く頭を下げるルーニに、リジルは少し嬉しくなった。初めて会った時の印象とは違う、自主的な意志を今のルーニは持っている。
(過酷な出来事ばかりだっただろうに・・・・・・強い子だ)
「こちらこそ、よろしくお願いします。さて、それじゃあ外の人たちに挨拶しに・・・・・・っ?」
同じく頭を下げた後、ルーニを連れて小屋の外に出ようとするリジル。しかし、ルーニの手を握ったところでがくりと膝をついてしまう。
「だ、大丈夫?」
「だ、だいじょう、うぅっ・・・・・・!」
ぞわり。あの時感じた感覚が、再び這い上がっていくのを感じる。下腹部が疼き、全身に汗が滲んでいく。
「まず、ぅっ・・・・・・!」
確か、修道服の女性が言っていた。解呪の魔術をかけてもらえば一時的に治まると。リジルが急いで小屋の外に行こうとしたところで、女性が扉を開けて入ってきた。
「大丈夫ですか、変な物音がしましたが・・・・・・っ!?」
女性はリジルに駆け寄り、体調を確認する。額に手を当てられるだけで、そこから甘い痺れが伝わってくるかのようだ。リジルは悶えながら、女性に言う。
「おそらく、発情がっ・・・・・・解呪をお願いできっ、ますか?」
「分かりました、もう少しだけ耐えてください」
女性が聖印を握り祝詞を唱えると、先ほどのように青い粒子がリジルを包んでいく。だが・・・・・・。
「っふ、ぅ・・・・・・!」
「おかしい、効果が無い・・・・・・!?」
先ほど効果があったはずの祝詞は、今のリジルの情欲を抑えることは無かった。むしろ、全身に走るむず痒さが増した気もする。
「っく・・・・・・すみません、ルーニを・・・・・・この子を、外に連れていってください・・・・・・このままだとっ、彼女を襲ってしまうかもしれない」
何も出来ずにおろおろとしているルーニに目を向けて、リジルは言う。女性は己の未熟を悔やむようにしながらも、ルーニの手を取って連れていこうとする。
「や、やだっ!リジルが苦しいなら、私がたすけたい!」
駄々っ子のように首を振るルーニ。鍛え上げられた肉体は、女性一人では連れていくことは無理だ。
「る、ルーニ、僕は大丈夫っ、だから・・・・・・」
「うそ!だって、そんなに苦しそうなのにっ・・・・・・!」
ルーニの声が脳と下腹部に響き、じゅくじゅくと愛液が湧き出してリジルの股を濡らしていく。それでもリジルは強引に劣情を抑え、ルーニに言い聞かせようとした。と、
「・・・・・・さっきは話しませんでしたが。その発情を収める方法が、あと一つだけあるかもしれません」
ぽつりと、女性が呟いた。悔やむような表情のまま、続ける。
「悪魔の体液には催淫作用があり、それを抑える術式も、リジルさんが受けた魔術には組み込まれていたはずです。三日三晩の儀式の際、発情し過ぎて生贄が死なない為のものだと思われます。つまり」
僅かにためらった後、言い放った。
「つまり、発情を抑える術式は、雄の体液、つまり精液を摂取することで発動する可能性が高いんです」
「それって、つ、まり・・・・・・」
言われて、リジルはルーニの股間に視線を送る。送ってしまった。意識しただけで、ゾクゾクと背筋を戦慄が走る。
「い、いや駄目だっ!この子はまだ精神的にも幼い女の子なんですよっ!?それを、無理やりっ・・・・・・!」
「わ、分かっています。なので、貴方が望むなら私たちのパーティーの男性を呼んできます。無理にとは言いませんが、それなら」
女性が言いかけた所で、遮るようにルーニが叫んだ。
「わ、私!私がやる!男ならいいんでしょ!?いまの私は男だから、リジルを助けられる!」
必死になって言うルーニの姿に、女性は何も言えずリジルの方を見る。リジルは荒い息を吐きながら、茹だる頭で思考を回した。
(いくら、本人が言っていても・・・・・・だけど、うぅん・・・・・・)
答えは出ない。しかし、体の方は急速に高ぶっていく。下腹部の疼きはどんどん激しくなり、涎すら垂れてしまいそうだ。そして、そんなリジルにとどめが刺される。
