【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
その割にかなり重要な話を仕込んでます。
参考
→メインストーリーvol.2、第一章・第二章
関連回
→第33.5回:ノノミ and "Sensei" and…
脱衣麻雀関係
→第9回・第28回・第32回
【前回のあらすじ】
先生(主人公)がもともと『現実世界』の住人だったことを、信じてるのも気にかけてるのもカヨコぐらいなんだけど、先生は一向に「カヨコ頼りになる! カヨコは特別! カヨコ大好き!」とはならないので恋愛って難しいね。そんなわけでイライラするので、ムツキとエッチしてスッキリしよう、などと思うカヨコであった。
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ここはシャーレオフィス、執務室。今日の当番はアリスなのだが、特にシャーレの仕事をするわけでもなく、持ち込んだゲーム機で遊んでいる。断じてサボっているわけではない。アリスは俺が遊ばせているのであって、アリスが当番の日は俺が二倍働いているので、特に問題はないのだ。問題だとすれば、バレたら俺が甘やかしすぎていると怒られるぐらいのものだ。ええい、俺はアリスを甘やかしたいんだから、いいんだ!
「先生!」
「お? どうした?」
「やっとクリアしました! 感動のエンディングです!」
「おー。見よう見よう」
ここのところずっとやっていたゲームを、やっとクリアしたらしい。と言っても、例のごとくえらいレトロなやつだから、そんなに長くやっていたわけでもない。「ドラゴンテスト3」という、キヴォトスのゲームでも名作と名高いRPGの古典だ。うんうん、俺も一度やったからよく知ってる。「テスト」じゃなくて「クエスト」の方をな。……なんていうかさあ。
「ドラゴンテスト」にしても「ファイナル・ファンタジア」にしても「ゼルナの伝説」にしても、ブルアカの公式は隠す気がゼロというか、怒られないんだろうか。「ロマンシング物語」に至っては、3はやらなくていいとか思いっきり言ってるし。俺は3好きなのに。
まあ雑なパク……もといパロディはキヴォトスにはよくあることだし、どうでもいい。要するにアリスがやっていたのは、ルイーダの酒場で仲間を集めて勇者が四人で冒険するあれだ。分かりやすいっていやあ、分かりやすい。そんなわけで、大魔王を倒した後のエンディングが流れるのをアリスと二人で見ることにする。
「んで、どうだった?」
「はい! さすが伝説の名作「ドラテス」です! 昔のゲームなのでテキストは少なめでしたが、それも逆に想像力を刺激してくれます。勇者と呼ばれた父を追いながら魔王を倒しに行く、仲間たちとの感動の物語……。アリスは新しい町に着くたびにドキドキするのです。それに魔王を倒した後にまさかの父との……あっ! 先生はもうやったことありますか? ネタバレになってしまいます!」
「あるから大丈夫だよ」
ゲームの中身もまんまっぽいので、一度クリアした元ネタの方と大して変わらないだろう。
「あれだろ? 父親がパンツ一丁に覆面姿で、斧持ってるだけの山賊みたいな格好して出てくるんだろ?」
「えっ……それはアリスの知っている勇者の父親とは何か違うような……あっ、でもそうです! 見た目はそんな感じでした!」
「だろ?」
見た目以前に、やっと会えた父親にグラフィックの使い回しをするなと言いたい。あれはショックだった。おかげでその辺のストーリーをさっぱり覚えていない。リメイク版とかではちゃんと直したんだろうか。
「魔王を倒した後の展開は有名なので、ネットでネタバレを見てしまう前にプレイできてアリスは幸せでした。最後で「そして伝説へ……」というタイトルの回収。素晴らしかったです。ここからまた新たな勇者の冒険へと続いていくのですね」
「当時そんな凝ったストーリーのゲームも、あんまりなかっただろうしなあ。よく知らないけど」
水を差してもいけないので、自分はネタバレ見た後でクリアしたのは言わないことにした。ていうか、あそこまでの古典だとネタバレ知らずにプレイするのも難しそうというか、確かにアリスは幸せだな。
