【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
黒服に関しては大幅に設定が変わっていますので、ご注意ください。
ネタバレ気味ですが、人物まとめ(シーズン2終了時まで)に詳細を書いてます。
一部加筆修正してあります。
約12000字。
【前回のあらすじ】
「シロコさん、前回の感想をお願いします」
「ん、先生は目隠しプレイも好きってわかった。もっと私といろんなプレイをするべき」
------------------------
シャーレの仕事も終わり、俺は
——とうとうシロコともエッチしてしまったが、「あれは逆レイプされたんです」って言い訳で許してもらえるんだろうか。あと、セリカは知ってるとして、アコに、ユウカとは二回。カヨコのはあのキレ方だと知ってるんだろうし……。
絶賛、ノノミに対する浮気の言い訳考え中である。たまに、何でノノミに言い訳しなきゃいけないんだと思うこともある。別に、正式に付き合ってるわけでもないし……なんて言っても、ただの反抗期ってことで済まされそうだな。それでいいか。
ふと、目の前にいる友人を見る。真っ黒な仮面みたいな顔からは表情は読めないが、こういう悩みはなさそうだな。どこからどう見ても独身貴族だもんな。
「ほう、これが……。クックックッ……なるほど、興味深い……」
黒づくめの友人は、俺が渡したエロゲーのデカいパッケージを見ながら、いつものように変な笑い方をしている。まあ、喜んでもらえたようで良かった。何しろ、結構探し回ったからな。しかし、一応ボックス席だから周りからは見えないし、ここは『現実世界』でいえば『
「貴重なものを入手して頂き、ありがとうございます、先生。それにしても、一つの物語に登場する全てのヒロインをツンデレにしようとは、まことに面白い試み……」
「一応言っておくけど、プレイしてから「これはツンデレじゃない!」とか文句言うなよ? 「ヒロイン全員ツンデレ」ってのは、あくまでただのキャッチコピーだからな? どっちかっていうと、タイトル通り、
「いえいえ、そういった
「ケチつける気満々だよな?」
ええい、これだから面倒くさいオタクは。ただでさえ続編だのアニメ版だのでいろいろ言われてるやつなのに。エロゲーメーカーだって大変なんだぞ。とりあえず、まずはなごみんルートをやるよう勧めておいたので、あれをやれば文句はあるまい。個人的にはカニルートを推したいが。
……とまあ、面倒だとか言いながらも、エロゲーの道の先輩であり友人としていろいろ教えるのは、そんなに嫌いじゃない。エロゲーってもの自体、こいつに教えたのは俺だし。
「しかし、お前は本当にツンデレゲーが好きだな」
「非常に興味深い概念だと考えています。ちなみに私は、「ツンデレ」とはキャラではなく、それ自体が「過程」であり「物語」であると解釈する立場を取っているのですが……」
何か語り始めた。ハマりたての初心者が楽しそうに語るのは、見ていて微笑ましいとは思うのだが、止めないと長いんだ、これが。マジで長いの。
「——ことに、「自慰」という明確な目的を有する
「あのさ、その話は後にして、とりあえず乾杯しとかない?」
「ふむ、そうですね。せっかく久しぶりに会えたことですし。それでは我々の
「そういうのいいから」
「つれないですね……」
俺はそいつのグラスに、チンと自分のグラスを合わせて、無理矢理
「ていうか、自分たちの友情に乾杯するとか、恥ずかしくない? ……いや、たまにはいいか。そうだな、友達だもんなー、うんうん」
ものすごく
ちなみに、あくまでそう「
「で、最近仕事の方はどうなの。会議、まとまるようになったの?」
「それがなかなか……難しいものです」
「なんてったっけ、君んとこ。『ゲマトリ屋』さんだっけ?」
「『ゲマトリア』です、先生。観察者であり、探究者であり、研究者たる——」
「あー、そうだったそうだった。『ゲマトリア』さんだ。『機関』とか『委員会』とか、ああいうやつだ。世界を裏から操ってる系の」
「まあ、そんなところです」
『ゲマトリア』なんて名前の企業は聞いたこともないし、こいつにも詳しく聞いたことはないが、実際のところ何をやってる会社なんだか。「神秘」がどうとか、「真理」と「秘儀」の探求がどうとか言っていたが。で、キヴォトスを裏から操ったりしてるそうなので、会社っていうより陰謀論に出てくる秘密結社じゃねーかっていう。そう言ったら、「その通りです!」とか言いそうだな。