「ねぇ、リジル!私、やくに立ちたいの!おねがい、私にやらせて!」
ルーニがずいっと顔を近付け言ってくる。何をするのかも分からないまま、それでも健気なその様子と、鼻をつく雄の体臭。リジルは、平静を装いながら女性に言った。
「しばらく、外に出ていてください」
「い、いいのですか?」
「はい。彼女が望んでいるなら、遠慮なく頼ろうと思います」
女性が心配そうな表情をしながら扉から出ていく。二人きりになった。
「ルーニ。本当に、いいんだね?今から、僕達は体を重ね合わせる・・・・・・性行為を、することになるんだ。君にとっては、辛い過去を思い出すことかもしれない」
言い聞かせるように言うリジル。顔は赤く、下腹部が湿り始めていても、最後の理性を振り絞ってルーニに確認をする。
「大丈夫、私、リジルのためにがんばりたいから」
屈託なく笑うルーニに、リジルはしかし限界だった。ルーニに立つように言い、彼の脚衣を下ろす。
「あっ・・・・・・」
見知ったモノが、股間にぶら下がっている。淫靡な匂いにくらくらとしながらも、リジルはペニスに手を伸ばした。
「うあっ・・・・・・!?なに、これっ?」
未知の感覚に、ルーニは驚き身を捩る。それに構わず、リジルは口を開けてまだ小さなペニスを飲み込んだ。
「あむ、んむぅ」
「えっあっなにっ!?これっえっ!?」
混乱するルーニの声を聞きながら、リジルは元自分のペニスをじっくりと味わう。決して美味しいとは言えないはずのそれは、口に含んでいるだけで全身が滾り、情欲が凄まじい勢いで噴き出してくるのを感じた。
「んぷっ、じゅる、んむぅっ」
夢中でペニスをしゃぶるリジル。我慢し続けていた分、肉体は求めていた雄のモノに歓喜している。口内で刺激されたペニスにはたちまち血液が集まり、やがて口に含み切れない程に怒張した。リジルは口を離し、ちろちろと赤くぬるついた舌で勃起したペニスを舐め上げる。
「な、なにぃ、これ・・・・・・?大きく、なって、あつい、なんかへんっ」
心の幼いルーニにとって、それは未知の感覚だった。元の体の時に何度も犯されたことはあったが、未成熟の体では苦痛しか感じることが出来ていなかった。だからこそ、ペニスから感じる男の快感は、ルーニにとって刺激的かつ初めてのものだ。舌で舐め上げられる度に体がビクビクと震え、全ての感覚が股間に集中したような気分になる。
「れろ、大丈夫、その感覚に集中して。んぐっ」
リジルは大きく口を開けて、亀頭の部分を口に含みながら竿を手でしごく。溢れ出す我慢汁はまるで甘露のようにリジルの体に染み渡り、キュンキュンと下腹部、子宮が疼いてたまらない。
「あぁっ、り、ジルこれへんっ!なんかたまって、出そうっ!?」
「んぶっぷ、っく・・・・・・我慢しないで、そのまま出していいよ。はぷっ」
「えっあっうわぁぁぁっっ!!!」
甘噛みするように歯で亀頭を刺激すると、ペニス全体が一気に膨れ上がる。ルーニの情けない声と共に、ペニスをポンプとして先端から白濁が噴き出した。
「んぐっぅぅぅうぅぅっ!!」
ドロドロの精液がリジルの口内に放たれ、小さい口内では受け止めきれずに零してしまう。粘っこいそれは飲み込むのに苦労し、まるで固体のようにリジルの胃へボトボトと落ちていく。
(これ・・・・・・美味しいはずがないのに・・・・・・)
お腹がかぁっと熱くなる。もったいないとでもいうように、リジルは精液塗れのペニスを舐め上げ、啜り、綺麗にしていった。
「やっうわっはぁ、ふぅっ!?」
射精の余韻もそのままに、ペニスを丁寧に掃除されるルーニは目を白黒させながら元の自分の体を見る。白い液体に塗れながら、その表情はとても幸せそうだ。そんな自分の表情を見るのは、初めてだった。
「はっ、んっ・・・・・・!り、リジル、幸せなの?」
男の快感に振り回されながら、思わずルーニは聞いてしまう。