「アリス、また1からプレイしたくなりました!」
「ああ、昔のはクリアまで短いし、いいんじゃないか?」
「はい! 名作はやはり何度やってもいいものです!」
「うんうん。その通り」
目を輝かせて熱く語るアリスを見ていると、やはり多少甘やかしたっていいじゃないかって思う。間違っても俺みたいに、好みのキャラの3Dモデルを見てはカメラのアングルを必死に変えながら、「パンツぐらい見せろよ、開発!」などと悪態をつくダメな人間にはならないで欲しい。俺が悪影響を与えているせいで、既にちょっとアレなゲーマーになっているらしいので、切実だ。
「アリスはこのゲームから、他人にうっかりネタバレしないことの大事さを学びました……」
「そうだな。そうなんだけど、もうちょい他のことも学ぼうな」
「アリスは誰かにドラテスのネタバレをされていたら、その場で『
「やめなさい。また怒られるから」
やはり、切実な問題だな……。「ミレニアムだからいいや」などというよく分からない理由でアリスを
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「先生の奥さんのお菓子、美味しいです」
「そう? 手作りらしくてな。それはそうと、まだ結婚してないからな?」
俺一人でやってても仕事が終わってしまったので、ノノミが差し入れしてくれたお菓子をアリスと食べながら、引き続き休憩。ノノミの手作りは、その辺の高級菓子より遥かに美味しい。愛がこもってるからだろうな、きっと。うん、おいひい。
「そうそう、「エンディング」で思い出した。アリスはどう思う? この世界がゲームの中だとしたら、エンディングってあるのかね。あったとして、その先には何があるんだろうな?」
「この世界が、ゲームの中……ですか?」
「ああいや、仮にな。もし、そうだったら。ただの例え話」
俺が無頓着すぎるのかも知れないが、自分の住んでいる世界が「ゲームの中」なんて言われるのも普通は気分悪いもんらしいので、最近は気をつけている。と言っても、どうせ「また先生がおかしなこと言ってる」「ゲームのやり過ぎじゃない?」とかそんな反応されるだけだと思うんだが。挙句の果てには「ゲームの中の美少女と結婚するとか言うタイプ……?」などと言われてひどく傷付いた。そういう話じゃないっつの。
「アリスがさっきまでやってた「ドラテス」にも、ああやってエンディングがあったじゃん? んで話は終わりだけど、勇者の人生はその後も続くわけじゃん? 子供作ったりとか」
子供を作ったからといって、勇者がちゃんと結婚するのかは知らないが。何せ勇者だからな。しっかりやることはやって
「んで、アリスがゲーム開発部のみんなと頑張って、ミレニアムプライスで賞を取るまでも、そこまでいろんなことがあって、まあ冒険みたいなものだろ?」
「あっ、はい! 確かにそうです! アリスは仲間と一緒に冒険しました!」
冒険みたいなもの、というか、ブルアカのメインストーリーではそこがまるまる一つのストーリーになってるんだよな。メインストーリーのvol.2、ゲーム開発部編の第一章。俺はこっちの世界に来てからの途中参加だが、聞いてみたところそういう話は、ゲームの方と同じようなことが全部あったらしい。
「そうでした。アリスの冒険はあの日、モモイとミドリと先生によって眠りから覚めたところから始まったのでした。それまでアリスは、廃墟の地下で誰かが来るのをずっと待っていたのです……全裸で」
「うん、そうだな。全裸だったせいで、グローバル版で問題になったりして大変だったらしいな。それはともかく、そういう細かいネタをいちいち仕込もうとしなくていいから」
「でも、モモイがいいシナリオを書くコツとして、たまに小さな笑いを挟むといいと先生に教えてもらったと……」
「冗談で言っただけだから、そういうのは忘れろと言っておいてくれ」
俺が変なことをモモイに教えておいたせいで、壮大な語り口が台無しになってしまった。この世界にとって、ろくな存在じゃないな、俺。
「……そして何やかんやあって、アリスとその仲間たちはミレニアムプライスで見事特別賞を勝ち取り、ゲーム開発部は廃部を免れたのです」
