【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
ダイジェスト版の最終回(中・後・エピローグ)に合わせて加筆修正を行いました(2025/2/25)。
文字数があまり増えないような形にしたので、ダイジェスト版の方が情報量が多くなっています。
・主人公は『アロナちゃん』の存在を設定ごと忘れていた
・主人公は『シッテムの箱』を所有せず、存在も付随する設定も忘れていた
・主人公は『シャーレの先生』に関する設定の大部分を忘れていた
・主人公はそれらについて、深刻な記憶の欠損だとは感じていない
・主人公は『連邦生徒会長』の存在をはじめとする数々のこの世界の異常に気付いていない
・
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何とか涙をこらえようとするノノミに代わって、アロナ——正確には『手乗りアロナちゃん』というらしい——が俺に続けて説明する。
「先ほども言ったように、あなたは自身が強く望むことによって、元の世界——『現実世界の日本』——に、帰ることができます。そしてもう一つ……「あなたが
「強制的に?」
適当に考えていた予想が当たってしまった。しかし心底嫌になるって……どんな状況だ、それは。そうだなあ、痴情のもつれ……ユウカがマシンガンを乱射し、ノノミがガトリングガンで応戦、セリカとシロコがそれに味方して、ユウカの方にはゲーム開発部が参戦、アリスのレールガンが辺り一帯を破壊……うん、なかなかの地獄絵図だ。それだと俺もこの世界から逃げたくなるかもしれない……などと、のんきなことを考える。
「そして、ここからは今のこの世界——「ゲームの中」のタイプの『ブルーアーカイブ世界』の中でも特殊な形をした、
アロナの説明はかなりややこしいものだった。
「「主人公」である『俺』の持つ「世界観」が、もろに
「はい。
「その最後の方法で、『手乗りアロナちゃん』として、お前も生まれましたよ、と。そういうことだな? 生み出してもらって良かったよ、だいぶ助かってる」
「はい。『シッテムの箱の中の少女』は、世界と一体化したことにより大きな力を得ることができましたが、その代わりにこうして誰かに直接干渉する手段を失いました。そういう意味では、この場を解決する以上に有意義な存在として私は生まれたと思います」
はぁ。ノノミがこの世界にとって特別な存在なのは知っていたが、男女間トラブルがいきなり神話みたいな壮大な話になってしまったな。俺と『先生』ってのが実は創造神で、ノノミが巫女さんってとこか。ていうか、俺にとっての「ご都合主義」ってやっぱりあったんだ。と言っても、ノノミに頼んだの以外は俺が意識して起こしたことじゃないみたいだけど。俺の直接関わっていない、トリニティなんかの他の地域でも、いろんな「縁」が生まれているらしいし。
「ちなみに……今『
「はい。『
「いいよ、多分そいつのこと、周りに聞いて知ってっから。俺は自分の前に担当してたってことで、『前の先生』って呼んでるけどさ。そういう存在とは知らなかったが……ああそう、『先生』ね」
「やっぱ存在したんじゃん」とか、「やっぱ俺より偉いんじゃん」とか、「やっぱ俺よりちゃんとした先生なんじゃん」とか、
「『先生』は……私にとって大事な『先生』です。とてもお世話になった、恩人です」
「あ、そうなんだ……。へぇ……」
ノノミがそれこそ、尊敬する『先生』あるいは『恩師』を思い浮かべるような表情で遠い目をするので、イラっとしてしまった。いかんいかん、
「確かに聞いてみると、因果を生み出して、とかこの世界全体に関わるようなデカい話ばっかりみたいだな。しかも、どんな世界になるかで一番大事なのは、俺の無意識の願望、と。つまり、そういう存在である『俺』が、そのことを自覚しちゃまずいって話?」
「いえ、ここまでの話は知ってしまっても……まあ、良くはないんですが……」