まあ、社員はこいつみたいに、いたっていい奴でまとも(?)でも、社名の言いにくいようなところはいくらでもある。「友達」である以上は、あまり根掘り葉掘り聞くものでもあるまい。
それにしても……。どうやら酔い始めたようだが、こいつの顔じゃ、赤くなっていても分からんな。動き方が怪しくなってきたのと、発言が
「まだ例の議題で揉めてんの? 方向転換しようってお前が提案したのが、全員に反対されてるとかどうとか」
「依然として揉めたままです。何故か、異常なまでに元々のプランにこだわっているようで……。ですが、仕方ない部分もあります。私の主張が通れば、ゲマトリアが進めてきた計画の全てを変更する必要がありますし、我々の手に余るほどの大きな問題を扱う事になるでしょうから。とはいえ、それだけ大きな問題だからこそ、今までの目的を切り捨ててでも取り組む価値があると私は考えているのですがね……。クックックッ」
「そんなにデカい話してんの?」
「ええ。言ってみれば『キヴォトス』全体の、いや、
「そんな大変な話なの」
まあ、実際はゴルフ場とかアミューズメントパークを作るための大規模開発事業とか、そんなんだろう。そういうのは嫌われるし大変なお仕事だよねー。
で、こいつのために俺に出来ることと言えば、好きそうなエロゲーを買ってきてやることぐらいか。キヴォトスでは、俺が買ってくる以外には入手不可能だそうだしな。エロゲーを語る時は実に楽しそうだし、生き生きしている。良かった良かった。やはりエロは地球を救うな。一度語り始めると長いのが少し問題だが。
「一つ厄介なことと言えば、私の主張が、個人的感情によるものだと思われていることでしょうか。私が取り上げている問題の重要性については、既に全員が認めています。しかし、目的や手段が人道的なものであるかどうかは、十分考慮しなければならない……。クックックッ、確かに以前の私からは考えられない発言です。
「いやいや、いいことじゃん。そういやお前、以前は言ってること聞いてると、ヤバいサイコパスみたいな発言が多かったもんな。最近はすっかり人間臭くなったけど。うんうん、職業に
「ええ、私も先生に嫌われたくはないですから」
「何なら、転職先とか探してやろうか?」
地上げ屋が住民に配慮するようになったとかだろうか。まあ、会社の上の方は反対するだろうなあ。金かかってるから。でも、人を泣かすような商売はいかんよな。
「俺が紹介したエロゲーがいい情操教育になったか」
「ええ。先生に教えていただいた『アダルトゲーム』というジャンルは、私に人間らしい感情を教えてくれた気がします。他人の痛みや、裏切られるつらさ……そんなものを」
「マジで?」
冗談で言ったんだが、そんなにいろいろ学んじゃったのか。エロゲーから学んだもので大丈夫なんだろうか……。創作と現実は分けて考えろって釘を刺しておいた方がいいかな……。
「それに、寝取られる悲しみ……、実は非処女だった……、聞きたくなかった後日談……、BSS……」
「ちょっと待て。お前、マイナスのものしか学んでなくないか? おい、泣くな。お前、どんだけそういう痛みに敏感になってんだ! 現実にはそんなつらい話、(たまにしか)ないから!」
どっちかっていうと、曇らせ大好き、みたいな感じだった奴なのに、こんなことになるとは。エロゲーは恐ろしいな。遠い目をしている(気がする)のは、自分の推しヒロインが寝取られた時のことでも思い出してるんだろうか。
「もしかして、最初に紹介したアレで脳が破壊されちゃったか? エロゲーでループものの名作っつったらこれだろう、って思って教えたんだけど」
名作ってことで、マブなラヴなアレをチョイスしたのは間違いじゃないはずなんだが。もちろん『オルタ』とセットでだ。ただ、うわごとで「まりもちゃん……」とかうなされるようになっちゃったらかわいそうなので、一応配慮したつもりなんだけど……最初にやらせるにはキツかっただろうか。
「クックックッ……。もちろんアレは名作でしたとも。ただのありがちな王道ドタバタコメディである『エクストラ』、そのルートの一つだと思わせておいてからの、悪く言えばプレイヤーに対する裏切りに近い唐突な展開。それでいて、受け入れざるを得ないほどの巧みな構成、
何かどもったり、ぷるぷる震えてないか、お前……? 無理して
「タケルちゃん……」
そっちだったか。
まあ、メインヒロインの
