【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~ 作:春画屋@二次創作R18
これにてシーズン3完結です。
1:18000字
2:12000字
3:26000字
→ 4:17000字
登場するのは、主人公・黒服(?)・『前の先生』・ノノミです。
【前回のあらすじ】
夢の中で何故か『現実世界』に居たり、いきなり記憶を戻させられたり、黒服が実は黒服じゃない何かっぽかったり、ノノミとの仲をもっとちゃんと考えなきゃいけなかったり、キヴォトスの今後を考えなきゃいけなかったり、いろいろ大変だったけどまだまだやる事はあるのです。そう、残業のようにね。
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「だあああああっ! やってられるかあああっ!」
俺は叫んだ。
ここはまだ夢の中。黒服と一緒に、目が覚めた後や『前の先生』に交代する時に備えて、引き継ぎ準備中。終わらない。やってらんない。
「もうやだ……。疲れた……。ノノミ、助けて……。ノノミ……ノノミのおっぱいが揉みたい……」
「やると言ったのはあなたでしょう。はい、こちら、シスターフッドのメンバー、それに救護騎士団のメンバーです」
「ミネにマリーにサクラコに……。あー、もう、終わりでいいじゃん。必要かどうかもわかんないのに、準備しなくていいよ。もう十分」
「あなたが終わりでいいと言うなら構わないと思いますよ。大まかに準備をしておけば、あとはあなたの場合、その場で判断をした方がいいでしょうし」
「ノノミー、ノノミー。癒して……」
疲れた。ノノミのおっぱいを触って、癒されたい。あの、ふくよかなおっぱいを……
「ていうかさあ、この世界、ノノミに対して厳しすぎない? いろいろと特別に優遇して、甘やかしてるようにすら見えるけどさ、実際はスパルタじゃん。確かに普通に恋愛するにしたって、似たような苦労はあるけどさあ。そっちに関してもノノミが特別なのも、発想自体は分からなくはないけどさあ」
「まあ、あなたに関してはもちろん、ノノミさんの苦労はお察ししますが。……発想自体は分かるのですか?」
そうは言っても、ノノミが苦労するのを肯定しちゃうようなのは嫌なんだけどな。全く理解できないわけじゃないというか。
「要するにハンデなんでしょ。まあ、彼女的な立場ってのはもともと気苦労が絶えないもんだけどさ。俺がこの世界に来て、初めて会ったのがノノミ。初めてエッチしちゃったのもノノミ。その後、俺のお世話をして甘やかして、何でもしてくれるポジションもノノミ。その辺までは俺の問題としても、こっちに来たらすぐ目の前にいたとか、俺を守ったり望みを何でも叶えられる特殊な能力を持ってるとか、そこまでいったら周りからは完全にひいきに見えるでしょ。実際、それをずるいって思う生徒はいるだろうし」
ユウカは俺の世話を焼きたがってたし、カヨコなんかは明確に嫉妬してたし。その辺に関しては、会う順番が違っただけでかなり話が違ったんじゃないかと俺も思うし。そもそも、キヴォトスにいる子なんてみんな可愛いんだよ。その上これだけ好かれてたら、誰に気持ちがいってもおかしくない。
「俺がエッチしそうになってる状況って、相手の子にしてみればチャンスなわけじゃん? ノノミが最初から優遇されてる分、そういう時ぐらいはその子に都合のいい「お膳立て」がされてたってなあ……ぐらいは思うよ。いびつというか、そういう発想をしちゃうのは俺だからかも知れないけど」
そもそも俺をはじめとして、これだけ「ご都合主義」がまかり通ってるこの世界自体がかなり不自然なんだ。バランスを取ろうとすれば無理な形にはなる。もともとブルアカの中の「先生」だって、相当不自然な存在だし。
「では、あなたが『前の先生』の立場だったらそうするのですか?」
「しないよ。ノノミがかわいそうじゃん。ひいきでも何でも、俺はノノミが一番可愛いの。俺はあくまで、ノノミをかばう立場でいいの。……まあ、ノノミにそういう俺みたいなのがついてれば多少は安心だし、それを見ながら他の生徒のフォローをする側の担当だったらするかも知れないけど……。本来の『シャーレの先生』って、何でもかんでも全部背負うのが仕事みたいなところもあるし、その「枷」はあるんだろうけど……ん? 俺がそっちの担当だったら……? 俺みたいなのがついてれば……? 待てよ……」
「どうしました?」
「いや、何か引っ掛かる……」
何だろう。何かあと一個のピースでパズルが完成するような。発想が同じ? つまり、えーと……あっ、分かった。
「うっわー……」
「どうしました?」
「分かった。今、何か繋がった。全部繋がった。やっぱそういうことか。うわあああ……」
「繋がったとは何が……?」
「「あいつ」、俺だ」
「は?」