「でも俺、この世界が何となく俺に都合よく動いてたのは知ってたぞ? 『シャーレの先生』っていう、ブルーアーカイブの「主人公」的な存在を中心とした、「ご都合主義」みたいなのがあるってのは。今日聞いた話だって、ああ、やっぱりそうなんだってのが多いし」
「うーん……。それも本当は良くないのですが……。すみません、もう少しだけお話を聞いてもらえますか?」
「ああ、ごめん。話をさえぎっちゃったか」
ここまでの話を聞いて、ヤバいことって言ったら一つ思い当たる。俺のヤキモチで、『先生』とやらが死んじゃうことだ。そりゃ、神様みたいなのが死んだらまずいだろ。……なんて、まあそれは冗談だけど。あー、我ながら、男の嫉妬は醜いな。よくない、よくない。
「では、あなたが
「? どういうことだ?」
「例えば……今、あなたの目の前でノノミさんが泣いています。それを見たあなたは、「悲しませたくない」という感情を持つでしょう。それはこの世界に少しの「悲劇性」をもたらします——」
うん? ……それは、俺が何かしら強い感情を抱けば、それに関係する願望を通して、この世界全体に影響を与えるって話か? 無意識の内にでも? そんな話……。
「そんなこと言われたって、常に平静を保つなんて出来ないぞ。修行僧じゃあるまいし。目の前で女の子が泣くなんてこと、生きてりゃあいくらでもある……そりゃノノミに関しては、多少話は違うけど」
「もちろん、これはあくまで理屈上の話です。ですが、「心」の問題という意味では同じです。例えば、泣いていたのが知らない子供なら、かわいそうだとは思っても、すぐに忘れてしまうかも知れません。ですが、それがノノミさんで、今のような深刻な理由なら話は違うはずです」
「そりゃ、まあ……」
ちらっと、まだしゃくりあげているノノミを見る。その姿を見れば、何とかしてやりたいと思う。誰かに何か言われても、俺はこの状況で平然としていられるような人間じゃない。だから、こんなことになっているんだし。
「もちろんそれも、あなたの中でどれだけ重い問題なのかはわかりません。その「事実」があなたにとって何なのか、相手があなたにとってどんな「存在」なのか。ノノミさんの話は一例に過ぎませんが、それがどれほどの衝撃なのかはあなた自身にもわからないでしょう。ですが、「事実」は残酷に、ストレートにあなたの心を揺らします。あなたが
アロナの声が暗くなっていく。ここに至って、俺はことの重大性を理解した。ショックな出来事があれば、俺の気持ちは暗くなる。無理に明るくしようとしても、簡単には出来ない。それが、どの程度なのかはわからないが、毎回この世界に影響するって? 責任を押し付けるつもりはないったって、そんなもん嫌でもプレッシャーになる。
「ゲームとしての『ブルーアーカイブ』の世界には、「物語」が大きく影響します。あなたが望んだ、エッチでバカバカしくて、笑うしかないような平和なお話は、そういった少しの悲劇で悲しく切ないものへと変わってしまいます。「ラブコメディ」は、
「柴関ラーメンの店舗を建て直したい」と望み、ノノミが実現したのを思い出す。あれが、みんなが喜ぶプラスの事象だとすれば、マイナスの事象——例えば、借金が増える、誰かが危険な目にあう、そんなものが頻発し、アビドスはろくなことが起きなくなるかも知れない。そして、これはアビドスだけの話じゃない。
「でも、楽しい「ラブコメディ」じゃなくなったとしても、「悲恋の物語」なんかはそこまでダメな話か? 自分じゃどうにもならなくたって、俺がそれを望むならそれは俺の物語ってことだろうし、酷くなるにしたって許容範囲でしかならないだろう? よほど俺の心がぶっ壊れるような事件でも起きなければ」
「その通りです。
「全部、等価値……?」
「はい。『先生』はそう考えています」
そりゃまた極端というか、変わってるというか……。似たようなことを言ったら、周りにポカンとされたのを思い出した。俺と同じようなことを考える奴っているんだなあ……まあ、いいや。
