※この作品はR-18です。

【完結】「助けてノノえもん!」~ブルアカの世界でノノミとエッチしまくるダメ先生~   作:春画屋@二次創作R18

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トリニティでラブソングを歌っているカヨコと、ハナコとヒフミのお話。オリ主は不在。5000字弱です。
内容的には、カヨコに関する本編そのものです。エンディングへの第二歩目って感じです。

↓カヨコとムツキに関連する回
第14・15回:便利屋、カヨコの「特別な相手」は???
第16回:カヨコのドキドキ初体験【♥100】
第33回:カヨコとムツキでレズセッ!【♥80】
第37回:続・カヨコとムツキでレズセッ!【♥80】
第45回:エンディングへの第一歩 - 鬼方カヨコ
らくがき:誘惑ムツキちゃんに倍返し【♥70】

参考:
カヨコASMR



第47.5回:カヨコの歌う " I LOVE YOU " in Trinity

 

 ——夜のトリニティ某所。

 

 トリニティ総合学園二年生、浦和(うらわ)ハナコ。同じく二年生、阿慈谷(あじたに)ヒフミ。二人はたわいもない話に興じていた。辺りはもう暗い。

 

「……それでノノミさんにも、ペロロ様を布教しようと——……」

「——ということは……♡ 先生は若干アブノーマルな方のようですし……——」

「……。……あはは……確かにナギサ様も、最近雰囲気が……あれ?」

 

 歩いている二人の耳に、どこからか細い歌声が聞こえてきた。少しかすれたような、しかしそれが妙に惹きつけてくる歌声だった。薄暗闇(うすくらやみ)の中を、二人は歌声の主を探し、そして——

 

「あ、あそこです!」

「ギターの弾き語り、ですか。……ゲヘナの方のようですね」

 

 トリニティでは「正義実現委員会」ぐらいしか着ないような、赤と黒の強烈なファッション。黒いパーカーには骸骨だろうか、バンドか何かのシンボルマークがデカデカと描かれている。さらに、見た瞬間こちらを射抜くような、鋭い眼光。黒い翼に、ポニーテールにした髪の根元部分には、太い二本のツノ——

 

 見た目で判断するなら、間違いなくゲヘナ生だ。実際、そうなのだろう。ハナコが眉をひそめた——少なくとも、ヒフミにはそう見えた。

 

「は、ハナコちゃん。エデン条約だって結ばれた*1んですし、別にゲヘナの人だから、とかは……」

「あ、いえ、そうではなく……。少し場所が気になるというか、トリニティでもゲヘナに関してはミカさんのように、まだまだかなり抵抗がある方も多いですし、一応気をつけた方がいいのでは、と……」

「でも、せっかくこんなに綺麗な歌声が聴けた……のに……」

「……そう、ですね。本当に綺麗な……。…………」

「…………」

「…………」

 

 気付けば、二人は立ち止まってその歌声に聴き入っていた。細く白い指がアコースティックギターをつま弾き、柔らかい和音を奏でている。夜の闇の中で、その指の白さが幻想的に浮かび上がる。

 

「————————♪ …………————♪」

 

 ゲヘナの少女の、囁(ささや)くような小さな歌声が、風に乗って二人の耳に届く。少しかすれたハスキーな声で、胸の中にあるものを絞り出すように歌っている。時おり、歌詞の内容が切ないものになるたび、苦しそうに目を伏せる。

 

 少女本人にしてみれば、誰に聴かせるつもりもない、ただの一夜の気まぐれなのかも知れない。それでもトリニティの二人はその神秘的な姿に、歌声に、圧倒された。その日、その時間、その場所に居合わせなければ聴けなかった音を、残さず受け止めようとしていた。

 

「——————……♪ …………。…………」

 

 いつしか歌は終わり、ギターの音だけが余韻を残していた。

 

「いい曲でしたね……」

「そうですね。アイ、ラヴ、ユー……何か世間からは許されない事情がある、それでも求め合わずにはいられない恋人同士の、切なくて強い想い……。そんな愛を歌った歌詞でしょうか。障害があればあるほど燃え上がってしまう……「禁断の恋」と言えば古来からのテーマですし、少し気恥ずかしいですが、やはり憧れてしまいますね。「きしむベッドの上」なんて、コハルちゃんあたりには少し刺激的すぎる歌詞かも知れませんが♡」

「あはは……それって、やっぱり……そ(・)う(・)い(・)う(・)意味ですよね? でも、そういう大人っぽい歌詞の歌を歌えるなんてすごいです。雰囲気も落ち着いてるし、やっぱり私たちより年上なんでしょうか。人生経験も豊富そうに見えますし」

「そうですね……。私は音楽のことはよく分かりませんが、誰かの胸を打つことが出来る歌というのは、技術や表現方法だけではないのかも知れません。歌詞と全く同じではなくても、こういったラブソングに乗せて伝えられるような、切なくて苦しい恋心を経験をしたことがあるのかも。なんて、ふふっ。もちろんこれは、私の勝手な憶測ですが」