み、認めたくない……。「あいつ」が俺? てことは、「あいつ」のこっちの世界でのやらかしって、全部元をたどれば俺か? あいつが重度の変態なのも? アリスに小難しい説明をしたり、厨二じみたことを考えてたり、ヒマリに気持ち悪いラブレター……じゃなくてメールを送ったりしてたのも、全部元は俺? 嫌すぎる……。
夢の中でも持っているらしい(そういうことになったのかも知れない)、『絶対☆避妊薬』と『即席☆ヘイロー』を取り出して、じっと見る。
「まさか、こういうのの酷いネーミングセンスも俺かよ⁉︎」
思わず、わっと顔を覆ってしまう。あまりのことに、ちょっと泣きそうになってしまった。何かこう……久しぶりに鏡を見たら、映ってる自分の見た目が予想以上に酷かった時みたいな。もしくは、高校生当時の黒歴史ノートを発見してしまった時みたいな。
「何なんです?」
「いや、つまりな? 「俺」がこっち側とあっち側から
「「あちら側」からも? つまり、『前の先生』があなたと同一人物ということですか?」
「いや、同一人物っていうか……。多分、お前と似たようなもんだよ。俺が初めてブルアカをプレイした時にこのブルーアーカイブ世界が生成されて、同時に『先生』も生まれてるだろ? その時にその「役割」というか、「
「つまり、コピーやクローンのようなものですか。確かに、『先生』というのがまさにプレイヤー自身であると考えれば、さほど不思議ではない……。しかし私は一度あの者と接触し、会話した事があります。その時の一人称は「私」でしたし、口調ももっと柔らかく、典型的な「ブルアカの先生」といった感じでしたが」
「そりゃ、「枠」は『先生』だからだろ。俺が言ってるのは「中身」の方だもん」
「ああ」
「あ、思い出した。そういや、俺も一度あいつと会話してるわ」
記憶を再消去する直前に、あいつが俺の中に語りかけてきた記憶が蘇ってきた。今までどうしてもそこら辺のことが思い出せなかったんだ。
そういえば「ブルアカの先生」
【うん、大体そんな感じ】
【『先生』として、その世界と一緒に生まれて】
【『黒服』とはちょっと違うみたいなんだけど】
そうそう、こんな風に、
「って、出たな! 『前の先生』!」
あの時と同じように、『前の先生』独特の「声」のようなものが俺の中に伝わってきた。俺の考えてたのと似たような感じか。そうか……やっぱりこいつ、俺なのか……。嫌だなあ。
【『ブルーアーカイブ』と一緒に生まれた瞬間までの、『現実世界』での記憶もあるけど】
「『現実世界』での……って、それつまり俺の記憶だろ? じゃあ、ほぼ俺じゃねーか」
ドッペルゲンガーかお前は。気持ち悪っ。
前回は『前の先生』の言葉は俺の中にしか伝わっていなかったが、どうやら黒服にも同じものが伝わっているらしい。ものすごく嫌そうな顔をしている。俺の記憶を消したりいろいろしてたし、やっぱり嫌ってるんだろうなあ。今の黒服は人間そのものの顔をしているせいで、嫌っているのが思いっきり顔に出ていて、よく分かる。
「また見ていた——というか、画面の外から「読んでいた」のですか。ならば、我々が相談している時に出てきてくれれば助かったものを」
【そこは、いろいろ大変で】
そりゃプレイヤーとして画面の中のメタ発言と会話してるんだ、大変だろうよ。どうやってるんだろう。
【黒服、ありがとう】
【今後もよろしく】
「感情的には、あまり「よろしく」とは言われたくないのですが、まあいいでしょう」
黒服は偉いな。俺はあんまりこいつと会話したくないぞ。いろんな意味で気持ち悪い。そうだ、
「『前の先生』、あんた、おっぱいは大きければ大きいほどいいと思うか? 多少解釈違いでも盛ってもいいと思うか?」
【性癖というのは真に一人一人が持つものだよ】
【そこはあんまり一緒にされたくない】
【貧乳最高じゃない。盛るのは許されないよ。胸は揉むものじゃない、鑑賞するものだ】
語り始めた。うーん、本当に気持ち悪いなこいつ。大体、揉めないおっぱいに何の意味があるんだ。絵に描いた
「やはり、お前とは全く分かりあえる気がしないな。ということはつまり、俺とは全くの別人だ。そうだな?」
【私もそう思う】
【ていうか思いたい】
【別人ていうことにしとこうよ】
本音がダダ漏れだ。しかし、やはり発想は同じだ。意見が一致した。よし、俺の心は守られた。別人、別人。
「あなた達、そこで区別されて嬉しいのですか?」
「いいんだよ。おじさんだってそこで見分けてたし」
当時は酷い理由で判別されてんなあ、と思ったが、それでいいんだ。ていうかこの際、理由なんか何だっていいんだ。とにかく、このヤバいのと一緒にされたくないだけだ。
【でもアコを縛ったりとかは楽しいよね】
「あー、俺もそれはちょっと目覚めかけちゃってな。わかるわかる。まず、本人が喜ぶし……って、そういう余計なことは言うなよ! どっちにしても同類みたいじゃねーか!」
俺はこっちに来て以来、縛ったり目隠しされたり、いろいろと変な性癖に目覚めそうなのは否定したいんだ!