「つまり、極端な言い方をすれば、俺がどんな「世界観」を生み出そうが大して何かが変わるわけじゃない、だから責任を押し付けるつもりはない、そういう話か? あまり俺の立場で言うことじゃないのかも知れないけど」
「そういうことです。もちろん「世界観」の話を全く無視するわけにはいきませんが、今、ノノミさんとあなたにとって問題になるのは、『あなた』が『現実世界』に帰還する条件のことだけなんです。その基準はあくまでも、その物語を
「嫌になったら、いつでも、ね……」
——つまり、このキヴォトスでの生活をブルアカの「ストーリー」みたいなものだと考えれば、俺が元の世界に帰る手段は二つ。ここでの生活に満足し、ちょっとした旅行にでも行ってきた気分で、さて帰るか、と「強く望む」場合。それから、「やってられるか、こんなクソゲー!」とキレて「心底嫌に」なり、やめたくなった場合。後者の場合は、「もうこんな世界にいたくないでしょう? 今すぐ帰れますよ——何なら、勝手に送り返してあげますよ」ってことだ。親切のつもりなのか知らないが、それは余計なお世話だ。
「要するに、俺が「世界観」を維持できなければ、
ノノミが申し訳なさそうに
しかし「強制帰還」は、万が一の時に世界と俺を保護するためのシステムのようだが、それが保険として存在するなら、俺が今後も生活するとしたら助けにもなる。この二人が、「知る」こと、ってのをそこまで警戒する必要はなかったんじゃないか……そう思った。
——だが、俺は甘かった。『俺』が「知って」しまうこと——あるいは「
「————っ!」
突然の、脳を貫かれるような激痛。
『手乗りアロナちゃん』は「知る」こと、そして「思い出す」ことが世界に影響を与えると言っていた——突如として「忘れていたこと」が、「思い出してはいけないこと」がいくつも頭に浮かんだ瞬間、俺はそれを理解した。おそらく……さっきまで存在すら完全に忘れていた『アロナちゃん』の姿、それから『物語』、『ジャンル』、それら『ブルーアーカイブ』の世界観において重要な意味を持つキーワードが、俺の記憶を刺激したのだろう。Vol.1、Vol.2、Vol.3、Vol4、最終編、俺の記憶から欠けていた部分が全て補完された『メインストーリー』の全体図が脳裏に浮かぶ……。
「本当の問題はそこではないんです。もちろんあなたの心にとって、ノノミさんとのことが重要なのは変わりません。ですが、そういったことによる世界の振れ幅に関しては許容範囲で……先生⁉︎」
「思い出した……。「本当の
痛みではなく、激しいショックを受けるような、無数の『ブルーアーカイブ』の
見ると、『アロナ』——いや、違う、誰だっけ——が
「先生!」
ノノミが取り乱している。何かが起きることを心配しているのか? 単純に、俺の体を心配している? いや、あの目はもっと他の何か……? ノノミが大事だと考える何か——? 頭痛が酷くて、それ以上考えられない。さらに記憶がよみがえる……。
「先生! 一気に思い出してはいけません! あなたの中には、危険な記憶がたくさん封印されているんです! 思い出した瞬間、世界の全てが変わってしまうような……!」
「『エデン条約編』……。『最終編』……。何で忘れてた……? 本当の『ブルーアーカイブ』……」
「それは——『メインストーリー』は「本当の物語」ではないんです! ゆっくり……ゆっくり思い出してください。先生がちゃんと受け止められるよう、ゆっくりと……」
そうだ。元はプレイヤーとして、全て一度は読んだ話だ。いきなり強烈なネタバレを食らったようなものだとすれば、落ち着いて一つ一つを思い出していけば、そこまでのものじゃない……はずだ。
言われた通りに、俺は劇物を扱うように注意深く、俺の記憶に眠る
嫌でもメインストーリーを
『**ローを破*する爆*』、『巡*ミ**ル』、『トリ**ィの**り者』、『名も***々の*女』、『虚*のサ**トゥム』、『神*は**へ*転』、『*彩の**者』……。