「やめよう、この話題! 俺も明るく楽しい、スッキリ抜けるエロゲーが好きだぞ!」
うん、次に教えるとしたら、多少頭が悪いぐらいのバカバカしいノリのやつがいいな。
そんなこんなで、酔いは進む。俺も若干、ゆるんでいる。
「クックックッ……。いい店を知っているのです。次は是非そこへ……おっとっと」
「あー、そんなビール注いでくれなくていいから。いやさあ、バーとかああいう店って堅っ苦しそうじゃん? 奢るって言われてもちょっと……。あ、じゃあウイスキー頼む?」
「いえ、これで結構です。先生、おつまみはいかがですか?」
「んな、気ぃ使わなくていいからさぁ。つーか、バーで飲んだなんて言ったら、カード払いしなかったかとか、また色々聞かれそうだしー?」
「カード払い?」
「そうそう。現金で払って、
「カード払いですか……」
何しろ、ノノミには家計を管理してもらってるから逆らえない。それに、一緒にいればノノミが自分のカードで払ってくれるし、使う分に関しては現金でお小遣いをくれるから問題ない。それを見て周りはドン引きしているが、特に問題はない。ないんだってば。
「そういやさぁー、『ゲマトリ屋』さんって連邦生徒会にはコネないの? トリニティとかゲヘナの裏で糸引いて、いろいろ悪いことしてんじゃないのー?」
「いや、今は別に……先生、酔ってますね?」
「だってさあ、給料なんて上がる気配すらないのに、どんどんシャーレの仕事キツくなってんだよ? モモカとか問答無用で押し付けてくるしさぁー。ポテチ食ってないで仕事しろっつの。うちの生徒会長とお友達にでもなったら、現場は泣いています、とかそんな感じに告げ口しといてよー」
「生徒会長? それは『
「そだよ。うちの上司の。いや、知ってるでしょ?」
「もちろん知っていますが……『
「? いや、いなかったら大変でしょ。シャーレに回せないようなデカい仕事とかはあっちでやってくれてるんだし……。あ、そうだな。そんな偉い人に、仕事キツいから何とかしてくださいなんて言っちゃいかんわ。なしなし、今のなし」
「確かに『連邦生徒会長』がいなかったら大変なことになりますね……ふむ。逆に考えれば、いれば……いや、
何を一人で納得してるんだろう、こいつ。
「連邦生徒会長がいると、何かあんの?」
「いえ、少し心配事があったのですが、安心しました。それならキヴォトスも平和でしょう。ところで、さっきの
「『大人のカード』……? いや、別に……待てよ、そういや、カード払い云々っていうより、
「使わないように言っているのはどなたですか? 先生が
「そうそう、その子。いやもう、何から何までお世話になってるから。ノノミがいなかったら生きていけない」
「『
「クレカでしょ? ……大人のコンテンツが割引で買えるとか、何かそんなのがあるから、使うとノノミに怒られるのかな」
……なんてバカな話は置いておいて、「
ぶっちゃけ最近は俺自身、「元の世界」の話って『ゲマトリ屋』さんと同じレベルの、「先生」である俺の妄想だったのでは……なんて話だって、あり得る気がしているのだ。
だってなあ……。
「そういやお前、キヴォトスの人間じゃないんだっけ?」
「ええ。『シャーレの先生』と同じく、我々は『キヴォトスの外』に属する存在。クックックッ……ですから驚きましたよ。偶然知り合ったあなたが『シャーレの先生』だったこともそうですが、同時にそれ以上の存在であったとは——」
うーん……。自分以外がこういう事を言ってるのを聞くと、お前、大丈夫か? と言いたくなってしまうので、他人から見ると、俺が言ってるのもこんな感じかあ……と。自分の言ってることなんて、意外と信用出来ないし。
それに、こうやって「実は俺もそうなんです!」みたいな話を挟まれると、自分の厨二設定を補強したり、
そもそも、俺の記憶(というのがかなり当てにならないとはいえ……)の限りで、ブルアカにこんな感じのキャラは出てこないのだ。どう見たって生徒じゃないし、仮にこんなのがプレイアブルになって、ピックアップ対象になったとして、回すか? こいつのためにガチャを。
第一、『ゲマトリア』とか『キヴォトスの外』とかの話が、仮にもし万が一本当だったとしたら、『シャーレの先生』と同レベルにこの世界にとって重要な存在っぽいけど、本当かあ? …………。
「…………」
「何です?」
俺が渡したエロゲーの箱を、しまいもせずに大事そうに抱えてる、これがそんな重要な存在だろうか……? これがか……?