【それより、クロコは多分、私じゃないと救えない】
『前の先生』のその言葉で、空気がピシッと引き締まった。クロコ……そうか、それがあったか。
「クロコ?」
「『シロコ*テラー』のことだよ。反転したシロコ。シロコ……プラナもか? 確かにあの二人はまだこの世界に存在すらしていない。プレナパテスなんかは『先生』とか『ゲマトリア』と同じで「役割」っぽいからいいとして、あの二人は何とかしてやらないと」
「「生徒」の存在自体がズレるわけにはいきませんし、『最終編』の時期までにはどうにかしてつじつまが合うのでは?」
「それにしたって、多分何らかの形で『色彩』が来るか、でなきゃ最悪、呼び込む必要があるだろ? その時はやっぱり、『シッテムの箱』がないとキツいよな……。何にしても、俺はもうそっちに帰ってるはずだったんだな? もっと早い時期に。前回あんたと会った時でも多分遅かった」
【あの時のノノミの本当の望みは、あなたがそちらの世界に残る事だった】
【あなたがまだそちらの世界にいるのは、喜ぶべき事だ】
【そしておそらく、これからも。私はそう思う】
「だろうな。それも、ノノミのためだけじゃない」
もちろん、ノノミのためってのが一番なんだろうけど、本来の『シャーレの先生』の役目は、生徒全員を平等に扱い、考えてやる事だ。そうやってバランスを取るような行動しか出来ないのは「
「せっかく今は『メインストーリー』から解放された状態なんだ。出来れば、そこでは体験出来ない事をやらせてやりたいよな。俺が『先生』をやって、違う世界観を生きてきた今までみたいに。お前が戻ってきても、『メインストーリー』にあるのと似通った状況になって、『シッテムの箱』を持ってる事以外は、俺と同じ発想で同じことをするんだろうし。シッテムの箱の代わりとしては、俺が残ってるならノノミも助けてくれるしな」
【そう。それに彼女たちは『メインストーリー』は、ある意味で一度体験しているから】
「ある意味で一度?」
【正真正銘、あなたでなければいけない生徒も、もう他にもいるし】
【私ではあなたの代わりは出来ない】
「そうだなあ……。居るなあ……」
単に「先生」としてではなく、「中身」である俺本人を見ている生徒は、今はもうノノミだけじゃない。どっちがいいとかじゃなく、俺と過ごした時間は、やっぱり俺相手じゃなきゃ成立しないからだ。それに、もう『前の先生』自体知らない生徒も多い。担当が変わっただけで、厳密にはあっちだって「先生」を辞めたわけじゃないんだけどな。やっぱり、直に接してるのは俺だからなあ。
と言っても、俺が交代した時と同じで、「中身」までこだわる生徒はあまり居ないだろう。知ってたって五感レベルじゃ見分けがつかないらしいし、多分『前の先生』も、どの程度かは知らないが、俺と生徒との付き合いは共有してそうだし。また交代しても、そんなに違和感はないだろう。ただ、一部それじゃ済まない子が居るわけで……揃いも揃ってというか、勝手に交代したら恨まれそう。こわ。
まあ、俺に言わせればあっちの先生だって話は一緒なんだけどな。おじさんとかヒナとかは、どっかで向こうの『先生』を恋しがっている気がする。おじさんからの俺の扱い、酷いし。俺を追い出したりはしないだろうけど、交代しちゃったら喜びそう。全く、その辺はなかなか都合良くいかないもんだ。
何にしても、プレイヤーの数だけ存在する『ブルーアーカイブ』の世界には、無限の可能性がある。その中でも、『メインストーリー』から解放されたというだけではなく、俺や『前の先生』でなければ絶対に成立しない人生を送っている生徒がいるとしたら、それは喜ばしいことだ。
「同じ話だって、『シッテムの箱』で戦闘指揮しなきゃいけないような物騒な話なしで解決できた方が、生徒たちにとってもいいはずだもんなあ。「大人」の干渉はある程度仕方ないにしても、『ゲマトリア』だの『色彩』だのオーパーツだのの話は、絡まない方が自然だ。生徒一人一人の人生に、余計なものはいらない」
戦闘とは関係なく、この世界での『シッテムの箱』ってのは『スケジュール』だの『カフェ』だの『ガチャ』だの、ゲームのブルアカで生徒と自由に会えるような操作をそのまま反映した能力を与えてくれるらしいので、それがないのはキツい。しかし、確かにこの世界はそういう風に出来てるんだろうが、そもそもそれ自体も相当おかしな話だからな。俺の体は一つしかなくて、本来は一日に会える人数だって限られてるのが当たり前なんだ。それもシッテムの箱がない分は、ノノミもいることだし。……結局、俺がこっちにずっといるためには、ノノミと上手くいってることが前提なのか。上手くいきゃいいけどさあ。もう自信ないわ。
【だから、他のことはフォローするから】
【後は任せるね】
【あなたを信頼してるから】
「はいはい。任せられるのはいいけど、お前も記憶を再消去する前の俺も、また俺に丸投げしやがって。いいけどさ」
全くみんな、どれも「俺」だからって無責任な。俺だって、目が覚めたらいろいろ忘れててもほぼ自分なんだからいろいろ準備しておいたが、誰かに丸投げ出来るんならしてるっての。それどころか、記憶をなくす直前の「俺」なんかいい思いしやがって。思い出したからいいけど。くそ、俺だって直にノノミにあんなこと言われたかった。
【それから、まだいくつか伝えなきゃいけない事が】
「まだあんのかい」
【それ見てくれる?】
「それって、どれだ? ああ、これ」
「何ですか? それは」
気付くと俺の手の中には、いくつかの事が箇条書きされているメモがあった。そこに書いてあったのは……おい待て、どれも嫌すぎる……何これ。
【いろいろ連絡が来てて】
【まず、
【あと、
「あの子、何でわざわざ元カレにこんな報告してくんの? 何なの?」
【それから、「離婚したから遊んで」って文章繋がってないよね? あっちはどういうことなの?】
【あと】
「もう聞きたくない! お前が処理しとけ!」
【あなたが帰ってくるまで逃げ切るから、そっちでどうにかして欲しいんだけど】
「俺の記憶を持ってんなら、お前が何とかしとけよ! 嫌だ……。やっぱりあんな世界に帰りたくない……」
「あなた、そんな理由で帰りたくないと駄々をこねてたのですか?」
「うるさい! 大体、お前ら俺がこっちに永住する可能性を無視して考えるなよ? 俺はずっとこっちでノノミと暮らすのを諦めてないんだ!」
くそ、やっぱりこれ悪夢だ! もういい加減に覚めろ——!