苦手だったとか、メインストーリーをちゃんと読んでいなかったとか、そんなレベルの話じゃない。ネットやSNSで評判になった、ブルアカを名作と言わせしめたストーリーの転換点——『エデン条約編』と、それ以降のストーリーをプレイヤーの俺が
それだけじゃない。『アロナの出席簿』のことや『シッテムの箱』とは何なのか、そんなことまでうろ覚えで適当にやっているプレイヤーがいるか? 普通のブルアカのプレイヤーならそれだけで、「何だこいつ」とあきれてしまうような、バカバカしい「主人公」の
「俺がこれを全部思い出したら、
「先生……私はもう大丈夫です! もう泣きません。だから、つらかったら元の世界に帰っていいんです! 先生がこの世界を「嫌な世界」だと感じてしまう前に! 自分のせいで、そんな世界にしてしまう……そんな風に思ってしまう前に、もっと楽な形で! 今なら……」
「私からもお願いします! 先生の精神はこの平和な『ブルーアーカイブ』の世界に慣れきっているんです! 一度にそんなに多くの情報には、精神が耐えきれないんです! 心が閉ざされてしまう前に、この世界をいい思い出として持ち帰れる内に、「元の世界」に戻ってください! 後のことは、本当に心配ないんです! 『シッテムの箱』を持った『
——なぜ俺は『トリニティ』との縁が極端に薄かった? なぜ俺は『黒服』と友人になれた? 『
俺はようやく理解した。
そして、そんな世界を——
「お前たちが、俺の居心地のいい世界を守ってくれてたのか……。因果を操り、世界を調整することで。それから「教えない」ことと、「思い出させない」ことで……」
「先生……!」
ノノミは、ここまで俺に「教えない」ことに神経を使う必要はなかったはずだ。確かに俺の意思は尊重され、何を望むのも自由だった。その上、万一の備えもある。それよりもノノミは、俺にこのことを教えることで「俺が望む世界」が壊れてしまうことや、そのことで俺が苦しむのを嫌がっていたんだ。顔を見れば分かる。ノノミは俺が「知らない」ままで、あるいは「知る」にしてもこんな風に俺が苦しんだりしないように、安全に『現実世界』へ送り返すつもりだった。「ノノミのために、ずっとこの世界にいる」——俺がそんな選択をする可能性を見落としてしまったにせよ、自分なりに俺のことを考えて。
「ぐっ……!」
激しい頭痛だけでなく、身体に何とも言えない——肌の表面だけが「ズレ」て分離する感覚とでも言おうか——違和感を感じ始めた。運が悪ければ、『現実世界』と『ブルーアーカイブ世界』の両側に引っ張られて、『俺』という存在そのものが引き裂かれてしまいそうな、そんな嫌な感じがする。おそらく、こんなヤバい状況のために「強制帰還」ってものがある。ということは、いざとなったら、無理せずそれに身を任せれば、比較的安全に『現実世界』に帰れるはずだ。なら、ギリギリまで出来ることをする……。
——よく考えろ。俺は何のためにこの話を聞くことにした? ノノミが泣いているのを、何とかしてやりたかったからだ。こんな風に、余計に泣かせるためじゃない。こんな別れ方をするためじゃない。なら、まだ帰るわけにはいかない……!
アロナが何か叫んでいる。
「先生、「本当のブルーアーカイブ」や『メインストーリー』を意識しすぎてはいけません! 落ち着いて聞いてください!
何の話だ? お前、いちいち説明の仕方が
「そして、その「決められた道」をたどるためには『シッテムの箱』が必要不可欠なんです! 戦闘指揮の手段というだけではなく、『現実世界』からプレイヤーが「先生」として擬似的に操り、『カフェ』や『スケジュール』、『ガチャ』などの機能を使って、『ブルーアーカイブ世界』に因果を生み出し、自分なりの「生徒」との出会いや物語——「分岐した道」を作るための機能、それが『シッテムの箱』なんです。そして同時に、『メインストーリー』という
『メインストーリー』とか『シッテムの箱』が何だってんだ。俺が今考えてることなんて一つだけなんだから、もう余計な話はやめてくれ! 俺が今一番に考えなきゃいけないことはそれじゃない。それは目の前にあるんだ……!