「・・・・・・ごめん、君の体を使ってこんなことをして。でも、呪いのせいか、満たされた感じがするのは本当だ。あぁ、クソ、わけが分からなくなる」
リジルは言いながら、自身の体の状態を確かめる。情欲に流された振る舞いをしたという事実。そうしてまで取り込んだ精液は、確かに心身の熱を多少は軽減したようだ。リジルは首を振りながら、心の中で相反する二つの感情が渦巻いているのを感じた。快楽に身を任せて、このまま元自分の体を貪ろうとする感情と、ここで踏み止まらねばいけないという感情。前者の感情を抑えようと、リジルは小屋の外に出ようとする。しかし。
ぎゅっと、手が握られた。振り向くと、ルーニが潤んだ瞳で見つめてくる。未だに萎まないペニスを外気に晒したまま、ルーニは言った。
「ね、ねぇ。リジルが幸せなら、もっとしていいよ・・・・・・?」
タガが、外れるような感覚。抑えていた情欲が津波のように押し寄せ、リジルを飲み込んでいく。たまらず、リジルはルーニを押し倒した。
「わっ!?」
「う、うぅぅぅ・・・・・・ルーニ、ごめんっ!」
僅かに残った理性で謝罪すると同時に、リジルはルーニの体に跨る。もはや大洪水になっている膣に狙いを定め、ペニスで貫かれるように腰を下ろした。完全にほぐれ切った膣はずぶずぶとペニスを飲み込んでいき、あっという間に子宮口まで到達する。
「っか、あ・・・・・・!」
内臓を直接抉られるような感覚と、まるで落雷のような快感がリジルを襲う。ばちばちと視界に光が飛び散り、息が止まる。ペニスの半分程しか受け入れられない幼い膣がキュウキュウと締まって、雄との交合を歓迎していた。
「こ、これっ、あったかくて、キツくて・・・・・・でもぬるぬるで、うねうねしてるぅっ・・・・・・!」
ルーニが呻くように言いながら、ぎゅっと目をつぶる。快感に痺れる思考の中、リジルは元自分のそんな表情が何故だか愛しく感じてしまった。愛液がさらに溢れ、たっぷりの潤滑剤となってリジルは腰を動かし始める。
「ぐ、ぅっ!はぁっ、んんんっ!!」
ぐちゅり、ぐちゅり。柔軟に形を変える膣がペニスを擦り上げる度に、陸に上がった魚のようにリジルの体が震える。抑えられない痙攣に、上半身をルーニに預けるように倒れるリジル。たくましい胸元はリジルを容易く受け止め、その雄々しさと汗の匂いでリジルはさらに興奮していった。
「はっ、ふぅっくぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!」
深く腰を下ろす度、固く膨れ上がった亀頭が子宮口をゴリゴリと刺激する。精液を求めて子宮が蠢き、子宮口が亀頭に吸い付くような気さえする。リジルは男らしい元自分の体に抱き着きながら、一心に腰を振り続けた。
「うあっ、りじ、リジルっ、またなにかっ、へんなのがっっ!??」
顔を紅潮させながらルーニが焦ったような声色で言う。きっと、射精が近いのだろう。堪え方を知らないルーニは、二発目の準備をあっという間に整えたようだ。その声を聞いたリジルは一層腰の動きを激しくし、ルーニに縋りつきながら叫んだ。
「そっそのままぁっ!中にぃっ出してっ出してぇぇぇっっ!!」
ごりっ。リジルが力いっぱいに腰を下ろすと、亀頭が子宮口を貫通して子宮の内部にまで侵入する。その衝撃に、二人は殆ど同時に絶頂した。
「「あぁっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」」
流れ込んでくる。二度目とは思えない大量の精液が、子宮に直接叩き付けられていく。悦ぶようにリジルの膣内がうねり、さらなる精液を搾り取ろうとしている。ルーニは無意識の内に、未成熟な体を孕ませようと腰を突き上げて射精を繰り返した。
「は、ぁ・・・・・・んく、ふぅ・・・・・・」
「はぁっはぁっはぁ・・・・・・リジル・・・・・・」
全てを吐き出し終え、膣の中でゆっくりと小さくなっていくペニス。リジルは体力を使い果たしたのか、朦朧とする意識の中で余韻を感じていた。と、