誰へともなく悪態をついたところで、ぱっちり目が覚めた。
「あ、ノノミだ」
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すぐ目の前に、何ともホッとする、安らぎを感じる笑顔があった。そして視線を落とすと、柔らかそうな大きな二つの膨らみが。ノノミだー。
「起きましたか〜? せんせー☆」
「起きた起きたー。ノノミ、会いたかった〜。いやもう、夢見てただけなのに疲れちゃって……」
「そうなんですか? じゃあ、おうちに帰ったらゆっくり休みましょうね〜。はい、いい子いい子……ちょ、あっ♡ だ、ダメですよ、先生。あんまり胸を触っちゃ……ンっ♡ ま、まだお店の中ですよぅ……」
「えー」
くそ、周りに一般客がいなければこのまま甘えるのに。俺はしぶしぶ、ノノミの胸の谷間にぐりぐり押し付けていた顔を離して周りを見渡した。黒服の言っていた通り、どうやらD.U.の居酒屋らしい。元の世界ではなくキヴォトスとはいえ、夢の中とは違って視界がはっきりした感じがする。雰囲気としてはここが現実の世界だ。『現実世界』と違ってまともな成人男性はいなくて、ロボットや犬が働いてるけど。ノノミの頭の上に輝いているヘイローも、久しぶりに見た気がする。
視線を感じてふと見ると、黒服は真っ黒くひび割れた仮面のような、見慣れた顔に戻っていた。そんなわけで表情がないので、何を考えているのかはわからなかったが、
「目の前で実際に見せられると、本当に酷い……」
「うるさいな」
呆れているのは明白だった。余計なお世話だ。
「それにしても、酒を飲んでたはずなのに目もスッキリだし胃もスッキリ。ノノミ、何かしてくれた?」
「はい! じゃじゃ〜ん! 『二日酔いにはしじみパワー』! こちらの、二日酔いによく効くサプリを、寝ている間にたっぷり飲んでいただいてたんです☆」
「寝てる間にって、よく飲めたな。にしても、普通に通販とかで売ってるパッケージみたいな……何これキモっ! サプリっていうか、真っ黒の大量のしじみ! 俺、飲んだの⁉︎ これ!」
「大丈夫です! 見た目は貝殻に見えますが、これは飲んでも全く害のない……♪」
「見た目が問題なんだが⁉︎」
などと
「今すぐ別れて、元の世界に帰った方が彼女のためでは?」
「本人を目の前にして、酷すぎるだろ」
こいつ、さんざん真面目に話し合ったことをどっかにやって、何てことを言うんだ。
「もちろん私の分は支払いますが、自分の分はちゃんと彼女に払うのでしょうね?」
「払う、払うよ。何だよ、その目! 最初から払うつもりだったっての!」
お前らみんな、俺がこっちに残って「先生」を続ける方がいいって結論に達したのと違うんかい、と言いたい。そもそも、ノノミに見捨てられてそのまま元の世界に戻っちゃうんじゃないかとビクビクしてるのは、この俺だっつの。そう簡単に帰ってたまるか。
「それはそうと、記憶の方はどうです?」
黒服が耳元で、小さな声で
「うまいこと、何か思い出さない方がいいことがいろいろある、ってことだけ覚えてる感じだ。『メインストーリー』でも、どことどこがヤバそうとかはぼんやり覚えてるけど」
「他の記憶に関しては?」
「夢の中であった事も、向こうで思い出した事も、大体覚えてる。気持ちも安定しているみたいだし、このままならキヴォトスの今後についてはまず大丈夫だろう」
「それは良かった。ならば、私の分はここに置いておきますので、お先に失礼します。もう会うこともないでしょうが、あなたの世界は守ります。ご心配なく」
「もう会うこともないって、何でよ」
「合わせる顔がないからですよ。本当は、悪役を演じきったまま消えるつもりでした。それに——」
と、黒服はそこで言葉を切った。そして、
「……頭では、キヴォトスの住人が等しく人間だと理解しているつもりでした。しかし、あなたを
「いや、ああは言ったけどさ。行きたかったら向こうに行けよ。行ったからって何もなくても、実際は向こうでしか出来ないこともあるし。ていうか、連絡取れないと困るから呼んだら来い」
黒服は何とかそれだけは了承したが、プライベートで会うのはもうやめよう、と言った。どうも真面目な奴は、極端から極端に走って困る。それだけちゃんと受け止めてくれたのはいいけど。