「ですが、
アロナの話を聞こうにも、痛みで集中出来ない。しかし、何の話かは大雑把になら分かる。
「ノノミさんやこの世界そのものが、『シッテムの箱』に代わり、「ご都合主義」という、あなたのための「力」となりました。あなたは正当に与えられた「力」を使い、望まない事象を回避し、自分の望む「道」を作り上げてきました。それは、『メインストーリー』という、もともと「用意されていただけの道」とは違って当たり前なんです。
「だから何だ⁉︎ 何が言いたいのかわからん! 一言で言えーっ!」
頭痛が酷い。身体が熱くなってきた。
「ですから、あなたは——」
「先生は、ちゃんと『シャーレの先生』でした! だから、苦しいのにそんなに無理をして、
アロナの言葉をさえぎって、ノノミがそれを引き継いだ。何のことはない、やっぱり二人して、「帰れ」って言ってるんじゃねーか。俺がいてもいなくても、この世界は安心だってのは、よーくわかった。俺じゃなくても、他の『シャーレの先生』が何とかしてくれるのもわかった。だから無理しなくても、もう
俺はテーブルに突っ伏した。ノノミとアロナが、俺が一向に元の世界に帰ろうとしないせいで、パニクっているのがわかる。いや、確かに頭は痛いけどさ。身体もちょっとおかしなことになってるけど。とりあえず、ノノミは泣くな。
「せ、先生は……そうやって、一度自分が何かしなきゃいけないと思うと、すぐ無理をして……。いくら私がダメだって言っても聞かなくて……。やっぱり、教えてはいけなかった……」
——そういう話じゃないんだって。別にそこまで義務感なんてないって。どっちでもいいよ、なんて言われたら、大して迷わない人間なんだから。俺、ブルアカはとにかくキャラが好きでやってただけで、ストーリーには大して興味示してなかったんだから。そりゃ、読めって言われたら『エデン条約編』だろうが何だろうが楽しめると思う。でも、生徒同士でガチで争ったり憎み合ったり、あんな重い話を生で体験したら、そんな世界は嫌になっちまうかも知れねえ。『シッテムの箱』もなしなら、それこそ死ぬかもしんねえ。
——でも今は、そんなの全部どうでもいい! まずやることが目の前にあるんだ! 他のことはその後だ!
「——今なら安全に帰れても、『俺』がいなくても
「え……? せ、先生……私……?」
はぁ。大声を出したら、頭が少しスッキリした。まったく、こっちの言い分を聞けよ。この二人は……。
「あたた……。俺はこの世界がどうとか、一言も言ってないだろ……。そもそも、ノノミが言えないことがあってつらそうだから、何でも打ち明けてくれ、って話だっただろ? 俺が帰るとかどうとかじゃなくて。どうだ、ノノミ。全部聞いてやったぞ? いくらかスッキリしたか?」
「は……はい。でも、先生こそ……大丈夫……?」
実はあんまり大丈夫じゃない。しかし、少し驚いたような顔のノノミを見ると、力が
「じゃ、あとは予定通り記憶をもう一度消せば、一緒にいられるな」
「えっ……一緒に……? で、でも、それだといろいろと問題が……」
「問題があるかは、今から判断する。要は、俺の記憶を消して元の「世界観」を修復して、今まで予定していた通り
「い、いえ、Vol.1『対策委員会編』が強制的に終了して以降、そもそも明確な区切りはなくなっています! 前提とする状況は元のままですが、概念としての『連邦生徒会長』が配置され、エデン条約は問題なく
「概念上ぉ? 何だそりゃ」
てことは、トリニティや他の地域も手は打ってある……あとは、「悪い大人」とか『ゲマトリア』が問題……『ゲマトリア』? そういえば、俺の「友達」って……
「また、本来は想定されていなかった「協力者」が『ゲマトリア』内に存在します! その方のおかげで、不確定要素として
「その「協力者」って、エロゲー大好きな不審者みたいな奴じゃないか?」
「は? エ、エロ……?」
「いや、何でもない。『黒服』だろ? あいつが最近会議で揉めてるって、やっぱ『マエストロ』とか『デカルコマニー』とか相手かな」
何のことはない、『黒服』の奴、いつも