「パチパチパチ。いい話だったなー。何か途中から説明が雑だったけど」
「そして感動のエンディング……あれ? そういえば、クリアしたのに専用スチルがもらえませんでした」
「エンドロールとかも特になかったしなあ……。まあでも、廃部じゃなくなったぞ、バンザーイ! ってところをエンディングだったとしよう。そうすると、そのエンディングの先の話なんだが」
「エンディングの後……特に何もなかったような気がします」
「ゲーム開発部の部室で、お菓子食いながらだらだらゲームして遊ぶ毎日だったよな」
「はい。そして今は、ここで先生とお菓子を食べています」
「そうなんだよな」
結局、ゲームのストーリー通りのことを一通り体験して、ただそれだけなんだよな。実際は。体験したと言っても、俺はメインストーリーのvol.1、対策委員会編の途中からと、vol.2のゲーム開発部編の途中からしか知らないんだが。その後は特にそれっぽい大きな事件は起きていない。内容は覚えていないが、vol.3だのvol.4だとか、vol.2の第二章が始まるの待ちなのかも知れないが。
「やっぱ現実はそんなもんかねえ。ちゃんとしたエンディングもなく、その後も特に変わりなく」
「でもこの世界がゲームの中だとしたら、アリスは開発者に一言言いたいです。ちゃんとエンディングまで作って欲しいです」
「まあ、そうだなあ。そこに至るまで苦労したわけだし。しかしなまじ盛り上げちゃうと、さっきの話じゃないが、本当にそこで人生終わりみたいになっちゃうし」
ギャルゲーだって、告白しました、オッケーされました、キスしました、はい終了、ってそこまでで、あとはお預け、とかふざけんなよ、ってなるわけだ。俺はその先の、付き合うところがやりたいんだ、と。せめて初体験のシーンぐらい見せろ、と。そんなことを熱く語っていたら、「じゃあエロゲーでもやれよ」って言われたので、やるようになった。そうなんだけど、俺はギャルゲーで攻略したヒロインとヤってるところが見たいんだ! と言ったところ、「じゃあ二次創作でも漁れ」と言われて漁るようになった。世の中、どうにかなるもんだな。
……アリスと何の話してたんだっけ。
「先生、もしかしてアリスの冒険はあそこでエンディングを迎え、もう終わってしまったのでしょうか?」
「へ? あー……アリスのはまた始まるんじゃないか? 「アリスの冒険、第二章」みたいな感じで」
「なるほど! 新しい冒険の始まりですね!」
まあ、アリスとかゲーム開発部なら第二章も多分あるだろう。第一章ではメインだったんだし。他にもイベントストーリーだってあるだろうし。そもそも、別にブルアカのストーリーになくたって、人間の人生にはいくつもストーリーがあるもんだし。幼年編とか、青春編とか、その人なりのストーリーが。
「あっ、先生! ということは、もしかして「アリスの冒険、第二章」は既に始まっているのでないでしょうか!」
「ん? 何かそれっぽいこと起きたか? エンディングがあるような、物語っぽい事件とか」
「はい! 『アリス -Alice- 脱衣麻雀全学園大会編』です!」
「何か、マジで感動のエンディングまでありそうなやつ出てきた」
笑えねえー。そりゃ、どこぞのマンガ雑誌じゃないが、大会なんてやったらどうやったって盛り上がるわ。それに優勝したらどうやったってそこがエンディングになるし、実際やったらそりゃあ立派な一つのストーリーにはなるが、多分ブルアカでやっちゃダメなやつだぞ、それ。いいんだろうか。あと、名前の元ネタを少しは隠す努力をだな。
「ユズが次回のミレニアムプライスを目指して、オンライン対応の脱衣麻雀ゲームを作っているのです」
「ああ、こないだゲーム開発部の部室にやりに行ったら、別物みたいに進化してたやつな。確かにユズがやる気になってたが……。マジで作ってんのか」
あのゲーム開発部製の脱衣麻雀(用)ゲーム、俺がちょっと知り合いの女の子を脱がせて遊ぼうと思って、軽い気持ちで作ってもらっただけなのに。そんな大きな話になってしまったのか。
「せめて、脱衣要素は抜かないか? 作らせた俺が罪悪感を感じるから」