「誤解しないで下さい。私は『現実世界』に行くのを諦めたわけではありませんよ。たとえ、あなたが向こうに帰らなくてもです。何しろ私には、あちらでしか叶わない目的があるのですから」
「目的? 何?」
「まず、彼女を作ります。そして私は童貞を卒業するのです」
「ぶっ」
うっ、汚い。黒服があんまりアホなことをちょっと格好良く言うので吹いてしまった。童貞を卒業って。
「笑いますか? 私は真面目ですよ。無から生まれた何ともわからない存在が、自我を得、『現実世界』の肉体を得、そして子をなすのです。これほどの奇跡がありますか?」
「そんなこと言って、本音は?」
「……私もデートやセックスがしたいです」
「よく言った。もし向こうで会ったら、誰か女の子を紹介してやろう」
「あなたの紹介は不安だから嫌です」
ごもっとも。
そんなくだらないやり取りをして、二人で少し笑った後、黒服は先に帰ってしまった。見ていて本気で心配になったのだろうか、他の事情とは関係なく、俺とノノミがうまくいくよう祈ってくれるそうだ。ありがとうございます。頑張ります。
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「にしても、さっきのサプリ、本当に効くな。見た目はアレなのに」
「はい! 先日、お酒を召し上がった後でつらそうだったので、準備しておいたんです☆」
「そうか。ノノミがいると、本当に助かる……」
「いえ、先生のお世話を出来るのが、私にとっての一番の幸せですので〜♪」
ノノミは言葉通り、本当に幸せそうに笑っている。この関係は、踏み込んだ話をしたら壊れてしまうんだろうか。この世界に来て、いつも隣にいてくれた存在なのに、居なくなってしまうんだろうか。そうなった後の喪失感が怖い。とは言え、ちょうど今は二人きりで、周りに人もいない。思い立ったが吉日、今まで延ばし延ばしにしてきた問題を、少しでも解決した方がいい。覚悟を決めて——でも、怖いから、本当にちょっと話をするだけにしておこう。あくまで一般論として、ただの雑談として……っと。
「あのさ、ノノミ」
「はい、どうしましたか? 先生」
「ノノミさあ、結婚したいとか思ったことある?」
「……は?」
そんなの考えたこともないです、って顔をされてしまった。ただの雑談のつもりとはいえ、この反応は結構きついな。
「え? 結婚……って、もしかして私と先生が、ってお話をされてます? 申し訳ないのですが、それはちょっと……」
「ああ、そう?」
困った顔をされてしまった。いえ、俺とノノミが、とかそこまで具体的な話をしたつもりじゃなかったんですけどね? あくまで、ただの雑談のつもりで。まあ、黒服に何も言われなければ、ノノミに言えば無条件に結婚してもらえると思い込んでいたままだったわけだし、こういう反応をされてもしょうがないか。別に、完全にプロポーズのつもりで言って断られたわけじゃないし。多少傷ついたけど——
「あっ、いえ、そのっ! 全然、嫌というわけではないというか、そこまで考えてくださるのは嬉しいのですが、逆に先生にご迷惑をおかけしてしまいますし……」
「いやいや、迷惑だなんてことは」
「確かに、キヴォトスに永住したい、というようなことはいつもおっしゃってましたが、籍は入れたくないなんてことも言ってましたし、先生もそういったことは全く考えてらっしゃらないのかと……。大丈夫ですよ? 仮に子供が出来ても、私の家で一人で育てられますし」
「そ、そうか」
——そうか、そうだな! 散々、籍は入れたくない、養育費も払いたくない、とろくでもないことを言い続けてきたんだから、報いは受けるよな! はっはっは。あっ、でも、マジでそんな風に思われてたんだー……今さら、今はもう口で言ってるだけだよ、などと言い訳しても見苦しいだけだな……。ていうか、こんな話をするつもりじゃなかったんだ。どうにかして話を戻そう。
「別に、今すぐ俺とノノミが、って話じゃなくてな? 一般論として……」
「あの、今すぐでなくても、先生と結婚はちょっと……。すみません。私でも、それはどうにもなりませんし……」
「あっ、今すぐじゃなくてもダメなんだー。そっかー」
どうしよう。聞いてないのに、次から次へと悲しいことばかり言われる。いたたまれなくなってきた。そうか、俺と結婚するの自体が嫌だったか。……マジで今すぐ帰りたくなってきた。泣きそう。