でも、俺が付き合ってきた、ブルアカの『黒服』とは思えない、間が抜けていて情けなくってエロゲー好きの……まあ、俺の友達にはぴったりの「黒づくめのあいつ」の性格なら、俺のことを「友人」だなんてわざわざ言わないよな。それに、自分もエロゲーでヤバいダメージを食らったことのあるだけに、あいつ自身もここからの突然のシリアス路線への変更は望まないだろう。あのゲームが名作すぎたせいで、多少心は壊れてしまったかもしれんが……。いやしかし、エロゲーは偉大だ。
ただ、確認しておかなければいけないことはある。
「『黒服』……あいつが『対策委員会編』でホシノの……えーっと、ホシノの件でやらかす前に俺に会ったのって、後々のためとか理由があったのか?」
「それは……」
少し言葉を
——お前が言っていた、「
「『黒服』さんと先生が知り合ったことで、後の展開がかなりやりやすくなったのは事実ですが、それは結果的にです。そのために出会うタイミングを早めたわけではありません……」
「んじゃ何でだろう?」
「その状況をデザインした『先生』にならわかるかもしれませんが……。あっ、そうだ! あなたがこの世界の全員と仲良くしたい、そう願っていたから、っていうのはどうでしょう!」
「おお、よし、それでいいや!」
「……うんうん! みんな仲良くが一番ですね☆」
理由なんてどうせ決まったものはないだろうし、そういうことにしておけばいい。この世界の全員と仲良く、なんてのは多分無理だけど。そんなのは、今までの人生でいくらでも実感している。それでも、状況が変われば仲良くできる奴もいる。少なくとも、利害の変化によっては、争わないですむ相手もいる。そこを落としどころに努力することだって出来る——カヨコやヒナにも教えた考え方だ。
しかし、友だちってのはいいもんだって再確認した。もし元の世界に戻ったら、エロゲー繋がりの連中でも集めて、飲み会でもやるか。出来れば『黒服』も連れてって紹介してやりたいもんだ。きっと気が合うだろう。
「でも『黒服』さんに関しては自発的に動いている分、それも不確定要素にもなり得るのですが……。あっ、いえ、先生がとっても信頼しているのはわかるのですが!」
「そこまで頼り切ってるわけじゃないよ。ただ、イレギュラーの心強い味方が出来たな、ってだけ。他にも何人か、そういうのはいるし」
「先生はいつも、すぐ他人を信用してしまいますよね。周りが心配になるぐらい……。そうして、本当に騙されていたり、裏切られたり、それでいつも傷ついて、そういうのが大嫌いなのに」
「そんなに、いつもか? ノノミが知ってる範囲で、そこまで酷かったかなあ……」
「
「そうか? まあ、そう思ってたなら、ノノミも黙っているのはつらかっただろう。でも、分かってるよな? 俺はお前に騙されてないし、裏切られてもいない。お前はただ、俺やみんなにとって言わない方がいいことを言わなかっただけだ。それで、言わずにいるのがつらくなって、俺を頼った。それだけだ」
「はい! 今度こそ、先生を信じて秘密を守ります! それでも、どうしてもつらくなったら、先生を頼ります!」
「そうそう。多少のことは大目に見るから、頼ってね」
……なんて、ちょっと甘いだろうか。まあ、誰かに怒られたら俺が怒られよう。それに、正直なことを言えば少し怖い。一度こういうことがあったから、というよりも、ノノミがあまりにいい子だから、また一人で抱え込んでしまうのではないか、俺を頼ってくれないのではないか、それが怖い。何しろ、ただの「主人公」と「一ヒロイン」じゃない。男女の仲は、たやすく壊れてしまう。だから余計、疑心暗鬼になって自壊してしまう。本当に大事なものほど、失うのが怖いものほど、信じるのは難しい。
それでも、失いたくなければ何度でも信じるしかないのだろう。信じようとして、足りない分は自分を信じよう。次に何かあっても、こうやって自分が何とかすればいいと。そもそもノノミはまだ子供で、俺は「大人」なんだから。
「んで、アロナ……じゃなくて『手乗りアロナちゃん』だっけ? お前と、『先生』——『前の先生』もいる。それにノノミもいる。だから、さっきの話とかブルアカの知識とかをもう一度消しちゃった後のことは、お前らに任せちゃって大丈夫だよな?」
「はい! 任せてください!」