「あはは……キヴォトスでそんなに熱烈な恋愛なんて、現実にはほとんどなさそうですもんね。でも、実際どうなんでしょうか。出来れば、ちょっとだけでもお話してみた——あっ」

「あら」

 

 一応、二人に気付いていたのか、チラッと一瞥(いちべつ)すると、荷物を片付けてゲヘナの少女は行ってしまった。

 

「行ってしまいましたね」

「も、もしかして、私たちがここで聴いていたせいで、邪魔してしまったんでしょうか⁉︎ 迷惑だったとか⁉︎」

「うーん……。それもあるかも知れませんが、やはり向こうも場所を気にしていたのではないでしょうか。別に路上ライブというわけではないみたいでしたし、いつも来ているわけでもなさそうでしたし……」

 

 ヒフミは、はぁっ、とため息をついて、肩を落とした。

 

「やっぱり、ゲヘナとトリニティが仲良くするのって、難しいんでしょうか……」

「そうですね……。現実的に考えれば、そうだと思います。少なくとも、今はまだ。でも、きっと不可能ではないと思います。私たちはもうアズサちゃんのようなアリウス出身の子とも仲良くしていますし、トリニティ自体もアリウスを完全に受け入れようとしています。ですから、いつかゲヘナとも——いえ、そんな事はどうでもいいですね。何しろ彼女の歌を聴いている間は、ゲヘナやトリニティというもの自体、私の中からなくなってしまいましたから」

「そう! そうなんですよね! ゲヘナとトリニティが、とかではなく、聴いている間は歌以外のことは考えられないっていうか! ……出来れば、また聴きたいです。コハルちゃんや、アズサちゃんも一緒に」

「そうですね。私たちだけではもったいない気がします。また来てくれるといいのですが……。あ、そういえばシャーレにはゲヘナの方が結構いたような……」

「そうですよ! 先生に聞いたら何か分かるかも! 今度——」

 

 少し興奮気味に、二人はその後も話し続けた。

 

 

------------------------

 

 

 鬼方(おにかた)カヨコは振り向き、トリニティ生二人が居た方をチラッと見た。

 

 ——あの子たち、多分ずっと聴いてたよね。だったら悪いことしたかな。この辺ならトリニティの子が通っても、ゲヘナ生を見たら怖がって近づいて来ないだろうから、邪魔されなくてちょうどいいや、ぐらいの気持ちで歌ってただけなんだけど……。

 

 ゲヘナというだけでなく、もともと見た目が怖いと思われて、あまり人が近寄ってこないカヨコだ。今さら愛想を良くする気もないし、誤解を解(と)くのも面倒、と諦(あきら)めている。だから、向こうの方から近付いてくるかも、なんていうのは全く想定していなかった。それに曲だって、明確なセックスの描写があるような、センシティブな曲だ。「どうせトリニティのお嬢様が聴いたって、引くだけでしょ……」程度に考えていた。

 

 ——トリニティにも、こういう曲に抵抗ない子っているんだ。もちろん曲がいいからなんだろうけど、偏見持ちそうだなって思ってた……

 

 二人とも白いセーラー服の、いかにもお嬢様然とした雰囲気だった。育ちも良さそうで、正直、こちらが気後(きおく)れしてしまいそうだった。見た感じ、性格も悪くなさそうだったし、嫌な印象はなかった。逃げる事はなかったかも知れない。もともとカヨコは、親トリニティとまではいかなくても、ゲヘナとトリニティの間から無用な争いは減らしたいと考えている方だ。

 

「——って言っても、どうしても『トリニティ』っていえば、ハスミや『正義実現委員会』がまず念頭にあって、「敵対しないで済む方法」、じゃなくて「仲良くする方法」、なんて考えた事なかった。『あの人』なら、「何か同じ曲が好きらしくって、仲良くなった〜」なんて、能天気な顔で言いそうなのにね。……先生、最近会ってないけど、元気? もしこれがきっかけであの子たちと仲良くなったら、あなたも喜ぶ?」

 

 『ブルーアーカイブ世界』の外、『現実世界』から来た「プレイヤー」である『あの人』——現在の『シャーレの先生』である『彼』は、最近はしょっちゅうトリニティに行っているらしい。もしかしたら、あの二人のことも聞けば知っているかも知れない。知り合いになれば、自分の歌を好きになってくれるかも知れない。でも、とカヨコは思う。

 

「——でも、もし聴かせるとしても、この曲じゃダメだよね。だって、こうやってすぐに、あなたの事ばっかり考えちゃう。この曲はすごく好きだし、アーティストのこともリスペクトしてるつもり。キヴォトスにはなかったはずの、あなたが持ち込んだ『現実世界』のこの曲を、もっと多くの人が聴いてくれたらいいなって思う。……でも、あのCDに入っていた曲はどれも、私にとっては特別すぎる。自分が好きな相手が教えてくれたラブソングを、気持ちを抑えて、きちんと歌いこなすのは無理だよ」