「そ、そんなつらそうなお顔をなさらないで……。こうやって、今のままではダメですか?」
「別に、それがダメとかいう話じゃなくて、いや、全く結婚を考えてもらえないのも悲しいけど……え? 俺、そんなつらそうな顔してる? そんなに?」
「はい、すごく……。ごめんなさい。理由が私では、慰めてあげることも出来ませんし……」
「大丈夫! このぐらいのことで、そうそう立ち直れないほどヤワじゃないから! 割とこういうの慣れてるから! 謝らなくていいから!」
「わ、私だって、先生がそんなに弱い方でないのは知ってます……! でも、だからってつらくないわけじゃないじゃないですか! 女の人とだって、真剣にお付き合いしてるのに上手くいかなかった時はあんなにつらそうで、きっと大丈夫だと思ってても、私、心配で……!」
「は? こっちに来てから、ノノミに心配される程のそんな話あったか? どれの話してんだ? そりゃ、昔はしばらく立ち直れないぐらい酷い凹み方も何度かしてるけど、そんなのノノミの知らない頃の話ばっかりだぞ?」
「それは……」
ノノミは口をきつく結んで、黙ってしまった。しまった。「俺のことなんか何も知らないくせに」みたいに、冷たい言い方に聞こえただろうか。んなこと言っても、『現実世界』にいた頃の話なんか、ノノミが知らなくても当たり前なんだが。
「ほら、キヴォトスに来る前に住んでたところのこと、最近ノノミによく話すようになっただろ? 俺が言ってるのは、あの頃の話。こっちで「先生」になる前、東京に住んでた頃なんかはいろいろあったけど、そんなのノノミは知らない……」
「後藤さんの時なんて、すごくつらそうでした。会社の後輩の」
「何でそんな名前知ってんの」
とんでもない名前が出てきた。今さら何とも思ってないし、別に知っててもいいけど、何でそんな名前を知ってんの。「会社の後輩」とまで言ってるから人違いじゃないだろうし、確かにあの子と別れた時が一番キツかったけど。
「え、もしかして寝言か何かでそんな名前呼んでた? ノノミが知ってるはずないんだけど」
「…………」
ノノミは横を向いたまま、黙ってしまった。表情はかたく、どこか俺を突き放すような雰囲気が漂っている。視線を合わせてくれない。
「どうした?」
「ごめんなさい。言ってはいけないことになってるんです」
「ああ、そんなの——」
——言っちゃダメって言ったのはどうせ『前の先生』だろうから、俺が許可するから言ってよ、って言おうとして、やめた。何でもかんでも許していたら、ノノミがダメになる。それよりまず自分の心配をした方がいいんだろうけど、こういう時に悔いの残る選択をしたら、ノノミは一生引きずるだろう。『前の先生』に何か考えがあって口止めしてたなら、今の俺と同じことを考えていたんだろうし。もし帰るとしても、これがその前に俺がしなければいけない事だ。
見ると、意外にもノノミは、いつものように「言えないことがあって申し訳ない」という感じではなかった。かと言って、つらそうなわけでもない……何を考えているのか分からなかったが、しいて言えば、少し腹を立てているように見えた。やはり、何か怒らせてしまったのだろうか。それとも
「あのさ。もし言うべきだってノノミが自分で判断したなら、それは俺に言って欲しい。言いたくないなら言わなくてもいいけど、誰かに言われたから、とかじゃなく、自分で考えて、責任を持つつもりで、そうして欲しい。他人のせいにしたり、言い訳をしないで。その結果がどうなっても、俺は構わないから」
「……先生、帰られてしまうんですか? ——いえ、今まで黙っていてごめんなさい。私、「先生」になる前のあなたのこと、知ってたんです」
「うん。それは何度も話したし、それが『シャーレの先生』が来た「キヴォトスの外」っていうのとはちょっと違うっていうのも……ああ、ごめん。続けて」
俺が『現実世界の日本』に住んでたっていう話は、最近よくノノミに聞かれて話しているから、もう知っているはずだ。でも、それが『ブルーアーカイブ』というゲームの中のこの世界の、さらに外側にある、という話をどれだけ実感として理解しているんだろう。
「私、『ブルーアーカイブ』の「プレイヤー」としてのあなたを知ってたんです。あなたは気付いていませんでしたが、ここに来る前から、「画面の向こう」にいるあなたのことを」
……え?