「ユズもそれは言っています。オンライン対戦で実際に服を脱ぐのは無理があると……」
「当たり前だよ」
まずゲームの対戦以外の要素がある時点でおかしいんだよ。男の俺まで全裸にされたし。第一、仮に実際に脱ぐとして、全国の観客にそれ見せんのかっていう。そんな、どっかのアレなR-18のWEB小説サイトにありそうなネタじゃあるまいし。
「ですがアリスは、どんなにルールやスキルを追加し、グラフィックやBGM、エフェクトを充実させようとも、あえて四人打ちではなく二人打ちにこだわる以上、脱衣要素は不可欠だと思います」
「ん、それはそうだ」
「ユズも、アリスのその熱意は理解してくれています。アリスは、脱衣麻雀というジャンルの精神を継ぐものとして、脱衣麻雀マスターになりたいです」
「そうか……立派に成長したな。俺も一応そこは嬉しい」
アリスは、立派すぎるほど脱衣麻雀の精神を受け継いでくれたらしい。アコを
「それにアリスは、
「ごめん。何かごめん。うまいこと、そういうダメな部分だけ抜いて脱衣麻雀の話を教えられなくてごめん。その辺はちょっと自重しといて」
言ってることには全く同意なのだが、そんな本質まで受け継がれちゃうと、ちょっと。仮にアリスの冒険に脱衣麻雀編があったとしてもアリスが、「言ってること聞いてると、こいつ悪役じゃないの……?」系の主人公になってしまう。俺はそういうの好きだけど。教育って難しいなあ。
それにしても、「アリスの冒険、第二章」か。確かに『アリスの冒険』はひとまず終わり、これから次が始まるのかも知れない。しかし、ならこの世界——『ブルーアーカイブ』のエンディングって何だ? ゲームの『ブルーアーカイブ』のストーリーは、「主人公」である『シャーレの先生』主観の物語だ。対策委員会編なりゲーム開発部編なり、それらはその中にあるストーリーのひとまとまりに過ぎない。なら、『ブルーアーカイブ』の物語、それ自体のエンディングは?
他のことは大体、まあいいや、で済ませる俺が、それだけが妙に気になっている。「ハッピーエンド」であれ、「バッドエンド」であれ、「トゥルーエンド」であれ、「エンディング」を迎えれば等しく「終わり」が訪れる。そう、「結末」ではなく、「終わり」だ。幸せな人生であれ、不幸な人生であれ、満ち足りた人生であれ、「死」という事実は同じように訪れるように。
『ブルーアーカイブ』もいつかはサービス終了し、それと同時にメインストーリーも完結するだろう。その時、ゲームのメインストーリーのエンディングにあたる部分を迎えたら、何らかの形でゲームが反映されているのは間違いない、この世界はどうなる?
ストーリーの終わりとは関係なくこうやって、いつもと同じような平和なキヴォトスの日常が続いていくのか? それとも、既に本来のメインストーリーからはかなり離れてしまったらしいこの世界には、もう関係ないことなのか? あるいは、異世界としてのこの『ブルーアーカイブ』自体に「終わり」——「終焉」と言い換えてもいい——が訪れてしまうのか? そしてそれは、宇宙の始まりや終わりを考えるような、人智を超えた、考えても意味のないことなのか?
「——生、先生」
考えてみれば、宇宙の始まりなんて俺たちには全く関係ないものだ。俺たち人間にとっての宇宙は、生まれた時——あるいは初めて世界を認識した時——には既に存在しているものであり、死んだ後もずっと存在するはずのものだ。生まれてから死ぬまで、自分の人生の枠の外側にある観測できない現象なんて、無いも同然だ。そう考えれば、「始まり」も「終わり」もただの概念でしかなく、実在しないのかも知れない。
しかし、それなら死んだ後はどうなる? どれだけ概念だ何だと理屈をこねたところで、「死」という事実は確実に訪れる。その先には何がある? 「人生」という物語のエンディングのその先は? 天国か? 地獄か? それとも無か? しかし「無」とは、簡単に一言で言える概念ではない。「無になる」よりは、「形を変えた結果として、元のものが消滅する」と考える方が、いたって自然なのだ。むしろ、「無」というものなど現実には存在せず、観念でしか成立しないのかもしれない。ならば、人の本質に滅びなどないのか?