「——それより、私が思っていた以上に先生には多くの味方がいるようです。ならば、あまり私が出しゃばる必要もないでしょう」
「はあ」
何の話なんだよ、味方って。
あっと、そうだ。思い出した。こいつが何者かは知らないが、アビドスの対策委員会のことで一度助けてもらったんだった。お礼を言っておかないと。
「そういや、お前にも一度助けてもらったよな。ありがとう。かなり軽いノリで頼んじゃったけど、どうもあれ、かなりの大事だったの? 悪かったな」
「カイザーコーポレーションの件ですか? あれは元々、私も深く関与していた案件でしたし……」
「あれ、そうなの?」
「私個人の都合もありましたから、お気になさらず。むしろ、結果的に迷惑をかけてしまったのではないかと。
「ホシノ? 嫌われてはいないと思うけど……。やっぱそこ、何かあんの? しょっちゅう名前を出すから、気にはなってたんだけど」
「あったはずというか、なくなったというか……まあ二、三度会ったことはある
「そうなの」
アビドスの件であれだけ世話になった恩人に、そういう扱いをするのは心苦しいのだが、そうさせてもらうとしよう。まさか、これとおじさんが元カレとか元カノとかどろどろした関係だったりはしないだろうけど。
「こういった話はこの辺にしておきましょうか。他にも二、三聞いておきたいことはありますが、せっかくの先生と酒を酌み交わす機会なのですから」
「ま、そりゃそうだ。エロゲー談義でもするか?」
「いえ、良ければ、先生の学生時代の話でも聞かせてもらえませんか?」
「そんなんでいいの? 俺はいいけど。そうだなあ、面白い話って言ったら……」
そんなこんなで、夜はふけていく。
------------------------
……半分、寝ていたような気がする。
「——先生、私は思うのです。朝は幼なじみのパンチで空まで吹っ飛ばされ、学校では級友たちとドタバタ、先生がスポーツカーで校庭に乗り付けて……そんなバカバカしいエロゲーの世界観、『エクストラ』の世界こそが、『
「よく分かんないけど、そういう同人誌でも描けよぉ〜……」
「ちゃんと聞いてますか⁉︎」
「だからさぁ、二次創作とかは自由なんだから、お前の理想通りに……ねむ……純香ちゃんとタケルちゃんの純愛ラブコメとかね……俺も好きだよ、そういうの……てか、ちょっと寝る……」
「……まあ、そうしましょう。残念ながら私には絵心がありませんが、既に描かれている世界を、もう少し完璧にする手伝いくらいは出来るでしょう——ら……。カイザーの時の——……に、あな——……。…………」
……そんな会話をしたらしいのだが、その時の俺には意味は分からなかったし、ほとんどを忘れてしまった。
——『黒服』のその言葉も、もう少し後に聞くことになるが、すぐに忘れてしまうことになる、ノノミの「あの言葉」も、思い出さなくても俺の一生に何の影響もないものなのだろう。それでも、思い出すことが出来たら嬉しい……後になって、そう思った。
------------------------
風が心地よい。夜の春葉原は、早めに閉めてしまう店が多い。そんな暗い街を、駅に向かって二人で歩く。
「クックックッ……。先生も昔はやんちゃだったのですね。いろいろと面白い話が聞けました」
「やんちゃっていうか、最近はゲヘナ
「なるほど、それは言い得て妙だ」
「やっぱり、お前もそう思うんか……。いいけど」
俺の影響じゃないだろうが、美食研究会のノリがさらにアレな感じになってきた気がする。それから、アリスも何ていうかアレな感じになってきたような。どういう「アレな感じ」かは言わないが、もうちょっと見本として、大人になった方がいいんだろうか、などと柄にもないことを思ったりする。
それにしても、いい気分だ。キヴォトスで、対等に仕事の話ができて、趣味が合って、一緒に酒が飲める、そんな友人が一人だけでも出来て良かった。成人男性で曲がりなりにも人間らしいのは、こいつだけ。成人女性に至っては見かけたこともない。そんなキヴォトスで、「大人」同士の付き合いが出来るのは本当にありがたい。接点がほぼエロゲーだけというのが多少アレだが、大事にしたいと思う。むしろ、仕事上の付き合いなんかじゃなく、そんなバカみたいなことで気が合う相手だから、大事にしたいと思う。