 

 カヨコは目を落とし、自分の手を、そして指を見る。

 

「ギターだってまだ上手くない。歌をちゃんと練習したこともない。そもそも、誰かに聴かせようと思ったことなんてない。自分のために歌ってただけ。「聴かれる」と「聴かせる」は、ちょっと違う。そうじゃない?」

 

 そっと目を閉じると、『あの人』の姿が目の前に浮かぶ。すぐ浮かんでしまう。

 

 ——この曲は、いつ元の世界に帰ってしまうかも知れない、あの人との大事な絆(きずな)。もし会えなくなってしまっても、教えてもらった曲だけは残るから。そしてこれは、アビドスの『あの子(ノノミ)』とは違う、私とあの人だけの繋がり。そんな事を考えただけで、すぐにコントロールがきかなくなって、他人に聴かせる音楽じゃなくなってしまう。自分の気持ちを、歌と一緒に力いっぱい投げる事は出来るかも知れない。でも、キャッチしてもらえるような投げ方は出来ない……。

 

 ただ一人の相手を想う、強い気持ち。他のことなんて考えられなくなってしまう、強烈な感情。周りすら見えなくなってしまう——「恋愛」というのはそういうものだ、そんなことはカヨコも知っていたはずだった。きっと身を焦(こ)がすような感情にだって、どこかで憧(あこが)れていた。それが意味する「負」の面を全く理解していなかったのを、カヨコは痛感していた。

 

 ——今の私じゃ中途半端で、何も出来ない気がする。上手く歌える気がしないし、他人とちゃんと接することも出来ない気がする。他のことだって、多分何をやってもうわの空で、集中出来ないと思う。便利屋でバンドをやるって話だって、一番厳しいことを言ってたのは私なのに、結局自分がこんなだから先延ばしさせちゃってる。

 

 すっかりカヨコよりギターが上手くなったムツキが、しょっちゅうその話をしているのを思い出す。ベースもやりたいと言っていたから、バンド活動を始めようと思えば、もう始められるところまで来ている。それを、自分が待たせてしまっている。

 

「一度、きちんとあなたに自分の気持ちを言わなきゃいけないんだよね? 分かってる。お互い何となく知っている、で済ませたままじゃ、この状況は変わらない。でも、受け入れてもらってハッピーエンド、なんてあり得ないのは、もう分かってる。あなたにはちゃんと「彼女(ノノミ)」がいるんだから。それでも、「終わらせる」ためだけに、どうしても「バッドエンド」を見なきゃいけないの? そうしなきゃ、この気持ちって消えない? それとも、ずるくても別のマシなエンドを探してもいいの? 嫌なら、終わらせなくてもいい? あなたは今まで、どうやって「恋愛」を終わらせてきたの? 「終わり」って怖いものだって、言ってたよね? それでも人間はちゃんと立ち直れるように出来ている、なんて言っていたけど、本当なの……? …………」

 

 当然、どこからも返事はない。夜のトリニティで一人きり、はぁ、とため息をついてから、カヨコはふと思った。

 

 ——誰にも言えない、こんな弱さや迷いだって、ちゃんと表現出来るようになれば、伝えられるのかな。例えばゲヘナが歌うラブソングで、トリニティへ伝えることだって可能? もしそうだとしたら、それにはきっと大きな意味があるのに。もしかしたら、『エデン条約』よりも……。

 

 ……そっか。小さくつぶやいてから、カヨコは軽く微笑んだ。そして、見えない誰かに語りかける。

 

「少し、頑張ってみる。多分どんな「エンディング」であっても、「終わらせる」ためじゃなく、「先へ進む」ために必要なものなんだろうから」

 

 その言葉は誰に向けてのものだったんだろう、カヨコは自分に問う。さっきのトリニティの二人に言った? 『トリニティ』という存在に呼びかけた? いや……

 

 ——その先にある「未来」に、かな? 少しだけ待ってて。

 

 

 

*1:
この世界では、連邦生徒会長がい(・)る(・)事(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)のをはじめ、障害となるものが取り除かれているため、エデン条約は問題なく締結されている。また、トリニティ内部やアリウスに関する問題も、表面上は既にほぼ解決されている。




要するに尾崎のベスト盤です。15の夜とかI LOVE YOUとか卒業とか。
第15回でレコード屋で買って、第37回では弾き語りの練習してます。
このCDに限らず、ゲーム開発部に渡したゲーム、黒服に代わりに買って渡しているエロゲー、『現実世界』にしか存在しないものは、基本的に主人公がいないと買えないことになってます。

カヨコにも専用エンドを用意してあって、今回のはそこから逆算して書いたものです。最終的にはこういう前向きなところに落ち着くと思ってください。

特に質問ではないのですが、アンケート置いておきますので、カヨコ好きな方は押してくださると嬉しいです。どれでもいいです。
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