魂、あるいはその人間の本質が滅びることがないとしたら……。輪廻転生。生と死は等価値であり、それはただの状態の変化に過ぎない。前の人生も今の人生も次の人生もそこに優劣はなく、当たり前のように淡々と転生を繰り返して果てしなく続いていく。言わば人生は、そこで連続して起きるただの「現象」に過ぎない。それなら無限の輪廻転生の果てに、誰もが宇宙の「エンディング」——言わばアカシックレコードの最後のページを読むことが出来るのか? いや、宇宙全体が輪廻転生のシステムに組み込まれているという考え方すら可能……
「先生ー?」
「はい、あー? ん?」
アリスに呼ばれて、やっととりとめもない考えを中断した。我ながら、何の話だ。『ブルーアーカイブ』のエンディングって何だ? って考えてただけなのに。アカシックレコードがどうとか、厨二かよ。一時期そういうのにハマってたとはいえ、俺はそういうのは卒業したんだ。反動で全く何も考えないアホになっちゃった感はあるが。
「考え事ですか?」
「ああ、がらにもなく難しいことを考えてた」
「難しいことですか?」
「まあ、誰でも若い頃は考えるようなありふれた話だ。難しいっちゃ難しいけど」
厨二的な単語は使わないにしても、誰しもこういうのは一度は考えるはずだ。考えるよな? 考えるに違いない。そういうことにしておこう。
「人生とか、死とか、転生とかな……」
「あっ、アリス、転生なら知ってます! トラックに
「……うん? うん、そういうやつ。そうそう、そんな感じ」
「アリスはスキルを選ばせて欲しいです!」
「そーだよなー。せっかくだから選ばせて欲しいよなー。俺、働かなくても生きていけるスキルとか、無条件にモテるスキルとか欲しい」
そうそう、こういうのでいいんだよ、転生なんて。リセットボタンとか強くてニューゲームとか、そんな感じで。ていうか俺、そういう
「アリス。実は俺な、キヴォトスの外のさらに外から、異世界転移だか異世界転生だか、何かそんな感じでここに来たんだわ。んで——」
「えっと……それは何の設定ですか?」
「設定」
「設定」って言われた。何か悲しいから、もう説明すんのやめよう。そもそも俺がこの世界に来た時に、『前の先生』と入れ替わりで『シャーレの先生』になったのは確かなはずなんだが、ほとんど意味なくなってるんだよな、その話も。
既に俺が先生になってからの方が圧倒的に付き合いが長い生徒ばっかりだし、下手すりゃ俺のことしか知らないし。いいんだか悪いんだか、この世界で『シャーレの先生』って言ったらほぼ俺のことだからな。あんまり深く考えたことないけど、俺って何者なんだろう。
「そういえば先生。アリスも気になることがあるのです」
「うん、何だ?」
「アリスは何者なのでしょうか……?」
「は?」
「アリスは、先生やモモイたちと出会うまでの記憶がありません。それに、アリスにはヘイローはありますが、体はみんなと違います……」
「ああ、そういう話か」
何か俺と似たようなことを言い出したと思ったら、そういう具体的な話か。しかし、アリスの体がどうもロボットだかアンドロイドらしいって言われても、もっと露骨にロボットの見た目の奴がゴロゴロいるからなあ、キヴォトス。アリスの場合、パッと見があまりにも俺たちに近いし、そんなことを意識させないぐらいに人間らしいから忘れてた。人間らしいんならいいじゃん。
「気になるか?」
「はい。みんなと違うので……」
「違うって言ったら、俺も違うじゃん。銃で撃たれたら死ぬし、ヘイローもないし」
「あっ、そうでした!」
納得してくれた。いや本当、その程度の話だと思うんだよ。人間だって男と女じゃ体の作りは違うし、人種が違えば肌の色だって違うし。むしろ違う意味での「こいつとは人種が違うわ」の方が問題だと思うんだよ。すぐ喧嘩になる分。
「別に気にしなくても、何だっていいんじゃないか? アリスはアリスだし」
「先生は気になりませんか?」
「俺は別に……」
この世界に来て真っ先に考えたことが、目の前にノノミがいるけど、このおっぱい