ぎゅっ
ルーニのたくましい腕がリジルの背中に回され、力強く抱き締められた。ルーニの吐息と、心臓の鼓動が聞こえる。なんだかとても心地良い気分になりながら、リジルは繋がったまま眠りに落ちていくのだった。
「えいっ!」
「右腕に力が入り過ぎてる!もう少し力を抜いて柔軟に!」
「は、はいっ!」
リジルとルーニは、街の外れで特訓をしていた。リジルが愛用していたロングソードを振るルーニを見ながら、リジルが的確にアドバイスを飛ばしていく。
「僕の体は肘の可動域・・・・・・肘が柔軟に動くから、力ずくで振るよりもロングソード自体の重さを利用した方がいいと思う。後は、上段から振り下ろすだけじゃなくてコンビネーションも練習しないとね」
「た、大変だぁ・・・・・・でも、がんばる!」
むん、と気合を入れて再びロングソードを振り始めるルーニを、リジルは感慨深いような視線で見つめていた。
リジルとルーニが入れ替わってから半年。あの後、冒険者達に連れられて近場の街まで来れた二人は、修道服の女性が普段勤めている教会で過ごすことになった。二人にかけられた魔術の解析と解呪、それによって邪教徒たちの手がかりを探すためにと頼まれたのだ。入れ替わったままでは旅を続けることも出来ないので、リジルはありがたくその提案を受けた。それから、教会の手伝いや、戦えるようになりたいと懇願してきたルーニを鍛えながら過ごしている。
(僕の体なのもあるだろうけど、ルーニの剣捌きは結構筋がいい。あとは、実践含みの練習で防御を学ばせたいけど・・・・・・)
考え込むリジルは、半年前に比べて随分と愛らしくなっていた。ぼさぼさだった髪は綺麗に整えられ、質素だが清潔な服を着ている。栄養状態がよくなったからか、細過ぎるという印象は無くなり、健康的になった肢体は徐々に女性として魅力を纏い始めていた。
「えぃっ!やぁっ!」
対するルーニは、こちらはそこまで変わっていない。伸びた髪の毛を後ろでまとめるようになった程度だ。しかし、内面は随分と変化した。よく喋るようになり、表情も豊かになったのだ。元自分の体ということもあって少しむず痒く感じるリジルだが、ルーニが精神的にも立ち直れたのは素直に嬉しかった。
「よし、そこまで!次は僕と一緒に走り込みにいこうか」
「はぁ、はぁ・・・・・・は、はいっ!」
休む間もなく、ルーニはリジルに続いて走り出す。何かあった時の為に最低限の体力をつけておきたいリジルは、こうやってルーニを鍛えつつ自身の体力作りもしていた。
数十分後。日が暮れた辺りで、二人は走りながら教会付近まで帰ってきた。
「ふぅ・・・・・・よし、今日はこれくらいにしようか。小川で汗を落としてから帰ろう」
「は、はぃぃっ・・・・・・つかれたぁ~・・・・・・」
へたり込みそうなルーニに苦笑しつつ、小川に向かおうとするリジル。と、
「っ・・・・・・!」
くらりと、めまいのような感覚に襲われる。この感覚は、『アレ』の予兆だということをリジルはこの半年で学んでいた。へばっているルーニの手を引っ張り、小川ではなく教会近くの小屋まで急ぐ。
「リジル・・・・・・?あ、もしかして呪いがきちゃったの?」
「っうん、どうやらそうみたいだ・・・・・・ごめん、いつもみたいにお願い出来るかな?」
小屋に入り、潤んだ瞳でルーニを見上げるリジル。ルーニは頷いて、躊躇無くペニスを露出させた。
そう。発情の魔術は、未だに解けていなかった。半年前から徐々に発情する間隔は長くなっているものの、その度にリジルはルーニに頼んで精液を摂取させてもらっている。申し訳ないという気持ちはあったが、当のルーニが乗り気なため甘えているというのが現状だ。
リジルは小屋の壁に手を置き、ルーニにお尻を向ける。既に濡れそぼり、じゅくじゅくになった膣を見ただけでルーニのペニスはみるみる内に大きくなっていった。そのまま、ルーニはリジルの細い腰を掴んで腰を押し進める。