「ちょ、は? 「プレイヤー」としての俺って、「画面の向こう」って、意味わかってて言ってる?」
「はい。何故そんな事が出来たのかは分からないそうですが、あなたの前にいた『先生』に頼んで……あ、その『先生』っていうのは先生の事ではなくて——」
「『前の先生』ね。そいつのことは知ってる。それより、続き」
「は、はい」
「画面の向こう」って表現、この世界と向こうの世界の関係をかなり正確に理解してないと出来ないぞ? 黒服はともかく、俺の話を信じているカヨコやおじさんですら、理屈でしか理解できていないっていうのに。知ってたにしても、知識で知っていたって事じゃないのか? でも、もし本当の意味で以前から俺のことを知っていて、だからこんな話をしているとしたら……
「『先生』に頼んで、そちら側の様子や、あなたのことを見てたんです。それから、あなたと繋がっていることで『先生』が知っている、あなたの様子を聞いたり。あなたって、すぐ無理をするじゃないですか。こちらに来る前だって、つらい事が多そうで、見ていて心配で。ずっと、癒してあげたいって思っていたんです。そばに行って、慰めてあげて、撫でてあげたり、ひざ枕してあげたり、エッチして元気にしてあげたり……そんな風に一緒にいられたらいいのに、って。知らないところで勝手にそんなことを思われても、迷惑だったでしょうけど、あなたってば、あの人と別れた時なんか——」
「あの子、結婚したらしいよ」
「え⁉︎ そ、そうなんですか⁉︎」
「俺もさっき知ったばっかりなんだけどさ。わざわざ報告してくれたんだって。もはや、嫌がらせか何かかっていう」
「そんなことありませんよ! だって、わざわざ知らせてくれたんですよね? 悪気はないのに、あなたもそういうところに困っちゃってたんでしょう? ふふっ、いつも一人でお酒を飲みながら愚痴ってたじゃないですか」
「えー? 俺、一人でそんな愚痴言ってたっけ?」
「言ってましたよぉ☆」
と嬉しそうに言ってからノノミが、「あ」と口を押さえた。
「す、すみません。そんな姿、他人に見せたくなかったですよね? 私、そうやっていつも勝手に……」
「いやいや、嬉しいって。めちゃくちゃ嬉しいよ! 嬉しいに決まってるじゃん!」
「え? え?」
だって、こんなに嬉しいことがあるか? 自分がたった一人で凹んでた時に、見ていてくれた人がいて。心配してくれていて。自分がつらかったのを知っていてくれた。それを今も大事に覚えていてくれた。しかも、それがノノミだった。いくら俺が舞い上がっちゃうのが嫌いだからって、そんな事を知って浮かれないわけがあるか⁉︎
「あ……あは☆」
俺があんまり嬉しそうにしているせいでビックリしていたノノミの顔も、すぐにこれ以上ない程に嬉しそうな表情へと変わった。共有していたはずなのにノノミしか知らなかった時間を、やっと二人とも知ることが出来た喜び。本当の意味で共有できた喜び……!
今、やっと全部分かった。何で『ノノミ』だったのかって? この『ブルーアーカイブ』でただ一人、ここに来る前から俺のことを知っていたのが、ノノミだったからだ。何で『前の先生』が俺をこの世界に呼んだかって? 片想いをしていたノノミが、俺に会いたいと望み、それを叶えようとしたからに決まってる。そして、俺たち二人が出会ったことで生まれた
「てことは、俺がこの世界に来て初めて会った時には、もう俺だって分かってたのか?」
「ビックリしました! ずっと好きで、でも絶対に会えないって思っていたのに、本当に会えるなんて、夢みたいで! それに、いきなり「エッチなことがしたい」なんて言うから流石に……。ふふっ。でも、あの人なら言いそうだな、なーんて思ってましたけど☆」
「あ、最初からそういう奴だと思われてたんだ」
「でも、それだけじゃないですよ? あの頃のあなた、すごく疲れてたじゃないですか。心配してたんですよ? 会社もあるのに、お役所とかいろんな手続きをしに走り回って」
「あー、あの頃はな……。忙しいから辞めさせろっつってんのに休みすらくれないし、地獄みたいだったな……。役所はともかく、今度はちゃんとした遺言状ありますよ、って言ってんのに銀行ってのは……」
「まだ、お母様の口座、そのまま残ってるんじゃないですか? 相続って本当に大変なんですね」
「もうずっとこっちに居るつもりだし、いいよ。でも俺、疲れきってなくても多分ノノミを見たらエッチさせてくれって頼んでたよ? 土下座くらいは平気でしたよ? ていうか、もしかしてしたっけ、土下座? あと、エッチなことさせてもらえなかったら死んでも死にきれないとか、わけわかんないこと言ってなかった?」
「あははっ。あなたって、本当にエッチなんだなってすぐに分かっちゃいました☆ あの後、アビドスで毎日のように甘えてきて、エッチして、セリカちゃんに怒られたり。でも、すっっっごく可愛かったです☆」
「さっき黒服にもいろいろ言われたんだよなー。流石に、他人の目はもう少し気にするようにするかあ」
「うんうん! 怒られないよう、これからは気をつけましょうね!」
抱きついてきたノノミとじゃれるようにして、二人で笑う。
「俺、先生、先生って呼ばれて、ずっと『シャーレの先生』として扱われてたから、ちゃんとノノミに愛されてるか自信なかったんだよな。『前の先生』の話を聞くと、みんな立派だったって言うし、そいつだと思われてるんじゃないかなって。記憶を消すって時も、ノノミは大事な『先生』です、なんて遠い目をして言うし」