「じゃあ例えば、アリスの両手がドリルだったとしよう」
「はい……えっ? ドリ……」
「それだとコントローラーが握れないから困るけど、付け替え式でマニピュレーターに交換できるようにしたら、みんなと一緒にゲーム出来るだろ?」
「あっ、はい! そうです! モモイたちとゲームが出来るなら問題ないです!」
「うん、体の違いなんてその程度のものだ。極論、なくても脳波コントロールとか出来れば問題ないし」
「何だかドリルもかっこいい気がしてきました! アリス、下半身はタンクに付け替えたいです!」
「そーかそーか。そういう改造をしてくれるような、マッド気味の博士とかがいないのが残念……」
言ってから、エンジニア部に言ったら
「でも、両手がドリルではモモイたちに怖がられてしまうのではないでしょうか……?」
「そういうのも、本質的には単純な話だと思うんだけどなあ。と言っても、そういう話こそ難しいとも言えるが……」
ていうかドリルとか以前に、実際にアリスが悪堕ちでもしたら、ミレニアムぐらいなら壊滅させられそうな気がするんだが。アリスが背負ってる
「まあ、仮にアリスがつけてるドリルが、世界を灰に出来るぐらいのヤバい代物だったとしよう。でも、だからってアリスが一緒にゲームをしようって言って、例えばモモイが断ると思うか?」
「それは思いませんが……本当に大丈夫でしょうか……? アリスが嫌われてしまったら……」
「大丈夫だよ。モモイなんかは特に俺と似たようなとこあるし、周りにギャーギャー言われたって、「うっさい知るかボケ!」ってアリスと遊んでくれるって。いや、知るかボケとは言わんか。何にしたって、モモイはアリスはアリスだとしか思わないだろうし、ゲーム開発部の他の二人だって、ユウカだって、みんな同じように思うって。アリスのことよく知ってんだから」
「そうですよね」
「ただ、確かに世の中には、勝手に怖がって敵視してくる奴とかも大勢いるからな。そうやってアリスのことをちゃんとわかってくれる奴らは大事にしろよ」
「はい! みんなアリスの大事な仲間です!」
自分と似たタイプだって言ったからってわけじゃないが、モモイみたいにシンプルに物事を見ることが出来る奴がいると安心感がある。言い返せないような正論を言われたって、そんなの無視して言わなきゃいけない時ってのはある。そういう時に
貴重だからこそ、そういう友達とか仲間がいるっていうのは幸せなことだと思う。俺がどんなにいいことを言ったって、周りにそういう仲間がいなけりゃ意味がない。そして、友人に恵まれてない奴は多いんだから。……本当にそういう意味じゃ、難しい問題なんだよな。
「先生も、アリスと遊んでくれますか?」
「俺? そりゃ俺は先生だもの。仮に他の誰も味方してくれなくても、俺だけは絶対アリスの味方してやるし、一緒に遊んでやるよ。だから心配すんな」
「ありがとうございます!」
アリスの頭を撫でてやった。ま、それが『シャーレの先生』がやるべきことだもんな。少なくとも、俺の考えではそうだ。
「先生はアリスが悩んでいても、いつもちゃんと答えてくれます。だからアリスは、先生が大好きです」
「そーか、そーか」
うん。アリスはいい意味で子供っぽいから、俺も好きだ。
「でも、いつもって言うほどアリスとこんな話してたっけか?」
「はい。先生のお話は難しくて、その時のアリスにはよく分からなかったのですが……あっ、もしかして今みたいな話も聞いたことがあったでしょうか? すいません。アリス、忘れてました……」
「別にいいよ。よく分かんない話なんか覚えらんないだろ。どんなこと言ってた?」
「えーと……「器」とか「等価値」とか……」
「はぁ? 何だそりゃ」
それを言った本人らしいが、俺にも分からなさそうだぞ。何だその例え。
「えっと……アリスも、モモイたちも、先生も、「器」が一緒で……宿っているのが「等価値」で……」
「ああ、そういう話か。わかったわかった」