「んっ、くぅ・・・・・・!」
この半年でこなれたのか、膣はすんなりとペニスを飲み込んでいく。根本まで入り切ると、膣がペニスの形に変わっていることが分かり、リジルは快感とともに僅かに痙攣した。
「動かして、大丈夫?」
訊ねてくるルーニに、リジルは服の袖に噛みつきながら頷く。この小屋は、事情を理解している教会の管理者が用意してくれたものだが、周囲に聞こえるような喘ぎ声を出すわけにはいかない。与えられるであろう快感に身構えていると、ゆっくりとルーニの腰が動き出した。
「ふぅっ、んむっ・・・・・・!!」
丁寧に、膣内を擦り上げる腰遣い。半年前と比べて格段に上達している責め方で、ルーニはリジルに快感を送り込む。後ろから手を胸に回し、膨らみかけの胸を優しく揉むとリジルのくぐもった喘ぎ声が一段高くなった。
「ふっんんんんっ!」
抑えようとしても漏れる喘ぎ声を聞きながら、ルーニはリジルにもっと気持ちよくなってもらおうと腰の動きを少しずつ早めていった。弱点である奥を重点的に突きながら、乳首をかりかりと引っ掻く。声を必死で抑えている元自分の姿に、ルーニは愛おしさを覚えながら責め続けていく。
「ねぇ、リジル。気持ちいい?幸せ?」
耳元で囁くと、リジルは涙の溜まった瞳をルーニに向けた。少しの逡巡の後、コクリと頷く。ルーニはとても嬉しくなって、深く抉るように腰を突き入れた。
「んうっんんんんっっんんんんっ!?」
ビクビクと震え、軽く絶頂するリジルの体。この半年で体を重ね続けてきたことによって、リジルの弱い部分はルーニに知り尽くされていた。結合部から愛液が滴り落ち、小屋の床を濡らしていく。
「もっと、もっと気持ちよくするからね!」
抑えめの声で、それでも元気よく言うルーニに、リジルは微かな後悔を覚えた。
(まさか、こんな床上手になってしまうなんて)
しかし、その後悔はルーニからの責めによって一瞬で吹き飛ばされる。乳首を軽くつねられ、ペニスは子宮口近くを的確に刺激する。さらに、ルーニはリジルの顔に片手を添えて、声を押し殺すために噛んでいた袖を取りキスで唇を塞いだ。
「んむむむむぅっ!!?」
侵入してくるルーニの舌は、乱暴にも見える動きでリジルの口内を蹂躙する。歯を舐め上げられ、舌を吸われ、溢れる唾液を流し込まれる。そして、それが気持ちいい。膣も、胸も、口内までも責め立てられているのに、心まで満たされるような幸せな気分になってしまう。
きゅん、と子宮が疼く。呪いで無理やり引き起こされる発情とは違う、甘い甘い疼き。少し前から感じるようになったこの感覚をリジルは否定しようとするが、
「んんむぅっ、じゅるっ、んんんんんんぅんんっっ!!!」
その間もなく、ルーニから与えられる快感の濁流に流されてしまう。膣内が精液を欲しがるようにきゅうきゅうとペニスを締め付け、リジルからルーニの唇を貪ると、ペニスが一層漲り射精の準備を整えた。思いっきり腰を突き入れられると同時に、ドロドロに煮えたぎった精液が最奥にぶちまけられた。
「んんんんんんんんぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」
リジルの膣内が収縮し、一滴も零さないようにペニスを啜り上げる。いつもに増して粘ついている精液が胎内に流し込まれる度、リジルは幸福感に満たされ、溢れて、絶頂し続けていった。
余韻が治まる頃。ルーニがゆっくりと腰を引き抜くが、精液は零れてこない。ぶちまけられた全てを、リジルの胎内は飲み込んだようだ。リジルは意識が朦朧としているのか、薄目を開けて荒い息を吐いている。ルーニは彼女を抱きかかえ、膝枕のように寝かせた。リジルの頭を優しく撫でると、彼女はゆっくりと目を閉じて、やがて寝息が聞こえてくる。そんなリジルを愛おしげに眺めながら、ルーニは呟く。
「私も、幸せだよ。リジル」
聖母のような微笑みを浮かべながら、ルーニはリジルが目覚めるまでずぅっとその寝顔を眺め続けるのだった。