「記憶を、って、それ思い出しちゃったんですか⁉︎ あの、実は……」
「大丈夫。その件については、もう他の奴と一緒に、どう対処するか考えてるから。それより、『前の先生』の話」
「やきもち焼いてくれたんですか? だって、いろいろ教えて頂いて、お世話になって、尊敬はしてますけど、そうなっちゃうと逆に、あなたを見るみたいな目では見られないじゃないですか☆ それに、これはホシノ先輩たちには言えないのですが……」
「それは聞きたくないからいいや。あいつもああ見えて大変なんだよ。何が大変か知らないけど、多分大変なんだよ」
流石にさっき知ったばかりなので、自分の分身のことはつい
「ふふっ、何だか夢みたいです。こういう話があなたと出来て、こんなに楽しいなんて。私があなたのこと、ずっと好きだったって言えて、こんなに嬉しいなんて!」
あ、と小さく言って、ノノミが体を離した。
「あ、あのっ。結婚、とかはやっぱりまだ考えられないのですがっ」
それはもう言わなくていいよ、って思ったが、「まだ」ってついている。よし、少しランクが上がった。
「あなたが帰るまでの間だけでいいので、その……私と正式にお付き合いして……その、あ、あなたの彼女にしてほしぃ……」
語尾が少し小さくなった。
「のですが、ダメでしょうか?」
「いいに決まってるだろ? いつ帰るかなんて分かんないし、ずっとだよ、ずっと」
「でも、せんせ……えっと、私、あなたの名前……」
そういえば、と、自分の名前を忘れているのを思い出した。ノノミも知らないのかも知れない。と言っても、本当に別にどうでもいい。やっぱり大した事じゃない。
「呼び方だろ? 「先生」でいいよ。こっちにいる間は、ずっと「先生」やるつもりだし、慣れちゃったから。だから、ずっと一緒に居よう、ノノミ!」
「はい! 先生!」
——こうして、俺のキヴォトスに来てからの生活は一番のクライマックスを迎え、幸せの絶頂の中で俺はこれ以上ない程に満足してしまい、いつ次元の壁を越えたのだろうか、次の日の朝、俺はこうして自分の部屋で目を覚まし、そこはかつて『現実世界』で住んでいたボロいマンションの部屋であり、既に見慣れてしまっていたキヴォトスの部屋ではなく、ノノミはもう居なくて……
……なんてことはなかった。そんなに簡単に、この『ブルーアーカイブ』の世界に満足してたまるか。まあ、いろいろこの世界でやろうと思うことはあるのだが、まず、
エッチしてないのである。
昨日あの後、当然いつものように二人で部屋に帰って、そのままエッチ……となるはずだったのだが、「ごめんなさい。今日はダメな日で……」と、最近避妊に関してすごく真面目になったノノミは、手を振って自分の家に帰ってしまった。終電も近かったし。いや、いいんだよ。避妊は大事だし。結婚は少なくとも今は考えられないらしいし。俺ももう別に考えてないし。
こうしてやり残したことがあるから、俺はまだこの世界にいる。うんうん、現実的なのはいいことだ。現実には明日も明後日もあるからな。簡単に終わったりはしない。そんな、告白しました、オッケーもらいました、その後エッチしました、でハッピーエンド終了されても困るんだ。多少生殺しの方がこういう場合はいい。
その代わり部屋に帰ってから即、ノノミにモモトークを送った。そのまま返事が来るまで、ずっと画面を見て待っていた。返事が来た瞬間、めちゃくちゃテンションが上がった。
今日は午後から休みでも取ろうか。当番は確かアコだから、その気になれば仕事は午前中で終わるだろう。出来立てのバカップルだから、鬱陶しがられそうだけど。ノノミとはその内、いつもよりもっと本格的な、それこそ付き合いたての彼氏彼女が行くようなデートに行こう、なんて話をしている。どこかで待ち合わせて食事をしながら、二人でネットでデートスポットでも調べて、どこに行こうか考えるのもいい。
「先生! おはようございます!」
「おっ、おはようアロナ。昨日、お前がいない間にいろいろあったぞ。その内話してやるから。あと、しばらく「ノノミママ」って呼ぶの禁止な」
「えっ、ダメなんですか⁉︎」
「ノノミだってそう言うぞー? 絶対言うぞー? 後で会わせてやるから、ノノミに聞いてみ?」
「あっ! 噂をすればノノミマ……ノノミさんからモモトークが来ました!」
「よしよし、中身は見るなよ?」
こうして今も、俺はここにいる。俺のブルアカ世界での生活は、まだまだ意地でも終わらせない。——だよな、ノノミ?
—— シーズン3・完 ——
そして、二人の
→ シーズンFinal:『The End of "this" Blue Archive』...
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
遅くなりましたが、何とかシーズン3までは完結致しました。
シーズン1が「ずっと上手くいってほしい」、2が「これからもきっと大丈夫」だとしたら、シーズンFinalでの「やっぱり大丈夫だった」というハッピーエンドの真の最終回へ向けて、ラストスパートの準備完了、といったところでしょうか。あと少しお付き合い下さい。
それでは、シーズンFinalもよろしくお願いします。
→@shungayaR18sub