多分「器」じゃなくて、一緒で等価値なのは中身だ。要するにガワが違っても中身は似たようなもんだって話だろ? それこそ、昔の俺みたいなカッコつけた例えをしやがって。相手が分からないような難しい言い方する奴は、一周回って頭悪いんだぞ。
「んじゃ、分かりやすくもう一回教えてやろう」
「はい」
「ネトゲのキャラで、アリスはドリル装備の「メカアリス」を使って、モモイとかミドリは銃が装備できる「ヒューマン」を使って、俺は紙装甲な上に魔法とかも使えない無能な「エルフ」を使ったとして」
「はい」
「別に、そいつらを仲良く同じパーティに入れても問題ないだろってことだ。結局、中に入ってるのはみんなプレイヤーで同じなんだから」
「あっ! アリス、わかりました! プレイヤー同士が仲良ければ、種族の違いは関係ありません!」
「そうそう。そういうこと」
「PKしたり、チートを使うプレイヤーとはパーティを組めません!」
「うん。そういうのはまず近付かないようにしとけ」
やはりゲームに例えるとアリスには通りが良い。同じことを説明させても、その説明より俺の方が上手いな。その分かりにくい説明したのって、どうせ「あいつ」なんだろうけど。
「ちなみに、俺がその難しい説明してたのっていつ頃だ?」
「アリスが先生と会ったばかりの頃です」
「やっぱり? じゃあそれ、俺じゃないわ」
「? 先生ですよ?」
「先生は先生なんだけどさ」
やっぱり、俺の前に『シャーレの先生』やってた『前の先生』だ。ふふん。他の奴にはどうだか知らないが、アリスとかゲーム開発部の相手をするのは俺の方が得意だ。そもそもあいつ、俺と一緒にされたくないような変態だし(多分)。
「先生はあの時も今も、アリスの悩みに真剣に答えてくれます」
「別にそんな、真剣って程では。え? その時も真剣だった? 俺」
「はい。アリスがよく分からないと言ったら、すごく困った顔をして、一生懸命考えてくれました」
「あ、そう……?」
向こうは向こうで大変だったっぽいな……。
…………………。
「……アリス。人生は長いからな。俺がいない時でも、自分は何者なのか、とかそういう難しいことを悩むことがあるかもしれないけど、その時は「先生」の言葉を思い出せよ。えーと……出来れば、「器」がどうとか頭の良さそうな方で。どっちも言ってることは同じっぽいから」
「? ドリルの話、分かりやすかったですよ?」
「そっち覚えると、アリスがアホだと思われそうだから……。まあ、どっちでもいいけど」
哲学的な話は別として、アリスがどこで生まれて、いつからあの廃墟にいて、何で眠っていたのかはわからない。それは事実であって、社会の中ではブルアカのストーリーなんか関係なく、
ていうか他人のことより、『現実世界』から転生っぽい何かで来てキヴォトスで『先生』やってます、とかじゃなくて、俺も自分のことを考えなきゃいけないのかも知れない。しかし両極端というか、真面目に考えるとさっきみたいに、果てしなく不毛な思索を続けてしまうんだが……。
「先生は誰も知らないようなことを、たくさん知っています。アリスは先生を尊敬しています」
「そう? それは嬉しい」
自分が何者でもいいか。とりあえず、今は「アリスの尊敬する先生」でいい。それでいい。何で尊敬されてんのか知らないけど。
「モモイもミドリもユズも、先生がいなければ脱衣麻雀というジャンルのゲームは、一生知らなかったと言っていました」
それかい。そりゃまあそうかも……っていうか、そんなにジャンルとして
「先生は物知りです! さすが、元遊び人です!」
「は⁉︎ 誰が遊び人だ⁉︎」
何がどうなって、どういう意味で遊び人だよ! まさかその評価、アリスだけじゃなくゲーム開発部での俺のイメージじゃなかろうな。問いただしておかなければ……!
→そんなわけで、何で先生が遊び人呼ばわりされたかは後編で。ヒマリも出るよ!
次回の後編を挟んで、シーズン3の最終回『夢の中で会いましょう』1〜4 になります。
主人公がふと考えた、「この『ブルーアーカイブ』の世界自体の「終わり」って何だ?」って疑問は実はかなり重要なものですので、いずれまた出てきます。