「一番心配なのが俺だな。こんな深刻な話、一度きれいに全部忘れちゃったって、ちょっと何かあったら悩みそうな気がするんだよな。意外と細かいこと気にするから」
「大丈夫ですよ☆ 先生の良くないところは全部知ってますから、私が
「そうそう。ノノミはどんなご都合主義の道具を出してくれるより、そういうのが一番頼りになるんだ」
そう。俺に関しては、ノノミがついていてくれりゃあ平気だろう。というより、ノノミがいないと意味がないんだ。俺は本当に、この世界にそこまで執着はないんだから。状況に応じて『現実世界』に帰ることになっても、そこで迷うことはないだろうし、ちょうどいい。俺にとって「こっち」と「あっち」が何か違うとしたら、それはノノミと一緒にいられる世界かどうかでしかない。こんなヤバい
「よし! じゃあ、この話は終わり! あとは俺の記憶を消すだけ!」
「じゃじゃ〜ん! 『絶対確実記憶破壊ハンマー』! あとは私にお任せです☆」
「必要以上に痛そうなやつ! あと消すだけで、完全に破壊はしちゃダメだろ⁉︎」
「大丈夫です、先生♪ 優しくしますから……♡」
俺とノノミの掛け合いを、取り残されたアロナが見つめる。
「あはは……何だか、私の入る余地はなさそうですね……。でもこれで、めでたしめでたし、です!」
そう。俺が頼めば、ノノミがとんでもない物を出してくれて、強引に解決してしまって、周りが「あはは……」と苦笑い。まだしばらくは、そんなオチのつき方でいい。「ご都合主義」で
——こうして俺は、予定通り記憶を消してもらうことになり、次に目が覚める時には元通りの日常が戻ってくるはずだ。全て忘れた俺は、やたらと頭が痛いけど何があったんだっけ、などと目を覚まして、まだ食べていない夕飯のことでも考えるだろう。まあ、戻ってくるも何も、俺がいろんな話を聞いて悩んで頭が痛かったぐらいの話で、実際にこの世界に何か起きたわけじゃないんだけど。何せ、
うっかりしていたのは、今日の記憶を消すということは、今意識を持ち、こうして何かを考えているこの自分も一緒に消えてしまうのだということ。死ぬわけじゃないが、記憶を消される瞬間は気分のいいもんじゃないだろう。何となく「記憶が消えた後の自分」の感覚で考えてしまっていた。
そんなわけで、実はアロナに少し心配された。でもきっと、それもとらえ方次第だ。「先の自分」にとっての「うっかり忘れた記憶」は、また思い出すこともあるだろう。だから、心配ないと言っておいた。それと、さっき生まれたばかりなのに何もかも世話になってありがとう、と。アロナは、「私だって、この世界と一体化してあなたとずっと一緒にいたんですよ! いえ、きっとその前から……それだって、あなたのとらえ方次第です!」そう言って笑った。
それから、ノノミには言えない内緒のことも、アロナには話しておくことにした。
「俺、『正義実現委員会』や『トリニティ』のいろんな奴ら……『救護騎士団』とか『シスターフッド』ともいい出会い方をして仲良くなりたいんだよな。出来るかな?」
「大丈夫ですよ! あなたが平和を望むなら、きっと『ティーパーティー』や『アリウススクワッド』とだって……」
「いや、そこ二つだけでいいんだけどさ。何しろ、ミネは胸大きそうだし、サクラコのかっちりした雰囲気とか、マシロの太ももなんかも……
「えっ? ふ、ふと……——」
…………。
「——……なんだけど、聞いてる?」
「……き、聞いてますよ。あはは……」
「一応、冗談だからな?」
うまく取り計らってもらえないか希望を言っただけなんだが、途中から明らかに聞き流されていたので、そこでやめた。周りに知られたら、「だから、そういう余計なことを言わなければ……」とか何とかあきれられそうだし。
それにしても、今の『俺』と、この半日ばかりの記憶を失っただけの、明日の『俺』とはどんな関係なのだろう? 別人か? 同一人物か? 別人だとしたら、あまり自信がないという意味では、何だか頼りない奴にバトンを渡してしまうような気分になる。何も
——その辺をどう思う? 俺は、記憶を消す直前になってこうして俺の中に入り込み、全身を満たして一体化した存在に聞いてみた。やっと話が出来たな、『前の先生』。『お前』は明日の『俺』を信用できるか? 今の『俺』に任せちゃって大丈夫だって確信してたか? 答えはすぐに返ってきた。