「……一つ、知っておいて欲しいことがあります」
「何だよ、急に」
「私は直接面識がありませんが、あなたには『シャーレの先生』としての「前任者」がいたそうですね」
「「前任者」って、『前の先生』のことだろ? いたっていうか、「いたんじゃないか」とか「いたはずだ」って話だけどな。俺と入れ替わりで、どこに行っちゃったのやらっていう……」
「だとすれば、あなたの後にも「後任者」がいるかも知れません。その者が『シャーレの先生』になれば、あなたは「先生」ではなくなる」
「あー……そういや、そうだ」
確かにその可能性は高い。例えば俺が元の世界に帰り、『シャーレの先生』という「役割」を受け持つ奴が来る可能性。俺が「先生」をやらなくても、ちゃんと代わりがいますよ、っていう話なら、ある意味気は楽なんだが。
ある程度しっかりした奴なら、俺がやってるシャーレの業務ぐらいなら、最悪、引き継ぎなしでもこなせるだろうし、生徒に関しても『俺』じゃなくても「先生」が誰かいるなら、そんなに問題はないだろう。カヨコ……は、きっと気付くだろうし、黙って帰っちゃったら怒るだろう。あと、おじさんにも
ノノミ……。そもそもあの子、いつもはぐらかされてるけど、『俺』のことをちゃんと『俺』として認識してるのかな。意外と、『俺』がいきなりいなくなっても平気だったり……。
……「先生」じゃない『俺』か。
「もしあなたが、「前任者」と同じように『シャーレの先生』ではなくなったら、『あなた』は何者になるのでしょう? 「前任者」であろうと「後任者」であろうと、私にとっては等しく『シャーレの先生』です。『キヴォトス』の全ての人間にとって、そうでしょう。『ブルーアーカイブ』が要求する『シャーレの先生』とは、その程度のものです。私はそう考えています」
「この間、そんな話をしたばっかりだよ。『シャーレの先生』は特定の個人じゃなく、「役割」を指すんじゃないかって。条件さえ満たせば、誰でもなれるんじゃないかって」
「私も同じように解釈しています。先生、いや『プレイヤー』、そう呼ぶのが適切でしょうか? あなた達は、特別な資質などなくても、誰でも「先生」になることが出来る。ならば、
「きっついこと聞くなあ……。そういうの結構難しいんだよ……?」
職業、肩書き、あだ名でもいい、周りが俺を何者だと思っているのか。「先生」ではない元の自分を、俺は何者だと思っているんだろうか?
「そうだなあ。元の世界での、住所氏名、年齢、生年月日……そういうのは?」
「…………」
「ダメかね?」
「……答えることが出来たとしても、それらはその世界における『あなた』に関するただの「情報」に過ぎない。『あなた』自身を正確に表しているわけではありません」
「そうなんだよね。じゃあ、何だろう」
「クックックッ……そもそも、自分が何者なのか、などという問いに答えられる者など、そういないのでしょうが……」
「お前だって、黒い服を着ている『黒服』じゃなかったら誰なんだよ、って話だもんな」
「…………」
「何?」
「……まあ、そういうことです」
「?」
いちいち変な間が空くのは何なんだ。何か考えるようなことがあるのか? 大体、何でいきなりこんな質問を。微妙な立場にいる俺を、心配してくれているのは確かなようだが。
「ですが、一つ確かなことがあります。『あなた』は……「私の友人」です。他の誰でもない『あなた』こそが。それは、『あなた』がどこに行こうと、何と呼ばれるようになろうとも変わりません。『私』の大切な「友人」です。先程の問いの、一つの答えです」
「……そうか、ありがとうよ」
何のことはない、それが言いたかったのか。大層な言い方をするから、何かと思った。でも、ストレートにそういうことを言ってもらえるのは、ちょっと照れるが、やっぱり嬉しい。
「じゃあ、毎年「友達」
「無理はしなくて構いませんよ。その言葉だけで十分です」
ははっ、と俺が笑い、黒服がクックックッ……と笑う。せっかくいい話だったんだから、その悪役みたいな笑い方をやめなさいよ。
それにしても、こんな話が出来るほど、本気で俺の話を信じてくれていたのか。それを疑っていたのが、ちょっと申し訳ない——って、あれ?