【『私』は信じているよ、明日の『あなた』を】
【『私』は信じていたよ、今の『あなた』を】
【きっと大丈夫】
ゲームのブルアカで選択肢で出るような、三つの『先生』のセリフが心に浮かび、その三つの言葉の意味は一つに溶け合い、同時に俺に伝わってきた。単なるテレパシーとも違う、不思議なコミュニケーションだった。器用なことをするもんだ。『シッテムの箱』があれば、俺にも出来るんだろうか。
こんな風に一人で同時並列に——おそらく、空間も超越して——行動できるから、全ての生徒に分け隔てなく接することができるのだろう。そして、自分の全てを犠牲にしてしまうほどの献身的な愛情をノノミに注ぎながら、同時にそれと同じだけの大きな愛情を全ての生徒に注ぐ、なんて「ずる」——『前の先生』にとっての「ご都合主義」——が出来るんだろう。でもそれは、『ブルーアーカイブ』の世界で『シャーレの先生』だからこそ許される、素晴らしい「ご都合主義」だと思う。
そんな存在がデザインする世界だから、俺の望んだ世界は同時に全生徒に配慮されていた。世界の因果が「
でも、だからこそ『前の先生』には出来なかったことがある。趣味の悪いことに、今日も俺たちのことをずっとどこかから見ていたのに、苦しむノノミを救えなかった。なぜなら、「一度全部を聞いてやって、その後忘れちゃうから問題ない!」なんて都合のいい「ご都合主義」は、「生徒たち全員」ではなく、「ノノミ
そして、本人とこうして一体化したような体験を通じて、『
それと、余計かもしれないが、前々からどうしても『前の先生』に聞いておきたいことがあった。「ユウカが初対面から好感度120%だったり、ホシノに変態疑惑を(どこまで本気か知らないが)かけられてたり、アコが調教済みみたいに(なったのは本人が望んでいた気がするが)なっていたりするんだが、お前なんかしただろ」と。【…………】【ごめんね】【あとは任せるね】三つの言葉が同時に伝わってきたが、意味は全部一緒だった。お前、ふざけんなよ。他人に任せて、自分だけとんずらしようとすんな。最後に「あれさえなければね」と情けないオチがついてしまう「先生」という意味では、俺とどっこいらしい。まあ、その辺は俺があまり言えた義理ではないが。
——悪いな、苦労をかけちゃって。でも、きっと平気だよな? 『お前』も『俺』だから。それぐらいはしてやりたかったのだが、引き継ぎしようにも時間がないのだ。本当にすまん。
最後に一つ。出来れば、これだけは忘れたくないなあ、と思ったことがあった。と言っても、いつか思い出すこともあるかもしれないし、ノノミはずっと覚えていてくれるだろうけど。
「私、先生のことが……
なんて、初めて『先生』以外の呼び方で好きって言われて、好きな女の子に告白されたみたいな、少し照れくさい気持ちになって嬉しかったこと——
いや、恥ずかしいからこれは忘れちゃっていいな。
そうして、少しの記憶をなくしても俺のブルアカ世界での生活はまだまだ続く。
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——あなたはあの時、もう気付いていましたか? あの言葉を、『私』はずっと前から……本当に、
——人生にエンディングはない。ハッピーエンドだと感じても、その先にはいつもと変わらない日常が待っていて、どんなことが起きるのか分からなくて、安心なんて出来ない。それを知った今でも言えます。私にとっては、あれは間違いなく「ハッピーエンド」で、一生忘れられない思い出だって☆
——あなたは忘れてしまったまま、思い出すことがなかったとしても……ずっと
——シーズン2完——
そしてシーズン3へ……
最初期の、主人公がふらふらしてた頃から読んでいてここまでたどり着いた方、いたらお疲れ様です。本当にお疲れ様です。
シーズン1でホシノに「ずっと上手くいけばいい」って言わせたところから、「これからもきっと大丈夫」までお見せ出来たつもりです。キャラに対する気持ちも含めて、作者的には一安心です。
いつになるかわかりませんが、最後に「やっぱり大丈夫だった」のハッピーエンドを見るところまでお付き合い頂けたら幸いです。