「え? ちょっと待って。これ、フラグか何か? これでもう、二度と会えなくなる的な。ちょっと待ってくんない? それでも別にいいけど、いきなりは困るんだけど?」
「クックックッ……あるいはそうかも知れません。ただまあ、はっきり言っておかないと、何か知られた時に信じてもらえなさそうなので……」
「…………」
いや、何の話だよ。
「え? 何? お前、俺に知られたらまずいことでもあんの? いや、ありそうだけどさ。めちゃくちゃうさんくさいし」
「
「いや、言えよ。それっぽいことを適当に言って
「ちょ、痛……痛いです……」
俺はアームロックを黒服の首から外した。
何なんだよ。俺と本来より早く……? ここまで俺の言ってることを信じてるとしたら、本来のブルアカのストーリー上で何かしでかしてたとか? ……まあ、しょっちゅう名前を出してるし、
「何かしたの?」
「いえ」
少なくとも、「まだ」何もしてなさそうだ。ならいいか……。内容にもよるが、俺がキレるようなレベルのことをやらかしたって疑うのも何だし……。えーい、聞きにく言い方をしやがって……。まあ、こいつの性格を知っていると、人畜無害としか言いようがないんだが……。うん。
「何でもいいけど、俺からノノミを寝取ろうとしたら
「……どこから出てきました? その発想」
「そういやお前も成人男性だったなって思って、釘を刺しといただけだ」
世の中、何が起こるか分からないしな。エロゲーから人の心を学びましたなんて言うけど、それにしたって感受性豊かになり過ぎちゃったような、こいつに人を裏切ることなんて出来ないだろうけど。今の職場が良くないところなら、本当に転職先でも探してやった方がいいかも知れない。
ともあれ、こうして俺はまた会うことを約束して黒服と別れた。しかし、いきなり他の世界に飛ばされ、キヴォトスでの親しい人たちと会えなくなる日は突然やってくるかも知れない。その覚悟だけはしておかなければならないのだろう。確かそんなような言葉があったと思うが、「今日がその人と会える最後の日かも知れない」、そう思いながら、人とは一緒に過ごすべきなのかも知れない。
……一応、俺としてはかなり真面目なことを考えたのだが、そうしたら何だかノノミに会いたくなってきた。モモトークでも送るか……そう思ってスマホを取り出した瞬間、メッセージが届いた。ノノミだろうか。差出人を確認する。いや、ノノミじゃないな。これは……。…………,
おい。
------------------------
心の中で軽くツッコミを入れてから、春葉原駅の改札まで来たわけだが。
「こんなに早く、また会うことになるとは思わなかったよ」
「クックックッ……これも定められた運命だったのかも知れませんね……。また会えて嬉しいですよ、先生」
「やかましい。とっとと取りに行くぞ。財布を忘れたんですけど、って店の方には連絡入れてあるから。全く、いい大人が情けないモモトークを送ってきやがって」
「店の名前と連絡先が分からなかったのですよ……」
たまに俺が真面目なことを考えていても、こうやってバカバカしいオチをつけてくるような奴に、大それたことが出来るわけないよな……そういう意味では少し安心した。……あっ、こいつ酔ってやがるな? 何かふらふらしてると思ったら。
こうして、つい十分前に別れたばかりの友人と再会した俺は、「大丈夫なのかな、こいつ……」などと心配になり、やっぱりそう簡単に元の世界になんか戻れないよなあ……とあらためて思うのだった。
ここで出てくるエロゲー(あれです)が話の中で結構重要だったりします。